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審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199930328 審決 商標
取消2009301101 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 130
管理番号 1236676 
審判番号 取消2009-301100 
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-10-01 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第974493号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第974493号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和45年10月8日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同47年8月2日に設定登録、その後、同57年6月25日、平成4年7月29日及び同14年7月23日の三回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、同14年12月18日に指定商品を第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成21年10月27日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、「あんころ,汁粉,汁粉のもと,ぜんざい,ぜんざいのもと,まんじゅう,もなか,ゆで小豆,ようかん」について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第28号証(枝番を含む。弁駁書に添付の甲第1号証を「甲第1号証の2」と読み替える。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「あんころ,汁粉,汁粉のもと,ぜんざい,ぜんざいのもと,まんじゅう,もなか,ゆで小豆,ようかん」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきでものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標は、右側に平仮名で「ちょおじや」と縦書きし、左側に漢字で「長者」と縦書きした左右2列の構成よりなるものである。
前記構成よりなる本件商標は、「チョオジヤチョウジャ」ないし「チョオジヤチョージャ」の称呼を生じ、「ちょおじや長者」ないし「ちょおじや金持ち」の観念を生じるものである。
(2)使用商標と本件商標の同一性の有無
ア 被請求人の通常使用権者が使用する「長者饅頭」の「長者」部分の称呼は、「チョウジャ」「チョージャ」である。
これに対し、本件商標は、「長者」と文理上の同一性がないことはもちろん、その称呼「チョオジヤチョウジャ」ないし「チョオジヤチョージャ」は、前記の称呼とは、共通性がない。
また、仮に本件商標を分離観察したとしても、「ちょおじや」部分から生じる「チョオジヤ」の称呼は、前記の使用商標の称呼とは共通性がないし、観念においても、本件商標が「ちょおじや長者」ないし「ちょおじや金持ち」であるのに対し、使用商標の観念は、単なる「長者饅頭」ないし「金持ち饅頭」であり共通性がない。
さらに、外観においても、本件商標が左右に「ちょおじや」の文字と「長者」の文字とを振り分けた特異な外観を有するのに対し、使用商標は、丸の中に「長者」、「饅頭」の文字を白抜きし、右斜め下に「長者原名物」と記した構成からなるものであり共通性がない。
イ 一方、「ちょおじや」を「長者」と解する根拠は見いだせず、逆に食べ物の「おじや」を想起する「著おじや」「緒おじや」や、地名の小千谷を想起する「著小千谷」「緒小千谷」の当て字を想起することができる(甲第16号証の3・4、甲第17号証の3・4)。
これに関し、被請求人は、「平仮名『ちょおじや』は、漢字「長者」を表音式に表記したものである。つまり、世人において、『長者』が『ちょおじや』と表記されていることに違和感を感じることはなく、両者が社会通念上同一であると認識するものである。」と主張し、乙第17号証(審決注:「乙第9号証」の誤記と認められる。)を提出している。しかしながら、他の辞書においては、「長者」は、あくまでも「ちょうじゃ」としてのみ表記されており(甲第16号証の2、甲第3号証の2)、「長」の文字はあくまでも「ちょう」としてのみ表記されている(甲第18号証の2、甲第19号証の2)。また、インターネットホームベージ上での使用例における検索結果においても、「ちょうじゃ」に関しては、「長者」関連のものが多数ヒットするのに対し(甲第24号証)、「ちょおじや」はもちろん、「ちょおじゃ」に関しても「長者」関連のものはヒットしない(甲第21号証、甲第22号証)。
さらに、「新明解国語辞典第三版」においては、「あいきどう(「う」の右傍に「オ」が併記されている。)[合気道]・ねがわくは(「は」の右傍に「ワ」が併記されている。)における右傍のカタカナ小字は、表記と一致しない発音を示す。」と記されている(甲第2号証の2)。右事実は、被請求人の言うところの「表音式の表記」が世人において決して一般的ではないことを意味する。
そして、本件商標における平仮名部分は、あくまでも「ちょおじや」であり、「ちょおじゃ」ではない。
仮に、被請求人の言うところの「表音式の表記」をもって「長者」を表記するのであれば、それは「ちょおじゃ」であり「ちょおじや」ではないはずである。音をそのまま表記する表音式の表記においては、拗音もまた正確に表記されなければならず、拗音である「長者」の「者」部分を無視して「じや」と表記することは、断じてあり得ない。すなわち、「ちょおじや」は、「長者」を表音式に表記したものではない。
一方、「ちょおじや」の文字に着目した場合、仮にこれが表音式の表記として認識されるとするのであるのなら、「ちょお(う)じ」部分には、「丁子・弔辞・弔事・長耳・長治・長時・重事・停止・貼示・懲治・寵児」の多数の対応候補が存することになる(甲第16号証の2、甲第3号証の2)。
そして、「丁子」と「屋」からなる「丁子屋」の文字は日本の古くからの屋号の一つとして広く親しまれている(甲第4号証)。
よって、「ちょおじや」の文字が、音をそのまま表記する表音式で表記したものと需要者、取引者に認識されたしても、そこから先ず想起されるのは、日本の古くからの屋号の一つとして広く親しまれている「丁子屋」や「弔辞・弔事・長耳・長治・長時・重事・停止・貼示・懲治・寵児」などを造語の成分とした文字であり、拗音ではない「じや」部分の存在をあえて無視して「長者」の文字のみが一義的に直感されると考えることは極めて不自然である。
ウ 仮に本件商標の商標権者が「長者」の文字に独自の称呼である「ちょうじや」を当てはめ、これを表音式の表記「ちょおじや」で記したと推論したとしても、「ちょうじや」の語尾は1モーラ(拍)で終わる拗音「じゃ」ではなく2モーラで終わる「じや」であり、全体として「チョ・ウ・ジ・ヤ」の4モーラとなり、「チョ・ウ・ジャ」の3モーラとなる「長者」の称呼とは、語調・語感を大いに異にする。よって、商標権者の内心の意図とは関わりなく、「ちょおじや」の文字に接した取引者、需要者がそれを語調・語感が明らかに異なる「長者」の読みの当てはめであると、一義的に直感し得る客観的な状況は想定し難い。
エ 以上のように、「ちょおじや」の文字と「長者」の文字間には一対一対応の関係がない。
オ 一方、この場合、両者は、一つの商標の中で隣り合って配されているのだから、取引者、需要者に対し「ちょおじや」の文字は、「長者」の文字の独自の読みを表したものと暗示させる場面があり得ることはもちろんである。
しかしながら、この場合は、本件商標は、「『長者』の文字に『ちょおじや』という独自の振りがなを付した商標」全体として識別の用に供されるものであり、仮に「ちょおじや」単独の商標や「長者」単独の商標と類似する可能性があるとしても、一対一対応の関係が無い「ちょおじや」単独の商標や「長者」単独の商標と社会通念上の同一性があると解することは不自然であり許されない。
カ 被請求人は、本件商標における「ちょおじや」の「じや」部分に関し、「『じゃ』ではなく『じや』であるのは、出願当時『じゃ』のフォントが無かったため」と釈明しているが、これは、次の理由からまことにもって奇異な主張であるといわざるを得ない。
(ア)そもそも本件商標の出願時である昭和45年当時の商標法施行規則によれば、商標出願にあたっては、濃墨又は退色しない絵の具か印刷インキをもって印刷された商標見本を所定枚数添付しなければならず、現在のようにパソコンやワープロで印字されたものや、トナーなどによる複写されたものは使用できなかった。
(イ)すなわち、当時においては、出願人や代理人は、商標見本に関し、別途専門の印刷業者に依頼して印刷してもらうか、濃墨や絵の具をもって自書するしかなかった。
(ウ)印刷業者の場合は、活版やオフセット印刷によって商標見本を印刷していたが、専門の業者において拗音のフォントがないということはあり得ず、「や」に関しては、ポイント数の小さい「や」の活字や写植文字を使用すれば容易に拗音を表記できたはずである。
(エ)また、出願人が濃墨や絵の具をもって自書しても「ちょおじゃ」の文字を容易に表記できたはずである。
(オ)なお、それ以前に「『じゃ』のフォント」という意味が不明である。「じゃ」に関しては、「じ」のフォントと「や」のフォントで表記できるはずである。
キ 以上の事実から被請求人が本件商標の「ちょおじや」の「じや」を拗音「じゃ」でなく「じや」として意図的に構成したことは明らかである。
ク 一方、商標見本(甲第1号証の2)を見ても、拗音「ちょ」の「ょ」は、殊更小さく記しており、これとの対比においても「じや」の「や」が拗音でないことに客観性は十分ある。
本件商標においては、「ちょおじや」部分は、「長者」部分と等大の文字をもって書され、それが占める面積は「長者」部分より大きく、むしろ構成上は「ちょおじや」部分が主で「長者」部分が従であるとさえいえる。このように、「ちょおじや」部分は、商標の構成において十分目立っており、客観的に見た場合は、それが商標の一部を構成していると認識されるのは明らかであり、識別の用にあたって「ちょおじや」部分が除外されるべき特段の理由は見いだせない。
(3)ところで、「長者」の文字を後半に配した既存の単語としては、「億万長者」、「百万長者」、「わらしべ長者」、「黄金長者」など広く馴れ親しまれたものがあり、さらに商品の識別の用に供するために、「長者」の文字を後半に配した多数の造語が採択されている(甲第27号証の1・2)。よって、このような状況において、本件商標に接した取引者、需要者が本件商標を「チョオジヤチョウジャ」ないし「チョオジヤチョージャ」なる称呼を有する造語と直感すると考えることは経験則上に照らして正当である。
また、仮に被請求人の主張のように、「ちょおじや」が「ちょうじや」の表音式の表記であるとして認識されるのであるのなら、本件商標に接した取引者、需要者は、そこから「丁子屋長者」や例えば「長治屋長者」、「寵児屋長者」なる造語を直感すると考えることも経験則上に照らして正当である。
被請求人は、本件商標の更新記録を提出している(乙第15号証、乙第16号証(審決注:「乙第7号証、乙第8号証」の誤記と認められる。))。しかしながら、当時更新登録に対する無効審判制度があったことから明らかなように、それらは、審査時の一つの判断にすぎず、それに本件の判断が拘束されることがないことはもちろんである。
(4)結び
出願当時、「長者」あるいは「長者/ちょうじゃ」等の選択肢があったにもかかわらず、意図的に特異な態様の「ちょおじや/長者」として商標権を獲得した者が、今になってその同一性を拡大して解釈することは許されない。
以上のとおり、使用商標と本件商標とは、社会通念上の同一性を欠き、本件商標は不使用であるので、その登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標は、前権利者である「新妻貞美」と請求外「株式会社御菓子老舗ひろせ(宮城県仙台市宮城野区大梶2番11号)」との間で、本件商標を「饅頭」に限り、「株式会社御菓子老舗ひろせ」が使用する平成16年7月1日付けで使用許諾契約が交わされており、同20年11月7日付けで「新妻貞美」から被請求人「合資会社亀屋菓子店」に譲渡された後も、当該契約は、有効に存続している(乙第1号証及び乙第2号証)。
2 乙第3号証は、本件標章「長者」が付された「饅頭」の現物写真である。
この「長者饅頭」の包装箱の写真には、本件商標「長者」が付されており、品名、原材料名、賞味期限、販売者名称、住所、電話番号等が表示されている製造ラベルが添付されている。「饅頭」は、商品を表すものとして普通に使用されているものであるから、ここでの実質的な商標は「長者」である。
3 通常使用権者「株式会社御菓子老舗ひろせ」が東北道長者原サービスエリア下り線売店(宮城県大崎市古川宮沢字金堀場26-1)に「長者饅頭」を納品したことを示す(乙第4号証「納品書控」写し)。
平成20年12月7日付け納品書控にあるように「長者饅頭」を計「8箱」、「長者饅頭バラ」を「40個」納品している(なお、「バラ」とは、「ばら売り」を意味するもの。以下、同じ。)。
同様に、平成20年12月29日付けないし同21年10月24日付けの納品書控にあるように「長者饅頭」及び「長者饅頭バラ」を納品している。
4 「有限会社エヌケイビジョン」は、「長者饅頭」の掛紙、プライスカード等を製作している会社であり、少なくとも平成15年6月20日に「長者饅頭」の掛紙を「株式会社御菓子老舗ひろせ」に5,000枚納品し、現在もプライスカード等を納品している(乙第5号証)。
5 「有限会社ツダプロセス」は、「長者饅頭」の掛紙を製作している会社であり、少なくとも平成15年11月28日から同21年4月20日の間に「長者饅頭」の掛紙を「株式会社御菓子老舗ひろせ」に納品しており、平成21年4月20日には10,000枚納品しているものである(乙第6号証)。
6 昭和57年2月3日付けで出願した本件商標の商標権存続期間更新登録出願の願書に添付の登録商標の使用説明書中、「商標の使用の事実を示す書類」として「長者ゆべし」の商品写真を提出し、特許庁の審査を経て、昭和57年6月25日付けで更新登録された(乙第7号証)。
平成4年2月10日付けで出願した本件商標の商標権存続期間更新登録出願の願書に添付の登録商標の使用説明書中、「商標の使用の事実を示す書類」として「長者ゆべし」の商品写真を提出し、特許庁の審査を経て、平成4年7月29日付けで更新登録された(乙第8号証)。
7 「新明解国語辞典第6版」(株式会社三省堂、2007年1月20日第8刷発行)の「第4ページ 編集方針 細則 見出しの表記と体裁」において「3あいきどう(「う」の右傍に「オ」が併記されている。)【合気道】・ねがわくは(「は」の右傍に「ワ」が併記されている。)【願わくは】等における右傍のカタカナ小字は、本行(ホンギョウ)の1に対応する表音式表記である。」と記されており、第963ページ中段に記されている「長者」は、「ちょうじゃ」(「う」の右傍に「オ」が併記されている。)と掲載されている。つまり、漢字の「長者」を表音式に表記した場合には、「ちょおじゃ」となることを意味する(乙第9号証)。
8 以上のように、通常使用権者である「株式会社御菓子老舗ひろせ」が、本件標章「長者」を商品「饅頭」に付して、少なくとも平成20年12月以降、今日まで継続的に日本国内の顧客向けに出荷(販売)していた。また、乙第7号証及び乙第8号証の証拠から明らかなように、商標権存続期間更新登録出願において、登録商標の使用証明書を提出し、特許庁の厳正なる審査の結果、登録商標の使用であると判断され更新登録された。さらに、乙第9号証の証拠から明らかなように、本件商標は、左側に漢字で「長者」と記されており、右側に平仮名で「ちょおじや」と記された態様であるが、平仮名「ちょおじや」は、漢字「長者」を表音式に表記したものである(なお、「じゃ」ではなく「じや」であるのは、出願当時「じゃ」のフォントが無かったためである。)。つまり、世人において、「長者」が「ちょおじや」と表記されていることに違和感を感じることはなく、両者が社会通念上同一であると認識するものである。
9 以上のとおり、本件商標と使用商標は社会通念上の同一性を有しており、しかも、本件商標は、その指定商品について継続して3年以上不使用であったものではない。したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 認定事実
本件商標の商標登録原簿の記載及び被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標の商標登録原簿の記載によれば、本件商標の商標権者は、設定登録時においては、「新妻貞衛」(「原町市旭町3丁目29番地」在)であったが、平成14年2月5日付けの「本権の移転」により「新妻貞美」(移転時は、前商標権者と同所在、その後、同18年3月17日付けの「登録名義人の表示の変更」により「福島県南相馬市原町旭町三丁目29番地」在となる。)に、さらに、同20年12月8日付けの「特定承継による本権の移転」により現商標権者である「合資会社亀屋菓子店」(前権利者と同所在)に移転されたものである。
そして、乙第1号証の1(被請求人の「履歴事項全部証明書」)、乙第1号証の2(本件商標の「譲渡証書」)によれば、被請求人である現商標権者は、菓子類の製造及び販売等を目的として昭和39年5月21日に設立された会社であり、平成20年11月7日付けで本件商標を「新妻貞美」から譲受したものである。このことは、上記の商標登録原簿の記載に矛盾しないものである。
さらに、乙第2号証の1(「株式会社御菓子老舗ひろせ」と前商標権者「新妻貞美」との間の平成16年7月1日付けの本件商標の権利使用契約書)、乙第2号証の2(「株式会社御菓子老舗ひろせ」との本件商標の権利使用の契約の継続に係る「新妻貞美」及び「合資会社亀屋菓子店」の宣誓書)及び乙第2号証の3(「新妻貞美」及び「合資会社亀屋菓子店」との本件商標の権利使用の契約の継続に係る「株式会社御菓子老舗ひろせ」の宣誓書)によれば、本件商標の上記権利使用契約は、「株式会社御菓子老舗ひろせ」と承継人である商標権者との間で移転後も継続していることが認められる。
以上によれば、「株式会社御菓子老舗ひろせ」は、本件商標の通常使用権者であるとみて差し支えない。
(2)乙第3号証は、「饅頭詰合」の現物写真であるが、この包装用箱の掛け紙の写真には、「長者原名物」の文字と共に塗りつぶし円内に「長者」「饅頭」の白抜き文字があり、製造ラベルには、「名称 饅頭詰合」、「製造者 (株)御菓子老舗ひろせ」及び「賞味期限 2009.11.03」の記載のほか、内容量、原材料名、保存方法及び製造者の住所・電話番号等が表示されている。
乙第4号証は、「納品書控」をタイトルとするものであり、その1枚目上段には、タイトルの左下に「株式会社鳴子観光ホテル 長者原S.A(下)レストラン 様」「20年12月7日」、同じく右下に「(株)御菓子老舗ひろせ」の記載があり、表中の「品名」欄には「長者万頭」、それに対応する「バラ数」欄には「6」及び「2」の記載がそれぞれあり、「納品箇所」欄には「売店」に○印が付され、受領印欄及び納品印欄にはそれぞれ姓によりサインされている。同様に、商品名欄に「長者饅頭」の記載が認められる平成20年12月29日付けないし同21年10月24日付けの納品書控(写し)が提出されている。
乙第5号証は、「『長者』の標章を付した『長者饅頭』の掛紙のデザインを平成15年5月より製作し、後印刷を手掛け同年6月20日に5000枚を『御菓子老舗ひろせ』に納品した。」旨を内容とし、商標権者をあて名とする総合広告代理店「有限会社エヌケイビジョン」の平成21年10月31日付け証明書(写し)である。
乙第6号証は、「『長者』の標章を付した『長者饅頭』の掛け紙を、平成15年11月28日、同17年3月18日、同年10月20日、同18年10月17日、同19年10月17日及び同21年4月20日に10,000枚ずつ『御菓子老舗ひろせ』に納品した。」旨を内容とし、商標権者をあて名とする「有限会社ツダプロセス」の平成21年10月31日付け証明書(写し)である。
以上によれば、「長者原名物」の文字と共に塗りつぶし円内に「長者」「饅頭」の白抜き文字が表示されている商品「饅頭詰合」の包装用箱の掛け紙を「有限会社エヌケイビジョン」又は「有限会社ツダプロセス」が製作し、それぞれ「株式会社御菓子老舗ひろせ」に納品され、そして、「株式会社御菓子老舗ひろせ」が製造した商品「饅頭詰合」が上記の掛け紙を付して、少なくとも平成20年12月29日ないし同21年10月24日において「東北自動車道長野原サービスエリア下り線売店」に納品されたことが認められる。
2 本件商標の使用についての判断
前記1により認定した事実によれば、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者である「株式会社御菓子老舗ひろせ」がその請求に係る指定商品中の「まんじゅう」について、「長者饅頭」の文字よりなる標章(以下「使用標章」という。)を使用したものということができる。
そして、「長者饅頭」の文字は、「饅頭」の文字が商品の普通名称を表したものであり、使用標章にあって、自他商品の識別機能を果たすのは、その余の「長者」の文字にあるものと認められる。
しかして、本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、漢字の「長者」は、約2文字分の間隔を設けて縦書きされており、その右傍に近接して平仮名5文字が「よ」の文字を除き漢字とほぼ同じ大きさにより縦書きされているものである。そして、「ち」の文字は「長」の文字より上に、「や」の文字は「者」の文字より下に、それぞれ約半文字分ずれ、また、「よ」の文字は他の文字より縦横それぞれ約7割程の長さよりなる大きさで左方にずらして配置されており、「長者」の漢字と無関係に併記されているものであると直ちに看取されるものではない。また、本件商標は、構成中の「長者」の文字が、表音式表記によれば「チョオジャ」と表す場合があること(乙第9号証)、及び、後述のとおり、本件商標が登録出願・設定登録された昭和45年ないし同47年当時における平仮名、特に拗音に用いる「や、ゆ、よ」の小書きに係る仮名遣いの状況をも考慮すれば、かかる構成からなる本件商標にあっては、構成中の「ちょおじや」の平仮名をほかの漢字「丁子屋」等に置き換えなければならない格別の事情を見いだすことはできないから、「ちょおじや」は、「長者」の振り仮名として機能する部分であるというを相当とする。
してみれば、使用標章は、本件商標と社会通念上同一の商標であると評価することができる。
3 請求人の主張について
請求人は、本件商標における「ちょおじや」の文字中の「じや」の文字は拗音の「じゃ」ではないことを主な理由として、「ちょおじや」と「長者」の文字間には一対一対応の関係がなく、使用標章と本件商標とは社会通念上の同一性を欠くことから、本件商標は不使用である旨、主張している。
しかしながら、本件商標は、前記1のとおり、昭和45年10月8日に登録出願、同47年8月2日に設定登録されたものであるところ、拗音に用いる「や、ゆ、よ」の小書きとの関係についてみるに、昭和21年11月16日内閣告示第33号の「現代かなづかい」において「拗音をあらわすには、[や]、[ゆ]、[よ]を用い、なるべく右下に小さく書く。」との記載があり、そして、同61年7月1日内閣告示第1号においても、拗音の項に「〔注意〕拗音に用いる『や、ゆ、よ』は、なるべく小書きする。」、前書きに「3 この仮名遣いは、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。」との記載があることを考慮すると、本件商標が登録出願・設定登録された当時において、拗音に用いる「や、ゆ、よ」について、小書きしなければならないという意識は必ずしも強いとはいえない状況にあったといえる。
そして、本件商標は、構成中の拗音「ちょ」の「ょ」が「ち」の右下でなく左下に表されていること、及び現在の表記状況でいえば「う」と表記されるべきところを「お」で表記していることをも併せ考慮すれば、「ちょおじや」の部分が商標権者の「長者」の漢字に対する振り仮名としての平仮名の表記方法の一つであったと考えることができるものであり、「じや」の部分についても拗音を表したものと評価することが必ずしも否定できないから、前記2のとおり判断するのが相当であり、請求人の主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者がその請求に係る指定商品に含まれる前記商品について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用をしていたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、その取消請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
本件商標


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審理終結日 2011-02-18 
結審通知日 2011-02-23 
審決日 2011-03-25 
出願番号 商願昭45-106320 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (130)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
酒井 福造
登録日 1972-08-02 
登録番号 商標登録第974493号(T974493) 
商標の称呼 チョージャ 
代理人 福田 伸一 
代理人 加藤 恭介 
代理人 神保 欣正 
代理人 福田 賢三 

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