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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X25
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X25
管理番号 1243169 
審判番号 不服2010-15908 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-15 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 商願2009- 38238拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲に示すとおりの構成よりなり、第25類「履物,運動用特殊靴」を指定商品として、平成21年5月25日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、願書に表示されたとおりの構成からなるところ、このような構成は履物にしても運動用特殊靴にしても主に靴の外観や輪郭を理解させる構成である。そうとすると、本願商標は、その指定商品に使用しても、主に靴の外観や輪郭を理解させるにとどまり、商品の形状を表示したものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について
商標法第3条第1項第3号に規定する、「その商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」について商標登録を受けることができないとされた趣旨について、東京高等裁判所の平成16年11月29日判決(平成16年(行ケ)第216号)は、要旨、同号所定の商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(昭和53年(行ツ)第129号、最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決)。そして、本来、商品の形状は、商品の機能をより効果的に発揮させたり、看者に与える美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものである。したがって、商品の形状からなる商標は、その形状が同種の商品の用途、機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものと認められるような場合でない限り、自他商品識別力を欠くものであって、「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」として、登録を受けることができないというべきである旨判示しているところである。
そこで、前記の判示を本件についてみるに、本願商標は、別掲のとおりの構成からなる図形商標であるところ、その図形は、履物における側面図を実線及び破線をもって描き、つま先部分を右にした履物の図形と容易に理解されるものであって、格別な特徴を有する特異な形態といえるものではない。
そして、本願商標の指定商品については、実に多様なデザインが施されて、製造、販売されている実情があることは、請求人も自ら認めているところであり、また、インターネットウェブサイト情報(例えば、「価格.com 定番スニーカー特集」(http://kakaku.com/article/search/sneaker/)からも窺えるものである。
また、小売店の店頭において、履物の側面を顧客の正面側となるように展示していることや、靴の包装(商品を収納する箱)に、その靴の側面図が、靴のサイズ、カラー、品番、商標等とともに付されていることも少なくない。
そうとすると、本願商標を構成する図形は、指定商品である「履物,運動用特殊靴」の用途、機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものとは認められず、指定商品の取引者、需要者は、本願商標を「履物,運動用特殊靴」において採用し得る機能又は美感の範囲内のものであると看取し、「履物,運動用特殊靴」の側面の形状であると認識するにとどまるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、指定商品の形状を普通に用いられる方法で表してなるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標の形状は極めて特徴的であり、靴の形状を普通の方法で描いてなるものとはいえない、また、他の商標登録の事例と比較しても、ありふれているとはいえない旨主張する。
しかしながら、前記(1)で認定したように、本願商標を構成する図形は、靴の側面図であることを、取引者、需要者に看取させるにすぎないものである。
また、商標の具体的な構成態様を異にする商標登録の事例が、本件の審理を左右するものではない上に、本願商標について商標登録を許容するか否については、本願商標の具体的な構成態様と、その指定商品との関係から個別、具体的に判断されるべきものである。
さらに、請求人は、審判請求の理由において「・・・いずれのモデルでも、本件商品の基本形状(すなわち本願商標の形状)は複雑なものではない・・・」、「・・・本願商標は、願書記載のとおり、シューズの側面を4本の線により区分し、上部に靴紐を通す部分の波を打った形状と、下部に肉厚の靴底のギザギザの形状をもって、全体としてシューズの形状を表わしたと理解される標章である。・・・」とも主張しており、結局、請求人も、本願商標は、靴の形状を表したものと理解させるものであって、その形状は複雑なものではない、と認識した主張をなしているのである。
イ 請求人は、本願商標の実施品には、請求人の著名商標であるスウッシュと呼ばれる図形商標(甲1)も付されているが、いわばハウスマークたるスウッシュ商標とともに、本願商標に係るデザインも独自に識別力を発揮している、本願商標が、デザイン(意匠)と看取されることは、商標としての保護を排斥するものではないことは判例が示している旨主張する。
しかしながら、前記(1)で認定したように、本願商標を構成する図形は、靴の側面図であることを、取引者、需要者に看取させるにすぎないものである上に、「スウッシュ」商標が格別、看者の注意を惹き、印象、記憶に残る商標であり、かつ、請求人の代表的な出所識別標識であることを踏まえると、当該「スウッシュ」商標を捨象して、本願商標に係る図形自体が自他商品識別標識としての機能を果たすものであるということはできない。
また、本件の審理においては、本願商標を構成する図形が、意匠であることを理由として、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると判断したものではない。
ウ 請求人は、部分立体商標あるいは位置商標の登録が認められない現行法下において、本願商標を平面的な商標として出願しているのであり、二次元の図形商標として識別力を判断されるべきものであるにもかかわらず、原審が「靴の外観を理解させる」という点を識別力が認められない理由とするのは妥当ではない旨主張する。
しかしながら、本願商標については、我が国商標法に規定する商標登録の要件に基づいて、その登録の許否が判断されるものである。
また、請求人は、原審の説示中の文言を指摘して論難するが、当該文言から直ちに、本願商標が立体的な形状であることが導き出されるものではなく、「靴の外観」との文言を用いて、図形からなる平面的な商標である本願商標を特定したとしても何ら不自然ではない。
エ 請求人は、図形商標が指定商品の形状に見えることが、識別力がないとの理由付けとは必ずしもならないことは、審決例等も示すところである旨主張し、証拠(甲9ないし甲19)を挙げている。
しかしながら、商標の具体的な構成態様を異にする商標についての審決の事例が、本件の審理を左右するものではない上に、本願商標について商標登録を許容するか否については、本願商標の具体的な構成態様と、その指定商品との関係から個別、具体的に判断されるべきものである。
オ 請求人は、本願商標に係る請求人のシューズについての効果的な模倣品対策のため、本願商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されることを防止し、また、希釈化されることを防止するために、本願商標を登録する必要性がある、さらに、本願商標の形状自体の周知性から、本願商標に商標法が保護すべき業務上の信用が化体していることは明らかである、本願商標の保護を否定することは、需要者の利益の保護という商標法のもう一つの目的に反し、流通秩序の維持という商標法の趣旨にもとる結果となる旨主張する。 しかしながら、前記(1)で認定したように、本願商標を構成する図形は、靴の側面図であることを、取引者、需要者に看取させるにすぎないものであるから、自他商品識別標識としての機能を欠くものである。
そうすると、本願商標を構成する図形に自他商品識別標識としての機能を有することを前提とする請求人の主張は、その前提を欠くものである。
また、靴の側面図を理解させるにすぎない本願商標は、取引に際し必要適切な表示として、その使用の機会を当該商品を製造、販売する事業者に開放しておくことが必要であるから、請求人の主張は失当である。
さらに、請求人は、商標法の目的(商標法第1条)などを縷々述べるが、前記に説示したような本願商標について一事業者に商標登録を許容し、当該商標の使用を独占させることこそ商標法の目的とする公益上適切なものということはできない。
カ 請求人は、最高裁判所の判例(昭和53年(行ツ)第129号、最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決)を引用し、請求人は、本願商標を1982年から使用してきものであるから、本願商標がシューズの取引において、「必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲する」ものであり、それ故に「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」に該当するものとはいえない。したがって、本願商標が独占不適応であるとはいえない旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号は、他に同様の商品の形状が存在しないこと、及び他の商品の形状と比較して個性的なものであることを、同号の適用を除外する事由とはしていないのである。その理由は、取引に際し必要適切な表示として特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当とせず、また、多くの場合自他商品識別力を欠くという商品の形状のみからなる商標であるか否かとの判断は、他者の販売する商品の形状と識別しうるか否か、又は現に請求人が販売する商品の形状を表示するものか否かにかかわらず、指定商品の取引者、需要者が、指定商品に使用された本願商標に接した場合、これを当該指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると認識するか否かにより判断されるべきものであるからである。
また、本願商標に係る商品が1982年から製造、販売されてきたとしても、前記オで説示したとおり、本願商標が自他商品識別標識としての機能を果たすものであることを前提とする請求人の主張は当を得ないものである。
キ 請求人は、シューズの機能と直接関係するデザインでなければ、商標と
して特定人に独占させるのが不適当とはいえない旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号は、商品の機能と直接関係しない形状について、その適用を除外する事由としていないことは、同号の条文に照らして明らかであり、その趣旨は前記カで説示したとおりである。
ク 請求人は、知的財産高等裁判所の判決(平成19年(行ケ)第10293号、平成20年6月30日判決)を引用して、靴の需要者は、自己が購入した靴の形状が他の同種商品と識別可能な程度に特徴的であればその特徴的形体を一つの手掛かりにし、次回以降の購入時における商品選択の基準とすることができる旨主張する。
しかしながら、当該判決は、「チョコレート菓子」の取引の実情を踏まえたものであるから、本件において適切なものということはできない。
また、本件において、本願商標の指定商品の取引の実情と当該判決に係る「チョコレート菓子」の取引の実情とを、同一であると認めるに足る的確な証拠はない。
さらに、請求人は「自己が購入したシューズの形状が他の同種商品と識別可能な程度に特徴的であればその特徴的形体を一つの手掛かり」としうると主張しているが、前記カで説示したとおり、他の同種商品の形状と識別しうるとしても、指定商品の取引者、需要者が、当該指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると認識する限り、商標法第3条第1項第3号に該当するといわざるを得ない。
加えて、請求人は、前記ウにおいて、本願商標については、平面的な商標として商標法第3条第1項第3号の解釈を採るべきであると主張するにもかかわらず、立体商標に係る前記の知的財産高等裁判所の判決を引用してその主張を根拠づけようとしているのであって、請求人の主張は、相互に整合性を欠くものといわざるを得ない。
ケ 請求人は、原審の認定について、「本件商品について使用されている表示は『AIR FORCE 1』『エアフォースワン』などであって、本願商標が本件商品の商標として使用されているとみるべきところは見出すことができない、との拒絶査定の認定は、この意味でも誤り」である旨主張する。
しかしながら、本件の審理は、原審の個別の認定の正否について判断するものではなく、本願商標について商標登録を許容しうるか否かについて商標法の登録要件との関係において判断をなすものであるから(平成19年(行ケ)第10209号参照)、請求人の主張は当を得ないものである。
よって、前記の請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
(3)平成23年1月20日付け上申書について
請求人は、平成23年1月20日付けで上申書を提出し、請求の理由を補足するとともに、証拠方法(甲38ないし甲47(枝番号を含む。))を提出した。
ア 請求人は、需要者は本願商標から本件商品を想起することができる旨を再度主張し、証拠を挙げる(甲23、甲38及び甲39)。
しかしながら、請求人の使用に係る商品には、前記(2)イで説示した請求人の代表的な出所識別標識である「スウッシュ」商標のほか「AIR FORCE 1」及び「AIR」の文字商標が付されている上に、請求人が特に主張する「オールホワイトモデル」(甲39)にも「スウッシュ」商標が顕著に付されているところ、前記(1)のとおり、本願商標が靴の側面図と認識されるにすぎないものであることを踏まえるならば、本願商標に係る図形自体が自他商品識別標識としての機能を果たすものであるということはできない。
イ 請求人は、商標登録の事例等を具体的に挙げて(甲11ないし甲19及び甲40)、本願商標も登録されるべき旨再度主張する。
しかしながら、商標登録の事例等により、本件の判断が左右されるものでないことは、前記(2)アで説示したとおりである。
また、請求人は、「立体商標とは異なり、当該商品の典型的な形状に特徴的な変更、装飾等が施されたものは、単にその商品の形状を表示したものとはいえず、当該形状が一般的に使用されているものでなければ識別力が認められる。」とし、本願商標は平面商標としての保護を求めるものであり、図形商標として見た場合には、独占不適応ということはできない旨主張する。
しかしながら、本件の審理に係る商標法第3条第1項第3号の解釈については、前記(1)に挙げた東京高等裁判所の判決が最高裁判所の判例を引用しつつ示したとおりであるところ、前記(1)のとおり、商品の形状のみから構成される本願商標が、同種の商品の用途、機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものと認められないことは明らかであるから、請求人の主張は、その前提を欠くものである。
加えて、請求人は、「当該形状が一般的に使用されているものでなければ識別力が認められる」と主張するが、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であるか否かについては、需要者又は取引者における一般的な認識をもって判断すべきものである(昭和60年(行ツ)第68号、昭和61年1月23日最高裁判所第一小法廷判決参照)から、一般的に使用されている形状でなければ自他商品識別標識としての機能が認められるとの請求人の主張は、理由がないものといわざるを得ない。
ウ 請求人は、本願商標のデザイン上の特徴を挙げ、これらは本願商標に対応する米国商標登録に記載されている(甲41)、また、当該特徴部分については、本願商標の米国における侵害訴訟において、裁判所で認められている特徴である(甲42、甲43)、米国の侵害事件では、本願商標の識別力が認められており(甲44ないし甲46)、我が国においても、模造品の存在(甲36)に鑑み、このような商標登録の有効活用が期待される旨主張する。
しかしながら、米国での登録例、侵害事例については、それらの判断の基準や判断過程及び根拠が明らかではない上に、前記(2)ウで説示したとおり、本願商標の登録の許否は、我が国商標法の登録の要件に基づいて判断すべきであるから、請求人の主張を容れる余地はないものというべきである。
エ 請求人は、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するものではないが、万一、同号に該当すると判断される場合であっても、販売実績(甲38)及び広告(甲23)ほかに示される本件商品の周知性、本願商標を需要者に印象づける広告手法によって、本願商標は使用による識別力を獲得しており、外国における周知性(甲47)も勘案すれば、法3条2項により登録されるべき旨主張する。
そこで、本願商標について商標法第3条第2項を適用しうるか否かを検討する。
ところで、商標法第3条第2項の趣旨については、知的財産高等裁判所の平成18年6月12日判決(平成18年(行ケ)第10054号)において、「特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから,当該商標の登録を認めようというものであると解される。」との判示がなされ、また、その要件としては、「ア 使用により自他商品識別力を有すること 商標登録出願された商標(以下『出願商標』という。)が,商標法3条2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標(以下『使用商標』という。)及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売の数量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる『自他商品識別力(特別顕著性)』の獲得の有無)によって決すべきものである。 イ 出願商標と使用商標の同一性が認められること 商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定人の独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして,登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると,同条項は,厳格に解釈し適用されるべきものである。」との判示がなされているところである。
しかして、前記の判示内容を踏まえ、本願商標に商標法第3条第2項を適用しうるか否かについて検討する。
(ア)請求人が本願の指定商品について使用する(商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号参照)商標(以下「使用商標」という。)は、甲各号証に徴するも本願商標のみからなるものは見当たらず、前記の「スウッシュ」商標、「AIR」の文字商標が請求人に係る商品に顕著に付されており、広告には、「AIR FORCE 1」、「エアフォース1」、「AF1」、「AIR」、「NIKE」及び「ナイキ」の文字商標が広告文に使用されているものであるから、本願商標と使用商標とが同一のものということはできない。
(イ)請求人に係る商品は、甲各号証に徴するも本願商標の指定商品中の「バスケットボールシューズ、スニーカー」にすぎず、その他の本願の指定商品に使用されていることを認めるに足りる証拠は見当たらない。そうとすれば、使用商標に係る商品は、本願の指定商品の一部にすぎないから、同一の商品ということはできない。
(ウ)請求人は、1982年から使用を開始して、2007年に25周年を迎え、長期間にわたり使用していると主張するも、1982年発売の商品の形状は、本願商標に係る図形と相違するものである(甲21の1)上に、1982年から審決時に至る期間の商品の形状については甲各号証から、明らかではなく、1982年以来継続して、本願商標と同一の構成に係る商標が請求人に係る商品に使用されていると認めることはできない。
(エ)請求人は、エアフォース1(AIR FORCE 1)を展示する「1 LOVE」との名称の店舗を東京原宿に発売25周年を記念してオープンしたとするも、当該店舗の開館期間も1年間限定にすぎないものである(甲22)。
(オ)請求人が、本願商標に係る商品の販売数量について(甲38)を提出するも、当該証拠からは、本願商標と同一の構成に係る商標が付された商品が、どの程度の数量及び金額のものが販売されているのか明らかではない上に、その統計の期間も2007年以降にすぎないものである。
(カ)請求人は、本願商標に係る図形を強調した広告をしている旨主張するも、甲各号証には、前記(ア)のとおり、本願商標のみからなるものはもとより、本願商標に係る図形のみを強調するものも見当たらない。そして、前記の「1 LOVE」のインターネットウェブサイトの写し(甲21の2)の2/12ページ下段に、ホワイト一色からなる請求人に係る商品「AIR FORCE 1 07 SUPREME」が単独で展示されている写真があるが、その側面にも「スウッシュ」商標が顕著に付されている。また、「ブランド検索!スニーカーリスト」との見出しのインターネットウェブサイト(甲37)には、「定番メーカー・シリーズ一覧」中に、「スウッシュのマークを見るだけで、誰もが『ナイキだ』とわかるほど、有名な世界的な総合スポーツブランド。」との記述もある。
そうすると、本願商標を構成する図形を強調する広告がなされてきたということはできず、当該図形のみが自他商品識別標識としての機能を果たすものということはできない。
(キ)外国における周知性として請求人が挙げる証拠(甲47)は、請求人による、ヨーロッパ諸国における事情にすぎず、当該事情を我が国の需要者の認識と同列に論じることは、適切ではないというべきである。
(ク)以上のとおり(ア)ないし(キ)を総合考慮するならば、本願商標が使用された結果、審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。
よって、前記、平成23年1月20日付け上申書における請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すべきでない。また、本願商標は商標法第3条第2項の要件を満たすものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審理終結日 2011-02-28 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-25 
出願番号 商願2009-38238(T2009-38238) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X25)
T 1 8・ 17- Z (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 前山 るり子
内田 直樹
代理人 西村 雅子 
代理人 宮永 栄 
代理人 田畑 浩美 

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