• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200335431 審決 商標
無効2009890134 審決 商標
不服200222255 審決 商標
無効2008890132 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X293539
審判 全部無効 外観類似 無効としない X293539
管理番号 1233472 
審判番号 無効2010-680002 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-03-05 
確定日 2011-01-05 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第0970713号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第970713号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、2008年(平成20年)6月5日を国際商標登録出願、第29類「The dried meat;the dried fish;raisins;frosted fruits;fruit pulp;butter;cream (dairy products);peanut butter;nuts,prepared;peanuts,processed.」、第35類「Advertising;publication of publicity texts;publicity;bill-posting;outdoor advertising;direct mail advertising;distribution of samples;television commercials;advertising agencies;modelling for advertising or sales promotion;dissemination of advertising matter;exhibition services of goods for advertising and commercial purposes;business management assistance;business management and organization consultancy;marketing studies;business appraisals;business research;commercial or industrial management assistance:office machines and equipment rental;office machines and equipment rental;arranging newspaper subscriptions;import-export agencies;public relations.」及び第39類「Air transport;transport of travelers;freighting;transport;parcel delivery;guarded transport of valuables;storage of goods;transport reservation;booking of seats;packaging of goods.」を指定商品及び指定役務として、2009年(平成21年)9月3日に登録査定され、同年11月13日に我が国において設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する商標は以下のとおりであり、いずれも有効に存続しているものである。
(1)商標登録第3118053号(以下「引用商標1」という。)
商標 別掲(2)のとおり
指定役務 第39類「車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,自動車の貸与,航空機の貸与,飛行機による現金・貴重品の輸送」
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成8年1月31日
(2)商標登録第3118050号(以下「引用商標2」という。)
商標 別掲(3)のとおり
指定役務 第39類「タ?ボジェット機による旅客の輸送,タ?ボジェット機による貨物の輸送」
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成8年1月31日
(3)商標登録第3202397号(以下「引用商標3」という。)
商標 別掲(2)のとおり
指定役務 第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,通訳,翻訳」
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成8年9月30日
(4)商標登録第3118048号(以下「引用商標4」という。)
商標 別掲(4)のとおり
指定役務 第39類「タ?ボジェット機による旅客の輸送,タ?ボジェット機による貨物の輸送」
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成8年1月31日
(5)商標登録第3118051号(以下「引用商標5」という。)
商標 別掲(5)のとおり
指定役務 第39類「車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,自動車の貸与,航空機の貸与,飛行機による現金・貴重品の輸送」
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成8年1月31日
(6)商標登録第3202395号(以下「引用商標6」という。)
商標 別掲(5)のとおり
指定役務 第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,通訳,翻訳」
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成8年9月30日
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証を提出している。
1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであること
(1)本件商標の構成
本件商標は、首の長い大型の鳥が首を左上方に向け、翼を広げている姿を黒塗り円図形の中に白抜きで表し、鳥のくちばし部分の先端と尾の先端が円の外に少しはみ出して黒で描かれているものである。
翼部分は平行四辺形様の角張った形状で表され、3箇所の横長の長方形の切れ込みがある。また頭部には、後方に突き出た突起があり、頭頂部からくちばし部分にかけて段差が見られる。
上述のような態様から、本件商標は首の長い大型の鳥が左上方へ飛翔している姿をやや直線的に、写実的というより抽象化・図案化した態様で表しているものと看取される。
(2)引用商標の構成
引用商標1ないし引用商標3は、黒色で描かれた円の内部に首の長い大型の鳥が首を左上方に向け、翼を広げている姿を黒色で表してなる。
また、引用商標4ないし引用商標6は、「Lufthansa」の欧文字を横書きしてなる標章の左側に黒色で描かれた円の内部に首の長い大型の鳥が首を左上方に向け、翼を広げている姿を黒色で表してなる図形を配してなる。
なお、引用商標4ないし引用商標6において、文字と図形を一体のものとしてのみ把握しなければならない格別の事情は存在しないから、図形部分はそれ自体独立して自他役務の識別標識としての機能を果たしうるものである。(以下、引用商標1ないし引用商標3及び引用商標4ないし引用商標6の図形部分を併せて「引用図形商標」という。)
具体的に見ると、引用図形商標の鳥の翼部分はやや横長の平行四辺形様の角張った形状で表され、3箇所の横長の長方形の切れ込みがある。また頭部には、後方に突き出た突起があり、頭頂部からくちばし部分にかけて段差が見られる。
上述のような態様から、引用図形商標は首の長い大型の鳥が左上方へ飛翔している姿をやや直線的に、写実的というより抽象化・図案化した態様で表しているものと看取される。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 図形商標の類否判断(審決例)
図形商標の類否に関する審決例(平成10年異議90737号(甲8)、平成11年審判第35514号(甲9)、平成10年異議91373号(甲10)、異議2000-90580号(甲11)、異議2002-90167(甲12)、異議2003-90263(甲13)、無効2004-89106(甲14))から、時と所を異にして図形商標に接した場合には、
a 両者を対比観察して初めて分かるほどの細かな相違は捨象され、
b 需要者の印象に強く残るのは基本的構成部分であり、
c したがって、基本的構成においてその構成の軌を一にするものであれば、相紛れるおそれのある外観上類似の商標である、
と言うことができる。
イ 本件商標と引用図形商標の類否に関する具体的検討
本件商標と引用商標は、ともに首の長い大型の鳥が左上方に向けて羽ばたいている姿が描かれているという点が一致するのみならず、翼が平行四辺形様の角張った形状で3箇所の切れ込みがある、頭部からくちばしに掛けての段差がある、頭頂部から後方に向けて伸びる突起があるといった点においても共通している。
これらの共通点から、本件商標と引用図形商標は、ともに首の長い大型の鳥が左上方へと翼を広げて飛翔している姿が写実的というより抽象的に図案化して表されている、という基本的構成において、その構成の軌を一にするものである。
一方で、本件商標と引用図形商標は、平行四辺形様の角張った形状で描かれた翼の縦横比や鳥図形を囲む円形からのはみ出しの有無、頭頂部から後方に向けて伸びる突起の長さ等において相違する点も見受けられる。
しかし、これらの相違は両者を直接対比して子細に観察して初めて認識されるものであって、時と所を異にして離隔的に接する場合、必ずしも図形の細部まで正確に記憶しているとは限らないから、上述のような両者の構成上の差異は、両者を区別しうるほど顕著な特徴として看者に強い印象を与えるものではなく、むしろ商取引の場では捨象しうるものと見るのが妥当である。
そうすると、需要者の印象・記憶に強く残る部分は、ともに基本となる構成部分といわざるを得ないから、本件商標と引用図形商標の「首の長い大型の鳥が左上方へ向けて翼を広げて飛翔している姿」という基本的構成が共通しており、この部分が看者に強く印象づけられる以上、両者を時と場所を異にして離隔的に観察した場合には外観・形象が近似し、互いに相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。
被請求人は、本件商標は「白鳥や鶴、サギなどの大型の白い鳥が表されていることが看者に一見して把握される態様になっているのに対し、引用図形商標は、太い輪郭線を有する白抜きの円の中に配された形状が、鳥の特徴を集約というよりも捨象し歪形したものとなっている」と主張する。
しかし、本件商標の構成から「白鳥や鶴、サギ」といった具体的な鳥の種類を特定することは不可能である。また、「白い鳥」という点も、抽象的に図案化されている本件商標のような構成態様からは、看者は単に背景との関係で白抜きになっていると認識するにすぎず、「白い鳥」を描いてなるものと理解することはない。
ウ 実際の使用態様
実際の使用態様においても、両者は共に請求人・被請求人それぞれが運行する航空機の垂直尾翼に表され(甲15、甲16)、各ウェブサイトのトップページ左上部分にコーポレートマークとともに表されるなど(甲17、甲18)、ほぼ同様の使用態様で用いられている。
特に航空機の尾翼に表された場合には、需要者(航空機の旅客)はこれを比較的離れた位置から観察することが多いから、図形の細かい点まで看取することは不可能である。
エ 結論
したがって、本件商標と引用図形商標とは、外観において類似の商標であって、かつ本件商標の指定役務のうち、第39類に属するものは引用商標1ないし引用商標6の指定役務とは同一又は類似するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであること
(1)引用図形商標の周知・著名性
請求人は、1926年にドイツ・ベルリンで設立された所謂「フラッグキャリア」と呼ばれるドイツ最大の国際航空会社であり、世界89か国327都市に路線網を持つ、世界有数の大規模航空会社の1つである(甲19、甲20)。
ルフトハンザは、米国・ニューズウィーク誌の「最も安全な航空会社ランキング」の第1位に選出されているほか(甲19)、我が国の需要者間における航空会社の人気ランキングにおいてもその安全性、定時運行性や欧州におけるネットワークの充実が高く評価され、常に上位にランクインしている(甲21、甲22)。
そして、ルフトハンザ社のウェブサイトや運行する航空機の機体には引用図形商標が描かれていること(甲15)、全国紙である日本経済新聞(甲25)、雑誌「AERA」(甲26)、「エコノミスト」(甲27)にも引用図形商標を使用した広告を掲載するなど、積極的な宣伝活動を行っていることから、引用図形商標は請求人の業務に係る商品・役務を表す商標として広く知られているといえる。
被請求人は、甲第21号証ないし甲第23号証のインターネット記事(地球の歩き方エアライン・ランキング)には、引用図形商標の掲載はないため、これらの資料から引用図形商標の周知著名性は認められないと主張しているが、当該甲号証は、請求人が提供する航空サービスが周知・著名であることを示すものであり、引用図形商標は、当該航空サービスの提供に当たって使用されるものであるから、引用図形商標が我が国において周知・著名であることを間接的に示すものである。
また、本件商標の国際登録日である2008年6月5日より前に発行された出版物に掲載された広告として甲第28号証ないし甲第52号証を提出する。
(2)本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用図形商標が類似していることは、上記1で述べたとおりである。本件商標と引用図形商標は「首の長い大型の鳥が左上方へ向けて飛翔している姿」の基本的構成が共通し、構成上の軌を一にする互いに相紛れるおそれのある類似の商標である。
(3)出所の混同のおそれ
引用商標は、請求人の業務に係る商品・役務を表すものとして周知・著名であり、本件商標と引用図形商標は、外観上相紛れるおそれのある類似の商標である。
また、本件商標の指定商品・指定役務のうち、第29類の指定商品「乾燥肉、魚の干物、干しぶどう、糖衣果実、果肉、バター、クリーム(酪農製品)、ピーナッツバター、調理済みナッツ、加工済みピーナッツ」は、しばしば飛行機による輸送サービスに際して、旅客に有償又は無償で機内において提供されるものである。そして、第35類の指定役務についても、飛行機による旅客・貨物の輸送サービスと密接に関連するものである。
よって、本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合、被請求人が請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者であると誤認を生じるおそれがあることから、商品又は役務の需要者がその出所について混同を生じるおそれは極めて大きいといわざるを得ない。
特に今日の航空業界にあっては、複数の航空会社が航空連合と呼ばれる連合組織を結成し、同一連合内においてコードシェア便やマイレージサービスの相互乗り入れなどを行っている等の取引の実情を勘案すると、本件商標を使用することによって被請求人が請求人と何らかの緊密な営業上の関係を有するものである旨の誤認を生じうることから、広義の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
なお、被請求人は、本件商標を使用して指定役務に係る事業を積極的に行っていると主張しているが、被請求人自身が広告を掲載したのは乙第8号証及び乙第9号証のみであり、そのほかは旅行会社のパッケージツアーに使用される航空会社として掲載されているにすぎないから、被請求人自らが積極的に宣伝・広告を行っているとは言えない。また、日本国内における被請求人の事業活動を見ても、週4便程度就航しているに過ぎず、積極的に日本国内で事業展開を行っているとは言い難く、本件商標に被請求人の事業に係る信用の化体が見られるという被請求人の主張には根拠がない。
3 むすび
以上のように、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号に違反してされたものであり、同法第46条第1項第1号によりその登録は無効とされるべきものである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標の構成
本件商標は、首の長い大型の鳥が首を左上方に向け、翼を広げている姿を黒塗り円図形の中に白抜きで表し、鳥のくちばし部分の先端と尾の先端が円の外にはみ出して黒で描かれているものである。
黒塗り円図形とのコントラストにより鳥が白い鳥と看取され、鳥のくちばし部分の先端と尾の先端が円の外にはみ出している態様と相俟って、鳥が、例えば太陽の如くの円図形を背景として、飛翔している姿が看取されるものである。
請求人は、当該鳥の翼部分について「平行四辺形様の角張った形状」と記述している。しかし、当該翼部分の形状は左右が凹の曲線からなり、胴体と一体化してなるものであるから、「平行四辺形様」であるとは、いい難いものである。
さらに請求人は、本件商標は、首の長い大型の鳥が左上方へ飛翔している姿を「やや直線的」に表しているものと看取される、と結論付けているが、本件商標では、鳥の頭部先端から尾部末端にかけては明らかに「下に凸の曲線」上にあり、これにより、鳥が頭部及び尾部を上方に向け、胴部を反らせて飛翔する姿が表れているものであり、これを「やや直線的」と表現することは不可能である。
このように、本件商標の構成に関する請求人の認定には誤りがあり、本件商標の構成を認定するならば、「首の長い白い大型の鳥が、首と尾を上方に向けて胴部を反らせ、太陽の如くの円図形を背景として飛翔している姿」を表しているものと看取されるというべきである。
(2)引用商標の構成
引用図形商標は、太い輪郭線の円の内部に、鳥が左前方に向け翼を広げている姿を現してなる図形を配してなるものである。なお、引用商標2と引用商標4については、円の輪郭線及び鳥の図形が黒色ではなく、だいだい色で描かれているものである。
ここで、請求人は、当該鳥の特徴として「首の長い」ことを挙げているが、当該鳥の首は、全体が頭部の突起で覆われる程度の長さであり、頭部の大きさに比しても顕著に長いということはない。
これに対し、当該鳥の翼は、長さが体長の半分以上を占め、円の中心から右半分に顕著に表されており、看者に支配的な印象を与えるものである。
このため、引用図形商標に現れた鳥は「首の長い」というよりむしろ「翼の大きい」というべきである。
また、当該鳥の胴体は「ほぼ直線的」であり、若干ながら尾部は下に凸、頭部は上に凸に傾斜していることから、「左上方」ではなく「左前方」へ飛翔している姿というべきである。
そうすると、引用図形商標の構成に関する請求人の認定には誤りがあり、引用図形商標の構成を認定するならば、「翼の大きい鳥が、首を前方に向けて飛翔している姿を円の内側に配したもの」を表しているものと看取されるというべきである。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 審決例について
請求人は、本件商標と引用商標との類否判断するに当たり過去の審決例を挙げ、a)両者を対比観察して初めて分かるほどの細かな相違は捨象され、b)需要者の印象に強く残るのは基本的構成部分であり、c)したがって、基本的構成においてその構成の軌を一にするものであれば、相紛れるおそれのある外観上類似の商標であると言うことができる、と述べている。
ここで、如何なるものが「両者を対比観察して初めて分かるほどの細かな点」であるか、「基本的構成部分」とは何か、「基本的構成においてその構成の軌を一にする」か否かの具体的判断については、事案において個々に取引の実情が異なることから、単純に審決例との比較で採用できるものではなく、類否に関する具体的検討においては、登録された商標に基づき、案件ごとに個別具体的に判断すべきである。
イ 本件商標と引用図形商標の類否に関する具体的検討
請求人は、本件商標と引用図形商標が「ともに首の長い大型の鳥が左上方に向けて翼を広げて飛翔している姿が写実的というより抽象的に図案化して表されている」という点を「基本的構成」とし、その基本的構成において、「その構成の軌を一にするものである」と主張している。
しかし、上記(1)及び(2)に述べたように、本件商標と引用図形商標の構成に関する請求人の認定は誤りであり、請求人が「基本的構成」と主張する内容は、両者を対比観察して初めて分かるほどの細かな相違を捨象して需要者の印象に強く残る部分を抽出したものではなく、需要者の印象に残る相違点をも排除し、基本的構成であるか否かに関わらず共通点とみなしたものを列挙したに過ぎないといわざるを得ない。
このため、本件商標と引用図形商標とが「基本的構成においてその構成の軌を一にしている」との請求人の主張は、本件商標と引用図形商標との全体的外観が与える印象を反映しておらず、採用できないものと思料する。
(1)及び(2)で述べたように、本件商標は「首の長い白い大型の鳥が、首と尾を上方に向けて胴部を反らせ、太陽の如くの円図形を背景として飛翔している姿を表したもの」、引用図形商標は「翼の大きい鳥が、首を前方に向けて飛翔している姿を円の内側に配したもの」というべきである。
そして、「抽象化・図案化」の態様についても、本件商標では「大型の白い鳥」の特徴をより効果的に集約し強調して表現するものであって、その結果として本件商標は、白鳥や鶴、サギなどの「大型の白い鳥」が表されていることが、看者に一見して把握される態様となっているのに対し、引用図形商標は、太い輪郭線を有する白抜きの円の中に配された形状が、鳥の特徴を集約したというよりも捨象し歪形したものとなっており、このために、当該図形が抽象的な機械のような印象を与えるものとなっている。
以上の相違点から、本件商標と引用図形商標とは、看者に与える印象は互いに全く別異のものであるといえる。このため、本件商標と引用図形商標とを、時・所を異にし、請求人が主張するように航空機の垂直尾翼に表示されて比較的離れた位置から観察する場合であっても、それぞれ異なったものとして、看者に印象を与え、記憶されると見るのが相当であり、外観において相紛れるおそれはないというべきである。
ウ 結論
以上より、本件商標と引用図形商標とは、外観上、基本的構成においてその構成の軌を一にするものとは言えず、全体的印象を別異にするものであることから、互いに非類似の商標であるというべきである。したがって、請求人の主張は妥当ではなく、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用図形商標の周知・著名性について
請求人が提出する、甲第21号証、甲第22号証、甲第23号証は、それぞれ2005年度版、2007年度版、2008年度版の「地球の歩き方」エアライン・ランキング インターネット記事であるとのことであるが、これらの記事には、引用図形商標の掲載も、引用図形商標に関する記載もなく、引用図形商標との関係が示されていないため、これらの資料から、引用図形商標が本件商標の登録出願時において周知・著名であったことを認めることはできない。
また、甲第20号証の記事は2009年9月14日であり、甲第25号証ないし甲第27号証における広告も、本件商標の国際設定登録日より後に発行されたものであるから、甲第20号証及び甲第25号証ないし甲第27号証から、本件商標の登録出願時において引用商標が周知・著名であったと判断することはできない。
甲第19号証は、インターネット百科事典「ウィキペディア」の「ルフトハンザドイツ航空」の項のプリントアウトであるとのことであるが、いつ発行されたものであるか明らかにされていない。
したがって、請求人が提出する甲第19号証ないし甲第27号証からは、引用図形商標が、本件商標の登録出願時すでに我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることは、困難である。
したがって、商標法第4条第3項の規定により、引用図形商標との比較において、本件商標について商標法第4条第1項第15号を適用することはできない。
(2)本件商標と引用商標の非類似性
1で述べたように、本件商標と引用図形商標は外観上非類似の商標であるため、出所の混同を生じ得ない。
(3)結論
以上より、本件商標がその指定商品及び指定役務に使用されても、被請求人が請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者であるとの誤認は生じ得ず、需要者が商品又は役務の出所について出所の混同を生じるおそれはない。よって、請求人の主張は妥当ではなく、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 その他
被請求人は、国際路線及び国内路線における、航空運送事業等を目的として設立された法人であり(乙1)、国土交通省及び中国当局の許可を受け適法に国際航空運送事業を行う者である(乙2、乙3)。
また、本件商標と同一の商標は、韓国、香港、台湾、マカオで適法に登録されている(乙4?乙7)。
そして、被請求人は、日本経済新聞や中日新報等に広告を掲載するなどの宣伝活動を広く行い(乙8、乙9)、日本国内の各旅行会社が発行する旅行案内用のパンフレットに本件商標が掲載されているとおり(乙10?乙18)、過去及び現在において、本件商標を使用して、指定役務に係る事業を積極的に行っている。このように、本件商標は被請求人の事業に係る役務を表示するものとして機能し、当該使用により、本件商標には被請求人の事業に係る一定の信用の化体が見られる実態にあることを申し述べる。
4 むすび
以上より、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたということはできず、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすることはできない。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、別掲(1)のとおり、首の長い大型の鳥が首を左上方に向け、翼を広げている姿を黒塗り円図形の中に白抜きで表し、鳥のくちばし部分の先端と尾の先端が円の外に少しはみ出して黒で描かれているものであり、構成全体として、太陽若しくは満月の月を背景に大型の鳥が飛んでいる姿を想起させるものである。
また、鳥の図形は、翼を角張った形状にし、3箇所の切れ込みを入れて、抽象的に描いてなるものであるが、首を持ち上げ全身を弓なりにして、羽を大きく広げてゆったりと飛んでいるように描かれているものである。
他方、引用商標1ないし3は、引用図形商標からなるものであり、引用商標4ないし6は、引用図形商標と「Lufthansa」の文字よりなるものである(なお、引用商標1、3、5及び6は、図形又は文字部分が黒色であり、引用商標2及び4は、図形又は文字部分がだいだい色である。)が、引用商標4ないし6の構成中の引用図形商標部分も独立して自他役務の識別力を有するものと認められるものである。
そして、引用図形商標は、円形輪郭内に鳥の図形が描かれてなるものであるところ、その鳥の図形は、翼を角張った形状にし、3箇所の切り込みを入れて抽象的に描いてなるものであるが、やせ形の鳥が羽を大きく伸ばして左上方に向かって一直線に飛んでいるように想起されるものである。
そこで、本件商標と引用図形商標との類否についてみると、本件商標と引用図形商標とは、円形図形と左方向に飛んでいる鳥を抽象的に描いた図形からなる点において共通性があるということはできる。
しかし、本件商標と引用図形商標とは、円図形が輪郭線であるか、塗りつぶされているものであるかの相違があり、また、鳥の図形部分においても後述するように相違するものであるばかりでなく、本件商標は、前述のとおり、黒塗り円図形に、頭の部分と尾の先端部分が当該円図形からはみ出すように描かれ、全体として、太陽若しくは満月の月とその下で羽を大きく広げてゆったりと飛んでる鳥を想起させるものであるのに対し、引用図形商標は、一直線に飛んでいる鳥を想起させるものである。
そうすると、本件商標と引用図形商標とは、構成上顕著な差異を有するばかりでなく、看者に全く別異の印象を与えるものであるから、時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、需要者の通常の注意力をもってすれば、外観において、彼此相紛れるおそれはないというべきである。
また、本件商標と引用商標は、それぞれ上記印象を想起させるものであるが、特定の観念及び称呼を生ずるとはいえないから、称呼及び観念において、相紛れるおそれはない。
請求人は、需要者の印象・記憶に強く残る部分は、共に基本となる構成部分であり、本件商標と引用図形商標は、「首の長い大型の鳥が左上方へ向けて翼を広げて飛翔している姿」という基本的構成が共通しており、この部分が看者に強く印象づけられる以上、両者を時と場所を異にして離隔的に観察した場合には相紛れるおそれのある商標である、と主張している。
確かに、両者の鳥図形は、翼を角張った形状にし、3箇所の切り込みを入れて大型の鳥を抽象的に描いた点において描出方法に共通点はあるものの、本件商標の鳥図形は、首をやや持ち上げ、翼の付け根部分が体に広く接するようにし、翼の先端部分の切れ込み部分も浅くしてどっしりと描かれ、ゆったりと飛んでいる鳥を想起させるのに対して、引用図形商標の鳥図形は、首をまっすぐ左上方に向け、翼の付け根部分を細く描き、翼の切れ込みを深く広くして、一直線に飛んでいる鳥を想起させるものであるから、この印象と相まって、これらの差異が捨象されて認識されるとはいうことができない。したがって、請求人の主張は採用できない。
してみれば、本件商標と引用図形商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
そして、他に本件商標と引用商標1ないし6が類似するとすべき事情も見あたらない。
そうとすると、本件商標は、引用商標1ないし6と類似する商標とはいうことができない。
また、本件商標の指定商品及び指定役務、及び引用商標1ないし6の指定役務は、それぞれ前記第1及び第2のとおりであるところ、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標1、2、4及び5の指定役務と同一又は類似する役務であるが、引用商標3及び6の指定役務とは類似しないものと認める。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人提出の証拠によれば、請求人は、1926年に設立されたドイツ国最大の、世界でも十指に数えられる航空会社であり、我が国へも1961年から乗り入れ、その就航地は、成田国際空港、関西国際空港、中部国際空港である(甲19、甲20)。また、請求人の運行する航空機には、引用図形商標(青色の尾翼に黄色に塗られた円を描き、その円内に青色で描かれている。)が使用されており(甲15)、さらに、雑誌、新聞等において長年にわたって、広告・宣伝を行っていることが認められ(甲28?甲52)、請求人の我が国における運行は国際線であって、その就航地が限られるものであるとしても、引用図形商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の「航空機による輸送」の需要者に相当程度知られているものと認められる。
そして、引用図形商標は、鳥をモチーフにしているものであるが、抽象的に描かれ、相当程度の独創性を有するものであり、本件商標の指定商品及び指定役務は、「航空機による輸送」を含み、請求人の業務に係る役務とは、その取引者及び需要者は相当程度共通するものであるが、本件商標と引用図形商標とは、前記1のとおり相紛れるおそれのない別異の商標であり、取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としても、本件商標を上記指定商品及び指定役務に使用したときに、当該商品及び役務が請求人と一定の緊密な営業上の関係にある営業主の業務に係る商品及び役務であると誤信されるおそれがあるとはいえないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によって、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】





審理終結日 2010-07-30 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-09-01 
国際登録番号 0970713 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X293539)
T 1 11・ 261- Y (X293539)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 亨子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 板谷 玲子
瀧本 佐代子
代理人 加藤 義明 
代理人 吉川 俊雄 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 山崎 和香子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ