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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X30
管理番号 1256596 
異議申立番号 異議2011-900166 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-05-09 
確定日 2012-05-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第5391470号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5391470号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5391470号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成22年8月10日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年12月28日に登録査定、同23年2月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、「東京スカイツリー」と称呼上彼此相紛れるおそれのある類似の商標であり、インターネットの検索サイト「Google」「Yahoo!JAPAN」などでは「東京愉快ツリー」が「東京スカイツリー」と誤認混同を生じている。また、「東京スカイツリー」は申立人を事業主体とした電波塔であり、その事業の基本理念として、電波塔及び観光施設としての役割だけではなく、その内部及び足元に大規模な商業施設等を備える一大複合施設の核となることから、墨田区押上・業平橋地区を中心とする東東京エリアの活性化をけん引するとともに国際観光都市東京の実現に貢献することが期待され、また、過去の審査例からも「東京スカイツリー」が著名であることは特許庁においても周知の事実である。
してみれば、本件商標は、「東京スカイツリー」の名声名誉にただ乗りする意図があり、公益性の高い「東京スカイツリー」の事業主体と何らの関係のない一私人に指定商品について独占使用を認めることは公の秩序又は善良の風俗に反するものであるため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
「東京スカイツリー」は、完成時に634メートルの世界一の高さの電波塔となり、墨田区押上・業平橋地区の大規模複合開発による東東京エリアの活性化をけん引するとともに、国際観光都市東京の実現に貢献することを基本理念の一つとしている。また、「東京スカイツリー」の事業主体である申立人は、「東京スカイツリー」を中核とする商業施設で、レストラン、キャラクターザッカ、フードコート、食品、スイーツ、デイリーザッカ、観光・イベント施設、スーベニア&ライフスタイルザッカ、ファッション&ライフスタイルザッカ、カフェなどのエリア・コーナー・施設を設ける予定であり、一定の基準のもとで広範な営業活動を行う具体的な計画のもとでライセンス事業が活発に行われている。
このように「東京スカイツリー」を中核とした商業施設において広範な営業活動がなされるため、本件商標の付された商品は、「東京スカイツリー」の事業主体と組織的又は経済的に何らかの関連のある者の事業に係る商品であるかのごとく需要者に認識され、出所の混同を生じるおそれは高いといわざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 本件商標の取消理由
商標権者に対して、平成23年11月7日付けで通知した本件商標の取消理由は、別記のとおりである。

4 商標権者の意見
商標権者は、本件商標の出願から登録に至るまでの経緯、及びその指定商品、並びに「東京スカイツリー」が東京都墨田区押上に建設中であり、完成後は世界一の高さの電波搭となること、また、最近では観光客なども訪れて、話題となっていることなどについてはこれを否定するものではない。
しかしながら、本件商標は、「東京愉快ツリー」の文字とこれを英文字表記及び片仮名表記した各文字を5段に表してなるものであり、申立人の「東京スカイツリー」とは、全く別異の商標であって、申立人の「東京スカイツリー」を直ちに想起することはなく、ましてや、「東京スカイツリー」の著名性や集客力に便乗し、不当な利益を得ようなどとの目的で商標登録出願したものでは決してない。
したがって、不当な利益を得ようとの目的で商標登録出願されたものではないから、これが社会的相当性を欠くとはいえず、公序良俗に違反するものともいえない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、本件商標の登録は維持されるべきものである。以下、その理由を詳細に述べる。
(1)商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができない旨規定しているが、判決は以下のように判示している。
ア 商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして、到底容認し得ないような場合に限られるものであり、私的な利害の調整は、原則として、公的な秩序の維持にかかわる商標法4条1項7号の問題ではない(東京高裁平成14年(行ケ)第616号「ハイパーホテル事件」)。
イ 商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきであり、商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで「公の秩序又は善良の風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(知財高裁平成19年(行ケ)第10391号「コンマー\CONMER事件」)。
上記判決を踏まえ、以下、本件商標について検討する。
(2)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「東京愉快ツリー」「とうきょうゆかいつりー」「トウキョウユカイツリー」「TOKYO-YUKAI-TREE」及び「Tokyo-Yukai-Tree」の文字を5段に配置してなり、上辺と下辺が水平で、左右中央がやや膨らみ、全体として恰も樹木(Tree)を表すように描かれている点に工夫がなされているものである。
また、本件商標中、最も強調されている文字は「愉快」「ゆかい」「ユカイ」「YUKAI」及び「Yukai」であり、その前の「東京」「とうきょう」「TOKYO」の各文字は地名であって目立たないため、特に「愉快」「ゆかい」の文字がインパクトのある語となっている。
そして、本件商標中、最もインパクトのある「愉快」などの語と申立人商標の同じくインパクトのある文字部分である「スカイ」とは、「ユ」と「ス」で母音は同じかもしれないが、「ユカイ」の音と「スカイ」の音では、その意味合いが全く異なることもあって、別異の印象を受けることは明らかである。
すなわち、「愉快」は「楽しいこと」などを、他方「スカイ」は「空」を意味する語として、それぞれ親しまれた語であるから、それぞれを聴取したときの印象が全く異なり、両者間において、何らかの共通性や関連性を見いだすことはあり得ない。
このことは、本件商標全体である「東京愉快ツリー」と申立人商標「東京スカイツリー」との対比においても変わるところはなく、それぞれから受ける印象は全く異なるものと言うべきものである。
すなわち、本件商標と申立人商標とは、全く別異の商標として認識されるものといえるから、両者は、例えその前後において「東京」と「ツリー」の文字を共通にするとしても、中間部において最もインパクトのある「愉快」と「スカイ」との差異により、需要者、取引者の受ける印象は全く異なり、申立人の商標を直ちに想起することはない。
また、申立人商標「東京スカイツリー」が極めて話題性のある建築物であるからといって、多少の共通性を有するものの、申立人商標を直ちに想起することのない全く印象の異なる本件商標について、申立人の「東京スカイツリー」の著名性や集客力に便乗して、不当な利益を得ようなどとの目的で商標登録出願したものであって、公序良俗に違反して登録されたものであるなどと決め付けられることについては到底納得できない。
さらに、このことは、過去の審決例(参考資料1ないし6)などからみても首肯されるべきである。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は、申立人商標「東京スカイツリー」とは全く別異の構成からなり、申立人商標を想起させるものではなく、また、申立人商標の著名性や集客力に便乗して、不当な利益を得ようなどとの目的で商標登録出願したものではない。
よって、本件商標は、公序良俗に違反して登録されたものでなく、商標法第4条第1項第7号に該当しないことは明らかであるので、速やかに登録維持の決定がなされるべきである。

5 当審の判断
(1)本件商標について通知した上記3の取消理由は、妥当なものと認められる。
してみれば、本件商標は、「東京スカイツリー」が有する著名性及び集客力に便乗して、不当な利益を得ようとの目的をもって登録出願されたものと推認せざるをえず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当し、公の秩序又は善良の風俗に反するものといわざるをえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものといわなければならない。
(2)取消理由に対する商標権者の意見について
商標権者は、過去の審決例を挙げ、本件商標は、その構成から全体としてあたかも樹木を表すように描かれている点に工夫がなされており、また、本件商標と申立人商標「東京スカイツリー」とは、それぞれの構成中インパクトがあり意味合いが全く異なる「愉快」「ゆかい」などの文字部分と「スカイ」の文字部分との差異によって、需要者、取引者の受ける印象は全く異なるから、申立人の商標を直ちに想起することはない。したがって、申立人商標と全く印象の異なる本件商標は、申立人商標の著名性や集客力に便乗して不当な利益を得ようなどとの目的で登録出願されたものではなく、公序良俗に違反して登録されたものでもないから、本件商標は登録維持されるべきである旨主張している。
しかしながら、登録商標が登録異議の申立て理由に該当するか否かの判断は、査定時における取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者・需要者の認識を基準に個別具体的に判断されるべきものであるし、また、本件商標は樹木を表すように描かれているとは認めがたいものである。さらに、「愉快」「ゆかい」などの文字部分と「スカイ」の文字部分とは、それらのみを比較すれば別異のものといえるものの、それらの文字部分に着目し比較しなければならない合理的な理由も見いだせず、本件商標全体及び申立人商標全体から生じる称呼が極めて近似していること、本件商標が既存の物、事象及び特定の建造物などを表したものではないこと、申立人商標が著名であること及び商標権者が「東京スカイツリー」の名称を知らなかったとは考えがたいこと、さらには、商標権者と「東京スカイツリー」との関係が認められないことを総合して判断すれば、上述のとおり判断するのが相当であるから、商標権者の主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

【別記】
1 本件商標
本件商標は、「東京愉快ツリー」「とうきょうゆかいつりー」「トウキョウユカイツリー」「TOKYO-YUKAI-TREE」及び「Tokyo-Yukai-Tree」の文字を5段に表してなり、平成22年8月10日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年12月28日に登録査定、同23年2月18日に設定登録されたものである。
2 「東京スカイツリー」の著名性について
申立人提出の甲各号証及び職権調査によれば、「東京スカイツリー」は、申立人が事業主体となって東京都墨田区押上に建設中の高さ634メートルの電波塔の名称であること、及び、当該電波塔は、平成20年6月に該名称に決定後現在においても、自立式電波塔で世界一の高さになることなどから、テレビ、雑誌などのマスコミで多数取り上げられ、また、多数の観光客が訪れるなどしていますので、本件商標の出願の日前ないし現在まで、我が国において著名なものとなっていることが認められる(甲第3号証、職権調査((http://www.tokyo-skytree.jp/about/))ほか。)。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、上記1のとおり「東京愉快ツリー」「とうきょうゆかいつりー」などの文字からなり、その構成文字に相応して「トウキョウユカイツリー」の称呼を生じるものである。
そして、当該称呼「トウキョウユカイツリー」と上記2の著名な電波塔の名称「東京スカイツリー」の称呼「トウキョウスカイツリー」とは、10音構成中の中間音である第5音において、母音「u」を共通にする「ユ」と「ス」の差異を有するにすぎないものであるから、本件商標は、これに接する者が上記著名な「東京スカイツリー」を連想・想起することが少なくないものと判断するのが相当である。
また、本件商標は、既存の物や事象を表したもの、あるいは、特定の建造物などを表したものとはいえず、かつ、「東京スカイツリー」の著名性の程度からして、商標権者が本件商標の登録出願の時に「東京スカイツリー」の名称を知らなかったとは考えがたいものである。
さらに、商標権者が上記「東京スカイツリー」と何らかの関係を有しているとは認められない。
そうとすれば、本件商標は、「東京スカイツリー」が有する著名性及び集客力に便乗して、不当な利益を得ようとの目的をもって登録出願されたものと推認せざるをえず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当し、公の秩序又は善良の風俗に反するものといわざるをえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものといわなければならない。
別掲 別掲(本件商標)




異議決定日 2012-03-22 
出願番号 商願2010-65922(T2010-65922) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (X30)
最終処分 取消  
前審関与審査官 早川 真規子深田 彩紀子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
高野 和行
登録日 2011-02-18 
登録番号 商標登録第5391470号(T5391470) 
権利者 株式会社ギンビス
商標の称呼 トウキョウユカイツリー、トーキョーユカイツリー、トーキョーユカイ、ユカイツリー、ユカイ、ツリー 
代理人 山田 清治 
代理人 藁科 孝雄 
代理人 萼 経夫 
代理人 笠松 直紀 
代理人 藁科 孝雄 

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