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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X18
審判 全部申立て  登録を維持 X18
管理番号 1235038 
異議申立番号 異議2010-900177 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-06-21 
確定日 2011-03-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第5310152号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5310152号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5310152号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成21年9月7日に登録出願され、第18類「皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」を指定商品として平成22年3月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4985203号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成17年11月15日に登録出願され、第3類、第14類、第18類、第25類及び第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として平成18年9月8日に設定登録されたものである。
同じく登録第4985204号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成17年11月15日に登録出願され、第3類、第14類、第18類、第25類及び第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として平成18年9月8日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1及び2を一括して、単に「引用商標」ということがある。

第3 登録異議申立ての理由の要点
申立人は、登録異議申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む)を提出している。
1 引用商標は、申立人の親会社である世界的に有名な衣料品企業「Abercrombie&Fitch Co.」(以下「アバクロ社」という。)の業務に係る商品及び役務の商標として我が国における取引者・需要者の間において著名なものとなっているところ、本件商標と引用商標とは、外観上多くの共通点を有し、「ヘラジカ」の称呼及び観念において共通すること、及び本件商標の指定商品はアバクロ社の業務に係る商品と一致するか極めて近似したものであることを考慮するならば、本件商標をその指定商品に使用した場合、アバクロ社又は同社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。

2 本件商標は、著名なアバクロ社の業務に係る引用商標と酷似した類似の商標であり、引用商標の著名性ないしは名声にただ乗りする意図(不正の利益を得る目的)をもって出願されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものである。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、その商品のすべてについて、商標法第4条第1項第15号または同第19号に違反してされたものであるから、その登録は、同法第42条の2の規定により、取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性
ア 甲第1号証ないし甲第16号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)甲第1号証は、フリー百科事典「ウィキペディア」における「アバクロンビー&フィッチ」の項の検索結果写しと認められるところ、右下隅の「2010/09/18」の数字からして2010年9月18日にプリントアウトされたものといえる。その掲載内容は、アバクロ社について紹介するものであり、冒頭に「アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie&Fitch)は、カジュアルファッションブランド、及び、同ブランドの製品の製造・販売を行う企業。本社は、アメリカ合衆国オハイオ州ニューオールバニ。日本での通称はアバクロ。」、「アバクロンビー&フィッチ以外に、子供向けのアバクロンビー(abercrombie)、ティーンエイジャー向けのホリスター(Hollister Co.)、下着専門のギリーヒックス(Gilly Hicks)という店舗を展開している。」と記載され、「姉妹ブランド」の見出し下に「アバクロンビー&フィッチのほかに、1998年からはセカンドラインとして『アバクロンビー(abercrombie)』(7-16歳が客層)、2000年からはセカンドラインとして『ホリスター(Hollister Co.)』(14-18歳が客層)、2008年からは『ギリーヒックス(Gilly Hicks』」という下着・ラウンジウェアのブランドを展開している。・・・・ロゴマークはヘラジカ。・・・」と記載されているほか、会社の歴史等が記載され、東京銀座旗艦店、店舗及び1909年のカタログの各写真が掲載されている。店舗の写真によれば、玄関先に「Abercrombie & Fitch」の看板が掲げられている状態が分かる。しかしながら、ヘラジカと称される引用商標の図形を表したものは一切見当たらない。
(イ)甲第2及び第3号証は、いずれも商品「シャツ」の写真と認められるところ、甲第2号証のシャツには、胸部分に引用商標1と略同様の標章がワンポイントマークとして付されているほか、左袖部分に「ABERCROMBIE」の文字が大きく表示され、襟ネーム部分にも不鮮明ながら「Abercrombie」と思しき標章が付されている。甲第3号証のシャツには、胸部分に引用商標2と略同様の標章がワンポイントマークとして付されているほか、襟ネーム部分に「Abercrombie & Fitch」の標章が付されている。
(ウ)甲第4及び第5号証は、引用商標1及び2の書誌事項の写しであり、両商標の周知性とは直接関係するものではない。
(エ)甲第6号証は、英文によるアバクロ社に係る年次報告書の抜粋写しと認められるところ、同社のNet Sales(純売上高)として2009年$2,928,626、2008年$3,484,058、2007年$3,699,656、2006年$3,284,176、2005年$2,768,164との記載や、「2009年度末において、アバクロ社が1125店舗を運営していました。」(申立人訳文による)等の記載が見られるが、引用商標を使用した商品の詳細は一切不明である。
(オ)甲第7号証は、本件商標の登録出願後である2009年(平成21年)12月7日に発行された週刊誌「ウィメンズ・ウェア・デイリー・ジャパン」の抜粋写しと認められるところ、「12月15日11時、銀座店開店へカウントダウン!即戦『アバクロ』基礎事典」との表題の下に、「プロ向けのハンティング・キャンプ釣具店として1892年創業」、「年商3,080億円で世界ランク7位!」、「本社はオハイオ、日本は100%直営展開」、「アイコンはムースとB.ウェーバーのヴィジュアル!」、「コンセプトは『カジュアルラグジュアリー』」、「姉妹・兄弟ブランドは?」等の項目が設けられると共に、店舗等の写真が掲載されている。「アイコンはムースとB.ウェーバーのヴィジュアル!」の項目には引用商標2と略同様の標章が表示されている。
(カ)甲第8及び第9号証、第10号証の1ないし5は、いずれも本件商標の登録出願前に発行された雑誌の抜粋写しと認められるところ、これらの雑誌においては、アバクロ社の業務に係る商品について、「Abercrombie&Fich」、「ABERCROMBIE & FICH」、「アバクロンビー&フィッチ」又は「アバクロ」として紹介しているものが殆どであり、同時に掲載された写真による商品も胸部に「Abercrombie&Fich」、「A&F」、「ABERCROMBIE」、「ABERCROMBIE ATHLETIC」等の標章が付されているものが散見される程度であり、ワンポイントマークとして引用商標1又は2が付されている商品は見当たらない。上記雑誌中で引用商標が掲載されているのは、唯一甲第9号証の雑誌のみであり、それも「誰もが気にする超人気ブランド”アバクロ”が欲しい!」の見出し下にワンポイントマークとして円輪郭内に引用商標1と思しき図形が表示されているにすぎない。
(キ)甲第11号証は、ウェブサイト「銀座経済新聞」の写しと認められるところ、右下隅の「2010/02/05」の数字からして2010年2月5日にプリントアウトされたものといえるが、その内の「米人気ブランド『アバクロ』、銀座にアジア初の旗艦店出店へ」との掲載記事には「2007年08月16日」の日付が付されていることから、記事内容は本件商標の登録出願前である2007年8月16日現在のものとみて差し支えない。しかしながら、同記事には、引用商標については一切記載されていない。
(ク)甲第12号証の1ないし3及び第13号証の1ないし3は、いずれも本件商標の登録出願後に発行又はプリントアウトされた新聞又はウェブサイトの写しと認められるところ、その内容は、アバクロ社が2009年(平成21年)12月15日に東京銀座に日本1号店を出店したことを中心に報道するものであり、「アバクロンビー&フィッチ」、「アバクロンビーアンドフィッチ」、「アバクロ」等の表示はみられるものの、引用商標については一切記載されていない。
(ケ)甲第14号証は、別件の異議の決定の写しと認められるところ、同異議の決定では、商標「Abercrombie&Fich」について判断されているものの、引用商標については何ら言及されていない。甲第15号証は、ヘラジカの剥製を撮影した写真であって、引用商標の周知性と直接関係するものではない。
(コ)甲第16号証の1及び2は、2010年9月18日にプリントアウトされた「HYDROGEN」に関するウェブサイトの写しと認められるところ、該ウェブサイト中に示された標章は、本件商標及び引用商標とは態様を異にする第三者のものである。
イ 前記アで認定した事実によれば、申立人の提出に係る証拠は、「Abercrombie & Fich」又は「アバクロンビー&フィッチ」の商標に関するものが殆どであり、引用商標に関するものはごく僅かしか見当たらず、該証拠によっては、「Abercrombie & Fich」又は「アバクロンビー&フィッチ」の商標がアバクロ社の業務に係る商品を表示する商標として広く知られていることが窺えるとしても、引用商標が本件商標の登録出願時において取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
他に、引用商標が、本件商標の登録出願時において、アバクロ社の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めるに足る証拠はない。

(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、四つ足の動物をシルエットで表した図形からなるところ、その頭部が大きく、特に鼻と思われる部分が長大であること、目と思われる部分に二つの小円で白抜きしてあること、角と思われる部分の形状が扁平であること、胴体部分が太く、4本の足は短いこと、などからして、如何なる動物を表したものか直ちに判別し難く、全体として抽象的でずんぐりした印象を与えるものである。
他方、引用商標1は、四つ足の動物をシルエットで表した図形からなるところ、頭部は小さいこと、角が枝分かれしていること、4本の足も長く、胴体とのバランスもよいことなど、ヘラジカの特徴を端的に捉えて描いたものといえる。
引用商標2は、線書きによるものであって、引用商標1よりもさらに一層ヘラジカを具象的に描いたものとして認識し把握されるものである。
しかして、本件商標及び引用商標の図形における上記特徴に照らし、本件商標と引用商標は、看者に全く別異の印象を与えるものであり、時と処を別にして両者を観察しても、外観上、彼此相紛れるおそれはないというべきである。
また、本件商標は、上記のとおり、如何なる動物を表したものか直ちに判別し難く、特定の称呼及び観念を生ずるものとは認められないから、称呼及び観念について引用商標と比較すべくもない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

(3)出所の混同
前記(1)及び(2)の認定のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、アバクロ社の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものとはいえず、また、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であるところからすれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品がアバクロ社及び申立人又はこれらと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

2 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、アバクロ社の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものとはいえず、また、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
また、本件商標が不正の利益を得る目的、他人たるアバクロ社又は申立人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。

3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標1


(3)引用商標2


異議決定日 2011-02-15 
出願番号 商願2009-68398(T2009-68398) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X18)
T 1 651・ 222- Y (X18)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小川 きみえ
小林 由美子
登録日 2010-03-19 
登録番号 商標登録第5310152号(T5310152) 
権利者 アーバン エルク エーピーエス
代理人 浅村 肇 
代理人 石田 昌彦 
代理人 田中 克郎 
代理人 渡部 寛樹 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 岡野 光男 
代理人 土屋 良弘 
代理人 浅村 皓 
代理人 高原 千鶴子 

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