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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z30
管理番号 1238453 
審判番号 取消2010-300572 
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-05-25 
確定日 2011-06-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4460739号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4460739号商標(以下「本件商標」という。)は、「信濃の」と「くるみっ子」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成12年3月22日に登録出願、第30類「くるみを用いた菓子及びパン」を指定商品として、同13年3月16日に設定登録されたものである。
また、本件審判の請求の登録日は、平成22年6月14日である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第2条第3項第1号の使用について
被請求人は、商標法第2条第3項第1号の使用として、乙第5号証を示している。
しかしながら、同号証は、本件取消審判請求後の平成22年7月7日に被請求人の商品が存在している事実を示すものにすぎない。
したがって、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたことは、立証されていない。
なお、乙第4号証及び乙第6号証においても、商品写真の提示はあるものの、当該商品の製造日等が立証されていない。

(2)商標法第2条第3項第2号の使用について
商標法第2条第3項第2号の使用については、「展示」の事実自体、答弁書において触れられていない。
被請求人は諏訪市のウェブサイト上にて表示していることをもって「展示」と誤認しているようであるが、当該行為は、同号にいう「引渡しのために展示」する行為に当たらない。

(3)商標法第2条第3項第8号の使用について
ア 被請求人の提示するウェブサイト上での使用は、その主体が「諏訪市」であり、商標権者との間で通常使用権の許諾があった事実は示されておらず、商標法第50条第1項に規定する「使用」に該当しない。

イ また、当該ウェブサイトの中身を見る限り、単に諏訪市のみやげ品が他の企業のものと並んで紹介されているだけにすぎず、仮に「使用」であるとしても、それは、取消しを免れるための形式的なものというよりほかはない。平成4年(行ケ)第144号(甲第2号証)によれば、「単に不使用取消の審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為があっただけでは、改正前商標法第2条第3項第3号にいう商品に関する広告に標章を附して展示又は頒布する行為には該当せず、したがって、同法第50条による不使用取消の審判請求を免れることはできないと解すべき」と判示されている。

ウ また、仮に、乙第4号証における使用の主体が商標権者であるとしても、乙第4号証においては、極めて解像度の低い、パッケージやラベルが十分に視認できない写真が付されているのみであり、商品がいかなるものかも十分に感得することができない。
よって、商品との関係で本件商標が識別標識として機能し得る状態での表示とは、到底いうことができず、商標法第2条第3項第8号の使用とは、認められない。
ちなみに、商標権者のウェブサイトにも当該ページヘのリンクが存在するようだが(甲第3号証)、本弁駁書起案時においてリンク切れしており、適切なメンテナンスが図られていない。
リンクが張られていたとしても、通常使用権の存在を示したことにはならない。

エ なお、乙第4号証における使用の主体は「諏訪市」であるから、乙第6号証は、自己の行為に対する証明にほかならず、その証拠としての真正に強い疑義が生じる。

(4)被請求人は、乙第4号証の「くるみに信州みそをからめたお菓子です」との記載のみを根拠に、被請求人の商品が「くるみを用いた菓子」である旨述べている。
しかしながら、「くるみに信州みそをからめた」食品が商標法上の「菓子」に該当するかという点につき検討するに、特許庁「類似商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕」においても、「乾燥果実」、「ジャム」、「ピーナツバター」、「ひき割りアーモンド」等はいずれも、「加工野菜及び加工果実」の下位概念とされている。
被請求人の商品は、「菓子」ではなく「加工果実」である。
被請求人の商品と同様の商品が多数販売されている事実があるが、例えば、「くるみ加工品」として販売されている例が多数ある(甲第6号証)。
また、くるみは、嗜好品たる「菓子」ではなく、むしろその栄養価の高さから素材そのものが薬にも近い「加工果実」として認識されている(甲第7号証)。
さらに、被請求人自身も自社のウェブサイトにて「当社は業務用の和菓子材料と信州特産のくるみを中心とする健康・自然食品を各種製造販売いたしております。」としており(甲第8号証)、製品紹介や営業品目等を閲覧しても、材料の販売をメインに行っていることがうかがえる(甲第9号証及び甲第10号証)。
なお、当該のウェブサイト上で、被請求人の商品が表示されている事実はない。
このように、被請求人の商品は、「お菓子です」との記載とは異なり、現実には「みそをからめたくるみ」であり、「加工果実」に属するものである。
したがって、この点からも、被請求人は、本件商標の使用を立証していない。
なお、被請求人の商品が真に「くるみ」を使用しているかについても、答弁書全文を参照しても、何ら記載はなく、仮に真に「くるみを使用した菓子」でないのならば、やはり本件商標の指定商品についての使用には、当たらない。

(5)結語
以上述べたように、本件商標の使用を行っているとの被請求人の主張は、主体、客体、時期のいずれか又はすべてにおいて当を失している。
したがって、本件商標の使用は結局のところ立証されておらず、その登録は取り消されるベきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
被請求人は、現在、諏訪市のウェブサイト内の「ヤマヨ食品工業の商品の紹介ページ」(乙第4号証)中において、「信濃のくるみっ子」という名称の商品がくるみを用いた菓子であることを表示するとともに、「信濃の\くるみっ子」を表示したラベルを貼付した当該商品の写真を掲載している。また、当該商品を通信販売する旨の表示も示されている。
乙第5号証は、当該商品の実物を撮影した拡大写真である。
そして、「ヤマヨ食品工業の商品の紹介ページ」(乙第4号証)は、少なくとも平成21年4月1日より同22年7月22日までインターネットを通じて閲覧可能な状態にあった(乙第6号証)。
したがって、上記各証拠によれば、本件商標の指定商品中、「くるみを用いた菓子」の包装に本件商標を付すること(商標法第2条第3項第1号)、上記商品の包装に本件商標を付したものを譲渡若しくは引渡しのために展示すること(商標法第2条第3項第2号)及び当該商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供すること(商標法第2条第3項第8号)により、被請求人が、本件商標を、指定商品について、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、使用をしていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)乙第4号証について
乙第4号証は、諏訪市のウェブサイトの「諏訪市推せんみやげ品」の項の写真であるところ、「推せんみやげ品認定店」として、商標権者の名称、住所等が表示され、「◆ご紹介商品・価格」として、「★信濃のくるみっ子
60g入315円(税込)・・・(中略)・・・くるみに信州みそをからめたお菓子です。」と記載され、「●注文方法」として、「お電話かFAXで TEL 0266-52-1325 or FAX 0266-52-3616」と記載され、「●配達方法」として「商品到着後同封の郵便振替用紙で送金いただきます。」と記載されている。
また、同号証には商品の写真が4つ表示されているところ、右下の商品に貼付されたシールには、「くるみっ子」の文字の記載及び判読はできないものの文字と覚しき表示の記載がなされている。
さらに、同号証には、「最終更新日:2009年3月31日(火曜日)08時38分」と記載されている。

(2)乙第5号証について
乙第5号証は透明な正方形のプラスチック製包装容器に入った商品の写真であり、当該容器に貼付されたシールには「信濃の」と「くるみっ子」の文字が上下二段に書されているところ、当該文字は、本件商標と社会通念上同一であると認めることができる。
そして、当該商品と乙第4号証で「くるみっ子」と表示されている商品とは、包装容器が透明な正方形のプラスチック製であること、貼付されているシールが紫色の楕円輪郭からなるものであること、当該シール内には桃色を背景として黄色で「くるみっ子」と書されていること等の共通点があることから、同一種類の商品であると推認することができる。

(3)乙第6号証について
乙第6号証は、商標権者を名宛人とする、平成22年7月22日付けの諏訪市長の証明書であるところ、「当市が開設している『諏訪市ホームページ』内において、添付のWEBページ(http://www.city.suwa.lg.jp/www/info/detail.jsp?id=2048)がインターネットにより平成21年4月1日以降現在に至るまで閲覧可能な状態にあるとともに、当該WEBページの内容は、平成21年3月31日に更新した後、平成21年4月1日より現在に至るまで変更されていないことを証明します。」と記載され、市長の名前の上に押印がされている。

2 判断
上記1で認定した事実を総合判断すれば、商標権者は、平成21年3月31日から平成22年7月22日の間に、請求に係る指定商品中、「くるみを用いた菓子」の包装に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付する行為(商標法第2条第3項第1号)を行ったものと推認することができる。

3 請求人の主張
(1)請求人は、「被請求人の商品は、『菓子』ではなく『加工果実』である。」旨及び「被請求人の商品が真に『くるみ』を使用しているかについて、答弁書全文を参照しても、何ら記載がない。」旨主張する。
しかしながら、「信濃のくるみっ子」は、「くるみに信州みそをからめたお菓子です。」(乙第4号証)として販売されているのであるから、当該商品は「菓子」であると解するのが自然であり、また、「くるみ」を使用しているというべきである。
したがって、この点についての請求人の主張は、採用しない。

(2)請求人は、「乙第4号証における使用の主体は『諏訪市』であるから、乙第6号証は、自己の行為に対する証明に他ならず、その証拠としての真正に強い疑義が生ずる。」旨主張する。
しかしながら、乙第4号証に表示されている商品の販売は、「諏訪市」ではなく商標権者が行っているのであるから、当該商品の包装に商標を付する行為は、商標権者が行っていると解するのが自然である。
してみれば、請求人の主張は、乙第4号証における使用の主体が「諏訪市」であるとの前提において誤っている。
また、乙第6号証には、何ら不自然な点は見いだせない。
したがって、この点についての請求人の主張は、採用しない。

(3)その外の請求人の主張をもっても、結論を覆すに足りない。

4 むすび
以上のとおり、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品中、「くるみを用いた菓子」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-11-16 
結審通知日 2010-11-18 
審決日 2010-12-22 
出願番号 商願2000-28015(T2000-28015) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小畑 恵一
末武 久佳
登録日 2001-03-16 
登録番号 商標登録第4460739号(T4460739) 
商標の称呼 シナノノクルミッコ、クルミッコ 
代理人 三枝 弘明 

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