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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X09
管理番号 1256520 
審判番号 取消2011-300475 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-05-20 
確定日 2012-05-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第2266334号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 1 登録第2266334号商標の指定商品中、第9類「電気通信機械器具」については、その登録は取り消す。2 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2266334号商標(以下「本件商標」という。)は、「EXPRESS」の欧文字を横書きしてなり、昭和62年10月21日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年9月21日に設定登録、その後、二回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同22年9月1日に指定商品を第9類「電気通信機械器具」を含む第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がなされたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年6月9日にされたものである。

2 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論1と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証(本件商標権の商標登録原簿の写し)を提出した。
請求人の独自調査によれば、本件商標は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の何れによっても、第9類の指定商品中の「電気通信機械器具」について、継続して3年以上日本国内において使用されていないことは明らかであり、その不使用について正当な理由も存在しないため、商標法第50条の規定によって取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、本件審判請求の予告登録前3年以内(平成20年6月9日から同23年6月8日まで。以下「要証期間」という。)に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品について登録商標の使用をしているものである。
(2)乙各号証について
乙第1号証の1ないし6は、日本電気株式会社の提供にかかる種々のサーバに関する2009年7月現在ないし2011年6月現在の商品カタログである。
乙第2号証は、日本電気株式会社の提供にかかる「シンクライアント ラインナップガイド」についての2011年4月現在における商品カタログである。
(3)本件商標の使用について
被請求人は、日本電気株式会社に対して、本件商標と社会通念上同一性のある乙第1号証に表示されている商標の使用許諾をしており、日本電気株式会社は、本件商標の正当な権原を有する使用権者である。
ところで、不使用取消審判においては、東京高等裁判所昭和57年(行ケ)第67号で商品の二面性が認められ、その後も、東京高等裁判所平成12年(行ケ)第447号において、更には、本件審判請求事件と同様の第9類における審判事件である取消2009-300438号(乙第3号証)において商品の二面性が認められている。
このように、不使用取消に関する判決例及び審決例、特に、乙第3号証の審決例で、第9類の「電気通信機械器具」に属すると共に「電子応用機械器具及びその部品」にも属する商品の存在が認められたことから、「電子応用機械器具」に属する商品についての登録商標の使用を許諾している場合であっても、その使用商品が「電気通信機械器具」にも属する商品である場合には、使用権者によるかかる商品についての登録商標の使用は正当な権原に基づく使用で有るというべきである。
(4)本件使用商品について
「商標実務者のための概説類似群コード」によると、本件請求に係る指定商品である「電気通信機械器具」は、「電気の作用をその機械器具の機能の本質的な要素にしている『通信機械器具』の大部分が含まれる。また、電子の作用を応用した『電気通信機械器具』もこの概念に属し、本類(09類)の『電子応用機械器具及びその部品』(11C01)には含まれず、この概念に属する。」とされており(乙第4号証の1)、「電子応用機械器具及びその部品」については、「この概念には、電子の作用を応用したもので、その機械器具の機能の本質的な要素としているものだけが含まれる。ただし、『電気通信機械器具』は、何らかの形で電子の作用を応用しているものも多いが、電気通信機械器具という概念がある以上、電子応用機械器具には含まれない。」(乙第4号証の2)とされている。
そこで、本件商標が使用されている乙第1号証の1ないし6のいわゆる「サーバ」につき検討するに、「サーバ」は、電子の作用を応用したものを本質的な要素としてはいるが、「サーバ」で提供される「データ処理」、「webメール処理」等は、電子の作用を応用しているものということができることから、「サーバ」は、「電気通信機械器具」の概念にも含まれる商品であるといえる。
次に、乙第2号証の「シンクライアント」については、「社外から安全な通信を行えるVPN対応をはじめ、動画高速化や無線LANといった多彩な機能を搭載」、「無線LAN対応」といった機能を有していることが説明されており、かかる機能は、「通信機能」という点で、更には、「電子の作用を応用している」という点からも、「シンクライアント」は、「電気通信機械器具」の概念にも含まれる商品であるといえる。
(5)以上によれば、本件商標は、要証期間内に、日本国内において使用権者がその請求に係る指定商品について登録商標の使用をしていたことは明らかである。
したがって、本件商標登録が取り消されるべき理由はないものである。

4 当審の判断
被請求人は、日本電気株式会社に対して本件商標についての使用許諾を与えており、日本電気株式会社は、要証期間内に、取消請求に係る「電気通信機械器具」の概念にも含まれる「サーバ」及び「シンクライアント」に、本件商標を使用していた旨主張している。
(1)そこで、被請求人の提出に係る乙各号証をみるに、乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第1号証の1は、日本電気株式会社の「アプライアンスサーバ InterSec/Express5800/MW300g、MW500g」の商品カタログ(カタログに記載の内容は2009年7月現在のもの)であり、同号証の2は、同社の「アプライアンスサーバ InterSec/Express5800/MW400g」の商品カタログ(カタログに記載の内容は2010年4月現在のもの)である。乙第1号証の1及び同号証の2には、「Webメールオプション WEBMAIL-Xが新登場!/企業のメール環境が変わる!エンタープライズWebメール!/Webメールは使い勝手が悪い! そんなことを思ってはいませんか?/WEBMAIL-Xでは軽快な操作性だけでなく、セキュリティや利便性も向上します!」と記載されており、WEBMAIL-Xの機能一覧やラインナップ等が記載されている。
イ 乙第1号証の3は、同社の「アプライアンスサーバ/Express5800/InterSec」の商品カタログ(カタログに記載の内容は2011年1月現在のもの)であり、「柔軟&迅速なネットワーク強化、運用管理の効率化を可能にするアプライアンスサーバ」の表題のもとに、「ネットワーク構築で必要となる各用途(ウィルスチェック、プロキシ/Webフィルタリング、メール/DNS・DHCP、ロードバランサ、不正接続防止)に応じて、最適なソフトウェアをプリインストール。導入?運用まで管理者負担の少ない即戦力サーバとして、効率的なネットワーク強化と投資対効果、さらにはコンプライアンス強化に大きく寄与します。」等の説明が記載されており、製品概要の欄には、「メール/DNS・DHCP」については「高度なセキュリティ設定を実現したメール環境を提供」とあり、「プロキシ/Webフィルタリング」については「Web閲覧のレスポンス&セキュリティ向上を実現」とあり、「ロードバランサ」については「Webサーバなどへのアクセスを効果的に分散制御」等の説明が記載されている。
ウ 乙第1号証の4は、同社の「Express5800/スケーラブルHAサーバ」の商品カタログ(カタログに記載の内容は2011年5月現在のもの)であり、「メインフレームの設計思想を継承した信頼性と拡張性。/クラウド活用の基盤にふさわしい高い性能を提供します。」の表題のもとに、「パブリックとプライベート、適所適材による両クラウドの併用がこれからの企業情報システムの主流へ」、「『プライベートクラウド』によって信頼性の確保とともに、サーバ導入コストや運用コストを効果的に削減」、「『高い可用性』『ECO』『柔軟なリソース』/プライベートクラウドの必須要件を網羅したプレミアムサーバ」等の項目毎に説明が記載されており、「高い可用性を実現するために」として「『MACリカバリ』など耐メモリ障害性の高い最新鋭CPUを採用」、「監視/管理の効率化を支援する『EXPRESSSCOPEエンジンSP2』」、「高可用Linuxプラットフォームの構築を強力にサポート」等と記載されており、その構成や仕様などがスペック一覧として掲載されている。
エ 乙第1号証の5は、同社の「データセンタ向け省電カサーバ/Express5800/ECO CENTER」の商品カタログ(カタログに記載の内容は2011年6月現在のもの)であり、「クラウド時代に求められるプラットフォーム『REAL IT PLATFORM G2』」の表題のもとに、「基幹システムの稼働率に対する安定稼動への要求、IT構造(アーキテクチャー)の設計、構築の容易化への答えとして、NECでは、「REAL IT PLATFORM G2」を提唱し、クラウド・コンピューティングを支える次世代IT基盤となる最適な製品・サービスをご提供いたします。」と記載されている。
オ 乙第1号証の6は、同社の「SOHO/小規模オフィス向けサーバ/Express5800/Gモデル」の商品カタログ(カタログに記載の内容は2011年6月現在のもの)であり、「高信頼性とコストパフォーマンスを両立したエントリサーバ。」と記載されており、その構成や仕様などがスペック一覧として掲載されている。
カ 乙第2号証は、同社の「シンクライアント ラインナップガイド」(カタログに記載の内容は2011年4月現在のもの)であり、「ワークスタイルの変革による業務の効率化。NECの提供するシンクライアントシステム」の表題のもとに、「企業成長の鍵となりつつある『セキュリティ対策』と『TCO削減』というテーマ。それらを包括した施策として注目を集めるのがシンクライアントシステムです。これまでPC単位で分散管理していたデータ、アプリケーションをサーバに集約。クライアント側ではデータを持たないため情報漏えいリスクを回避でき、端末環境を一元管理することで、運用コスト削減を可能にします。NECのシンクライアントシステムが、お客様の業務効率化の飛躍に貢献します。」と記載されており、ラインナップとして各種のコンピュータ機器が掲載されている。
キ なお、乙第1号証の1ないし6及び乙第2号証には、いずれにも、被請求人が主張しているところの「サーバ」あるいはクライアント側の各種のコンピュータ機器と認められる機器の写真が掲載されている。
(2)上記において認定した事実によれば、乙第1号証の1ないし6に掲載されている機器には、「アプライアンスサーバ」、「スケーラブルHAサーバ」、「データセンタ向け省電力サーバ」、「SOHO/小規模オフィス向けサーバ」等の商品名が記載されていること、及び、その商品説明からみれば、乙第1号各証に掲載されている機器は、「サーバコンピュータ」そのものと認められるものである。また、乙第2号証に記載されている「シンクライアント」とは、「企業の情報システム等において、社員が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するシステムの総称」であり、乙第2号証において紹介されている機器も各種のコンピュータ機器そのものと認められるものである。そして、「サーバ(コンピュータ)」とは、「ネットワークで繋がったコンピュータ上で他のコンピュータにファイルやデータ等を提供するコンピュータ」を指称するものであって、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものであり、また、クライアントが使用する各種のコンピュータも、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものであるから、いずれも「電子応用機械器具」の範疇に属する商品であるといわなければならない。
この点について、被請求人は、「サーバ」で提供されるデータ処理やwebメール処理等といった機能、あるいは、「シンクライアント」における動画高速化や無線LANといった機能は、通信機能という点で、更には、電子の作用を応用しているものであることから、商品の二面性の観点からみれば、「サーバ」及び「シンクライアント」は、「電気通信機械器具」の概念にも含まれるものである旨主張している。
しかしながら、上記したとおり、「サーバ」とは「ネットワークで繋がったコンピュータ上で他のコンピュータにファイルやデータ等を提供するコンピュータ」であり、メールを管理したり送受信したりするメールサーバー機能やWebコンテンツを送信するWebサーバー機能、映像や音声を配信する動画配信サーバー機能等々の機能は、サーバコンピュータが備えている本質的な機能の一つというべきものである。
なお、被請求人は、商品の二面性についての審判決例の中でも、特に乙第3号証の審決例(取消審判2009-300438号)を強調しているが、該審決は、具体的な取引の実情を踏まえたうえで、商品の二面性を認めたものである。
そうとすれば、被請求人が主張しているように、データ処理やWebメール処理、無線LAN等が電子の作用を応用しているものであって、「通信機能」という要素があったとしても、被請求人は、乙各号証において使用されている「サーバ(コンピュータ)」や「クライアント側の使用に係るコンピュータ」が、「電気通信機械器具」の範疇にも属する商品として取引に供されているとする具体的な証拠を何ら提出しておらず、単に、コンピュータ機器における機能の一側面のみを捉えて、「サーバ」及び「シンクライアント」を「電気通信機械器具」の範疇にも属する商品である旨主張しているにすぎないから、この点についての被請求人の主張に合理的な理由は認められず、被請求人の主張を採用することはできない。
(3)してみれば、乙第1号証の1ないし6及び乙第2号証の各カタログは、いずれも、本件審判についての要証期間内のものであり、該カタログには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表示されており、また、日本電気株式会社が本商標権についての通常使用権者であるとしても、乙各号証をもってしては、本件審判についての要証期間において、日本電気株式会社が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消請求に係る第9類の「電気通信機械器具」について使用をしていた事実は、明らかにされていないものといわなければならない。
その他、本件商標が、取消請求に係る指定商品について使用されていた事実を認めるに足る証拠は提出されていない。
なお、当合議体は、被請求人に対し、「被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、取消請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていた事実は認められない。したがって、本件商標を上記商品に使用していたのであれば、提出された書類等を補完する証拠を提出されたい。あるいは、上記商品以外の取消請求に係る指定商品に属する商品に使用していたのであれば、その使用を適切に証明できる証拠を提出されたい。 」旨の審尋をしたが、被請求人は、何ら回答をしていない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、取消請求に係る指定商品である、第9類の指定商品中の「電気通信機械器具」について、本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、請求に係る、第9類の指定商品中の「電気通信機械器具」について取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-03-01 
結審通知日 2012-03-05 
審決日 2012-03-23 
出願番号 商願昭62-118844 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森吉 正美 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 1990-09-21 
登録番号 商標登録第2266334号(T2266334) 
商標の称呼 エクスプレス 
代理人 工藤 莞司 
代理人 黒川 朋也 
代理人 小暮 君平 
代理人 浜田 廣士 
代理人 矢口 太郎 
代理人 長谷川 芳樹 

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