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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服2015764 審決 商標
不服200915782 審決 商標
不服201115685 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 X08
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 X08
管理番号 1253498 
審判番号 不服2011-3475 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-16 
確定日 2012-02-28 
事件の表示 商願2010-1754拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1ないし5のとおりの構成よりなり、第16類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年1月14日に登録出願、その後、指定商品については、当審における同23年9月8日付けの手続補正書により、第8類「カッターナイフ」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、カッターナイフの一形態と認識されるにとどまる格別特異とは認め難い立体的形状を普通に用いられる方法で表してなるから、これを本願の指定商品「カッターナイフ」に使用するときは、単に商品の形状について普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。なお、出願人は、使用実績を考慮すると、本願商標に接した需要者はこれを出願人を示す出所標識として認識しないと断ずることはできない旨主張し資料を提出するが、本願商標がその指定商品「カッターナイフ」について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識されていると認められる実際に使用している商標並びに商品についての使用開始時期、使用期間、使用地域、譲渡の数量(売上高等)、広告宣伝等による事実の証左が足らず、本願商標がその指定商品について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものということはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における判断
(1)商標法第3条立体商標における商品等の形状について
ア 商標法第3条第1項第3号は、「その商品の・・・形状(包装の形状を含む。)・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定し、同条第2項は、「前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」旨を規定している。その趣旨は、同条第1項第3号に該当する商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものとして、商標登録の要件を欠くが、使用をされた結果、自他商品識別力を有するに至った場合に商標登録を認めることとしたものである。
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定するが(同法第2条第1項第5条第2項)、同法第4条第1項第18号において、「商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は、同法第3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を規定していることに照らすと、商品の立体的形状のうち、その機能を確保するために不可欠な立体的形状については、特定の者に独占させることを許さないものとしたものと解される。
イ 商品の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識するのであって、商品等の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。
そうすると、客観的に見て、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当することになる。
また、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として特定人に当該形状の独占使用を認めることは、公益上適当でない。
よって、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。
ウ 他方、商標法第3条第2項は、商品の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない立体的形状については、それが商品の機能を効果的に発揮させ、商品の美感を追求する目的により選択される形状であったとしても、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものと規定している(平成22年(行ケ)第10366号、知的財産高等裁判所平成23年4月21日判決言渡し参照)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について
ア 本願商標の構成について
本願商標は、別掲1ないし5に示すとおり、カッターナイフの一種と看取される形状からなるところ、大別して黒色のホルダー部及び黄色のキャップ部からなるものである。
しかして、当該ホルダー部の形状は、正面(別掲1)から観察するとキャップ部から刃を繰り出す先端方向に向けてテーパー状に延びる黒色のホルダー部分と、当該ホルダー部に挟みこまれるように保持される刃部と、当該刃部と連結され、刃部をホルダー部の先端部から繰り出し、かつ、収納するためにスライドさせる白色の操作部から構成されている。
また、当該キャップ部は、正面(別掲1)から見ると、欧文字「T」を右側に90度倒し、その縦棒の付け根をやや上方にずらしたような形状からなり、当該縦棒がホルダー部に挟み込まれるようにはめ込まれており、当該「T」字形状の横棒は、ホルダー部を正面(別掲1)から観察すると、下底が上底よりも長い台形となっており、前記のホルダー部へのはめ込み部分以外の端部が丸みを帯びているという特徴を有してなるもの(以下、「本願キャップ形状」という。)である。
さらに、本願商標は、前記のとおり、黒色のホルダー部と黄色の本願キャップ図形という彩色がなされ、その色彩上のコントラストから、本願キャップ図形は、需要者の目につきやすいものである。
加えて、本願キャップ形状を含め、本願商標の形状は、その指定商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるものとは、言い難いものである。
イ 本願商標の識別性について
本願の指定商品は、前記1のとおり「カッターナイフ」である。
そうすると、本願商標は、上記アのとおり、本願キャップ形状という特徴を有しているものではあるが、本願商標の構成を全体としてみた場合、カッターナイフの一種と容易に看取、認識されるものであり、本願の指定商品「カッターナイフ」の一形態と認識されるものといえる。
加えて、請求人の提出に係る証拠(第10号証(審決注:原審において提出された資料1ないし10は、第1号証ないし第10号証と読み替えた。また、特に断らない限り、書証番号のみ記載するときは、その枝番号の書証を含むものとする。以下同じ。)によれば、本願の指定商品の分野において採択される商品の形状からみて、本願商標の形状は、カッターナイフの形状と需要者に容易に認識されるものといわなければならない。
そうとすると、本願商標は、本件審決時を基準として、客観的に見れば、本願キャップ形状が、特徴的なものであるとしても、いまだ商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当であり、需要者が指定商品の形状として一般に認識しうるものというべきである。
ウ 請求人の主張について
請求人は、現行法下「色彩」が立体的形状と結合することで商標の構成要素の一つとなることは条文からも明らかであるところ、本願商標における黒色と黄色の色彩の組合せから与えられる印象は識別力の判断においても重視されるべきであるとし、本願商標のような形状及びキャップ部とホルダー部の色彩の組み合わせは、必ずしもカッターナイフの機能向上の観点から不可欠なものでもなく、本願の指定商品の分野において同様の形状・色彩の商品の存在も認められない。以上の点において本願商標は個性的な形状・色彩からなり、「商品の形状について普通に用いられる方法で表示する」ものと断ずることはできない。また、本願商標のような特徴的な形状及びキャップ部とホルダー部の色彩の組み合わせは、本願の指定商品の需要者である一般消費者において、商品の次回購入を検討する際に商品の購入又は非購入を決定する上で標識とするに十分足るものである旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断は、需要者の一般の認識をもって判断されるべきものである(昭和60年(行ツ)第68号、最高裁判所第一小法廷昭和61年1月23日判決言渡し参照)。確かに、請求人の主張のとおり、色彩も商標の構成要素となりうるが、色彩は、それのみでは商標の構成要素にはならないこと(商標法第2条第1項)を前提に、本願商標の形状自体が、カッターナイフの一形状と需要者に一般に認識されるものであること、商品に複数の色彩を付することも通常良く行われていることを踏まえるならば、黄色と黒色で本願商標に係る立体形状に彩色が施されたとしても、それのみで本願商標が出所識別標識として機能するものということはできない。
また、商品の機能の観点からみて、色彩の付された本願商標の形状が必要不可欠なものとはいえないとしても、需要者が本願商標をカッターナイフの一形態と一般に認識しうるものである以上は、商品の出所識別標識として機能するものとはいえない。
さらに、本願商標と同一の形状及び色彩からなる商品が現実に存するか否かは、商標法第3条第1項第3号の要件事実でないことは、同号の条文や上掲の最高裁判決に照らして明らかである。
よって、上記の請求人の主張は、いずれも理由がなく採用することができない。
エ 小括
以上アないしウからすると、本願商標は、その指定商品との関係において、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表したにすぎないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当する。
(3)本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
ア 商標法第3条第2項の趣旨
商標法第3条第2項は、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条第1項第3号に該当する商標であっても、使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には、商標登録を受けることができることを規定している。
そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、(ア)当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否、(イ)当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである。なお、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するが、機能を維持するため又は新商品の販売のため、商品等の形状を変更することもあり得ることに照らすと、使用に係る商品等の立体的形状が、出願に係る商標の形状と僅かな相違が存在しても、なお、立体的形状が需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである(前掲平成22年(行ケ)第10366号、知的財産高等裁判所平成23年4月21日判決言渡し参照)。
この場合、立体的形状を有する使用商品にその出所である企業等の名称や文字商標等が付されていたとしても、そのことのみで上記立体的形状について同法第3条第2項の適用を否定すべきではなく、上記文字商標等を捨象して残された立体的形状に注目して、独自の自他商品識別力を獲得するに至っているかどうかを判断すべきである(平成22年(行ケ)第10169号、知的財産高等裁判所平成22年11月16日判決言渡し参照)。
イ 本願商標の商標法第3条第2項該当性
以下、本願商標が上記アの観点に照らして、商標法第3条第2項に該当するか否か検討する。
(ア)本願商標の形状及び本願形状に類似した他の商品等の存否
a 上記(2)のとおり、本願商標は、その指定商品であるカッターナイフの立体的形状に係るものであり、本願商標は、その指定商品の形状として通常採用されている範囲を大きく超えるものとまでは認められず、需要者において商品の形状として一般に認識されるものというべきである。
しかしながら、本願キャップ形状のような特徴を有するカッターナイフは、同種の商品には見当たらない(第10号証)。
してみれば、前記(2)アのとおりの本願キャップ形状を有する本願商標は、ほかの同種商品と見分けられる一定の特異性を有しているということができるものである。
(イ)本願商標の使用の実情
a 請求人は、1970年(昭和45年)に、「オルファ180ブラック」、「ブラック180」の品名で、本願商標に係るカッターナイフを発売し、その後、一貫して本願商標と同一の形状及び色彩の商品が継続して販売されているところ、その使用期間は、本件審決時まで40年以上の長きにわたるものである(第1号証、第2号証及び第11号証)。
また、本願商標に係る商品は、1971年(昭和46年)8月4日付けでグッドデザイン賞を受賞し、その後、昭和62年度のロングライフデザイン賞を1987年(昭和62年)10月29日付けで受賞している(第3号証)。
b 本願商標に係るカッターナイフは、2000年ないし2010年の11年間に579万本以上が卸売業者に取引されており(第11号証(審決注:第11号証の15に係る株式会社フォーデックは、第11号証の2に係るマンモスグループの会員であるから(第12号証の2)、11号証の15に係る取引数は、取引本数の総計から除外した。)、その卸先の販売店も全国各地の店舗に及んでいる(第12号証)。
また、請求人は、本願商標に係るカッターナイフを1970年(昭和45年5月)より2009年12月31日までに、国内のみで累計4800万本以上、世界を含めると1億本以上を売上げており、2009年においてもその売上げは、1億4千万円以上(第4号証)であること、また、カッターナイフの分野における請求人の市場占有率は50%(約27億円)(第7号証の1第4頁、第13号証及び第14号証)であるところ、請求人は、50種類以上のカッターナイフを製造、販売している。かかる状況のもとで、本願商標に係るカッターナイフが毎年1.5億円規模で販売されていることからすれば、本願商標に係るカッターナイフは、請求人の代表的な商品である旨主張するところ、これに反する事実は見当たらない。
)。
c 本願商標に係るカッターナイフは、たびたび新聞、雑誌、書籍、インターネットウェブサイトにカッターナイフを代表する商品として紹介されている(第5号証及び第6号証、第7号証の1ないし4、第16号証ないし第18号証、第20号証、第22号証、第23号証ないし第33号証)ところ、例えば、その一部を摘示すると「世界中で使われている小型カッターのベストセラー。」(第5号証の3)、「同社の最大のヒット商品『ブラック』は、七○年に発売されて以来、その姿を変えないまま、海外百五か国を含めて累計八千四百万本を売り、現在も年間三百六十万本のペースで生産を続けている。」(第6号証の1)、「もうひとつの定番は、1970(昭和45)年に発売された『ブラックS型』。こちらもロングセラー商品で、世界中に輸出されている。販売本数は1億本以上。この2本のうちどちらか、あるいは両方を会社や家庭で使っているという人は多いはずだ。」(第7号証の1)、「カッターナイフといえばこのブラックS型をイメージする方は多いのではないでしょうか。」(第7号証の2)、「愛着があるのがオルファのカッターナイフ。・・・黒と黄色のデザインが好き。」(第7号証の4)、「世界中で愛用されているロングセラーの小型カッター。」(第20号証)、「『ブラックS型』はグッドデザインのロングライフ賞も受賞した小型カッターの超定番」(第23号証)、「小さなボディのロングセラー。」(第24号証)及び「世界中に輸出されている人気商品であり、1億本を越える販売本数を記録しているカッターナイフ界の王様です。」(第26号証)等の記載が見受けられる。
(ウ)小括
前記のとおり、本願キャップ形状が、他に見当たらない特異性を有し、1970年(昭和45年)年以降40年以上にわたって本件審決時まで、本願商標と同一の形状及び色彩からなる商品「カッターナイフ」が一貫して製造、販売され、需要者の強い支持を得ているロングセラーであることに照らすならば、本願商標についての「OLFA」、「オルファ」等の平面的な商標の使用及び「ブラック180」、「ブラック(S型)」の品名の表示を考慮してもなお、当該平面的な商標等を捨象して、前記(2)アのとおりの色彩と結合した立体的形状に係る本願商標は、自他商品識別力を獲得するに至っており、本願の指定商品「カッターナイフ」の需要者が、本願商標に接するときは、請求人に係るカッターナイフであることを認識することができるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、その指定商品について、商標法第3条第2項の要件を具備するものであるから、同条第1項第3号の規定に該当するとして、本願を拒絶すべき限りでない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標 第1図)

(色彩については原本参照)

別掲2(本願商標 第2図)

(色彩については原本参照)

別掲3(本願商標 第3図)

(色彩については原本参照)

別掲4(本願商標 第4図)

(色彩については原本参照)

別掲5(本願商標 第5図)

(色彩については原本参照)

審決日 2012-02-15 
出願番号 商願2010-1754(T2010-1754) 
審決分類 T 1 8・ 13- WY (X08)
T 1 8・ 17- WY (X08)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 忠司 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
内田 直樹
代理人 寺田 花子 
代理人 田中 光雄 
代理人 勝見 元博 
代理人 鮫島 睦 

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