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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X41
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X41
管理番号 1238295 
審判番号 不服2009-19500 
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-13 
確定日 2011-05-16 
事件の表示 商願2008- 34460拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成20年5月2日に登録出願、その後、指定役務については、原審における同21年3月4日付け手続補正書により、第41類「孤独感・疎外感・孤立感・喪失感・不安感・恐怖感・寂しさ・挫折感・気持ちの落込み・生活や対人関係上の疲れ等の悩みを有する者(但し精神科による治療を要する者を除く。)に対する対話を通しての精神的な援助に関する知織の教授」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『メンタルケア・スペシャリスト養成講座』と書してなるところ、その構成中の『メンタルケア』の語は、『精神的心の世話』等の意味を、また、『スペシャリスト』の語は、『専門家』の意味をそれぞれ有していますから、全体として『精神的心の世話を行う専門家を養成する講座』の意味合いを表わすものであるから、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、前記第1のとおり、「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」の文字からなるところ、その構成中の「メンタルケア」の文字は、「精神面での援助・介護」を意味(デジタル大辞泉 小学館)する語であり、また、「スペシャリスト」の語は「専門家」を、「養成」は、「養育して成長させること。養い育てること。」を、「講座」は「(ア)大学で、独立の専門領域の研究・教育のために設けるもので、学部・学科を構成する単位。教授・准教授・助教等がおかれる。(ア)に模して行う講習会の称。」(いずれも広辞苑第六版)をそれぞれ意味する語であって、これらの文字を結合したものと容易に認識される本願商標は、それぞれの文字の意味から構成全体として「精神面での援助・介護を行う専門家を養成する講座」程の意味合いを容易に認識されるものとみるのが相当である。
そして、別掲に示すとおり、例えば「メンタルケアアドバイザー養成講座」のように、「メンタルケア」の専門家を養成するための講座が実際に存在することに鑑みると、たとえ、「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」の文字を使用している者が、現在、請求人のみであるとしても、該文字が、「精神面での援助・介護を行う専門家を養成する講座」の意味合いを容易に認識させるものであるから、これを請求人に独占的に使用させることは、本願商標の指定役務を提供する業界において、適切であるとはいえない。
したがって、本願商標をその指定役務に使用しても、単に、提供する役務の質(内容)を表示するにすぎないものであり、自他役務の識別標識としての機能を有さないものであって、かつ、請求人に独占的に使用させることに適さない商標であると認められるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものといわざるを得ない。

2 本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、「本願商標は、商標法第3条第1項第3号に規定する『普通に用いられる方法で表示する』標章のみからなる商標に該当しない。仮に該当すると仮定しても、商標法第3条第2項により商標登録を受けることができる。」旨主張する。
しかしながら、前記1のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
そこで、請求人が主張するように、本願商標が商標法第3条第2項に該当する商標であるか否かについて以下述べる。

(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条は、同条第1項第一号ないし第六号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第3条第1項第3号から第五号までに該当する商標であっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」とされている。
そして、工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行 1173頁)によれば、「本条(商標法第3条)二項は、いわゆる使用による特別顕著性の発生の規定である。前述のように一項各号に掲げる商標は自他商品又は自他役務の識別力がないものとされて商標登録を受けられないのであるが、三号から五号までのものは特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標が、その商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので、このような場合には特別顕著性が発生したと考えて商標登録をしうることにしたのである。」と説明されている。
また、知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)10441号判決(判決日 平成19年3月29日)において、「商標法3条2項は、商標法3条1項3号等に対する例外として、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』は商標登録を受けることができる旨を規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として長期間継続的かつ独占的に使用し、宣伝もしてきたような場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は乏しいということができるから、当該商標の登録を認めるというものであると解される。そして、このような商標法3条2項の趣旨からすると、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるための要件は、1.実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、2.出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること、であると解される。」旨判示されている。

(2)本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
ア 本願商標が、取引者・需要者において請求人の業務に係る役務であるかを認識することができるものであるかについて

(ア)請求人の提出による証拠資料をみると、以下の事実をうかがうことができる。
(a)請求人は、ひきこもりがちな青少年や高齢者、病人や心の励ましを求めている人に対して温かな対話、応対を通じて心の支援を行う「精神対話士」と称する資格を付与する協会であって、本願商標「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」は、「精神対話士」を得るための最初の段階であって、基礎課程、実践課程の受講が義務づけられている(甲第1号証,甲第77号証及び甲第78号証)。
(b)甲第4号証ないし甲第75号証は、新聞記事であるが一部抜粋であるため、新聞の名称、発行日の裏付けはないが、提出されたこれらの証拠から、請求人が、2008年1月頃から2009年10月頃まで、本願商標に関する新聞広告を掲載し、札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、福岡と全国的に「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」を開催したことが推認できる(甲第4号証ないし甲第75号証)。
(c)平成20(2008)年11月2日付け「北陸中日新聞」、平成20(2008)年9月30日付け「北國新聞」、「寺門興隆2009年6月号」第6?7頁、「2011年版資格取り方・選び方オールガイド」第581頁によると、「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」は、請求人が実施する講座である旨記載されている(甲第80号証ないし甲第83号証)。

(イ)総合判断
請求人の提出した証拠資料からすると、請求人は、2008年1月頃から、「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」を札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、福岡と全国的に開催したことは推認し得るものの、その講座の受講者数については何らの証拠を提出していないものである。
そして、開催日数も、各会場で5日程度であり、日常的に当該講座が開催されている事実は見受けられない。
さらに、請求人が、本願商標の使用を開始してから現在まで、4年程度しか経過していない。
さらにまた、提出された新聞記事の抜粋は、日付や新聞名等が明らかではないものが多く、本願商標の使用の裏付けとしては、適切な証拠とはいえない。
その他、本願商標が、使用により、需要者の間に広く知られていた商標であることを立証する証拠資料(例えば、業界における証明等)は何ら提出されていない。
してみれば、本願商標は、これに接する取引者・需要者をして、請求人の業務に係る役務であることを認識することはできないものである。

イ 出願商標と実際に使用している商標の同一性について
提出された証拠によると、本願商標と実際に使用している商標は、同一の態様であると認められる。

ウ まとめ
以上ア及びイからすると、本願商標と実際に使用している商標は、同一の態様であると認められるとしても、本願商標は、取引者・需要者において請求人の業務に係る役務であることを認識することができるほどの周知・著名性を有しているとはいえないものと判断するのが相当であるから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。

3 結論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備しないものであるから、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 「メンタルケア」の専門家を養成するための講座が実際に存在すること
「がくぶん総合教育センター」のウェブサイトにおいて「メンタルケアアドバイザー養成講座」の記載及び「『心のケア』を施すアドバイザーとして必要な知識や技法を6ヶ月で、自宅で習得できます!」の記載。
(http://www.gakubun.co.jp/lecture/d50.html)




審理終結日 2010-11-24 
結審通知日 2010-11-25 
審決日 2011-04-05 
出願番号 商願2008-34460(T2008-34460) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X41)
T 1 8・ 13- Z (X41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 豊田 純一
小川 きみえ
商標の称呼 メンタルケアスペシャリストヨーセーコーザ、メンタルケアスペシャリスト、メンタルケア、スペシャリストヨーセーコーザ、スペシャリスト 
代理人 市川 誠 

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