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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X44
管理番号 1253616 
審判番号 不服2011-1578 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-24 
確定日 2012-02-27 
事件の表示 商願2010-5399拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「わくちんナビ」の文字を標準文字で表してなり,第44類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成22年1月28日に登録出願され,その後,指定役務については,原審における平成22年7月14日提出の手続補正書により,第44類「電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供及び助言,電子メール配信システムを利用したワクチン接種に関する医業・健康診断・歯科医業・調剤に関する情報の提供及び助言,ワクチン接種の医療患者の診療予約の媒介及び取次ぎ」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『わくちんナビ』の文字を標準文字で表してなるところ,このうち『わくちん』の文字は,『ワクチン』を単に平仮名で表したものであり,『ナビ』の文字は,『情報の提供』という意味として使用されているから,全体より『ワクチンに関する情報の提供』の意味合いを理解させる。そうすると,本願商標を指定役務中『電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供及び助言』について使用しても,『ワクチンに関する情報の提供』であることを認識させるにとどまるから,単にその役務の質を表示するにすぎないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の『電子メール配信システムを利用した医療情報の提供及び助言』に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における手続の経緯
当審において,平成23年8月17日付けの証拠調べ通知書により,請求人に対し,下記第4,1(1)ないし(5)に係るウェブサイトを提示した上で,本願商標は,「ワクチンに関する情報の提供」程の意味合いを容易に理解させるものであるから,その指定役務中「電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供」に使用しても,自他役務を識別する機能を有さず,役務の内容を表示する標章のみからなるものであることより,商標法第3条第1項第3号に該当する旨開示し,請求人に意見を求めたところ,請求人は,平成23年10月4日付けで意見書を提出した。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は,前記第1のとおり,「わくちんナビ」の文字を標準文字で表してなるところ,このうち「わくちん」の文字部分は,「ワクチン」を平仮名で表記したものと直ちに理解されるものである。
また,「ナビ」の語は,「ナビゲーター・ナビゲーションの略」であり,「ナビゲーター」の語は「案内役。進行役」の意味を有するから(いずれも「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店),本願商標は,全体として,「ワクチンの案内役」程度の意味合いを理解させるものといえる。
そして,最近では,医療関連の分野においても,「ナビ」の語が,「情報の提供」程度の意味合いで,「○○ナビ」(「○○」は情報の内容)というように使用されている事実が以下のとおり見いだせる。

(1)「審美歯科ナビ」(http://www.alkjapan.jp/shinbi/)
「審美歯科ナビは全国の審美歯科を紹介するリンク集です。」と記載され,「contents」として,「審美歯科キャンペーン情報」といった情報のほか,「審美歯科ニュース」「審美歯科治療とは」「審美歯科治療を受ける前に」などの審美歯科に関する情報が提供されていることが認められる。
(2)「特定健康診査ナビ」(http://tokutei-kenshin.com/)
ほかのウェブサイトにて,「特定健康診査の検査項目等,詳しい情報を掲載したウェブサイトもありますのでご参照ください。『特定健康診査ナビ』」と紹介されており(http://www.jinjika.jim.titech.ac.jp/fuk/tokutei/index.html),その「特定健康診査ナビ」では「特定健康診査とは?」「特定健康診査の検査項目」などの見出しにて,特定健康診査に関する情報が提供されていることが認められる。
(3)「予防接種ナビ」(http://www.ynavi-dsc.info/index.html)
「予防接種キホン講座」「予防接種スケジュール」などの見出しがあり,予防接種に関する情報が提供されていることが認められる。
(4)「おくすりナビ」(http://www.okusurinavi.com/)
「くすりと健康の情報!」「『おくすりナビ』では,皆様にお薬の中身を知って頂き,正しい知識をもとに服用して頂きたいと願っています。」と記載されており,「薬データベース」があるなど,薬に関する情報が提供されていることが認められる。
(5)「ワクチンナビ」(http://www.wakuchinn.com/index.html)
「ワクチンナビについて」の見出しにて,「このサイトは,皆さんがご自分の意思で,ワクチンを受けるかどうかを決めるために,常識的な情報を提供することを目的にしています。(中略)いま安全で効果も高いといわれるワクチンの情報をお伝えしご理解を深め,公費助成など多くの人に有効なワクチンを使用していただけるように,また育児をされている方に法定接種のスケジュール管理に役立つような仕組を提供したいと考えています。」と記載され(http://www.wakuchinn.com/about.html),「お母さんのワクチン講座」「ワクチンのよくある質問」「ワクチン関連ニュース」などの見出しがあり,ワクチンに関する情報が提供されている。
(6)「審美歯科ナビ」(http://shinbi.web1st.co.jp/)
「【審美歯科ナビとは?】審美歯科ナビは,全国の審美歯科医院情報を提供する,審美歯科検索サイトです。あなたの1番の審美歯科医院を見つけるために,ぜひご活用ください!」と掲載され,審美歯科に関する情報が提供されていることが認められる。なお,このウェブサイトは,上記(1)に係るものとは異なるものである。
(7)「新型インフルエンザ対策マスク情報ナビ」(http://orangemask.blog88.fc2.com/)
「新型インフルエンザ対策などに有効なマスクについての情報をご紹介しています。」と記載され,新型インフルエンザ対策のマスクに関する情報が提供されていることが認められる。
(8)「妊娠・出産・育児情報ナビ」(http://blog.livedoor.jp/love_meirin-baby/)
「妊娠・出産・育児で必要な情報が満載です。」と記載されており,妊娠・出産・育児に関する情報が提供されていることが認められる。
また,「無料メルマガ登録はこちら」の見出しと共に「ベビる。/妊娠・出産・育児情報ナビ」と記載されており,「メルマガ」は,「メールマガジン」「電子メールで配信する雑誌」(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)であるから,メール配信によっても,情報が提供されていることが認められる。
(9)「交通事故保険治療ナビ」(https://www.kotsujikonavi.jp/login/)
「【交通事故保険治療ナビ】全国の交通事故による怪我(むちうち,腰痛,しびれ,関節痛,後遺症など)専門治療院情報や,法律や治療の専門家によるQ&Aサイト」と記載されており,「メルマガで最新情報を手に入れられる!」の見出しと共に「メルマガ登録をされた方には,治療だけではなく,・・・お得なクーポン情報やキャンペーン情報などをお送りします!」と記載されているから,メール配信によっても,情報が提供されていることが認められる。
(10)「睡眠障害解消ナビ」(http://www.issicn.com/suimin.html)
「睡眠障害解消ナビでは,・・・不眠症改善の経験や睡眠障害の改善に有効な方法など,睡眠障害改善についての有益な情報をお届けしたいと思います。」と記載され,「睡眠障害改善無料メルマガ 申し込みはコチラ」と記載されているから,メール配信によって,睡眠障害を解消することに関する情報が提供されていることが認められる。
(11)「ムコ多糖症ナビ」(https://mps-navi.jp/entrance.html)
「ムコ多糖症は,生命を脅かすこともある進行性かつ遺伝性の疾患です。・・・ムコ多糖症ナビでは,部位別に見られる特徴や症例集,文献情報からセミナー情報までを掲載。」と記載されており,「メルマガ登録」の見出しと共に,「ムコ多糖症に関する情報をメールで定期配信いたします。」と記載(https://mps-navi.jp/?type=1)されているから,ムコ多糖症に関する情報が,メール配信によっても提供されていることが認められる。

以上認定した事実からすれば,「○○ナビ」の語は,「○○に関する情報の提供」程度の意味合いで,インターネット上で情報提供する際も,メールで配信して情報提供する際も,一般に使用されているといえ,本願商標「わくちんナビ」も,上記の例のように「○○ナビ」と構成されているから,本願商標に接する取引者,需要者は,「ワクチンに関する情報の提供」程度の意味合いを容易に理解するといえる。
そうすると,本願商標は,これをその指定役務中「電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,上記意味合いを認識するにとどまるので,自他役務を識別する機能を有さず,単に役務の質(内容)を表示する標章のみからなるものというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 請求人の主張について
(1)請求人は,他の登録例を挙げ,これらの商標が登録されている以上,本願商標も登録されるべきである旨,主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標登録の要件を具備しているか否かは,当該商標の構成態様と,指定役務の取引の実情等に基づいて,審決時において個別具体的に判断されるものであり,本願商標については,上記のとおり判断すべきであるから,請求人の上記主張は,採用することができない。

(2)請求人は,本願商標は外来語で通常は「ワクチン」とカタカナ表現される語をひらがなで「わくちん」と表示し,かつ,「ナビ」のカタカナと組み合わせて構成されているから,表示の構成自体が普通ではない旨,主張する。
しかしながら,「ワクチン」の語を平仮名で「わくちん」と表したからといって,「ワクチン」が想起されなかったり,「ワクチン」以外の意味合いが想起されたりするものではない。
また,「だいえっとナビ」(http://www.mag2.com/m/0001114261.html),「ぶっくナビ」(http://www.books19.com/),「かふぇナビ」(http://event.yahoo.co.jp/sphone01/howto/index.html),「きゃっしんぐナビ」(http://ponk-ponk.noob.jp/okane/osusume/00047.html),「あぱーとナビ」(http://www.apanavi-shiga.com/index.shtml)のように,外来語で通常は「ダイエット」「ブック」「カフェ」「キャッシング」及び「アパート」とカタカナで表記される語を,それぞれ「だいえっと」「ぶっく」「かふぇ」「きゃっしんぐ」及び「あぱーと」と平仮名で表記し,かつ,「ナビ」のカタカナと組み合わせて構成される例が見受けられるから,本願商標の構成も格別に特殊であるとはいえず,本願商標からは容易に「ワクチンに関する情報の提供」程度の意味合いが理解されるというべきである。
したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。

(3)請求人は,本願商標から「ワクチンに関する情報の提供」程度の意味合いが理解されるとしても,「ワクチンに関する情報の提供」とは,「ワクチン自体の情報(医学情報:開発情報,製造情報)」「ワクチンの医療情報(ワクチン提供医療機関情報)」等のように概念が抽象的であり,具体的にどのような情報であるか不明であり,需要者が,本願商標の指定役務の内容を認識するとはいえないから,本願商標は登録されるべきである旨,主張する。
しかしながら,商標が「役務の質を表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,指定役務に関する取引者,需要者が当該商標に接した場合,これをどのように認識するかが重要なのであるから,取引者,需要者が,役務の質,すなわち,役務の内容を表示したものと一般に認識することをもって足り,役務の内容の具体的な事柄までをも認識する必要はないというべきである。
そして,既に述べたとおり,本願商標は,その指定役務中「電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供」に使用しても,これに接する取引者,需要者をして「ワクチンに関する情報の提供」程度の意味合いを理解させるにとどまり,それ以上に自他役務の識別標識としては認識させないというのが相当である。
そうすると,本願商標は,自他役務の識別標識として機能するものではなく,役務の質を表示する標章のみからなるものというのが相当である。
したがって,上記請求人の主張は,採用することができない。

(4)請求人は,前記第3に係る証拠調べ通知書で通知した証拠について,「インターネット上における情報の提供において,『**ナビ』が,インターネット上で『**』に関する情報提供を意味する事実が立証されているにすぎません。」というように,インターネット上における情報の提供において,「○○ナビ」が,インターネット上で「○○」に関する情報提供を意味する事実が立証されていることについては認めた上で,「電子メール配信システムによる**の情報の提供」が「**ナビ」として使用されている事実が立証されているわけではないから,本願商標の指定役務中「電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供」との関係において,本願商標は,「電子メール配信システムを利用したワクチンに関する医療情報の提供及び助言」の意味合いを認識させない旨,主張する。
しかしながら,前記1(8)ないし(11)で示したように,メールを配信する場合においても,「○○ナビ」の語は,「○○に関する情報の提供」程度の意味合いで,一般に使用されているといえるから,請求人の上記主張は,採用することができない。
加えて,「○○ナビ」は,インターネット上においては「○○」に関する情報提供の意味を理解させるが,メール配信の場合には,「○○」に関する情報提供の意味を理解させないというがごとき原告の主張は,以下のとおり,不自然といわざるを得ない。
「インターネット白書2006」(財団法人インターネット協会監修。以下「白書」という。)によれば,「購入のための情報」「その他の生活情報」については,テレビや新聞等に比してインターネットが最も重要視されており,「情報収集には『インターネット』」(白書に掲載されている見出し)という傾向が見受けら得るところ,インターネットを利用している者のうち,87.9%もの者がメールマガジンを登録しており,その登録目的は,情報収集がメインであることが認められる。
そうとすれば,インターネットを利用する者は,メールマガジンを利用する者でもある場合がほとんど(87.9%)であり,インターネットもメールマガジンも,情報収集という共通の目的において,利用しているといえるものである。
してみれば,「○○ナビ」の語が,インターネット上で,インターネットの利用者をして「○○に関する情報の提供」と理解されるのであれば,メールマガジン,すなわち電子メールで配信される雑誌(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)の利用者をして「○○に関する情報の提供」が理解されるというのが自然である。
こうしたことから,インターネット上において「○○ナビ」の語が「○○」に関する情報提供の意味を理解させるのであれば,メール配信の場合においても,「○○」に関する情報提供の意味を理解させるというべきであり,これを覆すに足る根拠は,見受けられない。
したがって,この点からも,請求人の上記主張は,採用できない。

3 結語
以上のとおりであるから,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は,妥当であって,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-12-07 
結審通知日 2011-12-16 
審決日 2012-01-06 
出願番号 商願2010-5399(T2010-5399) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人中村 拓哉 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 田中 亨子
守屋 友宏
商標の称呼 ワクチンナビ、ワクチン 
代理人 近藤 彰 

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