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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y39
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y39
管理番号 1253492 
審判番号 無効2011-890042 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-06-08 
確定日 2012-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4958924号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4958924号商標(以下「本件商標」という。)は、「遊び屋」の文字を標準文字で表してなり、平成17年10月20日に登録出願、第39類「旅行者の案内」を指定役務として、平成18年4月4日に登録査定、同年6月9日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証(枝番を含む。)を提出した。
1 理由の要点
(1)商標法第4条第1項第10号について
甲2ないし甲26に示すとおり、「あそび屋」の文字(以下「引用商標」という。)は、請求人が主にアウトドアスポーツのツアー等の旅行の広告や催行のために長年に亘り使用したことで、需要者の間に広く認識されているものである。本件商標は、引用商標に対して同一(称呼同一)又は類似であり、その指定役務も引用商標が使用される役務と同一又は類似である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、無効にすべきものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、請求人が主にアウトドアスポーツのツアー等の旅行の広告や催行のために長年に亘り使用したことで周知、著名となっていることから、本件商標がその指定役務に使用された場合、請求人の業務に係る役務若しくは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務と混同が生じるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、無効にすべきものである。
2 具体的理由
(1)甲2ないし甲26により、引用商標が、本件商標の登録出願時(平成17年10月20日)及び登録時(平成18年6月9日)において既に需要者の間に広く認識され周知性・著名性を獲得していたことを証明する。
ア 甲2は、請求人が開設しているインターネットホームページの一部抜粋であり、平成元年(1989年)以降における請求人と同人が代表を務める会社の沿革が記載されている。
イ 甲3(枝番を含む。)について
(ア)甲3の1ないし12は、平成3年(1991年)秋から約1年に亘って請求人が発行人となって発行した、月刊の総合レジャーパンフレット東海版「あそび屋」の創刊号ないしVOL.12である。請求人は、平成3年7月に個人事業「あそび屋」を設立し(甲2)、月刊の「あそび屋」を発行した。これら月刊の「あそび屋」では、表紙右下において何月号かを数字で示している。また、創刊号(甲3の1)の4頁目左上には「1991.NOVEMBER」と記載されている。そのため、創刊号は1991年の11月号であることがわかる。また、月刊の「あそび屋」の各号内には、発行人として請求人の氏名(松澤克美)が記載されている(甲3の1)。
(イ)甲3の13ないし同18は、請求人が代表を務めた「あそび屋編集室」が平成5年(1993年)の春頃から平成6年(1994年)の春頃に亘って発行したパンフレット「あそび屋」である。これらの発行時期は、例えば、甲3の13(表紙に「春号」とあるもの。)の7頁目の最上段の広告内「1993.4月21日(水) 小牧店OPEN!」の表記や、甲3の15(表紙に「真夏号」とあるもの。)の12頁目の広告「とにかく沖縄へ行く?OKINAWA」内「1993.7→1993.9」の表記や、甲3の17(表紙が黒の背景にスノーボーダーのイラストが描かれたもの。)の9頁目の最上段の広告内「’94年ニューモデル品切多数」の表記や、甲3の18(表紙が白の背景にスノーボーダーのイラストが描かれたもの。)の6頁目の中段の広告内「スプリングスノーボードツアー4月1日(金)夜行?4月3日(日)」の表記(1994年の4月1日は金曜日である。)や、甲3の18の6頁目の最下段の広告内「’94年ニューモデル品切多数」の表記等から、1993年?1994年当時であることがわかる。
これら甲3の1ないし同18の各パンフレット「あそび屋」は、株式会社東海共同印刷(愛知県名古屋市瑞穂区塩入町17-6)によって毎号1万部?3万部程度印刷され、誌内の「あそび屋MAP」(甲3の3の4?6頁等)に掲載した岐阜、愛知県北部、名古屋市内の各ショップや、当該地域のコンビニエンスストア、喫茶店、美容院、駅、更には地域の大学など、多数の店舗や場所で無料配布されたものである。
(ウ)甲3の19及び同20は、平成6年(1994年)に、請求人が発行人となって発行したパンフレット「あそび屋」である。これらは、表紙右下に「’94.5?10」とあるように、1994年5月頃に発行されたものである。また、最終面の右端には、発行人として請求人の氏名が記載されている。
(エ)甲3の21は、平成6年(1994年)に、請求人が発行人となって発行したスノーボードについてのパンフレットである。当該パンフレットの表紙には「スノーボード 1995 BY あそび屋」と記載されている。表紙左下に「’94.11?4」とあるように、1994年11月頃に発行されたものである。また最終面の下端には、発行人として請求人の氏名が記載されている。
(オ)請求人は、平成6年に、東陽総業株式会社の旅行事業部門「KMツーリスト」を開設した(甲2)。
(カ)これら甲3の1ないし同21は、内容から明らかなように、観光地、リゾート、スキー・スノーボード、スキューバダイビング、ヨット、ウィンドサーフィン、マリンボート、ボディーボード、パラグライダー、カヌー、フィッシング&クルージング、スタントカイト、乗馬、ラフティング等の、各種旅行やアウトドアスポーツのツアーの広告等が掲載されており、紙面の至るところに「あそび屋」の表示がされている。
したがって、甲3の1ないし同21によれば、請求人は遅くとも、平成3年の秋頃には引用商標を、継続的に、多くの需要者に知られる形で使用していたことがわかる。
ウ 甲4は、平成10年(1998年)7月に作成された、株式会社日本旅行(以下、日本旅行)との取引書類の一つである。甲4は、国内有数の大手旅行代理店である日本旅行と請求人が観光券契約した際に取り交わした書類である。具体的には、日本旅行が各観光施設を管理するシステム(QRシステム)に請求人が運営する観光施設「あそび屋 TST JAPAN」を登録するために、日本旅行へ提出した書類「QRデータ入力表」である。当該書類においては、各頁に引用商標の表記とともに、請求人が運営する観光施設のセールスポイント(長良川や天竜川でのラフティング、キャニオニング(沢下り)、シャワークライミング(沢登り)の体験。甲4の3頁)や利用料金(甲4の7頁)などが記載されている。日本旅行は、この「QRデータ入力表」を基に、全国の支店・営業所で請求人の観光施設の観光券(いわゆるクーポン券)を一般の顧客へ案内・販売する。
したがって、本件商標の登録出願の何年も前から、国内有数の旅行業者である日本旅行及びその顧客に、引用商標が知られている。なお「TST JAPAN」とは、現在も請求人が経営する「株式会社ティーエスティージャパン」(甲2)に対応する表記である。請求人は、上記社名「東陽総業株式会社」を、平成15年に「株式会社ティーエスティージャパン」へ社名変更している(甲2)が、社名変更前よりこのTST JAPANの表記も使用していた。
エ 甲5は、平成12年(2000年)における、「あそび屋」の予約ナンバー表及び月毎の残席案内表である。予約ナンバー表(「あそび屋2000予約NO頭にCを付ける」と記載された書類)は、各販売店を通じて「あそび屋」のツアーヘの申し込みがあった顧客(ツアー参加者)を請求人が管理するための番号を列挙した表である。具体的には、予約ナンバー表では、その年を示すアルファベット文字(2000年であれば「C」)+販売店の別を示す販売店コード(例えば、ぴあ名古屋であれば「300」)+3桁の数字、によって顧客の予約を管理していた。予約ナンバー表において横線で消された数字は、実際に予約の管理に用いた数字である。また、残席案内表(「あそび屋残席案内」と記載された書類)は、上述したように「あそび屋」のツアーヘの申し込みがあったときに、各ツアーについての予約状況を記入するための書類である。残席案内表では、各ツアー(残席案内表のA欄参照、例えば長良川での午前中のラフティングツアーを示す「長良ラフトAM」)について、各日の予約状況を数字(人数)や×印(満席を意味する)等で示している。このような甲5によれば、平成12年当時においても請求人が引用商標を冠した各種ツアーを販売し、実際に多くの顧客が参加して該ツアーが催行されていたことがわかる。
オ 甲6は、平成12年(2000年)頃に多数頒布された、KMツーリスト主催のツアーを掲載したパンフレット「あそび屋」であり、当該パンフレットにはいたる所に「あそび屋」の表記がなされている。甲6の表紙最下段には「インストラクター大募集!!」と記載した欄内に「本社:〒451-0031名古屋市?」の記載とともに「関西:〒550-0014大阪市?」との記載がある。甲2を参照すると、請求人は平成10年(1998年)10月に大阪営業所を開設し、平成13年(2001年)3月に当該大阪営業所を閉鎖している。そのため、甲6に係るパンフレットの発行時期は、少なくとも当該大阪営業所の開設期間内であることがわかる。また、甲6に係るパンフレットの表紙上段(大きな「あそび屋」の表記の上)に表示された「パラグライダー・岐阜/揖斐高原・琵琶湖/伊吹山」、「ウェイクボード・琵琶湖・三河湾」、「MTB・茶臼山」、「ラフティング・岐阜/長良川・琵琶湖/瀬田川・京都/保津川・四国/吉野川」、「ボディーボード・伊良湖」はそれぞれ、甲5の残席案内表の上記A欄における「イビパラ送迎、イビパラ現地、イブキパラ」、「ウェイク琵琶湖、ウェイク三河」、「マウンテンB現、マウンテンB送迎」、「長良ラフトAM、長良ラフトPM、長良ラフトID現、長良ラフトID送、瀬田ラフトAM、瀬田ラフトPM、保津ラフトAM、保津ラフトPM、ヨシノ」、「ボディーB現、ボディーB送」に一致している。
したがって、甲6のような「あそび屋」のパンフレットを介して、実際に多くの顧客がツアーに参加したことがわかる。
カ 甲7及び甲8は、平成13年(2001年)及び同14年(2002年)における、「あそび屋」の予約ナンバー表及び月毎の残席案内表である。これらによれば、平成13年及び同14年当時においても請求人が引用商標を冠した各種ツアーを販売し、実際に多くの顧客が参加して該ツアーが催行されていたことがわかる。
キ 甲9は、平成14年(2002年)に多数頒布された、KMツーリスト主催のラフティングやキャニオニングや登山等の各種ツアーを掲載した「あそび屋」のパンフレットであり、当該パンフレットにはいたる所に「あそび屋」の表記がなされている。また、当該パンフレットの最終面左上欄には、「日本まん真ん中温泉」及び長良川に隣接する好立地に、「長良川 川あそび基地」(甲2における「長良川現地基地」の記載も参照)が所在していることも記載されている。
ク 甲10は、請求人が開設しているインターネットホームページの一部抜粋であり、当該川あそび基地について紹介している。
ケ 甲11は、平成14年当時、岐阜県郡上郡美並村(平成16年3月1日から岐阜県郡上市美並町に変更)の役場で発行された広報「MI NA MI みなみ」5月号の一部抜粋(表紙と3頁目)である。これによれば、当該広報「MI NA MI みなみ」の3頁目に「4月27日、日本まん真ん中温泉子宝の湯で竣工式が行われ、…」とある。そのため甲第9号証の表紙中段右における「※4月下旬オープン予定。」とは、平成14年4月下旬オープンを意味することがわかる。
したがって、甲9のパンフレットは、平成14年4月からのシーズンの各ツアー募集のために平成14年4月下旬よりも以前から頒布されたものであることがわかる。
請求人は、このような(甲9や、上述した甲6や、後述する甲18のような)パンフレットを各シーズンにおいて、大手旅行代理店の支店・営業所等で頒布される分も含めて10万部程度、多いときは20万部程度印刷し頒布していた。そのため、本件商標の登録出願よりも前から、取引業者及び一般の顧客に、引用商標を冠した各種ツアーが広く知られていた。
コ 甲12は、平成14年(2002年)の春に、株式会社愛銀ディーシーカードが、クレジットカードユーザー向けに発行したカードニュース「SEASON DC vol.33」である。当該カードニュースの中面下段には、引用商標の表記とともに長良川、天竜川でのラフティングツアーや登山ツアーの広告が掲載されている。そのため、このようなクレジットカードのユーザーに、本件商標の登録出願よりも前から、引用商標を冠したツアーが広く知られている。
サ 甲13は、平成15年(2003年)に、国内最大手の旅行代理店である株式会社ジェーティービー(以下「JTB」という。)に対して請求人が提出したタリフ原稿である。当該タリフ原稿は、請求人がJTB(甲13の各頁最下段)と観光券契約した際に提出した書類であり、請求人が提供する各ツアー(長良川でのラフティング、キャニオニング、シャワークライミングや天竜川でのラフティング)についての料金(料金改定日平成15年3月3日)やセールスポイント等の各種情報が記載されている。当該タリフ原稿には、引用商標が記載されている。つまり、このように請求人がJTBと観光券契約することで、JTBは全国の支店・営業所で「あそび屋」による各種ツアーの観光券(クーポン券)を一般の顧客へ案内・販売することとなる。
したがって、本件商標の登録出願よりも前から、国内最大の旅行業者であるJTB及びその顧客に、引用商標が知られている。
シ 甲14の1「日本旅行インターネット『旅ぷらざ』観光情報サイトヘのご参加のお誘い」は、平成15年4月に、当該サイトヘの広告掲載を勧誘するために日本旅行メディアミックス営業部から請求人(施設代表者)へ送付された書類である。甲14の2は、平成15年(2003年)5月29日付けの「旅ぷらざインターネット広告掲載申込書」であり、日本旅行が運営する旅ぷらざ観光情報提供サービス(上記「旅ぷらざ」観光情報サイト)に、請求人の観光施設の情報を掲載するために、請求人が記入して日本旅行へ提出した書類である。甲14の2の2頁目(右上にA-1と記された頁)の「セールスポイント」欄には、「…シャワークライミング等のアウトドアツアーなら、あそび屋へおまかせ。」と記載されており、この記載が「旅ぷらざ」のサイトに掲載される仕組みになっている。そのため、本件商標の登録出願よりも前から、取引業者及び「旅ぷらざ」のサイトを閲覧する一般の顧客に、引用商標による各種ツアーが広く知られている。また、甲14の1には、当時において同サイトの一日のアクセス・ページビューが5万人に達することや、日本旅行が最も力を注いでいるがインターネット販売であることが記載されている。
したがって、このような「旅ぷらざ」のサイトは、「あそび屋」のツアーを多数の需要者に周知させ販売する一つの強力なツールとなっていた。
ス 甲15は、平成15年(2003年)9月8日付けの「TOKYO HEADLINE」の切り抜きである。「TOKYO HEADLINE」は、株式会社ヘッドラインが発行し、東京を始めとする首都圏で広く頒布されるフリーペーパー(無料紙)である。当該「TOKYO HEADLINE」の切り抜きの下段には、引用商標とともに「天竜川ラフティング体験&スパリソート」の広告が掲載されている。そのため、本件商標の登録出願よりも前から、「TOKYO HEADLINE」を読む多くの需要者に引用商標を冠したツアーが広く知られている。
セ 甲16の1は、平成15年(2003年)12月16日に、株式会社海外開発センターPMシステム事業部(以下「海外開発センター」という。)と請求人がやり取りしたファクシミリ(「ハートフルセンター『ハートフルガイド』ご掲載のご案内」)であり、甲16の2は、同時期(平成15年12月)に、海外開発センターから請求人に対して送付された書類(「PMシステム加盟店様」と書かれた書類)である。甲16の1は、8年前のファクシミリであるため一部記載が薄くなっているが、請求人が受信した日時は、左上の「03-12-16」の記録により2003年12月16日であることがわかる。甲16の1には、海外開発センターの提携企業「ハートフルセンター(財)愛知県労働者福祉基金協会発行『ハートフルガイド』」の会員様向け発行物(2004年度版:発行地域愛知県、静岡県、岐阜県、三重県発行部数2003年度版実績5万部)への掲載内容の確認事項や、確認事項の訂正(赤ペンによる訂正)等が記載されている。具体的には、加盟店名として「あそび屋」と記載され、プライスリストとして「ラフティング1日体験」等と記載されている。つまり甲16の1、2によれば、2003年12月の時点においても取引業者の一つである海外開発センターに請求人の「あそび屋」が明確に認識されており、かつ上記「ハートフルガイド」2004年度版は、引用商標が付されたラフティング等のアウトドアツアーの広告を掲載し、愛知県、静岡県、岐阜県、三重県の多数の上記会員に向けて発行されたことがわかる。
ソ 甲17は、平成16年(2004年)に、ぴあ株式会社により発行された情報誌「夏ぴあ」の切り抜き(「夏のおでかけINFO」のページ)である。甲17には、「大人気のラフティングツアーを開催しているあそび屋。」と大きく記載されており、また「あそび屋」が長良川で提供するラフティングツアーや、シャワークライミング、キャニオニング、清流あそびと源流探検などのプログラムや、長良川において「あそび屋」の拠点となる上述の「川あそび基地」(岐阜県郡上市美並町大原2722)が紹介されている。 「夏ぴあ」は、国内多数の書店やコンビニエンスストアで発売される非常に著名な情報誌であるため多くの読者が当該記事を目にし、結果、本件商標の登録出願よりも前から「あそび屋」によるツアーが広く知られている。
タ 甲18は、平成16年(2004年)に頒布された、「あそび屋」による長良川の各種ツアーを掲載したパンフレットであり、当該パンフレットにはいたる所に「あそび屋」の表記がなされている。なお甲18には発行時期を明示する記載はないが、表紙最下段における日本まん真ん中温泉についての注意書き「※温泉利用(金曜定休)の方は現地にて施設使用料(各自500円)が必要です。」や、最終面下段において本社住所が名古屋市緑区鳴海町境松43-3となっている点から、甲18は、すくなくとも平成14年4月以降?平成16年11月の間に作成されたパンフレットであることがわかる。
チ 甲19は、平成16年(2004年)9月5日に子宝温泉川の駅組合から「あそび屋」に対して発行された請求書と、子宝温泉川の駅組合に対する振込を証明する“ご利用明細票”と、を併せた書類(請求人が、子宝温泉川の駅組合へ振込確認のために送信した書類)である。なお、“ご利用明細票”振込人欄には「ヤガイタイケンカツドウスイシンレンメイ」とあるが、これは平成16年に請求人が設立(甲2号)した「NPO(特定非営利活動)法人野外体験活動推進連盟」を指しており、請求人と同一組織である。甲19によれば、上記「川あそび基地」が所在する「川の駅373」(甲17)を管理する子宝温泉川の駅組合に対し、平成16年8月の各日に実施された「あそび屋」のツアー(例えば「8/22は自然学校」の記載有り。また、甲18パンフレットの3頁目に「長良川自然学校」の記載有り。)で提供された昼食代が支払われたことがわかる。つまり甲19によれば、本件商標の登録出願よりも前から、引用商標は、旅行業界における多くの取引業者や一般需要者のみならず、ツアーが催行される現地の組織にも周知されていることがわかる。
ツ 甲20(枝番を含む。)について
(ア)甲20の1は、平成16年(2004年)7月17日にJTB教育旅行大阪支店から請求人に対して送信されたファクシミリ(FAX送信状)と、当該ファクシミリによる申込に対して請求人がJTB教育旅行大阪支店へ返信したファクシミリ(FAX送信用カルテ:平成16年7月20日作成)である。甲20の1によれば、平成18年(2006年)5月28日に予定されている枚方市立楠葉西中学校の修学旅行のために、ブランド「あそび屋」による長良川ラフティングPMハーフ団体プラン(生徒120名+先生8名)が、平成16年7月に申込まれたことがわかる。
(イ)甲20の2は、平成17年(2005年)7月31日にJTB教育旅行神戸支店から請求人へ申込があったツアー予約に対し、請求人がJTB教育旅行神戸支店へ返信したファクシミリ(FAX送信用カルテ:平成17年8月1日作成)であり、同号証によれば、龍谷中学校(神戸)のために、ブランド「あそび屋」による平成18年(2006年)7月13日の天竜川ラフティング団体プランAMハーフ(生徒81名+先生7名)が、平成17年7月に申込まれたことがわかる。
(ウ)甲20の3は、平成17年(2005年)11月2日に、日本旅行大阪教育旅行支店から「あそび屋」に対して送信されたFAX送信状と、平成17年12月8日(甲20の3の2枚目左上「2005-12-08」の記載)に日本旅行大阪教育旅行支店から「あそび屋」に対して送信されたFAX送信状である。平成17年12月8日付けのFAX送信状は、平成17年11月2日付けのFAX送信状が再利用されたものである。甲20の3によれば、平成17年11月2日に、平成19年(2007年)6月6日に予定されている豊中市立第八中学校の修学旅行のために「あそび屋」のラフティング半日体験(人数80名2クラス)が予約され、数日後(平成17年12月8日)に当該予約が取り消されたことがわかる(12月8日付けのFAX送信状の下段「※申し訳ございませんキャンセルお願い致します」の記載参照)。
(エ)甲20の4は、平成17年(2005年)11月21日に、国内有数の大手旅行代理店である近畿日本ツーリスト株式会社(以下、近畿日本ツーリスト)大阪教育旅行支店から請求人へ送信されたFAX送付状(正確には、当該FAX送付状に請求人が書き込みをして近畿日本ツーリストヘ返信したもの)と、当該FAX送付状による予約を確認するために平成17年11月30日に請求人が近畿日本ツーリスト大阪教育旅行支店へ送信した「ご予約確認書」である。甲20の4によれば、大阪市立阿倍野中学校のために、ブランド「あそび屋」による平成19年(2007年)6月13日の長良川ラフティング団体プラン午前コース(生徒106名/先生10名)が、平成17年11月に申込まれたことがわかる。
(オ)甲20の5は、平成17年(2005年)12月8日に、JTB団体旅行横浜支店から請求人へ送信されたFAXと、当該FAXによる予約を確認するために請求人がJTB団体旅行横浜支店へ送信した「ご予約確認書」である。甲20の5によれば、鎌倉市立岩瀬中学校のために、ブランド「あそび屋」による平成18年(2006年)6月6日の長良川ラフティング団体プラン午後コース(約120名)が、平成17年12月に申込まれたことがわかる。
(カ)このように甲20の1ないし同5を見ただけでも、引用商標のブランドを付したツアーの存在が、本件商標の登録出願前あるいは登録前からJTBや近畿日本ツーリストや日本旅行のよう日本を代表する大手取引業者内において確固たる地位を築いており、各学校へ営業がなされ、結果、請求人が拠点とする東海地方外の近畿地方や関東地方からも多数の顧客(修学旅行)のツアー申込(一部キャンセル有り)を受けていたことがわかる。
テ 甲21の1ないし同10は、請求人がツアー申込者の情報を管理する電子カルテを、プリントアウトしたものである。請求人は、平成13年(2001年)以降は、基本的に顧客情報をFileMakerというデータベースソフトウェアを用いてコンピューターで管理しており、ツアー申込の一単位毎に当該FileMakerで電子カルテを作成している。
したがって、電子カルテは膨大な数が存在するが、ここでは甲21の1ないし同10として、電子カルテのごく一部(ツアーヘの申込日が本件商標の登録出願日や登録日に近いもの10件)を抽出して添付している。このようなごく一部の電子カルテを見ただけでも、愛知、岐阜、三重、静岡の東海地方はもとより、千葉県、大阪府、京都といった全国各地からブランド「あそび屋」のツアーヘの参加者が多数あることがわかる。
ト 甲22の1及び同2は、FileMakerで平成17年(2005年)9月8日と平成17年10月12日にそれぞれ作成された「ご予約確認書」である。FileMakerでは、上述した電子カルテとともに電子カルテ毎の内容に対応した「ご予約確認書」を作成する。具体的には、甲22の1は、同3の電子カルテ(申込日2005/9/8)に対応した「ご予約確認書」であり、甲21の3の内容と一致している。一方、甲22の2は、同5の電子カルテ(申込日2005/10/12)に対応した「ご予約確認書」であり、甲21の5の内容と一致している。これら「ご予約確認書」は、ツアー申込をした顧客に対しファクシミリで送信されるものであり、確認書内にはツアーのブランドとして「あそび屋」が表記されている。
したがって、「あそび屋」のツアーを申し込んだ顧客は、この確認書を受け取ることで、出発日や料金等の予約内容の確認とともに引用商標を再度明確に認識する。
ナ 甲23(枝番を含む。)について
甲23の1ないし3は、請求人が経営する株式会社ティーエスティージャパンの平成16年度ないし18年度の決算報告書の一部抜粋(表紙と、販売費及び一般管理費の計算内訳の頁)である。
これら各年度の決算報告書の「販売費及び一般管理費の計算内訳」の頁には、広告宣伝費の決算額が記載されている。甲23の1をみると平成16年度の広告宣伝費は2,197,714円、甲23の2を見ると平成17年度の広告宣伝費は14,324,814円、甲23の3を見ると平成18年度の広告宣伝費は4,082,916円となっており、請求人は、毎年度多額の広告宣伝費を投じていることがわかる。なお、株式会社ティーエスティージャパンにおけるこのような広告宣伝費の100%が引用商標を伴った宣伝に投じられているとは必ずしもいえないが、これまでの説明でもわかるように「あそび屋」を冠したアウトドアツアーは株式会社ティーエスティージャパンの核となる事業であるため、上記広告宣伝費の大部分が「あそび屋」を冠したアウトドアツアーの宣伝、集客に用いられ、その結果、これらツアーが多くの需要者に広く浸透しているといえる。
ニ 甲24は、請求人と日本旅行との間で平成18年4月1日(2頁目参照)に取り交わされた「覚書」であり、これは日本旅行との旅客斡旋基本契約書[観光券]に基づき締結されたものである。上述したようにこれより過去においても請求人は日本旅行と継続的に観光券契約を結んでいるが、甲24は、1頁目上段に記載されているように、日本旅行のシステム変更に伴い締結されたものである。当該「覚書」には「あそび屋」の表記が明示されており、この「覚書」一つをみても、大手旅行代理店である日本旅行に、請求人のブランド「あそび屋」が深く認識されていることがわかる。
ヌ 甲25は、平成20年(2008年)4月24日に請求人とJTBとの間で締結された(甲25の最終頁)業務委託契約書の一つである。当該契約書の冒頭には「あそび屋」が明示されている。
ネ 甲26は、平成22年(2010年)1月22日に、JTB首都圏横須賀支店から「あそび屋」へ送信されたFAX MESSAGE(正確には、当該FAXに請求人が書き込みをしてJTB首都圏横須賀支店へ返信したもの)である。甲26によれば、鎌倉市立岩瀬中学校(生徒112名、教員10名)についての平成22年6月2日のラフティング(長良川)が、平成22年1月に予約されたことがわかる。また、甲26には、「○2006年に同じ学校で実施していただきました。」と付記されており、鎌倉市立岩瀬中学校(甲20の5。鎌倉市立岩瀬中学校は、2006年6月6日に、長良川ラフティングを体験している。)が「あそび屋」のラフティングツアーのリピーターであることがわかる。
3 まとめ
(1)以上のように、請求人は、遅くとも平成3年の秋頃には、引用商標を、ツアー広告等を掲載する情報誌の発行事業などに使用し、その後も継続的に、様々なメディア(自社で発行する各種ツアーパンフレット、有料あるいは無料の各種情報誌、クレジットカード会員向け刊行物、自社や大手旅行代理店の各インターネットホームページ等)や、自社や大手旅行代理店の支店・営業所を介して、引用商標を冠した各種アウトドアスポーツのツアーを積極的に宣伝、販売し、これらツアーを催行し、実際に膨大な数のツアー客(個人、団体、修学旅行)を受け入れている。そのため、本件商標の登録前はもちろん本件商標の登録出願前から、引用商標は請求人が運営する業務に係る商標として、東海地方を中心に、更には関西地方や関東地方においても需要者(旅行業界の取引業者や一般需要者)に深く広く浸透し、アウトドアスポーツ体験のブランドとしての周知性・著名性を確立していることは明らかである。特に、請求人はラフティングやキャニオニング等のアウトドアスポーツの分野で全国的に有名な長良川において、「川あそび基地」を、甲9によれば平成14年4月よりも前から設置しており、この「川あそび基地」を拠点として「あそび屋」の各種ツアーを多くの顧客に提供し続けている。そのため「あそび屋」は、上記取引業者や一般需要者さらにはツアーが催行される地域の人々の中で、ラフティングやキャニオニング等のアウトドアスポーツのツアーに関するブランドとして確固たる地位を築いている。
(2)したがって、本件商標は、その出願及び登録の時点で、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者に広く認識されている商標(引用商標)と同一又は類似であり、引用商標が使用される役務又はこれに類似する役務を指定役務とするものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、出所の混同を防止するという商標法の主旨に鑑み無効にすべきものである。
(3)さらに、本件商標は、その登録出願及び登録の時点で、他人の業務に係る役務を表示するものとして周知・著名である商標(引用商標)と同一又は類似であり、そのため他人の業務に係る役務と混同が生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、無効にすべきものである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求人が挙げる主張の骨子は、要するに、請求人(請求人個人のほか請求人が経営する株式会社及びNPO法人を含む以下この三者をあわせて「請求人ら」という。)が早くて平成3年秋ころから引用商標を用いて旅行者の案内に関する役務を提供してきた、だから引用商標には周知性があるというものである。
ところで、周知性、すなわち当該商号が需要者に広く認識されている状態か否かのメルクマールについて、裁判例(東京高裁昭和58年6月16日判決 DCC事件 判例時報1090号164頁)は、「少なくともその同種取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要する」と判示している(ここで「同種取扱業者」とあるのは当該事件が喫茶店などへ卸す業務用コーヒーに関する商標であったからである。そして当該事件では取引占有率たかだか30%では広く認識されていたとは認められないと認定している)。
しかし、請求人が主張する「早くて平成3年秋ころから引用商標を用いてきた」という前提と「少なくともその同種取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されている」すなわち「引用商標には周知性がある」という結論との間には何の論理関係もなく、飛躍がある。
したがって、請求人の引用商標が周知性を得ていたとの主張は、不十分で証明もなく、理由がない。
2 請求人の引用商標が周知性を得ていないその理由は、被請求人の主張の骨子を大まかに挙げると以下の2点である。
(1)競争が激しい旅行業界で、請求人の市場占有率は低い
上記裁判例が示すとおり、どの業種においても相当のシェア(市場占有率)を取ることもなく商標の周知性を獲得することは不可能である。
そして、旅行者の案内に関する役務、すなわち旅行業界は市場規模が大きく他方で参入障壁が低く競争が激しい。かかる業界において、相当の市場占有率を占めること自体が非常に困難である(乙9)。
しかしながら、請求人らは、何年も業務を継続しながら市場においてさしたるシェアも獲得しておらず、請求人ら自体がいわば無名同然の存在である。
したがって、かかる無名の請求人らが用いている引用商標も、請求人らと同様に無名であって、前記判例でいう「需要者の間に広く認識されている」状態でないことは明らかである。
(2)広告・宣伝が乏しいので知名度を獲得しようがない
引用商標に限らず、ある商標が市場において周知性を獲得するためには、(a)業務(取引)を通じて顧客及び取引業者に認知されることのほかに、(b)広告・広報活動を通じて潜在的な顧客及び取引業者に認知される(いわゆる需要を掘り起こす)ことが考えられる。しかし、請求人が主張・立証する周知性獲得の手段を分析すると、(a)がほとんどで、(b)については極めて限定的に行っているにすぎない。
一般消費者向けの商品や役務(いわゆるBtoCビジネス)では、商品や役務を売るためにまずは認知度を高める必要がある。そのためにマス(=大衆)マーケティングとしての広告が重要なのである。様々なメディアの発達した現代社会において商品や役務の周知性すなわち「需要者の間に広く認識されている」状態を獲得するには、前述(a)のように細々と商品や役務を販売することよりもそれ以上に前述(b)のような広告戦略こそが重要であり、かかる事実は特許庁にも顕著な事実のはずである。
ところが、請求人らのビジネスは、一般消費者向け役務を提供しているにもかかわらず、その引用商標を用いた広告についてはインパクトの乏しい紙メディアヘの、一回限り・単発の広告出稿を複数回したという程度に留まる。
すなわち、請求人らが行ったとする程度の広告出稿で引用商標の周知性を獲得することは不可能なのである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標、商標法第4条第1項第10号に違反しない。また、上記のように引用商標には周知性がないこと、請求人らも無名であり出所について混同のおそれはなく、「他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれのある商標」には該当せず同第15号にも違反しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものではない。

第4 当審の判断
1 周知、著名性について
(1)請求人は、「引用商標は、請求人が主にアウトドアスポーツのツアー等の旅行の広告や催行のために長年に亘り使用したことで、需要者の間に広く認識されているものである」旨主張して甲各号証を提出しているところ、これらの甲各号証中、本件商標の登録出願日(2005(平成17)年10月20日)前の証拠及び請求人の主張からは、以下の事実が認められる。
ア 株式会社ティーエスティージャパンの代表者である請求人は、1990年(平成2年)7月に個人事業「あそび屋」を設立、1994年(平成6年)3月に、東陽電設工業株式会社と業務合併し、同社代表取締役に就任、同年5月に、旅行事業部KMツーリスト(以下「KMツーリスト」という。)を開設、その後、2004年2月に「NPO法人 野外体験活動推進連盟」を設立したこと(甲2)。
イ 請求人(甲3の1ないし12、19ないし21)及び請求人が代表を務めた「あそび屋編集室」(甲3の13ないし18)を発行人とする、平成3年(1991年)11月ないし平成6年(1994年)に発行された「あそび屋」のパンフレットは、そのほとんどに「レジャーツアーパンフレット東海版/ただです!!」の記載がある。そして、そのほとんどに、あそび屋が企画するスキー、ラフティング等のアウトドアスポーツの紹介記事や「あそび屋 HOT NEWS!/チームあそび屋始動」の見出しの下、スキー&スノボーツアーの企画(例えば甲3の5、28頁)等、各種ツアーの企画を行っていることが記載されている。
その後、2000年頃(甲6)、2002年(甲9)、2004年(甲18)にそれぞれ頒布されたと請求人の主張する「あそび屋」の表題のあるパンフレットには、別掲のとおりの構成からなる「あそび屋」の商標(「あそび屋」の文字よりなる商標を合わせ、これらを以下「使用商標」ということがある。)が使用され、その使用商標の下に、「体験プラン」と称し、「パラグライダー体験」、「ボディーボード体験」、「ラフティング体験」等、各種スポーツ体験や長良川の「川あそび基地」を拠点とするラフティングツアー等の紹介がなされ、そのそれぞれの「企画」を「TST JAPAN」、「主催」を「KMツーリスト」(ただし、甲18に主催者の記載はない。)とする記載がある。
なお、請求人の主張によれば、甲3の13ないし同18は、株式会社東海共同印刷が印刷したパンフレット「あそび屋」で、1993年(平成3年)11月から1994年(平成4年)春頃にわたって印刷され、岐阜、愛知県北部、名古屋市内の各ショップ、コンビニエンスストア、喫茶店、美容院、駅、地域の大学などで無料配布されたこと。
ウ 甲4は、請求人の主張によれば、平成10年(1998年)7月に作成された、日本旅行との取引書類の一つであって、日本旅行が各観光施設を管理するシステム(QRシステム)に請求人が運営する観光施設「あそび屋 TST JAPAN」を登録するために、日本旅行へ提出した書類「QRデータ入力表」であり、そこには、施設の特徴の紹介や長良川及び天竜川への交通案内が記載されていること。
エ 甲5は、請求人の主張によれば、平成12年(2000年)における、「あそび屋」の予約ナンバー表及び月毎の残席案内表であって、「あそび屋」のツアーヘの申し込みがあったときに、各ツアーについての予約状況を記入するための書類であること。
オ 甲12は、2002年春発行の株式会社愛銀ディーシーカードのカードニュースの冊子であり、これには、DCカード加盟店として、「アウトドア イベントショップ」として「遊び屋」が紹介されている。
カ 甲13は、請求人の主張によれば、平成15年(2003年)に、旅行代理店であるJTBに対して、同社と請求人と観光券契約した際に提出した書類であり、この「事業所名」欄には、長良川や天竜川でのラフティング体験等に関する記載と「あそび屋TST JAPAN」の記載がされていること。
キ 甲14の1は、平成15年4月付けの「日本旅行インターネット『旅ぷらざ』観光情報サイトヘのご参加のお誘い」の表題のある書類であり、これは、当該サイトヘの広告掲載を勧誘するために日本旅行メディアミックス営業部から請求人(施設代表者)へ送付された書類であること。また、甲14の2は、平成15年(2003年)5月29日付けの「旅ぷらざインターネット広告掲載申込書」であり、これには、「セールスポイント」として、「長良川、天竜川でのラフティング・・・シャワークライミング等のアウトドアツアーなら、あそび屋へおまかせ。」と記載されていること。
ク 甲15は、請求人の主張によれば、東京を始めとする首都圏で広く頒布されるフリーペーパーと平成15年(2003年)9月8日付けの「TOKYO HEADLINE」の抜粋記事であり、これには、使用商標とともに「天竜川ラフティング体験&スパリソート」に関する記事が掲載されている(甲15)
ケ 甲16の1及び2は、平成15年(2003年)12月に、株式会社海外開発センターPMシステム事業部と請求人との間の、「ハートフルセンター」発行の「ハートフルガイド2004年度版」への使用商標等の掲載についての案内と掲載内容の確認についての書類であること。
コ 甲17は、請求人が2004年に発行されたと主張する情報誌「夏ぴあ」の抜粋記事であり、これには、「スリル満点の長良川激流下り!!/ラフティングを気軽に楽しもう」、「長良川を拠点にラフティングツアーを行っている、あそび屋。」の記載等、「遊び屋」の紹介記事が掲載されている。
サ 甲19は、16年9月5日付けの「子宝温泉川の駅組合」から「あそび屋」へ宛てた「請求書」の写しと、「子宝温泉川の駅組合」に対する振込明細書の写しを合わせたものであり、「請求書」の写しには16年9月5日、昼食の税込合計金額「107、331」とあり、振込明細書の写し2通には、取扱日はいずれも「16年9月30日」で、受取人も「コダカラオンセンカワノエキクミアイ」であるが、上段部の振込人の欄には「ヤガイタイケンカツドウスイシンレンメイ」、下段部の振込人の欄には「カ)ティーエスティージャパン」と記載されている。
シ 甲21の1ないし5は、請求人の主張によれば、ツアー申込者の情報を管理する電子カルテ(作成日が2005年8月2日から同年10月12日)であり、また、甲22の1及び2は、そのうちの甲21の3及び5に対応した予約確認書であること。そして、これらには、主催会社を「TST JAPAN」または「NPO法人野外体験活動推進連盟」とし、「ブランド名」を「あそび屋」、「ツアー名称」を「長良川ラフティングAMハーフ」等、全て「長良川ラフティング」に関するツアー名称が記載されている。また、これらには、予約単位の金額が記載されている。
ス 甲23の1ないし3は、株式会社ティーエスティージャパンの決算報告書の一部抜粋であり、これらによれば、広告宣伝費は、平成16年度が2,197,714円、平成17年度が14,324,814円、平成18年度が4,082,916円であること。
セ なお、甲第20号証の3ないし5、甲第21号証の6ないし10、甲第24号証ないし甲第26号証に関しては、本件商標の登録出願後のものである。
(2)以上のアないしセによれば、請求人は、株式会社ティーエスティージャパンの代表者であり、1994年5月にKMツーリストを開設し、「NPO法人 野外体験活動推進連盟」を設立した者であるから、これらの会社等(片仮名・欧文字表記を含む。)は、請求人と密接な関連があり、実質上、請求人と同一の者とみて差し支えないものといえる(以下、これらを総括して、単に「請求人」ということがある。)。
そして、請求人は、本件商標の登録出願前から、使用商標を使用して、アウトドアスポーツのツアー等の旅行の企画、主催(以下「使用役務」ということがある。)をしていたことが認められる。
しかしながら、以下の理由により、使用商標は、請求人の業務に係る使用役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であるとは認められない。
(3)使用役務の提供の状況や提供場所をみると、請求人が、主として行う役務は、天竜川や長良川におけるラフティングやアウトドア体験の企画に関するものであり、そのジャンルが限られているものであって、また、その提供地域も限られている。そして、甲第3、6、9及び18号証のパンフレットによれば、請求人が、ラフティングやアウトドア以外にスキーやスノボードツアー等の企画を行っていることはうかがわれるものの、これらに関する顧客との契約や取引を示すものはない。
(4)使用役務の売上高をみると、売上高が確認又は推認できるものは、甲第13号証、甲第20号証(甲第20号証の3ないし5を除く。)、甲第21号証(甲第21号証の6ないし10を除く。)及び甲第22号証(枝番を含む。)のみであり、いずれも単件の契約単位での料金が表示されているものであって、年間、あるいは、商標の使用開始から本件商標の登録出願前までの間の売り上げは確認できない。
(5)使用役務の広告活動を示すものとして、請求人の発行する1991年から1994年4月、2000年頃、2002年、2004年の「あそび屋」と題する「フリーペーパー」の「パンフレット」があるが、これらのほとんどは東海版であり、その配布地域は請求人も述べるように、愛知県北部、名古屋の各ショップ等であって地域が限定されており、また、請求人は、このパンフレットを各シーズンにおいて10万部程度、多いときは20万部程度頒布した旨主張しているが、主張しているのみで裏付けとなる客観的な証拠の提出はない。
また、2002年春発行の株式会社愛銀ディーシーカードのカードニュースの冊子、平成15年(2003年)9月8日付けの「TOKYO HEADLINE」の及び2004年に発行されたとする情報誌「夏ぴあ」に、「あそび屋」が紹介されたことは認められるものの、これらの発行部数、頒布地域等は不明であり、「ハートフルガイド」の発行物にしても、当該発行物に、実際に「あそび屋」による各種ツアーが紹介されたことを証する書面の提出もない。
さらにまた、請求人は、「旅ぷらざ」のサイトは、「あそび屋」のツアーを多数の需要者に周知させ販売する一つの強力なツールとなっていたと主張して、甲14の1及び2を提出しているが、実際に、該サイトに、「あそび屋」による各種ツアーが紹介されたことを証する書面の提出もない。
加えて、請求人は、広告宣伝費として、株式会社ティーエスティージャパンの広告宣伝費である平成16年度が2,197,714円、平成17年度が14,324,814円、平成18年度が4,082,916円(甲23)を示しているが、株式会社ティーエスティージャパンは、使用役務以外に電気設備工事及び保守管理等様々な業務を行っている(甲2及び乙5)ことから、その広告宣伝費が使用役務のみに関するものとは認められない。
この点に関し、請求人は「あそび屋」を冠したアウトドアツアーは、同社の核となる事業であるため、その広告宣伝費の大部分は「あそび屋」を冠したアウトドアツアーに関する広告宣伝費である旨主張するが、主張のみで具体的証拠の提出はなく、しかも、同社の業務内容からすれば、請求人の主張はにわかには肯首し得るものでない。
したがって、使用商標が本件商標の登録出願時点で請求人の業務に係る役務を表示する商標として、需要者の間に広く認識されている商標とはいえないものである。
2 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
本件商標と使用商標とが「アソビヤ」の称呼を共通にする類似の商標であるとしても、前記1のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時点で請求人の業務に係る役務を表示する商標として、需要者の間に広く認識されている商標とはいえないものである。
また、両商標が混同を生ずるとすべき格別の事情も見出し得ないから、被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者が、使用商標を連想又は想起するとはいえず、その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
なお、請求人は、平成23年11月15日付けの上申書を提出しているが、その内容を検討するも、前記判断に影響を与えるものとみることはできないから、審理再開の必要は認めないものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
使用商標


審理終結日 2011-11-07 
結審通知日 2011-11-10 
審決日 2011-12-20 
出願番号 商願2005-103249(T2005-103249) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Y39)
T 1 11・ 271- Y (Y39)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2006-06-09 
登録番号 商標登録第4958924号(T4958924) 
商標の称呼 アソビヤ、アソビ 
代理人 横井 俊之 
代理人 足立敬太 

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