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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X33
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X33
管理番号 1251579 
審判番号 無効2010-890080 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-21 
確定日 2012-01-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5321528号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5321528号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5321528号商標(以下「本件商標」という。)は、「Petit Bistro」の欧文字を横書きに表してなり、平成21年6月2日に登録出願、第33類「果実酒」を指定商品として、同22年3月29日に登録査定、同年5月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録第4062672号商標(以下「引用商標」という。)は、「BISTRO」の欧文字を横書きに表してなり、昭和63年11月28日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年10月3日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同19年10月24日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)及び検甲第1号証を提出した。
1 請求の利益
本件商標は、請求人所有の周知商標である引用商標と類似し、これをその指定商品について使用するときには、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあり、ひいては、ワインその他の果実酒を取り扱う請求人の営業と混同を生じさせるので、本件無効審判請求に及んだ次第である。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記したとおり、「Petit Bistro」の欧文字を横書きに表してなるところ、「Petit」「Bistro」の各文字はいずれも、フランス語を語源とする英語若しくは外来語として、「Petit」は「プチ」と読まれ、「小さな、かわいい」の意を表す文字[形容詞]として我が国においても広く親しまれ使用されており(甲第3号証の1及び2)、該文字につづく「Bistro」は、「ビストロ」と読まれ、「気軽に利用できる小レストラン、居酒屋」等の意を有する文字[名詞]として広く使用されている文字である(甲第4号証)。
本件商標は、上記の両構成文字より全体として、「気軽に利用できる小さなレストラン・居酒屋」のごとき一連の語意を看取させるところがあるとしても、両文字の構成は、「Petit」と「Bistro」の両文字間に、一字程度の間隔があるため、外観上の一体性を有するものではなく、その観念上も、我が国において、一連の熟語若しくは、熟語的意味合いをもって、親しまれているという格別の事情を見いだせないこと、ならびに、「Petit」の文字が「小さな、こぶりの、かわいい」という一般的商品の形状を表すものであるばかりか、商品「ワイン」については、通常サイズ(750ml)のボトルに対して、187ml入りボトルのものを「Petit Bottle」「プチボトル」と呼んで取引されている事実(甲第12号証の3)がある。
したがって、本件商標の上記構成文字中の「Petit」の文字は、ワインその他の飲料製品について使用しても、該商品が小容量のものであることを端的に、理解させ、認識させる文字であって、指定商品との関係においてみれば、「小容量のもの、小型のもの」という商品の品質又は形状を表示する文字として理解される場合が少なくないものとみられるので、該文字は、これをその指定商品「果実酒」に使用しても、自他商品の出所識別機能がないか、その機能の極めて乏しいものというべきものであるから、簡易迅速を旨とする商取引における該商品の取引者(酒類販売店)及び需要者(一般消費者)は、本件商標の後半部を構成する「Bistro」の文字に着目し、これより生ずる「ビストロ」の称呼及び「気軽なレストラン」等の簡略した観念をもって把握し、取引に資されるものとみることが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、前記語意を有する「BISTRO」の欧文字を書してなり、その指定商品を第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」として平成9年10月3日に設定登録され、平成19年10月9日更新登録されて現に有効に存続している商標であり、本件商標と同様に、商品「ワイン」を合む「果実酒」を指定商品とする点において、その商品も同一若しくは類似するものである(甲第2号証)。
加えて、請求人は、日本の代表的ワインメーカーとして著名であり、その指定商品中の「ワイン」についてみるならば、「メルシャン」の文字を同社の代表的出所識別標識(ハウスマーク)として使用するとともに、「Bistro」の文字を商品の個別的出所識別標識(ペットネーム)として、「毎日の食卓を彩る手頃な価格のワイン」について継続的に使用してきたものである(甲第5号証の1ないし3、同第6号証の1、2)。
さらに、引用商標は、後述のとおり、永年の間の使用の結果、商品「ワイン」について需要者並びに取引者の間において広く認識されている商標(周知商標)に該当するものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、上記の如く「Petit Bistro」よりなる構成であるが、該「Petit」の欧文字は自他商品の出所識別機能を有しない若しくは機能が極めて乏しいものであることは前述のとおりであるから、本件商標は「Bistro」の文字に着目されて「ビストロ」の称呼を生じるのに対して、引用商標は、「BISTRO」の文字より普通に「ビストロ」の称呼が生じ、両商標は「ビストロ」の称呼において共通にし、指定商品においても「果実酒」を同一にするところであって、同一又は類似の商標であるとするのが相当である。
(4)小括
以上の理由及び取引の事情に鑑みれば、本件商標と引用商標とは、商品の出所についての混同を生ずるおそれのある類似の商標であり、かつ、その指定商品に「果実酒」を含む点において、商品においても相類似するものである。
そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 請求人は、1995年10月に新低価格国産ワインの位置づけをもって「Bistro」を発売した(甲第7号証、甲第10号証の1)。
イ 実際の商標の使用態様
商標の使用態様を請求人会社において作成した「ニュースリリース」(甲第10号証の1ないし58)に添付の「流通向け(販売店向け)配布の宣伝パンフレット」(甲第10号証の2)においてみると、「ワインがビール並の価格で飲めるようになりました」というキャッチコピーのもとに、ワインのラベルには、上から、「MERCIAN」「Bistro」の欧文字及び「ビストロ」の片仮名が上下三段に書され、その下部にフランス語による三行の欧文字と西欧家屋の図形が配され、最下部に「Mercian」のロゴと「メルシヤン株式会社製造」「果実酒」の各文字が書されており、該ラベルの構成中の「MERCIAN」「Bistro」の欧文字及び「ビストロ」の片仮名は、その図形部分を除き、その後も基本的構成として採択され使用されている(甲第6号証の1、2、甲第7号証、甲第10号証の5、8、10、11、13、18、21、24、25、27、28、30、32、35、37、38、39、42、46、49、51、53、55、56)。
ウ 国産ワイン(果実酒)の売上シェア
メルシャンブランド商品中の「ビストロ」商品は、2008年4?9月においてベスト20位中の上位(4、12、20位)にランクインした(平成21年1月15日発行の雑誌「Chain Store Age」甲第8号証の1ないし同10)。
「ビストロ」は、「国産デイリーワインとして安くておいしいワインを求めるユーザーからの人気が高い」とされ、また、2009年4月?2010年3月において、「ビストロボックス赤1.8L」は、No.1商品となり、他の「ビストロ」商品も上位(3、13、20位)を占めるに至った(雑誌「Chain Store Age」甲第8号証の7、8)。
エ 「帝飲食料新聞」掲載のワイン各社のブランド別年間販売実績
2000年?2008年実績「ビストロ」は、約、70?90万箱であった(甲第9号証の1ないし同9)が、2009年実績では、96万箱に上昇している(甲第9号証の10)。
(2)以上述べたとおり、上記商品の取引の実情に鑑みれば、請求人の使用に係る引用商標は、周知の域に達する商標として認定されるべきものである。なお、引用する周知商標の使用を確認する参考のため、「請求人会社の2010年度のワインカタログ」を検甲第1号証として提出する。
該周知商標に対して、本件商標は、該周知商標とその要部「Bistro」を同一にするため、本件商標に接する商品「ワイン」の取引者・需要者は、その要部を形成する「Bistro」の文字に着目し、これより生ずる「ビストロ」の称呼、「気軽なレストラン」程度の観念をもって、その指定商品(商品ワインを含む果実酒)の取引に資されるものとみることが相当である。
本件商標は、前記のとおり、請求人が所有する引用商標と互いに類似するとともに、引用商標が商品「ワイン」の周知商標であるという、前記した取引の事情をも考慮するならば、本件商標を、その指定商品中の「ワイン」に使用する場合には、その取引者・需要者間に、請求人の業務に係る商品であると誤認し、該商品の出所について混同するおそれがあるばかりか、本件商標の構成中に「Bistro」の文字を有するため、該文字を請求人の商標として、盛大に使用してきた、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係(系列関係)がある者の業務に係る商品であると誤認し、ひいては、商品「ワイン」の需要者において商品の出所について混同を生じさせるおそれが多大にあるというべきものである。
そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)「Petit Bistro」の文字からなる本件商標は、「プチビストロ」と一連に称呼され、全体として一つの識別標識として認識される。
本件商標の文字の字体とサイズも同じで、外観的にも一体であり、一字程度の間隔があるとしても、この程度で外観的一体性は損なわれない。
本件商標の意味自体も、かわいい「プチビストロ」で一体であり、例えば、プチバトー、プチベリー、プチジャム、プチモールなどは、かわいい意味合いを含んで使われている。
(2)たとえ187ml容器をプチボトルということがあるにしても、ミニボトル、ベビーボトル、小瓶、ピッコロサイズ、クォーターサイズ、ミニ瓶、ミニチュアビン、飲みきりサイズ、小ボトルなどいろいろな呼び方が存在する。
甲第12号証の2にも、プチサイズボトル、ミニボトルと併記されている。
しかし、業務取引上は、間違いを避けるため、必ず187mlと表示あるいは呼称する(乙第5号証の1ないし同26、甲第12号証の1及び同2)。
(3)プチボトルという場合、プチは、容器のサイズについていっている。しかし、商標の前にプチをつけて、その商標のミニサイズを表す例は、見当たらない。プチのつくものの対象が違う。
(4)以上のとおり、本件商標は、一連で「プチビストロ」と読まれ、迅速さを要求される電話などの取引において、発音上商品名の後ろが省略されることはあっても、「プチビストロ」の前の方が省略されることはない。
そうすると、実際の取引において、「プチビストロ」をわざわざ分離し、その上で観念を考慮し、取引するというものではなく、「プチビストロ」は、「プチビストロ」として取引される。
したがって、本件商標は引用商標とは類似ではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)「ビストロ」の周知性について
ア 「BISTRO」は、請求人の商標として需要者、取引者に広く認識されてはいない。なぜなら、「ビストロ」は、レストラン、カフェ、ブラッセリーと同じく、最もワイン(果実酒)と関係する名詞であり、識別力が希釈されている。
請求人は、引用商標に係る商願昭63-133235号の拒絶査定に対する審判請求書(平成7年11月22日)で、BISTROが小さな酒場やナイトクラブを意味し、出所表示機能を有しないとして拒絶されるのであればともかく、ビストロビゼンと類似するという理由は納得が行かないと述べ、その点で識別力の弱さを自ら認識しているといえる(乙第1号証)。
イ ビストロといえば、カフェ、居酒屋を思い起こさせるが、引用商標を想起させるものではない。インターネットで「ワイン ビストロ」あるいは「ビストロワイン」を検索すると、ワイン ビストロを名乗るレストランが多数あれども、そこで本件の引用商標のワインを扱っているわけではない。よって、広く認識されているとはいえない(乙第6号証の1ないし13)。
また、出所混同もしない。メルシャンのプチビストロが周知というわけではない。
(2)Petit Bistroの周知性
ア 2005年に発売以来、いろいろなところで高く評価されつづけた結果、フランスはもとより、アメリカ、カナダ、韓国、中国で有名になり、普及した。インターネットで検索すると、Petit BISTROが既に広く知られていることがわかる(乙第7号証の8ないし同20)。
イ 世界のブランド「プチビストロ」は、日本で、2010年7月から、フジテレビBS放送で放映され、有名になり知られてきている。(乙第7号証の50及び同51)
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について
本件審判の請求につき利害関係を有するか否かについては、当事者間に争いがなく、また、請求人は、本件商標の構成中の「Bistro」と同一綴り字よりなる引用商標「BISTRO」の登録商標を所有しているものであるから、請求人は本件審判について請求人適格を有する者というべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「Petit Bistro」の欧文字を横書きに表してなるところ、該文字は、その構成中の「P」「B」の各文字を大文字で表し、かつ、「B」の文字の前に一字程度間隔を有することにより、視覚上、容易に「Petit」及び「 Bistro」の語とに分離して認識、把握されるものである。
そして、「Petit」の語は、「プチ【Petit/フランス】『小さい』『かわいい』『ちょっとした』」などの意を有し(広辞苑第六版 株式会社岩波書店発行)、また、「プチ[Petit]俗に、『小さい、少しだけ』の意で複合語をつくる。『プチ家出、プチゴージャス(一点豪華の)』」との記載(コンサイスカタカナ語辞典第4版 株式会社三省堂発行)もあり、我が国において親しまれた語であるとともに、多くの商品サービス分野において、既成の商品やサービスに比して小振りな商品や小規模のサービスなどを指称する語として、例えば、「プチトマト」「プチケーキ」「プチ整形」「プチホテル」などと使用されていることは顕著な事実である。
ワイン市場においても、多種多様のボトルサイズのワインが製造販売されていることが認められ(甲第8号証の1ないし同8)、その中で、容量(ボトルサイズ)が小さいことを表すワインに、「プチボトル」「187mlのプチボトル!」「Petit Bottle」などの表記が認められる(甲第12号証の1ないし同7)。このことは、以下の情報からもうかがい知れるところである。
ア「プチワインシリーズ」の見出しの下、「プチ山葡萄」「プチメルロー」「プチシャルドネ」の記載(http://www.mashinowine.com/p_wine_03petit.htm)。
イ「プチボトル☆」の見出しの下、「さすがに平日にフルボトルは体にこたえるんで、187ミリのプチワイン飲んでふ!フランス ラングドックルーションの・・・」の記載(http://blog.kaishuhan.jp/?eid=154003)。
ウ「新発売『プチワイン(白&赤)』」の見出しの下、「今日から、新商品の『プチワイン』を販売しました。ぶどうの風味豊かな甘口の白と、軽やかな辛口の赤の2種類。プチなので、180mlの小さいめんごい瓶に詰めてます。」の記載(http://yamagatan.com/?p=log&l=176067&c=141)。
エ「■プチギフト」の見出しの下、「送賓の際のプチギフトはワインのプチボトルにしました。『天使のアスティ』の赤と白を楽天のワインショップで購入。」の記載(http://www17.plala.or.jp/roseclaire/mariage/mariage_j_10.html)。
オ「神戸バル・ウィーク」の見出しの下、「イートイン・スペースでいただけるスペシャリテは、『おすすめデリ2品+プチボトルセット』1,575円。プチボトルは、赤、白、スパークリングワインから選べます。」の記載(http://kobe-barweek.jugem.jp/?eid=65)。
カ「Petit プチサイズ特集」の見出しの下、「そこにあるだけで、何かかわいい!! ピッコロワインとミニトート」の記載(http://www.eswine.jp/product/seibun/sei_691562.html)。
以上を総合すると、「Petit」「プチ」の語の我が国における一般認識度と多種多様な商品サービス展開など該語の使用頻度からみれば、「Petit」の文字をその指定商品である「果実酒」に使用したときは、一般需要者又は取引者をして、その商品の容量が少ないか、又は小型の容器に入った商品であると容易に認識、理解されるものである。
そうとすると、本件商標構成中の「Petit」の文字部分は、自他商品の識別標識としての機能がないといわざるを得ない。
他方、本件商標構成中の「Bistro」の語は、「ビストロ【bistro(t) フランス】(居酒屋の意)小さな、肩が凝らないフランス料理店。フランス風居酒屋。」などの意を有する(広辞苑第六版 株式会社岩波書店発行)ものであり、該文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし得る部分といえ、該文字より「ビストロ」の称呼、「フランス風居酒屋」の観念も生じるというべきである。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「BISTRO」の文字よりなるものであるから、これより、「ビストロ」の称呼、「フランス風居酒屋」の観念を生じるものである。
(3)引用商標に関する取引の実情
ア 「Bistroの歴史」の見出しの社内作成資料によれば、「1995年10月」「新低価格『ビストロ』として発売」との記載とともに、それ以降、毎年のように「ビストロ」の姉妹品が発売されていることが認められる(甲第7号証)。
イ 雑誌「チェーンストアエイジ」(2009.1.15(株)ダイヤモンドフリードマン社発行)には、中央左側部分の「直近の販売トレンド」の見出しの下に「メルシャンの商品では『ボン・ルージュ』『ビストロ』などの主力ブランドも上位ランクインしてきており、全般的に好調。」、その下の「カテゴリー内売上シェアトップ20 2008年4?9月」の見出しの下の表の「順位 商品名」「メーカー名」「売上シェア(%)」の各欄の4番目に「ビストロボックス 赤 1.8L」「メルシャン」「1.05」、12番目に「ビストロ 赤 720ml」「メルシャン」「0.78」、20番目に「ビストロ 白 720ml」「メルシャン」「0.59」と掲載されている(甲第8号証の1及び同2)。
また、2010.6.15発行の同誌には、「とくに『ビストロ』は、・・・ユーザーからの人気が高い。」と掲載され(甲第8号証の7)、115ページには、「順調に伸びる家庭用ワインカテゴリーNo.1ブランドは、メルシャン『ビストロ』が獲得」の見出しの下、「とくに『ビストロ』は昨年から大きくシェアを伸ばし、ワインカテゴリーNo.1ブランドになった。」、その下の「カテゴリー内売上シェアトップ20 2009年4月?2010年3月」の見出しの下の表の「順位 商品名」「メーカー名」「売上シェア(%)」の各欄の1番目に「ビストロボックス 赤 1.8L」「メルシャン」「1.35」、3番目に「ビストロ 赤 720ml」「メルシャン」「1.16」、13番目に「ビストロ 白 720ml」「メルシャン」「0.74」、20番目に「ビストロボックス 白 1.8L」「メルシャン」「0.56」と掲載されている(甲第8号証の6ないし同8)。
ウ 「帝飲食糧新聞」(2001年?2010年)によるワイン各社のブランド別販売実績によれば、「ビストロ」は、2000年から2009年の間で77万箱ないし96万箱に達していたものである(甲第9号証の1ないし同10)。
エ 「テレビや新聞、雑誌でもキャンペーンを強力にアピールします。」の見出しの下、「テレビCM放映!」の記載の下に、テレビとおぼしき画面の中に「メルシャン Bistro ビストロ」と「Bistro」のラベルを付したワイン」の紹介(甲第10号証の40及び同47)及び「TVCFでも強力にバックアップします。」の見出しの下、「TV-CF放映中!」の記載の下に、「メルシャン Bistro ビストロ」と「Bistro」のラベルを付したワイン」の紹介(甲第10号証の50)。
オ 請求人の製造販売に係るワイン「ビストロ」においても、需要者のニーズに合わせ、通常サイズのボトル720mlを中心に、大きい方から順に、1.8リットル、1.5リットル、1リットル、600ml、500ml、300mlのサイズのボトルが販売されていることが認められる(甲第10号証の1ないし同58)。
カ 前記した業界誌・新聞などの掲載状況や2000年から10年間にわたる販売実績などからみると、請求人の製造販売に係るワイン「ビストロ」は、750mlの容量ボトルをベースとして、大小異なる容量サイズのワインに、「Bistro」若しくは「ビストロ」の文字を付して販売を行うとともに、併せて、雑誌やテレビCMなどを用いて宣伝した結果、業界誌などの売り上げシェアも常に上位に位置するなどからすれば、請求人の製造販売に係るワイン「ビストロ」は、同人の主力商品であるばかりでなく、少なくともその取引者などにおいて、同人に係る商品であると広く認識されるに至っているとみるのが相当である。
(4)本件商標と引用商標との類否
以上を総合して判断すると、本件商標は、前記したとおり、その構成中の「Bistro」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認められるものであるところ、該「Bistro」の文字部分は、請求人が製造販売するワイン「Bistro」の文字とそのつづり字を同じくするばかりか、該「Bistro」若しくは該文字の表音を表した「ビストロ」の片仮名を付したワインは、容量サイズの異なる多くのワインに長年使用し、併せて、テレビCMなどの広告も利用した結果、常に売り上げシェアの上位に位置するなどからすれば、本願商標の出願時及び登録査定時において、その取引者間においては少なくとも周知性を有するものとなっていたものである。
そして、同人がワインに使用する「Bistro」若しくは「ビストロ」の商標は、「BISTRO」の文字からなる引用商標と類似の商標といえるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、「ビストロ」の称呼及び「居酒屋」の観念を同じくし、外観においても本件商標構成中の「Bistro」の文字部分と引用商標「BISTRO」とは、同じつづり字であって、単に小文字と大文字という差異を有するにすぎず、近似した印象を与えるものであるから、両者は、誤認・混同するおそれのある類似の商標というべきであり、その指定商品も同一又は類似するものである。
(5)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
3 被請求人の主張について
被請求人は、本件商標は、「プチ」と「ビストロ」とをわざわざ分離して取引されるものでなく、「プチビストロ」と一体で取引されるものである旨述べ、審決例、登録例を挙げ、さらに「プチビストロ」がフランスをはじめ各国及び我が国においても広く知られて旨主張して乙第7号証(枝番を含む。)を提出している。
しかしながら、本件商標は、前記したとおり、その構成中の「Petit」の文字が、商品の品質を表示したもの認識、理解されるものであって、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、本件商標が常に一体不可分で取引に資するものとはいえない。また、提示された審決例、登録例は、本件商標と引用商標との場合とは、いずれも全体の構成、態様や判断時点など事案を異にするものである。さらに、上記乙第7号証(枝番を含む。)は、我が国を含め、諸外国での本件商標の使用例、評価、商標登録などを紹介するにとどまるものであり、また、使用の状況についても個々の証左に係る使用時期や使用の範囲、生産量や販売状況などが不明であり、該証左をもって著名性を認めるに十分とはいえないものであるから、我が国における「Petit Bistro」の著名性は認められない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、請求人が主張するその余の無効理由について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-06-20 
結審通知日 2011-06-23 
審決日 2011-08-31 
出願番号 商願2009-44386(T2009-44386) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (X33)
T 1 11・ 271- Z (X33)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石塚 文子 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 末武 久佳
田中 亨子
登録日 2010-05-14 
登録番号 商標登録第5321528号(T5321528) 
商標の称呼 プチビストロ、ビストロ 
代理人 ロメイン マルタン 
代理人 細井 貞行 
代理人 堀内 香菜子 
代理人 小橋 立昌 

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