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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1255229 
審判番号 取消2010-300564 
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-05-24 
確定日 2012-03-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4809928号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4809928号商標の指定役務中、第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4809928号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドクターズ・サロン」の片仮名を横書きしてなり、平成16年1月14日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,写真の撮影,通訳,翻訳」を指定役務として、同16年10月15日に設定登録され、現に有効に存続するものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成22年6月9日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人は、本件商標を使用していると主張している。
しかし、被請求人が提出した乙第1号証-イにおいて、「ドクタ-ズ・サロン」は、「ご相談・お間合わせ先」の欄に記載されているのみであり、乙第1号証-ロ及び乙第1号証-ハにおいても、「ドクタ-ズ・サロン」は、問い合わせ先として記載されているのみである。さらに、乙第1号証-ニにおいても、「治せる医療」シンポジュウムの主催者が「ドクタ-ズ・サロン」であることを表示しているのみである。
乙第2号証-イにおいては、「ドクタ-ズサロン」は、領収書の請求先として記載されているのみであり、また、乙第2号証-ロにおいては、「ドクタ-ズ・サロン」は、残暑見舞いの差出人の名称として記載されているのみである。
上記の証拠からは、被請求人が本件商標を被請求人の主催するグル-プ名として使用されていることは分かるが、商標として使用しているということができないものである。
特に、乙第1号証-ロ・ハは、被請求人が見解を述べているホ-ムペ-ジであり、同ニは、講演依頼の書簡であるので、このようなものが商標法上の商品・役務に該当しないこと、また、これらにおける「ドクタ-ズ・サロン」の文字が商標として使用されていないことは、明らかである。
乙2号証-イは、「ドクタ-ズサロン」という団体がコピ-を取ったことの領収書にすぎず、本件商標が商標として使用されていることの証明にはならない。
同ロは、残暑見舞いの差出人として本件商標が使用されているが、書面との内容をかんがみても、本件商標が商標として使用されているということはできない。
(2)仮に、乙第1号証-イにおける「ドクタ-ズ・サロン」が商標として使用されているとしても、これは、「医療用機械器具」の範ちゅうに属すると思われる商品について使用されているにすぎないので、「電子出版物の提供、図書及び記録の供覧」に使用しているということができない。
(3)さらに、乙第1号証-イ・ロ・ハ、乙第2号証-ロには、何ら日付の証明がなく、本件審判の請求の登録前3年以内に使用された証拠にはならない。
(4)以上のとおり、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が、「電子出版物の提供、図書及び記録の供覧」について使用されていると認められないから、本件商標が本件審判の請求の登録前に使用された事実は、証明されていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第6号証(枝番を含む。)(平成22年8月2日付け上申書に添付の乙第1号証及び乙第2号証を乙第3号証、乙第4号証、同年12月24日付け答弁書に添付の乙第1号証及び乙第2号証を乙第5号証、乙第6号証と読み替えて表す。)を提出した。
1 第1答弁の理由
被請求人は、昭和40年代には、既に「ドクタ-ズ・サロン」の名称を使っており、本件商標の登録後も使いつづけている。請求人は、「被請求人は本件商標を不使用」というが、その根拠を明示していただきたい。無根拠で、提訴したのなら、商標権の法的安定性を著しく損ない、被請求人の信用及び名誉を棄損する。
被請求人は、書証に示すとおり、登録商標を使用しつづけてきている。
請求人の請求は、法の保護した利益、すなわち法益のあからさまな侵害で、法治国家における、法秩序を無視するたけだけしい暴挙といわざるをえない。
2 上申の理由
請求人は、商標登録の取消しを求めていながら、「電子出版物」・「図書及び記録」が何かにつき、まったく見解を明かしていない。被請求人の主張見解をきくまえに、請求人自身の主張見解を披れきするのが、当然ではないか。
(1)「電子出版物」について
この中には、ホームページ及びブログが、当然に入る。むしろ、これらこそ、その主たるものである。製作に大きな資本や組織を要する、電子辞書・電子地図のようなものだけが、「電子出版物」ではない。それは、学術書にかぎらず、漫画・エロ本・子供新聞、みな「紙出版物」であるのと同じである。請求人は、ホームページやブログ以外のいかなるものが、「電子出版物」であるのか、明示すべきである。
(2)「図書及び記録」について
自著・他著(専門家の著書・文・デ-タ・治験例等)を店や説明会・講演会の、来客・来場者に配布してきたものが、すなわち「図書や記録」であると解し、それらを、書証として提出する。そこでは、いずれも、商標「ドクタ-ズサロン」を使ってきた。
公的機関(内閣府)への提出書類にも同商標を使っている。これは「記録」を、固有化独自化するもので、商標本来のありようではないか。
3 第2答弁の理由
(1)本件請求の反社会性
新聞社や出版社ですら電子書籍を一点も出していないところが少なくない現時点で、被請求人のごとき資本や組織の弱者に、強者に先んじた同書籍発刊を当然事とするのは、いたずらに難きを求める反社会的行為である。
出版業を含め産業一般は、資本や組織の強者が先べんをつけて、弱者が追随する”川上から川下へ”が実態で、その逆は事実上け有である(乙第5号証)。け有なありようを、一般的であるかに装う本件はSLAPP訴訟の典型であり、民法第1条各項から本件請求の反社会性は一見明白である。
(2)電子書籍とホームページ・ブログ
同じ電子媒体の電子書籍とホームページ・ブログ等は、その実混とんとしており、截然とは分かち難い。電子書籍とホームページ・ブログ等の双方とも、電子を媒体とした非紙媒体の非印刷本である。それゆえ、これらを截然としゅん別しない限り、後者は、前者と同じく「電子書籍」とせざるをえまい。

第4 当審における審尋
当審において被請求人に対してした審尋は、要旨次のとおりである。
1 商標法第50条第1項の審判の請求があった場合は、同条第2項は、「前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。」と規定しており、これを本件に照らしてみると、(1)審判の請求の登録前3年以内(平成19年6月9日から同22年6月8日。以下、これを「要証期間」という。)に、(2)日本国内において、(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(4)請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」のいずれかについて、(5)本件商標「ドクターズ・サロン」の使用を、被請求人が証明しなければ商標登録が取り消されることになり、また、請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」について登録商標の使用をしていないことについて正当な理由(以下「不使用の正当理由」という。)があることを被請求人が明らかにしたときは、商標登録の取り消しを免れることになる。
上記によれば、不使用の正当理由がある場合を除き、被請求人は、上記(1)ないし(5)の要件をすべて証明しなければ請求に係る指定役務についての商標登録が取り消されることになるのであるから、本件商標「ドクターズ・サロン」の文字を単に使用していたことを証明するのみでは、上記要件を満たすことにはならない。
2 被請求人は、乙第1号証(イないしニ)及び乙第2号証(イ及びロ)を提出して、本件商標の使用をしている旨主張するところ、乙第1号証-イは、薬局店頭掲載用のポスターの写し、乙第1号証-ロは、ウェブページ(http://www2.ocn.ne.jp/~dr.salon/right.htm)の写し、乙第1号証-ハは、1枚目は、その体裁から「新宿区新宿5丁目17番6-806号」在の「ドクターズ・サロン」を紹介する印刷物の写しと解され、2枚目ないし15枚目は、いずれもブログ(ニュースや事件、趣味などに関し日記形式で自分の意見を書き込むインターネットのサイトやホームページ。:「コンサイスカタカナ語辞典第3版」〔2005年10月20日 株式会社三省堂発行〕)の写しであり、乙第1号証-ニは、シンポジウムの依頼状及び電子メールの写しと認められ、また、乙第2号証-イは、コピー代の領収証の写し、乙第2号証-ロは、残暑見舞いの写しと認められるものである。
ところで、被請求人は、平成22年8月2日付け上申書において、「電子出版物」には、ホームページ及びブログが含まれ、また、自著及び他著を店・説明会・講演会の来客等に配布したものが「図書及び記録」と解する旨主張している。
そこで、「電子出版物の提供」についてみるに、「広辞苑第六版」(2008年1月11日 株式会社岩波書店発行)には、「【電子出版】編集・印刷の過程をコンピューターによって管理した出版のこと。また、CD-ROMなどの記憶媒体やインターネットを利用したデジタル‐データ出版のこと。」、「【出版物】発売・頒布の目的で印刷された書物・図画。刊行物。」及び「【提供】さし出して相手の用に供すること。『労力を?する』『番組を?する』」と記載されていること、更に「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」(特許庁商標課編 2001年12月社団法人発明協会出版)の第41類の「電子出版物の提供」の見出しの下に、「電気通信回線を通じて供覧させる役務である。」と記載されていることにかんがみると、「電子出版物の提供」とは「発売・頒布の目的で編集・印刷の過程をコンピューターによって管理した出版物を電気通信回線を通じて供覧する」ものと解されるものであり、また、「図書及び記録の供覧」については、前出「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」の第41類の「図書及び記録の供覧」の見出しの下に、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供する施設(例えば、図書館)が提供する役務である。」と記載されている。
そして、商標法上の役務とは、「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの。」と解されるところから、請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」についても、(1)「他人のためにする労務又は便益であって、(2)独立して商取引の目的となるもの、の要件をすべて満たすものであることを要するものである。
上記を踏まえて被請求人の提出した証拠をみるに、「ドクターズ・サロン」の文字の表示が見受けられるものの、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかの使用によるか明らかではなく、かつ、そのほとんどが要証期間の使用であるかも不明であり、加えて、そもそも「ドクターズ・サロン」の文字を請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」のいずれかに使用しているものとも認められない。
3 要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」のいずれかについて本件商標の使用を証明する証拠があれば提出されたい。

第5 被請求人の対応
被請求人は、前記第4の審尋に対して請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」のいずれかについて本件商標の使用を証明する新たな証拠を提出していない。

第6 当審の判断
1 請求に係る指定役務についての本件商標の使用について
被請求人は、本件商標の使用を証明する証拠として、乙各号証を提出しているところ、そのほとんどには、本件商標のつづりと同じくする「ドクターズ・サロン」の文字が表示されていることが認められるものであるが、以下の理由により、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」のいずれかについて本件商標の使用をしたと認めることはできない。
乙第1号証-イは、「生涯けんこう宣言 内に交番、外には信頼のお医者さま」と題するポスターの写しとするものであり、「基本療法として、マクラ・背中・腰に交番磁気治療器を組み入れて使用すると相乗効果により、よりよい効果をもたらします。」等と記載されているものであるから、これは、「広告」であるとはいい得ても、展示し、頒布する等の使用の日付が確認し得ないばかりでなく、その内容が請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでもない。
したがって、乙第1号証-イをもって、本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第1号証-ロは、「治らぬ病は、治さぬ病」と題するインターネットの「ホームページ」の写しとするものであるから、これは、「広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)であるとはいい得ても、その使用の日付が確認し得ないばかりでなく、その内容が請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでもないから、これをもって、本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第1号証-ハは、1枚目は、その体裁から「新宿区新宿5丁目17番6-806号」在の「ドクターズ・サロン」を紹介する印刷物の写しと解され、2枚目ないし15枚目は、「ドクターズ・サロン」等の記載がある「ブログ」の写しとするものであるから、これは、「広告に標章を付して展示する行為」及び「広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」であるとはいい得ても、その内容が請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでもないから、これをもって、本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第1号証-ニは、医療に関する講演を依頼する「シンポジュウムのパネラー依頼状」とするものであるが、その内容が請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでないばかりでなく、その日付「平成22年6月21日」も本件審判の請求の登録後であるから、これをもって、要証期間に本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第2号証-イは、「領収書」の写しとするものであるから、「取引書類」であるとはいい得ても、その取引内容が「コピー」であって、請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでないばかりでなく、その発行者は、「フェデックス キンコーズ・ジャパン株式会社」であって、被請求人の使用に係るものでもないから、これをもって、本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第2号証-ロは、「ドクターズ・セミナー」の主催を勧める「残暑見舞い状」の写しとするものであるが、これは、「広告」であるとはいい得ても、頒布する等の使用の日付が確認し得ないばかりでなく、その内容が請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでもないから、これをもって、要証期間に本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第3号証αは、「ここまで治せる現代の医科学」と題する商標権者の書籍の写しと認められるところ、そこには、本件商標が付されてなく、また、自己の書籍の出版は、商標法上の役務ということができず、請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでもないから、これをもって、本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第3号証βは、「専門医の証言」と題する印刷物であるところ、これは、使用の日付が確認し得ないばかりでなく、その内容が請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」の範ちゅうに属するものでもないから、これをもって、本件商標の使用があったとすることはできない。
乙第4号証αは、「医療構造改革特区認定申請書」とするものであるが、これは、商取引にかかわるものではないから、これをもって、商標の使用とは、いい得ないものである。
乙第4号証βは、「『医療特区』申請 趣意書・補遺」とするものであるが、これは、商取引にかかわるものではないから、これをもって、商標の使用とは、いい得ないものである。
乙第5号証は、「アップルの”検閲”が行く手を阻む 電子書籍に、光明はあるのか?」と題する印刷物の写しであり、乙第6号証は、「物足りぬ『電子書籍元年』」と題する読売新聞(2010年12月21日付け)の記事の写しであるところ、いずれの内容も電子書籍に関するものであり、本件商標の使用に係る記述は認められないものである。
ほかに、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標の使用の事実を認めるに足る証拠の提出はない。
2 被請求人の主張について
(1)被請求人は、「電子出版物」の中には、ホームページ及びブログも含まれ、双方とも、電子を媒体とした非紙媒体の非印刷本であり、せつぜんとは分かち難い旨主張する。
しかし、前記第4の審尋のとおり、「広辞苑第六版」(2008年1月11日 株式会社岩波書店発行)には、「【電子出版】編集・印刷の過程をコンピューターによって管理した出版のこと。また、CD-ROMなどの記憶媒体やインターネットを利用したデジタル‐データ出版のこと。」、「【出版物】発売・頒布の目的で印刷された書物・図画。刊行物。」及び「【提供】さし出して相手の用に供すること。『労力を?する』『番組を?する』」と記載されていること、更に「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」(特許庁商標課編 2001年12月社団法人発明協会出版)の第41類の「電子出版物の提供」の見出しの下に、「電気通信回線を通じて供覧させる役務である。」と記載されていることにかんがみると、「電子出版物の提供」とは「発売・頒布の目的で編集・印刷の過程をコンピューターによって管理した出版物を電気通信回線を通じて供覧する」ものと解されるものである。
そうしてみると、ホームページ及びブログは、電気通信回線を通じて提供されるとしても、これら自体が発売・頒布を目的とするコンピュータによって管理した出版物とは、いい得ないものであるから、「電子出版物の提供」にホームページ及びブログが含まれるとみることはできない。
また、被請求人は、自著・他著(専門家の著書・文・デ-タ・治験例等)を店や説明会・講演会の、来客・来場者に配布してきたものが、すなわち「図書や記録」であると解する旨主張する。
しかし、前記第4の審尋のとおり、「図書及び記録の供覧」については、前出「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」の第41類の「図書及び記録の供覧」の見出しの下に、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供する施設(例えば、図書館)が提供する役務である。」と記載されていることから、被請求人や他人が著作した印刷物や治験例等が「図書及び記録」の範ちゅうに含まれるとしても、これらを被請求人の店舗の来客や、説明会・講演会などの来場者に配布する行為が上記「図書及び記録の供覧」の範ちゅうに含まれるとは、到底いえないものである。
したがって、被請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(2)被請求人は、請求人が「被請求人は本件商標を不使用」とする根拠を明示すべきである旨主張する。
しかし、商標法第50条第2項において、「(略)被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。(略)」と規定することにかんがみれば、請求人において、登録商標の使用をしていないことについての証明は、要しないというべきであるから、被請求人の上記主張は、理由がない。
(3)被請求人は、本件請求はSLAPP訴訟の典型であり、反社会的行為である旨主張する。
ところで、商標法第50条第1項は、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(略)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。
上記規定は、平成8年法律第68号による改正前の商標法において、登録商標の不使用による取消審判の請求人適格について明示の規定がなかったことから、その反対解釈として、利害関係人に限って同審判を請求することができると解される余地が存在していたのを、「何人」にも認めることとし、その旨を法文上明示したものと解される。
したがって、登録商標の不使用による取消審判の請求が、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である(知的財産高等裁判所、平成20年(行ケ)10025号、平成20年6月26日判決参照)。
しかし、被請求人は、本件請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる具体的な証拠を提出していないのであるから、かかる主張は、同人の憶測にすぎないものであるといわざるを得ない。
よって、被請求人の上記主張は、理由がない。
3 むすび
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについて、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定役務に使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定役務「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-03-04 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 商願2004-6150(T2004-6150) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小畑 恵一
末武 久佳
登録日 2004-10-15 
登録番号 商標登録第4809928号(T4809928) 
商標の称呼 ドクターズサロン 

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