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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1249780 
審判番号 無効2011-890020 
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-03-14 
確定日 2011-12-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5047289号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5047289号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第5047289号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成18年7月21日に登録出願され、第9類「眼鏡、眼鏡の部品及び付属品」を指定商品として、同19年3月15日に登録査定、同年5月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
なお、これらを一括していうときには、以下「引用商標」という。
(1)登録第1976751号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(B)のとおりの構成からなり、昭和59年9月28日に登録出願され、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、昭和62年8月19日に設定登録されたものであり、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成21年1月21日に指定商品を第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第2423835号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(C)のとおりの構成からなり、平成元年9月20日に登録出願され、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、同4年6月30日に設定登録されたものであり、その後、同14年5月7日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同16年8月4日に指定商品を第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)登録第5383631号商標(以下「引用商標3」という。)は、「BARBIE」の文字を標準文字で表してなり、平成22年4月21日に登録出願され、第9類「サングラス,家庭用ビデオゲーム機,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,コンピュータゲームプログラム」及び第14類「宝飾品,身飾品,時計」並びに第18類、第24類、第25類、第28類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年1月14日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第32号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して商標登録がされたものであるから、その登録は、同法第46条に基づき無効とされるべきものである。
ア 無効理由1(商標法第4条第1項第11号)について
(ア)結合商標類否判断基準
本件商標は、上段に欧文字の「Barbieeyes」を、また、下段に片仮名の「バービーアイズ」を横書きしたものである(甲第1号証)。
ところで、商標の類否を判断するにあったっては、「Barbie(バービー)」と「eyes(アイズ)」、すなわち、本件商標のように二以上の語を組み合わせてなる結合商標は、その結合の強弱の程度を考慮しなければならないことは、商標法第4条第1項第11号の運用に関する審査基準(甲第6号証)において明確に記載されている。
その理由とするところは、結合商標は取引の経験則上、独立して自他商品の識別力を有する構成の一部(いわゆる要部)をもって取引に供される場合も少なくないことが明らかであるからである。そして、商標が出所表示機能であることからすれば、他人の周知・著名な登録商標を含む場合には商標の構成に重視するのは妥当ではなく、商標の構成上の一体性が認められる場合であっても、その他人の登録商標と類似するものと判断されるべきである(甲第6号証)。
(イ)引用商標の著名性について
この観点から、本件商標を検討すると、本件商標の構成中、「Barbie」又は「バービー」は、2009年純売上高54億ドルを超える世界最大規模の玩具メーカーである請求人(バービー社)自らの代表的なブランドである(甲第7号証)。
「Barbie(バービー)」は、1959年ニューヨークのトイフェアで発表されて以来、10代のファッションモデルという位置付けで、ファッション性はきわめて高く、時代を敏感に反映してきた。「Barbie(バービー)」は、現在、150を超える国と地域で発売されており、発売から50年以上経た今日でも、世界中で毎秒3体のペースで販売されており、これまでに10億体以上が販売されてきた(甲第8号証)。
我が国においても、「Barbie(バービー)」がファッションドールを表示するものとして、世界的に極めて高い信用を形成されていると認識されていることは、辞書(甲第9号証及び甲第10号証)・用語辞典(甲第11号証)・新聞記事(甲第12号証及び甲第13号証)・ウェブサイトのブログ(甲第14号証)の記載をみれば、明らかである。
(ウ)玩具ブランドからファッションブランドに進化
「Barbie(バービー)」は、1996年にクリスチャン・ディオール、1999年にアルマーニ、また、2004年にヴェルサーチなど、著名デザイナーと共同制作されるなど(甲第15号証)、女児玩具の域を超えて、キャラクター自体が大人にも通用するブランド(甲第16号証)として進化してきた。すなわち、「Barbie(バービー)」は、単なるドールという存在を超えて、憧れのファッションブランド、ライフスタイルブランドとして発展して今日に至っているといえる(甲第17号証)。
日本でも、株式会社サンエー・インターナショナルにより、10?20代女性をターゲットにしたアパレルブランド「Barbie」が2003年に展開されるや、「Barbie(バービー)」という存在は女児用玩具としてだけでなく、大人にも通用するキャラクターブランドとして定着した。株式会社サンエー・インターナショナルの第55期(平成15年9月1日?同16年8月31日)の有価証券報告書(甲第18号証)の有価証券報告書抜粋(写)によれば、本件商標の登録出願時以前より、「バービー」ブランドが好調に展開されていた事実が示されている。そして、現在27店舗を全国に構えるショップでは、衣服・雑貨・化粧品など様々な商品に、スウィートで愛らしい世界観を打ち出している(甲第19号証)。
また、2003年にはファッション雑誌「an・an」の人気モデルSHIHOに(甲第20号証ないし甲第22号証)、また、2004年にはモデルで女優の山田優にバービー賞を贈るなど(甲第23号証及び甲第24号証)、当時絶大な人気を誇っていたファッション雑誌「an・an」及び「CanCan」風のスタイルを好む若い女性をターゲットにした広告宣伝が盛大に行われている。
このとき、バービー賞受賞した彼女らが、「自分がバービー人形になって魔法をかけられたみたい。・・・」(甲第20号証及び甲第21号証)、「子供のころからバービーちゃんみたいになりたかった。まさか選ばれるなんて」(甲第23号証)、「女の子のあこがれの賞をいただけてうれしいです。・・・」(甲第24号証)とコメントしていることからも、遅くとも本件商標の出願日(2006年7月21日)には、「Barbie(バービー)=お人形」というイメージが薄れ、「Barbie(バービー)=ファッションアイコン」というイメージとして、「Barbie(バービー)」に高い信用が形成されていたことは疑う余地のない事実である。
(エ)本件商標が使用されている商品
一方、本件商標の使用されている商品は、視力補正を目的としない、おしゃれ用カラーコンタクトレンズである(甲第25号証)。この商品を扱う通販サイト「モテビューテイー」のスタッフコメントには「付けるだけで、バービーちゃんのような大きく、きれいな目に早変わりです!!」(甲第26号証)とあり、通販情報サイト「てぃーだ」の商品説明には「女の子憧れのバービー人形になりたいコスメをご紹介。キラキラ輝く貴女の為のメイクアップレンズ☆バービーアイズ〔Barbieeyes〕☆」(甲第27号証)とあることから、本件商標に接するであろう需要者は、幼少の頃に憧れたバービー人形になりたいと願う若い女性であることは明らかである。
(オ)本件商標の要部
そして、本件商標の構成要素中「eyes」又は「アイズ」部分は、指定商品「眼鏡、眼鏡の部品及び付属品」に密接に関連する「目」又は「眼」を意味する一般的な文字であって、取引者、需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものではない。そのため、本件商標の需要者に対し、本件商標の構成要素中「Barbie」又は「バービー」の部分が、商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えると考えるのが自然である。
そうとすれば、本件商標からは、「Barbieeyes(バービーアイズ)」のみならず、「Barbie(バービー)」の称呼、観念が生ずるものと考えるべきである。
(カ)本件商標と引用商標の類否
引用商標は、欧文字「Barbie」及び/又は片仮名「バービー」に対応して、「バービー」との称呼、また、これより請求人自らのファッションドールブランド「Barbie(バービー)」、また、ファッションアイコン「Barbie(バービー)」としての観念が生じるのは明らかである。
そこで、引用商標と本件商標の要部を比較すると、その称呼は「バービー」であって同一であり、引用商標と本件商標の要部の外観は、字体は異なるもののいずれも欧文字「Barbie」又は片仮名「バービー」であって類似している。また、引用商標と本件商標の要部の観念も共通していることから、本件商標は、引用商標と類似している。
(キ)指定商品の類否
一方、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品の一部と同一又は類似であることは明らかである。
(ク)結論
したがって、本件商標は、出願の日前の商標登録出願に係る引用商標と類似する商標であって、引用商標に係る指定商品に同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 無効理由2(商標法第4条第1項第15号)について
(ア)引用商標の著名性
仮に、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとは認められないとしても、上述のとおり、引用商標は、ファッションドールブランドとしてだけでなく、ファッションアイコンとして需要者の間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至っていたことは明らかである(甲第7号証ないし甲第24号証)。
(イ)出所混同の判断基準
ところで、商標法第4条第1項第15号において「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」とは、その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいうことは、商標法第4条第1項第15号の運用に関する審査基準(甲第29号証)において、出所の混同には、いわゆる広義の混同をも含んでいることが明確に記載されている。
その理由とするところは、周知表示又は著名表示へのただ乗り及び当該表示の希釈化を防止し、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためであると思料する。
(ウ)商品の関連性
本件商標の使用されている商品は、おしゃれ用カラーコンタクトレンズであり、これに接するであろう需要者は、幼少の頃に憧れたバービー人形になりたいと願う若い女性である(甲第25号証ないし甲第27号証)。そして、本件商標の構成中「Barbie」又は「バービー」が、ファッションアイコンとして広く知られているのに対し、「eyes」又は「アイズ」は、指定商品に密接に関連する「目」又は「眼」を意味する一般的な文字である。そうとすれば、本件商標の需要者は、本件商標と引用商標との構成上の相違にもかかわらず、本件商標より「Barbie」又は「バービー」の部分に着目し、当該カラーコンタクト製品が請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について誤認混同するおそれがある。
(エ)結論
したがって、被請求人のコンタクト製品が請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について誤認混同するおそれがあるものといわざるを得ない。
また、請求人は、「Barbie(バービー)」ブランドを、アパレル、かばん、化粧品等、幅広いアイテムを展開する(甲第19号証)一方、日本以外にも、米国・カナダ・メキシコ・アルゼンチン・ブラジル・オーストリア・ベネルクス・クロアチア・チェコ・デンマーク・フィンランド・ドイツ・ハンガリー・アイルランド・イタリア・リトアニア・ノルウェー・ポーランド・ロシア・スロバキア・スロベニア・スペイン・スウェーデン・スイス・トルコ・英国・オーストリア・中国・ニュージーランド・韓国において、373の商標出願・登録をすることにより、商標「Barbie(バービー)」に化体に信用の保護を図っている(甲第31号証)。
本件商標は、請求人の周知・著名商標「Barbie(バービー)」へのただ乗り及び当該表示の希釈化を図るものであり、請求人の企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、ブランドの成立等、請求人の正当な利益を害するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項15号に該当する。
ウ 無効理由3(商標法第4条第1項第19号)について
(ア)引用商標の著名性
仮に、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び第15号に該当するとは認められないとしても、上述のとおり、「Barbie(バービー)」は、ファッションドールを表示するものとして、世界的に極めて高い信用を形成されている認識されていることは明らかである(甲第7号証ないし甲第24号証)。
(イ)被請求人の不正の目的
そして、商標法第4条第1項第19号は、もともと高額な費用を投じ宣伝活動等により獲得した著名商標にただ乗りしたり、価値を希釈化するのを防止することを目的とする規定である。そこでは、たとえば、平成14年(行ケ)第97号における裁判所の判断にみられるように、15号が出所の誤認混同のおそれを要件として規定しているのとは異なり、当該商標が周知となっている商品と本件商標の指定商品との関係は、不正の目的の有無を判断するための一要素となるにすぎないと思料する(平成14年(行ケ)第97号)(甲第32号証)。
(ウ)「Barbie」又は「バービー」の独創性
「Barbie」又は「バービー」は、特定の意味を有する語として知られているものではなく、一種の造語として理解されるものである。そうとすれば、日常的に使用されているような成語に比べて、その独創性は高いものであり、出願商標の採択の範囲は広いに関わらず、偶然に、他人の周知・著名商標を結合した商標を採択したとは考えられない。
(エ)結論
したがって、本件商標は、請求人の周知・著名商標の出所表示機能を希釈化し、また、その名声を毀損させることを目的とした不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証を提出した。
(1)本件商標及び引用商標について
本件商標については、「Barbieeyes」の英文字と「バービーアイズ」の片仮名の組み合わせからなる(甲第1号証及び甲第2号証)。
なお、引用商標は、「Babie」の英文字と「バービー」の片仮名とのいずれか、又は両方の組み合わせからなる(甲第3号証ないし甲第5号証)。
(2)本件審判請求理由についての検討
ア 無効理由1(商標法第4条第1項第11号)について
(ア)「結合商標類似性判断基準」
「商標法第4条第1項第11号の運用に関する審査基準(第4条第1項第11号5)」の引用がなされているが(甲第6号証)、当該審査基準は、本文但し書きにあるように、「ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなときは、この限りでない。」とされている。
本件商標は、異議2007-900364の判断理由にもあるように、その構成各文字より生ずると認められる「バービーアイズ」の称呼も格別冗長とはいえないものであって、無理なく自然に称呼し得るものであるから、たとえ構成中の「eyes」及び「アイズ」の文字が「目」又は「眼」を意味するものであるとしても、「バービーアイズ」のみの称呼を生ずる一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である(乙第1号証)。
また、請求本文における主張は「バービー」一語の支配性をことさらに強調しているものであり、「バービー」という造語自体、人名に使用されているのみならず、「バービー」を含む造語が多数存在していることを見過ごしている(乙第2号証ないし乙第4号証)。
なお、当該主張を採用するのであれば、「バービー」以外の部分について、「取引者、需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものでない」ことを理由に、「バービー」を含む登録第4523221号商標及び同第4548522号商標「バービーキュー」においても、類似性が認められてしまう等、妥当性を欠く(乙第5号証及び乙第6号証)。
したがって、本件商標は、引用商標である「Barbie」又は「バービー」とはそもそも比較することができず、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずるといい得る。そのため、そもそも請求人のいう上記の判断基準は適用する事項に該当しない。
(イ)「引用商標の著名性について」、「玩具ブランドからファッションブランドに進化」
提出された書証(甲第7号証ないし甲第24号証)については、当該指定商品(第9類・眼鏡、眼鏡の部品及び付属品)についての著名性の立証が具体的になされていない。特に、甲第10号証及び甲第11号証においては、「バービー」がバービー人形を具体的に示していることを立証しているのみであり、当該指定商品における本件請求の理由たり得る著名性の具体的立証を欠くものといわざるを得ない。
また、玩具ブランドからファッションブランドに進化した旨の主張も甲第12号証から甲第24号証にわたりなされているが、当該事項の立証も、バービー人形を軸としたファッショングッズについての著名性については行われているが、やはり当該指定商品における著名性の具体的立証に足るものではない。
(ウ)「本件商標が使用されている商品」
本件商標が使用されている商品について「本件商標に接するであろう需要者は幼少のころに憧れたバービー人形になりたいと願う若い女性であることは明らかである」旨の主張がなされているが、主張態様に表現されているように、あくまで推論の域を出るものではなく、本件商標が使用されている商品がおしゃれ用カラーコンタクトレンズであることや、甲第26号証や、甲第27号証における、販売を斡旋する者が「ことさらに」付加した商品説明をもって当該事項を当然、一般的に類推することには論理の飛躍があるといわざるを得ず、当該主張事由が立証されているとはいい難い。
(エ)「本件商標の要部」、「本件商標と引用商標の類否」
結合商標類似性判断基準」において既に検証したように、アイズに「目」の意味があるとしても、Barbieeyes(バービーアイズ)自体が一語で構成されている造語であることを当然に否定することとはならず、本件商標の要部の検討において造語を分解して検討を行う当然の理由とはならない。そのため、検証における手段について妥当性を欠いているといわざるを得ない。
以上の事由に基づき、本件商標と引用商標は類似していないといい得る。
イ 無効理由2(商標法第4条第1項第15号)について
予備的主張として商標法第4条第1項第15について主張されているが、そもそも本件商標と引用商標の類似性がないため、当該主張には理由がない。
なお、以下主張事由(「引用商標の著名性」、「出所混同の判断基準」、「商品の関連性」)について予備的に検証を行う。
既に検証を行ったように、引用商標の著名性について当該指定商品(第9類・眼鏡、眼鏡の部品及び付属品)における具体的立証がなされていない。
そして、「出所の混同は、いわゆる広義の混同をも含んでいる」としても、「本件商標に接するであろう需要者は幼少のころに憧れたバービー人形になりたいと願う若い女性であることは明らかである」旨の主張は、具体的立証を伴っておらず、当該事項を当然、一般的に類推することには論理の飛躍があるといわざるを得ない。
ウ 無効理由3(商標法第4条第1項第19号)について
さらに、予備的主張として商標法第4条第1項第19号についても主張がなされているが、そもそも本件商標と引用商標と類似性がないため、当該主張には理由がない。
なお、以下主張事由について予備的に検証を行う。
(ア)「引用商標の著名性」
引用商標の著名性について当該指定商品(第9類・眼鏡、眼鏡の部品及び付属品)における具体的立証がなされていない。
(イ)「被請求人の不正の目的」、「Barbie又はバービーの独創性」、「結論」
「Barbie」又は「バービー」は、特定の意味を有する語として知られているものではなく、一種の造語として理解されるべきものであることを理由に、その独創性の高さについての主張がなされているが、そもそもバービー自体、人名に使用されているのみならず、「バービー」を含む造語は多数存在しており、「その名声を毀損させることを目的とした不正の目的を持って使用するものである」とするのは検証方法・立証過程ともに妥当性を欠くといわざるを得ない(乙第2号証ないし乙第4号証)。
(3)結論
そもそも、類似性の立証がなされた上で検証されるべきであり、無効理由1において、本件商標と引用商標の類似性が認められず、当該主張はなりたち得ないものといわざるを得ない。
よって、類似性を基礎とする、無効理由2、3といった予備的主張においても同様のことがいえ、本件請求はいずれの無効理由においても成立しない。

5 当審の判断
(1)「Barbie」及び「バービー」について
請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
「Barbie」の見出し語で「【商標】バービー人形◆マテル社(Mattel Inc.)の有名な人形。1999年2月に40周年記念。」とあり(甲第9号証:オンライン辞書「英辞郎 on the Web」)、「バービー人形」の見出し語で「[(商)Barbie doll]金髪で青い目をしたプラスチック製の人形.米国Mattel社製.1959年発売.」とあり(甲第10号証:「コンサイスカタカナ語辞典第4版」2010年2月10日株式会社三省堂発行)、「バービー」の見出し語で「(←Barbie Doll)金髪碧眼のプラスチック製人形。」とある(甲第11号証:「現代用語の基礎知識2003」2003年1月1日株式会社自由国民社発行)。
そして、「Barbie(バービー)」は、1959年(昭和34年)に米国で発売されて以来、現在までに世界で10億体以上を販売された請求人に係る人形(ファッションドール)の名称である。我が国においても、「Barbie(バービー)」がファッションドールを表示するものとして、広く認識されているものである(甲第12号証ないし甲第14号証)。また、請求人の玩具ブランドとしての位置は既に確立されており、アパレル製品などの分野にも進出し、玩具の域を超えたブランド化が認められる(甲第17号証ないし甲第19号証)。以上の事実は、本件商標の登録査定時においても認められるものである。
してみれば、「Barbie」又は「バービー」の語は、本来、特定の意味を有する語として知られているものではなく、一種の造語として理解されるものであり、日常的に使用されているような成語に比べて、その独創性は高いものであるといえるところ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「Barbie(バービー)」が請求人に係るファッションドールを表示するものとして、我が国においても、広く認識されているものであって、請求人の玩具ブランドとしての位置を確立していることが認められる。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、別掲(A)のとおり、上段に「Barbieeyes」の文字を筆記体で横書きしてなり、その下段に「バービーアイズ」の文字を活字体で横書きしてなるものである。
ところで、「Barbie」又は「バービー」の語は、上記(1)のとおり、ファッションドールを表示するものとして、我が国において、広く認識されているものである。また、「eye」の語は、「目」の意味を有する英語として一般に広く使用されているものであり、その表音である「アイ」の語も同様の意味を有するものとして一般に慣れ親しまれているものである。
以上の実情を踏まえ本件商標をみるに、本件商標は、「Barbieeyes」及び「バービーアイズ」の文字がそれぞれ一連に表されているとしても、上段は「Barbie」及び「eyes」、下段は「バービー」及び「アイズ」の各文字をそれぞれ結合させてなるものであると容易に理解、認識させるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「eyes」の文字が「eye」の複数形であると容易に理解されるものであり、本件商標の指定商品「眼鏡」等との関係においてみると、それら商品が「目」に関して供される商品であることからすれば、当該文字は、商品の出所識別標識としての機能がないか、極めて弱いといわざるを得ないものである。そして、「アイズ」の文字部分は、「eyes」の表音として無理なく理解されるものであることから、「eyes」の文字と同様に、商品の出所識別標識としての機能がないか、極めて弱いといわざるを得ないものである。
してみれば、上記のとおり、「Barbie(バービー)」の語が請求人の玩具ブランドとしての位置を確立していることからすれば、「eyes」及び「アイズ」の文字部分に商品の出所識別標識としての機能がないか、極めて弱いといえる本件商標にあって、「Barbie」及び「バービー」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ、かかる部分より生じる称呼や観念をもって取引に資される場合があるというのが相当である。
したがって、本件商標は、「バービーアイズ」の一連の称呼が生じるほか、「バービー」の称呼が生じ、また、「バービー(人形)」の観念が生じるものというべきである。
イ 引用商標1及び2
引用商標1は、別掲(B)のとおり、「Barbie」の文字を筆記体で横書きしてなるものであり、これより「バービー」の称呼及び「バービー(人形)」の観念が生じるものである。
また、引用商標2は、別掲(C)のとおり、「BARBIE」及び「バービー」の文字を活字体で表してなるものであり、これより「バービー」の称呼及び「バービー(人形)」の観念が生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標1及び2との類否
本件商標と引用商標1及び2との類否についてみると、外観について、その構成全体の対比においては相違するものであるが、その出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分について、本件商標と引用商標1とは、欧文字部分における文字の綴り、大文字・小文字の使用、筆記体によるものであることが共通しており、本件商標と引用商標2とは、書体の違いはあるものの、文字の綴り等は共通しており、両商標は、近似した印象を与えるといい得るものである。
また、本件商標と引用商標1及び2は、上記ア及びイのとおり、「バービー」の称呼及び「バービー(人形)」の観念を共通にするものである。
しかして、本件商標と引用商標1及び2の外観、称呼及び観念から受ける印象・記憶・連想等を総合勘案すれば、本件商標及び引用商標1及び2を同一又は類似する商品に使用した場合、同じ事業者の製造・販売に係る商品であるかのように、その出所について誤認混同を来すおそれがあるといわざるを得ないものである。
したがって、本件商標は、引用商標1及び2に類似する商標と判断するのが相当である。
エ 指定商品の類否
本件商標の指定商品は、「眼鏡、眼鏡の部品及び付属品」であるのに対し、本件商標の登録査定時における引用商標1の指定商品は、「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」であり、同じく引用商標2の指定商品は、「眼鏡,時計」であるから、登録査定時において、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品であると認められる。
オ 本号該当性
以上によれば、本件商標は、引用商標1及び2に類似する商標であり、かつ、その指定商品と同一又は類似する商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
カ 被請求人の主張及び引用する登録例等について
被請求人は、請求人の主張が「バービー」という造語自体、人名に使用されているのみならず、「バービー」を含む造語が多数存在していることを見過ごしている、また、請求人の主張を採用するならば、「バービーキュー」などの登録例も類似性が認められてしまう等、妥当性を欠く旨主張する。
しかしながら、「Barbie」及び「バービー」の語は、前記(1)のとおり認定、判断するのが相当であり、また、本件商標は、その指定商品が「眼鏡」等であること並びにその構成中に「eyes」及び「アイズ」の文字を含むことにより、上記の認定、判断をしているものであることから、「バービー」という語が人名の一部に使用されていたり、「バービー」を含む造語が仮に多数存在しているとしても、それをもって、本件商標において「Barbie」及び「バービー」の部分が要部たり得ないことにはならないことは明らかである。
また、そもそも、商標の類否は、対比される商標ごとに個別具体的に検討、判断されるべきものであるから、本件商標とは商標の構成及び指定商品等を異にする被請求人が挙げる登録例があるとしても、本件における判断を左右するものではない。
したがって、被請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(A)本件商標


(B)引用商標1


(C)引用商標2



審理終結日 2011-08-30 
結審通知日 2011-09-01 
審決日 2011-10-25 
出願番号 商願2006-72778(T2006-72778) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (Y09)
T 1 11・ 263- Z (Y09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 田中 亨子
酒井 福造
登録日 2007-05-18 
登録番号 商標登録第5047289号(T5047289) 
商標の称呼 バービーアイズ、バービー 
代理人 黒川 朋也 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 工藤 莞司 
代理人 小暮 君平 
代理人 森川 邦子 

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