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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X03
管理番号 1247986 
審判番号 無効2011-890029 
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-22 
確定日 2011-11-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第5392787号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5392787号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5392787号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成21年6月17日に登録出願、第3類「つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」及び第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」を指定商品として、平成23年2月25日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4894059号商標(以下「引用商標」という。)は、「ナーナニーナ」の文字を標準文字で書してなり、平成16年12月22日に登録出願、第3類「つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛」、第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」及び第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」を指定商品として、平成17年9月9日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。)を提出した。(なお、甲号証及び乙号証のいずれにおいても、枝番を有するもののうち、すべての枝番を引用する場合は、枝番の記載を省略する。)
1 請求の利益
請求人は、引用商標の商標権者である。引用商標は、本件商標よりも先登録に係り、かつ、本件商標とその商標及び指定商品が類似しているので、本件商標によって、請求人は、その引用商標の登録範囲において使用が制限されるおそれがあり、また、いわゆる禁止権が侵害されているので、本件審判の請求をする法律上の利害関係を有する。
2 請求の理由
本件商標の登録は、以下の理由により、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
(1)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標について
(ア)称呼
本件商標は、欧文字よりなる「na」、「nani」及び「na」の3つの部分を1文字分程度の間隔をおいて左から右へ横方向に並べ、語頭の「na」と中間の「nani」との間に、ハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した横長図形(以下「本件図形1」という。)を配し、また、中間の「nani」と末尾の「na」との間に、前記と同様にハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した横長図形(以下「本件図形2」という。)を「i」の文字の頂部の点のあたりから右向きに配してなると共に、本件図形2の右下において小さなハートの図形(以下「本件図形3」という。)を左下から右上にかけて斜めに配してなるものである。
したがって、本件図形1?3は、「na」、「nani」及び「na」を各文字部分を区分けしながらもそれぞれの間に配されている本件図形1及び2は、流れるように湾曲した横長に延びる図形であるために、これらをもって長音記号「ー」を図案化したものとの印象を与えるものである。
そうだとすると、本件商標は、その構成が「naーnaniーna」と認識され、「ナーナニーナ」と称呼されるものといわざるを得ない。
本件商標の拒絶査定に対する不服審判における審決(以下「本件不服審判審決」という。)においては、「本件商標は、『na』、『nani』、『na』の各欧文字の間にハート型図形を介在した構成と看取されるのが相当である。」と認定した上で、「『na』、『nani』、『na』の各欧文字に相応して、『ナナニナ』の称呼を生ずる」と認定した。
しかしながら、本件商標の称呼が「ナナニナ」であり、それ以外の称呼が生じないとすることは誤りである。すなわち、本件商標は、「na」、「nani」、「na」の各欧文字の間にハート型図形を介在した構成であるから、「na」、「nani」、「na」の各欧文字は、ハート型図形により区分けされているものと認識され、その結果、ハート型図形の部分で一拍おいて発音されるのが自然である。そうだとすれば、本件商標は、「ナ」、「ナニ」、「ナ」の各音節の間に一拍おくと共に、流れるように湾曲したハート型図形の印象が相俟って、全体の称呼においては、各音節を滑らかに連続させて、すなわち長音を介して「ナーナニーナ」のように一連に称呼されることは明らかであり、ハート型図形の存在を全く無視して「ナナニナ」のように称呼全体を縮めて称呼することの方がむしろ少ないというべきである。
(イ)本件商標の使用
上記のように、本件商標から「ナーナニーナ」の称呼が生ずることは、本件商標に接する取引者及び需要者が本件商標を表示した商品を「ナーナニーナ」の表示をもって指称していることからも明らかである。
すなわち、本件商標は、商標権者により指定商品中の商品「二重まぶた形成用接着剤、二重まぶた形成用ファイバー」(これらを以下「商標権者使用商品」という。)について使用されている事実がある(甲3、甲4)。
商標権者使用商品は、従来よりインターネットを通じて販売されており、平成23年4月12日の時点において、インターネットのYahoo検索エンジンにより「ナーナニーナ」のキーワードにて検索すると約1900件ヒットし(甲5)、インターネットのGoogle検索エンジンにより「ナーナニーナ」のキーワードにて検索すると約400件ヒットした(甲6)。前記の検索結果リストに掲げられている内容は、いずれも商標権者使用商品に関するものである。これらの証拠により、本件商標を表示した商品が「ナーナニーナ」と指称されていることが明らかである。ちなみに、Yahoo検索エンジン及びGoogle検索エンジンにより「ナナニナ」のキーワードにて検索したが、商標権者使用商品に関する情報及び本件商標に関する情報は1件もヒットしない。
以上のことから、本件商標は、客観的な事実として「ナーナニーナ」の称呼が生じることが明らかである。
また、商標権者は、本件商標の登録出願前から本件商標を表示した商品を販売しており、平成21年6月3日に行った「ナーナニーナ」をキーワードとするインターネット検索により、商標権者のホームページがヒットし、当該ホームページに本件商標を表示した商品(甲3、甲4に示す商品)が掲載されている事実がある(甲7)。甲第7号証には、そのヘッダーのタイトルに、明らかに「ナーナニーナ」が表示されており、フッターのURLには「nananina」が表示されている。この証拠により、商標権者は、「ナーナニーナ」の称呼が生ずることを意図した商標として、本件商標を創作し、採択使用していたものといわざるを得ない(なお、甲第7号証は、その当時のヒット件数は膨大なものであったが、現在では、商標権者のホームページが変更され、過去のホームページは消去されている。)。
さらに、商標権者は、本件商標に配されている本件図形1と同一の図形を、長音記号の変わりに配してなる商標を使用している。すなわち、当該商標は、欧文字「samasama」及び「na」の2つの部分を1文字分程度の間隔をおいて、左から右へ横方向に並べ、当該2つの文字部分の間に、本件図形1を配してなるものである(甲8、以下「本件関連商標」という。)。甲第8号証には、本件関連商標と「サマサマーナ」とが併記されており、このことから、本件関連商標を「サマサマーナ」と称呼させる意図があったことに他ならない(甲9)。
したがって、本件商標についても、商標権者には、長音記号の代わりにハート型図形を配することにより、「ナーナニーナ」と称呼させる意図があったことは明らかである。
さらに、商標権者は、「『サマサマーナ製品」の販売終了について」と題する平成20年3月17日付書簡(甲9)を取引先に配布している。該書簡には「弊社ブランド『サマサマーナ』」及び「姉妹ブランド『ナーナニーナ』」の記載があり、ここでいう「サマサマーナ」は、本件関連商標のことであり、「ナーナニーナ」は、本件商標のことであることは明らかである。
したがって、商標権者自らが、本件商標を「ナーナニーナ」と称呼していたことが明らかである。ゆえに、本件商標から「ナーナニーナ」の称呼が生じないとする本件不服審判審決の認定に誤りがあることは明らかである。
イ 引用商標
引用商標は、「ナーナニーナ」の片仮名文字を横書きしてなるから、「ナーナニーナ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との対比
本件商標は、前述のとおり、少なくとも「ナーナニーナ」の称呼が生じるものであり、また、引用商標からも「ナーナニーナ」の称呼が生じるので、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標である。
また、本件商標から「ナナニナ」の称呼が生ずる場合があるとしても、当該称呼と引用商標から生ずる称呼「ナーナニーナ」とは聞き誤るおそれのある称呼である。すなわち、「ナナニナ」の称呼と「ナーナニーナ」の称呼とは、長音の有無を除いた場合には、称呼を構成する音が「nananina」であって共通するものである。そして、引用商標から生ずる称呼「ナーナニーナ」は、第1音「ナ」と第3音「ニ」とに長音を伴っているが、該長音は、その前音の「ナ」の母音「a」の、「ニ」の母音「i」の余韻として残る程度の弱音であり、それぞれ前音の「ナ」及び「ニ」に吸収されるため、独立した一音として聴取され難い音である。しかも、該長音は、全体の称呼において聴取され難い中間に位置するため、長音を有することが称呼全体に及ぼす影響は小さいというべきである。
したがって、「ナーナニーナ」の称呼と「ナナニナ」の称呼の差異は、長音の有無という微差にすぎないものであるから、両称呼は聞き誤るおそれがあることは明らかである。
以上のように、本件商標が「ナーナニーナ」と称呼される場合はもちろん、「ナナニナ」の称呼が生ずる場合においても、「ナーナニーナ」の称呼が生ずる引用商標とは称呼上類似する商標というのが妥当である。ゆえに、本件不服審判審決において、本件商標の称呼が「ナナニナ」であると認定したことは失当であり、その認定の結果、「ナーナニーナ」の称呼が生ずる引用商標とは称呼において類似しないと認定したことに誤りがあるといわざるを得ない。
エ 指定商品について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一又は類似であることは明らかである。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観及び観念が相違するとしても、称呼において類似する商標であり、その指定商品も同一又は類似する商品である。

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)並びに検乙第1号証及び検乙第2号証を提出した。
1 請求の利益について
請求人が引用商標の商標権者であること及び引用商標が本件商標よりも先登録に係るものであることは認めるが、その余は否認する。
2 本件商標と引用商標の類否
(1)本件商標について
ア 本件商標は、欧文字よりなる「na」、「nan」及び「na」の3つの文字部分と、各文字部分の間に配した、ハート図形の3つの図形部分とからなるものであり、具体的には、語頭の「na」と中間の「nan」との間であって上下方向における中央位置に、横向きのハート図形を下方に湾曲させて右方向へ窄まるように配した図形部分(本件図形1)を1つ介在させ、中間の「nan」と末尾の「na」との間に、縦棒部分の上端部から、横向きのハート図形を下方に湾曲させて右方向に窄まるように配した図形部分(以下、縦棒部分と本件図形2を合わせて、「縦棒上本件図形2」という場合もある。)と、縦棒上本件図形2の本件図形2の右下方において、小さなハート図形を右斜め下方に湾曲させて左下から右上へと斜めをなして窄まるように配した図形部分(本件図形3)とを介在させてなるものである。
イ 本件不服審判審決では、縦棒上本件図形2の縦棒部分について、「該縦棒部分は、他の欧文字部分と下端部のレタリングの特徴及び文字の大きさを同じくするものであること、また、アルファベットの『i』の特徴的形象を脱しているものとはいい難いこと、さらには、本願の指定商品の分野であるコスメティック関連の商品においては、美感を感じさせる特徴的なレタリング文字が類型的に使用されていることからすれば、該縦棒部分は、一部を図案化してなるとしても欧文字『i』を容易に認識、把握させるものである。」と認定した。しかし、仮にこの縦棒部分が欧文字の一部であったとしても、縦棒部分を有するアルファベットとしては他にも「l」や「r」など多数存在するし、また、縦棒部分は数字の「1」である可能性もあることからすれば、特定の観念を生じない本件商標において、縦棒部分が一義的に欧文字「i」を容易に認識、把握させるものであるとは考え難い。
ウ したがって、本件商標は、全体として特定の称呼が生じるものではないが、たとえ強いて称呼したとしても、各文字部分から「ナナンナ」なる称呼が生じるにとどまる。
仮に、本件不服審判審決の認定に倣って、縦棒上本件図形2の縦棒部分が欧文字「i」を表すものであることを前提とし、本件商標が、欧文字よりなる「na」、「nani」及び「na」の3つの文字部分と、各文字部分の間に配したハート図形とを結合してなるものであるとしても、特定の称呼が生じるものではないが、強いて称呼したとしても、各文字部分から「ナナニナ」なる称呼が生じるにとどまる。
エ 請求人は、「本件図形1及び2は、流れるように湾曲した横長に延びる図形であるために、これらをもって長音記号『ー』を図案化したものとの印象を与えるものである。」と主張する。
しかしながら、横向きハート図形を長音記号「ー」の代わりに用いたり、逆に、長音記号「ー」をハート図形の代わりに用いたりすることは、コスメティックの商品における一般的な文字表現の手法ではない。そして、ハート図形が「流れるように」湾曲しているという請求人の表現は、請求人の主観に基づくものに他ならない。さらに、本件図形1、縦棒上本件図形2、本件図形3の各ハート図形は、互いに大きさ、形状及び配置方向を共に異にしており、上下方向に揃った位置にも配されていないことからすれば、かかる差異を考慮することなく、本件図形1及び縦棒上本件図形2の本件図形2がいずれも長音符号「ー」を図案化したものとして看取されるとし、他方で、本件図形3については、そのまま図形として看取されるという請求人の主張は、明らかに不自然であり、客観的根拠に欠けるものである。
オ 請求人は、「本件商標は、『na』、『nani』、『na』の各欧文字の間にハート型図形を介在した構成であるから、『na』、『nani』、『na』の各欧文字は、ハート型図形により区分けされているものと認識され、その結果、ハート型図形の部分で一拍おいて発音されるのが自然である。そうだとすれば、本件商標は、『ナ』、『ナニ』、『ナ』の各音節の間に一拍おくと共に、流れるように湾曲したハート型図形の印象が相俟って、全体の称呼においては、各音節を滑らかに連続させて、すなわち長音を介して『ナーナニーナ』のように一連に称呼されることは明らかであり、ハート型図形の存在を全く無視して『ナナニナ』のように称呼全体を縮めて称呼することの方がむしろ少ないというべきである。」と主張する。
しかしながら、本件図形1及び2は、あくまで図形にすぎず、前記エで述べた理由と同様の理由により、ハート図形を含んで各文字部分を分断する各図形部分において、各文字部分の音節間に長音を介して滑らかに連続させる必然性はない。むしろ、各文字部分が各図形部分により分断されているため、本件商標を強いて称呼するとすれば、本件不服審判審決における認定のとおり、「ナナンナ」若しくは「ナナニナ」と、それぞれの文字部分を一音毎に明瞭に発音するか、又は「ナ・ナン・ナ」若しくは「ナ・ナニ・ナ」と分断されている部分毎に発音するのが自然であるといえる。
カ してみると、本件商標から「ナーナニーナ」という称呼は生じることはなく、よって、請求人の主張には明らかに理由がない。
(2)本件商標の使用について
ア 請求人は、商標権者使用商品の一例を提出する(甲3、甲4)と共に、Yahoo検索エンジン及びGoogle検索エンジンでキーワード「ナーナニーナ」にて検索を行った結果リストを提出し(甲5、甲6)、それら証拠により、本件商標を表示した商標権者使用商品が「ナーナニーナ」と指称されているから、本件商標は、客観的事実として「ナーナニーナ」の称呼が生じることが明らかである旨主張するが、以下の理由により、請求人の主張には理由がない(なお、甲第3号証、甲第4号証に示されている商標権者使用商品のパッケージの写真は、該パッケージを折り畳んだものであり、それにより実際のパッケージの表面に表れている一部の文字が隠れてしまっているため、被請求人は、改めて、商標権者使用商品を検乙1号証、検乙2号証として提出する。)。
(ア)商標権者使用商品のパッケージ(甲3、甲4、検乙1、検乙2)は、商標権者が企画開発した商品のパッケージであって、これらパッケージには確かに「本件商標に相当する標章」が表示されている(なお、被請求人は、検乙第1号証、検乙第2号証を含む商標権者使用商品に表示した「本件商標に相当する標章」は、商標の機能たる出所表示機能等を有しておらず、「本件商標に相当する標章」を商標権者使用商品に表示した行為は、本件商標の使用には該当しないと考えている。以下、被請求人の主張する「本件商標に相当する標章」を、被請求人の主張に限り、「本件標章」という。)。もし、このように欧文字と図形とを結合して図案化され特定の観念も生じない本件標章に対し、意図する特定の称呼を与えたいのであれば、ルビや括弧書き等で本件標章と関連付けてその読みを、需要者・取引者に分かりやすく表示するはずであるが、これらパッケージや容器等にはそのような読みは一切表示されていない(これらパッケージや容器等のいずれの箇所にも「ナーナニーナ」なる読みは表示されていない。)。さらに、甲第3号証、甲第4号証、検乙第1号証及び検乙第2号証以外の商標権者使用商品のパッケージや容器等に対しても、同様に、本件標章を「ナーナニーナ」は勿論その他の読みと共に表示した事実はない。
すなわち、そもそも商標権者には、本件標章に対し特定の称呼を与える意図が一切なかったといえる。
(イ)ところで、商標権者は、平成13年3月以来現在に至るまで、自ら開発した商標権者使用商品について、一貫して「MEZAIK」(メザイク)の文字よりなる商標(以下「『MEZAIK』商標」という。)を表示して販売している(甲3、甲4、検乙1、検乙2)。そして、その結果、「MEZAIK」商標を表示した商品は、「メザイク」と指称され、商標権者の商品として、需要者・取引者の間に広く認識されるに至っている。
それに対して、本件標章は、「MEZAIK」商標を表示した商標権者使用商品のパッケージの表裏や容器等に、小さく付記的に表示してあるにすぎず(検乙1、検乙2)、表示期間も平成20年3月から平成21年10月までにすぎなかった。
(ウ)Yahoo検索エンジン及びGoogle検索エンジンにて、キーワード「メザイク」を使用し検索した結果、いずれも約467,000件ヒットした(乙1、乙2)。それに対し、「ナーナニーナ」での検索結果はYahooが約1,960件、Googleが402件にすぎない(甲5、甲6)。
そして、同じくYahoo検索エンジン及びGoogle検索エンジンにて、「ナーナニーナ」の検索結果からキーワード「メザイク」を含むサイトを除外する検索式を使用し検索した結果、いずれも約20件であり(乙3、乙4)、キーワード「ナーナニーナ」を含むサイトのほぼ全てがキーワード「メザイク」を含んでいることがわかる。
このように、「MEZAIK」商標が表示された商標権者使用商品を「メザイク」と指称しているサイトが圧倒的に多く、しかも「MEZAIK」商標と本件標章が共に表示された商標権者使用商品を「ナーナニーナ」とのみ指標しているサイトがほぼ皆無であることを勘案すると、たとえ「MEZAIK」商標の表示期間と本件標章の表示期間との差を考慮に入れたとしても、「MEZAIK」商標と本件標章が共に表示された商品も、一般的には、需要者・取引者の間で「メザイク」と指称されていたことは明らかである。
(エ)以上のように、実際の使用に際しても、商標権者には、本件標章に対し特定の称呼を与える意図が一切なかったこと、及び、その結果として、「MEZAIK」商標と本件標章が共に表示された商品であっても、一般的には、需要者・取引者の間で「メザイク」と指称されていたことを勘案すると、需要者・取引者の間において、本件標章と「ナーナニーナ」が関連付けられることはなく、よって、本件商標から「ナーナニーナ」なる称呼が生じるという請求人の主張には、明らかに理由がない。
イ 請求人は、「甲第7号証には、そのヘッダーのタイトルに、明らかに『ナーナニーナ』が表示されており、フッターのURLには『nananina』が表示されているから、商標権者は、『ナーナニーナ』の称呼が生ずることを意図した商標として、本件商標を創作し、採択使用していたものといわざるを得ない。」旨主張する。
しかしながら、前記(2)ア(ア)のとおり、商標権者が、欧文字と図形とを結合して図案化され特定の観念も生じない本件標章に対し、特定の称呼を生じさせることを意図するのであれば、ルビや括弧書き等で本件標章と関連付けてその読みを、需要者・取引者に分かりやすく表示するはずであるが、甲第7号証において、本件標章とヘッダーの「ナーナニーナ」は、ホームページの左上端に、「arts brains」なる文字を挟んで上下に配されており、本件標章と「ナーナニーナ」が関連付けて表示されているとはいえない。一方、フッターの「nananina」からは「ナーナニーナ」なる称呼さえ生じない。しかも、ホームページの画面上において、一般的にヘッダーやフッターは目に付きにくい表示部分であることからすると、商標権者が「ナーナニーナ」の称呼が生じることを意図した商標として、本件標章を創作し、採択使用していたという請求人の主張は理由がない。
ウ 請求人は、本件関連商標(甲8)と「サマサマーナ」とが併記されているから、本件関連商標を「サマサマーナ」と称呼させる意図があったことに他ならず、よって、本件商標においても、長音記号の代わりにハート型図形を配することにより、「ナーナニーナ」と称呼させる意図があったことは明らかであると主張する。
しかしながら、本件関連商標及び本件標章は、横向きのハート図形を含む点で共通点を有するにすぎない全くの別事例であり、本件関連商標は、本件標章の称呼に関して何ら参考になるものではない。
また、この横向きのハート図形は、商標権者使用商品のパッケージの表に表示された「Milky doubler」の直後及び同パッケージ内の容器側面に表示された「Milky」の直後(検乙1)、パッケージの表裏に表示された「ストレッチファイバー60」の直後及び同パッケージ内の容器内のラベルシートに表示された「60」の直後(検乙2)、商標権者のホームページ(甲7)1頁に掲載の最上段に掲載された商品の商品名「MEZAIK ストレッチファイバー」の直後及び同商品の写真における容器側面に表示された「MEZAIK」の直後にも使われており、これら横向きハート図形が何れも長音記号の代わりに配したものではないことは明らかである。
してみると、たとえ本件関連商標の横向きハート図形が、「サマサマーナ」の長音記号「ー」と関連付けられていたとしても、それは、単に横向きハート図形の一使用事例にすぎず、この事例のみをもって、横向きハート図形の長音記号としての使用を一般化することもできない。
したがって、上記請求人の主張は理由がない。
エ 請求人は、甲第9号証に、「弊社ブランド『サマサマーナ』」及び「姉妹ブランド『ナーナニーナ』」の記載があり、ここでいう「サマサマーナ」は、本件関連商標のことであり、「ナーナニーナ」は、本件商標のことであることは明らかであるから、商標権者自らが、本件商標を「ナーナニーナ」と称呼していたことが明らかである旨主張する。
しかしながら、この書簡のいずれの箇所にも本件標章は表示されておらず、単に「サマサマーナ」の姉妹ブランドというだけで「ナーナニーナ」と本件標章とが関連付けられるはずもない。
すなわち、本件標章が、欧文字と図形とを結合して図案化され特定の観念も生じない標章であって、その表示自体から直接的に「ナーナニーナ」なる称呼が生じない以上、本件標章から「ナーナニーナ」なる称呼を生じさせるためには、本件標章と「ナーナニーナ」とを関連付けて商品等に表示し、需要者・取引者に対し、その称呼が「ナーナニーナ」であることを周知する必要があるといえるが、以上に詳述したように、請求人の提出したいずれの証拠からもそのような事実を導き出すことはできない。
したがって、本件標章の使用を考慮しても、本件商標から「ナーナニーナ」なる称呼は生じない。
(3)本件商標と引用商標との対比
ア 請求人は、本件商標及び引用商標からは「ナーナニーナ」なる称呼が生じるので、両商標は称呼を共通とし、また、本件商標から生じる称呼が「ナナニナ」であるにしても、当該称呼と「ナーナニーナ」とは聞き誤るおそれがある旨主張する。
しかしながら、前記のとおり、本件商標は、全体として特定の称呼が生じるものではないが、たとえ強いて称呼したとしても、各文字部分から「ナナンナ」なる称呼が生じるにすぎず、両商標の称呼を互いに聞き誤るおそれはない。
また、前記(1)ウのとおり、仮に本件不服審判審決における認定に倣って、本件商標が、「na」、「nani」及び「na」の各文字部分と、各文字部分の間に配したハート図形とを結合してなるものであるとしても、特定の称呼が生じるものではないが、強いて称呼することにより、各文字部分から「ナナニナ」なる称呼が生じたとしても、引用商標の「ナーナニーナ」の称呼とは、以下の相違点がある。
(ア)引用商標における語頭音は「ナー」と長音であり、第3音も「ニー」と長音であるのに対し、本件商標の第1音及び第3音は長音ではないため、両商標は、4音節の半分である2音節の発音が相違する。
(イ)引用商標は、称呼上、語頭の「ナー」の部分及び第3音の「ニー」の部分に強めのアクセントがあって滑らかに発音されるのに対し、本件商標は、全体として抑揚をつけず単調に一音毎に明瞭に発音される。
このように、本件商標と引用商標とは、全体の語調・語感が明らかに相違し、特に、短い音で構成された4音節中の半分に当たる2音節での長音の有無という差に加えて、語頭の「ナ」と「ナー」とが長音であるか否かの差は、両商標の称呼の識別上重要な要素を占めるものであって、それぞれを一連に称呼したときに、互いに聞き誤るおそれがなく区別することができるものである。
イ 両商標は、外観においても相紛れるおそれはなく、観念については、いずれも特定の観念が生じるものではないから、比較することができない。
ウ 以上のように、欧文字と図形とを結合して図案化され特定の観念も生じない本件商標からは、特定の称呼が生じるものではないが、たとえ本件商標から「ナナンナ」又は「ナナニナ」なる称呼が生じるとしても、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの観点からみても、互いに非類似であるといえる。
(4)むすび
以上に詳述したように、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではない。

第5 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求にするにつき、当事者間に利害関係の有無について争いがあるので、まずこの点について検討する。
ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。本件において、請求人は、本件商標の先登録に係り、かつ、本件商標と商標及び指定商品において類似する引用商標の商標権者であり、本件商標の存在により、引用商標の登録範囲において使用が制限されるおそれがあるのみならず、引用商標の禁止権が侵害されている旨主張するのであるから、請求人は、本件商標の存在により、直接不利益を被る立場にあるということができる。
したがって、請求人は、本件審判を請求するにつき、法律上の利益を有する者と認めることができる。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標について
ア 称呼
(ア)本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中、左より、「na」の文字、次いで、左に横倒しにし、下部にやや膨らみのあるハートの図形(本件図形1)、さらに、「nan」の文字、次いで、上部に配した、左に横倒しにし、下部にやや膨らみのある長めのハートの図形(本件図形2)とその右下部分に、左斜め下に向いたやや小さめのハートの図形(本件図形3)、右端に「na」の文字を、それぞれ表したものであることについては、当事者間に争いがない。
(イ)そこで、まず、「nan」の文字部分の右に位置し、本件図形2の下部に位置する縦棒状の図形部分(以下「縦棒図形」という。)が、需要者に、欧文字の「i」を表したと理解されるものであるのか、あるいは、本件図形2と一体となった図形を表したと理解されるものであるかについて検討する。
本件商標の指定商品は、化粧品、化粧用具等であり、その主たる需要者は、若い女性を多く含む一般の消費者ということができ、本件商標の構成を検討するに際しても、一般の消費者がどのように考察するかを基準として判断すべきものと解される。
ところで、ハートの図形は、化粧品等をはじめとする各種商品・役務の分野において、商標等の一部として、あるいは、装飾的な図形として、好んで採択され、使用されているありふれた図形であって、ハート型と呼べる形状を保っている限りにおいては、多少変形したハートの図形であっても、一般の消費者は、ハートの図形を表したと見て取ることができるといえる。
そして、本件商標中の本件図形2は、前記のとおり、下部にやや膨らみがあり、右に向かって先端が細くなり、全体として、長く流れるように伸びやかに描かれているのに対し、縦棒図形は、左右に配された「n」の文字部分のステムと同様に、その下部にセリフを有し、左右の「n」の文字部分と同一の手法で表されており、一見して、欧文字の一部を表したと理解されるものであって、本件図形2と縦棒図形とは、その表現方法において大きく相違するものである。
そうすると、本件図形2と縦棒図形の結合状態は、自然なものとはいい難く、むしろ、上記取引の実際におけるハートの図形に対する需要者の認識、特に、商標権者使用商品のように、若い女性を対象とした化粧品の分野の需要者の認識の程度からすれば、本件図形2は、縦棒図形と切り離して単独でハートの図形そのものを表したと理解されるということができる。
一方、縦棒図形は、上記のとおり、左右に配された「n」の文字部分のステムと同様に、その下部にセリフを有し、左右の「n」の文字部分と同一の手法で表現されており、一見して、欧文字の一部を表したと理解されるものであること、他の文字である「na」、「nan」、「na」は全て小文字で統一され、また、縦棒図形も他の文字と同じ程度の高さで表されていると見てとれること、縦棒を有し、他の文字と同じ程度の高さの小文字として、「i」の文字と「r」の文字があるが、「nan」と「na」の間に母音以外の「r」が来ることは考えにくいこと、他に「i」の文字以外に縦棒図形に近似する外観を有する小文字が存在しないことなどを総合し、商品や役務の広告等に商標を表示する場合において、図案化した文字が使用されることが極めて普通に行われている実情を併せ考慮すると、本件商標中の縦棒図形は、欧文字の「i」を表したと理解されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、左より、「na」の文字、本件図形1、「nani」の文字、本件図形2+本件図形3、「na」の文字を横一列に表したものということができる。
この点に関し、被請求人は、仮に縦棒図形が欧文字の一部であったとしても、縦棒部分を有するアルファベットは、「l」や「r」など多数存在するし、また、縦棒図形は数字の「1」である可能性もあることからすれば、特定の観念を生じない本件商標において、縦棒図形が一義的に欧文字「i」を容易に認識、把握させるものであるとは考え難い旨主張するが、上記認定のとおりであるから、被請求人の上記主張は、採用することができない。
(ウ)次に、上記「na」の文字、本件図形1、「nani」の文字、本件図形2+本件図形3、「na」の文字を横一列に表した構成よりなる本件商標から生ずる称呼について検討する。
a.甲第3号証ないし甲第9号証並びに検乙第1号証及び検乙第2号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(a)「二重まぶた形成用接着剤」(商標権者使用商品の一つ)の包装外箱の表面には、上部に、「やり直しできるから/失敗もコワクないッ!」、「一重さんもデカ目/メイク!」などの文字が表示され、左側面の黒塗り部分に、「MEZAIK」の文字が桃色で表され、その直ぐ下に「Milky doubler」の文字及び本件図形1が白色で表され、さらに、商品が入った部分の下方に、本件商標がやや小さく表示されている。また、同包装外箱の裏面には、左側上段に、「初心者でも簡単!/ソフトのりタイプ」、「MEZAIK/ミルキーダブラー」の文字等が表示され、右側上部には、本件商標がやや小さく表示されている(甲3、検乙1)。
(b)上記(a)の包装外箱から取り出した「二重まぶた形成用接着剤」の包装容器の正面には、中央に大きく「Milky」の文字と本件図形1が表示され、その下に、「doubler」の文字、「MEZAIK」の文字が二段に表示されており、これらの文字とやや離れた下方に、本件商標がやや小さく表示されている(検乙1)。
(c)「二重まぶた形成用ファイバー」(商標権者使用商品の一つ)の包装外箱の表面には、上部に、「デカ目メイクで勝負です!」、「リアルな‘ふたえ’/奥二重が/変わる!」の文字が表示され、左側面の黒塗り部分に、「MEZAIK」の文字が桃色で表され、その直ぐ下に「ストレッチファイバー60」の文字と本件図形1が小さく表示され、さらに、商品が入った部分の下方に、本件商標がやや小さく表示されている。また、同包装外箱の裏面には、左側に、「MEZAIK/ストレッチファイバー60」の文字と本件図形1が表示されている(甲4、検乙2)。
(d)上記(c)の包装外箱から取り出した「二重まぶた形成用ファイバー」の包装容器の正面には、中央に「ストレッチファイバー」の文字、「60」と本件図形1、「MEZAIK」の文字が大きく表示され、これらの文字の下に、本件商標がやや小さく表示されている(検乙2)。
(e)Yahoo検索エンジンで「ナーナニーナ」の語で検索した結果のヒット数は約1960件であり、証拠として提出された結果リスト(2011年(平成23年)4月12日プリントアウトされたもの:甲5)は、そのうちの100件であるところ、検索結果リストに掲載されている内容が商標権者使用商品に関するものであることについては、当事者間に争いがない。
そして、当該リストには、例えば、「Yahoo!ショッピング ナーナニーナ メザイク ストレッチファイバー120」、「楽天市場から『ナーナニーナ メザイク ストレッチファイバー120・・」(以上甲5の1、2等)などの表記のほか、「メザイク【MEZAIK】ストレッチファイバーnananina(ナーナニーナ)」(甲5の1)、「メザイクフィッターnananina(ナーナニーナ)」(甲5の2)のように、「nananina(ナーナニーナ)」と表示されたものが半数以上の60件存在する。また、同リスト中には、「ナーナニーナのMEZAIK(メザイク)なんです。」、「絆創膏メザイクとは? 奥二重/ナーナニーナと言う所の商品で、・・」(以上甲5の4)、「正式名称は『MEZAIK』です。ナーナニーナと言う所の商品で、」(甲5の8)、「ナーナニーナのMEZAIK(メザイク)なんです。」、「ブランドnananina(ナーナニーナ)」(以上甲5の9)、「メザイク【MEZAIK】ストレッチ/2009年6月26日・・nananina(ナーナニーナ)を使うと効果が長持ちします。」(甲5の10)との記載もある。
(f)Google検索エンジンで「ナーナニーナ」の語で検索した結果のヒット数は約400件であり、証拠として提出された結果リスト(2011年(平成23年)4月12日プリントアウトされたもの:甲6)は、そのうちの100件であるところ、検索結果リストに掲載されている内容が商標権者使用商品に関するものであることについては、当事者間に争いがない。
そして、当該リストには、上記(e)と同様に、「nananina(ナーナニーナ)」と表示されたものが半数以上の59件存在する。また、上記(e)と同様に、「絆創膏メザイクとは? 奥二重/ナーナニーナと言う所の商品で、・・」(甲6の3)、「メザイクストレッチファイバー120/2009年1月6日・・・nananina(ナーナニーナ)」(甲6の5)、「ブランドnananina(ナーナニーナ)」(甲6の6)などの記載もある。
(g)商標権者のホームページ(平成21年6月3日プリントアウトされたもの:甲7)には、「MEZAIK/ストレッチファイバー」、「MEZAIK FITER」、「『デカ目』メイクで/勝負です!」との表示に下に、商標権者使用商品が掲載されているところ(掲載の商品が甲第3号証、甲第4号証、検乙第1号証、検乙第2号証に示す商標権者使用商品であることについては、当事者間に争いがない。)、当該ホームページのヘッダータイトルに、「ナーナニーナ|プロダクツ&ブランド|アーツブレインズ」と記載され、すぐ下には、ヘッダータイトル中の「アーツブレインズ」の英語表記である「artsbrains」の文字が表示され、さらに、その下には、本件商標及び「NANANINA PRODUCTS」の文字が表示されている。また、フッターのURLには「/www.aaa-brains.co.jp/products/nananina/mezaik/」が表示されている。
(h)本件関連商標を付した化粧用具についての説明書(甲8の1)の裏表紙には、「製造販売元:株式会社ブルーアンドピンク」(審決注:請求人)と「企画・開発:株式会社アーツブレインズ」(審決注:商標権者(被請求人))が記載されている。
また、本件関連商標を付したオード・トワレについてのリーフレット(甲8の2)にも、「製造販売元 株式会社ブルーアンドピンク」と「企画・デザイン 株式会社アーツブレインズ」が記載されている。
さらに、上記リーフレットには、「幸せな片思いを応援するサマサマーナシーズンズコレクションから/3番目のストーリー‘星の告白Stay with’が登場です。」などと記載され、その下方の「SEASON’S COLLECTION/商品一覧」には、3種類のオード・トワレについて、左より順に、「Sugar pink/サマサマーナシュガーピンク」、「Crystal sweet/サマサマーナクリスタルスイート」、「Stay with/サマサマーナステイウイズ」と表示され、これら商品の下の中央に本件関連商標が表示されている。
(i)株式会社アーツブレインズと株式会社ブルーアンドピンクがその取引先に宛てた2008年(平成20年)3月17日付け「『サマサマーナ製品』の販売終了について」(甲9)には、「サマサマーナ」ブランド全製品の販売を2008年8月末日で終了すること、「サマサマーナ メザイクストレッチファイバー120及びメザイクフィッター」については、姉妹ブランドである「ナーナニーナ」により発売を予定していることなどが記載されている(上記「メザイクストレッチファイバー120及びメザイクフィッター」が商標権者使用商品であることについては、当事者間に争いがない。)。
b.前記a.で認定した事実によれば、以下のとおり認定するの相当である。
(a)商標権者使用商品の包装外箱及び包装容器に、本件商標が表示されていることは明らかな事実である。そして、本件商標は、前記(イ)認定のとおり、左より、「na」の文字、本件図形1、「nani」の文字、本件図形2+本件図形3、「na」の文字を横一列に表した構成よりなるものである。
(b)2008年(平成20年)3月17日に、商標権者及び請求人がその取引先に通知した「『サマサマーナ製品』の販売終了について」(甲9)における「メザイクストレッチファイバー120及びメザイクフィッター」は、商標権者使用商品であり、これが、「サマサマーナ」ブランド全製品の販売が2008年(平成20年)8月末日で終了することに伴い、「ナーナニーナ」ブランドに変更する予定であること。上記「サマサマーナ」ブランドが本件関連商標であることは、当事者間に争いがなく、本件関連商標は、実際に、商標権者及び請求人の取扱いに係る商品「オード・トワレ」の代表的ブランドとしても使用されていたことからすれば、「ナーナニーナ」ブランドは、商標権者使用商品を含む商標権者の取扱いに係る商品の代表的ブランドとして使用が予定されていたと推認することができる。
(c)平成21年6月3日の時点において、商標権者がそのホームページに掲載した商品(甲7)は、甲第3号証(検乙1)及び甲第4号証(検乙2)に示す商標権者使用商品であり、これには、「na」、「nani」、「na」の各文字が含まれる本件商標が表示されていたことは明らかである。
したがって、ホームページのヘッドタイトル中の「ナーナニーナ」の文字及びフッターのURL中の「nananina」文字は、前者が本件商標の片仮名表記であり、後者が本件商標中の文字部分であるとその需要者に容易に理解されるといえる。
そして、「メザイクストレッチファイバー120及びメザイクフィッター」をはじめとする「MEZAIK」商標を付した商標権者使用商品は、遅くとも平成21年6月3日(甲7号証のプリント日付)には既に、“「ナーナニーナ」ブランド”により発売されていたと推認することができる。
(d)取引の実際において、商標権者使用商品は、「MEZAIK/メザイク」の文字と共に、「ナーナニーナ」又は「nananina(ナーナニーナ)」の文字が表示されて、通販業者等により広告されていた、ないし、一般の消費者からのブログ等に掲載され、「nananina(ナーナニーナ)」との表示は、「ナーナニーナ」の表示を上回ることが認められ、商標権者使用商品に接する取引者、需要者は、「ナーナニーナ」を「nananina」の片仮名表示と認識していたことをうかがうことができる(インターネット検索の結果リストには、本件図形1?3などの図形が表示されることが少ないことは周知の事実である。)。
さらに、一般の消費者からのブログ等には、商標権者使用商品について、「ナーナニーナのMEZAIK(メザイク)なんです。」、「絆創膏メザイクとは? 奥二重/ナーナニーナと言う所の商品で、・・」、「ブランドnananina(ナーナニーナ)」などと記載されており、一般の消費者の間においても、「MEZAIK」商標と、「ナーナニーナ」と片仮名表記される「nananina」の文字よりなる商標は、商標権者使用商品の商標として認識されていた。
(e)本件関連商標を付した化粧用具、化粧品(甲8)に関し、請求人は、製造販売元であり、商標権者は、企画・開発等を行っていた会社であるから、両者は、関連会社であったといえるのであり、また、請求人と商標権者は、その取引先に宛てた2008年(平成20年)3月17日付け「『サマサマーナ製品』の販売終了について」(甲9)を連名で通知したことからも、請求人は、本件商標の存在は言うに及ばず、本件商標が「ナーナニーナ」と片仮名表記又は称呼される商標であることについての事情を知っていたものと推察することができる。
(f)以上を総合すると、本件商標は、「ナーナニーナ」と片仮名表記又は称呼される商標と認めることができる。そして、「MEZAIK」商標は、商標権者の取り扱う個別的な商品の商標、いわゆるペットマークとして機能している商標であるのに対し、本件商標は、商標権者の業務に係る商品全般ないし化粧品を用途別等に大きく分けた商品群といった、いわゆる代表的な商標として機能しているものと認めることができる(このことは、前記(b)のとおり、本件関連商標が少なくとも商標権者及び請求人の取扱いに係る商品「オード・トワレ」の代表的ブランドとしても使用されていた事実、「サマサマーナ」ブランド(本件関連商標)を付した商品の販売終了に伴い、「サマサマーナ」ブランドに代えて「ナーナニーナ」ブランドが使用されることを取引先に通知したことによっても首肯し得るところである。)。
したがって、本件商標は、取引の実際において、「ナーナニーナ」の称呼をもって、商標権者使用商品の識別標識としての機能を発揮しているものというべきである。
なお、請求人は、本件商標中の本件図形1及び2が、長音記号「ー」を表す旨主張するが、前記認定のとおり、ハートの図形は、化粧品等をはじめとする各種商品・役務の分野において、商標等の一部として、あるいは、装飾的な図形として、好んで採択され、使用されているありふれた図形であって、ハート型と呼べる形状を保っている限りにおいては、多少変形したハートの図形であっても、一般の消費者は、ハートの図形を表したと見て取ることができ、本件商標においても、本件図形1?3は、「na」、「nani」、「na」の文字部分に付記的に表示されたハートの図形と理解されるというのが相当である。
(エ)被請求人の主張について
a.被請求人は、検乙第1号証及び検乙第2号証を含む商標権者使用商品に表示した本件標章は、商標の機能たる出所表示機能等を有しておらず、本件標章を商標権者使用商品に表示した行為は、本件商標の使用には該当しない旨主張する。
しかしながら、被請求人の上記主張は、何を言わんとするものであるかにわかには理解し難いところであるが、前記認定のとおり、商標権者使用商品の包装外箱及び包装容器には、「MEZAIK」商標のほか、本件商標と同一の構成態様よりなる商標が表示されていることは明らかであり、これが本件商標の使用でないとすることはできない。
そして、ある商品に使用される商標は、常に一つであるとは限らず、むしろ、商標権者使用商品のように、個別的な商品の商標として機能する「MEZAIK」商標や取扱いに係る商品全般の代表的な商標として機能する本件商標などが付されているのが一般的であるといえる。
してみれば、商標権者使用商品に表示された「MEZAIK」商標及び本件商標は、いずれも自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮しているというべきである。
したがって、上記被請求人の主張は失当である。
b.被請求人は、本件商標について、意図する特定の称呼を与えたいのであれば、ルビや括弧書き等で本件商標と関連付けてその読みを、需要者・取引者に分かりやすく表示するはずであるが、商標権者使用商品のパッケージや容器等にはそのような読みは一切表示されておらず、商標権者には、本件商標に対し特定の称呼を与える意図が一切なかった旨主張する。
しかし、前記(イ)及び(ウ)b.認定のとおり、商標権者使用商品に付された本件商標は、「na」、「nani」、「na」の各文字及びハートの図形より構成されていると理解されるものであり、取引の実際において、本件商標は、その取引者、需要者に、「nananina(ナーナニーナ)」と表記されている事実は明らかであって、その前提には、商標権者及び請求人が、平成20年3月17日付けで取引先に通知した「『サマサマーナ製品』の販売終了について」(甲9)において、商標権者使用商品について、「姉妹ブランドである『ナーナニーナ』より発売を予定」と記載し、また、商標権者のホームページ(甲7)にも、商標権者使用商品の広告について、「ナーナニーナ」、「nananina」の表示と共に本件商標が表示されていた事実があったからであると推測し得るのである。
したがって、商標権者使用商品の包装外箱及び包装容器には、本件商標の読みが表示されていないとしても、取引の実際において、本件商標を付した商標権者使用商品は、商標権者はじめ、取引者、需要者に、「ナーナニーナ」との片仮名表記又は称呼をもって取引に資され、自他商品の識別機能を発揮していたというべきであるから、上記被請求人の主張は失当である。
また、被請求人は、本件標章は、商標権者使用商品のパッケージの表裏や容器等に、小さく付記的に表示してあるものにすぎず、表示期間も平成20年3月から平成21年10月までにすぎなかった旨主張する。
しかし、商標権者使用商品の包装外箱や包装容器等に表示された本件商標は、「MEZAIK」商標に比べ、やや小さく表示されていることは、前記(ウ)a.(a)?(d)認定のとおりであるとしても、その事実をもって、本件商標が自他商品の識別機能を有しないものということはできないのみならず、前記(ウ)b.認定のとおり、本件商標は、商標権者の業務に係る商品の代表的な商標として、自他商品の識別機能を有している商標ということができる。また、本件商標の表示期間が平成20年3月から平成21年10月までであったことを裏付ける証拠の提出はない。
したがって、上記被請求人の主張も理由がない。
c.被請求人は、商標権者使用商品について使用される「MEZAIK」商標は、取引者、需要者に広く認識されており、商標権者使用商品に「MEZAIK」商標と本件標章が共に表示された商品であっても、一般的には、取引者、需要者の間で「メザイク」と指称されていたことを勘案すると、取引者、需要者が本件標章と「ナーナニーナ」とを関連付けることはない旨主張し、乙第1号証ないし乙第4号証を提出する。
確かに、Yahoo検索エンジン及びGoogle検索エンジンで「メザイク」の語で検索した結果のヒット数は、いずれも約467,000件である(乙1、乙2)こと及びこれらの検索エンジンで「ナーナニーナ メザイク」の語で検索した後、「メザイク」のサイトを除外して検索した結果のヒット数は、いずれも約20件である(乙3、乙4)こと、これら検索結果リストに掲げられている内容がいずれも商標権者使用商品に関するものであることを認めることができるが、上記のとおり、商標権者使用商品には、個別的商品の商標、いわゆるペットマークとして機能する「MEZAIK」商標のほか、商標権者の業務に係る商品の代表的な商標として機能する本件商標が表示され、これが自他商品の識別標識としての機能を発揮していることは、疑いのない事実である。
そして、前記(ウ)b.(d)認定のとおり、一般の消費者からのブログ等には、商標権者使用商品について、「ナーナニーナのMEZAIK(メザイク)なんです。」、「絆創膏メザイクとは? 奥二重/ナーナニーナと言う所の商品で、・・」、「ブランドnananina(ナーナニーナ)」などと記載されており、一般の消費者の間においても、「MEZAIK」商標と、「ナーナニーナ」と片仮名表記される「nananina」の文字よりなる商標、すなわち、本件商標とが商標権者使用商品に表示される商標として認識されていたことが明らかである。
したがって、上記に関する被請求人の主張も理由がない。
d.被請求人は、甲第7号証に関し、本件標章とヘッダーの「ナーナニーナ」は、ホームページの左上端に、「arts brains」なる文字を挟んで上下に配されており、本件標章と「ナーナニーナ」が関連付けて表示されているとはいえない。一方、フッターの「nananina」からは「ナーナニーナ」なる称呼さえ生じない。しかも、ホームページの画面上において、一般的にヘッダーやフッターは目に付きにくい表示部分であることからすると、商標権者が「ナーナニーナ」の称呼が生じることを意図した商標として、本件標章を創作し、採択使用していたという請求人の主張は理由がない旨主張する。
しかし、商標権者のホームページ(甲7)に掲載された商品が商標権者使用商品であることについては、当事者間に争いはなく、商標権者使用商品には、「na」、「nani」、「na」の各文字及びハートの図形より構成される本件商標が表示されていること、さらに、取引の実際において、本件商標が「nananina(ナーナニーナ)」と表記されていることは、前記認定のとおりである。したがって、これらの事実を総合すれば、「ナーナニーナ」が本件商標の片仮名表記であること及びフッターのURLの「nananina」が本件商標中の文字部分を表示したものであることが明らかである。
また、ホームページの画面上におけるヘッダーやフッターが目に付きにくい表示部分であることと本件商標から「ナーナニーナ」の称呼が生じるか否かの問題とは、何ら関係を有しないものである。
したがって、上記被請求人の主張も理由がない。
e.被請求人は、甲第9号証に関し、いずれの箇所にも本件商標は表示されておらず、単に「サマサマーナ」の姉妹ブランドというだけで「ナーナニーナ」と本件商標とが関連付けられるはずもない。すなわち、本件商標が、欧文字と図形とを結合して図案化され特定の観念も生じない標章であって、その表示自体から直接的に「ナーナニーナ」なる称呼が生じない以上、本件商標から「ナーナニーナ」なる称呼を生じさせるためには、本件商標と「ナーナニーナ」とを関連付けて商品等に表示し、需要者・取引者に対し、その称呼が「ナーナニーナ」であることを周知する必要があるといえるが、請求人の提出したいずれの証拠からもそのような事実を導き出すことはできない旨主張する。
しかし、商標権者及び請求人が平成20年3月17日付けで取引先に通知した「『サマサマーナ製品』の販売終了について」(甲9)における「メザイクストレッチファイバー120及びメザイクフィッター」が商標権者使用商品であることにつては、被請求人は争っておらず、その後、商標権者のホームページにおける商標権者使用商品の広告において、「ナーナニーナ」、「nananina」の表示と共に本件商標が表示されていた事実があり、加えて、商標権者使用商品の包装外箱及び包装容器には、本件商標が表示されている事実、その結果、インターネット上における取引者、需要者の多くの者が、商標権者使用商品に使用される「nananina」の表示を「ナーナニーナ」と片仮名表記していた事実(甲6)を総合すれば、甲第9号証に記載された「サマサマーナ」ブランドの姉妹ブランドである「ナーナニーナ」は、本件商標ということができる。
そして、商品等に本件商標と「ナーナニーナ」とを関連付けて表示することが、需要者・取引者に対し、本件商標の称呼が「ナーナニーナ」であることを周知させる唯一無二の手段であるとはいえない。したがって、上記被請求人の主張も理由がない。
イ 観念
本件商標は、その構成中に、「na」、「nani」、「na」の文字を含むものであるところ、該文字は、特定の語義を有しない造語であり、また、本件商標の構成全体をもってしても、特定の観念を生じない造語よりなるものといえる。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「ナーナニーナ」の文字を書してなるものであるから、これより「ナーナニーナ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生じない造語よりなるものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
以上(1)及び(2)によれば、本件商標と引用商標は、「ナーナニーナ」の称呼を同じくする称呼上類似する商標である。したがって、両商標は、外観において類似するものとはいえず、また、いずれも造語よりなり、観念上比較することができないものであるとしても、観念の差異が、称呼の類否判断に、大きな影響を及ぼすものではなく、むしろ、同一の称呼が生ずるものであることからすれば、取引者、需要者に与える観念上の印象は異なるものとはいえない。
してみれば、本件商標と引用商標は、上記事情を総合して全体的に観察すれば、互いに類似する商標であるといわざるを得ない。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一の商品と認めることができる。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものと認める。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(本件商標)


審理終結日 2011-09-16 
結審通知日 2011-09-21 
審決日 2011-10-04 
出願番号 商願2009-49410(T2009-49410) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (X03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤村 浩二 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2011-02-25 
登録番号 商標登録第5392787号(T5392787) 
商標の称呼 ナナニーナ、ナナニナ 
代理人 蔦田 璋子 
代理人 蔦田 正人 
代理人 中道 武美 

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