• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X0105
管理番号 1253739 
異議申立番号 異議2010-685011 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-09-01 
確定日 2012-02-02 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第991722号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第991722号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件国際登録第991722号商標(以下「本件商標」という。)は、「SALMOSAN」の欧文字を横書きしてなり、2008年7月22日にスペインにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)11月18日に国際商標登録出願、第1類及び第5類に属する別掲1に記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年3月23日に登録査定、同年6月11日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるとして、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知著名性について
ア 本件商標と同一商標については、1991年に、ノバルティスアニマルヘルス・ユーケー・インコーポレーテッド(以下「ノバルティスアニマルヘルス」という。)により、イギリスにおいて出願され、1992年に登録がなされている。ノバルティスアニマルヘルスは、世界的に有名なスイスの製薬会社であるノバルティス・インターナショナル・エージーの関連会社であって、動物用医薬品に特化したイギリス法人である。ノバルティスアニマルヘルスは、イギリス以外にも日本を含む40カ国に拠点を有している(甲第3号証)。
イ ノバルティスアニマルヘルスは、シーライス(Sea Lice:シラミの一種)というサケの寄生虫を駆除するための画期的な商品を開発し、その商品名として「SALMOSAN」(以下「引用商標」という。)を採用した。1996年にイギリスにおいて動物用医薬品としての認可を得た(甲第4号証の2)。カナダにおいては2009年10月にカナダ保健省から許可が下りた(甲第6号証の2)。ノルウェーにおいては、2000年までには許可された。
ウ 引用商標は、本件商標の登録出願時点において、少なくとも動物用医薬品として正式に認可を受けているイギリス、ノルウェー及びカナダにおいて広く使用されており、引用商標は、ノバルティスアニマルヘルスの商品を象徴するブランド名として、当該国の取引者及び需要者の間で認知されていた。このことは、数々の刊行物や論文における当該商品についての記載からも明らかである(甲第6号証の1ないし5)。
エ 申立人は、水産業で用いられる殺菌剤、洗浄剤、害虫駆除剤、魚介類の病原体診断薬等の医薬品の研究開発、製造及び販売を業とするイギリス法人であり(甲第7号証)、2008年にノバルティスアニマルヘルスより「SALMOSAN」に係る一切の商標権をその商品とともに譲り受け、現在も使用を継続している。
オ 申立人は、「SALMOSAN」商品の販売促進のため、サケの養殖業において世界有数の生産高を誇るノルウェー国の水産業者向け専門誌「Fishfarming Xpert」に積極的に広告を掲載している(甲第8号証の1ないし9、甲第9号証)。
カ 申立人は、「SALMOSAN」の海外展開も積極的に行なっており、このため、各国展示会にも積極的に出展している。また、国内外の様々な水産業者向け展示会において商品「SALMOSAN」を出展しており、展示会への出展費用として年間約20,000ポンド(約2,630,000円)を費やしている。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標及び引用商標は、いずれも「SALMOSAN」の欧文字を横書きしてなり、「サルモサン」の称呼を生じるものであり、外観上も称呼上も同一の商標である。なお、「SALMOSAN」はいずれの辞書にも見当たらない造語であって、特定の観念を生ずるものではない。
また、本件商標権者の「SALMOSAN」は、その指定商品である化学品や薬剤及び獣医科用剤等について使用されるものであるから、「SALMOSAN」ブランドに馴染みのある需要者からみれば、申立人と組織的、経済的に何らかの関連性ある商品と誤認混同を生じさせる相紛らわしい商標といえる。
(3)不正の目的による使用について
上述のように、「SALMOSAN」の名前は、本件商標の登録出願時点において、申立人の商品を象徴するブランド名として、少なくとも、動物用医薬品として正式に認可を受けているイギリス、ノルウェー及びカナダの取引者及び需要者の間ですでに広く認知されていた。
本件商標の登録出願は、申立人が「SALMOSAN」ブランド事業を開始してから約20年も経過した後である。また、申立人の英国商標登録(甲第2号証)に係る指定商品「Veterinary preparations;disinfectants;preparations for destroying vermin(参考訳:獣医科用剤、消毒剤、有害動物駆除剤)」をそっくりそのまま含み、かつ、その他類似関係にある商品も含まれている(甲第1号証)。
ここで、本件の商標権者であるINDUSTRIAL TE(←Eの変音)CNICA PECUARIA,S.A(以下「ITPSA」という。)は、家畜用飼料や肉・魚・卵の加工食品に使用する化学添加物(飼料に混ぜて使用するものも含む)を主力商品とするスペインの中堅化学メーカーである(甲第14号証)。これらの商品と、申立人の商品とは、いずれも動物に用いられるものであり、需要者や流通ルートが重複しているため、競争相手となる可能性は十分に予見されていたはずである。してみれば、ITPSAは、少なくともイギリス、ノルウェー及びカナダにおいて周知となっていた申立人の引用商標の存在を当然に知っていたとみるべきである。加えて、「SALMOSAN」はいずれの辞書にも見当たらない造語であるから、ITPSAが偶然に「SALMOSAN」なる商標を採択したとは考えがたい。
こうした事実から、商標権者は、外国で周知な引用標章が我が国で登録されていないことを奇貨として、本件商標を先取り的に出願し、申立人の国内参入を阻止する不正の目的をもって、本件商標を使用するものといわなければならない。
(4)結び
以上述べたように、本件商標は、公正な取引秩序を害し不正な目的をもって使用されるものであるから商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
3 当審の判断
(1)引用商標の周知・著名性について
ア ノバルティスアニマルヘルスは、引用商標に係るサケの寄生虫(シーライス)を駆除するための薬剤(以下「SALMOSAN商品」という。)を製造販売し、申立人は、2008年に上記会社より、「SALMOSAN」に係る商標権をその業務と共に譲り受けた。
イ SALMOSAN商品については、ノルバティスアニマルヘルスは、1996年(平成8年)にイギリスにおいて、動物用医薬品として認可され、(甲第4号証)2003年まで継続的に使用された(甲第6号証の4及び5)。
なお、申立人は、ノルウェーにおける認可の時期等に関する証拠を提出していないが、ノルバティスアニマルヘルスが2000年までに上記医薬品について認可された旨主張している。
また、カナダにおいては、1995年にニューブランズウィック州で使用されたものの、その後使用は打ち切られ、カナダ保健省から2009年(平成21年)10月にニューブランズウィック州に限り認可された(甲第6号証の2)。
ウ SALMOSAN商品について、2001年11月発行の「スコットランド議会情報センター公報(甲第6号証の4)、2009年4月発行のイギリス国ストラスクライド大学のシーライス処理等に関する論文(甲第6号証の5)、2009年10月発行のカナダ国ニューブランズウィック州サケ養殖業者協会会報(甲第6号証の2)、発行元(発行された国)は不明であるが、2001年発行の「ICES Journal of Marine Science」に掲載されたSALMOSAN商品の有効成分であるアザメチホスに関する論文(甲第6号証の1)及び2008年4月付のシーライスに侵されたサケの治療等に関する論文(甲第6号証の3)の中でSALMOSAN商品について言及した記載がある。
また、雑誌「Fishfarming Xpert」の2008年10月号、同年12月号、2009年6月号、同年8月号(甲第8号証の1ないし4)、新聞「www.intrafish.com」の2009年7月号、同年8月号(甲第8号証の5及び9)、新聞「FIsh Farming International」の同年5月号(甲第8号証の7)、同年6月号(甲第8号証の8)に申立人によるSALMON商品の広告が掲載された(甲第9号証)。なお、申立人は、甲第8号証の1ないし9の雑誌等についてノルウェー国の水産業者向けの専門誌であるとしている。
エ 申立人は、2009年度にノルウェー国のトロントハイム市で開催された水産業に係る国際展示会「Aqua Nor 2009」(甲第10号証)、及び2009年3月9日から11日までにタイ国で開催された国際展示会「VIV Asia 2009」(甲第11号証)に出展したと主張しているが、その開催は認められるものの、いずれの展示会にもSALMON商品が出展されたかどうかは証拠上明らかでない。
オ そのほか、SALMOSAN商品についての申立人のホームページ(甲第14号証)が提出されているほか、引用商標の周知・著名性を裏付ける具体的な証拠の提出もなく、売上高等も不明である。
カ 上記アないしオによれば、本件商標の登録出願日(2008年11月18日 なお、SALMOSAN商品に係る指定商品について優先権主張が認められる場合は2008年7月22日)前においては、SALMOSAN商品についてイギリス国及びノルウェー国で認可されたことは認められるものの、カナダ国は一度使用が認められたもののその後使用が打ち切られた(その後、2009年10月にまた認可)ものであり、SALMOSAN商品の宣伝、広告については、2008年10月発行のノルウェー国の雑誌(甲第8号証の1)に1回掲載されたことは認められるのみである。また、英国のスコットランド議会情報センターの公報に1回、及び研究論文(乙第6号証の1及び3)に2回掲載されたことは認められるものの、回数も少なく、また、これらは、SALMOSAN商品の需要者に向けたものではない。そして、申立人が出展したとする展示会の開催もいずれも本件商標の登録出願後である。
以上のとおりであるから、提出に係る証拠のみをもってしては、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時において、イギリス、カナダ、ノルウェー及びその他のいずれの国においても需要者の間において広く認識されていたものとは認められない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標及び引用商標並びに本件の指定商品及び引用商標の商品(SALMOSAN商品)とは同一又は類似する商標及び商品である。
しかしながら、前記(1)のとおり、申立人の提出に係る甲各号証をもってしては、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時において、日本国内又は外国における需要者の間においても広く認識されていたものとは認められない。
商標法第4条第1項第19号の適用にあたっては、引用商標の著名性が認められない以上、同号についての申立人の主張に理由がないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (本件の指定商品)
第1類
Chemicals used in industry;agricultural chemicals,except fungicides,weedkillers,herbicides,insecticides and parasiticides;chemicals for forestry and horticulture,except fungicides,herbicides,insecticides and parasiticides;chemical preparations for scientific purposes (other than for medical or veterinary use);chemical preparations for use in photography,unprocessed artificial resins,unprocessed plastics;fertilizers;fire-extinguishing compositions;tempering and soldering preparations;chemical substances for preserving foodstuffs;tanning substances;adhesives used in industry.
第5類
Pharmaceutical and veterinary products;sanitary products for medical purposes;dietetic substances adapted for medical use,food for babies;plasters,materials for dressings;material for stopping teeth,dental wax;disinfectants;products for destroying vermin;fungicides,herbicides.
異議決定日 2012-01-27 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (X0105)
最終処分 維持  
前審関与審査官 荻野 瑞樹 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 瀧本 佐代子
大島 康浩
登録日 2008-11-18 
権利者 INDUSTRIAL TECNICA PECUARIA, S.A.
商標の称呼 サルモサン 
代理人 河野 英仁 
代理人 河野 登夫 
代理人 伊東 忠彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ