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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y3032
管理番号 1258170 
審判番号 無効2011-890090 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-10-20 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5373979号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5373979号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5373979号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成17年9月1日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,茶」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同22年11月2日に登録査定、同年12月3日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が引用する国際登録第804277号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2002年8月8日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2003年(平成15年)2月3日に国際商標登録出願、第16類、第18類、第22類、第24類、第25類、第29類ないし第36類及び第38類ないし第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年5月14日に設定登録され、その後、2010年(平成22年)8月5日に第16類に属する指定商品についての更正の通報がされ、その登録が平成22年8月13日にされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。
1 本件商標の無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきである。
2 本件審判の請求の利益について
請求人は、商願2007-31901の出願人であり、本件商標を引用されて拒絶理由通知及び拒絶査定をされている者であるから(甲第18号証及び甲第19号証)、本件審判の請求について、請求の利益を有する者である。
3 本件商標が無効とされるべき具体的理由
(1)引用商標の周知性について
請求人は、親会社であるMETRO AGの傘下にある企業である。引用商標は、請求人を含むグループの業務を示すものとして使用されている(甲第3号証ないし甲第5号証)。その結果、引用商標は、本件商標の登録出願時である2005年(平成17年)9月1日及び査定時である2010年(平成22年)11月2日までに、ドイツをはじめ欧州、アフリカ、アジア等といった広い地域において需要者の間に広く認識されていた。
ア METRO Groupの2005年年次報告書において、2004年全地域での純売上高が約534億ユーロ、うちドイツ国内が約265億ユーロ、ドイツ国外が約269億ユーロ、2005年全地域での純売上高が約557億ユーロ、うちドイツ国内が約259億ユーロ、ドイツ国外が約297億ユーロと、世界有数の小売、卸売企業であることがわかる(甲第6号証)。
イ 請求人は、傘下の企業内にMETRO Groupの使用を呼びかけ、2004年にはMETRO Groupネットワーキングと称するプロジェクトを立ち上げた。これにより、傘下の企業内で働く従業員の一体感を強め、制服を統一する等して引用商標の周知に努めていた(甲第7号証)。
ウ METRO Groupの2010年年次報告書において、2009年全地域での純売上高が約655億ユーロ、うちドイツ国内が約265億ユーロ、インターナショナルが約390億ユーロ、2010年全地域での純売上高が約672億ユーロ、うちドイツ国内が約261億ユーロ、インターナショナルが約411億ユーロと、2005年と比較して売上を伸ばしていることがわかる(甲第8号証)。
エ METRO Groupは、世界33カ国2000を超える店舗を展開しており、引用商標は、世界的に需要者の間に広く認識されているものであるといえる(甲第9号証)。
オ 請求人は、METRO Groupマラソンと称するマラソンイベントを2005年からドイツ国内で毎年開催し、引用商標の周知に努めていた。2010年の当該イベント参加者は、6週間前の時点で1万2千人の参加登録者を記録している(甲第10号証及び甲第11号証)。したがって、当該イベントにより、大変多くの人が引用商標を認識するに至ったものと思料する。
カ 請求人は、プレスミーティング等でも、積極的に引用商標を使用し、周知に努めていた(甲第12号証)。
キ 2006年から2009年の間に無料景品として、相当数の「METRO Group」が付された商品が無料で配布された。景品用商品の数量及びそれにかけたコストをみれば、請求人が引用商標の周知に努めていたことがわかる。また、膨大な数量が無料配布されたことから、大変多くの人が請求人の引用商標を認識したといえる(甲第13号証)。
なお、無料景品に係る本書証(甲第13号証)中の2009年の番号が2番から始まっているのは単なる番号の付け間違いと思料する。
ク 数多くのインターネットサイトにおいて、引用商標は、METRO Groupを識別するものとして使用されている。その一例として、ドイツのランキングサイトでは、「ドイツにおける最も大きい同族経営企業」と題したランキングにおいて、1位であるMETRO Groupをさすものとして引用商標を使用している(甲第14号証)。このことから、大変多くの人が引用商標を認識していたことが推察される。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 外観について
本件商標は、上段に欧文字の「METRO Group」、下段に片仮名からなる「メトロ グループ」という二段の構成よりなる。
引用商標は、赤色の色彩がつけられた「METRO」と灰色の「Group」を横描きした欧文字の「METRO Group」からなる。
したがって、本件商標と引用商標は、色彩及び片仮名表記以外の要素を同一とする、極めて類似するものである。なお、本件商標の片仮名表記は、欧文字部分を日本語読みで記載したものにすぎないため、それだけで非類似といえるほどの差異を生じる、付加的要素とは認められない。
イ 称呼について
本件商標からは「メトログループ」の称呼が生じ、引用商標からも同一の「メトログループ」の称呼が生ずるから、本件商標と引用商標は、称呼について同一である。
ウ 観念について
一般的な取引上「●●グループ」という表記は、「●●」の部分を親会社の名称や団体名とし、それらの傘下にある会社や団体又は関連会社等をまとめた総称として「●●グループ」と使用されることが多い。つまり、本件商標及び引用商標からは、「METRO社グループ」という観念が生じ、観念について同一である。
(3)不正の目的について
ア 請求人は、日本における商標権の取得の必要性を感じはじめ、引用商標の日本国内登録へ向けての手続き中、被請求人の所有の他の商標権と抵触するとして拒絶理由通知を受領した(甲第15号証)。そこで、被請求人との交渉を試みようと、2005年8月10日、当時の代理人を通して書簡を出した(甲第16号証)。
イ 上記交渉は被請求人が応じない旨の回答を2005年8月23日(翌日、24日に受領)に出したため、決裂したものであり、請求人が本件商標の登録出願を依頼した事実は一切ない(甲第17号証)。
しかしながら、被請求人は、請求人に何ら連絡することも、請求人の了解を得ることもなく、2005年9月1日に本件商標を登録出願した。
ウ 本件商標は、「METRO」と「Group」がスペースで区切られており、大文字と小文字の構成が引用商標と全く同一であり、差異は文字の色彩及び「メトロ グループ」と仮名が併記されていることのみである。したがって、本件商標と引用商標は、極めて類似するものであることは明らかである。
エ 上述のように、本件商標と引用商標は、大文字と小文字の構成等が色彩を除き同一であることから、被請求人がその組み合わせを偶然採用することはあり得ないと考える。
オ 被請求人が所有する登録第4711009号商標及び登録第922447号商標は、いずれも欧文字「METORO」からなるものであり、本件商標の欧文字部分「METRO」とは異なる。したがって、被請求人が、引用商標にのみ「METRO」を採用することは偶然には考え難いものである。
カ 「METRO Group」は、METRO社の傘下にある全ての企業の総称である造語であることから、そのようなグループ企業の構成を成していない被請求人が、「METRO Group」という本件商標を偶然採用することは考え難いものである。
キ 請求人が引用商標を積極的に使用しているのに対し、被請求人が本件商標を使用している事実はみられず、欧文字部分が他の所有商標と異なることから、将来の使用可能性も大変低いと思料する。したがって、被請求人の本件商標の登録出願にはそもそも使用意思がなく、請求人の日本進出及び引用商標の商標権取得を妨害する不正の目的によってされたものと考えざるをえない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 理由
本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではなく、本件審判請求は失当である。
以下、請求人の無効原因について反論する。
(1)本件商標について
本件商標は、その出願から登録に至るまで長期に亘る時間を要して登録になったものであるが、これは請求人の国際登録第852751号外2件を引用された拒絶理由通知書に接し(乙第1号証)、これに対し意見書等を提出して(乙第2号証)、長期の時間を要したものである。
なお、請求人の国際登録第852751号は「METRO」の構成からなる商標で「メトロ」と称呼されるものである(乙第3号証)。
以上の事実からしても、本件商標「METRO Group/メトログループ」の要部は、「メトロ」に存すること明白な商標である。
(2)引用商標の周知性について
請求人は、親会社であるMETRO AGの傘下にある企業であり、引用商標「METRO Group」は請求人を含むグループの業務を示すものとして使用されていて、その結果、本件商標の登録出願時及び査定時までに、ドイツを始め広い地域において需要者の間に広く認識されていた、と主張する。
しかしながら、請求人が引用商標として引用する書証(甲第2号証)は、何ら指定商品・指定役務の指定区分の開示のない書証であり、書証としては適格性に欠けるものである。
少なくとも、商標として引用するには、業とし具体的な商品役務に使用している事を要する(商標法第2条第1項参照)にもかかわらず、単に請求人を含むグループの業務を示すものとして使用されていて、需要者の間に広く認識されているのみで到底周知性を認めることはできない。
引用商標の指定商品・指定役務まで入っている資料を乙第4号証として提出する。請求人の引用商標の指定商品には、本件商標の指定商品たる第30類「コーヒー及びココア,茶」、第32類「清涼飲料,果実飲料」は含まれていない。
したがって、少なくとも本件商標の指定商品の業務に関して周知性を認めうる使用はされていないことは明白である。
(3)周知性立証の証書について
請求人は、周知性立証のため、甲第3号証ないし甲第9号証を提出するが、これらは主として対内的な資料であり、売上高が伸びているとか従業員の制服を共有システムにしたとか等は、周知性の書証としての証拠価値は皆無である。上記書証に使用されている引用商標は、単に記述的に使用されているにすぎなく、これを以って周知性を立証すること自体失当といわざるを得ない。
甲第10号証ないし甲第14号証についても、単にマラソン競技を開催した報道写真・記事であり、景品用商品の購入書証に至っては引用商標との関連性は皆無であり、甲各号証の証拠説明書を提出し、作成年月日、作成者、立証趣旨を明確にされたい。
(4)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、外観において、本件商標は欧文字と片仮名で二段横書きとしてなるが、類似の範囲であることは認め、称呼上の同一性は認める。しかし、その要部は、「メトロ」に存するものである。
観念については、「Group」は、請求人が主張するように傘下企業をまとめた総称として日常的に使用されている用語であるとの主張は認めるが、本件商標、引用商標の出所機能を果たす部分が「METRO」、「メトロ」に存する事は、本件商標の出願から登録に至る経緯をみれば明らかな商標である。
(5)不正の目的について
請求人は、本件商標は不正の目的で登録出願したと主張するが、そのような事実は全くない。申し入れを断ったことを決裂したとか、本件商標の登録出願を依頼した事実は一切ないとか、被請求人は、請求人に何ら連絡することも、請求人の了解を得ることもなく登録出願したと主張し、本件商標の登録出願にはそもそも使用意思がないとか、極めて主観的主張に終始している。
請求人会社の出願態様は、全区分出願が多く、一体使用意思がどこまであるのか甚だ疑問の多い出願ばかりである。
当時被請求人の基本商標たる「メトロ」に類似するような商標出願が件外企業から色々な情報が入り、被請求人会社の企業ブランドを如何に保護していくか、又企業グループ化等を検討していた時期で、たまたま請求人からの申し入れ時期と重なっただけである。
更に、本件商標の欧文字「METRO」は、被請求人の先願登録商標は「METORO」なのに反し、本件商標だけ「METRO」を採用していることに関し偶然とは考え難いと主張するも、要は「メトロ」と称呼されれば良いのであり、欧文字のスペルは全く気にしていなく、意識的に変更したものではない。
このことは、請求人との交渉文書において、請求人自ら「METORO」と正確に書かなければならないところを「METRO」と記載し、又被請求人においても「METRO」と記載していて、意識的に引用商標のスペリングにしたものではないことは明白である。
請求人企業と被請求人会社は、請求人も認めているとおり(乙第5号証、乙第6号証)、競業関係にはなく、又被請求人の登録出願行為自体、信義則に反するような行為とは全く考えられないものである。
更に、「METRO Group」は、METRO社の傘下にある企業の総称である造語であると主張するも、「METROGroup」と一体不可分に構成してなる場合ならともかく「METRO」と「Group」を分離独立した態様からなる引用商標を看者をして造語と認識させる事はあり得ない。
(6)本件審判の利害関係について
本件審判の利害関係については、拒絶理由通知のとおりの理由で拒絶査定になったか否か、被請求人は不知である。
2 まとめ
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標…」と規定されているとおり、商品又は役務を離れた表示は同号には該当しないこと明白であり、引用商標は、正に本件商標の指定商品とは全く無関係の業務表示であるから、同号に該当するとの請求人の主張は失当である。

第5 当審の判断
1 利害関係について
請求人は、引用商標の商標権者であり、かつ、本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては、当事者間に争いがないことから、請求人は、本件審判についての請求人適格を有するものと認められる。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標の著名性について
ア 請求人の提出に係る甲各号証及び請求人の主張並びに被請求人の提出に係る乙第7号証を総合すれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、親会社である「METRO AG」傘下の小売、卸売企業であり、引用商標は、請求人を含むグループの業務を示すものとして使用されている(甲第3号証ないし甲第5号証)。
(イ)「METRO Group」は、ドイツを始めとする欧州や日本、中国といったアジア等の世界33か国において、2,000を超える店舗を展開している(第9号証)。
(ウ)「METRO Group」の全地域での売上高は、2004年が約534億ユーロ(うち、ドイツ国内が約265億ユーロ、ドイツ国外が約269億ユーロ。)、2005年が約557億ユーロ(うち、ドイツ国内が約259億ユーロ、ドイツ国外が約297億ユーロ。)、2009年が約655億ユーロ(うち、ドイツ国内が約265億ユーロ、ドイツ国外が約390億ユーロ。)、2010年が約672億ユーロ(うち、ドイツ国内が約261億ユーロ、ドイツ国外が約411億ユーロ。)である(甲第6号証及び甲第8号証)。
(エ)請求人は、プレスミーティング等の際や、2005年以降毎年開催している「METRO Groupマラソン」と称するマラソンイベントにおいて、引用商標を使用している(甲第10号証ないし甲第12号証)。また、2006年から2009年の間、「METRO Group」を付した無料景品を、相当数配布した(甲第13号証)。
(オ)ドイツのボンに拠点を置く「IfM」が2007年4月15日に作成した「ドイツにおける最も大きい同族経営企業」と称するランキングリストによれば、「METRO Group」が第1位(第2位は「BMW」、第3位は「BOSCH」)とされており、その中で、METRO Groupが世界第3位の貿易会社となっており、世界中に25万人の従業員を有している旨の記載がされている(甲第14号証)。
(カ)「METRO Group」の日本法人「メトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社」は、飲食店・小売店向けの食品卸売りを事業内容とするものであって、2000年(平成12年)11月27日に設立され、2009年(平成21年)10月現在、首都圏に6店舗(東京都町田市、神奈川県横浜市、千葉県千葉市及び流山市、埼玉県川口市、栃木県宇都宮市)を展開している。
イ 以上よりすれば、引用商標は、本件商標の登録出願時(平成17年9月1日)において、請求人の業務に係る食品を含めた各種商品の小売り、卸売りに使用される商標として、主としてドイツの取引者、需要者の間において広く認識されていたというべきものであり、また、我が国の取引者、需要者の間においても相当程度認識されていたといい得るものであって、その状態は、本件商標の登録査定時(同22年11月2日)においても継続していたとみるのが相当である。
(2)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観
本件商標は、前記第1のとおり、「METRO Group」の欧文字と「メトロ グループ」の片仮名とを上下二段に書してなるところ、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを表したものとして無理なく看取、把握され得るものである。
これに対し、引用商標は、前記第2のとおり、赤色の「METRO」の欧文字と紺色の「Group」の欧文字とを組み合わせて「METRO Group」と横書きしてなるものである。
そうすると、本件商標の欧文字部分「METRO Group」と引用商標とは、後者に彩色が施されている点を除き、文字綴りをすべて同一とするものであるから、両商標は、看者に酷似した印象を与えるものであり、外観上、相紛れるおそれのある商標である。
イ 称呼について
本件商標は、その構成各文字に相応する「メトログループ」の称呼を生じるのに対し、引用商標も、その構成文字に相応する「メトログループ」の称呼を生ずるものであるから、両商標は、称呼を同一とする商標である。
ウ 観念
本件商標と引用商標とは、上述のとおり、それぞれ「METRO Group」の欧文字又は該欧文字とその表音「メトロ グループ」との二段書きからなるものであるところ、その構成中の「Group」及び「グループ」の各文字は、「集団、共通点をもつ人や物の集まり」程の意味を有する英語ないし外来語として、一般に広く慣れ親しまれているものであり、また、ある企業(○○株式会社)が、傘下にある会社や関連団体等をまとめた全体を総称するものとして、自己の略称等を含む「○○グループ」といった名称を採択、使用することも、取引場裡において、しばしば見受けられるところである。
そうとすると、本件商標と引用商標とは、その文字構成にかんがみれば、看者をして、いずれも「METRO(メトロ)社グループ」程の意味合いを表したものと認識されるというのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、観念を同一とする商標である。
エ 小括
以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観において、相紛れるおそれのある商標であり、かつ、称呼及び観念を同一とするものであるから、互いに類似する商標というべきである。
(3)被請求人の不正の目的について
ア 本件商標に係る登録出願までの経緯
(ア)請求人は、引用商標に係る国際商標登録出願について、被請求人所有の他の商標権(商標登録第922447号:「METORO」の欧文字と図形の結合商標であって、第30類「コーヒー及びココア,茶,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品とするもの。商標登録第2605366号:同じ書体からなる「Me」の欧文字と「toro」の欧文字とを接するように2段に配してなる商標であって、第29類「果実飲料、その他本類に属する商品」を指定商品とするもの。商標登録第2605367号商標:「メトロ」の片仮名を横書きしてなる商標であって、第29類「果実飲料、その他本類に属する商品」を指定商品とするもの。)と抵触する旨の拒絶理由通知(2004年1月15日発送)を受けた(甲第15号証)。
(イ)請求人は、上記(ア)にいう通知を受けたことから、日本国内の代理人を通じて、2004年8月17日に、被請求人に対し、被請求人が所有する商標権(商標登録第922447号ほか2件)を請求人が譲り受け、請求人の国際商標登録出願が登録された後に、その譲り受けた商標権を被請求人に譲り渡す、といった方法について、協力を依頼する旨の書簡を送付した(乙第6号証)。これに対し、被請求人は、自らの商号でもあることから、譲渡をすることはできない旨の回答をした(甲第16号証)。
(ウ)請求人は、上記(イ)にいう回答を受けたことから、日本国内の代理人を通じて、2005年8月10日に、被請求人に対し、被請求人名義で「METRO Group」(引用商標に係る標章)を第30類及び第32類に出願し、それが登録された後に、該登録を請求人に譲り渡す、といった方法(手続費用は請求人負担)について、協力を依頼する旨の書簡を送付した(甲第16号証)。
(エ)被請求人は、上記(ウ)にいう依頼を受けたところ、2005年8月23日に、請求人(代理人)に対し、引用商標に係る国際商標登録出願が「METRO Group」であり、需要者をして、あたかも被請求人が請求人グループに吸収されたかのように思料されるおそれが強いため、現時点においては、請求人による依頼には応じかねる旨の書簡を送付した(甲第17号証)。なお、該書簡は、翌8月24日に、請求人(代理人)により受領された(甲第17号証)。
(オ)被請求人は、上記(エ)にいう書簡を送付した9日後の平成17年(2005年)9月1日に本件商標に係る登録出願をした。なお、請求人及び被請求人の提出に係る各証拠をみても、被請求人による該書簡の送付日から登録出願までの間に、被請求人と請求人との間で何らかのやりとり等があったと認めるに足る事実は見いだせない。
イ 小括
上記アに述べたところによれば、被請求人は、本件商標に係る登録出願をする前に、請求人が引用商標に係る国際商標登録出願をしており、該出願について、被請求人が所有する商標権と抵触する旨の拒絶理由通知を受けたことを知っており、かつ、請求人が第30類及び第32類に属する商品について「METRO Group」の文字からなる商標権の取得を欲していたことを知っていたといわなければならない。
また、被請求人は、「メトロ株式会社」であるところ、被請求人が所有する商標権に係る登録商標が、上記ア(ア)のとおり、「METORO」の欧文字と図形とを結合してなるもの、同じ書体からなる「Me」の欧文字と「toro」の欧文字とを接するように2段に配してなるもの及び「メトロ」の片仮名を横書きしてなるものであることからすれば、被請求人においては、自らの略称「メトロ」を欧文字表記するときは、専ら「METORO」の欧文字を用いていたものと推認される。
さらに、被請求人は、請求人からされた被請求人所有の商標権の譲渡等の申出に対し、回答をしていることからすれば、その回答に先立ち、請求人の事業内容等について何らかの調査をしたとみるのが相当である。
そして、被請求人は、本件商標に係る登録出願をした経緯に関し、自ら企業グループ化等を検討していた時期と偶然に重なった旨主張するが、被請求人の提出に係る証拠を総合してみても、これを裏付けるに足る事実は何ら見いだせない。
してみれば、被請求人は、本件商標の採択に際し、需要者間に広く認識されていた請求人に係る商標「METRO Group」と同一の綴り字を偶然に含めたというよりはむしろ、請求人が該商標を第30類及び第32類に属する商品について権利化することを欲するものの、それが自己の所有に係る商標権との抵触を理由として達成できていないことを十分に知り、かつ、該商標の構成中の「METRO」の欧文字が、自らが従来採用している「METORO」の欧文字とは異なる綴り字であることを承知の上で、事前に請求人の承諾を得る等することなく、本件商標の登録出願に及んだものと推認される。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当するというべきであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用商標(国際登録第804277号商標)


(色彩については、原本参照のこと。)

審理終結日 2012-03-02 
結審通知日 2012-03-14 
審決日 2012-03-27 
出願番号 商願2005-81828(T2005-81828) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (Y3032)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤田 和美薩摩 純一 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2010-12-03 
登録番号 商標登録第5373979号(T5373979) 
商標の称呼 メトログループ、メトロ、グループ 
代理人 光藤 覚 
代理人 鎌田 和弘 

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