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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2011890082 審決 商標
無効2011890110 審決 商標
無効2011890049 審決 商標
無効2012890081 審決 商標
無効2011890064 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X12
管理番号 1255328 
異議申立番号 異議2011-900234 
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-06-21 
確定日 2012-03-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第5402489号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5402489号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5402489号商標(以下「本件商標」という。)は、「サイレン」の片仮名と「SAILUN」の欧文字とを2段に書してなり、平成22年7月26日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、同23年2月1日に登録査定、同年4月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当するとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、他人である中国の国営タイヤメーカー「Sailun.Co.Ltd」(以下「Sailun社」という。)の業務に係るタイヤなどの商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されている商標「SAILUN」と類似する商標であって、その商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、他人であるSailun社の業務に係るタイヤなどの商品を表示するものとして日本国内又は外国における取引者・需要者の間に広く認識されている商標「SAILUN」と類似する商標あって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

3 本件商標の取消理由
商標権者に対して、平成23年11月7日付けで通知した本件商標の取消理由は、別記のとおりである。

4 商標権者の意見
ア 標章「SAILUN」の周知性について
(ア)標章「SAILUN」は中国において「馳名商標」として公表されているものの、「馳名商標」として公表された商標は中国では馳名であるかも知れないが、日本ではほとんど認知されていない商標である。また、「馳名商標」の認定を受けようとする者が、ある程度の証拠(乙第5号証)を用意すれば登録される場合もあり得るので、「馳名商標」として公表された商標の周知のレベルが、商標法第4条第1項第19号にいう「周知」よりも低い場合も「馳名商標」として登録される可能性がある。
そして、Sailun社は、2008年(平成20年)の世界タイヤ売上ランキング54位の会社で、中国でも14位の会社にランキングされ、売上額も中国1位の会社の約1/10程度の会社であり、さらに、他のタイヤ業界の売上額や売上ランキング(甲第11号証、乙第1号証ないし乙第4号証)からすれば、標章「SAILUN」は中国において周知であるというより、むしろ、中国において周知性がないといえる。
他に本件商標の登録出願の日前から標章「SAILUN」が中国において周知であることを証する資料はない。
(イ)日本国の商標権に関する判断主体は、あくまでも、日本国の特許庁又は裁判所であり、中国の国家工商行政管理総局商標局や商標評審委員会又は人民法院によって「馳名商標」として認定されたことが商標法第4条第1項第19号周知性を具備するということにはならない。そして、そのように解釈しなければ、中国で「馳名商標」として公表された商標及びそれに類似する商標は、日本国において商標登録を受けなくとも、事実上、第三者による登録及び使用を禁止できることになり、商標登録を受けることによって初めて商標の使用が法的に保護されるという日本国の商標制度を根本から否定し兼ねない。
(ウ)したがって、標章「SAILUN」は、商標法第4条第1項第19号号にいう周知性を具備しているものとはいえず、「馳名商標」であることのみをもって、同号の「日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標」ということは誤りである。
不正の目的について
標章「SAILUN」が中国で馳名商標として登録されていたとしても、直ちに、標章「SAILUN」がタイヤについて中国で周知であって、商標権者が不正の目的をもって商標を使用するとするのは短絡しすぎである。
商標権者は、平成23年6月頃には、台湾、韓国及び中国などの自動車用タイヤの輸入販売を行っていることは事実であるが、「SAILUN」の商標を付したタイヤの販売はしていない。「WANLI」、「INNOVA」などの商標を付したタイヤの販売はしているが、いずれも「中国製」であることを明記し正当にこれらの商標を扱っている。
したがって、商標権者は不正競争の意志があるとはいえない。
また、Sailun社は、「SAILUN」という商標を、中国に2003年(平成15年)1月及び2008年(平成20年)5月に出願し、2009年(平成21年)に米国、チリ、ペルーなどに出願したように、日本にも出願すれば登録の可能性があったにもかかわらず、申立人が標章「SAILUN」が馳名商標として公表されていることを持ち出し、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当すると主張することは、申立人は同号を利用して正当に出願された本件商標の登録を妨害しているように解される。
そして、我が国は原則先願主義の制度を採用しているのに加え、不正の使用意志もない本件商標が、同号に該当するとの判断には到底納得できない。
ウ まとめ
以上述べたように、標章「SAILUN」が商標法第4条第1項第19号周知性を具備していないのは明らかであり、標章「SAILUN」と本件商標とは少なくとも同一ではない上、商標権者は決して不正の目的をもって使用するものとして本件商標を出願したものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。

5 当審の判断
(1)本件商標について通知した上記3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、Sailun社の業務に係る商品「自動車用タイヤ」を表示するものとして外国(中国)における需要者の間に広く認識されている商標「SAILUN」と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものといわなければならない。
(2)取消理由に対する商標権者の意見について
ア 標章「SAILUN」の周知性について
商標権者は、「標章『SAILUN』は、中国で『馳名商標』として公表されているが、日本ではほとんど認知されていない商標であり、Sailun社や他のタイヤ業界の売上額や売上ランキングからすれば、中国においても周知性がないといえる。また、我が国の商標権に関する判断主体は、我が国の特許庁などであり、中国の国家工商行政管理総局商標局などによって『馳名商標』として認定されたことをもって商標法第4条第1項第19号周知性を具備するということにはならず、そのように解釈しなければ、商標登録を受けることによって初めて商標の使用が法的に保護されるという我が国の商標制度を根本から否定し兼ねない。したがって、標章『SAILUN』は、『馳名商標』であることのみをもって、商標法第4条第1項第19号にいう周知性のレベルを具備しているものとはいえない。」旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第19号にいう周知性は、同号が「・・・日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている・・・」としていることから、我が国における周知性がなくとも外国において周知性があれば足りると解すべきであり、また、外国における周知性は、当該国の面積、人口、経済規模などによって様々であることから、当該国の事情を十分に考慮すべきである。
そして、標章「SAILUN」が中国で2010年(平成22年)1月に「馳名商標」として公表されている事実があること、加えて、Sailun社が2008年(平成20年)の世界タイヤ売上ランキングで54位であり中国で14位であることからすれば、標章「SAILUN」は本件商標の登録出願の日前から中国における需要者の間に広く認識されている商標であると判断して差し支えない。
不正の目的について
また、商標権者は、「標章『SAILUN』が、中国で馳名商標として登録されていたとしても、直ちに、タイヤについて中国で周知であって、商標権者が不正の目的をもって使用するとするのは短絡しすぎである。商標権者は、『SAILUN』の商標を付したタイヤの販売はしておらず、他の中国の製品については「中国製」であることを明記し自動車用タイヤの輸入販売を正当に行っている。したがって、商標権者は不正競争の意志があるとはいえない。また、Sailun社は商標『SAILUN』を中国には平成15年に、同21年には米国などに出願しており、日本にも出願することができたにもかかわらず、申立人が標章『SAILUN』が馳名商標として公表されていることを持ち出し本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当すると主張することは、かえって正当に出願された本件商標の登録を妨害しているように解される。」旨主張している。
しかしながら、不正の目的については、標章「SAILUN」の周知性ばかりでなく、本件商標と標章「SAILUN」との類似性、両者が偶然一致する可能性、本件商標の指定商品及び商標権者の業務などを総合して判断したものである。
ウ したがって、商標権者の上記主張はいずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

【別記】
1 本件商標
本件商標は、「サイレン」の片仮名と「SAILUN」の欧文字とを2段に書してなり、平成22年7月26日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、同23年2月1日に登録査定、同年4月1日に設定登録されたものである。
2 標章「SAILUN」の周知・著名性について
(1)登録異議申立人提出の甲各号証及び職権調査によれば、標章「SAILUN」が、中国において2010年(平成22年)1月15日に「賽輪股○有限公司」(○はにんべんに「分」の文字)が自動車用タイヤに使用する「馳名商標」として公表されたこと(甲第12号証)、及び本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、輸入タイヤ・ホイールの販売を事業内容とする、昭和44年に設立された法人であって、平成23年6月頃には台湾、韓国及び中国などの商品(自動車用タイヤ)の輸入販売を行っていること(甲第3号証ないし甲第5号証)が認められる。
(2)そして、上記「馳名商標」とは、中国において関連公衆に広く認知され、高い名声を有する商標をいい、中国国家工商行政管理総局商標局及び商標評審委員会が認定等行うこととされており、「馳名商標」として認定された商標は中国国内における需要者の間に広く認識されている商標といえる(日本貿易振興機構北京事務所知的財産権部のウェブページ参照、http://www.jetro-pkip.org/html/zt_2_page_1.html http://www.jetro-pkip.org/upload_file/2007033056540721.pdf)。
(3)本件商標の登録査定の日後であるが、我が国において「SAILUN」の自動車タイヤは、「サイレン」又は「サイラン」と表され、また、称呼され取引されていると認められる(甲第19号証ないし甲第25号証)。
3 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、上記1のとおり「サイレン」と「SAILUN」の文字からなるものであり、該文字に相応し「サイレン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、本件商標の構成中「SAILUN」の文字は上記2の中国における需要者の間に広く認識されている商標「SAILUN」(以下「引用商標」という。)と同一の綴りであり、「サイレン」の文字は我が国における該「SAILUN」の仮名表記あるいは呼び名と認められるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観において「SAILUN」の構成文字を、称呼において「サイレン」の称呼を共通にするものであり、観念において比較することができず明確に区別できないものであるから、両者の外観、称呼及び観念を総合してみれば、両者は相紛らわしい類似の商標というべきものである。
そして、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品とは同一、類似又は密接な関連性を有する商品であること、本件商標権者が昭和44年頃から現在まで継続して輸入タイヤの販売を行っていると推認できること、引用商標が中国で「馳名商標」として公表されたのは本件商標の登録出願の日前であること、及び「SAILUN」の文字(語)が既成語でなく本件商標と引用商標との文字構成が偶然一致したものとは考え難いことをあわせみれば、本件商標権者は、引用商標の存在を知ったうえで、引用商標が我が国で商標登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、国内代理店契約を強制したりするなどの不正の目的をもって使用するものといわざるを得ないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものといわなければならない。
異議決定日 2012-02-09 
出願番号 商願2010-58611(T2010-58611) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (X12)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
高野 和行
登録日 2011-04-01 
登録番号 商標登録第5402489号(T5402489) 
権利者 株式会社オートウェイ
商標の称呼 サイレン、サイルン、サイラン 
代理人 中前 富士男 

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