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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X09 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X09 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X09 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X09 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X09 |
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管理番号 | 1244698 |
審判番号 | 無効2010-890091 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-10-25 |
確定日 | 2011-09-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5191551号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 登録第5191551号商標(以下「本件商標」という。)は、「WebAtom」の欧文字を標準文字としてなり、平成20年6月11日に登録出願、第9類「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品,ポスシステム用端末装置を備えたキャッシュレジスタ,その他のキャッシュレジスタ」を指定商品として、同年11月28日に登録査定、同12月19日に設定登録されたものである。 2 引用商標 被請求人が引用する登録第5241375号商標(以下「引用商標3」という。)は、「INTEL ATOM」の欧文字を標準文字としてなり、平成20年2月26日に登録出願、第9類「コンピュータ,コンピュータハードウエア,半導体,マイクロプロセッサ及びその他の半導体素子,集積回路,コンピュータ用チップセット,コンピュータ用マザーボード・ドーターボード,マイクロコンピュータ,コンピュータ周辺機器,コンピュータソフトウエアをプログラム可能なマイクロプロセッサ,ノートブック型コンピュータ及びラップトップ型コンピュータ,携帯用コンピュータ,手持ち式コンピュータ,タブレット型コンピュータ,ウルトラモバイルコンピュータ,携帯情報端末,インターネットへの無線接続機能・電話機能・音楽機能・電子メール送受信機能・GPS機能・パーソナルコンピュータ機能を備えた携帯情報端末装置,コンピュータソフトウエア,グローバルコンピュータ情報ネットワークへのマルチユーザーアクセスの提供に使用するコンピュータソフトウエア,オペレーティングシステム用コンピュータソフトウエア,コンピュータユーティリティ用コンピュータソフトウエア,コンピュータファームウエア用コンピュータプログラム,電気通信機械器具,無線によるネットワーク通信及び接続のためのコンピュータ及び電気通信ネットワーキング用コンピュータソフトウエア,無線式モデム及び通信カード,携帯電話機,携帯用ビデオプレーヤー,業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲームおもちゃ,自動車用ナビゲーション装置」を指定商品として、同21年6月26日に設定登録されたものである。 同じく、登録第5256646号商標(以下「引用商標4」という。)は、「インテル アトム」の文字を標準文字としてなり、平成20年3月3日に登録出願、第9類「コンピュータ,コンピュータハードウエア,半導体,マイクロプロセッサ及びその他の半導体素子,集積回路,コンピュータ用チップセット,コンピュータ用マザーボード・ドーターボード,マイクロコンピュータ,コンピュータ周辺機器,コンピュータソフトウエアをプログラム可能なマイクロプロセッサ,ノートブック型コンピュータ及びラップトップ型コンピュータ,携帯用コンピュータ,手持ち式コンピュータ,タブレット型コンピュータ,ウルトラモバイルコンピュータ,携帯情報端末,インターネットへの無線接続機能・電話機能・音楽機能・電子メール送受信機能・GPS機能・パーソナルコンピュータ機能を備えた携帯情報端末装置,コンピュータソフトウエア,グローバルコンピュータ情報ネットワークへのマルチユーザーアクセスの提供に使用するコンピュータソフトウエア,オペレーティングシステム用コンピュータソフトウエア,コンピュータユーティリティ用コンピュータソフトウエア,コンピュータファームウエア用コンピュータプログラム,無線によるネットワーク通信及び接続のためのコンピュータ及び電気通信ネットワーキング用コンピュータソフトウエア,無線式モデム及び通信カード,携帯電話機,携帯用ビデオプレーヤー,業務用テレビゲーム機,自動車用ナビゲーション装置,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM」を指定商品として、平成21年8月14日に設定登録されたものである。 また、被請求人は、別掲(1)に示す商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲(2)に示す商標(以下「引用商標2」という。)を引用している。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第70号証(枝番を含む。)を提出した。 (1)請求の根拠 本件商標は、以下の理由及び証拠(甲第1号証ないし同第70号証)より明らかなとおり、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号、同第19号又は同第7号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。 (2)利害関係 請求人は、世界的に広く知られている半導体メーカーであり、その所有に係る引用商標は、請求人の取り扱いに係る商品の出所識別標識として継続使用されており、本件商標の登録出願時には既に請求人の商品を表示するものとして周知著名であった。 本件商標は、請求人の商品の出所表示として周知・著名な引用商標を構成する「Atom」の文字と同じ綴りの文字「Atom」を含み、かつ、請求人が実際に取り扱う商品と同一又は類似若しくは密接に関連する商品を指定商品に含むものであるから、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある。また、本件商標は、引用商標の世界的な名声、顧客吸引力に便乗するものであり、少なくとも、請求人と無関係の被請求人が本件商標を使用すれば、請求人の周知・著名な商標の出所表示力が希釈化され、請求人に精神的及び経済的な損害を与えることが明らかである。 したがって、請求人は、本件審判請求について利害関係を有する。 (3)無効とすべき理由 ア 請求人会社の沿革及び名声 (ア)請求人「Intel Corporation」(インテル・コーポレーション)は、1968年(昭和43年)7月18日にアメリカ合衆国カリフォルニア州で創業された世界最大の半導体製品メーカーである。請求人の日本での本格的な営業活動は、1971年(昭和46年)10月開設の「インテルコーポレーション日本支社」(東京都渋谷区)により開始され、1976年(昭和51年)4月28日には「インテルジャパン株式会社」(東京都世田谷区)として法人登記され、その後、つくば本社(茨城県つくば市東光台)及び東京本社(東京都千代田区丸の内)が設置された。同社は1997年(平成9年)に「インテル株式会社」と名称変更して現在に至る(甲第9号証)。 半導体業界における請求人の名声は、1970年(昭和45年)に世界初のICメモリ(商用DRAM)「1103」を、また、1971(昭和46年)年に世界初のマイクロプロセッサ「4004」を開発したことに始まり、これ以後、現在に至るまで、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ向けのプロセッサでは、「8008」、「8086」、「286」、「INTEL 386」、「INTEL 486」、「Pentium」、「Pentium II」、「Celeron」、「Pentium III」、「Pentium 4」といったように、数年毎に先進技術のマイクロプロセッサを開発、製品化し(甲第6号証)、マイクロプロセッサの世界市場の約80%を占めている(甲第7号証、甲第42号証)。 請求人の世界半導体市場の売上ランキングは、1989年(平成元年)の8位、1990年(平成2年)の5位、1991年(平成3年)の3位に続き、1992年(平成4年)に1位を獲得して以降、2009年(平成20年)まで18年連続して世界第1位を維持している(甲第8号証、甲第9号証、甲第68号証)。 請求人のハウスマーク「INTEL」のブランド評価額は、既に1993年(平成5年)の時点で178億1,000万米ドル(全米第3位)と推定されていた(甲第65号証)が、その後も上昇を続け、英国のブランド評価コンサルティング会社インターブランド(Interbrand)社が行った2003年(平成15年)度評価では、311億1,000万米ドル、世界第5位(甲第66号証の1)、2004年(平成16年)度評価では、334億9,900万米ドル、世界第5位にランキングされていた(甲第66号証の2)。インターブランド社による最新の評価でも、2009年(平成21年)は、306億3,600万米ドル、世界第9位にランキングされている(甲第66号証の3)。 (イ)1990年(平成2年)末から1991年(平成3年)初頭、請求人は、その商号商標「INTEL」を冒頭に冠した「INTEL INSIDE」の文字及び甲第67号証に示すとおりの構成からなる「intel inside」の文字からなるロゴマークを商標として採択し、膨大な広告費用を投じて、「intel/inside」のロゴマークと「インテル、入ってる」のキャッチコピーを用いたテレビコマーシャルを含む広告宣伝活動を展開すると共に、当該商標に関して「インテル・インサイド・プログラム」(INTEL INSIDE PROGRAM)と命名した斬新な商標使用許諾制度を導入した(甲第10号証)。インテル・インサイド・プログラムは、「intel inside」のロゴマークと「Pentium」等の請求人の個別商品の名称を、請求人のマイクロプロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ等の商品を製造販売するOEMメーカーに使用許諾し、当該商品の広告宣伝活動を請求人が経済的に支援するものである。このインテル・インサイド・プログラムに基づいて、「intel inside」のロゴマークが、請求人のマイクロプロセッサを搭載したライセンシーの製造販売に係るコンピュータ製品等にステッカーとして貼付され、また当該製品のパンフレット、広告記事、テレビコマーシャル等の広告宣伝活動に使用された。例えば、日本国内では、日本電気、松下電器産業(現パナソニック)、日立製作所、シャープ、三菱電機、東芝、ソニー、富士通、日本IBM、セイコーエプソン、デルコンピュータといった日本を代表する大手電機・コンピュータメーカー等に請求人の商標が使用許諾され、これらのライセンシーが製造販売するコンピュータ関連の商品及びその広告活動に広く使用されるに至った(甲第11号証ないし甲第38号証)。 請求人の主要商品であるマイクロプロセッサ等の半導体製品は、これによって制御される最終製品(例えば、パソコン、携帯電話、情報通信機器、デジタル腕時計、電子レンジ、エアコン、自動車、ロケット等とその用途は極めて多様である。)の中に主要部品として内蔵されるものであるため、最終製品の購買者である一般消費者は外部から見ることができないものである。しかし、上記インテル・インサイド・プログラムを用いたマーケティング戦略により、請求人のプロセッサを搭載したパソコン等の最終製品を外部から認識することができるようになり、他社のプロセッサを搭載した最終製品から容易に識別することが可能となった。これにより請求人は、他社のプロセッサを搭載した最終製品(パソコン)から自社のプロセッサを搭載した最終製品(パソコン)を差別化することに成功すると同時に、請求人の商号商標「INTEL」が、家庭の一般消費者の目に触れる機会が増大し、コンピュータ関連製品を取り扱う取引者のみならず、一般の消費者の間における請求人の知名度は大きく上昇した(甲第39号証、甲第40号証)。 加えて、1994年(平成6年)頃から急速に浸透した職場環境におけるパソコン一人一台時代の到来(甲第41号証)、一般家庭へのパソコンの普及、インターネット等情報通信技術産業の発展と相侯って、請求人は、半導体・コンピュータ関連の取引者、需要者のみならず、業種を越えて、一般の消費者を含む広範囲の需要者の間でも広く知られるように至っている。 イ 商標法第4条第1項第10号について 本件商標は、本件商標の出願日の時点並びに登録査定の時点において、請求人の業務にかかる商品、即ち、マイクロプロセッサを表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品と同一又は類似する商品について使用するものである。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する商標であり、登録を無効とすべき理由がある。以下、その理由を詳述する。 (ア)称呼の類似?自然称呼の認定 (a)本件商標は、標準文字をもって「WebAtom」と表示する構成態様からなる商標であるところ、「WebAtom」の文字全体から「ウェブアトム」なる称呼を生ずる商標である。そして、本件商標の後半部分は、請求人の商品出所識別標識として広く認識されている引用商標1及び2の構成文字「Atom」と同じ綴りからなる「Atom」の文字を含み、その称呼に「アトム」の音を含むものである。 一方、本件商標の語頭の「W」の文字と4文字目の「A」の文字が大文字で書され、他の文字が小文字で書されていることから、本件商標を構成する「Web」と「Atom」の語は外観上分離して看取されるものである。 更に、本件商標を構成する「Web」の表示はワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)の意味を表わす語として広く使用されている表示であるため(甲第50号証)、本件商標の指定商品のうち、コンピュータネットワークとの関連性を有する「ポスシステム用端末装置、電子応用機械器具用ディスプレイ装置、その他の電子応用機械具及びその部品」との関係において、自他商品の識別機能を有しないか極めて弱い表示というべきものである。 よって、本件商標に接した需要者・取引者は、本件商標の構成中「Web」の部分を商品の用途・品質等を表わす部分と認識し、「Atom」の部分を商品の出所を表示する部分として着目し、「ウェブ」の称呼を省略し、「アトム」なる称呼をも認識し、記憶するものである。 特に、簡易迅速を尊ぶ商取引において、本件商標が付された商品に接する需要者・取引者は本件商標の表示から「ウェブ」の称呼を省略し、「アトム」の称呼を認識し取引にあたることが十分に想定されるものである。 以上の分析から、本件商標は「ウェブアトム」のみならず、「アトム」なる自然称呼も生ずるとみることが妥当である。 (b)引用商標1は、略矩形の図形の内側に、「intel」の文字を略楕円の図形で囲んだ表示を上部に配し、「Atom」の文字を下部に配し、「inside」の文字を「Atom」の文字の右下方に配した構成態様からなるところ、構成文字全体から「インテルアトムインサイド」なる自然称呼を生ずる商標である。 一方、「intel」、「Atom」及び「inside」の構成文字は、互いに段違いに表されているばかりでなく、「intel」の文字が略楕円の図形で囲まれていること、「Atom」の文字が比較的大きく表されていること、「inside」の文字が極めて小さく表されていること、並びに、「intel」、「Atom」及び「inside」の各構成文字の背景の色彩が白色、灰色、青色と互いに異なることから、外観上、「Atom」の文字は「intel」及び「inside」の文字と分離して看取され得るものである。更に、「intel」及び「inside」を構成文字とする商標「intel/inside」は、上記で述べたとおり、請求人の業務に係る半導体製品等の商標として我が国及び海外において広く知られていることから、「intel」及び「inside」の文字から「インテル製の」若しくは「インテル社の提供する」等の意味を観念し得るものであるのに対し、「Atom」の表示からは「原子」の意味を観念し得るものである。よって、「intel」及び「inside」の文字と「Atom」の文字は語義においても分離して把握され得るものである。更に、標章全体から生じる「インテルアトムインサイド」の称呼は極めて冗長と言うべきものである。 よって、引用商標1に接した需要者・取引者は、引用商標1を外観及び語義において一体の表示としては認識せず、「intel inside」の表示と「Atom」の表示からなるものと認識するところ、引用商標1はインテル製の若しくはインテル社の提供する「Atom」なる商品を表す表示との認識に立ち、「インテル」及び「インサイド」の称呼を省略し、「アトム」なる称呼をも認識するものである。 特に、簡易迅速を尊ぶ商取引において、引用商標1が付された商品に接する需要者・取引者は引用商標1の表示から「インテル」及び「インサイド」の称呼を省略し、「アトム」の称呼を認識し取引にあたることが十分に想定されるものである。 実際に、家電量販店のチラシやインターネットの記事の見出し等において、引用商標1を使用したマイクロプロセッサについて、「ATOM」又は「アトム」と表示している事実が見られることからも(甲第47号証、甲第48号証)、引用商標1が付された商品は需要者・取引者に「アトム」の称呼をもって認識され取り引きされていると考えられる。 以上の分析から、引用商標1は「インテルアトムインサイド」及び「アトム」なる自然称呼が生ずると考えることが妥当である。 (c)引用商標2は、同書同大からなる片仮名文字「インテル」、英文字「Atom」及び片仮名文字「プロセッサー」を一連の横書きで表示し、「インテル」の片仮名文字の右に登録商標であることを表わす「○R(○の中にR記号、以下「[R]」という。)」の記号を配し、「Atom」の英文字の右上に商標であることを表わす「TM」の記号を小さく配した構成態様からなるところ、「インテルアトムプロセッサー」の自然称呼が生ずる商標である。 一方、引用商標2を構成する「プロセッサー」の文字は、引用商標2が使用される商品であるマイクロプロセッサを表わす語であるから(甲第49号証)、自他商品の識別機能を欠く語とするのが相当である。そして、「インテル」と「Atom」の文字は、片仮名文字と英文字という文字の種類の相違に加え、「[R]」の記号と「TM」の記号がそれぞれの語尾に付されていることにより、外観上分離して看取され得るものである。また、「Atom」の文字からなる部分は「原子」の意味を観念し得るのに対し、「インテル」の文字からなる部分は、上記で述べたとおり、請求人の商号及び商標として我が国及び海外において周知・著名であり、我が国で防護標章登録を受けている標章「INTEL」(甲第51号証)の文字をカタカナ表記したものであることから、「インテル製の」若しくは「インテル社の提供する」等の意味を観念し得るものである。よって、「インテル」の文字部分と「Atom」の文字部分は語義においても分離して把握され得るものである。更に、標章全体から生じる「インテルアトムプロセッサー」の称呼は極めて冗長と言うべきものである。 よって、引用商標2に接した需要者・取引者は、「プロセッサー」の文字部分を商品の出所表示としては認識せず、また、「インテル」と「Atom」の文字部分を外観及び語義において一体の表示としては認識せず、「インテル」の表示と「Atom」の表示からなるものと認識するところ、引用商標2はインテル製の若しくはインテル社の提供する「Atom」なる商品を表す表示との認識に立ち、「インテル」及び「プロセッサー」の称呼を省略し、「アトム」なる称呼をも認識するものである。 特に、簡易迅速を尊ぶ商取引において、引用商標2が付された商品に接する需要者・取引者は引用商標2の表示から「インテル」及び「プロセッサー」の称呼を省略し、「アトム」の称呼を認識し取引にあたることが十分に想定されるものである。 実際に、家電量販店のチラシやインターネットの記事の見出し等において、引用商標2を使用したマイクロプロセッサについて、「ATOM」又は「アトム」と表示している事実が見られることからも(甲第47号証、甲第48号証)、引用商標2が付された商品は需要者・取引者に「アトム」の称呼をもって認識され取り引きされていると考えられる。 以上の分析から、引用商標2は「インテルアトムプロセッサー」及び「アトム」なる自然称呼が生ずると考えることが妥当である。 (イ)称呼の類似 そこで、以下、本件商標の自然称呼「ウェブアトム」及び「アトム」と引用商標1及び2の自然称呼「インテルアトムインサイド」、「アトム」及び「インテルアトムプロセッサー」について、その称呼の類否を検討する。 まず、本件商標の自然称呼「アトム」と引用商標1及び2の自然称呼「アトム」は、比較検討するまでもなく同一の称呼である。 そして、これまで述べた理由から、本件商標に接した需要者・取引者が実際の商取引において、自然称呼「アトム」を用いることが十分に想定されるものであり、引用商標1及び2から需要者・取引者が実際の商取引において用いる称呼は、自然称呼「アトム」と想定されるものである。 よって、本件商標の自然称呼は引用商標の自然称呼と類似であるから、本件商標と引用商標とは類似する商標であると認定することが相当である。 (ウ)商品について 本件商標の指定商品は、第9類の「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品,ポスシステム用端末装置を備えたキャッシュレジスタ,その他のキャッシュレジスタ」である。 一方、引用商標1及び2が使用される商品は、マイクロプロセッサである。 特許庁の類似商品・役務審査基準及び審査実務によれば、本件商標の指定商品中「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品」は、引用商標1及び2が使用されているマイクロプロセッサと類似の商品である(甲第52号証、甲第53号証の1、甲第53号証の2)。 よって、本件商標の指定商品は、引用商標が使用される商品と類似の商品である。 (エ)引用商標の使用開始時期、使用期間及び使用対象商品 引用商標1は、米国時間2008年(平成20年)3月2日に請求人の開発製造するマイクロプロセッサの名称として全世界で発表され(甲第54号証)、2009年(平成21年)からは甲第55号証の態様のデザインに変更されて現在に至るまで継続してマイクロプロセッサに使用されている(甲第54号証の2、甲第56号証)。 引用商標2は、2008年(平成20年)3月3日に請求人の開発製造するマイクロプロセッサの名称として日本で発表され(甲第57号証)、現在に至るまで継続してマイクロプロセッサに使用されている(甲第56号証)。 そして、引用商標1及び2は、ネットブック(超小型、軽量、安価なノートパソコンの中で、インターネットや電子メールの利用に必要な、最低限の性能・機能を有するものの総称)及びネットトップ(小型で安価なデスクトップコンピューターの中で、インターネットや電子メールの利用に必要な、最低限の性能・機能を有するものの総称)向けに特化した請求人の開発製造する最小のプロセッサの名称として使用されているものである(甲第58号証)。 (オ)引用商標の使用地域 引用商標1は、全世界において、マイクロプロセッサについて使用されている(甲第54号証、甲第56号証ないし甲第58号証)。 引用商標2は、日本において、マイクロプロセッサについて使用されている(甲第54号証の1、甲第56号証ないし甲第58号証)。 また、請求人は、引用商標を使用した商品の販売促進のため、展示会への出展などによる宣伝活動に力を入れている(甲第59号証)。 更に、請求人は、ホームページ等においても引用商標1及び2を使用した広告宣伝を行っている(甲第56号証ないし甲第58号証)。 (カ)売り上げ規模 引用商標1及び2を使用したマイクロプロセッサの全世界の総売上は、2008年(平成20年)第3四半期は約2億米ドル(約188億円)、2008年(平成20年)第4四半期は3億米ドル(約282億円)に及び、2009年(平成21年)第1四半期は2億1,900万ドル(約205億8,600万円)となっている(甲第61号証)。 (キ)引用商標の周知性 引用商標1及び2は、マイクロプロセッサについて、我が国を初め、世界の広い地域において使用されている商標であることは明らかであり、請求人の業務に係る商品、即ち、マイクロプロセッサを表示するものとして、世界中の需要者・取引者の間に広く認識されている商標である。 そして、引用商標1及び2は、請求人の製造・販売する最小のプロセッサーであることから、2008年(平成20年)3月に発表されて以後、全世界から注目を集め、瞬く間に需要者・取引者に広く知られるに至ったものである。 また、富士通、NEC、ソニー等の我が国の主要なパソコン製造業者並びにデル、ヒューレット・パッカード、エイサー等の海外の主要なパソコン製造業者のほとんどが引用商標1及び2を使用したマイクロプロセッサを搭載したネットブック等の小型パーソナルコンピュータを製造販売しており、その製品に引用商標1を付すとともに、これらパソコン製造業者のホームページ、製品カタログ等において引用商標1又は2を表示して自社製品の宣伝広告をしていることからも、引用商標1及び2が広く知られていることは明らかである(甲第62号証、甲第63号証)。 更に、引用商標1及び2を使用した商品が多数のホームページにおいて取り上げられ掲載されていることは、引用商標1及び2の周知性を裏付けるものである(甲第48号証、甲第59号証、甲第64号証)。 よって、本件商標は、指定商品「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品」に関して、本件商標の出願日の時点並びに登録査定の時点において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者・取引者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品に類似する商品について使用する商標であるから、商標法第4条第1項第10号に該当し、登録を無効とすべき理由がある。 また、かかる周知な引用商標に類似する本件商標について、引用商標の使用される商品であるマイクロプロセッサに類似する商品について登録を認めることは、需要者・取引者に誤認混同を生じさせるおそれがあることは異論を待たず、火を見るより明らかであり妥当でない。かかる観点からも、本件商標は指定商品「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品」について登録されるべきでなく、その登録は無効とするのが妥当である。 ウ 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、本件商標の出願日前の商標登録出願に係る引用商標3及び4に類似する商標であって、引用商標3及び4に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。以下、本件商標と引用商標3及び4との類否について検討する。 (ア)称呼の類否?自然称呼の認定 (a)本件商標は、標準文字をもって「WebAtom」と表示する構成態様からなる商標である。そして、上記イ(ア)にて述べたとおり、本件商標は「ウェブアトム」及び「アトム」なる自然称呼が生ずると考えることが妥当である。 (b)引用商標3は、標準文字をもって「INTEL ATOM」と表示する構成態様からなる商標であり、その構成態様から「インテルアトム」なる自然称呼が生ずる商標である。 一方、引用商標3を構成する「ATOM」の文字部分は、「原子」の意味を観念し得るのに対し、「INTEL」の文字部分は、上述したとおり、請求人の商号及び商標として我が国及び海外において周知・著名であり、我が国で防護標章登録を受けている標章「INTEL」(甲第51号証)と同一の表示からなるものであることから、「インテル製の」若しくは「インテル社の提供する」等の意味を観念し得るものである。 かかる場合、引用商標3に接する需要者・取引者は構成中の「INTEL」の文字はその生産または販売主体を表す役割を果たす部分(代表的出所標識)として認識し、以て全体として「インテル製の『ATOM』印(じるし)」又は「インテル社の取扱いに係る『ATOM』印(じるし)」の如く、「ATOM」の文字部分をその個別的商標(個別商品毎のいわゆる個別商標)と認識し把握されるとみるのが相当である。 そして、取引の場において、需要者・取引者は数ある同種商品中より特定商品を選択購入するに際し、その代表的出所表示部分を除いた、個別的商標をもって簡便に取引に資することは、しばしば見受けられるところであるから、単に「アトム」の称呼をもって取引に資する場合も決して少なくないと想定されるものである。 以上の分析から、引用商標3は、その構成全体に相応して「インテルアトム」の一連称呼を生ずるほか、単に「アトム」の称呼も生ずるとすることが妥当である。 (c)引用商標4は、標準文字をもって「インテルアトム」と表示する構成態様からなる商標であり、その構成態様から「インテルアトム」なる自然称呼が生ずる商標である。 一方、引用商標4を構成する「アトム」の文字部分は、「原子」の意味を観念し得るのに対し、「インテル」の文字部分は、請求人の商号及び商標として我が国及び海外において周知・著名であり、我が国で防護標章登録を受けている標章「INTEL」(甲第51号証)のカタカナ表記であることから、「インテル製の」若しくは「インテル社の提供する」等の意味を観念し得るものである。 かかる場合、引用商標4に接する需要者・取引者は構成中の「インテル」の文字はその生産または販売主体を表す役割を果たす部分(代表的出所標識)として認識し、以て全体として「インテル製の『アトム』印(じるし)」又は「インテル社の取扱いに係る『アトム』印(じるし)」の如く、「アトム」の文字部分をその個別的商標(個別商品毎のいわゆる個別商標)と認識し把握されるとみるのが相当である。 そして、取引の場において、需要者・取引者は数ある同種商品中より特定商品を選択購入するに際し、その代表的出所表示部分を除いた、個別的商標をもって簡便に取引に資することは、しばしば見受けられるところであるから、単に「アトム」の称呼をもって取引に資する場合も決して少なくないと想定されるものである。 以上の分析から、引用商標4は引用商標3と同様、その構成全体に相応して「インテルアトム」の一連称呼を生ずるほか、単に「アトム」の称呼も生ずるとすることが妥当である。 (イ)称呼の類否 そこで、以下、本件商標の自然称呼「ウェブアトム」及び「アトム」と引用商標3及び4の自然称呼「インテルアトム」及び「アトム」についてその称呼の類否を検討する。 まず、本件商標の自然称呼「アトム」と引用商標3及び4の自然称呼「アトム」は比較検討するまでもなく同一の称呼である。 よって、本件商標の自然称呼は引用商標3及び4の自然称呼と同一であるから、本件商標と引用商標3及び4とは類似する商標であると認定することが相当である。 (ウ)指定商品の類似 本件商標の指定商品は、第9類の「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品,ポスシステム用端末装置を備えたキャッシュレジスタ,その他のキャッシュレジスタ」である。 一方、引用商標3及び4の指定商品は「コンピュータ,コンピュータハードウェア,マイクロプロセッサ及びその他の半導体素子,コンピュータ周辺機器」等を含んでいる。 特許庁の類似商品・役務審査基準及び審査実務によれば、本件商標の指定商品中「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品」は、引用商標3及び4の指定商品「コンピュータ,コンピュータハードウェア,マイクロプロセッサ及びその他の半導体素子,コンピュータ周辺機器」等と類似の商品である(甲第52号証、甲第53号証)。 よって、本件商標の指定商品「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品」は引用商標3及び4の指定商品と同一又は類似の商品である。 (エ)以上より、本件商標と引用商標3及び4とは標章が類似する商標であるとともに、本件商標の指定商品は引用商標3及び4の指定商品と同一又は類似の商品である。よって、本件商標は、引用商標3及び4との関係において商標法第4条第1項第11号に該当する商標であり、指定商品「ポスシステム用端末装置,電子応用機械器具用ディスプレイ装置,その他の電子応用機械具及びその部品」について、登録を無効とするべき理由がある。 エ 商標法第4条第1項第15号について 上述のとおり、引用商標1及び2は、請求人の業務に係る表示、即ちマイクロプロセッサの商標として、広く一般に知られている商標である。そして、本件商標の構成は、需要者に容易に周知・著名な引用商標1及び2を連想させるものである。 また、本件商標の指定商品は、引用商標1及び2が使用されているマイクロプロセッサと密接に関連する商品を含むものである。即ち、引用商標1及び2が使用されているマイクロプロセッサは、コンピュータのみならず、本件商標の指定商品である「ポスシステム用端末装置,ポスシステム用端末装置を備えたキャッシュレジスタ」にも使用されるものである(甲第69号証、甲第70号証)。このように、本件商標の指定商品は、引用商標1及び2が使用されている商品と同一又は類似若しくは密接な関連性を有する商品を含むものである。 よって、本件商標をその指定商品に使用したときには、当該商品が請求人の商品に係るものであると誤信されるおそれがあるのみならず、当該商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係等にある者の業務に係る商品であると誤信されるおそれ(いわゆる「広義の混同を生ずるおそれ」)があるものである。 商標法第4条第1項第15号に規定されている「混同を生ずるおそれ」の判断基準については、平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件の判決において述べられている(甲第43号証)。 本件商標に対して請求人が提出した登録異議申立事件(異議2009-900118)の異議決定は、本件商標は「一体的に看取し得るもの」であるから、外観、称呼及び観念のいずれにおいても引用商標と非類似のものと認定し、引用商標の著名性の程度、請求人(申立人)が取り扱う商品と本件指定商品との関連性の程度等を考慮することなく、商標が類似しないから出所混同のおそれは無いと認定したが、上記判決に示された商標法第4条第1項第15号の規定適用の判断基準に照らせば、かかる異議決定が充分な審理を尽くしてなされたものとは到底言えないものであるのみならず、その結論においても不当なものである。 仮に「WebAtom」の文字が「一体的に看取し得るもの」であるとしても、構成中の「Atom」の文字部分は請求人の商品の出所表示として世界的な著名性を有するものである。本件商標の構成文字「WebAtom」の取引者、需要者における認識の程度が引用商標の著名性に遠く及ばないことは明らかであり、本件商標に接する取引者、需要者は、構成中の「Atom」の文字部分に強く印象付けられ、請求人の著名な引用商標を想起連想するとみるべきである。 この点に関して、登録第4382255号商標「金盃菊正宗」の登録を商標法第4条第1項第15号に該当するものとして取消した特許庁の異議決定を支持した平成13年(行ケ)第494号商標登録取消決定取消請求事件の判決(甲第44号証)がある。 特許庁における近年の審決等においても、構成中に他人の著名商標を含む商標であって、当該著名商標に相当する部分が既成の語の一部になっていないものについては、商標法第4条第1項第15号に該当するという認定判断がなされている(甲第46号証)。 本件商標と引用商標1及び2の類似性の程度、引用商標1及び2の周知著名性及び独創性の程度、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との関連性の程度に照らし、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標が請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあることは明白である。 よって、本件商標は、出願日の時点並びに登録査定の時点において、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、登録を無効とするべき理由がある。 オ 商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、出願日の時点並びに登録査定の時点において、請求人の業務にかかる商品、即ち、マイクロプロセッサを表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものである。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する商標であり、登録を無効とするべき理由がある。以下、その理由を詳述する。 (ア)引用商標の周知性 引用商標1及び2が、本件商標の出願時には既に日本及び海外において、請求人の業務に係る商品であるマイクロプロセッサを表示するものとして広く認識されていたことは、上述「イ」においてすでに述べたとおりである。 (イ)商標の類似 そして、本件商標と引用商標1及び2とは、上述の「イ」において述べたとおり、称呼が類似するため互いに類似する商標である。 (ウ)不正の目的 本件商標の「Atom」の文字部分は、「原子」等の意味を観念し得る語であるが、本件指定商品の分野で使用される必然性のない語であり、商標権者が自ら考案し引用商標に偶然と一致した商標とは想定し難い。そして、請求人が提供する商品と類似若しくは密接な関連性を有する指定商品を取り扱う被請求人が、本件商標の登録出願時に、請求人の業務に係るマイクロプロセッサの名称として日本国内及び外国で広く知られている引用商標1及び2について不知であったとは到底考えられない。むしろ、引用商標1及び2に依拠し採択されたものと推認せざるを得ないものである。よって、本件商標は、引用商標1及び2に化体した信用にただ乗りして採択されたものと考えられ、本件商標の使用により引用商標1及び2の出所表示機能を希釈化しその名声を毀損させるおそれがある、すなわち、不正の目的があると推認し得るものである。 本件商標は、周知・著名な引用商標1及び2と同様、「Atom」の文字を含むものであり、一般の消費者は、本件商標の「Atom」の表示から、引用商標1及び2と出所を同じくする、若しくは引用商標1及び2を使用したマイクロプロセッサを搭載していると認識するものと考えられるから、本件商標を付したポスシステム用端末装置、電子応用機械器具用ディスプレイ装置等に接した場合、周知・著名な引用商標1及び2を使用した商品と異なる印象を受けることにより、戸惑いや不信を抱くことが懸念される。即ち、本件商標の使用は、引用商標1及び2の有する自他商品識別力を希釈化(ダイリューション)し、また、その名声を汚染(ポリューション)するものである。 したがって、本件商標は、引用商標の有する価値や名声、評判、若しくは、信用を毀損させるものであり、請求人に損害を加えるものであるから、不正の目的があると推認し得るものである。 (エ)以上より、本件商標は、出願日の時点並びに登録査定の時点において、請求人の業務にかかる商品、即ち、マイクロプロセッサを表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当し、登録を無効とするべき理由がある。 カ 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、請求人の業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあるのみならず、請求人の商標の著名性にフリーライドしようとする不正の目的の下に、商標登録出願をしたものであることは、前述のとおりであり、引用商標の出所表示機能を毀損、希釈化し、その経済的な価値を低下させ、請求人に精神的及び経済的な損害を及ぼすおそれのあるものである。 被請求人のこのような行為は、社会一般の道徳観念に反し、また、公正な競業秩序の維持を旨とする正常な取引慣行に違反するものであり、更には国際信義に反するものである。 よって、本件商標は公の秩序又は善良な風俗を害するおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録を無効とするべき理由がある。 3 被請求人の主張 被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証(枝番を含む。)及び参考資料1ないし5を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号及び第11号該当の主張に対して 請求人は、本件商標について、これを構成する「Web」と「Atom」の語は、外観上分離して看取され、これに接する需要者・取引者は、「Web」の部分を商品の用途・品質等を表す部分と認識し、「Atom」の部分を商品の出所を表示する部分として着目し、「ウェブ」の称呼が省略され、「アトム」なる称呼をも認識し、記憶される旨の主張をしている。 しかし、本件商標「WebAtom」の文字は、これを構成する欧文字7文字が字間隔を有することなく、同一書体で一体不可分に連綴されてなり(乙第1号証)、たとえ、その文字中に「W」と「A」という大文字が配置されたことでの差異があるとしても、この程度の差異をもって、「Web」と「Atom」に分離して把握されるとする必然性に乏しいものである。 さらに、「Web」の文字は、インターネット用語の「ハイパーテキストシステムの略称・Web」に相当するものであったとしても、これが直ちに、本件商標の指定商品の品質等を表示するものである旨を理解し、認識するものではなく、また、該文字が特定の商品の品質等を表示するものとして実際に使用されている事実は見出せない。 次に、「Web」の文字に結合されている「Atom」の文字は、「原子」の語意を表す(参考資料4)ものとする既成語であって、他の多くの指定商品にも使用されているものであるから、「Atom」部分のみに着目して、該部分が商品の出所識別機能を有するとした請求人の判断は誤りである。例えば、他の区分の登録商標として、第2150582号(第1類)、第2523429号(第6類)、第1948987号(第9類)、第1635475号(第10類)の他に、多数ある。 したがって、本件商標は、上記両文字が結合されたとしても、格別に特定の語意を生じるものではなく「ウェブアトム」という簡潔な称呼(6音)を生じる不可分一体の造語商標として理解され、認識されるものである。 請求人は、引用商標1ないし4と本件商標とが類似商標である旨を種々述べている。 しかし、その主張は、本件商標より、「アトム」の称呼をも生ずることを前提とする結論であるが、そのような結論にいたる具体的根拠は明確ではない。単に、「十分に想定される」旨を述べているにすぎない。 本件商標は、「ウェブアトム」と一連に称呼され、「アトム」のごとく略称されるものではないことは、前記の理由からみて明らかである。 仮に、本件商標及び引用各商標が「アトム」と称呼されるものであるとしたときには、これらの商標より先願商標である「アトム」の文字よりなり、その指定商品中に第9類「電子応用機械器具及びその部品」(類似群:11C01)を包含する、登録第1799340号商標(乙第2号証の1)が存在する。 そうすると、本件商標はもちろん引用商標も、その登録が拒絶されるものであるが、ともに併存登録されているものである。 同様に、インターネット関連商品を含む電子応用機械器具については、その品質表示語として理解される「NET・ネット」の文字を語尾に結合されている「ATOMNET」「アトムネット」の文字よりなり、第9類「電子応用機械器具及びその部品」(類似群:11C01)を包含する登録第4122206号商標(乙第2号証の2)が併存登録されている。 そうであるとすれば、本件商標は、これより、「Atom」の文字部分のみが分離抽出して把握されるべきものではなく、その構成文字全体をもって、自他商品の出所識別機能を果たすものであって、これが「ウェブアトム」の一連の称呼をもって、取引に資せられるものと判断することが相当である。 さらに、本件商標は、商標権者「株式会社寺岡精工」(乙第3号証及び乙第4号証)が、その指定商品「ポスシステム用端末装置」の範疇であるところの「POSシステム(POSシステム用機械器具)(参考資料3)に使用しているところ、その製品カタログ(乙第5号証の1及び2)において、「WebAtom」の文字の下に「ウェブアトム」の文字を併記している。 したがって、本件商標は、その使用時においても「アトム」と略称されるものではない。 引用商標1においては、「intel」の文字を上部に配し、「Atom」の文字を下部に配し、「inside」の文字を「Atom」の文字の右下方に配した構成態様からなるところ、「intel」及び「inside」の文字と「Atom」の文字は語義においても分離して把握され得るものである、としている。 引用商標2においては、片仮名文字で「インテル」、英文字「Atom」及び片仮名文字で「プロセッサー」を一連に横書きで表示されているが、「プロセッサー」の文字は、請求人の業務に係る商品「マイクロプロセッサ」を表す語であるから、自他商品の識別機能はないものであり、「インテル」と「Atom」の文字は片仮名文字と英文字という文字種類が異なることから、分離して把握され得る、としている。 また、引用商標3においては、標準文字で「INTEL ATOM」とする構成であり、引用商標4においては、標準文字で「インテルアトム」とする構成であるから、それぞれの構成態様に相応し、「インテルアトム」とする称呼が生ずるものであるが、請求人は「アトム」の称呼も生ずるとしている。 しかし、引用各商標の周知性を個別にみると、「Intel」は、「マザーブランド」とよばれていて(甲第39号証)、その他の構成文字(Core、Xeon、Pentinum、Celeron、Atom)とは、あたかも、親子のごとく不可分一体に結合され使用されている(甲第6号証ないし甲第42号証、同第56号証の1ないし同第59号証、同第61号証の1ないし3、同第62号証の1ないし8、同第64号証の1ないし4)ものであって、「Atom」の文字が単独の出所識別標識として機能していたものとはいい難いものである。 なお、ビックカメラ・ケーズデンキ等の大型量販店の宣伝用ちらしにおいて、「TOSHIBA」その他のパソコン製品メーカーによる製品紹介欄の左端に製品に組み込まれたマイクロプロセッサ部品と思しき名称が「Atom N280」のごとく記載されている。しかし、該表示は、商品「マイクロプロセッサ」の出所識別標識として表示されているものではなく、商品「パソコン」の取引者・需要者に、該パソコンの具有する機能・構成材料を表示したものと認識させるにとどまるとみるのが相当である(甲第47号証の1ないし3)。 また、パソコン関係の業界ニュースの一部に、パソコンに組み込まれたマイクロプロセッサの性能比較記事、もしくは、パソコンの新機種に関する紹介記事が掲載され、これに「Atom」の名称を見いだせる(甲第48号証の1ないし同第48号証の5)ところ、これら名称の表示は、商品「マイクロプロセッサ」の出所識別標識として表示されているものではなく、商品「パソコン」の取引者・需要者に、該パソコンの具有する機能(比較)を認識させるにとどまるとみるのが相当である。 さらに、パソコン製品メーカー各社の製品紹介カタログ中に「Atom」の名称を見いだせるところ、これら名称の表示は、商品「マイクロプロセッサ」の出所識別標識として表示されているものではなく、商品「パソコン」の取引者・需要者に、該パソコンの具有する構成部品として、「マイクロプロセッサ」の種別を認識させるにとどまるとみるのが相当である(甲第63号証の1ないし5)。 なお、数件の判決等(甲第43号証ないし同第46号証)を引用しているが、本件商標とは事実関係を異にし、論点も異なるので、証拠として採用できないものである。その他の証拠については、本件事案の審理に直接の影響はないものといえる。 以上述べたとおり、本件商標は「ウェブアトム」の一連の称呼のみを生ずるものであるから、引用商標1ないし4とは、その称呼を異にし、相紛れるおそれはなく、その構成態様も相違するから、外観及び観念においても相紛れるおそれはないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当の主張に対して 本件商標と引用商標1ないし4とは、前記のとおり、商標自体が異なり、相紛れるおそれのない非類似商標であり、その構成文字の「Atom」は、「原子」を意味する既成語として親しまれていること、引用各商標の構成中の「Atom」、「ATOM」及び「アトム」自体が単独で、本件商標の出願前に請求人の使用商品を表示する商標として、需要者間に広く認識されるに至っていたとまでは認めがたいので、本件商標中の「Atom」の文字をもって、本件商標と引用各商標とを殊更に関連付けて看取されるものではないとみるのが相当である。 してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても該商品の需要者が引用各商標を想起・連想して請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤認するものとは認められないから、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標とはいえないと判断することが妥当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第19号該当の主張に対して 本件商標は、引用各商標と、十分に判別し得る別異の商標であるから、請求人の業務に係る商品に使用する引用各商標の出所識別機能を希釈化させたり、その名声を毀損させるなどの不正目的をもって出願されたものではない。このことは、本件商標の命名の経緯から見ても明らかである(参考資料5)。本件商標権者は、POSシステム、POSレジスター、POSターミナル等を事業内容(乙第4号証ないし同第5号証の2)とし、本件商標の使用時においては、製品カタログに記載のように「WebAtom」の文字の下部に「ウェブアトム」の片仮名文字を併記し、その称呼を特定しているもの(乙第5号証の1、2)であって、引用各商標の出所識別機能を希釈化させたり、その名声を毀損させるおそれを生じさせるものではない。 (4)商標法第4条第1項第7号該当の主張に対して 本件商標は、商標の構成自体がきょう劇・卑わい・差別的・他人に不快な印象を与えるものではなく、その指定商品に使用することが社会公共の利益や一般的道徳観念に反するものでもなく、他の法律により使用が禁止されているものでもなく、特定の国又はその国民を侮辱するものでもなく、殊更に国際信義に反するものでもないことは、本件商標の構成文字と指定商品との関係その他、取引の実情に照らしてみれば、商標法第4条第1項第7号に該当しないことが明らかなものである。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 本件商標は、「WebAtom」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成態様は、「W」と「A」が大文字であり、その余は小文字で表されており、「Web」と「Atom」とを間隔を開けずに結合してなると認識し得るものである。そして、「Web」は、「ワールド ワイド ウェブ(インターネット上で提供されるハイパーテキストシステム)」を意味する語であり(甲第50号証)、また、「Atom(アトム)」は、「原子」を意味する語として知られるものである(参考資料4及び「広辞苑第六版」参照)。 しかして、上記の両文字は間隔を置かずに一連で一体的に表されている上、各文字が上記意味合いを有するものであるとしても、いずれかにおいて、主従の関係や軽重の差を認めるべき格別の理由はないから、本件商標は、その構成中の「Atom」部分に限定し、当該文字部分に相応した称呼や観念をもって取引に資されるものとは認められない。当該構成文字は、特定の観念を生じさせない一連の造語として看取されるというのが相当であり、また、構成文字全体に相応した称呼「ウェブアトム」も一気に称呼し得るものである。 したがって、本件商標は、「ウェブアトム」の一連の称呼のみを生ずるものであり、単に「アトム」の称呼は生じないというべきである。 イ 引用商標3及び4 引用商標3は、その構成文字に相応して「インテルアトム」の称呼を生じるものである。また、「INTEL」「インテル」が請求人を表示するものとして広く知られた標章であることから、引用商標3が、INTEL(インテル)社の「ATOM」印の如く把握されて、「インテル」の称呼を生じるとともに、「ATOM」に相応して、単に「アトム」の称呼をも生じ得るものといえる。 引用商標4は、前記引用商標3と同様の理由で、「インテルアトム」、「インテル」及び「アトム」の称呼を生じるものと認められる。 ウ 商標の類否について 本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標の称呼「ウェブアトム」と、引用商標3及び4から生ずる「インテルアトム」の称呼、「インテル」の称呼及び「アトム」の称呼とは、それぞれ構成音数で相違し、相違する各音の音質の差異によって、判然と区別し得るものである。 しかして、本件商標と引用商標3及び4とは、上記の称呼において相紛れるおそれはないものであり、また、本件商標は、前記のとおり、「ウェブアトム」の一連の称呼のみを生じるものであり、単に「アトム」の称呼を生じるものではないから、「アトム」の称呼を共通にするとは認められないものである。 さらに、本件商標と引用商標3及び4とは、外観構成において明らかな相違を有しており、外観上相紛れるおそれはないものであり、また、観念については比較することができないから、観念上相紛れるおそれはない。 したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標3及び4に類似する商標と判断することはできないものである。 エ 本号該当性について 本件商標は、引用商標3及び4に類似する商標ではないから、指定商品の類否について論及するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第10号について ア 引用商標の周知性について 引用商標1及び2は、別掲に示すとおりの構成からなるものである。 そして、請求人提出の証拠によれば、本件商標の出願日前のものとして、下記の(ア)ないし(ケ)が認められる。 (ア)請求人は、自社のホームページで、平成20年(2008年)3月3日に、請求人に係る新開発のマイクロプロセッサ(MPU)として、「インテル Atom プロセッサー」をプレス発表した(甲第57号証、甲第60号証ほか)。 (イ)2008年5月23日の日経ネットには、「ウィルコム、Atom搭載『WILLCOM D4』の発売を7月中旬に延期」とする記事が掲載された(甲第48号証の1)。 (ウ)「WIRED VISION BLOGS」には、2008年3月5日として、「松下電器、1kgを切る『Atom』採用ウルトラモバイルPC」とする記事が掲載された(甲第48号証の2)。 (エ)日経BPには、2008年6月4日として、「『Atom』を搭載したマザーボードに関して、CeleronやCore2などと性能等の比較を行った旨」の記事が掲載された(甲第48号証の3)。 (オ)2008年5月15日更新の日経ネットのホームページ上に、14日から16日まで東京ビッグサイトで開催された「開発技術展(ESEC)」に関連して、「インテルが大きなブースを設け、・・・『Atomプラットフォーム』を採用する各社の試作品を多数展示している。」との記事が掲載された(甲第59号証)。 (カ)ウィルコムは、2008年3月3日に、「CPU『インテル Atom プロセッサー』を搭載する新しい機器の開発」についてのプレス発表をした(甲第64号証の1)。 (キ)2008年4月2日のJAPAN・CNETに、「インテルが、上海で開催された開発者会議でワイヤレス機器向け超省電力チップ『Atom』を発表した。」との記事が掲載された(甲第64号証の2)。 (ク)株式会社PFUは、2008年5月13日のホームページ上で、「インテル Atom プロセッサ搭載のシステムオンモジュールAM105販売開始」との記事を掲載した(甲第64号証の3)。 (ケ)2008年6月7日、WATCH Impressのホームページに、「超低消費電力CPU『Atom』を初めて搭載したマザーボードが、Intelから発売された。」との記事が掲載された(甲第64号証の4)。 しかし、上記は、マイクロプロセッサ(MPU)「インテル Atom プロセッサー」の請求人発表に関連した記事か、同プロセッサーを搭載する機器に関する他企業の記事であって、その掲載もかなり限定的なものであり、また、本件商標の出願日前までに、前記のほか、引用商標1及び2あるいは標章「Atom」について、具体的にどのような宣伝広告を行ったか等の事実を示す証拠はみいだせない。さらに、2008年10月14日の米国での請求人発表によれば、上記プロセッサと関連チップセットの売上高が、約2億ドルであったとしている(甲第61号証の1)が、本件商標の出願日までの我が国における販売実績等は不明というしかない。 ところで、請求人は、集積回路の開発、製造及び販売の事業を行う企業として、昭和43年に米国で設立された会社であり、昭和46年に世界初のマイクロプロセッサ(MPU)を発売し、その後もMPUの開発を続け、次々に製造販売した。その間、売上高も半導体製造分野において1位となり、パソコン用MPUのシェア80%を占めるなど、世界的規模で事業展開している。しかして、請求人の略称である「INTEL」「Intel」や「インテル」は、本件商標の出願時には、取引者・需要者の間で広く知られ著名なものとなっていたと認められるものである(甲第6号証ないし同第42号証、甲第60号証ほか)。 してみると、引用商標1及び2は、請求人を表す標章あるいは同人の業務に係るマイクロプロセッサ(MPU)の商標として、取引者・需要者の間に深く浸透した「Intel」や「インテル」部分をもって殊に強く印象され、記憶されるというのが相当というべきである。 しかしながら、請求人に係るマイクロプロセッサ「Atom」の発表から僅か3月後の本件商標の出願時に、引用商標の構成中にあって、標章「Atom」が、請求人の業務に係るマイクロプロセッサ(MPU)の商標として取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたとまで認めることはできないものであり、これを覆すに足りる証左はみいだせない。 してみれば、前記事実によって、引用商標1及び2が、本件商標の出願時までに、取引者・需要者の間に周知な商標となっていたとまで認めることはできないというべきである。 イ 商標の類否について 本件商標は、前記(1)のとおり、「ウェブアトム」の一連の称呼のみを生ずるものであり、単に「アトム」の称呼を生ずるものではない。 してみると、引用商標1及び2が、その構成態様に徴して、「アトム」の称呼を生じ得るものであるとしても、両商標が「アトム」の称呼を共通にするとは認められず、また、他に称呼上で相紛れるおそれはないものである。 さらに、本件商標と引用商標1及び2とは、外観構成において明らかな相違を有しており、外観上相紛れるおそれはないものであり、また、観念については比較することができないから、観念上相紛れるおそれはない。 したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標1及び2に類似する商標とは認められない。 ウ 本号該当性について 以上によれば、本件商標は、請求人が周知性を主張する引用商標1及び2と類似する商標とは認められないから、その指定商品と引用商標1及び2が使用されている商品との類否について論及するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当するものということはできない。 (3)商標法第4条第1項第15号について ア 引用商標の周知性について 本件商標の出願時において、引用商標1及び2が取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものといえないことは、前記(2)のとおりであり、また、標章「Atom」自体が取引者・需要者間において広く認識されるに至っていたとも認めることができないものである。 イ 商標間の類似性について 本件商標と引用商標1及び2とが類似の商標と認められないことは、前記のとおりである。また、本件商標の構成中に「Atom」の文字が含まれているけれども、「Atom」の文字は、「原子」を意味する英語として我が国において親しまれた既成の語であり、唯一請求人に由来する文字でないことも明らかなところである。そして、引用商標1及び2の構成文字における標章「Atom」自体が、請求人の商品を表示する商標として取引者・需要者間において広く認識されるに至っていたとは認められないものである。 してみれば、本件商標の構成中に「Atom」の文字が含まれるとの一事をもって両商標が関連あるものとして看取され理解されるとは言い難いものであるから、結局、本件商標と引用商標1及び2とは、別異の出所を表す商標として看取されるといわざるを得ないものである。 ウ 使用される商品間の関連性等 本件商標の指定商品には、引用商標1及び2が使用される商品「マイクロプロセッサ」と同一又は類似する商品が含まれており、その余の指定商品もこれと関連性が高いものということができ、また、需要者を共通にすることが多いものである。 エ 本号該当性について 以上のとおり、本件商標と引用商標1及び2とは、使用される商品間で関連性が高く、また、需要者を共通にすることが多いものではあるけれども、商標間の類似の程度、引用商標1及び2の周知性等を併せ勘案してみると、本件商標の出願時において、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者が、引用商標1及び2を想起し連想して、当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認められず、他人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあったと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、請求人が周知性を主張する引用商標1及び2と同一又は類似する商標に当たらないこと、また、引用商標1及び2の構成中の「Atom」をもって、本件商標の出願時において周知なものとまでは認められないこと、前記のとおりである。 してみれば、本件商標は、引用商標1及び2の有する価値や名声、評判、若しくは、信用を毀損させ、請求人に損害を加える等の不正の目的をもって使用をするものであるとすることはできないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第7号について 本件商標がその構成自体において公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標でないことは、明らかというべきである。 そして、その出願の経緯において著しく社会的相当性を欠くものがあったというような事情等も認められず、その指定商品に使用することが社会公共の利益や一般的道徳観念に反するものでもなく、他の法律により使用が禁止されているものでもない。また、特定の国又はその国民を侮辱するものでもなく、国際信義に反するものとも認められない。 したがって、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標には当らないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (6)まとめ 以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(1) 引用商標1 (色彩については甲第2号証参照) 別掲(2) 引用商標2 |
審理終結日 | 2011-04-14 |
結審通知日 | 2011-04-19 |
審決日 | 2011-05-09 |
出願番号 | 商願2008-45608(T2008-45608) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(X09)
T 1 11・ 271- Y (X09) T 1 11・ 222- Y (X09) T 1 11・ 25- Y (X09) T 1 11・ 22- Y (X09) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
内山 進 前山 るり子 |
登録日 | 2008-12-19 |
登録番号 | 商標登録第5191551号(T5191551) |
商標の称呼 | ウエブアトム、アトム、ウエブ、ダブリュウイイビイ |
代理人 | 中村 知公 |
代理人 | 伊藤 孝太郎 |
代理人 | 特許業務法人 英知国際特許事務所 |
代理人 | 前田 大輔 |