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審決分類 審判 全部無効 商8条先願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
管理番号 1244832 
審判番号 無効2011-890004 
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-01-04 
確定日 2011-10-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第5226320号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5226320号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5226320号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成20年12月17日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同21年4月9日に登録査定、同年4月24日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証の1の1ないし甲第1号証の5の1及び甲第1号証の9の1、甲第2号証の1の1ないし甲第4号証の35の1(ただし、甲第4号証の2の8ないし10及び同18ないし20は欠番。なお、「証拠方法」において、「甲第4号証の36の1」の記載があるが、その提出はない。)、甲第51号証の1の1の1ないし甲第51号証の4の3、甲第61号証の1の1ないし甲第78号証の2の2(ただし、甲第63号証の1の35、甲第73号証の3の11及び同15は欠番。なお、「証拠方法」において、「甲第78号証の2の2」の記載があるが、その提出はなく、また、「甲第62号証の4の2ないし4」及び「甲第62号証の7の2」については、「証拠方法」において、その記載がない。)、甲第81号証の1の1ないし甲第81号証の2の1、甲第90号証の1の1ないし甲第90号証の2の4、甲第100号証の1の1ないし甲第103号証の1の2並びに甲第104号証の1の1及び甲第104号証の1の2を提出した(なお、甲号証のいずれについても、その枝番号の全てを引用する場合には、以下、該枝番号の記載を省略する。)。
1 無効事由
本件商標は、商標法(以下「法」という。)第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号、同第19号及び法第8条第1項に該当するものであるから、その登録は、法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
2 無効原因
(1)法第4条第1項第7号該当性
本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)は、その有する登録第4945793号商標(「彩の国七福神せんべい」の文字を標準文字で表してなるもの。以下「商標権者登録商標1」という。)及び登録第4955717号商標(「彩の国七福神」の文字を標準文字で表してなるもの。以下「商標権者登録商標2」といい、「商標権者登録商標1」と合わせていうときは、以下単に「商標権者登録商標」という。)を、その業務に係る商品「あられ」について、本件商標の登録出願前より使用してきたところ、商標権者は、故意に、指定商品について商標権者登録商標に類似する商標の使用をし、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとして、商標権者登録商標の登録は、法第51条第1項の規定により取り消された。しかるに、本件商標は、商標権者登録商標の登録を取り消す旨の審決確定日前に出願されたものであるとはいえ、商標権者登録商標1中の「せんべい」の文字を除いた部分及び商標権者登録商標2とは、ほとんど同一の構成からなるものであって、法第51条第1項の規定により取り消された商標権者登録商標と同一の態様の商標の登録を許したということになり、法第51条第2項の法意をないがしろにするものである。
したがって、本件商標の登録は、法の欠缺を巧みに利用する不当なもので、公の秩序又は善良な風俗を害するものである。
(2)法第4条第1項第10号該当性
ア 請求人の使用する商標
請求人は、その業務に係る商品「あられ、おかき、せんべい」等(以下「請求人商品」という。)について、「七福神」、「七福神あられ」等の文字からなる商標及びこれらの文字に漫画風に描いた七福神の図形を結合してなる商標を使用している(甲第4号証。これら商標を以下「請求人使用商標」という。)。
イ 請求人の営業活動
(ア)請求人は、「おかき、あられ、せんべい」等の製造・販売業者として、明治29年に東京日本橋において創業し、明治42年に群馬県前橋市へ営業拠点を移した後、個人営業から有限会社幸煎餅、株式会社幸煎餅へと組織変更を経て現在に至るまで営業活動を継続してきた。平成20年4月現在、請求人は、群馬県前橋市千代田町4-19-3所在の本店をはじめ、群馬県、東京都及び静岡県の直営店並びに子会社店の合計4店を擁している。また、取扱店は、三越銀座店、高島屋高崎店、ダイエー大宮店等、群馬県を中心に67店舗に及ぶ(甲第51号証)。
(イ)広告・宣伝活動
a ホームページの開設
請求人は、平成14年1月ころにホームページを開設し、請求人商品を紹介している(甲第61号証)。
b 新聞
請求人は、「上毛新聞」・「桐生タイムス」・「静岡新聞」といった地方紙や「スポーツ報知」・「スポーツニッポン」・「日刊スポーツ」といったスポーツ紙、「菓子食品新報」、「メトロガイド」等に請求人商品の広告をした。その他、「読売新聞」や「毎日新聞」といった全国紙にも請求人商品の広告をした(甲第62号証)。
c 雑誌
請求人は、「文藝春秋」、「オール讀物」、「週刊文春」、「クロワッサン」、「NHKウィークリーステラ」、「月刊ぷらざ」、「月刊パリッシュ」等の雑誌に請求人商品の広告をした(甲第63号証)。
d ちらしその他
請求人は、請求人商品に関し、ちらし、パンフレットを作成し、これらを頒布した。また、請求人商品に関し、その包装容器、電飾サインボードや新橋演舞場のプログラム等に請求人使用商標を表示したり、ラジオやテレビを媒介して広告をした(甲第64号証ないし甲第70号証)。
以上のように、請求人は、多額の費用を費やし、数多の広告・宣伝を行っている。例えば、月刊「文藝春秋」(甲第63号証の1)の平成21年度の1年だけの広告費用は、約540万円を超える。
ウ 紹介情報
請求人商品は、郵便局が取り扱う「ゆうパック」や「ふるさと小包」等のパンフレット、雑誌、新聞、ちらし等で紹介された(甲第71号証ないし甲第78号証)。
エ 請求人使用商標の周知・著名性
上記イ及びウのとおり、請求人使用商標は、請求人商品を表示するものとして、商品「菓子」の需要者の間に広く認識されていたものである。
オ 本件商標と請求人使用商標の類似性
本件商標は、その出願前より請求人が使用する請求人使用商標である「七福神」(登録第4004283号)、「七福神/あられ」(登録第4271574号)、「七福神∞あられ」(登録第4576030号)、「七福神あられ」(登録第5069835号)等と、外観の相違にもかかわらず、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼において、全体として商標が類似するものである。
カ 商品の同一又は類似性
本件商標の指定商品は、請求人商品と同一又は類似の商品である。
(3)法第4条第1項第11号該当性
ア 請求人の有する登録商標(いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。)
(ア)登録第4004283号商標(以下「引用商標1」という。)は、「七福神」の文字を横書きしてなり、平成6年12月16日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同9年5月30日に設定登録され、その後、同18年12月26日に商標権の存続期間の更新登録がされた。
(イ)登録第4271574号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成9年5月8日に登録出願、第30類「あられ」を指定商品として、同11年5月14日に設定登録され、その後、同21年4月14日に商標権の存続期間の更新登録がされた。
(ウ)登録第4576030号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成13年7月12日に登録出願、第30類「あられ」を指定商品として、同14年6月14日に設定登録された。
(エ)登録第5069835号商標(以下「引用商標4」という。)は、「七福神あられ」の文字を縦書きしてなり、平成18年12月4日に登録出願、第30類「あられ」を指定商品として、同19年8月10日に設定登録された。
(オ)登録第5070904号商標(以下「引用商標5」という。)は、「七福神おかき」の文字を縦書きしてなり、平成18年12月4日に登録出願、第30類「おかき」を指定商品として、同19年8月17日に設定登録された。
(カ)登録第5070905号商標(以下「引用商標6」という。)は、「七福神せんべい」の文字を縦書きしてなり、平成18年12月4日に登録出願、第30類「せんべい」を指定商品として、同19年8月17日に設定登録された。
イ 本件商標と引用商標1ないし6の類似性
本件商標は、その構成中の「彩の国」の文字が埼玉県の愛称であって、埼玉県を意味する地理的表示として使用されているから、指定商品の産地・販売地を表すものと認識され、独立して商品の識別標識とはならないものである。「彩の国」の文字が埼玉県を意味するとした場合に、「彩の国 七福神」と表された標章が埼玉県にある七つの神仏である七福神を看取させない。なぜなら、埼玉県をまとめて認識させる七福神が存在しないからである。
したがって、地理的表示である「彩の国」の文字と共に、本件商標を構成する「七福神」の文字部分は、独立して商品の識別機能を有するものである。
これに対し、引用商標2ないし6の構成中の「七福神」の文字は、独立して商品の識別機能を有し、引用商標2ないし6の要部とされるものである。
したがって、本件商標は、外観の相違点を考慮しても、「彩の国」の「七福神」又は「七福神」の観念、「シチフクジン」の称呼において、引用商標1ないし6と類似する商標であり、また、本件商標の指定商品は、引用商標1ないし6の指定商品と同一又は類似の商品である。
(4)法第4条第1項第15号該当性
上記(2)のとおり、請求人使用商標は、宣伝・広告等の結果、請求人商品を表示するものとして、商品「菓子」の需要者の間に広く認識されていたものである。また、本件商標は、請求人使用商標と「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼において、全体として商標が類似するものである。さらに、本件商標の指定商品は、請求人商品と同一のものである。
商標権者は、請求人使用商標の有する高い識別力・強い出所識別機能にただ乗りしているものであり、本件商標の使用により、請求人使用商標の有する顧客吸引力を減殺させるものである。
本件商標に接する需要者は、本件商標が請求人使用商標の姉妹商標又はファミリーマークの一種であると誤認する。
(5)法第4条第1項第16号該当性
請求人商品は、原材料・製法・包装方法等について、高度な一定の品質を有するものであるところ、これと異なる品質の商品について商標権者が本件商標を使用することは、商品の品質の誤認を生じせしめ、また、生じさせているものである。
(6)法第4条第1項第19号該当性
上記(2)のとおり、請求人使用商標は、宣伝・広告等の結果、請求人商品を表示するものとして、商品「菓子」の需要者の間に広く認識されていたものである。
商標権者は、埼玉県さいたま市中央区本町西一丁目12番9号に店舗を置く米菓の製造・販売業者であり、請求人とその業務が競合している(甲第101号証)。したがって、商標権者は、請求人が引用商標1ないし3を有していること及び請求人使用商標が請求人商品を表示するものとして、遅くとも平成13年7月ころには、とりわけ、関東一円において需要者の間に広く認識されていたことを十分に知っていたものである。そして、商標権者は、請求人使用商標の使用等により獲得した請求人の信用にただ乗りし、請求人使用商標の顕著性を希釈又は汚染するような使用をしている。
また、本件商標は、請求人使用商標と類似の商標である。
商標権者は、上記(1)のとおり、その有する商標権者登録商標が法第51条第1項の規定により登録が取り消されたにもかかわらず、本件商標の使用をしているのであるから、不正の目的をもって使用するものである。
(7)法第8条第1項該当性
ア 請求人は、別掲(4)のとおりの構成からなり、第30類「あめ,あられ,あんころ,おこし,かりんとう,ぎゅうひ,汁粉,ぜんざい,せんべい,もなか,ようかん,マシュマロ,ラスク,もちを使用したワッフル,パン,バンズ,菓子及びパン」を指定商品として、平成20年11月18日に登録出願した商願2008-96831に係る商標(なお、当該商標登録出願は、商標登録第5375666号として、平成22年12月10日に設定登録された。以下「引用商標7」という。)を有している。
イ 本件商標と引用商標7とは、「彩・国・七・福・神」の文字から構成される外観上類似の商標である。また、「彩・国・七・福・神」の文字からなるとの観念において類似し、かつ、「サイノクニシチフクジン」、「サイクニシチフクジン」及び「シチフクジン」の各称呼において類似する。
さらに、本件商標の指定商品は、引用商標7の指定商品と同一のものである。
ウ 引用商標7は、本件商標の先願に係る登録出願であり、また、その出願人は、本件審判の請求人である。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第70号証(枝番号を含む。)を提出した(なお、乙号証のいずれについても、その枝番号の全てを引用する場合には、以下、該枝番号の記載を省略する。)。
1 法第4条第1項第7号について
請求人の本件商標が法第4条第1項第7号に該当するとする主張は、明定されている法の解釈を逸脱し、特に限定列挙されている無効理由を全く無視するものであるから(乙第1号証)、到底容認できない。
すなわち、本件商標の登録出願の時点では、商標権者登録商標の商標権は存続していた。本件商標は、従前からの請求人との争いを回避するために新たに出願されたものであり、引用商標1ないし4等の登録商標とは非類似の商標として適正に登録されたものであって、法第4条第1甲第7号には該当せず、また、後発的に同号に該当するものでもない(乙第1号証ないし乙第3号証)。
2 法第4条第1項第10号について
(1)本件商標と請求人使用商標が非類似であること
そもそも、請求人使用商標は、識別力がないか又は極めて乏しい商標であって、類似範囲も限定される。したがって、請求人使用商標は、本件商標とは非類似である。また、以下のとおり、請求人使用商標の周知性は認められないから、その類似範囲を殊更広げる理由もない。
(2)請求人使用商標の周知性について
請求人使用商標の周知性立証のために請求人が提出した証拠は、いずれも周知性を立証するには程遠いものである。請求人がした件外の登録商標に対する異議事件(異議2007-900510)の決定(乙第10号証)においても、平成20年7月時点における「七福神」、「七福神あられ」等の商標の周知性は否定されている。
してみれば、請求人使用商標が、少なくとも群馬県という地域を超えて、全国的なレベルはもちろん、関東地方の他都県においてすら、取引者・需要者の間に広く知られているものとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本件商標は、法第4条第1項第10号に該当しないものである。
3 法第4条第1項第11号について
(1)本件商標の一体性について
ア 本件商標は、同書・同大・同間隔に文字を配し、かつ、同色で一体的なデザインをもって構成された商標であるから、その一部を敢えて抽出して観察すべき理由はない(乙第12号証ないし乙第14号証参照)。そして、以下のとおり、「七福神」の文字部分には識別性がないか又は極めて乏しく、「七福神」の語が地名と結び付いて認識されやすい特殊な語であることに鑑みれば、本件商標は、一体となって自他商品識別力を発揮する商標である。
イ 一般的に、七福神とは、福徳をもたらす神として広く信仰されている七体の神のことをいい、縁起物としての起源も古く(乙第41号証)、江戸時代以降、七福神を祀った社寺の巡拝が全国各地に成立した(乙第42号証)。その結果、現在では、全国各地に七福神を祀る社寺が約400箇所あり、地域ごとの各神を祀った7箇所の七福神を巡拝する七福神巡りが行われている(乙第43号証)。このような、七福神巡りという全国的な習慣があるため、一般的に、「七福神」という文字は地名と結び付いて認識されやすく、商品の出所識別標識として機能する際にも、地名と結び付いて独自の出所識別力を発揮することが多い(乙第15号証)。
ウ 請求人は、「彩の国」の語の部分は、埼玉県を意味する地理的表示として使用されているものであって独立して商品の識別標識とはならない旨主張する。
「彩の国」の語は、多彩な魅力を持つ県等の意味を込めて、埼玉県が愛称として採用したものであって、客観的に地名を指す意味しか持たない語ではない。すなわち、「彩の国」の語をせんべいに使用した場合、多彩な味や食感が楽しめるせんべい等といった特定のイメージを商品に与え、自他商品を識別する指標となる機能をも発揮する。県の愛称として用いられる語が商標登録されている例は複数存在する(乙第44号証ないし乙第46号証)。したがって、本件商標の構成中の「彩の国」の部分も、自他商品識別機能を有するというべきである。この点は、過去の審判決例からも明らかである(乙第47号証ないし乙第49号証)。
(2)引用商標1ないし6について
ア 引用商標1ないし6中の「七福神」の語は、極めて識別性に乏しい語であり、請求人以外にも「七福神」の文字を含む商標は多数並存登録されている。
したがって、「七福神」の語は、単独では、「菓子及びせんべい」等の商品について、その出所を識別する機能を果たし得ない。
イ 「七福神」の語は、幅広い分野の商品に縁起物、贈答品としても多数用いられており、例えば、「せんべい・あられ」等が属する第30類及び「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が属する第35類において、過去に登録され又は現在登録されている「七福神」の文字を含む登録商標は合計124件(存続期間満了等により失効しているものを含む。)に上っている(乙第15号証)。なお、第30類以外の分野を含めれば、過去に登録され又は現在登録されている「七福神」の文字を含む登録商標は合計258件(存続期間満了等により失効しているものを含む。)に上る(乙第16号証)。これらの登録商標は、「七福神」の語によって識別されているのではなく、専らこれに結合された地名等の語によって相互に識別されている(乙第10号証)。さらに、「七福神」の文字を含む標章が用いられている商品は、インターネット上で検索できる「菓子及びパン」に限っても、多数販売されている(乙第17号証ないし乙第40号証)。
ウ 以上の状況からすれば、「七福神」の文字は、商品等の出所を識別する標章として用いるものとしては極めてありふれたものとなっており、自他商品識別力がないか又は極めて弱いものである。
(3)本件商標と引用商標1ないし6とが非類似であることについて
ア 本件商標
本件商標は、上記(1)のとおり、一体的な商標であるから、これより「サイノクニシチフクジン」の称呼が生じ、「福徳をもたらす神として埼玉県で信仰されている七体の神」の観念を生じる。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は、「七福神」と横書きにしてなるから、これより「シチフクジン」の称呼が生じ、「福徳をもたらす神として全国各地で広く信仰されている七体の神」の観念が生じる。
(イ)引用商標2は、外周に七福神のイラストを配し、その中の円周内に沿った上部に、丸みを帯びた漢字の「七福神」の語、下部に平仮名の「あられ」の語を配してなるから、これより「シチフクジン」又はその文字部分全体から「シチフクジンアラレ」の称呼が生じ、イラストと相俟って、「福徳をもたらす七体の神」又は「福徳をもたらす七福神のように目出度いあられ」程度の観念が生じる。
(ウ)引用商標3は、引用商標2から七福神のイラストを除外した商標であるから、これより「シチフクジン」又は「シチフクジンアラレ」の称呼が生じ、「福徳をもたらす七体の神」又は「福徳をもたらす七福神のように目出度いあられ」程度の観念が生じる。
(エ)引用商標4は、「七福神あられ」と縦書きにしてなるから、これより「シチフクジン」又は「シチフクジンアラレ」の称呼が生じ、「福徳をもたらす七体の神」又は「福徳をもたらす七福神のように目出度いあられ」程度の観念が生じる。
(オ)引用商標5は、「七福神おかき」と縦書きにしてなるから、これより「シチフクジン」又は「シチフクジンオカキ」の称呼が生じ、「福徳をもたらす七体の神」又は「福徳をもたらす七福神のように目出度いおかき」程度の観念が生じる。
(カ)引用商標6は、「七福神せんべい」と縦書きにしてなるから、これより「シチフクジン」又は「シチフクジンセンベイ」の称呼が生じ、「福徳をもたらす七体の神」又は「福徳をもたらす七福神のように目出度いせんべい」程度の観念が生じる。
ウ そうすると、本件商標と引用商標1ないし6とは、外観、称呼及び観念のいずれもが異なる非類似の商標と判断されるべきである。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第11号に該当しない。
4 法第4条第1項第15号について
(1)法第4条第1項第15号の適用には、引用する商標の全国的な周知又は著名性が要求される(乙第50号証及び乙第51号証)ところ、請求人使用商標は、前記2のとおり、同項第10号にいう周知性すら獲得していない。また、請求人使用商標は、前記3のとおり、識別性がないか又は極めて乏しいものであり、独創性がない。
加えて、請求人が「ファミリーマーク」の一種と主張する商標は、ハウスマークではない。ハウスマークは、一般的には「社章」をいう(乙第53号証)ところ、請求人の社章は、「株式会社幸煎餅」であって、「七福神」ではない。
さらに、請求人は、「せんべい造り百年」を標榜する米菓専業企業であり、社名も「株式会社幸煎餅」であって、いわゆる総合食品メーカーのような業態とはいえず、法第4条第1項第15号の「多角経営の可能性」の要件にも合致しない。
(2)以上のとおり、請求人使用商標が使用される商品と本件商標の指定商品が抵触することを考慮しても、本件商標は、法第4条第1項第15号に該当しない。
5 法第4条第1項第16号について
第4条第1項第16号にいう「誤認を生じるおそれのある商標」とは、「商標を構成する文字・図形がその指定商品又は役務と不実の関係にあるため、需要者に商標の使用に係る商品が商標に表示された商品又は役務のごとく錯誤に陥れるおそれのあるものをいう」(乙第54号証)。本件商標が法第4条第1項第16号に該当するとする請求人の主張は、同号の問題とは関係がないものである。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第16号に該当しない。
6 法第4条第1項第19号について
上記のとおり、請求人使用商標は、そもそも日本国内で全国的に周知となっていない。また、本件商標は、請求人使用商標とは非類似である。かかる非類似商標が、「不正の目的をもって登録した」と主張するのであれば、請求人は、その理由を明確にすべきである。
7 法第8条第1項について
(1)本件商標と引用商標7との類否
ア 外観
本件商標と引用商標7とは、その構成態様が異なるので、外観上類似しない。
イ 称呼
引用商標7は、その構成文字から「サイコク」又は「シチフクジン」の称呼を生じるが、本件商標からは、「サイノクニシチフクジン」のみの称呼が生じる。したがって、本件商標と引用商標7とは、称呼上非類似である。
ウ 観念
引用商標7の構成中の「彩国」の語は、成語ではないから特定の観念は生じない一方、その構成中の「七福神」の語からは、「福徳をもたらす七体の神」の観念を生じる。
他方、本件商標からは、「福徳をもたらす神として埼玉県で信仰されている七体の神」の観念を生じる。
したがって、本件商標と引用商標7とは、観念的にも識別ができる非類似の商標である。
(2)以上によれば、本件商標と引用商標7とは非類似であるから、本件商標は、法第8条第1項にも該当しない。
8 むすび
以上のとおり、本件商標は、法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号並びに法第8条第1項のいずれにも該当せず、請求人の主張は、いずれも失当である。

第4 当審の判断
1 本件商標の法第8条第1項該当性について
(1)本件商標の登録出願が引用商標7の後願であることについては、当事者間に争いがない。そこで、まず、本件商標と引用商標7の類否について検討する。
ア 本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、「彩の国七福神」の文字を横書きしてなるものであるところ、該文字は、その文字全体が赤で着色され、かつ、毛筆風の独特な書体をもって一連に書されているものであるから、外観上一体のものとして看取されるばかりでなく、これから生ずると認められる「サイノクニシチフクジン」の称呼も、「サイノクニ」と「シチフクジン」とに分断しなければ称呼し得ないというものではなく、よどみなく称呼し得る程度のものといえる。さらに、本件商標の構成中の「彩の国」の文字部分は、「埼玉県の愛称」として一般の需要者の間によく知られているものであり、また、「七福神」の文字部分も、「七柱の福徳の神。大黒天・蛭子(えびす)・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋」を意味するものとして、一般の需要者の間に広く認識されているものである。そして、「七福神詣で」(新年に七福神の社寺を巡拝して福徳を祈ること。出典「広辞苑第六版」)の言葉があるように、全国各地に七福神を祀った社寺が存在することは、乙第43号証(「比佐麻呂の七福神日記」と称するブログ記事)からも明らかであり、また、「埼玉 七福神めぐり」なる書籍(2003年12月1日、幹書房発行:乙第42号証)も市場に出回っていることが認められる。そうすると、本件商標は、その構成全体をもって、「彩の国(埼玉県)にある七福神」なる観念を表したものと理解されるとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、外観、称呼及び観念上一体不可分の商標を表したものとして把握されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応する「サイノクニシチフクジン」の一連の称呼のみを生ずるものであって、「彩の国(埼玉県)にある七福神」の観念を生ずるものということができる。
イ 引用商標7
引用商標7は、別掲(4)のとおり、「彩国」の文字を縦書きにし、その左に、該「彩国」の文字より1文字下にずらして、「七福神」の文字を縦書きにしてなるものであるところ、これらの文字は、2行にわたって表されているものであるとはいえ、同一の書体をもって、外観上まとまりよく表されているものであるから、その構成全体をもって一つの商標を表したと認識されるものである。
ところで、「七福神」の語は、上記のとおり、現在では、全国各地に七福神を祀る社寺が多数存在し、地域ごとの各神を祀った7箇所の七福神を巡拝する七福神巡りが全国的に行われている(乙第43号証)実情にあるところからすると、地名と結び付いて使用される場合が多い語であるといえる。
一方、全国各地の地名については、例えば、「一関」、「八戸」、「石巻」、「鴻巣」、「潮岬」、「尾道」、「西宮」、「下関」等のように、これらにそれぞれ振り仮名をしたり、読んだりする場合に、「いちのせき」、「はちのへ」、「いしのまき」、「こうのす」、「しおのみさき」、「おのみち」、「にしのみや」、「しものせき」と、漢字と漢字の間に「の」の文字を入れるものが数多く存在し、このことは、一般の需要者の間に広く認識されているところである。そして、「彩の国」の語が、埼玉県の愛称として一般の需要者の間によく知られている事情を併せ考慮すると、引用商標7に接する需要者は、その構成中の「彩国」の文字部分について、他に親しまれた熟語的意味合いが存在しないところから、埼玉県の愛称である「彩の国」を表したものと理解し、「サイノクニ」と読む場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
そうすると、引用商標7は、その構成文字に相応して、「サイノクニシチフクジン」の称呼をも生ずるものであって、「彩の国(埼玉県)にある七福神」の観念を生ずるものということができる。
ウ 本件商標と引用商標7との対比
(ア)称呼及び観念
上記ア及びイのとおり、本件商標と引用商標7とは、いずれも「サイノクニシチフクジン」の称呼及び「彩の国(埼玉県)にある七福神」の観念を同じくする場合がある、称呼上及び観念上類似する商標というべきである。
(イ)外観
上記ア及びイのとおり、本件商標は、赤色で表した「彩の国七福神」の文字を横書きしてなるものであるのに対し、引用商標7は、「彩国」の文字と「七福神」の文字とを2行に縦書きにしてなるものである。
そうすると、本件商標と引用商標7とは、その色彩や書体、あるいは、横書きか縦書きかの相違があるとしても、これらの相違は、本件商標と引用商標7との差異を特段印象付けるほどのものではない。そして、本件商標と引用商標7とは、需要者に印象付けられる構成文字において、「の」の平仮名の有無の差異を有するのみであり、他の「彩」、「国」、「七」、「福」及び「神」の漢字をすべて同じくするものであるから、両商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合は、構成文字全体が似通ったものとして印象付けられ、外観上相紛らわしく見誤るおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標7は、外観上類似する商標というべきである。
エ まとめ
以上によれば、本件商標と引用商標7とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても、互いに紛れるおそれがある類似の商標というべきである。
(2)本件商標の指定商品と引用商標7の指定商品の類否
本件商標は、前記第1のとおり、「菓子及びパン」を指定商品とするものである。これに対し、引用商標7は、前記第2中の2(7)アのとおり、「あめ,あられ,あんころ,おこし,かりんとう,ぎゅうひ,汁粉,ぜんざい,せんべい,もなか,ようかん,マシュマロ,ラスク,もちを使用したワッフル,パン,バンズ,菓子及びパン」を指定商品とするものである。
してみると、本件商標の指定商品は、引用商標7の指定商品と同一又は類似の商品というべきものである。
(3)以上によれば、本件商標は、その登録査定の時点(平成21年4月9日)において、法第8条第1項に該当するものであったといわなければならない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、法第8条第1項の規定に違反してされたものと認めることができるから、その余について判断するまでもなく、法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(登録第5226320号商標)

(2)引用商標2(登録第4271574号商標)

(3)引用商標3(登録第4576030号商標)

(4)引用商標7(登録第5375666号商標)


(上記(1)及び(2)に係る商標の色彩については、原本参照のこと。)

審理終結日 2011-08-03 
結審通知日 2011-08-08 
審決日 2011-08-22 
出願番号 商願2008-101695(T2008-101695) 
審決分類 T 1 11・ 4- Z (X30)
最終処分 成立 
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2009-04-24 
登録番号 商標登録第5226320号(T5226320) 
商標の称呼 サイノクニシチフクジン、アヤノクニシチフクジン、サイノクニ、アヤノクニ、シチフクジン 
代理人 佐藤 久美枝 
代理人 上野 さやか 
代理人 佐久間 光夫 
代理人 村田 幸雄 
代理人 関 真也 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 田中 克郎 
代理人 小林 彰治 
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