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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z0709
管理番号 1238226 
審判番号 取消2008-300144 
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-02-01 
確定日 2011-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4439067号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4439067号商標(以下「本件商標」という。)は、「HSD」の欧文字を横書きしてなり、平成11年10月7日に登録出願、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,包装用機械器具,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,風水力機械器具,農業用機械器具,漁業用機械器具,ミシン,ガラス器製造機械,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,機械式駐車装置,芝刈機,修繕用機械器具,電気式ワックス磨き機,電気洗濯機,電気掃除機,電機ブラシ,電気ミキサー,電気式カーテン引き装置,陶工用ろくろ,塗装機械器具,乗物用洗浄機,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」及び第9類「金属加工機械器具その他の機械器具を操作するための電気的マンドレル及び数値制御装置」を指定商品として、同12年12月8日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成20年2月19日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第7類「金属加工機械器具,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機」及び第9類「金属加工機械器具その他の機械器具を操作するための電気的マンドレル及び数値制御装置」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第7類「金属加工機械器具,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機」及び第9類「金属加工機械器具その他の機械器具を操作するための電気的マンドレル及び数値制御装置」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第2号証及び乙第3号証のインボイスについて
(ア)被請求人は、本件商標の使用について、乙第4号証のパンフレットに掲載されている商品が、(a)被請求人から被請求人の販売代理店に販売された旨、(b)上記販売代理店から日本の金属加工機械器具メーカー3社に販売された旨を述べ、(a)については、被請求人の販売代理店あてのインボイスの写しを乙第2号証として、(b)については、日本の金属加工機械器具メーカー3社あてのインボイスの写しを乙第3号証として提出している。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証によっては、指定商品に本件商標を付したものを日本国内に輸入(商標法第2条第3項第2号)したとは、認められない。インボイスに記載の「Goods Code」の商品が日本に輸入された事実は、商品代金の支払いを証明する書面、通関料、配達料、関税、輸入消費税及び航空運賃等の支払いを証明する書面等、第三者による証明があって初めて客観的信ぴょう性が担保されると考える。この点、乙第2号証は、被請求人自身の発行に係るものであり、第三者による証明書面等は、提出されていない。乙第3号証も、被請求人の販売代理店の発行に係るものであり、乙第2号証と同様、第三者による証明書面等は提出されていない。そうであるとすれば、上記インボイスのみをもってしては、当該インボイスに記載の商品が現実に日本に輸入されたことを証明したものとはいえない。
(イ)被請求人は、上記インボイスに記載された日付をもって、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標が使用された旨主張している。
しかし、上記で述べたように、被請求人が提出したインボイスには、そもそも証拠としての客観的信ぴょう性がない。したがって、インボイス記載の日付では、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標が使用されたことを証明したものとはいえない。
(ウ)インボイス自体からは、いかなる商品が(どのような商標を付して)輸入されたのか、全く分からない。なお、インボイスには、「Goods Code」記載欄が設けられており、同欄には、乙第4号証中に矢印を付された商品の「Goods Code」が記載されている。被請求人は、インボイス及びパンフレットにより、パンフレット記載商品が日本国内に輸入されたことの立証を試みたものと請求人としては思料する。
しかしながら、パンフレットに掲載されている商品写真には、本件商標を見つけることはできない。したがって、仮に、インボイス記載の商品が日本国内に輸入されたとしても、本件商標が使用されたことは証明されない。
(エ)以上より、乙第2号証及び乙第3号証をもってしては、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に使用している事実、日本国内において使用している事実は証明されない。
(2)乙第4号証のパンフレットについて
被請求人は、上記パンフレットに商品「エレクトロスピンドル」が掲載されていることをもって、「HSD」を現実の取引に使用している旨主張している。
しかし、上記パンフレットは、英語で記載されているため、世界共通の取引業者向けのものとも考えることができ、我が国で頒布されたことを主張する場合には、これを裏付ける証拠を提出する必要があると考えるところ、被請求人は、証拠を提出していない。
さらに、上記パンフレットには、パンフレット作成日付など、日付に関する情報は記載されていない。
以上より、乙第4号証をもってしては、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に使用している事実、日本国内において使用している事実、及び登録商標の使用をしている事実は証明されない。
(3)被請求人と販売代理店との関係について
被請求人は、「Optima International S.r.l.」(以下「Optima社」という。)を販売代理店と称し、同事実を証明する証拠として、販売代理店契約書の写し(乙第9号証)を提出している。
しかしながら、この契約書によっては、Optima社の権限は極めて不明確であり、本件商標を使用する権限(使用許諾を受けていること)は証明されていない。これをもって黙示の使用許諾を肯定することはできない。
以上、この契約書によっては、Optima社が本件商標の使用権を有していたことの証明はされない。
(4)日本国内における本件商標の使用について
被請求人は、取引書類(乙第10号証ないし乙第13号証)をもって、商品の流通を説明している。
しかしながら、乙第10号証ないし乙第13号証に記載されている商品にそれぞれ本件商標が付されていたのか否かは明確でないことから、例え、当該商品が日本に輸入されたとしても、「本件商標」の使用は証明されない。
また、被請求人は、上記取引の「譲渡」契約をもって本件商標が「使用」されている、と主張しているものと請求人は理解する。
しかしながら、本件商標の使用は「日本国内」でなされる必要があるから、外国で意思表示が合致した本件契約の締結は「日本国内」での「譲渡」とは認められないと思料する。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人の提出した書類によっては、本件商標が、本件審判の請求に係る指定商品について、その請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実は証明されていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)被請求人は、本件取消審判の請求に係る、本件商標「HSD」を付した商品「エレクトロスピンドル」をイタリアにおける販売代理店である「Optima社」を通じて日本の金属加工機械メーカーに本件取消審判が予告登録された日前3年以内に販売していた。
被請求人は、スピンドルをはじめとしてチャック、CNCプログラミングサービス等の金属加工機械器具関係の商品を製造、販売しており(乙第1号証)、本件商標「HSD」を付した商品を販売しており、特に、海外で販売するにあたっては、販売代理店であるOptima社を通じて行っている。
被請求人は、まずOptima社に販売し、その後、Optima社が顧客(日本の金属加工機械器具メーカー)に販売している。このようなメーカーが直接顧客に販売するのではなく販売代理店を通じて販売する方法は、イタリアのみならず、日本でも広く一般に行われているところであり、販売代理店を通じての販売であっても、取引上製造メーカーの商品の販売ととらえられていることは、つとに知られている。したがって、商標法上被請求人は、販売代理店を通じて自己の商品を日本のメーカーに販売しているといえる。被請求人がOptima社に「HSD」を付した商品を販売したことを示すために被請求人のOptima社あてのインボイスの写し(乙第2号証)を提出する。
Optima社は、上記商品を日本のメーカーである東洋製鉄株式会社、庄田鉄工株式会社、株式会社平安コーポレーションに販売している。被請求人は、当該販売を立証するため、Optima社からこれら日本の会社あてのインボイスの写し(乙第3号証)を提出する。このインボイスのあて先が「TOYO IRON WORK Co.,LTD.460 OHSE-CHO,HAMAMATSU CITY SHIZUOKA PREF,JAPAN 431-3113」、「SHODA IRON WORKS CO.,LTD.1-9-2 SHINMIYAKODA KITASU HAMAMATSU 431-2103 JAPAN」、「HEIAN CORPORATION 1-5-2,SHINMIYAKODA,HAMAMATSU-CITY SHIZUOKA-PREF.,JAPAN 431-2103」であることから、日本のメーカーあてに販売されたことは明らかである。日本のメーカーあてに販売されたことは、本件商標が使用された商品が日本で販売されたと解される。けだし、この販売によって日本において本件商標について業務上の信用が化体されるからである。少なくとも、日本で当該商品の引き渡しがされたことは明らかである。同インボイスの日付は、「28/09/2007」、「18/12/2007」、「13/07/2007」、「31/07/2007」、「03/08/2007」であるから、本件取消審判が予告登録された日前3年以内に「HSD」を付した商品を販売したことは明らかである。いずれのインボイスの商品の項目にも「HSD Electrospindle」の記述があることから、商品「エレクトロスピンドル」に本件商標が使用されていることは明らかである。現実の取引において被請求人は、上記商品に「HSD」を使用している(乙第4号証)。
この「エレクトロスピンドル」は、金属加工機械器具の部品(乙第5号証)であるから、商標法上金属加工機械器具に属するものと解される。
(2)請求人は、乙第2号証及び乙第3号証のインボイスの写しが被請求人自身の発行に係るものであるので証拠としての客観的信ぴょう性がない、ゆえに第三者による証明が必要であると主張する。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証のインボイスは、取引の事実を客観的かつ具体的に示すものであって、本件商標の使用を証するものとして疑念の余地はない。
なお、被請求人が、イタリアの販売代理店を通じて、日本の会社と正常な商品取引を行っていることを示すものとして、乙第3号証のインボイスのあて先の一つである株式会社平安コーポレーションの注文書及び同社あての請求書の写し(乙第7号証)を提出する。この注文書の日付が本件審判予告登録後のものであるが、取引の経験則から、これらの注文書から、株式会社平安コーポレーションの注文に基づいて乙第2号証及び乙第3号証のインボイスに述べられた商品は同社に販売されたことが明確になった。
また、請求書から明らかなように、イタリアの販売代理店であるOptima社が「HSD&MC ASIA SALES DIVISION」を有していることから、同社が単に被請求人の商品を市場で購入し、これを日本の会社に販売したのではなく、被請求人の販売代理店であることがより明確になった。
さらに、被請求人(商標権者)と販売代理店であるOptima社との販売代理店契約書の写し(乙第9号証)を提出する。それには、Optima社に日本において使用権を許諾する旨が明文化されていないが、第1条で被請求人がOptima社に本件商標の使用した商品のプロモーション及び販売を委任し(すなわち本件商標の使用した商品の宣伝広告並びに当該商品の譲渡若しくは引き渡しをすることを認めている)、第3条でOptima社が上記商品の販売契約を被請求人を代理して締結できることとし(すなわち本件商標を使用した商品を譲渡することを認めている)、第7条で当該商品を自身の顧客にも販売できること(すなわち本件商標を使用した商品の譲渡若しくは引き渡しをすることを認めている)から、少なくとも同社に対して黙示実施許諾があったといえる。つまり、Optima社は、本件商標の通常使用権者であったと解される。第8条に、この契約は一年ごとに更新可能であり、Optima社が本件取消審判予告登録前3年以内に被請求人の商品を同人から納品を受けて日本の企業に引き渡していることから、上記契約は更新され続け、この期間内にも販売代理店(通常使用権者)であったことは明らかである。
(3)請求人は、インボイス記載の日付では本件審判の登録前3年以内の本件商標の使用が立証できないと主張する。
しかしながら、上述のように、乙第2号証及び乙第3号証のインボイスは、取引の事実を客観的かつ具体的に示すものであって、本件商標の使用を証するものとして疑念の余地はないので、請求人の主張は失当である。
また、被請求人は、本件商標が付された商品「エレクトロスピンドル」が日本の需要者に販売された流れを示す取引書類を各販売ごとに提出する(乙第10号証ないし乙第13号証)。
(4)請求人は、インボイスからはいかなる商品が(どのような商標を付して)輸入されたのか全く分からないと主張する。
しかしながら、乙第3号証のインボイスのいずれにも「HSD(本件商標)Electrospindle(エレクトロスピンドル 商品名)」が表示されている。すなわち、インボイスは、本件商標が付された商品「エレクトロスピンドル」が輸入されたことを立証している。そして、商標法は商標の使用として「・・・取引書類に標章を付して・・・頒布する行為」(同法第2条第3項第8号)とされているので、このインボイスによって本件商標の使用が立証されたといえる。
(5)請求人は、パンフレットに掲載されている商品写真には本件商標を見付けることはできない、インボイス記載の商品が日本国内に輸入されたとしても本件商標が使用されたことは証明されない、と主張する。
しかしながら、請求人は単に商品のパンフレット中の商品自体に商標が付されていることを単に見落としているのであって、実際には商品に本件商標が付されている。この事実を立証するために被請求人が取り扱っているエレクトロスピンドルの写真を提出する(乙第8号証)。エレクトロスピンドルのような工業製品はむき出しのまま取引の対象となるのではなく、容器に入れられて取引されるものであるが、請求人の当該エレクトロスピンドルも容器に入れられて取引され、その容器に本件商標が付されている(乙第8号証)。
なお、請求人は、乙第4号証のパンフレットによっては、本件商標の使用の立証ができないと主張している。しかるに、そもそも乙第4号証のパンフレットは、乙第2号証及び乙第3号証の取引の全容を示すため、すなわち、同パンフレットに基づきエレクトロスピンドルが被請求人と日本の会社とで取引されたことを客観的に示すものであって、当業者であれば容易に理解できる製品パンフレットである。被請求人は、同パンフレットの表示のみをもって本件商標の使用を根拠とする意向は全くない。
(6)以上のとおり、本件審判の予告登録前3年以内に、本件商標がその取消請求に係る商品に使用されたことが被請求人によって立証されたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、被請求人に関する企業プロファイルのホームページ打ち出しであり、「HSD S.p.A.」の表示とともに、「以下の製品でも掲載されています:」、「・CNCプログラミングサービス」、「スピンドル及びシャフト」、「ソフトウェア」及び「チャック」の記載がある。
乙第4号証は、被請求人作成の製品パンフレット等であると認められ、1冊目のパンフレットの表紙及び1ページ等に「HSD」及び「DIVISION」の欧文字で上下二段に表された構成の記載、2ページ及び4ページ等に「HSD」の欧文字で表された構成の記載があり、3ページには、「Air-cooled electro-spindles」の表題のもと、5個の製品写真が欄に分けて表示され、左上の欄において製品上及び下部説明に「ES915」、左下において下部説明に「ES988」との記載がある。そして、2冊目のパンフレットにおいて、表紙の裏のページには、「HSD」及び「Air-cooled and liquid-cooled electro-spindles」の表題のもと、下表の左欄には「ES915」及び「ES988」の記載がある。同じく「Air-cooled electro-spindles」の表題のページには、1段目の欄において製品上、下部説明及び右欄説明に「ES915」、5段目の欄において下部説明に「ES988」との記載がある。なお、本証拠において、発行日又は印刷日などの記載は見あたらない。
乙第5号証及び乙第6号証によれば、商品「エレクトロスピンドル」は、本件審判の請求に係る指定商品中の「金属加工機械器具」の範ちゅうに属する商品の部品であり、指定商品「金属加工機械器具」に包含されるものである。この点について、請求人及び被請求人において争いはない。
乙第8号証は、商品「エレクトロスピンドル」に本件商標が付されている事実を立証するために提出された被請求人が取り扱っている該商品の写真であるとするものであり、そこに写っている商品そのものが乙第3号証、乙第10号証及び乙第11号証等のインボイスに記載されたものとはいえないものの、その形状等と乙第4号証のパンフレット等とを比較すればこれらの系統の商品は同じような標章の付され方をしていることが確認でき、これらには、「HSD」の文字よりなる標章が付されており、該標章は、本件商標と社会通念上同一のものであると認められる。
(2)乙第9号証は、「CONTRATTO DI AGENZIA(和訳:販売代理店契約書)」と題する被請求人を債務者とし、Optima社を代理店とする2004年2月1日付けの両者の契約書の写しと認められ、そこには、被請求人がOptima社にHSD商品の販売の契約の実行を委任し(第1条)、Optima社は、日本を含む領域で事業を行う権限を有し(第2条)、契約の成立に際して被請求人を代理できる(第3条)とし、この契約は一年ごとに更新可能である(第8条)旨の記載があることが認められる。
(3)乙第10号証の1は、株式会社平安コーポレーションから被請求人あての2007年6月28日付け購入注文書の写しであると認められ、「Purchase Order」の文字の右横に「No.1193」、「Description」欄に「SPINDLE MOTOR」及び「ES988A 13.50KW 4 POLES 24000RPM HSK-F63LongNose BEARINGS+SENSOR S3」などの記載がある。
乙第10号証の2は、被請求人からOptima社あての2007年6月29日付け発注確認書の写しと認められ、「Your P.O.」欄に「228 07-HEIAN」、「Code HSD」欄に「H6161H0328」、「Description」欄に「ES988BH」などの記載がある。
乙第10号証の3は、Optima社から被請求人あての2007年6月29日付け確認書の写しと認められ、「Conferma d’ordine No°228-’07 Rif.:HEIAN」の記載とともに、「DESCRIZIONE」欄に「H6161H0328 HSD ELECTROSPINDLE ES988 13.5KW 24000 PRM 4 POLES BEARINGS+SENSOR S3 LONG NOSE」などの記載がある。
乙第10号証の4(乙第2号証3枚目と同様の内容と認められる。)は、被請求人からOptima社あての2007年7月11日付けインボイスの写しと認められ、「Goods Code」欄に「H6161H0328」、「Description」欄に「228/07 - HEIAN ES988BH」の記載がある。
乙第10号証の5(乙第3号証3枚目と同様の内容と認められる。)は、Optima社から株式会社平安コーポレーションあての2007年7月13日付けインボイスの写しと認められ、「Order」欄に「PO NO.1193-OUR P.I.228-’07 Rev.」、「Code」欄に「H6161H0328」、「Description」欄に「HSD Electrospindle ES988 13.5Kw-4Poles-24.000rpm-HSK F63-LongNose-Bearings+Sensor S3」の記載がある。
そして、乙第10号証の5において記載されている「NO.1193」、「228-’07」、 「H6161H0328」、「HSD」、「Electrospindle」及び「ES988」の記号、符号等と乙第10号証の1ないし4に記載されているそれらとは、実質的に符合している。
(4)乙第11号証の1は、庄田鉄工株式会社からOptima社あての2007年12月11日付け購入注文書の写しであると認められ、「PURCHASE ORDER」の文字の右横に「No.IMP07-019」、「CODE」欄に「HSD」、「DESCRIPTION」欄に「H616H0309 ELECTROSPINDLE ES915 3.8KW ISO30-220V/380V-2 POLES CERAMIC BEARINGS-AIR COOLING-SHORT NOSE」などの記載がある。
乙第11号証の2は、被請求人からOptima社あての2007年12月17日付け発注確認書の写しと認められ、「Your P.O.」欄に「345-07-SHODA」の記載、「Code HSD」欄に「H6161H0309」、「Description」欄に「UL ES915」などの記載がある。
乙第11号証の3は、Optima社から被請求人あての2007年12月14日付け確認書の写しと認められ、「Conferma d’ordine No°345-’07 Rif.:SHODA」の記載とともに、「DESCRIZIONE」欄に「H6161H309 Electrospindle ES915 3.8 Kw 24000 Rpm-2Poles-Ceramic bearings-Short nose」などの記載がある。
乙第11号証の4(乙第2号証1枚目と同様の内容と認められる。)は、被請求人からOptima社あての2007年12月17日付けインボイスの写しと認められ、「Goods Code」欄に「H6161H0309」、「Description」欄に「345-07 - SHODA UL ES915」の記載がある。
乙第11号証の5(乙第3号証2枚目と同様の内容と認められる。)は、Optima社から庄田鉄工株式会社あての2007年12月18日付けインボイスの写しと認められ、「Order」欄に「345-’07(Yr.PO no.IMP07-019」、「Code」欄に「H6161H0309」、「Description」欄に「HSD Electrospindle ES915 3.8kw ISO30 380V/220V with Ceramic Bearins-2Poles-AirCooling(Short nose)」の記載がある。
そして、乙第11号証の5において記載されている「345-’07」、「07-019」、「H6161H0309」、「HSD」、「Electrospindle」及び「ES915」の記号、符号等と乙第11号証の1ないし4に記載されているそれらとは、実質的に符合している。
2 本件商標の使用についての判断
(1)前記1(1)によれば、被請求人は、「エレクトロスピンドル」ほか金属加工機械器具関係の商品を製造、販売しているイタリア国を所在とする法人であり、本件審判の請求に係る指定商品中の「金属加工機械器具」に包含されると認められる商品「エレクトロスピンドル」には、「ES915」及び「ES988」などの記号が付され、該商品には「HSD」の文字よりなる標章が付されていたことが推認できる。
同じく(2)によれば、該商品の日本における販売代理店としてOptima社が存在したことが認められる。
同じく(3)によれば、株式会社平安コーポレーションが被請求人あてに2007(平成19)年6月28日付けで購入注文を行った商品「エレクトロスピンドル」は、被請求人とOptima社における上記発注の確認後、被請求人からOptima社に納品され、同年7月13日にOptima社から株式会社平安コーポレーションに発送されたといえる。
同じく(4)によれば、庄田鉄工株式会社がOptima社あてに2007(平成19)年12月11日付けで購入注文を行った商品「エレクトロスピンドル」は、Optima社と被請求人における上記発注の確認後、被請求人からOptima社に納品され、同年12月18日にOptima社から庄田鉄工株式会社に発送されたといえる。
(2)以上のことを総合してみれば、本件商標と社会通念上同一と認められる「HSD」の文字よりなる標章が付された商品「エレクトロスピンドル」を、被請求人の指示のもと、被請求人の販売代理店である「Optima社」が日本に所在する「株式会社平安コーポレーション」へ2007(平成19)年7月13日に、また、同じく「庄田鉄工株式会社」へ同年12月18日に発送したということができる。
そして、上記商品が「Optima社」から「株式会社平安コーポレーション」及び「庄田鉄工株式会社」へ発送された2007(平成19)年7月13日又は同年12月18日後、さほど遅くない時期に日本国内に輸入されたとみて差し支えないから、その時期は本件審判の請求の登録前3年以内(平成17年2月19日ないし同20年2月18日まで)に優に含まれるものであるといえる。
(3)さらに、上記商品が被請求人から「Optima社」を通じて「株式会社平安コーポレーション」及び「庄田鉄工株式会社」へ輸入された行為が商標法第50条に規定する商標の「使用」に該当するか否かについて検討する。
商標法50条1項に規定されている不使用取消審判の場面における「使用」の概念を法2条3項各号において定義されているものと別異に理解すべき理由はない(知財高裁平成21年(行ケ)第10216号同年10月22日判決言渡参照)とされている。
そうして、商標法2条3項が同法上の標章の「使用」の定義を規定した趣旨は、商品に標章が表示される場合において、それが何人の使用と認められるものであるかについては社会通念にゆだねるとともに、同法の目的との関係を考慮し、特に商品の識別標識として機能すると認められる事実についてのみ、これを「使用」であると定義することにより、同法上の「使用」としての法的効果を認めるべき行為の範囲を限定したものであると解される。そして、商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解されるから、その商品が実際に何人によって所有、占有されているとを問わず、同法2条3項に該当する行為が行われる限り、その行為は、当初、商品に商標を付した者による商標の「使用」行為であるというべきである。これを本件のような我が国で商標登録を有する外国法人との関係についてみれば、商標権は、国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり、属地主義の原則に支配され、その効力は当該国の領域内においてのみ認められるところから、当該外国法人が商標を付した商品が我が国外において流通している限りは、我が国の商標法の効力は及ばない結果、我が国の商標法上の「使用」として認めることはできないものの、その商品がいったん日本に輸入された場合には、当該輸入行為をとらえ、当該外国法人による同法2条3項2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として、同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である。(東京高裁平成14年(行ケ)第346号同15年7月14日判決言渡参照)
そうだとすれば、本件においては、前記(1)及び(2)のとおり、本件商標の商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品について、その者に係る商品の日本における販売代理店である「Optima社」を通じて、本件審判請求の予告登録日前3年以内である時期に、取引先の「株式会社平安コーポレーション」及び「庄田鉄工株式会社」がこれを輸入したとの事実を認定できるから、上記両社の輸入行為をもって、商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として、同法第50条に規定する商標権者による本件商標の「使用」があったものと認めることができるというべきである。
3 請求人の主張について
請求人は、本件商標の使用は「輸入」の有無で決せられるべきものであり、輸入の事実の証明はインボイスだけでは足りず、商品代金の支払を証明する書面、並びに通関料、配達料、関税、輸入消費税及び航空運賃等の支払いを証明する書面等、第三者による証明が必要である旨主張している。
しかしながら、前記1及び2のとおり、乙第10号証及び乙第11号証(それぞれ枝番を含む。)において「株式会社平安コーポレーション」及び「庄田鉄工株式会社」からの商品の購入注文から両社への商品の発送に至る一連の流れに一貫性があることのほか、被請求人の提出に係る証拠を総合して判断すれば、本件商標に係る商品の輸入があったと認定することが可能であることから、請求人の主張は採用の限りでない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をその請求に係る指定商品に含まれる「エレクトロスピンドル」について、商標権者が使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、その取消請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-03-09 
結審通知日 2011-03-11 
審決日 2011-03-29 
出願番号 商願平11-90479 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z0709)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
酒井 福造
登録日 2000-12-08 
登録番号 商標登録第4439067号(T4439067) 
商標の称呼 エイチエスデイ、エッチエスデイ、エイチエスディー、エッチエスディー 
代理人 原 隆 
代理人 青木 篤 
代理人 田島 壽 

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