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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X41
管理番号 1256593 
異議申立番号 異議2011-900279 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-08-05 
確定日 2012-04-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第5408900号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5408900号商標の指定役務中「第41類 ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5408900号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZOUK」の欧文字を横書きしてなり、平成22年3月17日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定役務として、同23年3月15日に登録査定、同年4月28日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第1号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)「ZOUK(ズーク)」とは、中米カリブ海地方を発祥とするダンス音楽の一種別を示す名称であり、本件商標の出願前から書籍等で広く紹介されている語である(甲第2号証及び甲第3号証)。
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、中米カリブ海の音楽を使用したダンスのインストラクターとして活動しており、本件商標の指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」を見ても「ZOUK」という語が中米カリブ海のダンス音楽である「ZOUK」を指していることは明白である。
(2)本件商標権者は「日本ZOUK協会」という団体名を名乗り活動を行っているが、特定少数によって構成された任意団体であり、日本におけるダンス音楽「ZOUK」の愛好家を代表するものではない。
ほかにも中米カリブ海の音楽「ZOUK」の名称を使用するダンス・インストラクター及び団体が存在しており、「ZOUK」の語だけで本件商標権者の役務と特定することが困難であり、また、出所表示機能も果たすことはできない。
(3)元来が中米カリブ海のダンス音楽を示す語であり、自他役務識別機能や出所表示機能も果たせないことから、本件商標「ZOUK」は普通名称と考えることができ、普通名称普通に用いられる方法で表示したにすぎないため、本件商標は商標法第3条第1項第1号に該当する。

3 本件商標の取消理由
商標権者に対して、平成23年12月2日付けで通知した本件商標の取消理由は、別掲のとおりである。

4 商標権者の意見
(1)本件商標は、音楽の名称ではなく、第41類の役務の名称として出願、登録されたものであり、さらに日本国内でZOUKという音楽は著名ではない。
(2)辞書はその性質上、意味を知らない語を調べるものであって、所有者はそれを調べる機会がなければ知り得ないのは事実であり、それに掲載されているということは「ZOUK」が調べなければわからない著名とはほど遠いことを意味する。また、出版物に掲載されていることを理由に取り消しをするのなら、商標登録第4138020号(登録日平成10年4月24日)の「ZOUK」が商標として認められていることは、特許庁の対応として問題があるとされるべきだが、過去の判断では商標として登録されていることからみて問題とされなかったと思われる。また申立人がこの事件について異議の申立てをしなかったことも事実である。
以上の理由から過去の判例は日本国内で法的な論拠となりうるため、本件商標は問題がないと特許庁長官の名において認められたのである。
(3)「ZOUK JAPAN」及び「ZOUK BELEZA」は登録第4138020号商標「ZOUK」がパーティーの企画等に関する商標でありながら無断で使用しているおそれがある。つまり、商標法に抵触する可能性のある行為をしている団体であり、それらの活動を論拠とすることは商標の是非を問う立場の者が行うべきではない。
(4)インターネットでのヒット件数は世界中の累計であり、日本国内の法律である商標の是非を問う論拠とはなりえない。
(5)CDに関しては、海外で製作された音楽に関する製品であり、日本国内で本件の役務が日本国内で著名なものとはみなしえない。
(6)以上の理由によって本件商標の登録は維持されるべきである。

5 当審の判断
(1)本件商標は、上記3の取消理由のとおり、これをその指定役務中「ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、該「ZOUK」の文字をその提供する役務が「ZOUK(ズーク)というダンス又は音楽の教授」であるという、役務の質(内容)を表示したものと認識するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定役務中「ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」についての登録は商標法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものといわなければならない。
また、上記指定役務以外の指定役務については、商標法第3条第1項第3号及び同第1号に違反して登録されたものと認めるに足りる証拠は見いだせないし、他に取り消すべき理由があるものとも認められない。
(2)取消理由に対する商標権者の意見について
ア 商標権者は、日本では「ZOUK」という音楽及び「ZOUK」の語の意味は知られていないこと、パーティーの企画等について「ZOUK」が商標登録されていること、申立人は該商標登録に対して異議を申立てていないこと等を理由として、本件商標の登録は維持されるべきである旨主張している。
しかしながら、商標権者が挙げた商標登録は、その商標の態様に特徴を有するものであるばかりでなく本件商標とは異なる指定役務についてのものであるし、もとより、登録商標が登録異議の申立て理由に該当するか否かの判断は、査定時における取引の実情を勘案し、その指定役務の取引者・需要者の認識を基準に個別具体的に判断されるべきものであり、上記3の取消理由に記載の実情からすれば、上述のとおり判断するのが相当であるから、商標権者の主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、その指定役務中「ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」については、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわなければならないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
また、その余の指定役務については、取り消すべき理由があるものとは認められないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 申立人の提出に係る証拠及び当審における職権調査によれば、「ZOUK」「zouk」及び「ズーク」の文字(語)について、次の記載が認められる。
(1)「小学館ランダムハウス英和大辞典<特装版>」(2002年1月10日 第2版第5刷 株式会社小学館発行)には、「zouk」の項があり、そこに「ズーク:マルチニーク諸島で1980年代初めに生まれた,シンセサイザーを使うダンス音楽.」の記載がある。
(2)「研究社 新英和大辞典」(第6版第1刷 2002年3月 株式会社研究社発行)には、「zouk」の項があり、そこに「ズーク((西インド諸島に発したビートの強い曲))」の記載がある。
(3)「大辞林 第三版」(2006年10月27日 第1刷 株式会社三省堂発行)には、「ズーク〔zouk〕」の項があり、そこに「《音》西インド諸島で一九七〇年代末に生まれたディスコ-サウンド。」の記載がある。
(4)「カリブの音楽とダンス」(登録異議申立人提出の甲第2号証。1996年(平成8年)1月25日 株式会社勁草書房発行)の221ページには、「ズークという音楽」の見出し下に「これこそ『アフロ=カリブの軽音楽』という表現がふさわしいこのスタイルは、民族音楽そのものから生まれてきたものである。」、224ページには、「新しいズーク」の見出し下に「アフロ=カリブの複数のリズムの融合体であるこの音楽は、ズークという、純粋な伝統を持つ仮名を保ってきた。新しいズークは次のように定義される。1.アンティーユ民族音楽の伝統的リズムである。2.アフリカ(東部アフリカ)のリズムを持つ。3.ジャズ=ロックのリズムを持つ。」などの記載があり、225ページには新しいズークを代表するグループのメンバーの写真が掲載されている。
(5)「danceGate.com」と称するウェブページ(http://www.dancegate.com/)には、「ダンスから探す」の項があり、そこには「サルサ」「タップダンス」などとともに「ズーク」の記載があり、「ズーク」をクリックすると「ズークとは」として「・・・エレガントで、力強く激しいランバーダから進化した踊りは、踊り自体をZOUK(ズーク)と呼ぶようになったことがズークの発端といわれています。」の記載がある(http://www.dancegate.com/20_%E3%82%BA%E3%83%BC%E3%82%AF.html)。
また、「Zouk Japanの過去のイベント」として、2011年(平成23年)2月6日ないし2010年(平成22年)3月10日に、「ZOUK王国 in SALUD!」「第2回 ZOUK LADY’S STYLEワークショップ」などと称する10回のイベントが紹介されている(http://www.dancegate.com/fellow/204/eventhistory/)。
(6)「OCNCafe」の「ZOUK BELEZA」のホームページ(http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/zoukbeleza)には、「レッスン&パーティ日程」の項があり、そこには2007年(平成19年)8月から2011年(平成23年)12月までの毎月の日程が記載され、2007年8月には、「8/21(火)19:30?21:30 ZOUK」の記載(http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/zoukbeleza/diary/200708)、2008年1月には「ズーク&ガフィエラダンスパーティ」の紹介のほか「2008年2月グループレッスン&パーティ」として「2/5(火)19:30?21:30 ZOUK」「2/19(火)19:30?21:30 ZOUK」及び「2008年1月グループレッスン」として「1/8(火)19:30?21:30 ZOUK」「1/22(火)19:30?21:30 ZOUK」の記載(http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/zoukbeleza/diary/200801)、2011年1月には「ズーク&ガフィエラダンスパーティ」の紹介のほか2011年2月グループレッスン」として「2/1(火)20:00?22:00 ZOUK」「2/15(火)20:00?22:00 ZOUK」及び「2011年1月グループレッスン」として「1/18(火)20:00?22:00 ZOUK」の記載(http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/zoukbeleza/diary/201101)があるなど、毎月のZOUKのレッスンが記載されている。
(7)「Hatena::Diary」と称するブログに「2010-04-09 ZOUK ズーク CD FRENCH CARIBBEAN」の見出しのもと「最近入荷したズークのCDです!」の記載と共に CDの紹介や価格などが記載されている(http://d.hatena.ne.jp/estacio_pick/20100409)。
(8)インターネットの検索サイトGoogleで「ZOUK CD」をキーワードとして画像検索すると、約51.5万件ヒットし、ZOUKの音楽CDが多数表示される(http://www.google.com/search?tbm=isch&hl=ja&source=hp&q=%EF%BC%BA%EF%BC%AF%EF%BC%B5%EF%BC%AB%E3%80%80%EF%BC%A3%EF%BC%A4&btnG=%E7%94%BB%E5%83%8F%E6%A4%9C%E7%B4%A2&gbv=2&oq=%EF%BC%BA%EF%BC%AF%EF%BC%B5%EF%BC%AB%E3%80%80%EF%BC%A3%EF%BC%A4&aq=f&aqi=&aql=&gs_sm=s&gs_upl=8969l13625l0l16438l9l9l1l0l0l0l203l1046l4.1.3l8l0)。
2 上記1からすれば、本件商標の登録査定時において、「ZOUK」の文字(語)は、西インド諸島に発したダンス音楽の一つを意味する語として、また、該音楽に合わせて踊るダンスを指称するものとして、音楽やダンスに係る商品や役務の取引者やこの種の音楽やダンスに関心を有する需要者の間に相当程度知られているものと判断するのが相当である。
しかしながら、この種の音楽やダンスは個性の強いものであり、これらに関心を有する需要者は限られているとみるのが自然ですから、音楽やダンス全般に係る商品や役務の需要者の多くが上述の「ZOUK」の意味などを認識しているものということはできない。
そして、ダンスとしての「ZOUK」を教授する教室や音楽としての「ZOUK」のCDも存在している。
そうとすれば、「ZOUK」の文字からなる本件商標は、これをその指定役務中「ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、該「ZOUK」の文字をその提供する役務が「ZOUK(ズーク)というダンス又は音楽の教授」であるという、役務の質(内容)を表示したものと認識するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定役務中「ズークに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」については商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものである。



異議決定日 2012-03-15 
出願番号 商願2010-25528(T2010-25528) 
審決分類 T 1 651・ 13- ZC (X41)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 海老名 友子新井 音哉 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 瀧本 佐代子
小畑 恵一
登録日 2011-04-28 
登録番号 商標登録第5408900号(T5408900) 
権利者 上野 直
商標の称呼 ズーク、ゾーク 

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