• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X41
管理番号 1244929 
異議申立番号 異議2010-900328 
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-10-22 
確定日 2011-10-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5340044号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5340044号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5340044号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年3月11日に登録出願され、第41類「歯科医療に関する知識の教授,学会・セミナー・シンポジウム・会議・会合・講演会・講習会・研修会・討論会の企画・運営又は開催及びこれに関する情報の提供」を指定役務として、同年7月2日に登録査定、同月23日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人が引用する登録第4384041号商標(以下「引用商標」という。)は、「CPI」の文字を標準文字により表してなり、平成10年10月28日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務として同12年5月19日に設定登録され、その後、同22年3月30日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第3 登録異議申立の理由の要旨
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、登録を取り消されるべきものである。

第4 当審が通知した取消理由の要旨
登録異議の申立てがあった結果、商標権者に対して、平成23年5月26日付けで通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
本件商標は、別掲1のとおり、やや図案化されているものの、一般に、文字の図案化が進み、商品・役務の広告・宣伝等の様々な場面において図案化された文字が使用されている昨今にあっては、相当程度図案化された文字からなる商標であっても、判読されて取引に資されることが多いといえる。そして、本件商標は、ローマ字「c」、「p」及び「i」の特徴を端的に捉え、図案化したものとして認識し理解されるというべきであり、「シーピーアイ」の称呼を生ずるものといえる。また、本件商標は、図案化されることによって、「c」、「p」、「i」の文字から構成されるものであること以外に、特別な既成観念を生じさせるものでもない。
他方、引用商標は、親しまれた既成の観念を有する成語を表したものではなく、その構成文字に相応して、「シーピーアイ」の称呼を生ずること明らかである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。
さらに、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似のものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

第5 商標権者の意見の要旨
前記4の取消理由に対し、商標権者は、要旨以下のように意見を述べている。
1 本件異議申立書の理由について
本件取消理由が殆どよってたっていると思われる本件異議申立書(平成22年11月22日付け手続補正書)について以下のとおり検討する。
(1)「本件商標と引用商標との対比」において、両商標の称呼から述べているが、これは両商標の認定に当たっての人間の思考順序から言って順番が逆である。まずは外観を認識し、それが何を表したものか、次にそれが何を意味するものか、或いは、何と言われるものかの順で認定するのではないか。
(2)「本件商標の具体的態様」において、「近年においては、レタリング技法の発達により、広告等において、英文字を装飾化することは非常に一般的であり、商標の態様においてもデザイン化された文字が多数採択されている。」としながら、「非常に一般的であり、」及び「文字が多数採択されている。」についての証拠あるいは資料の提示・提出が全くない。
(3)構成文字毎の観察にける「c」の文字について「一般的なサンセリフの書体」。「Gas ton ExtendedやSceptre等のフォント」とあるが、それらの態様が明らかにされていない。また、「最後に『p』の文字についてみると、左上の角となる部分に隙間があり、下方に突き出した縦のラインが短くなっているのが特徴的である。しかし、この特徴によって、他の文字に見えたり、何らかの図形と認識されるようなことは全く無く、充分に『p』と認識できる程度の図案化である。また、この様な特徴が、極めて明確な差異を看者に印象付けるとも言い難い。両側の『c』と『i』が非常に認識し易い態様であることもあって、中央の文字も無理なく『p』と看取し得るものである。」としているが、まさしく「最初に称呼ありき」の理屈がある。「両側の『c』と『i』が非常に認識しやすい態様である」事がその間の文字を特定することにならない。
(4)「近年においては、レタリング技法の発達により、広告等において、英文字を装飾化することは非常に一般的であり、商標の態様においてもデザイン化された文字が多数採択されている。」というのであれば、「中央の文字も無理なく『p』と看取し得るもの」の部分は、何故「中央の文字も無理なく『Y』と看取し得るもの」とはならないのか。
(5)「本願商標と引用商標の外観上の近似性を考慮すると」とあるが、標準文字からなる引用商標の外観と本願商標の外観が近似性の範躊にあるとは全く暴論に過ぎ無い。
(6)「本件商標と引用商標とは、共に造語によりなるものであるから、観念においては比較し得ない。」としているが、本件商標を「文字」からなる商標とした場合であれば、「欧文字cpi」の観念ないし意味合いがあるのではないか。「cpi」は、ウィキペディア「CPI」の項の意味を有する略語として通用している。これを造語というだろうか。もっとも、本件商標を「文字」からなる商標と決めつける理由が奈辺にあるのか明らかにされていない。
(7)特許庁の検索システム・電子図書館における登録商標の検索用商標および称呼の欄に記載されているものは、あくまでも検索用に便宜的に掲載されているものであって、これをもって商標権の範囲を特定づけるものではない。申立人のようにこの欄の掲載を本件商標の範囲を拠り所にするのであれば、本件商標の登録査定をなした審査官は、当然この欄の記載は目にしているのであるから、引用商標が存在するにも関わらず、本件商標の登録査定をなしたことは、本件商標の態様を図形と認定したか、或いは、態様において著しく特徴的であり、引用商標と誤認混同するおそれはないと認定したかのどちらかであろうと推定される。
2 本件取消理由について
(1)本件取消理由において「一般に、文字の図案化が進み、商品・役務の広告・宣伝等の様々な場面において図案化された文字が使用されている昨今にあっては、相当程度図案化された文字からなる商標であっても、判読されて取引に資されることが多いといえる。」とあるが、この件は上記1(2)と同じく、証拠ないし資料の提示がないので、全く合議体の主観的なものにすぎず、「最初に称呼ありき」から跡付けた理由のように見える。
(2)「本件商標は、ローマ字『c』、『p』及び『i』の特徴を端的に捉え、図案化したものと認識し理解されるというべきであり、『シーピーアイ』の称呼を生ずるものといえる。」とあるが、この件も上記1(2)と同様である。また、図案化したのであれば何故「Y」ではなく、「p」と断定できるのかの説明・理由も明らかにされていない。図案化されたものは、それに接する人によっていろいろなものをイメージし、認識する可能性があるのではないか。もし本件商標を文字からなるものとするならば、なぜ「Y」ではなく「p」なのかの理由を明らかにされたい。
(3)「引用商標は、親しまれた既成の観念を有する成語を表したものではなく、」とあるが、「cpi」は、資料1のとおりの意味を持った略語として世間において通用している(ウィキペディア「CPI」の項)ものであるから、この件も合議体の職権調査不十分か、表現の誤りである。「cpi」なる文字は、本件商標の指定役務においては、全く無関係な文字ではない。
(4)「本件商標と引用商標とは、称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。」としているが、本願商標が文字からなるものなのか、図形からなるものなのかを明らかにせずに、本件商標から称呼が生ずるとし、さらに、引用商標と称呼を共通にすることのみで、本件商標と引用商標とは類似することは、全く商標間の類否判断手法を弁えていないとしか考えられない。百歩譲って、本件商標から称呼が生ずるとしても、商標間の類否判断における外観・観念・称呼の類似は、「その商標を使用した役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、外観・観念・称呼のうちその一つにおいて類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、何ら役務の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第3小法廷判決)。」とされている。本件の場合は、外観および観念の点についての吟味不足である。
(5)付与後異議申立制度の運用に当たっては、登録異議申立人の主張に惑わされることなく、審査主義・合議体の職権主義および公衆の利益保護の観点から、特許庁による登録処分の見直しを行い、瑕疵ある登録処分の是正を速やかに図り、登録の信頼を図ることを目的とすべきであるから、何らの理由・証拠もないのに、審査官の認定・処分をみだりに覆すべきではない。審査官の認定・処分(特に、商標の認定に関する場合)をみだりに覆すことは、公衆の利益保護と登録の信頼を図ることを目的する付与後異議申立制度の趣旨に反することになり、惹いては審査主義の否定にもなりかねる。余程の理由・証拠が無い場合は、利害関係人間における紛争解決を目的とする登録無効審判制度に任せるべきである。本件のように他人の権利を引用する場合には、その他人の知らないうちに、自己の商標権が利用され、挙げ句は紛争に巻き込まれるわけであるから、なおさら慎重に対処することを要する。
(6)以上のとおり、本件取消理由は、確たる証拠ないし資料の提示も無く、本件商標を文字からなる商標と決めつけ、称呼が共通することのみをもって、本件商標と引用商標とは類似するとするものであるから、本件商標の認定の誤り及び職権による引用商標等の調査不足に基づくものであって、到底納得しかねるものである。したがって、本件商標と引用商標とは類似しないものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

第6 当審の判断
本件商標権者は、取消理由における、本件商標と引用商標が類似するとした判断は誤りであると主張するので、以下この点について検討する。
1 「『商標の態様においてもデザイン化された文字が多数採択されている。』としながら、『非常に一般的であり、』及び『文字が多数採択されている。』についての証拠あるいは資料の提示・提出が全くない。」旨述べている。
しかしながら、「一般的に、文字の図案化が進み、商品・役務の広告・宣伝等の様々な場面において図案化された文字が使用されていることは、例えば、グラフィック社発行の「資料|マーク|シンボル|ロゴタイプ|カラー篇3」の272頁「DAIDO」(別掲2)、「資料|マーク|シンボル|ロゴタイプ|カラー篇4」の141頁「HOTEL/seashore/MITSUMISAKI」(別掲3)、同「O’ZACK」(別掲4)、「資料|マーク|シンボル|ロゴタイプ|カラー篇6」の269頁「TATESHINA/FORWM」(別掲5)などからも裏付けられるものである。
2 「図案化したのであれば何故『Y』ではなく、『p』と断定できるのかの説明・理由も明らかにされていない。」旨述べている。
しかしながら、上部を均等に左右に開いた「Y」と、右側のみに丸みを有する「P」とは、外観上の特徴が明らかに相違するものであり、そして、本件商標の中央部は、左に縦に直線を配し、その上部右側に半円の円弧を有してなる点において「P」の特徴と一致するものであり、また、文字の「P」の一部を切断して表すことも一般的に行われていることからすると、その中央部分は容易に「P」の文字を表したものと理解されるものである。例えば、本件商標の書体と近似したPalomino Font(別掲6;http://www.ffonts.net/Palomino.font)及びPaint Normal Font(別掲7;http://ja.fonts2u.com/paint-normal.%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%88)中の「P」の表示態様からしても、本願商標の中央部分が「P」の文字を表したものであることを確認できる。
したがって、本件商標は、「cpi」の文字を図案化したものと認識し理解されるとした、取消理由の認定は妥当である。
3 「本件商標と引用商標とは、共に造語によりなるものであるから、観念においては比較し得ない。としているが、本件商標を『文字』からなる商標とした場合であれば、『欧文字cpi』の観念ないし意味合いがあるのではないか。『cpi』についてインターネットを用いて検索したところ、資料1のような意味を有する略語として通用している。これを造語というだろうか。」旨述べている。
確かに、「CPI」の文字は、複数の語の略語として用いられるものではあるが、本件商標の指定役務及びその需要者との関係において、特定の意味合いを有する語として、その略語が知られているものではないから、特定の観念を想起させることがない造語であるというのが相当である。
4 本件商標が文字からなるものか、図形からなるものか明らかにせず、本件商標から称呼が生ずるとしていることは誤りであるという趣旨の主張をしているが、本件商標は、前記1及び2のとおり、そのデザインの態様からして「CPI」の文字を組み合わせたものと容易に理解できるので、「シーピーアイ」の称呼を生ずる。
5「商標間の類否判断における外観・観念・称呼の類似は、その商標を使用した役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、外観・観念・称呼のうちその一つにおいて類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、何ら役務の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。」旨述べている。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、その綴り文字を共通にし、称呼が同一であって、共に特定の観念を生じないものであるから、両者は関連性を有するとの印象を与えるものであり、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標とは、彼此誤認混同するおそれのある類似の商標であるというのが相当である。
6 「付与後異議申立制度の運用に当たっては、異議申立人の主張に惑わされることなく、審査主義・合議体の職権主義および公衆の利益保護の観点から、特許庁による登録処分の見直しを行い、瑕疵ある登録処分の是正を速やかに図り、登録の信頼を図ることを目的すべきであるから、何らの理由・証拠もないのに、審査官の認定・処分をみだりに覆すべきではない。審査官の認定・処分(特に、商標の認定に関する場合)をみだりに覆すことは、公衆の利益保護と登録の信頼を図ることを目的する付与後異議申立制度の趣旨に反することになり、惹いては審査主義の否定にもなりかねる。」旨述べている。
しかしながら、登録異議の申立て制度は、特許庁自ら登録処分の適否を審理し、暇庇ある場合には、その是正を図ることによって商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するものである。そして、登録異議の申立てを受けて重ねて審理した結果、登録が誤りであるとの結論に達したとき、査定と異なる決定をすべきことは制度自体が予定するところというべきである。
7 むすび
以上のとおり、商標権者の主張はいずれも採用できないものであり、平成23年5月26日付けで通知した上記第4の取消理由は妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 (本願商標)



別掲2 「資料|マーク|シンボル|ロゴタイプ|カラー篇3」(DAIDO)


別掲3 「資料|マーク|シンボル|ロゴタイプ|カラー篇4」(HOTEL/seashore/MITSUMISAKI)


別掲4 同(O’ZACK)


別掲5 「資料|マーク|シンボル|ロゴタイプ|カラー篇6」(TATESHINA/FORWM)


別掲6(Palomino Font)


別掲7(Paint Normal Font)





異議決定日 2011-08-24 
出願番号 商願2010-18704(T2010-18704) 
審決分類 T 1 651・ 262- Z (X41)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 内山 進
前山 るり子
登録日 2010-07-23 
登録番号 商標登録第5340044号(T5340044) 
権利者 川島 哲
商標の称呼 シイピイアイ 
代理人 亀川 義示 
代理人 村田 幸雄 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ