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審決分類 |
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X32 |
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管理番号 | 1255122 |
審判番号 | 無効2011-890031 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-04-28 |
確定日 | 2012-03-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5359476号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5359476号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成22年1月7日に登録出願、第32類「秋田県白神山地産のミネラルウォーター」を指定商品として、同年10月8日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりであり、いずれもその商標権は現に有効に存続しているものである。 (1)登録第5166553号商標(以下「引用商標1」という。)は、「神秘の雫」と「白神山地」の文字を二段に横書きしてなり、平成19年12月27日に登録出願、第32類「白神山地産の清涼飲料,白神山地産の炭酸飲料,白神山地産の炭酸水,白神山地産のミネラルウォーター,白神山地産のスパークリングウォーター,白神山地産の天然水,白神山地産の鉱泉水」を指定商品として、同20年9月12日に設定登録されたものである (2)登録第5326098号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成21年9月8日に登録出願、第32類「白神山地産の清涼飲料水,白神山地産の鉱泉水,白神山地産のミネラルウオーター」及び第35類「白神山地産の清涼飲料水・鉱泉水等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同22年5月28日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、別紙1ないし別紙3及び甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。 1 理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。 2 具体的理由 (1)本件商標と引用商標1との類否について ア 称呼類似について (ア)本件商標「白神山地の天然水」は、「シラカミサンチノテンネンスイ」なる称呼を生ずる。 そして、特に下段に配される「テンネンスイ」なる称呼は、本件商標の指定商品の普通名称又は指定商品の原材料の名称であるから、本件商標の要部であって、特別顕著性を発揮し、しかも自他商品識別力を生ずる部分は「白神山地」の部分である。 (イ)商標審査基準の第4条第1項第11号の項には「形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」と記載されている。この基準を本件商標に適用すると、商品の普通名称あるいは原材料の名称にあたる「天然水」の部分が結合されない「白神山地(の)」を基準に類否判断がされなければならず、この場合には、本件商標は引用商標1の「白神山地」の部分と実質的に同一であり、類似の範囲内にある。 (ウ)また、商標審査基準の上記同項においては、「長い称呼を有するため、又は結合商標の一部が特に顕著であるため、その一部分によって簡略化される可能性がある商標は、原則として、簡略化される可能性がある部分のみからなる商標と類似する。」と記載されている。この基準によると、本件商標は、明らかに簡略化される可能性がある「白神山地」の部分が、引用商標1の「白神山地」と完全に重複する。 (エ)引用商標1は、「神秘の雫」が大きく表示されるのに対し、「白神山地」がやや小さく表示されているものの、商標審査基準の上記同項には、「大小のある文字からなる商標は、原則として、大きさの相違するそれぞれの部分からなる商標と類似する。」としている。 したがって、この基準を本件商標と引用商標1との関係に照らすと、引用商標1の「白神山地」は、本件商標の「白神山地」との間に完全な重複があり、このために本件商標は、引用商標1と明らかに類似する。 イ 商品の同一又は類似について (ア)本件商標の指定商品「秋田県白神山地産のミネラルウォーター」は、引用商標1の指定商品中「白神山地産のミネラルウォーター」に包含される。 したがって、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品とは、同一又は類似であることが明白である。 (イ)また、本件商標をその指定商品に使用すると、引用商標1を付した商品との間で誤認混同を生ずることが明白である。 (2)本件商標と引用商標2との類否について ア 称呼類似について (ア)引用商標1との対比においても述べたように、本件商標の主要部をなす「白神山地の天然水」は、「天然水」が商品の普通名称又は原材料の名称にあたるため商標の特徴部分をなし、かつ出所表示機能を発現するのが「白神山地」にある。あるいはまた「白神山地の天然水」が全体として特徴部分をなす可能性もある。 (イ)これに対して、引用商標2の特徴部分は、「白神山地」である。また場合によっては、「白神山地の水」が全体として特徴部分をなす可能性がある。ここで本件商標の「白神山地」と引用商標2の「白神山地」とはともに漢字4字からなる同一の表示である。両者に字体上の特徴に基づく差異をほとんど発見できないことから、「白神山地」の表示が特徴部分をなす点で本件商標と引用商標2とは明らかに類似である。 (ウ)なお、本件商標の「天然水」の表示と、引用商標2の「水」は、ほとんどその観念において差異を生ずることなく、ほぼ同一の意味を持っている。したがって、後半部分の「天然水」と「水」とを組み合わせた場合と組み合わせない場合のいずれにおいても、本件商標と引用商標2とは明らかに類似である。 イ 商品の同一性又は類似について (ア)引用商標2の指定商品中「白神山地産のミネラルウォーター」は、本件商標の指定商品「秋田県白神山地産のミネラルウォーター」を含んでいる。したがって、両者は、実質的に同一であって、同一あるいは類似する商品について用いられるということができる。 (イ)また、販売及び需要者が同一であるから、本件商標と引用商標2との間に、誤認混同を生ずることが明白である。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、引用商標1及び引用商標2との関係において商標法第4条第1項第11号に該当し、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第20号証を提出した。 1 商品の類否について 本件商標の指定商品が、引用商標1及び引用商標2の指定商品に同一又は類似するとの主張については、これを認める。 2 商標の類否について (1)請求人が商標の類似の根拠とする本件商標、引用商標1及び2の共通構成要素である「白神山地」は、指定商品の産地、品質を普通の態様で表すものであり、自他商品又は役務の識別力を有しないと解すべきである。 本件商標、引用商標1及び2をそれぞれ構成する要素のひとつである「白神山地」は秋田県と青森県の県境にまたがる約13万ヘクタールの山地帯の総称で、このうち1万7000ヘクタールのブナ原生林が平成5年12月に世界遺産として登録されている(乙第1号証)。 (2)ここで、本件商標の指定商品を包含する「ミネラルウォーター」などの水商品においては、その採水地を表す語が商品に表されることが多く、その採水地として山地や山の名称が付された商品、例えば、「六甲のおいしい水」、「サントリー天然水<南アルプス>」などが数多く販売されている実情がある(乙第2号証ないし乙第12号証)。 (3)また、山や山地などから採水できる湧水などがミネラルウォーターの水源のひとつとなっていることは、以下の新聞記事やインターネット情報の記載からうかがいしることができる。 ア 「サッポロ飲料、『ニセコ山系のおいしい湧き水』を地域限定販売」の見出しのもと「今回発売する本商品は、ニセコ山系岩内岳の麓で採水したナチュラルミネラルウォーターです。」(乙第13号証) イ 「白神山地の水ができるまで」の見出しのもと「採水地はもちろん白神山地(青森県西津軽群鯵ケ沢町)」(乙第14号証) ウ 「三瓶山のおいしい水とは」の見出しのもと「女性的な三瓶山の麓で採水される『三瓶山のおいしい水(さひめの泉)』は」(乙第15号証) エ 「ミネラルウォーターと名水」の文書中「ミネラルウォーターの原水となっている河川、湧水等が名水百選に選ばれたことをPRすることは、それが事実に反するものでない限り、問題ない。」(乙第16号証) (4)上記実情にかんがみるならば、本件商標を構成する要素のひとつである「白神山地」をその指定商品に使用した場合、該商品の採水地が「白神山地」であることを示しているにすぎず、単に商品の産地、品質を表示したにすぎないものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としては機能しないと認識するのが相当である。 (5)特許庁の過去の審査においても、「白神山地」について商標法第3条各号に該当することを理由に拒絶されている先例がある(乙第17号証ないし乙第20号証)。 (6)そうとすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2の類否は「白神山地」を除いた自他商品識別機能を発揮する部分で判断すべきであるところ、本件商標からは他の構成要素のひとつである「からだうるおう軟水」部分から「カラダウルオウナンスイ」、引用商標1からは他の構成要素である「神秘の雫」部分から「シンピノシズク」、引用商標2からは他の構成要素のひとつである「コスモピュア」部分から「コスモピュア」の称呼がそれぞれ生じるが、前記本件商標から生じる称呼と引用商標1及び2から生じる称呼を比較するに、これらは称呼上全く類似するものではない。 (7)さらに、本件商標と引用商標1及び引用商標2は外観上、観念上も類似しないことは明らかである。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、引用商標1及び2に類似せず、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。 第5 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、その構成中に二段に表した「白神山地の」「天然水」の文字を含むものである。 2 引用商標1及び引用商標2について (1)引用商標1は、「神秘の雫」の文字を大きく「白神山地」の文字を小さく二段に横書きしてなるものである。 (2)引用商標2は、別掲(2)のとおりの構成からなり、その構成中に二段に表した「白神山地」「の水」の文字を含むものである。 3 本件商標と引用商標1及び2との類否 (1)本件商標の称呼及び観念 請求人は、本件商標はその構成中「白神山地」及び「白神山地の天然水」の文字部分が要部又は特徴部分であって、自他商品識別力または出所表示機能を有する旨主張しているので、その点について検討する。 ア 白神山地について 「白神山地」は、秋田県と青森県の県境にまたがる約13万ヘクタールの山地帯の総称で、このうち1万7000ヘクタールのブナ原生林が平成5年12月に世界遺産として登録されており(乙第1号証)、本件商標及び引用商標1及び2の指定商品から「ミネラルウォーター(鉱泉水)」の産地であることが明らかである。 イ 取引の実情 商品「ミネラルウォーター(鉱泉水)」などを取扱う業界においては、山や山地などから採水できる湧水などがミネラルウォーターの水源のひとつとなっており、例えば、「六甲のおいしい水」「南蔵王天然水」などのように「水」や「天然水」の文字に山地名を冠して取引されている(乙第2号証ないし乙第12号証)。 ウ 小括 そうとすると、「白神山地」の文字は、これを本件商標の指定商品に使用した場合、該商品の産地(採水地)が「白神山地」であることを表示したものと認識され、また、「白神山地の天然水」の文字は、該商品が白神山地を産地(採水地)とする天然水であるとの商品の品質を表示したものと認識され、いずれの文字も自他商品の識別標識としての機能を果たさないものと判断するのが相当である。 してみれば、本件商標は、その構成中「白神山地」、「白神山地の天然水」のいずれの文字部分からも出所識別標識としての称呼、観念は生じないというべきである。 (2)本件商標と引用商標1及び2との類否 本件商標と引用商標1及び2とは、それぞれ上記のとおりの構成からなるものであるから、外観において区別できること明らかである。 また、本件商標の構成中「白神山地」「白神山地の天然水」の文字から特定の称呼及び観念を生じないこと上記3(1)のとおりであるから、本件商標と引用商標1及び2とは称呼及び観念においても相紛れるおそれがないこと明らかである。 してみれば、本件商標と引用商標1及び2とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標1及び2とが類似するものというべき理由は見当たらない。 したがって、本件商標と引用商標1及び2とは非類似の商標とはいわなければならないから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。 なお、引用商標1及び2の構成中「白神山地」「白神山地の水」の文字部分は、いずれも上記3(1)と同様に自他商品識別標識としての機能を有しないものである。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(1)本件商標 (色彩は原本参照) 別掲(2)引用商標2 (色彩は原本参照) |
審理終結日 | 2012-01-17 |
結審通知日 | 2012-01-20 |
審決日 | 2012-01-31 |
出願番号 | 商願2010-626(T2010-626) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(X32)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小松 孝 |
特許庁審判長 |
森吉 正美 |
特許庁審判官 |
瀧本 佐代子 小畑 恵一 |
登録日 | 2010-10-08 |
登録番号 | 商標登録第5359476号(T5359476) |
商標の称呼 | シラカミサンチノテンネンスイ、シラカミサンチノ、シラカミサンチ、シラカミサンチテンネンスイ、シラカミサンチスイ、シラカミサンチナンスイ、カラダニウルオウナンスイ、カラダニウルオウ |
代理人 | 右田 登志男 |
代理人 | 松村 修 |
代理人 | 千且 和也 |
代理人 | 内田 佐江子 |
代理人 | 松村 修 |