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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X2425
管理番号 1239879 
審判番号 不服2010-16420 
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-22 
確定日 2011-06-20 
事件の表示 商願2009-59919拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第24類及び25類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成21年8月6日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同22年2月26日付け手続補正書により、第24類「伸縮性を有する農業用のトンネル栽培・ハウス栽培・育苗用不織布,伸縮性を有する農業用不織布,その他の伸縮性を有する不織布,伸縮性を有する織物,伸縮性を有するメリヤス生地,伸縮性を有するフェルト,伸縮性を有する布製身の回り品,伸縮性を有するかや,伸縮性を有する敷布,伸縮性を有する布団,伸縮性を有する布団カバー,伸縮性を有する布団側,伸縮性を有するまくらカバー,伸縮性を有する毛布,伸縮性を有する織物製壁掛け,伸縮性を有するカーテン,伸縮性を有するテーブル掛け,伸縮性を有するどん帳」及び第25類「伸縮性を有する被服,伸縮性を有するガーター,伸縮性を有する靴下止め,伸縮性を有するズボンつり,伸縮性を有するベルト,伸縮性を有する履物,伸縮性を有する運動用特殊衣服,伸縮性を有する運動用特殊靴」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『Hi-Stretch』の文字と『ハイストレッチ』の文字とを併記してなるところ、織物、織編物などの分野で『ストレッチ』『Stretch』の語は『伸縮性のある』というような意味の語として知られている。また、『high』の語は『程度が高い』というような意味でよく知られているところ、『hi』の語も『ハイ』と読まれて『high』と同じ意味に使われることがある。このようなことから、織物、織編物などの分野で『ハイストレッチ』『Hi-Stretch』という表現は高い伸縮性のある、というような意味の語として理解されうる。そして、新聞記事によれば、「ハイストレッチ」という語はすくなくとも1995年ころから織物の性状を表す語として使用され、その後、ポリエステル中空糸の繊維、芯地、無縫製ニット、野球用ウエアの素材、包装用フィルムなどについての性状を意味する語として使用されている。また、インターネット情報によれば、ハイストレッチ素材を使用した製品として、ロングスパッツ、女物パンツ(ズボン)、ロングタイツ、ハーフタイツ、ミニスカート、タイツ、コットンスーツ、ウェットスーツ、ボクサーパンツ、サイハイブーツ、足首サポーター、スイムウエア、ダッフルコート、アンダーウエア、ジャージー、フィットネス用水着、ダイビング用ウェットスーツ、サルエルパンツ、男性用補整下着等がある。以上を踏まえて考慮すると、「ハイストレッチ」の語は、織物、ポリエステル中空糸の繊維、芯地、無縫製ニット、野球用ウエアの素材、包装用フィルムなどの性状について「高い伸縮性のある」というような意味で使われている。そうすると、本願商標は、「Hi-Stretch」の文字と「ハイストレッチ」の文字とを併記したものであるから、高い伸縮性のある素材を使用した指定商品に使用するときには、「高い伸縮性のある」というような意味を理解させるにとどまり、商品の品質を表示したものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、高い伸縮性のある素材を使用した商品であるかのように商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
本願商標は、別掲のとおり、「Hi-Stretch」の欧文字を上段に、「ハイストレッチ」の片仮名文字を上段の文字部分中「Stretch」の文字部分の幅に合わせて下段に、普通に用いられる方法で表してなるものである。
しかして、本願商標を構成する「Hi-Stretch」の部分(以下「本件欧文字」という。)は、「高度の、高性能の」の意味を有する英語「high」の略語であって、我が国でも同様の意味合いをもって広く親しまれている「Hi」の語と、「伸ばすこと、伸縮性」等の意味を有し我が国で広く親しまれた英語「Stretch」をハイフンを介して連結してなるものである。そうすると、本件欧文字は、各々の文字の有する意味から全体として「高い伸縮性」の意味合いを容易に認識しうるものである。
次に、本願商標を構成する「ハイストレッチ」の文字部分(以下「本件仮名文字」という。)」は、「ハイ」と「ストレッチ」の語から構成されるものであると看取され、当該「ハイ」の語は本件欧文字中の「Hi」(high)と同様の意味合いで複合語をつくるものとして広く親しまれているものであり、当該「ストレッチ」の語は、本件欧文字中の「Stretch」と同様の意味合いを有する上に、本願の指定商品の分野では、伸び縮みする布地を表す語として広く知られ、かつ、例えば、「ストレッチインナー」(伸縮性のある素材を用いた下着)、「ストレッチデニム」(伸縮性のあるデニム)、「ストレッチファブリック」(伸縮性のある織編物)、「ストレッチヤーン」(弾性糸、伸縮糸)といった語も存する(繊研新聞社発行「繊維総合辞典」2002年10月10日初版第1刷参照)ものであるから、本件仮名文字は、各々の文字の有する意味から全体として「高い伸縮性」の意味合いを容易に認識しうるものである。また、原審説示のように、本件仮名文字と同一の構成にかかる「ハイストレッチ」の文字が、前記の意味合いをもって使用されていることが認められるものである(平成22年1月8日付け拒絶理由通知に開示された新聞記事、例えば、2007年12月25日付け化学工業日報4頁「セーレン、スポーツ向け3新素材開発、09年春夏から展開」との見出しの記事「・・・『アクアツイスト』は、ポリエステルでできたハイストレッチ素材(審決注:下線部は審決において付加したものである。以下同じ。)。特殊構造を持つストレッチヤーンを生地内部に配列させ、ポリウレタン混ストレッチ素材と同等レベルの伸縮性を持たせた。・・・」、2005年11月30日付け繊研新聞8面「【アパレルパーツ】 独自技術でロングセラー商品 新開発も相次ぐ」との見出しの記事「・・・三景フェニックスは、ハイストレッチやハイキックバック、しわ回復機能を持たせた高機能芯地を提案する。表生地のストレッチに対応し(従来品より10%アップ)キックバックの良さで風合いを損なわず体にフィットする。ハイキックバックの特性で綿麻など表地のしわ回復性を補う。・・・」、1995年11月2日付け化学工業日報3頁「クラレ、婦人衣料向け高弾性織物を開発」との見出しの記事「クラレはこのほど、弾性糸”スパンテル”を使用し織物が持つ既成のイメージを超えるハイストレッチ織物『ルイーズ』(商品名)を開発、来年度春夏市場の婦人衣料向けに販売する。ポリエステルとの混用に最適な高弾性繊維の特性を生かし、伸度三五%以上のハイストレッチ性や、ドレープ性、身体への弾性などを合わせ持つ。・・・」)。
以上からすると、本願商標を構成する、本件欧文字、本件仮名文字のいずれからも「高い伸縮性」の意味合いを認識するものであって、本件欧文字と本件仮名文字とは、相通ずるものというのが相当である。
してみれば、本願商標を指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、「高い伸縮性」を有する商品であることを認識させるにとどまるものというのが相当であるから、本願商標は、指定商品の品質を直接的に表示するものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。
加えて、本件欧文字、本件仮名文字のいずれも、特異な態様で表されたものということはできず、かつ、それらを二段に併記した本願商標の構成も普通に用いられる方法の域を出ないものというのが相当である。
したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本件欧文字は、「Hi」と「Stretch」とをハイフンで一連に結合した造語であって、いずれの辞書にも記載がないから明確な称呼及び観念はない。そのため、請求人は、本願商標の読みを特定するために片仮名文字を併記した旨を主張する。
しかしながら、本件の争点は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かであって、当該判断は、本願商標が造語であるか否かによって左右されるものではなく、本願商標に接した取引者、需要者の一般の認識がいかなるものであるかにかかるものである(最高裁判所第一小法廷昭和61年1月23日判決、昭和60年(行ツ)第68号参照)。したがって、本願商標から称呼が生ずるか否かあるいはどのように称呼されるべきなのか等ということは、本件においては無用の議論というべきである。
さらに、請求人が本願商標の称呼を特定すべく片仮名文字を併記したというような本願商標の採択の事情が、商標法第3条第1項第3号の適用にかかる本件の判断を左右するものではない。
イ 請求人は、証拠(甲1)には、「ハイストレッチ」および「Hi-stretch」の項目はない。また、原審が開示した使用事例は本件仮名文字に関するもののみであり、その事例には本件欧文字が併記されていない。したがって、当該使用事例にて「ハイストレッチ」が「高い伸縮性のある」という意味で使用されているとしても、本件欧文字が、かかる使用事例の「ハイストレッチ」と称呼及び観念が同一となる唯一の欧文字表記であるとの証左はない。本件仮名文字から伸縮性についての機能を想起することがあるとしても、本願商標のように二段併記の態様が、簡易迅速を旨とする取引の場裡においてそのまま用いられることはあり得ず、普通に用いられる方法での表示でないことは明らかである旨主張する。
しかしながら、特定の辞書に記載がないとしても、前記(1)のとおり、本件欧文字が、本件仮名文字と共通の意味合いを認識させるものであり、かつ、本件欧文字と本件仮名文字とが相通じるものである上に、前記(1)の説示のように実際の使用事例がある以上、当該使用事例をも考慮して、本願商標がその指定商品の品質を表したものと需要者等が一般に認識すると判断することに何ら差し支えはない。
また、本件欧文字は、前記(1)のとおり、それ自体で本件仮名文字と共通の「高い伸縮性」の意味合いを認識させるものであり、現実に使用されている事例がないとしても、需要者等は、本件欧文字を本願の指定商品との関係において、それらの商品が「高い伸縮性」のある商品であることを一般に認識するものというのが相当である。
さらに、本件欧文字も本件仮名文字も前記(1)のとおり、特異な態様で表されたものということはできず、かつ、それらを二段に併記した本願商標の構成も普通に用いられる方法の域を出ないものというのが相当である。
ウ 請求人は、本件欧文字に特定の語意がないから、本願商標は、構成全体として十分に識別力を有する旨主張する。
しかしながら、前記(1)のとおり、本件欧文字は、「高い伸縮性」の意味合いを容易に認識させ、本願の指定商品との関係において、需要者が商品の品質と一般に認識するものであることは、先にイで説示したとおりである。
エ 請求人は、商標登録の事例及び審決の事例を具体的に挙げ、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当しない旨主張する。
しかしながら、商標登録出願にかかる商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かは、当該商標の具体的な構成態様及びその指定商品との関係から個別かつ具体的に判断をすべきものである。したがって、他の商標登録の事例及び審決の事例によって、本件の判断が左右されるものではない。
オ 請求人は、インターネット上で本願商標が使用されている事実はないから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない旨主張する。
しかしながら、上掲判例が判示したとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの本件の判断が、インターネットも含め現実の使用事実の有無によって、左右されるものではない。
よって、前記の請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
(3)むすび
以上からすれば、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審理終結日 2011-04-12 
結審通知日 2011-04-15 
審決日 2011-04-27 
出願番号 商願2009-59919(T2009-59919) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X2425)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内田 直樹
前山 るり子
商標の称呼 ハイストレッチ 
代理人 原田 洋平 
代理人 森本 義弘 

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