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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 X09
審判 一部申立て  登録を維持 X09
審判 一部申立て  登録を維持 X09
審判 一部申立て  登録を維持 X09
審判 一部申立て  登録を維持 X09
審判 一部申立て  登録を維持 X09
管理番号 1255326 
異議申立番号 異議2011-900438 
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-12-07 
確定日 2012-04-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5438137号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5438137号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
登録第5438137号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成23年2月14日に登録出願、第9類「太陽光発電装置,太陽電池による発電装置,太陽電池モジュールによる発電装置,太陽電池パネル,太陽電池モジュール」のほか、第6類、第16類、第30類、第32類、第33類、第35類及び第37類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月15日に登録査定、同年9月9日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、次の商標を引用して、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきものである旨主張し、その理由として要旨、次のように主張するとともに証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
(1)引用商標
申立人が引用する登録第580382号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和33年10月16日に商標登録出願、第69類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同36年9月15日に設定登録され、その後、同56年9月30日、平成4年1月29日、同13年7月31日及び同23年9月13日の4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、指定商品については、同14年7月31日に第9類「蓄電池」とする書換の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(2)理由の要旨
ア 商標法4条第1項第11号について
(ア)指定商品の類否
本件商標の指定商品である「太陽光発電装置,太陽電池による発電装置,太陽電池モジュールによる発電装置,太陽電池パネル,太陽電池モジュール」と引用商標の指定商品である「蓄電池」とは、ともに類似群コード「09G04」に属する商品であって、相互に類似することは明らかである。
(イ)商標の類否
a 外観の対比
本件商標は商標の構成要素としては、「SG」の欧文字部分と、緑色のアメーバ状の図形部分と青色、緑色並びに橙色の3本線からなる図形部分とがある(甲1)。この内、図形部分はその模様又は色彩に斬新性や審美性は乏しく、どちらかといえばありふれた線図・模様であるということができる。また、これらの図形は最も目立つ文字要素「SG」の背景又は下方に配置されており、特段に需要者・取引者の注意を惹くとは言えない。よって、本件商標の中で強く需要者の注意を惹く部分は欧文字部分の「SG」であるといえる。
引用商標は、その外観は「GS」の欧文字のみである。
これらの欧文字「SG」と「GS」とを対比した場合、相違点は欧文字「S」と「G」との順序の先後の違いのみである。この点、「S」と「G」の欧文字の外観は、いずれも半円状の曲線が文字の上部と下部にあって、全体として丸みを帯びており、その視覚的印象を共通にする。
これらの外観において共通の印象を与える英文字「S」と「G」とが、それぞれ先後に配された「SG」と「GS」とは外観上、ともに2つの丸みを帯びた欧文字2文字が結合したものという、やはり共通の視覚的印象を醸し出しており、相互に相紛らわしい商標であるといえる。
一般的に需要者等は、広告・看板に使用された商標又は商品に付された商標等の外観を頼りに、いずれのブランドであるかを視認、識別し、商品又は取引者を選別する。とすれば、外観上の相違点が、同様の印象を与える「S」と「G」とが結合したものであって、視覚的に共通の印象を与えるそれぞれの商標を付した商品は、外観上、取引者・需要者が混同を生じるほどに相紛らわしいというべきであり、迅速が要求される取引においては、この程度の差異は容易に看過されやすく、混同が生じやすいというべきである。
b 称呼の対比
本件商標における需要者の注意を強く惹く部分である欧文字「SG」の語は、第19番目のアルファベット「S」(エス)と第7番目のアルファベットである「G」(ジー)との結合である。
引用商標である欧文字「GS」の語は、第7番目のアルファベット「G」(ジー)と第19番目のアルファベットである「S」(エス)との結合である。
本件商標から生じる称呼と、引用商標から生じる称呼とは、いずれもきわめて短い音によりなる。そして、その相違点は「エス」と「ジー」との順序の先後のみである。
上述のような「SG」と「GS」との外観上の紛らわしさと、後述する引用商標の著名性とあいまって、称呼上においても、時と所を異にして聴別した場合に、取引者・需要者が混同を生じるほどに相紛らわしいというべきであり、また、迅速が要求される取引においては、やはり混同が生じやすいというべきである。
以上より、本件商標と引用商標は称呼上、相互に類似する。
c 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標に外観上及び称呼上類似する商標であり、その指定商品も類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、商標法第43条の2第1号に基づき、その登録は取り消されるべきである。
イ 商標法第4条第1項第10号について
(ア)本件商標と引用商標とが類似関係にあり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが類似関係にあることは先に述べたとおりである。
(イ)「GS」の著名性
申立人は創業110年以上の長い歴史をもち、大正年間より現在まで一貫して「GS」を蓄電池又は電池関係製品について使用している。現在でも業界トップクラスの電池関係製品の売上高、及び事業規模を誇る。申立人に係る「GS」は、少なくとも本願の出願時である平成23年2月14日時点で、蓄電池の業界はもとよりこれらに関連のある商品の業界において、申立人の企業グループを指称する商標として、日本を含む世界各国で著名性を獲得していたものである。
以下において、かかる著名性を主張する根拠を示す。
a 「GS」の歴史
(a)申立人は、1895年創業の日本電池株式会社と株式会社ユアサコーポレーションとが2004年に経営統合した事業グループの純粋持ち株会社である。資本金330億円、連結売上高2,472億円(2010年3月期)、連結純資産1,118億円(2010年3月期)、連結総資産2,368億円(2010年3月期)、従業員数12,235人(2010年3月時点)であって、東京証券取引所第1部及び大阪証券取引所第1部のそれぞれに株式上場している(甲3)。
(b)日本電池の創業者は、1908年(明治41年)に蓄電池商品のカタログ作成を始めたのを機会に、自社の蓄電池商品の商標を自身の氏名(Genzo Shimadzu)のイニシャルである「GS」に改め、大正2年に商標登録している(甲5)。これ以降、ユアサコーポレーションとの経営統合までは日本電池のハウスマーク及び商品商標として「GS」を継続して使用し、経営統合以降も商品には引き続き「GS」を使用するとともに、申立人のハウスマークである「GS YUASA」の前部分に、「GS」を使用して(甲6)現在に至っている(甲4)。
(c)申立人の扱う電池関係商品は、主に産業用及び自動車用電池である鉛電池やアルカリ電池を始め多用途・多種類の電池関係商品に及ぶ。現在では電気自動車用のリチウムイオン電池や、学校・公共施設・一般家庭用の太陽光発電装置も取り扱う(甲7)。
(d)申立人は、1970年代初めより太陽光発電、太陽電池の研究を開始し、以降、数々の太陽光発電システムを納入している(甲8)。
(e)申立人の創生期の電池にも商標「GS」が付され、申立人の電池関係製品における技術・品質などは、社外からも高く評価されている(甲9)。
b 申立人の事業
(a)申立人の直近3期の連結売上高は272,514百万円(2011年3月期)、247,225百万円(2010年3月期)、283,421百万円(2009年3月期)である。申立人は、世界各国で蓄電池関係製品を製造・販売し、自動二輪車用蓄電池では世界シェア1位、アジア地区では自動車用蓄電池でもシェア1位である。申立人に係る「GS」は、そのハウスマークとして、日本を含めた世界で著名性を獲得している(甲10)。
(b)平成15年における「GS」商標を用いた日本電池株式会社の国内シェアは四輪車用新車用電池で20%(国内第2位)、四輔車用補修用電池で25%(国内第1位)、二輪車用新車用電池で20%(国内第2位)、二輪車用補修用電池で20%(国内第2位)、産業用鉛電池で35%(国内第1位)、小型シール鉛蓄電池で20%(国内第3位)となっている。株式会社ユアサコーポレーションと合算すると、四輔車用新車用電池で40%(国内第1位)、四輪車用補修用電池で45%(国内第1位)、二輪車用新車用電池で85%(国内第1位)、二輪車用補修用電池で70%(国内第1位)、産業用鉛電池で55%(国内第1位)、小型シール鉛蓄電池で30%(国内第2位)となる(甲11)。
(c)申立人は、創業期である大正年間より近年まで、着実に業容を拡大させている(甲12)。
(d)申立人は、その事業内容、事業展開、技術革新等について各種一般紙、専門紙、業界誌等で多数取り上げられている(甲13)。
c 商標の使用例について
(a)「GS」が、バッテリーについての申立人を出所とする商標として著名性を獲得している(甲14、甲15)。
(b)申立人の製品である各バッテリー本体やパッケージにはそれらの前面ほぼ中央に大きく「GS」の商標が付され、また、カタログの各所に「GSバイク用」の語が配されている(甲16、甲17)。
(c)会社案内、カタログに見られる各種電池、電源装置、電池関係製品には「GS」の商標が付され、カタログの各頁に「GS」のロゴが付されている(甲18、甲19)。
(ウ)小括
以上より、「GS」が、申立人のハウスマークないし商品商標として、我が国の一般取引者及び需要者に広く知られ、著名性を獲得していることが示されたといえる。そして、本件商標は、上述のとおり引用商標と類似する。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
ウ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)出所の混同
本件商標と引用商標とが商標及び商品において類似することは上記のとおりである。そして、引用商標の著名性についても上記のとおりである。このように申立人の提供する「電池関係商品」を表示するものとして広く一般に知られている商標に類似する本件商標がその指定商品「太陽電池モジュール」等に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
仮に万が一、本件商標と引用商標とが類似関係にないとしても、上述のように電池関係商品との関係で申立人の出所を示す表示として極めて著名である引用商標に係る欧文字「GS」は、電池関係商品の取引者・需要者に強く印象付けられており、記憶に焼き付けられている。その結果、需要者が著名な「GS」と共通の視覚的印象をもつ本件商標「SG」に離隔的に接したときには、これを著名ブランドの「GS」であると直感的に誤るおそれがある程度に相紛らわしいというべきである。よって、本件商標「SG」が申立人に係る引用商標「GS」との関係で出所の混同を生じさせるおそれがあるのは明らかである。または、申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は関連する表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤認されるおそれがあるといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(イ)太陽電池関係商品
本件商標の指定商品「太陽光発電装置,太陽電池による発電装置,太陽電池モジュールによる発電装置,太陽電池パネル,太陽電池モジュール」と引用商標の指定商品「蓄電池」とが当然に類似関係にあることは先に述べたとおりである。更に、上述のように、申立人は1970年初めより本件商標の指定商品である「太陽光発電装置,太陽電池による発電装置,太陽電池モジュールによる発電装置,太陽電池パネル,太陽電池モジュール」に直接的に関係する「太陽光発電システム」の事業を行っており、本件商標が指定する「太陽光発電装置,太陽電池による発電装置,太陽電池モジュールによる発電装置,太陽電池パネル,太陽電池モジュール」をはじめ、太陽光発電システムに関するあらゆる製品を市場に供給している(甲20)。代替エネルギーの重要性が叫ばれる現在にあって、上記分野での出所混同は、申立人の市場での利益と業務上の信用を著しく害するものである。
エ 商標法第4条第1項第19号について
上述のように、「太陽光発電装置,太陽電池による発電装置,太陽電池モジュールによる発電装置,太陽電池パネル,太陽電池モジュール」について使用する本件商標「SG」は、申立人の業務に係る蓄電池を表示するものとして日本国内はもとより外国においても広く知られた「GS」の商標と類似関係にある。
そして、申立人に係る引用商標は、上述のように本件商標の出願当時2011年2月には、すでに太陽光発電の業界を含む電池関係の取引界において極めて広く知られていたものであり、「太陽光発電関係商品」を指定している本件商標の所有者が、その出願時に、著名な引用商標の存在を知らなかったとは言い難い。
すなわち、本件商標権者が著名な引用商標「GS」の存在を知らずに、「G」と「S」との順序を先後させた欧文字「SG」を識別機能を強く発揮する部分として取り込んだ本件商標を偶然に使用・採択したとみることは到底できないものであり、引用商標「GS」の持つ高い名声と信用にフリーライドする目的をもって使用されるものといえる。
したがって、本件商標は、信義則に反する不正の目的で出願されたものであって、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであり、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)引用商標の周知、著名性について
申立人は、引用商標が周知、著名である旨主張し、証拠を提出しているところ、当該証拠によれば以下の事実が認められる。
ア 引用商標「GS」の歴史
(ア)甲第3号証には、申立人は、旧日本電池と旧ユアサコーポレーションとが2004年に経営統合した事業グループの純粋持ち株会社であり、資本金330億円、連結売上高2,472億円(2010年3月期)、連結純資産1,118億円(2010年3月)、連結総資産2,368億円(2010年3月)、従業員数12,235人(2010年3月)、東京証券取引所第1部及び大阪証券取引所第1部に株式上場している旨の記載がある。
(イ)甲第4号証には、申立人の創業者は、1908年(明治41年)に蓄電池のカタログ作成を契機に、蓄電池の商標を、自身の氏名のイニシャルである「GS」に改め、1913年(大正2年)に商標登録した旨の記載がある。当該商標「G.S.」(登録第58670号の2)は、1913年(大正2年)5月5日が登録日である(甲5)。現在、申立人のハウスマークである「GS YUASA」(当該欧文字には、「G」の欧文字を半円状にやや傾いて囲う円弧の図形と「Y」の欧文字の右上部の先端から右肩上がりの伸びる直線の図形が付加され、図形はオレンジ色、欧文字は、緑色で表されている。以下「申立人ロゴ」という。)の前部分に、「GS」が含まれている(甲6)。
(ウ)甲第7号証には、1895年(明治28年)から1995年(平成7年)までの多種類の電池に関する技術や製品の流れの線表が記載されている。
(エ)甲第8号証には、申立人は、1970年代初めより太陽光発電の研究を開始し、1980年代に数々の太陽光発電システムを納入した旨の記載がある。
(オ)甲第9号証には、申立人の創生期の畜電池に「GS」が付されている(32頁)こと、「高率放電用低形大容量鉛電池」などの電池に係る技術についての受賞歴の記載がある(206頁)ところ、「発行 1995年11月1日」及び「発行所 日本電池株式会社/GS NEWS編集部」の記載(2枚目)がある。
イ 申立人の事業
(ア)甲第10号証(「2011 Annual Report」)には、申立人ロゴの記載がある。
(イ)甲第11号証は、「株式会社ユアサコーポレーション及び日本電池株式会社の経営統合について 平成15年11月7日」の記載のある公正取引委員会の事前審査に係る書類の写しであるところ、旧日本電池株式会社の国内シェアは四輪車用新車用電池で20%(国内第2位)、四輔車用補修用電池で25%(国内第1位)、二輪車用新車用電池で20%(国内第2位)、二輪車用補修用電池で20%(国内第2位)、産業用鉛電池で35%(国内第1位)、小型シール鉛蓄電池で20%(国内第3位)とあり、旧ユアサコーポレーションのシェアと合算すると、四輔車用新車用電池で約30%(国内第1位)、四輪車用補修用電池で約40%(国内第1位)、二輪車用新車用電池で約85%(国内第1位)、二輪車用補修用電池で約70%(国内第1位)、産業用鉛電池で約55%(国内第1位)、小型シール鉛蓄電池で約30%(国内第2位)となる旨の記載がある。なお、前記の根拠となる数字は、当事会社の提出資料を基に公正取引委員会にて作成した旨の注記があるところ、シェアの前提となる国内市場規模の数字は、平成14年度を根拠としている旨の記載がある。
(ウ)甲第12号証によれば、会計処理の変更及び大きな通貨価値の変動もないと考えられる1985年(昭和60年)度から1995年(平成7年)度までの売上げ高は、概ね700億円から1000億円程の売上げである。
ウ 商標の使用例について
(ア)甲第16号証には、申立人の製品である各バッテリー本体やパッケージの前面ほぼ中央に大きく「GS」の商標が付されているところ、「本カタログの内容は’03年10月1日現在」の記載がある。
(イ)甲第17号証には、申立人の製品である各バッテリー本体の前面ほぼ中央に大きく「GS」の商標が付され、「GSバイク用」の表記があるほか、「本カタログの内容は2001年2月1日現在」の記載がある。
(ウ)甲第18号証には、各種電池、電源装置、電池関係製品には「GS」の商標が付されているところ、その表紙には、「JAPAN STORAGE BATTERY CO.,LTD.」との表記がされ、[Corporate History]の欄の最終記事が、「1995 100th Anniversary of the starting business of Japan Storage Battery Co.,Ltd.」とあることからすれば、甲第18号証は、旧日本電池株式会社が1995年(平成7年)に発行したものと推認される。
(エ)甲第19号証における各種バッテリーには「GS」が付され、カタログの各頁に「GS」のロゴが付されている。また、その表紙には、「GS」の商標を前面に付したバッテリーの図形を表すとともに、「2009-2010」の記載があるところ、「GS Battery(U.S.A)Inc.」の表記並びにその連絡先電話番号及び所在地の記載(2枚目)からすれば、甲第19号証は、申立人の米国法人が2009年頃に頒布したものと推認される。
(オ)甲第20号証は、「太陽光発電システム」の文字が表紙に記載されたカタログであり、表紙に申立人ロゴが使用されているところ、その裏表紙に「本カタログの内容は2009年3月現在」の記載がある(注:甲20に係るカタログの27頁から裏表紙までの写しは、甲17に係る「バイク用バッテリー総合資料」の写しの後に綴られている。)。
エ 事実認定
上記アないしウからすると、申立人の2004年(平成16年)の経営統合後においては、「GS」のみが申立人のハウスマークないし製品の商標として日本国内で使用されていたとの証拠は存しないものの、旧日本電池株式会社の業務に係る商品が蓄電池を主とする商品群であって、そのハウスマークないし当該商品群の商標として「GS」が使用されていたこと、かつ、申立人の経営統合時に、蓄電池の国内市場の占有率が極めて高かったこと、そして、直近の決算(2010年3月期)において連結ではあるが2,500億近い売上げを達成していることに加えて現在においても申立人ロゴ中には「GS」が先頭部に含まれていることを総合考慮すれば、引用商標は、商品「蓄電池」についての申立人の商標として、本件商標の出願時(平成23年2月14日)及び登録査定時(平成23年8月15日)において、その需要者間に広く認識されていたものということができる。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その構成態様は、薄緑色の不定形な形状を幾重も重ね合わせ、その中心部が前記形状の重なり合いによって周辺部に比して濃い緑色となるように表し、そのほぼ中央に「SG」の欧文字を黄色にて横書きしたものと、その下に、上下に押しつぶされたかのように左右に扁平で、かつ、左右の両端部がとがっているだ円形を上部の図形と中心をそろえるように上下に3つ表してなるものであって、当該3つのだ円形は、上から順に青色、緑色、茶色に着色されてなるものである。
しかして、本件商標中「SG」の欧文字を捨象した部分(以下「本件図形」という。)は、それ自体で自他商品の識別標識として十二分に機能し、本件商標中で強く支配的な印象を与えるものであるのに対し、文字部分は、商取引上類型的に、商品の品番、記号などを表すものとして用いられる欧文字2文字を普通に用いられる方法で書してなるものであって、その文字部分のみが自他商品の識別標識として機能するものではない。
また、本件商標中の「SG」の欧文字が、本件異議申立てに係る指定商品について、自他商品の識別標識として機能するに至ったとの格別の事情も本件商標について見当たらない。
そうすると、本件商標と引用商標との類否判断において、本件商標中の欧文字部分を抽出して、これを引用商標と対比して本件商標と引用商標との類否判断をなすことは、許されないというべきである(最高裁判所第二小法廷平成20年9月8日判決言渡し 平成19年(行ヒ)第223号参照)。
してみれば、本件商標は、その構成全体として又は本件図形をもって取引に資されるものというべきであるところ、本件図形は、自他商品の出所識別標識としての称呼及び観念を生ずるものではない。
したがって、本件商標は、商品の出所識別標識としての称呼、観念は生じないというのが相当である。
イ 引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、「GS」の欧文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるところ、前記(1)のとおり、その指定商品「蓄電池」について申立人を出所とする商標として広く知られているものである。 そうすると、引用商標からは、商品の出所識別標識として「ジーエス」の称呼及び著名な申立人の観念を生ずるものというのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標との類否
(ア)外観について
本件商標と引用商標を対比するに、両商標は、外観上顕著な差異を有するものである。また、前記アのとおり、本件商標中の欧文字部分は、商品の出所識別標識として機能するものではなく、当該文字部分を抽出して引用商標と対比し両商標の類否判断に資することはできない。
そうすると、両商標は、外観上類似のものということはできない。
(イ)称呼について
本件商標は、称呼を生じないのに対し、引用商標は、「ジーエス」の称呼を生ずるものである。
そうすると、両商標は、称呼上類似のものということはできない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、引用商標は、著名な申立人の観念を生じるものである。
そうすると、両商標は、観念上類似のものということはできない。
(エ)小括
以上からすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商標というべきである。しかして、前記(1)のとおり引用商標が需要者間に広く認識されていることを考慮してもなお、本件商標と引用商標とが類似しないとの前記の判断を左右するものではない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
引用商標が前記(1)のとおり需要者間に広く認識されているものであるとしても、本件商標と引用商標とは、前記(2)のとおり明らかに非類似の商標である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものということはできない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当
該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁判所第三小法廷平成12年7月11日判決言渡し 平成10年(行ヒ)第85号参照)。
しかして、本件商標と引用商標とは、前記(2)のとおり、明らかに非類似の商標であって、両商標の類似性は全く認められない。
また、引用商標が周知著名性を有するとしても、その構成自体は、欧文字2文字を普通に用いられる方法で表してなるものである。
加えて、本件商標中の欧文字部分が、自他商品識別標識として機能するものということができないのは、前記(2)アのとおりである。
以上を踏まえて、取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断するならば、引用商標が「蓄電池」の商標として周知性を有すること及び本件異議申立てに係る本件商標の指定商品と引用商標の指定商品ないし申立人の業務に係る商品との関連性が存することを考慮してもなお、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標ないしは申立人を想起するようなことはなく、当該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(5)商標法第4条第1項第19号について
引用商標が前記(1)のとおり需要者間に広く認識されているものであるとしても、本件商標と引用商標とは、前記(2)のとおり明らかに非類似の商標である。
また、引用商標と全く類似しない本件商標を採択した商標権者に、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)があると推認することもできないものである。その他に、本件商標が、不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足りる的確な証拠も存しない。
そうすると、本件商標と引用商標は、同一又は類似の商標ではなく、かつ、本件商標が不正の目的をもって使用をするものということもできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
(6)申立人の主張について
申立人は、創業より110年を超えて「GS」を企業グループのハウスマークとして、そしてあらゆる電池関係商品の商標として使用しているのは、創業者の功績への畏敬の念と申立人が創業後脈々と続いてきた企業の歴史を大切にし、将来的にもこれを永続的に受け継いでいくという企業意思の表れであるところ、かかる歴史的に著名な商標「GS」の「G」と「S」の順序を先後にさせた第三者商標「SG」の登録を認めることは、申立人の利益を著しく損ない、ひいては、取引者・需要者の利益の保護をうたう商標法第1条にもとる結果となりかねない旨主張する。
しかしながら、商標登録の異議申立ての理由は、商標法第43条の2に規定される理由に限られており、商標法第1条は、その理由とはされていない。しかして、申立人の主張が本件に係る異議申立ての理由を解釈する際に法目的(商標法第1条)を参酌すべきとの主張であると解しても、本件商標と引用商標とは、前記(2)のとおり明らかに類似しない商標であって、何ら商品の出所の混同を生ずるおそれのないものである。
そうとすれば、本件商標の登録が、商標法第1条の法目的に照らして、引用商標の使用者である申立人の保護に欠けるものではなく、需要者の利益を損なうものでもないし、本件商標の登録が商品の取引秩序の維持に反するものということもできない。
してみれば、本件商標の登録が、商標法の法目的(商標法第1条)にもと
るということはできず、前記の本件異議申立ての理由に係る当審の判断を左右するものでもない。
したがって、申立人の主張は、理由がなく採用することができない。
(7)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)

(色彩については原本参照)

別掲2(引用商標)


異議決定日 2012-03-30 
出願番号 商願2011-9334(T2011-9334) 
審決分類 T 1 652・ 22- Y (X09)
T 1 652・ 255- Y (X09)
T 1 652・ 262- Y (X09)
T 1 652・ 261- Y (X09)
T 1 652・ 271- Y (X09)
T 1 652・ 263- Y (X09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松本 はるみ 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 内田 直樹
前山 るり子
登録日 2011-09-09 
登録番号 商標登録第5438137号(T5438137) 
権利者 株式会社 シリコンプラス
商標の称呼 エスジイ 
代理人 深見 久郎 
代理人 向口 浩二 
代理人 千田 武 
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 

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