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審決分類 審判 全部取消 商標の同一性 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 130
管理番号 1247924 
審判番号 取消2010-301233 
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-11-18 
確定日 2011-11-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第1402344号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1402344号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1402344号商標(以下「本件商標」という。)は、「KRISPY」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年12月21日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同54年12月27日に設定登録され、その後、平成2年1月19日、同11年11月9日及び同21年10月13日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同21年12月16日に指定商品を第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がされているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
2 弁駁の理由
被請求人は、本件商標をその指定商品に包含される「チョコレート、ビスケット」について使用している旨主張し、証拠として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
しかしながら、以下のとおり、これらの証拠によっては、いまだ本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に指定商品について使用された事実は認められないから、本件商標は、その登録を取り消されて然るべきものである。
(1)商標の同一性について
ア 被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第4号証は、被請求人の「製品一覧表」及び「新商品のご案内」(新商品紹介用の資料と思われる。)であり、これらには商品名及びチョコレート、ビスケット等の商品写真が掲載されている。そして、被請求人が指摘する商品には、商品名の表示及び商品写真の包装箱、包装袋に片仮名「クリスピー」の文字が表示されていることは認められるが、本件商標とその構成文字を共通にする欧文字「KRISPY」の文字は一切表示されていない。
ここで、本件商標「KRISPY」は、被請求人採択に係る造語と考えられるから、本件商標からは特定の観念は生じ得ない。
イ 一方、片仮名「クリスピー」は、商品「チョコレート、ビスケット」との関係からも、英語「CRISPY」(パリパリ、カリカリするの意味)の表音と理解され、「CRISPY」の語が自然と想起される。そのため、片仮名「クリスピー」からは「CRISPYの表音」、「パリパリ、カリカリする」といった観念が生じるものである。
してみれば、乙各号証に表示されている「クリスピー」の語は、本件商標と観念上同一のものということはできないし、当然、その外観においても異なるものである。
よって、両者を社会通念上同一のものということはできない。
ウ 乙各号証上では、商品写真が小さいこともあり、詳細は確認できないが、被請求人が本件商標を使用していると主張する商品をインターネットで検索したところ、いずれの商品においても「クリスピー」の文字のそばに「CRISPY」の語が併記されていることが認められる。その一例を示す証左として、甲第2号証ないし甲第4号証を提出する。
例えば、甲第2号証は、被請求人のプレスリリースの写しであるが、ここに被請求人の商品写真が掲載されており、商品包装中には「CRISPY」の語が表示されている。そして、プレスリリース記事中には「初めての“クリスピータイプ”」、「サクサクとした歯ごたえ」、「サクサクの食感」、「さらにサクッ!とした新食感」、「カリカリとした食感」等の記載が認められることから、被請求人自身も、「クリスピー」の語を「パリパリ、カリカリする」といった意味の英語「CRISPY」の表音として使用していることが明らかである。
エ 因みに、上記請求人の主張の客観性を担保する審決例として、以下を挙げることができる。
すなわち、平成11年審判第31349号(甲第5号証)では、使用に係る商標「コンパス」と登録商標「COMPATH」は、「コンパス」の称呼を共通にするものの、「コンパス」の称呼からは製図道具の「COMPASS」の語を想起するというのが相当であり、造語といえる「COMPATH」の文字を想起するとはいい難く、観念上同一のものということはできないし、外観においても異なるものであるから、両者は、社会通念上同一のものということはできず、「コンパス」の使用をもってしては、登録商標「COMPATH」と社会通念上同一の商標の使用ということはできないと認定し、登録商標「COMPATH」の登録を取り消すべきものと判断している。
また、取消2009-300454(甲第6号証)では、登録商標「ECOPAC」と使用権者の使用する「エコパック」とは、登録商標が特定の観念が生じないのに対し、「エコパック」の片仮名からは「ECOPACK」の語が想起され、「経済的、環境にやさしい包装容器」という程の観念が生じるから、同一の観念を生じるということはできず、称呼において、両者は、「エコパック」の称呼を同じくするとしても、登録商標と使用に係る「エコパック」とは、社会通念上同一の商標とはいえない。また、仮に登録商標と使用商標「エコパック」が、「エコパック」の称呼及び「経済的、環境にやさしい容器包装」の観念を同じくする場合、両者は、プラスチック製包装容器の品質を表示するものとして認識されるものであって、該商品の出所を表示するものとしての機能を果たし得ないから、本件商標の使用とは認められないと認定し、「エコパック」の使用は、登録商標「ECOPAC」と社会通念上同一の商標の使用とはいえないと判断している。
オ 以上のとおりであるから、乙各号証によっては、本件商標と社会通念上同一の商標が使用された事実を認めることはできない。
(2)商標の識別性について
商標法第50条の適用上、「商品についての登録商標の使用」があったというためには、同法第2条第3項の文言どおりの使用では足りずに、当該商品の識別表示として同法第2条第3項、第4項所定の行為がなされることを要する(例えば、東京高裁平成12年(行ケ)第117号判決。甲第7号証)。
そこで、被請求人が乙各号証で使用している「クリスピー」の表示について検討するに、同語は、英語「CRISPY」の表音(片仮名表記)と理解されること、上記(1)のとおりである。そして、「CRISPY」が「パリパリ、カリカリする」といった意味を有する語であるから、商品「菓子(「チョコレート、ビスケット」)」との関係では、自他商品識別標識として機能し得ない語であるといわざるを得ない。
この点は、甲第2号証の被請求人のプレスリリースにおいて、「初めての“クリスピータイプ”」、「さくさくとした歯ごたえ」のように、被請求人自身が「クリスピー」を「パリパリ、カリカリする」といった意味合いで使用していることからも客観的に明らかである。
よって、乙各号証によっては、被請求人使用に係る商標は、自他商品識別標識としての使用と認めることはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人提出に係る乙各号証によっては、いまだ本件商標が本件審判の請求の登録前に使用された事実は証明されない。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
1 本件商標の使用事実
被請求人は、本件商標をその指定商品に包含される「チョコレート、ビスケット」について、本件審判の請求の予告登録日である平成22年12月8日前3年以内に日本国内において使用している。
使用の証拠として提出する「製品一覧表」及び「新商品ご案内」において使用している商標は、いずれも片仮名からなる「クリスピー」であるが、本件商標とは社会通念上同一の範囲にあるものと思料する。
2 証拠の説明
(1)乙第1号証
乙第1号証は、被請求人が、2010年秋にスーパー、コンビニエンスストア、菓子店等の業者向けに販売した商品の「製品一覧表」である。
その表紙左上隅には、2010年秋の販売商品であること示す「2010 Autumn」と記載されており、かかる一覧表に掲載された商品が、2010年秋の時点で販売されていたことは明らかである。
その第2ページの右列中段に、前面中央に大きく二段に「クリスピー/ショコラ」と表示されたチョコレートの商品箱の写真が掲載され、その隣に「53gクリスピーショコラ箱」との表示が記載されている。商品写真において、上下2段に分けて構成された「クリスピー/ショコラ」のうち、下段の「ショコラ」の文字は商品名を表すことから、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは、上段の「クリスピー」であるといえる。
同じく、第6ページの左列4及び5項目と右列6項目に、「クリスピー」の文字が大きく付されたビスケットの商品写真が掲載され、その隣には、商品名として、それぞれ「110gカントリーマアムクリスピー」、「110gカントリーマアムクリスピー(キャラメルアーモンド)」、「1枚カントリーマアムクリスピー」と記載されている。
掲載された商品写真が示すとおり、商品の包装袋の上方に「ビスケット」のブランド名である「カントリーマアム」の文字がやや図案化して弧状に配置され、その下に、横長楕円の囲いの中に横一列に「クリスピー」の文字が「カントリーマアム」の文字よりも大きく表示されている。また、第10ページにも、同じような構成で「クリスピー」の文字を使用した商品の写真及び商品名として、「5枚カントリーマアムクリスピー」、「50gカントリーマアムクリスピーミニ」と表記されている。
これら商品の包装袋の表現態様からすれば、ビスケットのブランドである「カントリーマアム」の個別商品商標として、「クリスピー」が独立して使用されていることは明らかである。
これにより、2010年秋には、「チョコレート」及び「ビスケット」に本件商標と社会通念上同一である「クリスピー」が使用されていたことは明らかである。
(2)乙第2号証
乙第2号証は、被請求人の2010年9月度の「新商品ご案内」である。
その第2ページの上から6項目に、上記製品一覧表の第2ページの右列中段に掲載されたチョコレート商品「クリスピーショコラ」と同一の商品が掲載され、発売日の項目には「9/21(火)」と記載されており、当該商品が、2010年9月21日に発売が開始されたことを明示している。
これにより、少なくとも2010年9月21日に、本件商標と社会通念上同一である「クリスピー」が「チョコレート」に使用されていたことは明らかである。
(3)乙第3号証
乙第3号証は、被請求人が、2011年春にスーパー、コンビニエンスストア、菓子店等の業者向けに販売する商品の「製品一覧表」である。
その表紙下方に、2011年春の販売商品であること示す「2011 SPRING」と記載されており、かかる一覧表に掲載された商品が、2011年春に販売される商品であることは明らかである。
その第6ページの左列4及び5項目と右列3、6及び8項目に、「クリスピー」の文字が付されたビスケットの商品写真が掲載され、その隣には、商品名として、それぞれ「110gカントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」、「110gカントリーマアムクリスピー(コクうまチョコ)」、「50gカントリーマアムクリスピーミニ(コクうまバニラ)」、「20gカントリーマアムクリスピーミニ(コクうまバニラ)」、「1枚カントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」と記載されている。
掲載された商品写真が示すとおり、包装袋の上方に配された四角枠の中に、文字をやや図案化して弧状に配したビスケットのブラント名である「カントリーマアム」と、その下に間隔をあけて横一列に「クリスピー」の文字が「カントリーマアム」の文字と同等若しくはやや大きめに配されている。
かかる表現態様からすれば、「クリスピー」が、ビスケットのブランドである「カントリーマアム」の個別の商品商標として、独立して使用されていることは明らかである。
また、第10ページの左列3項目、第11ページの右列2、5及び7項目にも、上記と同様の表現態様を有する商品写真が掲載され、その隣に、商品名として、それぞれ「5枚カントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」、「5枚カントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」、「20gカントリーマアムクリスピーミニ(コクうまバニラ)」、「1枚カントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」と表記されている。
これにより、2011年春に、ビスケットの商品ブランドである「カントリーマアム」のシリーズ商品の個別商標として、「クリスピー」の文字を共通に使用した種々の商品が発売予定であることが明らかであり、乙第1号証も考慮すれば、少なくとも2010年秋から現在に至るまで、本件商標と社会通念上同一である「クリスピー」が「ビスケット」に継続して使用されていることが推認できると思料する。
(4)乙第4号証
乙第4号証は、被請求人の2011年2月度の「新商品ご案内」である。
その8項目から10項目に、上記2011年春の製品一覧表の第6ページの左列4及び5項目と右列8項目に掲載されたビスケット商品「カントリーマアムクリスピー」と同一の商品が掲載され、発売日の項目に「2/22(火)」との記載があることから、当該商品が、2011年2月22日に発売を予定していることが明らかである。
これにより、2011年2月22日に、「ビスケット」に「クリスピー」の文字を付した商品が販売されることは明らかであって、乙第1号証を考慮すれば、ビスケットのブランド「カントリーマアム」の個別商品商標として、本件商標と社会通念上同一である「クリスピー」が、少なくとも2010年秋から現在に至るまで、継続して使用されていることが推認できると思料する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、被請求人の使用に係る商標「クリスピー」からは英語「CRISPY」の語が自然に想起され、「パリパリ、カリカリする」といった観念が生じることから、本件商標と観念を同一にするものではなく、社会通念上同一と認められる商標ではない旨主張するが、片仮名「クリスピー」から自然に英語「CRISPY」が想起されるとする根拠は示されていない。
(2)請求人は、被請求人が片仮名「クリスピー」を英語「CRISPY」の表音として使用している証拠として、被請求人のプレスリリース(甲第2号証)を提出し、その記事内容に「初めての“クリスピータイプ”」、「サクサクとした歯ごたえ」、「サクサクの食感」、「さらにサクッ!とした新食感」、「カリカリとした食感」との記載が認められることをその根拠にしているが、単にプレスリリースの記事内容にそれらの語句があるからといって、直ちに片仮名「クリスピー」が、英語の「CRISPY」の表音として使用されていることを証明するものではない。
(3)請求人は、被請求人の使用に係る商標である片仮名「クリスピー」は、自他商品の識別標識としての使用ではない旨主張し、被請求人が「クリスピー」を「パリパリ、カリカリする」といった意味合いで使用している根拠として、被請求人のプレスリリース(甲第2号証)の記事内容に、「初めての“クリスピータイプ”」、「サクサクとした歯ごたえ」といった記載があることを理由に挙げているが、プレスリリースの記事内容にそれらの記載があるからといって、被請求人が、片仮名「クリスピー」を商品の品質等を直接的に説示するものとして、「パリパリ、カリカリする」といった意味合いで使用していることを立証するものではない。
その他、片仮名「クリスピー」が、英語「CRISPY」の表音と理解され、「パリパリ、カリカリする」といった意味合いで使用されていることを示す証拠は示されておらず、片仮名「クリスピー」が、自他商品の識別標識としての使用ではないとする主張には根拠がない。
4 まとめ
以上をもって、請求人の主張は理由がないことを明らかにする。
よって、本件審判請求は、成り立たない。

第4 当審の判断
1 商標の同一性について
(1)被請求人は、本件商標を商品「チョコレート、ビスケット」について使用している旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。
ア 乙第1号証は、被請求人の発行に係る「2010Autumn不二家製品一覧表」と題する冊子の写しと認められるところ、該冊子は、その表紙に記載された上記表題からして、2010年秋用に作成されたものとみて差し支えない。
しかして、その第1ページには、「チョコレート CHOCOLATE」の表題の下に各種商品の写真が掲載されており、そのうちの右欄3段目には、前面に「クリスピー」及び「ショコラ」の文字が大きく表示された商品(他にも図形及び文字が表示されているが不鮮明で判読できない。)の写真が掲載され、その右側に「53gクリスピーショコラ箱」との表示がされている。
同じく、第5ページには、「ビスケット BISCUIT」の表題の下に各種商品の写真が掲載されており、そのうちの左欄4段目及び5段目並びに右欄6段目には、それぞれ前面に「クリスピー」の文字が大きく表示された商品(他にも図形及び文字が表示されているが不鮮明で判読できない。)の写真が掲載され、それぞれの右側に「110gカントリーマアムクリスピー」、「110gカントリーマアムクリスピー(キャラメルアーモンド)」又は「1枚カントリーマアムクリスピー」との表示がされている。
同じく、第9ページには、「チャネル限定」の表題の下に各種商品が掲載されており、そのうちの3段目及び4段目には、前面に「カントリーマアム」及び「クリスピー」の文字が表示された商品(他にも図形及び文字が表示されているが不鮮明で判読できない。)の写真が掲載され、それぞれの右側に「5枚カントリーマアムクリスピー」又は「50gカントリーマアムクリスピーミニ」との表示がされている。
他に、本件商標を構成する「KRISPY」の文字は見当たらない。
イ 乙第2号証は、「2010年9月度(株)不二家新商品ご案内」と題する書面の写しと認められるところ、その表題及び記載内容からして、2010年9月に被請求人が販売する新商品を一覧表にしたものといえる。
上記一覧表の2枚目上から6番目の欄には、上記乙第1号証の第1ページに掲載された商品と同視し得る商品の写真が掲載され、発売日欄に「9/21(火)」と、商品名欄に「クリスピーショコラ箱」と、備考欄に「コーンフレーク、ワッフルクランチ、薄焼きクレープの3種類の異なる素材の食感が楽しめる、キャラメル風味のチョコスナックです。」と、それぞれ記載されている。
他に、本件商標を構成する「KRISPY」の文字は見当たらない。
ウ 乙第1号証及び乙第2号証を併せ考慮すると、乙第1号証に掲載された商品、少なくとも、第1ページに掲載された商品「クリスピーショコラ箱」は本件審判請求の登録(平成22年12月8日)前3月以内である平成22年9月21日に発売されたものとみるのが自然であるし、乙第1号証の冊子自体が本件審判請求の登録前の平成22年9月頃には発行されていたものと推認されるから、これらに表示された「クリスピー/ショコラ」、「クリスピー」の文字からなる標章は、同時期に、商品の表示として使用されていたものというべきである。
エ 乙第3号証は、被請求人発行に係る「2011SPRING不二家製品一覧表」と題する冊子の写しと認められるところ、該冊子は、その表紙に記載された上記表題からして、2011年春用に作成されたものとみて差し支えない。
そして、その第5、第9及び第10ページ目には、「カントリーマアム」及び「クリスピー」の文字が付された商品が、上記乙第1号証と同様の形式で掲載されている。
オ 乙第4号証は、「2011年2月度(株)不二家新商品ご案内」と題する書面の写しと認められるところ、その表題及び記載内容からして、2011年2月に被請求人が販売する新商品を一覧表にしたものといえる。
カ 乙第3号証及び乙第4号証を併せ考慮すると、乙第3号証に掲載された商品、少なくとも、第5ページに掲載された商品「カントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」、「カントリーマアムクリスピー(コクうまチョコ)」及び「1枚カントリーマアムクリスピー(コクうまバニラ)」は、乙第4号証にも掲載されていることから、本件審判請求の登録後である平成23年2月22日に発売されたものとみるのが自然であるし、乙第3号証の冊子自体が本件審判請求の登録後に発行されたものと推認される。
そうすると、乙第3号証及び乙第4号証は、本件審判請求の登録前3年以内における本件商標の使用事実を立証する証拠とはなり得ないものである。
(2)他方、請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 甲第2号証ないし甲第4号証は、被請求人のウェブサイトの写しと認められるところ、そのうちの2009年7月27日付けプレスリリースには、被請求人提出に係る乙第1号証の第5ページの左欄4段目及び5段目に掲載された商品と同一と認められる商品「カントリーマアムクリスピー」及び「カントリーマアムクリスピー(キャラメルアーモンド)」について、写真と共に説明されている。乙第1号証に掲載された商品の写真は小さく不鮮明であるが、上記プレスリリースに表示された商品の写真は鮮明であり、それによれば、商品包装袋の前面には「クリスピー」の文字の右下に「CRISPY」の文字が表示されていることが分かる。また、上記説明文中には、「・・・チョコチップをたっぷりと使用し、サクサクの食感に仕上げたクリスピータイプのチョコクッキー。・・・さらにサクッ!とした新食感にリニューアル・・・」等の記述がされている。
イ 2009年7月10日付け及び2011年2月8日付けのプレスリリースにも、商品包装袋の前面に、「カントリーマアム」、「CRISPY」、「クリスピー」等の文字が明示されており、説明文中に「・・・初めての“クリスピータイプ”。サクサクとした歯ごたえ・・・」、「・・・チョコチップをたっぷりと使用し、サクサクの食感に仕上げたクリスピータイプのチョコクッキーシリーズです。」等の記述がされている。
ウ 甲第4号証には、「不二家 商品詳細」、「53gクリスピーショコラ箱(2010年12月末まで)」として、乙第1号証の第1ページに掲載された商品と同視し得る商品が掲載され、商品説明が記載されている。乙第1号証に掲載された商品の写真は小さく不鮮明であるが、甲第4号証に掲載された商品の写真は鮮明であり、それによると、商品包装箱の前面には、「クリスピー」及び「ショコラ」の文字を2段書きした上に小さく「CRISPY CHOCOLAT」と表示されていることが分かる。また、上記商品説明には、「サクサクした食感で、ポイポイ気軽に召し上がっていただける商品です。」と記述されている。
(3)ところで、「クリスピー」の語は、「(食物が)パリパリ(カリカリ)する」の意味を有する英語「crispy」に由来し、「(ピザやベーコンなどの)食物がカリカリしている状態」の意の外来語としても知られているものである。
加えて、上記(1)及び(2)の事実によれば、乙各号証に示される「クリスピー」の文字は、「CRISPY」の表音として認識し理解されるというのが自然であり、「パリパリ(カリカリ)する」との観念を生ずるものというべきである。
他方、本件商標は、上記第1のとおり、辞書等に見られない綴りからなるものであって、既成の親しまれた観念を生じ得ない一種の造語からなるものとして認識し理解されるものである。
そうすると、乙各号証に示される「クリスピー」の文字から、「CRISPY」の語を想起することはあっても、造語たる「KRISPY」を想起するものとはいい難く、上記「クリスピー」と本件商標とは、観念上同一のものとはいえないし、外観上も異なるものであるから、称呼が共通であるとしても、社会通念上同一のものということはできない。
2 商標の識別性について
(1)商標の本質は、当該商標を使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの(商標法第3条第2項)として機能すること、すなわち、商品又は役務の出所を表示し、識別する標識として機能することにあると解されるから、商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には、形式的には同法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は、商標の「使用」に当たらないと解するのが相当である(東京地裁、平成20(ワ)第34852号、平成22年11月25日判決参照)。
(2)これを本件についてみるに、前示のとおり、乙各号証に示される「クリスピー」の文字は、「(食物が)パリパリ(カリカリ)する」の意味を有する英語「CRISPY」の表音として認識し理解されるばかりでなく、甲第2号証ないし甲第4号証によれば、被請求人自身、「クリスピー」の文字に「CRISPY」の文字を付記したり、商品の説明において、「サクサクの食感に仕上げたクリスピータイプのチョコクッキー」、「初めての“クリスピータイプ”」、「サクッ!とした新食感」等の記述をしていることが認められることから、「クリスピー」の語が「CRISPY」の表音であることを自認し、商品の品質を表示するために該語を使用しているものというべきであり、これに接する取引者、需要者もそのように認識し理解するとみるのが自然である。
そうすると、乙各号証に示される「クリスピー」の文字は、単に当該商品がパリパリ、サクサクした食感を有するものであるという、商品の品質を表示するものとして認識されるにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たすものではなく、商標として使用されているものともいえない。
3 まとめ
以上を総合すると、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標と社会通念上同一といえる商標が商品「チョコレート、ビスケット」について使用されているものと認めることはできない。
その他、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内にその指定商品について使用されていることを認めるに足る証拠はない。
したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていなかったものであるから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-09-12 
結審通知日 2011-09-14 
審決日 2011-09-27 
出願番号 商願昭46-139560 
審決分類 T 1 31・ 11- Z (130)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 1979-12-27 
登録番号 商標登録第1402344号(T1402344) 
商標の称呼 クリスピー 
代理人 笹野 拓馬 
代理人 加藤 恒久 

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