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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない X05
管理番号 1255248 
審判番号 無効2011-890070 
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-29 
確定日 2012-03-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第5348314号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5348314号商標(以下「本件商標」という。)は、「グルコン」の片仮名と「GLUCHON」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成21年9月1日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同22年8月3日に登録査定がなされ、同年8月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
本件商標は、指定商品との関係で「グルコン酸あるいはグルコン酸化合物」としか認識し得ない「グルコン」の文字を上段に大きく表示してなるものであるから、これを「グルコン酸を主成分とする薬剤」に使用しても、「グルコン酸を主成分とする商品」であることを認識させるに止まり、単に商品の品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識として機能し得ないものである。
そして、請求人が主張する無効理由が正当なものであることは、請求人が平成17年7月19日付けで出願した指定商品を第5類「薬剤」とする「グルコン」の商標登録出願(商願2005-66303号・甲第3号証)に対する拒絶理由によっても明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきものである。

3 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番を含む。)を提出した。
請求人は、本件商標について、「『グルコン酸あるいはグルコン酸化合物』としか認識し得ない『グルコン』の文字・・・」と述べているが、後述するように、「グルコン」(又は「GLUCHON」)は、著名な辞書を検索しても見当たらない造語である。したがって、「酸」の文字を付していない「グルコン」のみよりなる文字と「グルコン酸」は全く別個のものであるから、請求人の主張は根拠のない単なる独断に過ぎないものである。以下、詳述する。
(1)まず、「グルコン」と「GLUCHON」とを併記してなる本件商標に接した需要者又は取引者が、これに「酸」なる文字を付加した「グルコン酸(GLUCONIC ACID)」(乙第1号証の1)を発想し得たか否かを検討する。
そもそも、欧文字部分のスペルが両者間で全く異なるのであるから、化学に精通した需要者又は取引者であれば、「グルコン」と「GLUCHON」とを併記してなる本件商標から「グルコン酸(GLUCONIC ACID)」は発想し得ないものと確信する。
逆に、化学に精通していない需要者又は取引者であれば、「グルコン酸(GLUCONIC ACID)」自体を認識していないので、「グルコン」と「GLUCHON」とを併記してなる本件商標に対して、「酸」なる文字を付加することは到底発想し得ない。
しかして、本件商標は、「グルコサミン(GLUCOSAMINE)」(乙第1号証の1)と「コンドロイチン(CHONDROITIN)」(乙第1号証の2)を組み合わせてなる造語である。また、「GLUCHON」なる単語は、辞書に掲載されていないものである(乙第1号証の3及び乙第2号証)。
本件商標が上述のような発想のもとに創作された造語であることは、例えば、被請求人が商標「グルコンキャッツ」について商標権を保有し(商標登録第4402170号:乙第3号証及び乙第4号証)、かつ、当該商標をグルコサミン、コンドロイチン及びキャッツクロー配合の健康補助食品について使用しているという事実(乙第5号証)からも首肯できる。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用しても、需要者又は取引者によって、当該商品が「グルコン酸を主成分とする商品」であろうと一般に認識されることはないと思料する。
また、「グルコン」若しくは「GLUCHON」又はこれらの組み合わせが、本件商標の登録に係る指定商品を取り扱う業界において、商品の品質を表示するものとして普通に使用されている事実もない。
(2)請求人は、請求人の主張を裏付ける証拠として、自らの拒絶確定出願(商願2005-66303)を挙げている。
しかしながら、当該拒絶確定出願に係る商標は「グルコン」の片仮名を横書きしたものである。一方、本件商標は、上段に「グルコン」の片仮名を横書きし、下段に「GLUCHON」の欧文字を横書きした上下二段の構成からなっており、両商標はその構成態様を異にしている。
商標登録出願に係る商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かは、当該商標の具体的な構成態様及びその指定商品との関係から、個別かつ具体的に判断されるべきものであるから、同一の商品を指定して同一の商標について商標登録出願をしたという場合であれば格別、本件のように、商標の構成態様が相違する場合に、他者の商標が商標法第3条第1項第3号に該当することを立証するために、自らの拒絶確定出願(しかも、意見書すら提出せずに拒絶された出願)を証拠として挙げるのは失当であるという他ない。
(3)したがって、本件商標は、その指定商品に使用しても商品の品質を表示するものではなく、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものである。
よって、本件商標登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものではなく、同法第46条第1項の規定により無効にされるべきものではない。

4 当審の判断
請求人は、本件商標は商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきものである旨主張している。
そこで、本件商標が、その指定商品について使用された場合に、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるか否かについて判断する。
(1)請求人は、本件商標は指定商品との関係で「グルコン酸あるいはグルコン酸化合物」としか認識し得ない「グルコン」の文字を上段に大きく表示してなるものであるから、これを「グルコン酸を主成分とする薬剤」に使用しても、「グルコン酸を主成分とする商品」であることを認識させるに止まり、単に商品の品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識として機能し得ないものである旨主張している。
しかしながら、本件商標は、前記1のとおり、「グルコン」の片仮名と「GLUCHON」の欧文字とを二段に横書きにしてなるものであるから、本件商標が商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるか否かは、この構成全体からなる本件商標が、自他商品の識別標識として機能し得ないものであるか否かを検討する必要がある。
そこで、「グルコン」及び「GLUCHON」の文字がいかなる意味合いを表している語であるかについてみるに、被請求人の提出に係る乙第1号証(メジカルビュー社発行「ステッドマン医学大辞典(昭和56年3月20日第1版発行、平成4年5月10日第3版発行)」)によれば、「グルコン酸」を表す英語表記は「gluconic acid」であることが認められるが、「グルコン」の文字のみを表す英語表記は見当たらない(乙第1号証の1)。また、乙第1号証の3によるも、「GLUCHON」の綴り字からなる成語や該語を含む熟語は見当たらず、このことは、乙第2号証(Oxford Dictionaries Onlineにおける「GLUCHON」の検索結果)に照らしてみても同様である。
そして、広く一般に用いられている、例えば、岩波書店発行の広辞苑、小学館発行の国語大辞典、講談社発行の日本語大辞典の辞典類を調べてみても、「グルコン」の語(文字)は見当たらない。
そうとすれば、「グルコン酸」なる一連の語が「グルコースの酸化によりえられる結晶性酸」を表しているとしても(株式会社日刊工業新聞社発行「マグローヒル/科学技術用語大辞典(1997年3月18日第3版3刷)」)、「グルコン」の文字が「グルコースの酸化により得られる結晶性酸」であることを示す証拠はなく、「グルコン」の文字が「グルコン酸」の略称を表す語として用いられているとの証左もないから、「GLUCHON」の文字は、特定の意味合いを有しない造語と認められるものである。
してみれば、本件商標は、あくまでも「グルコン」の片仮名と「GLUCHON」の欧文字とを二段に横書きにしてなるものであって、上記した認定事実をも併せ考慮すれば、被請求人が創作した「GLUCHON」の語にその自然な読みを併記したものであって、全体として一種の造語を表したものとみるのが自然であるから、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用しても、商品の品質を表示したものと理解・認識されることはなく、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものというべきである。
(2)請求人は、請求人が平成17年7月19日付けで出願した商標登録出願[指定商品を第5類「薬剤」とし、「グルコン」の文字からなる商標登録出願(商願2005-66303号)]に対する拒絶理由通知書(甲第3号証)を証拠として提出している。
しかしながら、本件商標と請求人が出願した上記出願に係る商標とは、「グルコン」の文字部分を共通にするとしても、全体の構成態様においては明らかな差異があるばかりでなく、請求人の挙げている審査例は、あくまでも、審査における一例であり、法的な最終判断を経ているものでもないから、請求人が挙げている審査例が本件商標についての識別性の判断にそのまま当てはまるものとはいえない。
そして、他に、本件商標が「薬剤」の品質を表すものであることを認めるに足る証拠は提出されていない。
してみれば、本件商標が商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである旨の請求人の主張は、理由がないものといわざるを得ず、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものというべきである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-01-25 
結審通知日 2012-01-27 
審決日 2012-02-14 
出願番号 商願2009-66647(T2009-66647) 
審決分類 T 1 11・ 13- Y (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2010-08-27 
登録番号 商標登録第5348314号(T5348314) 
商標の称呼 グルコン 
代理人 米屋 武志 
代理人 北脇 大 
代理人 米屋 崇 
代理人 高島 一 
代理人 鎌田 光宜 
代理人 鍋島 真紀 

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