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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 109
管理番号 1234857 
審判番号 取消2010-300545 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-05-21 
確定日 2011-03-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第1475414号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第1475414号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1475414号商標(以下「本件商標」という。)は,「MARC」の文字を横書きしてなり,昭和53年12月20日に登録出願,第11類「点滅器,開閉器,接続器」を指定商品として昭和56年8月31日に設定登録され,その後,平成4年6月29日及び平成13年9月4日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ,さらに,平成14年7月10日に指定商品を第9類「点滅器,開閉器,接続器」とする書換登録がされているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1ないし第4号証を提出している。
1 請求の理由
請求人の調査によれば,本件商標は,その指定商品について継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず,本件商標を使用していないことについて何ら正当な理由が存することも認められない。
また,本件商標には,他人に専用使用権若しくは通常使用権を許諾した形跡はなく,登録されていない通常使用権者が本件審判請求の日前3年以内に,日本国内で本件商標を使用しているとの事実も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
2 弁駁の理由
不使用取消請求に係る本件商標の取消を免れるためには,被請求人が審判請求の登録前3年以内に商標権者,通常使用権者等が請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標を使用している事実を証明しなければならない。
しかしながら,答弁書及び答弁書で示された証拠方法をみると,本件商標の使用事実は十分に証明されていないものと思料する。
(1)商標的使用について
(ア)答弁書で被請求人がいみじくも述べているように,被請求人会社の商品カタログ「配線器具総合カタログ」2010-2011(乙第1号証)に示されている表示「マーク」は,「埋込マークスイッチ」,「埋込オーロラマークスイッチ」及び「埋込オーロラマークスイッチ」であり,「マーク」部分とその前後が結合した一連の表示である。常識的に考えて,需要者・取引者がこの中の「マーク」を商標であると認識するとは考え難い。需要者がこのような一体的な表示の一部を捉え,抜き出して,その一部をもって自他商品を識別するとは思われないからである。
しかも,「マーク」の文字は,日本人にとって一般的に,「MARK」を想起させる語であり,識別力の乏しい語といえる。実際,乙第1号証の96頁の「埋込マークスイッチ」の右に「(スイッチ部のカードホルダーに,マークカードが入ります)」と記載されている。
また,添付のコピーのカタログからはよく見えないが,被請求人会社のウェブサイトにより,パソコン画面上で商品カタログの当該頁の「埋込マークスイッチ」等の商品写真をよくみると,「マークスイッチ」の商品写真のスイッチ部に上部には透明なカバー状のものが被せられていることが分かり,98頁の寸法図からも,普通のスイッチと較べると,スイッチの上部に何かが被せられていることが分かる(甲第3号証)。
さらには,本件商標の使用に係る商品ではないが,「マークスイッチ」という表示が使用されている(甲第3号証47頁)。
これらを総合して考えると,被請求人会社は,上記「埋込マークスイッチ」等における「マークスイッチ」の表示を,スイッチ部の上部に透明なカバーを被せ,そこに表示カードが入れられるようにした「スイッチ」であることを表わす語として使用しており,需要者・取引者も「マークスイッチ」がそのようなスイッチであることを容易に認識するものと思われる。このように,需要者等の一般的な常識や上記状況を考え併せると,「埋込マークスイッチ」等における「マークスイッチ」の表示は,自然に一体で捉えられるものであり,需要者等が「マーク」の部分を商標と捉えることはまずないと考えるのが自然である。
(イ)被請求人は,乙第1号証における「埋込マークスイッチ」等の「マーク」の部分は青色で表示されているので,「マーク」部分が自他商品識別標識として機能しているとしている。
しかし,本来的に識別力を有さない表示が,青色で表示した程度で自他商品識別力を発揮するとは到底思えない。需要者は,この青色の表示はマークカードが入る「スイッチ」であることを強調している程度にしか捉えないであろう。なお,この青色表示は,2008-2009版(乙第2号証)やそれ以前の2006-2007版(甲第4号証)にもなく,2010-2011版から突然このような着色がされていることは奇異といえば奇異に感じられる。
(ウ)以上のように,被請求人が答弁書で本件商標の使用としている標章(以下「使用商標」という。)は,出所識別表示として機能するものではないので,商標的使用といえるものではなく,本件商標の使用の事実を証明するものではない。
(2)商標の同一性について
上述のように,被請求人の示す使用商標は商標的使用といえるものではないが,仮に商標的使用とした場合にも,本件商標の使用を示すものではないと考える。
被請求人は,「使用商標は本件商標と同一の称呼が生じるものであるから,両商標は社会通念上同一の商標である」としている。
ここで,商標法第50条第1項括弧書き例示の類型以外の使用標章が登録商標と社会通念上同一といえるか否かを判断する場合には,審査便覧の53-01「登録商標の不使用による取消審判」に示す「登録商標の認定に関する運用の事例」(以下「事例」という。)が実務上の判断の基準となる。
本件の場合には,ローマ字の登録商標に対し,使用標章が片仮名文字であるので,事例の例2に該当する。これによると,「ラブ」と「love」,「ポスト」と「post」のように,登録商標と使用標章から同一の称呼及び観念が生じる場合,いわゆる「一対一対応」の場合に,社会通念上同一の商標と判断される。
これを本件の場合で考えてみると,被請求人が述べているように,本件商標「MARC」からは「マーク」のみならず,「マルク」の称呼をも生じ得る。次に,観念については,「MARC」から,一般的な日本人は即座にはその意味が思い浮かばないのではなかろうか。ちなみに,英和辞書を紐解くと,「(ブドウなどの)しぼりかす,男子名の『マーク』やドイツの画家の名前」といった意味であるとされる。一方,使用商標「マーク」は,誰でも「MARK」に通ずる「しるし」の意を直感する。つまり,使用商標と本件商標とは,特に観念において,相互に「マーク」→「MARC」の矢印も,「MARC」→「マーク」の矢印も書くことはできない。本件商標と使用商標は同一の称呼及び観念が生じる関係,いわゆる「一対一」の関係にないことは明らかである。
このように,仮に商標の使用であるとした場合でも,使用商標は,本件商標と社会通念上同一のものではなく,その使用は本件商標の使用の事実を示すものではないことは明らかである。
(3)以上のように,被請求人提出の証拠によっては,被請求人等によって審判請求登録前3年以内に本件商標が使用されたことは何等証明されていない。このような商標の使用では登録商標に信用も蓄積されないから,発生した信用も消滅したとして本件商標の登録は取り消されてもやむを得ないとするのが相当である。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1ないし第3号証を提出している。
1 本件商標の使用事実の要点
本件商標については,被請求人である商標権者が,本件審判の請求の登録前3年以内に我が国において,その請求に係る指定商品中の「点滅器,開閉器」について使用している。
2 本件商標の使用の事実
(1)商標の使用者
被請求人は,本件商標の使用証拠として,「配線器具総合カタログ2010-2011」の抜粋写し(乙第1号証)及び「配線器具総合カタログ2008-2009」の抜粋写し(乙第2号証)を提出する。乙第1及び第2号証の表紙に,被請求人の名称である「神保電器株式会社」が記載されている。これによって,本件商標の商標権者自身が,本件商標の使用者であることが示される。
(2)「使用商標」と「使用に係る商品」
(ア)乙第1号証の96-97頁に,使用商標である「マーク」の記載がある。この使用態様は,「埋込マークスイッチ」,「埋込オーロラマークスイッチ」及び「オーロラマークスイッチ」との記載から,一見,「マーク」部分とその前後が結合した一連の記載に見える。しかしながら,該当頁を拡大しカラーでコピーしてみると(乙第3号証),「マーク」部分は青色の文字で表示されており,「マーク」部分が自他商品識別標識として機能しているといえる。
(イ)上記使用商標の使用に係る商品は,乙第1号証の96-97頁及び乙第2号証の90-91頁に列挙された「点滅器」及び「開閉器」である。電灯を点灯させるためのスイッチとして使用される場合は「点滅器」であり,風呂等の換気扇のオン・オフスイッチとして使用される場合は,「開閉器」である。
(3)使用時期
(ア)乙第1号証の表紙には,「配線器具総合カタログ 2010-2011」と記載され,その裏表紙には,「2010-04-SUN PRINTED IN JAPAN」と記載されている。
これにより,2010年4月に印刷された上記カタログが,取引者・需要者等に頒布され,本件審判請求がされた平成22年5月21日以前から,本件商標が使用されていることが示される。
(イ)乙第2号証の表紙には,「配線器具総合カタログ 2008-2009」と記載され,その裏表紙には,「カタログ掲載内容は,2008年6月21日現在のものです。」と記載されている。
これにより,本件審判請求がされた平成22年5月21日以前から,本件商標が使用されていることが示される。
(4)本件商標と使用商標の同一性について
本件商標は,ゴシック体による「MARC」であるが,商標権者が使用している使用商標は,カタカナの「マーク」である。使用商標は,登録商標自体ではないが,以下の理由から,登録商標と社会通念上同一と認められると確信する。
(ア)被請求人である商標権者は,乙第1号証に見られるように,カラー刷で装丁の立派な商品カタログを,良質紙を使用して多大な費用を投じて定期的に作成し,一貫して,頒布してきた。
これらの商品カタログを通して,被請求人である商標権者は,取引者・需要者等に,本件商標を付した商品をアピールしてきたのであり,その結果,取引者・需要者等に「マーク」は定着し,何らクレームも受けていない。
(イ)なお,称呼に関し,本件商標の自然な称呼は,「マーク」である。本件商標は,「マルク」と読めないこともないが,ドイツの旧貨幣単位である「マルク」のスペルは,「MARK」(末尾がK)であること,日本人にとって,ドイツ語読みは,一般的ではなく,審査基準で記載されている「需要者の通常有する注意力を基準」とすれば,英語読みあるいはローマ字読みで「マーク」と読むのが自然であり,一般的である。
過去の登録例でも,「MARC」について,特許庁で以下の称呼が付されていることは,その証左といえる。
・商標登録第1589991号商標「Marc estel」(マークエステル)
・商標登録第2226246号商標「MARC BUCHANAN」(マークブキャナン,マークブチャナン)
・商標登録第5079310号商標「MARC FISHER」(マークフイッシャー,マーク)
仮に,本件商標を使用商標に変更使用したという杓子定規な理由により,不使用であるとして登録が取消されるならば,多大な費用を投じて商標登録制度を利用した商標権者に,経済的損失を強いるとともに,需要者の商標制度への信頼をかえって失わせることになり,商標制度の崩壊を招くものと考える。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者自ら上記の指定商品について使用していることが明らかであるから,本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 商標としての使用について
被請求人は,本件商標をその指定商品中の「点滅器,開閉器」について使用している旨主張し,証拠(乙第1ないし第3号証)を提出している。
ところで,商標の本質は,当該商標を使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの(商標法第3条第2項)として機能すること,すなわち,商品又は役務の出所を表示し,識別する標識として機能することにあると解されるから,商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には,形式的には同法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても,当該行為は,商標の「使用」に当たらないと解するのが相当である(東京地裁平成20年(ワ)第34852号,平成22年11月25日判決参照)。
これを本件についてみるに,被請求人の提出に係る乙第1ないし第3号証の商品カタログには,「工事用配線器具」として,各種スイッチが写真と共に掲載され,それぞれの機種毎に「埋込スイッチ」,「埋込マークスイッチ」,「ガイド用埋込オーロラスイッチ」,「ガイド用埋込オーロラマークスイッチ」,「チェック用オーロラマークスイッチ」等の表示が記載されている。被請求人は,上記表示のうち,「埋込マークスイッチ」,「ガイド用埋込オーロラマークスイッチ」,「チェック用オーロラマークスイッチ」について,それらの構成中の「マーク」の文字部分が自他商品識別標識として機能している旨主張している。
しかしながら,上記「埋込マークスイッチ」,「ガイド用埋込オーロラマークスイッチ」及び「チェック用オーロラマークスイッチ」の表示については,一連一体に表されているばかりでなく,「スイッチ部のカードホルダーに,マークカードが入ります。」との文章が括弧書きで記載されていることからすると,上記表示中の「マークスイッチ」の文字は,何らかのしるしを付したカード(マークカード)を挿入することができる機構(カードホルダー)を備えたスイッチであることを端的に示すものとして認識し理解されるとみるのが自然である。
このことは,請求人の提出に係る甲第3号証(乙第1号証の商品カタログと同じものと認められる。)によれば,商品の寸法図の頁に示された「埋込マークスイッチ」,「ガイド用埋込オーロラマークスイッチ」及び「チェック用オーロラマークスイッチ」の各図面には,スイッチ上部に,他のスイッチにはない何かが被されているように表されていること,また,「スイッチ附属品」として,「玄関」,「廊下」,「階段」等の文字を印刷した「マークスイッチ用ネームカード」が用意されていること,「マークスイッチ用ネームカード」の欄に,スイッチの図と共に「プレートをはずし・・・。文字入りのネームカードを入れて,蓋を閉める。」と説明されていること,などが認められることからも首肯し得るものである。
そうすると,上記「埋込マークスイッチ」,「ガイド用埋込オーロラマークスイッチ」及び「チェック用オーロラマークスイッチ」の表示から,「マーク」の文字部分のみが,分離抽出されて,自他商品の識別標識たる商標として認識し把握されるというようなことはないというべきであり,該「マーク」の文字部分は,自他商品の識別標識としての機能を果たすものではなく,「商標」としての「使用」には当たらないといわなければならない。
2 商標の同一性について
前示のとおり,乙第1ないし第3号証に示された「マーク」の文字は,商標としての使用とはいえないものであるが,仮に商標としての使用に当たるとしても,以下のとおり,該「マーク」の文字は,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。
すなわち,「マーク」の文字は,「しるし,記号,マーク」を意味する英語「mark」又は同義の外来語を容易に想起させるというのが自然であり,本件商標の綴り「MARC」を直ちに想起するものとは到底いえない。しかも,「MARC」の文字は,「マーク」と発音されるとしても,「(ぶどうなどの)絞りかす,マール(ぶどう・りんごなどの絞りかすから蒸留して造ったブランデー)」の意味を有する英語であり(例えば,研究社発行「新英和中辞典」参照),上記「mark」とは明らかに異なる語であって,「しるし,記号,マーク」の意味合いを想起させるものではない。そうすると,使用に係る「マーク」の文字は,本件商標「MARC」と常に観念上同一のものとして認識し把握されるとはいえないから,商標法第50条第1項括弧書きにいう「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」には該当しないものというべきである。
3 むすび
以上のとおりであるから,被請求人の提出に係る証拠によっては,本件商標がその指定商品中の「点滅器,開閉器」について使用されていることが証明されたものとは認められない。
他に,本件商標がその指定商品について本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていることを認めるに足る証拠はない。
したがって,本件商標は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,その指定商品について商標権者,専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用されていなかったものといわざるを得ないし,その使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められないから,商標法第50条第1項の規定に基づき,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-12-24 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-25 
出願番号 商願昭53-93131 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (109)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 1981-08-31 
登録番号 商標登録第1475414号(T1475414) 
商標の称呼 マーク、マルク 
代理人 渡邊 隆 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 小田 治親 
代理人 鈴木 博久 
代理人 志賀 正武 

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