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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X05
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X05
審判 全部無効 外観類似 無効としない X05
管理番号 1255272 
審判番号 無効2011-890061 
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-08 
確定日 2012-04-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5385781号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5385781号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年6月29日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」を指定商品として、同年12月14日に登録査定され、同23年1月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5047058号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成18年10月25日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同19年5月11日に設定登録されたものである。
2 登録第5100938号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成19年3月29日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同年12月21日に設定登録されたものである。
3 登録第4808991号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、平成16年1月9日に登録出願、第3類「クリーム,ヘアクリーム,除毛クリーム,クリーム状化粧品」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」を指定商品として、同年10月8日に設定登録されたものである。
4 登録第4997920号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲5のとおりの構成からなり、平成18年2月28日に登録出願、第3類「クリーム,ヘアクリーム,除毛クリーム,クリーム状化粧品」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」を指定商品として、同年10月20日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第85号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。
2 請求の利益について
本件商標は、その出願前の出願に係る請求人所有の引用各商標と混同を生ずる程に類似するものであるところ、当該引用各商標は、請求人の製造・販売に係る製品を示すものとして、広く認知されている事実がある(甲第14号証ないし甲第85号証)。そのため、請求人と同じく薬剤の製造及び販売を業とする者であることが明らかな被請求人が、本件商標を付した薬剤を販売すれば、請求人の商品との間に出所の混同を生ずることにより、引用各商標に化体した業務上の信用が著しく損なわれるおそれがあり、請求人の不利益は極めて大きい。
したがって、本件商標に係る登録が無効となるか否かは、請求人の法律上の利益に重大な影響を及ぼすものであり、請求人は、商品の出所の混同及び出所表示機能の希釈化を防止する上で法律上の利害関係を有する。
3 本件商標が無効とされるべき具体的理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標及び引用各商標の具体的構成
(ア)本件商標の具体的構成
本件商標は、全体が縦長の長方形よりなるパッケージを表してなるところ、その中央やや上方に、「ムヒホワイティ」の片仮名を横書きしてなると共に、その下方には、これに通ずる「Muhi Whitee」の欧文字を横書きしてなるものであり、以下の図形部分1ないし図形部分3を含むものである。
本件商標の図形部分1は、複数の小円図形により構成され、当該複数の小円図形が集まって円弧をなすがごとき態様により表されるものであるところ、当該複数の小円図形は、隣接する小円図形が、徐々にその面積が小さくなるように表され、面積が小さくなることに比例して、その色彩の濃度も徐々に薄くなるように、濃淡のグラデーションをもって表現されてなるものであり、また、本件商標の全体の構成からみて、当該図形部分は、それ自体、単独の自他商品識別標識としても、機能するものとみるべきものである。
本件商標の図形部分2は、上下方向に伸びる波状の緩やかな曲線で表されてなるところ、当該波状の緩やかな曲線は、上方を始点とした場合、始点より徐々に左へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、その後、緩やかなカーブを描きながら横方向始点と同様の位置まで右へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、更にその後、左方向へ緩やかなカーブを描きながら終点に至る構成よりなるものであり、また、当該波状の緩やかな曲線は、全体が縦長の長方形よりなる本件商標の左側に配されると共に、当該波状の緩やかな曲線に接する左側の面に限り、その全体を着色してなるものである。
本件商標の図形部分3は、本件商標の下方右側に、ひとつの正円図形が表されている。
(イ)引用商標1の具体的構成
引用商標1は、複数の小円図形により構成され、当該複数の小円図形が、全体として一つの円弧をなすがごとき態様により表されるものであるところ、当該複数の小円図形は、隣接する小円図形が、徐々にその面積が小さくなるように表され、面積が小さくなることに比例して、その色彩の濃度も徐々に薄くなるように、濃淡のグラデーションをもって表現されてなるものである。
(ウ)引用商標2の具体的構成
引用商標2は、全体が縦長の長方形よりなるパッケージを表してなるところ、欧文字「TRANSINO」及びこれに通ずる片仮名「[トランシーノ]」の各文字及び各記号並びに図形部分とを含み、当該縦長の長方形の右側には、上方より、徐々に色彩の濃度が薄くなる縦長のラインを有する。一方、前記「TRANSINO」の文字部分の上方に配される図形部分は、上述の引用商標1と同一の構成よりなるものであり、また、引用商標2の全体の構成からみて、当該図形部分は、それ自体、単独の自他商品識別標識としても、機能するものとみるべきものである。
(エ)引用商標3及び引用商標4の具体的構成
引用商標3及び引用商標4は、上下方向に伸びる波状の緩やかな曲線が表されてなるところ、当該波状の緩やかな曲線は、上方を始点とした場合、始点より徐々に左へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、その後、緩やかなカーブを描きながら横方向始点と同様の位置まで右へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、更にその後、左方向へ緩やかなカーブを描きながら終点に至る構成よりなるものであり、また、当該波状の緩やかな曲線は、全体が縦長の長方形よりなる本件商標の左側に配されると共に、当該波状の緩やかな曲線に接する左側の面に限り、その全体を着色してなるものである。
イ 本件商標及び引用各商標の対比
(ア)本件商標の図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分とを対比するに、本件商標の図形部分1は、複数の小円図形により構成され、当該複数の小円図形が集まって円弧をなすがごとき態様により表されるものである点で、引用商標1及び引用商標2の図形部分とは、図形部分の表現手法の軌を一にするものである。
また、本件商標の図形部分1における当該複数の小円図形は、隣接する小円図形が、徐々にその面積が小さくなるように表される点においても、引用商標1及び引用商標2の図形部分と一致する。
さらに、本件商標の図形部分1は、面積が小さくなることに比例して、その色彩の濃度も徐々に薄くなるように、濃淡のグラデーションをもって表現されてなる点で、同じく、面積が小さくなることに比例して、その色彩の濃度も徐々に薄くなるように、濃淡のグラデーションをもって表現された引用商標1及び引用商標2の図形部分と共通する。
加えて、本件商標の小円の数は14であり、引用商標1及び引用商標2の図形部分の小円の数が13であることから、両者は、複数の小円の数もほぼ同一である。
そして、本件商標の全体の構成からみて、本件商標の図形部分1は、それ自体、単独の自他商品識別標識としても、機能するものとみるべきものである。
(イ)以上よりすれば、本件商標の図形部分1は、これらの引用各商標の図形ないし図形部分が特徴とするところの以下の5つの特徴をすべて兼ね備えるものであり、その構成及び表現手法の軌をまったく一にするものといわざるを得ない。
a.複数の小円図形より構成される特徴
b.当該複数の小円図形が集まって、円弧をなす特徴
c.当該複数の小円図形は、隣接する小円図形が、徐々にその面積が小さくなるように表された特徴
d.当該複数の小円図形は、面積が小さくなるに比例して、その色彩の濃度も徐々に薄くなるように、濃淡のグラデーションをもって表現されてなる特徴
e.当該複数の小円図形の数の程度
(ウ)また、現実の取引の場において、商標は、商品や商品の包装容器に使用されるものであるから、必ずしも平面に商標が付されるとは限らず、商標見本と同一色の容器に付されるとも限らない。むしろ、立体的で、様々な材質よりなる容器に付される場合も多く、また、需要者が、常にこれらを正面から看取するということもない。
この点、平成14年(行ケ)第108号審決取消請求事件の判決においては、「商標が実際の取引の場で使用される場合、特に本件商標が指定商品の一種である腕時計に使用された場合に『天地』がなく、いずれの方向から商標が看取されるかについて特定されない場合があることは、原告が審判請求の理由で主張しているとおりであり、当裁判所もこの点を取引の実情として自明のものと認める」とされている(甲第11号証)。
当該判決は、事件としては、特に「腕時計」について言及されているものであるが、その趣旨よりすれば、必ずしも「腕時計」に限らず、商標が実際の取引の場で使用される場合に、通用するものと解される。
そして、土地及びその定着物又は床や壁面に常に固定された商品であって、かつ、同じ場所からしか見ることができないような状況におかれたものでない限り、むしろ、常に同じ方向から商標が看取されるという場合は少ないであろうことは容易に想像し得るところである。
そして、本件商標の指定商品「薬剤」では、商標が丸みを帯びた瓶状の容器に付される場合も多く、現に引用各商標は、丸みを帯びた容器に使用されている(甲第17号証の1)。
また、容器ないし包装箱の蓋部分等に商標が付された商品等については、それらが店頭において陳列されている場合に、通常、真上から当該商標を看取することは考え難く、やや斜めから看取する場合が多いであろう。
さらに、「薬剤」については、商標が丸い錠剤そのものに付される場合や、PTPシート自体に使用される場合も多く、現に引用各商標も、PTPシート自体に使用されている(甲第17号証の1)。そのような場合には、上記「腕時計」の場合よりも、いやまして「天地」がない状態であり、いずれの方向から商標が看取されるかについてなおさら特定し得ないものといわざるを得ない。
現に、例えば、請求人製品をわずかにやや斜めから見ただけでも、引用各商標が、本件商標の図形部分1とほぼ同一視されてしまうおそれが高いことが明らかである。
加えて、商標法第70条第1項によれば、同法第25条(商標権の効力)の解釈にあたっては、色彩を登録商標と同一にするものとすれば、登録商標と同一の商標と認められる類似商標は、登録商標と同一の商標と扱われることとされていることからすれば、その趣旨が商標権を発生せしめる前提となる審査又は審判における類否判断においても勘案されるべきものであることはいうまでもなく、多少程度の濃淡の相違であれば、なおさら商標の類否判断に及ぼす影響は極めて限られたものであるといわざるを得ない。
したがって、以上のとおりの法の趣旨、判決の趣旨及び現実の取引の実情に鑑みた場合、切欠きと看取される部分やグラデーションの角度がわずかに相違する場合であったとしても、それらの構成要素を現に含み、その割合も同程度である以上、これに接する需要者・取引者が時と処を異にして離隔的に観察したときには、互いに相見誤るおそれがある商標であるといわざるを得ない。
(エ)以上のとおり、本件商標の図形部分1は、引用各商標の構成における5つの特徴をすべて具備し、当該特徴以外の多少の相違も両商標の主たる印象に与える影響は少ないものといわざるを得ないものであるから、互いに相紛らわしい外観類似の商標と解さざるを得ない。
この点、平成12年(行ケ)第147号審決取消請求事件の判決においては、「必ずしも、図柄の細部まで正確に観察し、記憶し、想起してこれによって商品の出所を識別するとは限らず、商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合が少なくない。これは、我々の日常の経験に照らして明らかである。」と述べられているとおりである(甲第12号証)。すなわち、我々が商品を購入する際には、必ずしも商標の細部を正確に把握するわけではなく、その「主たる印象」を手がかりとして、商品の出所を認識し、把握するのであるから、「主たる印象」が共通すれば商品の出所の混同が生じることは明らかである。
(オ)本件商標の文字部分についてみるに、文字と図形との結合商標においては、これを構成する図形部分と文字部分とが互いに融合し、それぞれ分離判別不可能な程度に至っているような場合であれば、常に文字と図形とが一体の識別標識としてのみ機能を発揮するといえる場合もあろう。
ところが、本件商標においては、「ムヒホワイティ」の片仮名部分及び「Muhi Whitee」の欧文字部分が多数表された各小円のただ一つとも交わることなく併記されているにすぎず、当該文字部分と当該図形部分とは、いまだ視覚的に分離可能な程度のものとして看取されるのであるから、これらを常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の事情も見いだせない。
結局、本件商標においては、その中央に表された図形部分1が単独で、需要者・取引者に対して、強く特徴的な印象を与える場合があることを否定し得ないものである。
よって、本件商標は、その構成中の文字部分を除いた強く特徴的な印象を与える当該図形部分1が、それ自体、単独で自他商品識別標識としての機能を十分に果たすものといわざるを得ない。
この点、昭和37年(オ)第953号審決取消請求事件の判決は、「簡易、迅速をたつとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである(昭和三六年六月二三日第二小法廷判決、民集一五巻六号一六八九頁参照)」ことを示しており(甲第13号証の1)、その趣旨は、各構成部分が独立して識別標識として機能を発揮し得ることにあると解されるものであるから、これは外観類否の判断にあたっても十分に勘案されるべき取引の実情であるところ、本件商標においては、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは到底いえない。
また、平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件の判決では、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)」ことが示されている(甲第13号証の2)。
これを本件についてみると、本件商標の構成中の図形部分1は、上記のとおりの5つの特徴を有する極めて識別力の高い部分ということができる。
また、本件商標における「ムヒホワイティ」及び「Muhi Whitee」の各文字部分は、上述のとおり、上記図形部分1と常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の事情を見いだせるものではない。
よって、上記図形部分1は、上記文字部分とは別に、それ自体、上記判決の示すところの「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」に該当するというほかなく、このような場合に、「商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断する」ことが相当とされることは、上記判決に照らして明らかである。
なお、本件商標の権利者が、本件商標の出願と同時に件外商標(登録第5305278号商標)について登録出願し、登録を得ていることからも、そもそも本件商標の文字部分と図形部分とは、常に一体のものとして使用することが意図されたものではないことが十分に推認される。そして、図形部分と分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない文字部分を加えただけの後願に係る商標が当該図形部分と類似する他人の商標と非類似と取り扱われるのであれば、あらゆる図形商標についての商標権の効力の範囲は、著しく限られたものとなり、そのような取り扱いがなされるのであれば、本件商標と件外商標とも、互いに非類似と取り扱われることに帰結するが、上記のとおり、件外商標が本件商標と同一の図形部分を含む以上、文字部分の存在をもってしても、互いの類似性は到底否定し得るものではない。
したがって、本件商標における文字部分や色彩の有無が他の商標との類否判断に及ぼす影響は、非常に限られたものであると解さざるを得ず、引用各商標との類否判断においても決して重要な要素となり得るものではない。
(カ)本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の図形部分とを対比するに、本件商標の図形部分2は、上下方向に伸びる波状の緩やかな曲線が表されてなるところ、当該波状の緩やかな曲線は、上方を始点とした場合、始点より徐々に左へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、その後、緩やかなカーブを描きながら横方向始点と同様の位置まで右へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、更にその後、左方向へ緩やかなカーブを描きながら終点に至る構成よりなるものであり、また、当該波状の緩やかな曲線は、全体が縦長の長方形よりなる本件商標の左側に配されるとともに、当該波状の緩やかな曲線に接する左側の面に限り、その全体を着色してなるものである点において、引用商標3及び引用商標4と類似する。
以上よりすれば、本件商標の図形部分2は、これらの引用各商標の図形ないし図形部分が特徴とするところの以下の5つの特徴をすべて兼ね備えるものであり、その構成及び表現手法の軌をまったく一にするものといわざるを得ない。
a.全体が縦長の長方形よりなるパッケージを表してなる特徴
b.上下方向に伸びる波状の緩やかな曲線が表されてなる特徴
c.当該波状の緩やかな曲線は、上方を始点とした場合、始点より徐々に左へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、その後、緩やかなカーブを描きながら横方向始点と同様の位置まで右へ緩やかなカーブを描きながら下方へ伸び、更にその後、左方向へ緩やかなカーブを描きながら終点に至る構成よりなる特徴
d.当該波状の緩やかな曲線は、全体が縦長の長方形よりなる本件商標の左側に配される特徴
e.当該波状の緩やかな曲線に接する左側の面に限り、その全体を着色してなる特徴
(キ)また、現実の取引の場において、商標は、商品や商品の包装容器に使用されるものであるから、必ずしも平面に商標が付されるとは限らず、商標見本と同一色の容器に付されるとも限らない。むしろ、立体的で様々な材質よりなる容器に付される場合も多く、また、需要者が常にこれらを正面から看取するということもない点は、上述のとおりである。
現に、例えば、請求人製品をわずかにやや斜めから見ただけでも、引用各商標が、本件商標の図形部分2とほぼ同一視されてしまうおそれが高いことが明らかである。
さらに、商標法第70条第1項によれば、同法第25条(商標権の効力)の解釈にあたっては、色彩を登録商標と同一にするものとすれば、登録商標と同一の商標と認められる類似商標は、登録商標と同一の商標と扱われることとされていることからすれば、その趣旨が商標権を発生せしめる前提となる審査又は審判における類否判断においても勘案されるべきものであることはいうまでもなく、多少程度の濃淡の相違であれば、なおさら商標の類否判断に及ぼす影響は極めて限られたものであるといわざるを得ない。
したがって、以上のとおりの法の趣旨、判決の趣旨及び現実の取引の実情に鑑みた場合、切欠きと看取される部分やグラデーションの角度がわずかに相違する場合であったとしても、それらの構成要素を現に含み、その割合も同程度である以上、これに接する需要者・取引者が時と処を異にして離隔的に観察したときには、互いに相見誤るおそれがある商標であるといわざるを得ない。
(ク)以上のとおり、本件商標の図形部分2は、これらの引用各商標の構成における5つの特徴をすべて具備し、当該特徴以外の多少の相違も両商標の主たる印象に与える影響は少ないものといわざるを得ないものであるから、互いに相紛らわしい外観類似の商標と解さざるを得ない。
ウ 具体的取引実情
昭和43年2月27日最高裁判所昭和39年(行ツ)第110号判決では、「対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべき」ものとされ、「商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当」とすることが示されている(甲第13号証の3)。
この点、引用各商標は、後述のとおり、請求人製品を示す商標として、取引者、需要者の間に広く親しまれている事実があり、当該事実は、商標法第4条第1項第11号の該当性の判断においても十分に参酌されるべき具体的な取引実情に該当するものである(甲第14号証ないし甲第85号証)。
したがって、当該取引事情に基づけば、請求人製品に使用されるものとして取引者、需要者に広く親しまれた商標と極めて近似する標章を構成要素に多数含む本件商標に接した取引者・需要者等をして、請求人の製造・販売に係る製品であるかのごとき観念ないし印象を想起せしめる本件商標は、請求人の製品を表示するものとして著名な引用各商標と、取引者に与える印象、記憶、連想等において、自他彼此相紛らしい類似の商標であるといわざるを得ない。
エ 指定商品
本件商標は、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。
オ 小括
以上より、本件商標は、その出願日前の商標登録出願に係る引用各商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 商標の類似性の程度について
本件商標と、引用各商標との類似性については、上記(1)のとおり、互いに類似するものであり、類似性の程度は極めて高いものである。
イ 引用各商標の著名性について
(ア)店頭向医薬品(OTC医薬品)の取引分野においては、売上が年間で10億円の売上げを超えた場合、ヒット商品と称されるにふさわしい商品といえるところ、引用商標1及び引用商標2が付された請求人製品「トランシーノ」は、発売後わずか1カ月で14億円、半期余りで36.3億円という、2007年度の我が国OTC医薬品中のベスト100位内にランクする程の驚異的な売上げを果たしたものであり、特大ヒット商品と称されるに値する。
この点、現に、請求人製品「トランシーノ」の登場及びその驚異的な売り上げは、日本経済新聞、読売新聞等の全国紙、「日経トレンディ」等の有力雑誌、業界紙、地方紙等において、「爆発的」、「衝撃的」、「驚くべき数字」等と表現されており、超特大の新製品として、各メディアの話題を独占した。
そして、毎年、我が国のヒット商品の格付けを行うものとして定着した日本経済新聞社による「2007年ヒット商品番付」においても、「iPODタッチ」等と並ぶ「前頭」とされており、これは、産業分野を問わず、我が国において発売されたすべての商品の中での「ヒット商品」として認定され、極めて高い評価を受けたことを示している。
また、同番付において、請求人製品「トランシーノ」よりも上位の医薬品が存在しないことから、医薬品としては、まさに2007年の最大のヒット商品であるとの評価を受けたことになる(甲第14号証)。
したがって、取引分野における最大ヒット商品である点のみをもってしても、それ自体、引用各商標の著名性が認定されて然るべき証左となるものである。
(イ)請求人製品「トランシーノ」の継続的な製造・販売はもとより、テレビ、新聞、雑誌等様々な媒体を通じて、引用各商標が、指定商品の需要者・取引者において、広く認識されるに至っている事実を立証する(甲第14号証ないし甲第81号証)。
(ウ)引用商標3及び引用商標4に係る図形ないし図形部分もまた、旧山之内製薬株式会社時代の2003年1月に発売されて以来、永年にわたり継続的に販売されている請求人製品「ロコベースリペア(Locobase REPAIR)」ブランドシリーズの各種の肌用の製品に使用され、請求人製品を表示するものとして、取引者及び需要者において、広く親しまれた商標である。そして、請求人製品「ロコベースリペア」も、2009年度時点で既に700万本が出荷され、「2007年@cosmeベストコスメ大賞ハンドケア部門第2位」、「2008年@cosmeベストコスメ大賞ハンドケア部門第3位」を獲得する等、大ヒット商品の一つである(甲第17号証の2、甲第82号証ないし甲第85号証)。
(エ)引用商標1及び引用商標2は、上記(1)のイ(イ)のとおりの5つもの特徴を備えるものであり、引用商標3及び引用商標4は、上記(1)のイ(カ)のとおり5つもの特徴を備えるものであるから、それ自体、独創的であるばかりか、これら合計10もの特徴を兼ね備えた商標が使用される商品は、請求人製品「トランシーノ」及び「ロコベースリペア」以外に存在しないことからすれば、引用各商標の独創性が極めて高いものであることは明らかである。
このような状況において、請求人製品「トランシーノ」に係る著名な引用商標1及び2の5つの特徴と請求人製品「ロコベースリペア」に係る著名な引用商標3及び4の5つの特徴の合計10の特徴すべてを備えた本件商標が使用された場合には、引用各商標が付された商品と、その出所について混同を生ずるおそれは極めて高いものといわざるを得ない。
さらに、引用商標1及び2の小円図形が徐々に濃度が薄くなる構成は、請求人製品「トランシーノ」の効能との関係で、患部が徐々に白く小さくなる様子を表現したものであるところ、本件商標もまた、そのうちに有する「ホワイティ」ないし「Whitee」の文字より、患部を白くする効果を有する薬剤に使用されることが容易に推察され、患部が徐々に白く小さくなる様子を表現したものと見受けられるから、引用商標1及び2とは、その由来ないし表現手法を一にするものと看取せざるを得ない。
(オ)引用各商標の指定商品との関係において、本件商標は、同一の第5類「薬剤」を指定するものであるから、それらの関連性の程度は極めて高いものといわざるを得ない。
また、引用各商標は、請求人の製造、販売に係る製品の出所を表示するものとして、取引者、需要者の間において広く親しまれたものであることが明らかであるから、これらの引用各商標又はこれに類似する商標が第三者により使用されるとすれば、取引者、需要者等における症例、効能ないし効果等に最適な製品の選択の妨げとなり、ひいては医療過誤等の極めて深刻な事態を招くおそれがある。
そして、本件商標と引用各商標とは、その指定商品が共通するため、取引者及び需要者の共通性が明白であるところ、取引者、需要者に広く親しまれた請求人製品に係る商標と類似する本件商標が請求人以外の第三者に使用されるとすれば、取引者、需要者は、あたかもそれが請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の製造、販売に係る商品であるとの出所の混同を生ずるおそれは極めて高いものといわざるを得ない。
さらに、請求人製品「ロコベースリペア」は、化粧品について使用されるものであるところ、「ロコベースリヘアクリーム」は「皮膚保護クリーム」であり、「ロコベースリペアミルク」は「皮膚保護乳液」であるから、患部に塗る虫さされ用の薬剤とは共に皮膚に塗布することにより使用される点でその用法を同一にするほか、塗布の対象が皮膚である点で対象を共通にする。
加えて、請求人製品「ロコベースリペア」は、皮膚の保護を目的とする点で、皮膚の治癒ないし保護を目的とする薬剤とはその用途が共通するほか、ドラッグストア等において販売される点で、取扱い系統をも共通にする。
したがって、請求人製品「ロコベースリペア」と本件商標の指定商品とは、商品の性質、用途、目的における関連性の程度が極めて高く、商品等の取引者及び需要者も共通にするものである。
ウ 小括
上記(1)に述べた内容を併せ総合的に勘案すれば、本件商標と引用各商標とは、互いに特徴的部分が完全に一致する類似性の程度が極めて高い商標であって、商品の関連性の程度が極めて高いものであるから、引用各商標が請求人の業務に係る製品を表示するものとして取引者・需要者の間において極めて広く認識されている事情の下で、これが使用されるとすれば、本件商標が付された「薬剤」に接した需要者・取引者は、請求人又は請求人と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と誤認混同を生ずるおそれが高い。
したがって、本件商標は、引用各商標との関係において、他人の業務に係る商品等と混同を生ずるおそれが極めて高く、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性
引用各商標は、請求人の製造、販売に係る製品の出所を表示するものとして、取引者、需要者の間において広く親しまれたものであることが明らかであるから、これらの引用各商標又はこれに類似する商標が第三者により使用されるとすれば、永年にわたる営業努力により築き上げてきた引用各商標の出所表示機能を希釈化し、ひいては複数のブランドとしての価値を損なわせしめることにつながり、請求人にとっては甚だ迷惑な事態を被ることとなる。
したがって、請求人に係る著名商標と明らかに類似する本件商標の登録及び使用は、引用各商標の出所表示機能を希釈化し、業務上の信用を棄損することにつながり、請求人並びに取引者及び需要者に不利益を与える結果となる。
以上より、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するためのものとして、日本国内及び外国における取引者・需要者の間に極めて広く認識されている引用各商標と同一又は類似の商標を請求人製品等と誤認混同を生ぜしめる態様により使用する不正の目的をもって使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号該当性
上記(1)ないし(3)で述べた事実よりすれば、本件商標の登録ないし使用は、引用各商標との関係で、請求人製品の名声を毀損するばかりでなく、請求人の製造・販売に係る純正品であるかのごとく需要者を誤認せしめる結果、請求人の製造・販売に係る商品と他社製品との市場における区別を不可能にせしめるものであり、結果として、市場の混乱を招くばかりか、取引者、需要者等における症例、効能ないし効果等に最適な製品の選択の妨げとなり、ひいては医療過誤等の極めて深刻な事態を招くおそれがある。
このような事態は、請求人製品の取引者、需要者に深刻な混乱を招き、健全な競業秩序の維持を目的とする商標法第1条の趣旨に反するばかりでなく、効能、効果等の観点から不適切な製品が誤って選択されることにより、公衆の衛生を損なうおそれがあるものといわざるを得ない。
また、請求人と何ら関係が認められない第三者が、自己の商標として、本件商標をその指定商品について独占的に使用することは、請求人製品を愛用する多くの需要者感情を害するおそれがあり、公の秩序を害するおそれが高いものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号又は同項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 はじめに
請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号、同項第7号に該当し、同法第46条第1項第1号により、登録は無効とすべきであると主張している。しかし、請求人の上記主張にはいずれも合理的な根拠がない。
2 商標法第4条第1項第11号の非該当性について
(1)請求人は、「本件商標の図形部分1は、それ自体、単独の自他商品識別標識としても、機能するものとみるべきである。」と主張し、本件商標と引用商標1及び2とが類似する最大の根拠を、本件商標から図形部分1が分離独立して抽出されることに置いている。
しかし、請求人による当該図形部分1が分離抽出されると主張する理由は、いずれも合理的根拠が無く、失当である。
ア 本件商標の構成について
請求人は、「本件商標の全体の構成からみて、本件商標の図形部分1は、それ自体、単独の自他商品識別標識としても機能するものとみるべきである」とのみ主張し、本件商標のどのような構成上の特徴が、需要者をして、図形部分1を単独の自他商品識別標識として認識させるのかについて、一切論じていない。
例えば、本件商標中の「ムヒホワイティ/Muhi Whitee」の語は、被請求人に係る商品の名称であるところ、商品名に係る部分は、取引における使用頻度の高さ等の事情により、需要者の注意を最も強く集めることは取引経験則上明らかである。加えて、当該文字部分は、被請求人の代名詞ともいえるほど需要者間で著名性を獲得している「かゆみ止め治療薬」に係る商標「ムヒ/Muhi」を含んでいる。
したがって、「ムヒホワイティ/Muhi Whitee」の文字部分は、被請求人の商品の出所標識としてとりわけ強く機能する部分である。
しかし、請求人は、商品の出所標識として強く機能する「ムヒホワイティ/Muhi Whitee」の語を差し置いて、図形部分1のみが独立して分離抽出される理由を一切説明していない。つまり、請求人は、本件商標の図形部分1以外の「他の要素」の存在が引用商標との類否に与える影響を全く論じていない。
また、請求人は、「本件商標の文字部分と図形部分とは、いまだ視覚的に分離可能な程度のものとして看取されるのであるから、これらを常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の事情も見いだせない」と主張する。
しかし、本件商標は、商品の顔といえるパッケージデザインに係る商標であるから、需要者の注目を集めるために、その配置や構成において様々な工夫検討がなされている。
特に、「ムヒホワイティ」及び「Muhi Whitee」と図形部分1の三つの構成要素は、長方形をかたどった縦長図形の中にあって、互いが接するか接しないかのぎりぎりの位置に近接して配置されており、ひとまとまりのセットのような統一感が生じるように配されている。このことから、需要者は、ぱっと見ただけで、当該図形と当該文字とを同時に視認することが可能である。
よって、本件商標の「文字部分が、多数表された各小円のただ一つとも交わることなく併記されているにすぎず」という唯一の理由が、本件商標から図形部分1が分離抽出される根拠とならないことは明白である。
すなわち、本件商標全体の構成からすれば、ここから他の構成要素をすべて捨象して、需要者が図形部分1のみを取り出し、これを単独の自他商品識別標識として認識するとする請求人の主張には合理的根拠が無い。
イ 判例の基準について
請求人は、昭和37年(オ)第953号審決取消請求事件の判決を引用しているが、この判決が示す、分離して観察される場合がある商標とは、「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標」のことである。
しかし、上述のとおり、本件商標の構成は、パッケージデザインとしてまとまりのよいものであり、文字部分と図形部分とが渾然一体となった識別標識であるから、上記判示からいっても、本件商標が分離して観察される商標であるということはできない。
そもそも、請求人は、「図形部分1が、単独で、需要者・取引者に対して、強く特徴的な印象を与える場合」があると唐突に主張し、これを本件商標が分離抽出される理由の一つとして挙げている。
しかし、請求人は、図形部分1がなぜ強い印象を与えるのか、なぜ特徴的なのかをまったく語っておらず、突然、さも当然のように「強く特徴的な印象を与える」と主張している。このような主張は失当であり、いたずらに審理を混乱させるものであるから、無視されるべきである。
加えて、請求人は、平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件の判決を引用し、図形部分1に関し、「『その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合』に該当」し、「『商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断する』ことが相当」であると主張する。
しかし、本件商標においては、「ムヒホワイティ/Muhi Whitee」という被請求人の出所標識としてとりわけ強く機能する部分が他に存在しているのであるから、図形部分1のみが、独立して、取引者、需要者に対し、商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるはずのないことは明らかである。
また、請求人は、平成12年(行ケ)第147号審決取消訴訟事件の判決を引用し、「『主たる印象』が共通すれば、商品の出所の混同が生じることは明らかである」と主張する。
しかし、当該判決においては、「商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合が少なくない。」と示されていることから、図形部分1という本件商標の「一部」を抽出し、本件商標と引用商標1及び2の類似を主張している請求人が、かかる判決を引用して、何を主張したいのか、まったくもって意味不明である。
そもそも、本件商標「全体」と引用商標1及び2の「全体」とを比較観察した場合に、両者がまったく類似しないことは明らかであり、ゆえにこれら商標全体の「主たる印象」が著しく異なるのはいうまでもない。
ウ 件外商標(登録第5305278号商標)について
請求人は、被請求人が「本件商標の出願と同時に、件外商標について登録出願し、登録を得ていることからも、そもそも本件商標の文字部分と図形部分とは、常に一体のものとして使用することが意図されたものではないことが十分に推認される」と主張する。
しかし、件外登録商標と同一の図形が本件商標の中にあったとしても、そのことから直ちに該図形部分が本件商標全体から分離独立して認識されることの根拠とはならないし、本件商標と引用各商標との類否判断に影響を与えるものでもない。
本件商標は、上述したとおり、被請求人の商品に係るパッケージデザインとして、各構成要素を長方形の中にまとまりよく配した構成を有するものであるから、図形部分1は、既に本件商標の中に自然と溶け込んでいる。
よって、件外商標の存在は、図形部分1が分離抽出されることの合理的埋由とはならない。
なお、請求人は、「図形部分と分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められない文字部分を加えただけの後願に係る商標が当該図形部分と類似する他人の商標と非類似と取り扱われるのであれば、あらゆる図形商標についての商標権の効力は、著しく限られたものとなろう」と主張しているが、そもそも他人の先登録商標との関係は、その他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがあるかどうか、という見地から判断されるべきものである。本件のように、およそ出所の混同を生ずるおそれのない商標の登録を排除するかのような上記請求人の主張が正当化されるならば、後願者の商標選択の自由は著しく制限されることとなり、穏当ではない。
以上アないしウで述べたとおり、図形部分1が分離・抽出されることを前提とした請求人の主張には合理的理由がない。
(2)もっとも、本件商標の図形部分1が、被請求人の商品の出所標識として機能するとしても、この図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分とが相紛れるおそれは皆無であり、両者は、非類似である。
ア 請求人は、本件商標の図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分との間に共通するとする5つの独自の特徴を掲げ、これを本件商標と引用各商標とが類似する最大の根拠としている。
しかし、かかる5つの特徴は、いずれも標章作成時の素材やアイデアにすぎず、かつ、いずれも抽象的に過ぎることから、これら素材やアイデアを共通にするからいって両標章が類似することにはならない。換言すれば、抽象的な素材やアイデアが共通していたとしても、それを具体的な標章に昇華させたときの表現手法が異なれば、対比される標章の外観は著しく異なるものとなる。
本件商標の図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分とを比較すると、図形部分1は、二重らせん構造(乙第1号証)の一部のように、正円図形で模った円弧を絡み合うように配置し、2本の円弧の終端部が明確に存在しているところに特徴があるのに対し、引用商標1及び引用商標2の図形部分は、正円図形を正円状に配置し円弧に終端部が存在していないところにその特徴があることから、両者は、図形としての表現方法を著しく異にしており、結果として、標識としての輪郭・骨格に大きな差異が存在している。
また、本件商標の図形部分1は、上下に細長く円弧を配置しているのに対し引用商標1及び引用商標2の図形部分は、全体として正円図形を形成していることから、上下左右は均等である。
このことから、ぱっと見ただけで、本件商標の図形部分1の外観的特徴と引用商標1及び引用商標2の図形部分の外観的特徴とが、著しく異なっていることが容易に認識できる。
また、このような差異から需要者が本件商標から受ける印象と、引用商標1及び引用商標2の図形部分から受ける印象も大きく異なるため、時と処を異にして本件商標と引用各商標に接したとしても、両者が彼此相紛れるおそれはない。
仮に、請求人の主張する5つの特徴に基づき作成された標章の全てが引用商標1及び引用商標2の図形部分と類似するとするならば、自他商品識別機能の有無にかかわらず、かかる商標作成の材料である抽象的要素に独占排他権を与えることになりかねず、結果として、後願者の商標選択の幅を過度に制限する一方で、先願権利者に過大な利益を供することになる。
したがって、具体的な表現方法の差異が本件商標と引用各商標の類否に与える影響を検討せず、抽象的な要素の対比のみにより、本件商標の図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分が類似するとする請求人の主張には、合理性がない。
イ 請求人は、「常に同じ方向から商標が看取されるという場合は少ないであろうことは容易に想像し得るところである」と主張し、本件商標や引用各商標が丸みを帯びた瓶や箱等の立体状の容器やPTPシートに付された場合においては、商標が常に正面からから視認されなかったり、天地左右が逆に視認されたりした場合に、本件商標と引用各商標とが、同一視されてしまうおそれがある旨主張しているが、本件商標に含まれる図形的性質(縦長、二重らせん構造)と引用各商標の図形的性質(正円)の顕著な差異が需要者に認識されないなどということは、皆無というべきである。
請求人は、審判請求書に請求人商品を斜め方向から撮った写真を載せているが、かかる写真を見ても、引用各商標は正円図形であると直ちに認識できる一方、参考として提出する本件商標が付された被請求人製品を斜め方向及び上方向から撮った写真を見ても、本件商標の図形部分1が、正円図形ではなく、終端部を有する2本の円弧からなることは直ちに視認することが可能であり、図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分とが同一視されるおそれが皆無であることは明らかである。
加えて、請求人も「常に同じ方向から商標が看取されるという場合は少ないであろうことは容易に想像し得るところである」と認めるように、取引の実際において、徹頭徹尾、商標が特定の一方向(例えば、斜め方向)からのみ視認されることはあり得ない。
つまり、取引の過程において、様々な角度から本件商標と引用各商標が視認される結果、その差異が、需要者、取引者に自然と認識されることはいうまでもない。
ウ 引用商標1及び引用商標2の図形部分と共通点を有する登録第2057383号商標及び登録第4427622号商標がこれらの商標に先だって登録されていること(乙第2号証及び乙3第号証)及びインターネットにおける動画情報等の読み込み時に映し出される標章が引用商標1及び引用商標2の図形部分と似ている(乙第4号証)ことからすれば、引用各商標が、図形として、創作することが困難である程に独創性が高い商標であるということはできない。
エ 請求人は、引用商標1及び引用商標2を頬に生じたシミ(肝斑)の治療・予防薬について使用しているところ、引用商標1及び引用商標2の図形部分は、かかるシミ(肝斑)の治療過程を表しているものと認識され、これら全体で商品の効能を表示した図と認識される場合も少なくないというべきである。
このことからすれば、引用商標1及び引用商標2の図形部分は、当該商品に含まれる他の「TRANSINO」等の要素との比較においては、商品の出所標識として強く機能するものではない。
請求人が提出した証拠をみる限り、引用商標1及び引用商標2の図形部分が「TRANSINO」の文字から離れて使用されている事実は非常に少なく、ゆえに、当該証拠をもって引用商標1及び引用商標2の図形部分のみが需要者間で広く認識されていることは証明されていない。請求人の主張する取引実情は、あくまで引用各商標に含まれる文字部分「TRANSINO」の著名性に支えられている以上、本件審判において、これらを考慮すべきではない。
以上のことからすれば、本件商標の図形部分1と引用商標1及び引用商標2の図形部分とが非類似であることは明らかである。
(3)請求人は、本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の図形部分(以下「背景図形」という。)が類似すると主張する。
しかし、請求人は、図形部分1の場合と異なり、図形部分2が被請求人の商品に係る独自の出所標識として機能する旨を主張していない。同時に、引用商標3及び引用商標4の背景図形が請求人の出所標識として機能する旨も認めていない。
したがって、図形部分2とかかる背景図形が類似するとの主張は、本件商標と引用商標3及び引用商標4のごく一部の構成要素のみを比較したにすぎないものであり、商品の出所標識として機能する部分(要部)を比較したものではない。
なお、念のため、本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4とが非類似である理由を以下に述べる。
ア 本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4とを比較すると、いうまでもないことであるが、これらは、共通点を見出すことができない程度に外観的構成を異にしている。
また、仮に本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の背景図形が独立して自他商品の識別標識として機能するとしても、以下に述べるとおり、本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の背景図形とは、外観上非類似である。
(ア)それぞれを対比すると、長方形の内部を縦断する波線の本数が、本件商標の図形部分2が1本であるのに対し、引用商標3及び引用商標4は3本であることが直ちに認識することができる。
(イ)波線が長方形を分断することによって生じる長方形左部分の空間を、本件商標は1色で塗りつぶしているのに対し、引用商標3及び引用商標4は3本の波線により生じた3の空間をそれぞれ異なる色で塗りつぶし、色分け模様を形成している。
(ウ)長方形の中に占めるこれら図形部分の面積は、本件商標が約20パーセントであるのに対し、引用商標3及び引用商標4については約50パーセントと大きく異なっている。
イ 請求人は、本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の背景図形との5の共通点を列挙しているが、これらはいずれも抽象的にすぎるものであり、これら要素を基にして作成される標章の全てが引用商標3及び引用商標4の背景図形と類似する訳ではない。請求人の掲げる5つの要素を有していたとしても、それ以外の他の要素、例えば、波線の本数、波線によって描かれる模様、線の太さ等の如何によって、具体的な標章の外観的特徴が大きく異なることになるのは明らかである。
ウ 請求人は、本件商標の図形部分2や引用商標3及び引用商標4の背景図形が、「常にこれらを正面から看取するということも」なく、「やや斜めから見ただけでも、引用各商標が、本件商標の図形部分2とほぼ同一視されてしまうおそれが高い」旨を主張している。
しかし、斜めから見た場合であっても、本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の背景図形との間に存する顕著な差異は全く失われていない。そして、現実の取引において、商標が常に正面から看取されない以上、正面以外の特定の一方向のみからしか認識されることもまたあり得ないというべきである。
エ 以上からすれば、本件商標の図形部分2と引用商標3及び引用商標4の背景図形とが外観上相紛れるおそれのないことは明らかであり、ゆえに、本件商標と引用商標3及び引用商標4とが類似しているとの主張に合理性がない。
(4)本件商標に関する取引実情(本件商標の使用状況)
本件商標は、虫刺されによって生じる赤みや色素沈着による黒ずみを予防及び治療する効能を有する虫刺され用薬剤として使用されており、従来にはない効能を有していることも相まって、好調な売上げを記録し、現在においては、本件商標は需要者間で広く知られるに至っている。
本件商標に係る商品は、虫刺されにより生じた赤みや黒ずみを段々と小さく、薄くすることがきる効能を有していることから、「段々と小さくなり消えていく」様子をイメージとして表現するために、円図形を面積順に並べると共に、グラデーション模様を用いている。つまり、本件商標において使用されているグラデーション模様は、本件商標の使用に係る商品の品質をイメージとして暗示したものである。
さらに、虫刺されによって生じる赤みや黒ずみは、蚊による虫刺されに代表されるように、円形となる場合が多いことから、被請求人は、円形のモチーフを採用するに至った。そして、赤み及び黒ずみの両方に効能があることを認識させること等を理由に、黒色と赤色の2本の円弧を用いこれらを絡ませるように、互いを結合・交わらせることなく配置した。つまり、本件商標に係る図形は、商品の効能から着想を得て、創作されたものである。
このような過程をもって作成された本件商標の具体的な使用態様は、以下のとおりである。
ア 被請求人は、本件商標に係る製品「ムヒホワイティ」を、2010年4月から九州地区において全国に先んじてテスト販売し、これと同時に、約2300万円(制作費除く。)を投じ、テレビCMを同年4月中旬から同年7月末までの間に、九州各県において、合わせて約1600回放送した(乙第6号証及び乙第7号証)。加えて、同年6月には、福岡地区を走る鉄道の車内及びドア横のスペースに広告を出稿すると共に、西日本鉄道(西鉄)最大のターミナルであり、一日約13万人もの多くの人が行き交う西鉄福岡(天神)駅(乙第8号証)において、大規模な広告キャンペーンを行った(乙第9号証)。
イ 2011年4月からは、「ムヒホワイティ」の全国販売が開始され、これに合わせて、被請求人は、宣伝広告活動も全国的規模で行った。具体的には、有名タレントを起用したTVCMを作成し、約2億6000万円(制作費除く)を投じ、これを、5月初句から7月末までの間に、全国で約6700回放送した(乙第6号証及び乙第10号証)。2010年度作成の上記テレビCM及び2011年度のテレビCMにおいては、本件商標全体が大きく表示され、容易に視認できるよう工夫した(乙第11号証及び乙第12号証)。
ウ さらに、全国の薬局の新聞折込みチラシにおいて、商品「ムヒホワイティ」が掲載された(乙第13号証)。
エ このような広告宣伝活動の結果、2011年4月4日から同年8月21日までの間に、「ムヒホワイティ」は、38万本が販売され、その売上げも約3億5千万円を記録するに至っている(乙第14号証)。この業績は、多くの製品が乱立している皮膚用薬の分野において、新製品ながら第14位という高順位を獲得した(乙第14号証)。
オ 実際に、インターネット検索エンジン「Google」により「ムヒホワイティ」又は「Muhi Whitee」を検索した場合、580件(似たページを除外)がヒットし、これは、同一の設定で請求人商標「トランシーノ/TRANSINO」及び「ロコベース/Locobase」を検索した場合のヒット数(前者商標が574件、後者商標が522件)よりも多い(乙第15号証)。これは、被請求人の「ムヒホワイティ」に係る商品への需要者の関心がいかに高いかを如実に表している事実といえよう。
カ 本件商標の上記使用及びこれに関する広告宣伝活動の結果、本件商標には莫大な業務上の信用が化体しており、これを保護することは、業務上の信用を維持するという商標法の目的にも合致する。
加えて、本件商標は、虫刺され用の薬剤について使用されているものであり、ゆえに、引用各商標の使用に係る「肝斑治療・予防用薬剤」並びに化粧品である「皮膚保護クリーム」及び「皮膚保護乳液」とは、その用途や効能が全く異なっていることから、商品の出所について誤認混同が生じた事実はなく、また、生じるおそれもない。
本件商標が、需要者間で広く認識されるに至っている事実並びに本件商標に係る商品の用途及び効果が引用各商標に係る商品のそれと著しく異なっていることは、本件商標と引用各商標との非類似を裏付ける事実として参酌されるべきである。
キ 小括
請求人が本件商標と引用商標1ないし引用商標4とが類似するとして掲げる根拠は、肝心の理由が示されていなかったり、意味不明な主張になっていたりしており、合理性、整合性に欠けている。
本件商標と引用各商標とが、外観、称呼、観念のいずれにおいても非類似であることは、上記被請求人の反論から明らかであり、本件商標は、第4条第1項第11号には該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号の非該当性について
上記したとおり、本件商標と引用各商標は非類似であり、本件商標を付した商品が、あたかも請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の製造及び販売に係る商品であると認識されることはない。
また、請求人は、すべての引用商標が需要者間において広く認識される旨を主張しているが、請求人が提出する証拠のみによっては、引用商標1並びに引用商標3及び引用商標4が需要者間で広く認識されているとはいえない。
なお、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないことは明らかであるが、念のため、以下のとおり、これらの引用各商標が需要者間で広く認識されていない理由を申し述べる。
(1)請求人が提出した各証拠によれば、引用商標1及び引用商標2の図形部分は、ほとんどの場合において「TRANSINO」の文字と共に使用されており、引用商標1及び引用商標2の図形部分が「TRANSINO」の文字から離れて需要者間で広く認識されていることを示す客観的な証拠は提出されていない。
また、引用商標1及び引用商標2の図形部分は、請求人の引用商標1及び2に係る商品の効能を暗示的に示しているものと認識され得ることから、「TRANSINO」の文字と比べると、自他商品識別標識としての機能が弱いことは明らかであり、かつ、当該図形と似た図形は間々見受けられることから、その構成は独創的とはいえず、需要者の注意は、もっぱら「TRANSINO」の文字に対して向けられ、引用商標1に対して向けられる注意は大きいものではないということができる。
よって、引用商標1及び引用商標2の図形部分は、いまだ需要者間で広く認識されるに至っていない。
(2)請求人の提出に係る引用商標3及び引用商標4に関する甲第82号証ないし同第85号証からは、引用商標3及び引用商標4、とりわけ当該商標の背景図形が需要者の間で広く認識されているかが明らかではない。
まず、請求人は、請求人ウェブページのプリントアウトに係る甲第85号証において、引用商標3及び引用商標4に係る製品及びこれら商標が使用されていない製品(リップクリーム)の出荷本数が700万本を突破したと記載しているが、ここからでは、引用商標3及び引用商標4に係る商品の出荷本数は不明であることに加え、引用商標3及び引用商標4に係る商品の売上高や販売店舗数も不明である。また、具体的な広告宣伝態様や広告宣伝費も不明である。
つぎに、請求人が提出するインターネットの検索結果を表示する甲第83号証についても、引用商標3及び引用商標4に係る商品と、これら商標に係るものではない商品(リップクリーム)に関するものや、引用商標3及び引用商標4が表示されていないもの(例えば、「ロコベース/Locobase」の文字のみ)も含まれており、検索結果に表れている数字は正確ではない。
加えて、引用商標3及び引用商標4の背景図形は、常に「Locobase」等の文字と共に使用されていることから、請求人が本件商標の図形部分2と類似していると主張する当該背景図形が、かかる文字と離れて需要者間で広く認識されているか否かも不明である。
以上からすれば、引用商標3及び引用商標4についても、いまだ需要者間で広く認識されていないというべきである。
(3)請求人は、本件商標は、「引用商標1及び引用商標2の5つの特徴のほか、(中略)、引用商標3及び引用商標4の5つの特徴の、合計10の特徴を全て備えた本件商標が用いられた場合には、引用各商標が付された商品とその出所について混同を生ずるおそれが極めて高いものといわざるを得ない」と主張している。
請求人のかかる主張は、請求人所有の多くの商標の中から本件商標と共通する要素を有する商標を抽出した上で、抽出した商標群をあたかもひとつの商標であるかのように本件商標と対比させたことを背景としている。
しかし、引用商標1及び引用商標2に係る商品と引用商標3及び引用商標4に係る商品とは、それぞれ用途及び効能が異なり、ゆえに需要者も異なるものであるから、商品の出所について混同を生ずるか否かの判断は、本件商標とそれぞれの商標とを対比してなされるべきである。
また、請求人の主張する10の共通点とは、本件商標と引用各商標を過度に抽象化して得たものであり、ここには商標の類否に大きな影響を与える具体的な表現方法の共通点がほとんど含まれていない。
したがって、請求人のかかる主張は、共通点が10もあるから対比する商標は類似するかもしれないとの錯覚を与えるための欺瞞的手法にすぎない。
仮に、請求人のかかる主張が是となるのであれば、多くの商標を有している者に多大な後願排除効を与えることになり、その結果、後願者の商標選択の幅が過度に狭められ、スムーズに事業活動を行えなくなるおそれが生じることは想像に難くない。
(4)以上述べたように、本件商標と引用各商標とは非類似の商標であることに加え、引用商標1並びに引用商標3及び引用商標4については、いまだ需要者間で広く認識されるに至っていないことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号の非該当性について
本件商標と引用各商標は非類似であり、引用商標1並びに引用商標3及び引用商標4については、需要者間で広く認識されているとはいえない。
もとより、本件商標の図形部分1は、本件商標に係る商品の効能及び当該効能を発揮する症状から着想を得て作成されたものであり、不正の目的は存在しない。
よって、本件商標の使用が、引用各商標の出所表示機能を希釈化したり、業務上の信用を毀損したりするおそれは皆無であり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号の非該当性について
請求人は、本件商標の使用が「医療過誤等の極めて深刻な事態を招くおそれがある」と主張する。
しかし、請求人のかかる主張は、あくまで商品の出所の混同を生じるおそれを理由に本件商標の登録を無効にすべきとの主張に基づくものであるから、本号における「公衆の衛生を損なうおそれ」の範躊で論じるべき事項ではない。実際のところ、請求人の主張する医療過誤については、商標法第4条第1項第11号や同項第15号等の商品の出所混同を防止する規定により後願の類似商標の登録を禁止することでこれを防止することが担保されている。
さらに、請求人は、「請求人製品を愛用する多くの需要者感情を害するおそれがあり、公の秩序を害するおそれが高い」と主張するが、引用各商標の使用に係る「肝斑治療・予防用薬剤」並びに化粧品である「皮膚保護クリーム」及び「皮膚保護乳液」と、効能及び用途も異なる「虫刺され用の薬剤」への本件商標の使用が、どのような経緯をもって、需要者感情を害するのか否かも不明であり、さらには、「請求人製品を愛用する需要者」は、あくまで一部の公衆であり、請求人製品を使用しない多くの者を差し置いて、かかる需要者のみをもって「公」と表現するのは、穏当ではない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号にも該当しない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、縦長四角形の輪郭内の左側に、輪郭横幅の略4分の1程度の幅で、内側がわずかになだらかな曲線となった赤色の図形を配し、その右側の上部に「ムヒホワイティ」の片仮名を黒色で表し、その下にやや右肩上がりに「Muhi Whitee」の欧文字を赤色で表してなり、さらに、該欧文字の下方の近接した位置に、赤い円から時計回りで下方に、7個の円が徐々に小さくなり、かつ、それら円の色彩も徐々に薄くなるように、弧を描くように表し、その3番目と4番目の間の左側に、灰色の円を配し、その灰色の円から時計回りで上方に、7個の円が徐々に小さくなり、かつ、それら円の色彩も徐々に薄くなるように、弧を描くように表し、各7個の円の連鎖が逆向きで巴状に向き合うような構図の図形(図形部分1)を配し、加えて、該図形からやや間隔を空けた縦長四角形の輪郭内の下部にリング状の円を配してなるものである。
そして、本件商標は、その構成中の「ムヒホワイティ」及び「Muhi Whitee」の両文字に相応して「ムヒホワイティ」の称呼を生じるものであるが、これより特定の観念は生じないものであり、また、図形部分1からは特定の称呼や観念は生じないものである。
しかして、本件商標の構成態様に照らせば、図形部分1は、それを分離して観察することが取引上不自然である程に他の構成文字等と不離に融合したものとはいえず、独立して看取され得るものであり、文字部分に比してみれば印象の程度が高いとまではいえないとしても、自他商品の識別標識としての要部たり得るものとみるべきであって、図形部分1をもって類否判断の対象となし得るというのが相当である。
(2)引用商標
ア 引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、構成全体の左側に黒色の円を描き、これから時計回りに、円が徐々に小さくなり、かつ、それら円の色彩も徐々に黒が薄れて白に近い薄い灰色となるように、計13個の円を配し、全体としての外縁が正円を形成する図形からなるものであるところ、これよりは、特定の称呼や観念は生じないものである。
イ 引用商標2
引用商標2は、別掲3のとおり、縦長四角形の輪郭内の右端に、輪郭横幅の略8分の1程度の幅で上下に黒から灰色に5段階で濃淡が変わる縦長の棒状図形を配し、その左方上部に、引用商標1を構成する図形と相似の図形(以下「引用商標1相似図形」という。)を配し、さらに、その下方に「TRANSINO」の欧文字(その構成中の「A」の欧文字は、横線部を省略した態様で表されている。)及び「[トランシーノ]」の片仮名(該片仮名は、該欧文字の縦横略3分の1程度の大きさで表されている。)を配してなるものである。
そして、引用商標2は、その構成中の「TRANSINO」及び「[トランシーノ]」の両文字に相応して「トランシーノ」の称呼を生じるものであるが、これより特定の観念は生じないものであり、また、その構成中の図形部分からはいずれも特定の称呼や観念は生じないものである。
しかして、引用商標2の構成態様に照らせば、その構成中の引用商標1相似図形は、それを分離して観察することが取引上不自然である程に他の構成文字等と不離に融合したものとはいえず、独立して看取され得るものであり、文字部分に比してみれば印象の程度が高いとまではいえないとしても、自他商品の識別標識としての要部たり得るものとみるべきであって、引用商標1相似図形をもって類否判断の対象となし得るというのが相当である。
ウ 引用商標3
引用商標3は、別掲4のとおり、縦長四角柱の包装箱を正面わずかに上方の視点から見たように表されてなる図形(ただし、その正面以外の面がいかなる構成態様からなるかは明らかでない。)の正面部の縦長四角形内を左から右に黄色、茶色、黄色、灰色をもって階調(グラデーション)を施し、それによって、該正面部において緩やかなS状を呈するようにした背景様のものを描くと共に、該正面部の上方に「ロコベースリペア」、「Locobase」及び「REPAIR」の片仮名及び欧文字(中段の「Locobase」の欧文字に比して、上段の「ロコベースリペア」の片仮名は縦方向を略4分の1、横方向を略2分の1程度の大きさで、下段の「REPAIR」の欧文字は縦横略3分の2の大きさで、それぞれ表されている。)を3段に表し、また、該正面部の下方に「保湿成分セラミド3配合」及び「ハードタイプクリーム」の各文字を2段に表し、さらに、該正面部の最下部に全体として外縁が三角形を形成する図形とその右方に「Yamanouchi」の欧文字を配してなるものを表したものである。
そして、引用商標3の構成中、上記「保湿成分セラミド3配合」及び「ハードタイプクリーム」の各文字を2段に表してなる部分は、商品の品質等を表してなるものとして理解され得るものであるから、その構成中の他の構成文字に相応して「ロコベース」、「ロコベースリペア」及び「ヤマノウチ」の各称呼を生じるものであるが、これより特定の観念は生じないものである。
エ 引用商標4
引用商標4は、別掲5のとおり、縦長四角柱の包装箱をほぼ正面わずかに上方の視点から見たように表されてなる図形(ただし、その正面以外の面がいかなる構成態様からなるかは明らかでない。)の正面部の縦長四角形内において、引用商標3と同様の配色を施し、かつ、各文字を配してなるものであって、その最下部に配されてなる文字等が「ZEPHARMA」及び「ゼファーマ」の欧文字及び片仮名(該「ZEPHARMA」の「ZE」の欧文字部分の上下には緩やかな曲線が描かれ、また、該「ゼファーマ」の片仮名は、該欧文字に比して、縦方向略4分の1、横方向略2分の1程度の大きさで、その右端下段に表されている。)に置き換えられているものである。
そして、引用商標3と同様に、その構成中の各構成文字に相応して「ロコベース」、「ロコベースリペア」及び「ゼファーマ」の各称呼を生じるものであるが、これより特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用各商標の類否
ア 外観
本件商標と引用各商標とは、外観構成の全体において比較してみれば、それぞれ明らかな相違が認められるから、外観上相紛れるおそれはないというべきものである。
そして、本件商標の図形部分1と引用商標1及び引用商標2の構成中の引用商標1相似図形とを対比すると、本件商標の図形部分1は、赤い円から時計回りで下方に、7個の円が徐々に小さくなり、かつ、それら円の色彩も徐々に薄くなるように、弧を描くように表し、その3番目と4番目の間の左側に、灰色の円を配し、その灰色の円から時計回りで上方に、7個の円が徐々に小さくなり、かつ、それら円の色彩も徐々に薄くなるように、弧を描くように表し、各7個の円の連鎖が逆向きで巴状に向き合うような構図の図形であるのに対し、引用商標1及び引用商標2の構成中の引用商標1相似図形は、構成全体の左側に黒色の円を描き、これから時計回りに、円が徐々に小さくなり、かつ、それら円の色彩も徐々に黒が薄れて白に近い薄い灰色となるように、計13個の円を配し、全体としての外縁が正円を形成する図形である。
しかして、両者は、複数の円が時計回りに配され、それらの円が徐々に小さくなり、色彩も徐々に薄れていく点では相通ずるものがあるといえるけれども、本件商標の図形部分1が、一方の7個の円の円弧状の連鎖と他方の7個の円の円弧状の連鎖が分離し、逆向きで巴状に絡み合うように向き合う構図のものであり、引用商標1及び引用商標2の構成中の引用商標1相似図形は、13個の円が円状に連鎖する構図のものである点にそれぞれ特徴があり、また、本件商標の図形部分1は、上下に細長く形成されているのに対し、引用商標1及び引用商標2の構成中の引用商標1相似図形は、上下左右は均等で、全体として正円を形成しており、異なる外縁を形成している点に相違がある上、さらに、両者に施された色彩は、異なるものである。
してみると、両者は、全体としての構図・表現が明らかに相違するものというべきであって、これらから受ける印象を全く異にするといわざるを得ないから、対比してみれば、明らかに相違するものとして区別し得るものであり、また、時と所を異にした場合においても、異なる印象のものとして看取され、記憶されるというのが相当であって、彼此相紛らわしいものとは認められない。
次に、本件商標の左側に配された赤色の図形部分と引用商標3及び引用商標4の構成中の縦長四角形内を左から右に黄色、茶色、黄色、灰色をもって階調(グラデーション)を施すことにより緩やかなS状を呈するようにした背景様の図形部分とを対比すると、両者は、単に模様を構成する図形として看取されるとみるのが相当であるが、たとえ、両者をもって、商品の識別をすることがあるとしても、形状が相違する上、前者が単一色によるものであるのに対し、後者が複数の階調(グラデーション)によるものであることや色彩の違いなど、両者は明らかな差異を有するものであるから、相紛らわしいものということはできない。
イ 称呼
本件商標と引用各商標の称呼についてみると、本件商標は「ムヒホワイティ」の称呼を生ずるものであるのに対し、引用商標1は特定の称呼を生じないものであり、また、引用商標2は「トランシーノ」の称呼を生ずるもの、引用商標3は「ロコベース」、「ロコベースリペア」及び「ヤマノウチ」の各称呼を生ずるもの、引用商標4は「ロコベース」、「ロコベースリペア」及び「ゼファーマ」の各称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標と引用商標1とは、後者から特定の称呼を生じないものであるから、称呼上これらを比較することはできず、また、本件商標から生ずる称呼と引用商標2ないし引用商標4から生ずる各称呼とを対比しても、その音の構成及び配列において明らかに相違するものであるから、いずれも、判然と区別し得るものである。
ウ 観念
本件商標と引用各商標とは、いずれも特定の観念を生ずるものではなく、その比較をすることができないから、観念上相紛れるおそれはないものである。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用各商標に類似する商標であると判断することはできない。
なお、請求人は、本件商標及び引用各商標について、図形部分の共通点を挙げ、その共通点をもって、本件商標と引用各商標が類似する商標である旨主張している。
しかしながら、図形部分の構成要素をそれぞれ解析してみれば、請求人のいうような共通点を挙げ得るとしても、上記のとおり、図形部分をみても、その差異が請求人の主張する共通点を凌駕して意識させない程に、両図形の全体から受ける印象を顕著に異なるものとしているというべきであるから、請求人の上記主張は、採用することができないものである。
また、請求人は、図形部分に関して、見る角度によっては相紛らわしいものとなる旨主張しているが、上記の本件商標と引用各商標の差異、殊に図形部分の相違は、見る角度を変化させることによっても、明確に印象の相違するものとして看取されるものであり、請求人の上記主張によって、上記類否判断が左右されることはないというべきである。
(4)取引の実情等
商標の類否判断に際しては、商標の使用される商品の取引の実情を明らかにし得るかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当であるところ、考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すと解される(最高裁昭和49年4月25日第1小法廷・昭和47年(行ツ)第33号判決参照)。
しかして、後記2(1)の「引用各商標の周知性」を勘案してもなお、本件商標が引用各商標に類似する商標であるとすることはできないとの上記類否判断を左右するに足りる一般的、恒常的な取引の実情等は見いだせない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は引用各商標に類似する商標であると判断することはできないものであるから、指定商品の類否について論及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用各商標の周知性
請求人提出の甲各号証及び請求人の主張によれば、請求人は、2007年9月に肝斑改善薬(以下「本件製品」という。)の販売を開始し、本件製品の包装箱や容器、添付文書等には、「トランシーノ」、「TRANSINO」(その構成中の「A」の欧文字は、横線部を省略した態様で表されている。)の文字と共に、引用商標1と同一の標章(以下「使用商標」という。)を使用していることが認められる。
また、本件製品は、発売から1月間の売上高、半年間の売上高において、OTC医薬品分野で特出した売上高を記録し、「日経MJ」の発表に係る「2007年ヒット商品番付」において「西の前頭」に選出されたり、株式会社ドラッグマガジン及びその関連組織である八千代会が主催する第20回「ヒット商品大賞」と「話題賞品大賞」(2007年度)を受賞したほか、2007年から2008年に発刊・発行された全国紙(日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞等)や雑誌(日経トレンディ、女性自身等)に本件製品に関する紹介記事等が掲載され、さらに、請求人自身も同時期に、テレビや雑誌等により、本件製品に係る広告宣伝をしていたことが認められる。
しかしながら、請求人が本件商標と類似するものである旨の主張をする対象となる標章は、引用商標1及び引用商標2の構成中の引用商標1相似図形、すなわち使用商標であるところ、請求人の提出に係る上記新聞記事等においては、本件製品を表す際に、「トランシーノ」の文字のみを用いている場合があり、また、他の紹介記事等においても、使用商標が、専ら「トランシーノ」又は「TRANSINO」(その構成中の「A」の欧文字は、横線部を省略した態様で表されている。)の文字と共に使用されており、使用商標のみが使用されている事例は見いだせない。
また、請求人の提出に係る上記新聞や雑誌における本件製品に係る紹介記事等は、いずれも2007年及び2008年(平成19年及び平成20年)の発刊・発行に係るものにとどまり、本件商標の登録出願時(平成22年6月29日)及び登録査定時(同年12月14日)前後のものはない。
してみれば、請求人の提出に係る証拠によっては、引用商標1及び引用商標2の構成中の引用商標1相似図形がそれ自体で、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品(本件製品)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることはできない。
さらに、請求人提出の甲各号証によれば、引用商標3及び引用商標4の構成中の縦長四角形内を左から右に黄色、茶色、黄色、灰色をもって階調(グラデーション)を施すことにより緩やかなS状を呈するようにした背景様の図形及び「ロコベースリペア」、「Locobase」又は「REPAIR」の各文字が、2003年以降、クリーム(化粧品)に使用されていることを窺い知るにとどまるものであるから、これから、該図形及び各文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることはできず、また、該図形部分のみが、独立して需要者の間に広く認識されるに至っていたとは到底認め難いものである。
(2)本件商標と引用各商標との類似性の程度
本件商標が引用各商標に類似する商標と認められないことは、上記1(5)のとおりであり、本件商標の図形部分と引用各商標及びその図形部分とを比較しても、相紛らわしいもの、あるいは関連あるものとして看取されるとはいい難いものであるから、両者を関連性がある商標とみるべき理由は見いだせないというべきである。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、別異の出所を表示するものとして看取される商標といわざるを得ないものである。
(3)出所混同のおそれ
上記(1)及び(2)によれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標には該当しないから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとはいえない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標が引用各商標に類似するものとは認められないことは、上記1(5)のとおりである。
また、請求人の提出に係る証拠のいずれを見ても、被請求人が本件商標を不正の利益を得る又は他人の著名商標に蓄積された信用若しくは名声にフリーライドする等の不正の目的をもって使用すると認めるに足る事実は、見いだし得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものとはいえない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その構成態様に照らし、きょう激、卑わい若しくは差別的な文字又は図形からなるものでないことは明らかであるばかりでなく、請求人の主張及びその提出に係る証拠のいずれを見ても、本件商標をその指定商品に使用することが、社会公共の利益、社会の一般的道徳観念に反するものとはいえない。
なお、請求人は、医療過誤のおそれや請求人の業務に係る製品を愛用する需要者の感情を害するおそれなどを理由として挙げているが、いずれも本件商標と引用各商標とが類似すること、あるいは商品の出所について混同を生じるおそれがあるものであることを前提とする主張であり、上記1及び2に照らせば、その前提において既に失当といわざるを得ないから、これを採用することはできない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標には該当せず、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標(登録第5385781号商標)


2 引用商標1(登録第5047058号商標)


3 引用商標2(登録第5100938号商標)


4 引用商標3(登録第4808991号商標)


5 引用商標4(登録第4997920号商標)


(上記1ないし5に係る各商標の色彩については、原本参照のこと。)

審理終結日 2012-02-07 
結審通知日 2012-02-09 
審決日 2012-02-24 
出願番号 商願2010-51242(T2010-51242) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (X05)
T 1 11・ 261- Y (X05)
T 1 11・ 271- Y (X05)
T 1 11・ 22- Y (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2011-01-21 
登録番号 商標登録第5385781号(T5385781) 
商標の称呼 ムヒホワイティ、ムヒ、ホワイティ 
代理人 辻居 幸一 
代理人 松尾 和子 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 大房 孝次 
代理人 谷山 尚史 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 中村 稔 
代理人 藤倉 大作 

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