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審決分類 審判 一部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 125
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 125
審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 125
管理番号 1233420 
審判番号 無効2009-890039 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-04-30 
確定日 2011-03-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第1434359号商標及び登録第2721189号商標及び登録第4012493号商標及び登録第4015885号商標の商標登録無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求中、商標法第4条第1項第15号並びに不正競争防止法第2条第1項第1号及び同第2号を理由とする請求は却下する。その余の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 無効請求に係る商標
1 無効2009-890038号事件に係る登録第1434359号商標(以下「本件商標1」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和47年6月13日に登録出願、第17類「ネクタイ、その他本類に属する商品、但し、ポロシヤツ及びその類似品ならびにコ-トを除く」を指定商品として、同55年3月18日に登録査定、同年9月29日に設定登録されたものであり、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
また、本件商標1が設定登録されたときの商標権者は井後義之であるところ、その後、本権は、昭和58年12月19日に、丸永衣料株式会社(後に「公冠販売株式会社」改称されている。)への移転登録がされ、また、平成10年4月27日に、被請求人への移転登録がされている。

2 無効2009-890039号事件に係る登録第2721189号商標(以下「本件商標2」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年4月6日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く) 布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年2月27日に登録をすべき旨の審決がされ、同年5月2日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同20年8月6日に、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,湯たんぽカバー,座布団カバー,クッションカバー,こたつ布団,こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け」及び第25類「被服」を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
また、本件商標2が設定登録されたときの商標権者は公冠販売株式会社であるところ、その後、本権は、平成10年4月27日に、被請求人への移転登録がされている。

3 無効2009-890040号事件に係る登録第4012493号商標(以下「本件商標3」という。)は、「POLO」の欧文字と「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の欧文字とを二段に横書きしてなり、昭和63年11月9日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年4月28日に登録をすべき旨の審決がされ、同年6月13日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同20年8月6日に、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,湯たんぽカバー,座布団カバー,クッションカバー,こたつ布団,こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け」及び第25類「被服」を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
また、本件商標3が設定登録されたときの商標権者は公冠販売株式会社であるところ、その後、本権は、平成10年4月27日に、被請求人への移転登録がされている。

4 無効2009-890046号事件に係る登録第4015885号商標(以下「本件商標4」という。)は、「POLO BRITISH COUNTRY SPIRITS」の欧文字を横書きしてなり、昭和60年8月1日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く) 布製身回品(他の類に属するものを除く) 寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年4月28日に登録をすべき旨の審決がされ、同年6月20日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに同20年8月6日に、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,湯たんぽカバー,座布団カバー,クッションカバー,こたつ布団,こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け」及び第25類「被服」を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
また、本件商標4が設定登録されたときの商標権者は公冠販売株式会社であるところ、その後、本権は、平成10年4月27日に、被請求人への移転登録がされている。

以下、本件商標1ないし4を一括していうときは、「本件各商標」といい、また、審理を併合した上記審判事件を一括していうときは、「本件各審判」という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標1の登録を無効とする、本件商標2、本件商標3及び本件商標4の指定商品中第25類「全指定商品」の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第24号証(枝番を含む。)を提出した。なお、甲各号証については、審判請求事件により一部証拠番号が相違するため、以下、本件商標1に係る証拠番号を表示する。

1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件各商標「POLO」を日本国内及び海外の辞書、事典で調査したところ、世界的に有名な英語の辞書・事典には必ず「POLO」の項目があり、「POLO」は「スポーツ名」として必ず記載されている(甲第2号証の1ないし3)。また、本件各商標は、他人により有名になっており、多くの証拠によって周知の事実となっている。
したがって、本件各商標は、他人の創作にかかる「有名なブランド」(商標)ラルフ・ローレンのファッション・デザインの著作物の著作権を侵害し得ることになるから、商標法第4条第1項第7号の「公序良俗を害する商標」に該当し、商標登録を受けることができないものである。
証拠として、「ポロ/ラルフ・ローレン、絶えないパラサイトたちとの闘い」(不正商品対策コンサルタント 八木正夫 CIPIC ジャーナル Vol.105 2000年10月)を提出する(甲第3号証)。

(2)商標法第4条第1項第15号について
本件各商標は、他人(ラルフ・ローレン)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。
「POLO」商標については、現在まで、数多くの審査、審判等で「米国ラルフ・ローレンの著名性に便乗した」等の理由で拒絶、取消、無効の決定を得ており、また、裁判所でも同様の理由で登録を否定されている。
証拠として、「無効理由通知書」(甲第4号証)及び「東京高裁平成10年(行ケ)第108号事件」の判決文(甲第5号証)を提出する。
しかるに、被請求人のみが商標出願日等、諸々の条件によって、特別にそのような判断に従わなくてよいということであれば、国民に不公平感をみなぎらせ、失望させることになる。そして、商標法を否定し、国民の順法精神を削ぐことになりかねない。
そのような国民の不満を解消する上からも、共通の判断や認識を持てるような結論を得たい。

(3)商標法第4条第1項第19号について
本件各商標は、他人又はラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は海外における需要者間に広く認知されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
ア ラルフ・ローレンが使用していた商品力タログ(甲第6号証)と商標権者が使用していたカタログ(甲第7号証)とを比較して見るまでもなく、被請求人には、「不正競争の目的」があると思われる。

イ ラルフ・ローレンの平成21年4月30日現在のホームページと被請求人の同じ時期のホームページを見ると、両者には「POLO」の文字が書かれていてもスポーツのPOLOに関するイメージは全く無く、あくまでアメリカ「カジュアル」である。
被請求人のホームページを見ても、飛行機の絵柄、アメリカ車、プレスリー等のオールディーズの歌手、大陸横断鉄道、ルート66を思わせる道路標識、テキサスのガソリンスタンド等、また、商品もスタジャン(スタジアム・ジャンパー)、ポロシャツ等、アメリカのカジュアル・イメージそのものである。

ウ ラルフ・ローレンのホームページの最終ページを見ると、ラルフ・ローレンが米国で活躍を開始したのは1967年(昭和42年)であり、被請求人の本件各商標の登録出願は、昭和56年4月6日(審決注:本件商標1については、同47年6月13日の誤記、本件商標3については、同63年11月9日の誤記及び本件商標4については、同60年8月1日の誤記と認められる。)であるが、その当時、日本でラルフ・ローレンの米国での著名性はよく新聞・雑誌等で報じられていたため、被請求人がそれにヒントを得て商標登録出願をしたことは間違いないことであり、ラルフ・ローレンの著名性とイメージに便乗した不正な目的で商標登録を行ったといわざるを得ない(甲第8号証)。

エ 本件各商標は、明らかに「POLO」ブランドとして世界的に有名な米国のデザイナーであるラルフ・ローレンのブランドを真似て日本の消費者に誤認を与え、その著名性を利用して商品を販売する目的で商標登録されたものである。
興信所の調査資料によると、被請求人は、自己の使用を目的として本件各商標を保持しているのではなく、いわゆる「商標ブローカー」として、他人(カイタックファミリー、公冠グンゼ、リオンドール、カイ夕ックインターナショナル、グンゼ、フジボウアパレル、山喜、アイジーオー、ニッキー等9社)に本件各商標を使用許諾し、「POLO」まがいの商品を製造・販売させ、消費者にラルフ・ローレンとの誤認を与え、多額の金銭を得る等不正なビジネスを常習としている(甲第9号証)。
その主な該当商品を挙げれば、甲第10号証の1はグンゼの商品、甲第10号証の2は公冠グンゼの商品、甲第10号証の3は山喜の商品、甲第10号証の4はカイタックファミリーの商品、甲第10号証の5はニッキーの商品である。

オ 本件各商標は、グンゼ株式会社(以下「グンゼ」という。)に独占的に使用許諾され、被請求人とグンゼによって設立された別会社「公冠グンゼ株式会社」等によって製造販売されているが、実態は、グンゼそのものであり、グンゼの不正なビジネスのために利用されているのが現実である(甲第11号証及び甲第12号証)。

カ 被請求人は、本件各商標により、消費者に対してラルフ・ローレンの商品と誤認を与えるような活動を行っているので、その具体例を甲第13号証ないし甲第17号証として提出する。

2 弁駁の理由
(1)請求人の利害関係について
請求人は、海外の有名なブランド(名称)を使って日本国内での商品化事業を長年行っていた(甲第23号証の1ないし3、甲第24号証)。最近、海外に実在する「POLO CLUB」と契約して、その名称を使った事業を計画している。そのため、本件各商標の存在は、請求人の事業展開の障害となるので、無効審判請求を行ったものである。

(2)本案についての補足
ア 被請求人のビジネスは、不正である。ラルフ・ローレンの商品と消費者に誤認させるためである。そのような状況に関する資料を、甲第20号証として提出する。

イ 過去に、ラルフ・ローレンの日本進出の時、被請求人の本件各商標等が障害となり、ラルフ・ローレンは、不本意ながら被請求人と契約関係を作らされている。被請求人は、それを悪用して、過去30年以上にわたり、ラルフ・ローレン人気に便乗して年間数億円の不労所得を得続けている。被請求人の会社調査資料を、甲第21号証として提出する。

ウ 被請求人は、業界紙(繊研新聞、日本繊維新聞、センイ・ジャーナル)等で「POLO」商標について、自己の権利を主張し、日本国民に警告している。例えば、「POLOは、当社の承諾なく使用できません」、「無断使用行為はもちろん、類似する商標の使用は、故意であるか否かにかかわらず、私どもの権利を侵害するばかりでなく、商標法で定められた違法行為に該当します」(甲第13号証の1及び3)等とまるで「ラルフ・ローレンの警告文」と見間違えるようなアピールをしている。

エ 請求人は、12年前にも、実在する欧米の「POLO CLUB」との契約に基づき商品化事業を計画して、実際のクラブ名で商標出願を行ったが全て拒絶されている。それに比べて、本件各商標を維持させることは不公平であり、行政の一貫性を否定するものとなる(甲第22号証)。

オ 被請求人は、本件商標1を所有していると主張しているが、実際の使用をした例を見たことがない。必ず下に「BRITISH COUNTRY SPIRIT」を小さく書いて、有名なラルフ・ローレンとの区別を申し訳程度に行っている。それは、自己の不正なビジネスを打ち消すように気を配っているからである。しかし、実際は、消費者をして「ラルフ・ローレン」の商品と混同させる商法であり悪質である。

カ 本件商標3の主体は、「BRITISH COUNTRY SPIRIT」であり、その上に申し訳程度に小さく「POLO」の文字が書かれている。
これは「POLO」がラルフ・ローレンの関係で商標登録が出来ないのを逆手にとって「BRITISH COUNTRY SPIRIT」を強調して登録を得たにすぎない。しかし、実際の使用は、「POLO」を大書きして、その下に申し訳程度に「BRITISH COUNTRY SPIRIT」と書かれており、まったく逆の使用方法である。これはあくまで「POLO」を強調し、ラルフ・ローレンと関係がある商品のように消費者をだます手口で悪質である。

キ 本件商標4の主体は、「POLO BRITISH COUNTRY SPIRIT」である。これは「POLO」がラルフ・ローレンの関係で商標登録が出来ないのを逆手にとって「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の中に「POLO」を紛れ込ませて登録を得たにすぎない。 しかし、実際の使用は、「POLO」を大書きして、その下に申し訳程度に「BRITISH COUNTRY SPIRIT」と書かれており、まったく異なった使用方法である。これはあくまで「POLO」を強調し、「ラルフ・ローレン」と関係がある商品のように消費者をだます手口で悪質である。

(3)商標法第4条第1項第7号該当性
本件各商標と同一の図形は、ラルフ・ローレンの「POLO」ブランドとして世界的に人気のある商品である。
被請求人は、日本の消費者にそのラルフ・ローレン商品と誤認させ、半値の価格をつけた偽物商品を大量に販売する目的で、本件各商標を商標登録したものであり、不正な目的をもって不法な行為を行っている。
そのため、一般的社会道徳及び国際商道徳に反し、公正な商取引秩序を乱すと共に、ラルフ・ローレンに対する関係で国際信義にも反するものである。

(4)商標法第4条第1項第15号該当性
本件各商標は、当該指定商品について、ラルフ・ローレンが業務上使用する本件各商標と同一の図形「POLO」と著しく類似するものであり、それらと混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件各商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。

(5)商標法第4条第1項第19号該当性
本件各商標は、ラルフ・ローレンが使用する「POLO」に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている。しかも、その著名性に只乗りして不当に使用料収入を得ようとするものである。
したがって、本件各商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者間に広く認識されている商標と同一又は類似のものであって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する商標である。

(6)不正競争防止法違反について
本件各商標は、不正競争防止法第2条の1「需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し・・・他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」及び同第2条の2「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し・・・提供する行為(他人に使用許諾をしている)」に該当するものである(審決注:不正競争防止法第2条第1項第1号及び同第2号の誤記と認められる。)。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件各審判の請求書を却下する若しくは本件各審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 審判請求人適格
無効審判を請求するためには、本件各商標を無効とすることについて利害関係を有する必要がある(昭和44年(行ケ)第81号)。
しかしながら、この利害関係について、請求人は何ら明らかにしていない。
したがって、本件各審判は、請求人適格を有しない者による不適法な請求であって、却下されるべきである(商標法第56条第1項で準用する特許法第135条)。

2 本案についての答弁
(1)はじめに
請求人は、本件各商標が「POLO」ブランドとして世界的に有名な米国のデザイナーであるラルフ・ローレンのブランドを真似たものであると主張するが、被服等を指定商品とした登録商標「POLO」(登録第1434359号、登録第2721189号)の商標権者は被請求人であり、ラルフ・ローレンではない。
それどころか、ラルフ・ローレンの登録第4637721号商標「POLO JEANS」の無効について争った平成17年(行ケ)第10018号判決(乙第1号証)で述べられているように、被請求人は、ラルフ・ローレンに対して前記2つの登録商標「POLO」を使用許諾している立場であり、ラルフ・ローレンとの関係で本件各商標を不正の目的で使用し、或いは不正の目的で登録を受けることなどあり得ない。
また、ラルフ・ローレンの登録第4720921号商標「POLO COUNTRY」の無効について争った平成18年(行ケ)第10528号判決(乙第2号証)では、ラルフ・ローレンの前記商標「POLO COUNTRY」が先願である被請求人の前記2商標(登録第1434359号、登録第2721189号)と類似するとして、商標法第4条第1項第11号に違反すると判示されている。
このことからも、「POLO」を含む本件各商標が不正の目的で使用するものであるとか、不正の目的で登録を受けたものであるとの請求人の主張は全く根拠がないことは明白である。

(2)商標法第4条第1項第7号について
本件各商標は、ラルフ・ローレンの著作権を侵害しない。甲第3号証からは、ラルフ・ローレンの著作権ないし著作物がいかなるものか定かではない。この著作物がもし「POLO」であるとするならば、「POLO」自体は、請求人が提出した甲第2号証の1ないし3の辞典にも掲載されていることからも分かるように、著作物と呼べるものではない。著作権侵害の主張は失当である。
また、請求人は、甲第3号証によって、「ポロクラブ」事件等を引用して、商標法第4条第1項第7号の該当性を主張している。
商標法第4条第1項第7号における「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」とは、商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は、社会の一般的道徳観念に反するような場合や、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標であると解される。
しかるに、本件各商標の使用は、なんら社会公共の利益に反するものではないし、他の法律によってその使用等が禁止されている商標でもない。
したがって、本件各商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとの請求人の主張は失当である。

(3)商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号には除斥期間の適用があるので(商標法第47条第1項)、登録から5年を経過している本件各商標には、この条項を理由にして無効審判を請求することはできない。
また、仮に、商標法第4条第1項第15号の適用可否を検討したとしても、請求人が提出した甲第6号証は、「POLO」と「RALPH LAUREN」の文字の間に乗馬姿のポロ競技者の図柄を配した商標が認められるものの、この商標と本件各商標とは「POLO」を除いて全く異なるもので、指定商品「被服」について、ラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務と混同を生じないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第19号について
本件各商標は、指定商品「被服」について、ラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は海外における需要者間に広く認知されている商標と同一又は類似するものでもないし、不正の目的をもって使用するものでもない。
なお、ラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は海外における需要者間に広く認知されている商標が、甲第6号証にある「POLO」と「RALPH LAUREN」の文字の間に乗馬姿のポロ競技者の図柄を配した商標であるならば、このようなラルフ・ローレンの商標は、本件各商標と「POLO」を除いて全く異なるものであるから、同一でも類似でもない。
したがって、本件各商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上述べたように、本件各商標が商標法第4条第1項第7号、同第15号、及び同第19号に該当するという請求人の主張はいずれも失当であるから、本件各審判請求は棄却されるべきである。

第4 当審の判断
1 請求人適格について
本件審理に関し、被請求人は、請求人の請求人適格について争っているので、まず、この点について判断する。
請求人は、海外の有名なブランド(名称)を使って、日本国内での商品化事業を長年にわたって行っており、最近においても、海外に実在する「POLO CLUB」と契約してその名称を使った事業を計画しているところ、本件商標の存在が上記請求人の事業展開の障害となるため、本件各商標の無効を請求したものである旨述べている。
そうとすれば、請求人は、本件各商標について、その登録の無効を求めることには理由があり、本件各審判の請求をする利害関係を有するものというべきである。

2 本件各商標について
(1)本件商標1及び本件商標2は、「POLO」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、「POLO(ポロ)」とは「馬上からT字形のステックで木製のボールを相手側のゴールに入れ合って得点を競う乗馬競技」(甲第2号証、「大辞泉」)を表すものであるから、本件商標1及び本件商標2は、該構成文字に相応して「ポロ」の称呼を生じ、上記の如き「乗馬競技(ポロ)」の観念を生ずるものと認められる。

(2)本件商標3は、「POLO」の欧文字と「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるところ、その構成中、上段部分の「POLO」の欧文字からは、上記(1)で認定したとおり「ポロ」の称呼を生じ、「乗馬競技(ポロ)」の観念を生ずるものであり、また、下段部分の「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の欧文字からは、「ブリティッシュカントリースピリット」の称呼を生じ、「英国の精神、英国地方の魂」の如き観念を生ずるものと認められる。
しかして、本件商標3の構成全体は、特定の観念を生じない造語と認められ、「ポロブリティッシュカントリースピリット」の称呼を生ずる。

(3)本件商標4は、「POLO BRITISH COUNTRY SPIRITS」の欧文字をまとまりよく一連に横書きしてなるものであるから、その構成全体をもって、一体不可分の商標とみるのが自然であるが、これを「POLO」と「BRITISH COUNTRY SPIRITS」とに分離して観察してみても、本件商標4の構成中の「POLO」の欧文字部分からは、上記(1)で認定したとおり「ポロ」の称呼を生じ、「乗馬競技(ポロ)」の観念を生ずるものであり、また、「BRITISH COUNTRY SPIRITS」の欧文字部分からは、「ブリティッシュカントリースピリッツ」の称呼を生じ、「英国の精神、英国地方の魂」の如き観念を生ずるものと認められる。
しかして、本件商標4の構成全体は、特定の観念を生じない造語と認められ、「ポロブリティッシュカントリースピリッツ」の称呼を生ずる。

3 商標法第4条第1項第7号について
請求人は、本件各商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとの主張において、本件各商標が同法第46条第1項第1号に違反する旨を主張しているのか、または、同第5号に違反する旨を主張しているのか明確ではない。 したがって、当審では、同法第46条第1項第1号及び第5号の双方について、本件各商標が違反するか否かを判断することとする。
(1)本件各商標の登録が、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである(商標法第46条第1項第1号)か否かについて
ア 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」については商標登録を受けることができないと規定する。
ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決参照)。
そこで、上記の観点を前提として、以下検討する。

イ 本件各商標は、前記第1で認定した構成よりなるものであり、かつ、前記2(1)で認定したとおり「POLO(ポロ)」の文字は、「馬上からT字形のステックで木製のボールを相手側のゴールに入れ合って得点を競う乗馬競技」を意味するものであるから、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字でないことは明らかである。
また、本件各商標を指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできない。
さらに、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。

ウ 本件各商標が、「他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合」に当たるか否かについて
請求人は、本件各商標の登録はラルフ・ローレンのファッション・デザインの著作物の著作権を侵害し得ることになる旨主張する。
請求人の主張している「ラルフ・ローレンの著作物の著作権」がいかなるものを指称しているのか、証拠として提出されている甲各号証に照らしてみても定かではないが、仮に、この著作物の著作権が「POLO」を指称しているとするならば、「POLO」の語自体は、請求人が提出した甲第2号証の各辞典類にも掲載されているように、そもそも著作物というべき性質のものではない。
また、仮に、「ラルフ・ローレンの著作物の著作権」というものが存在していたとしても、著作権は、特許権や商標権等と異なり、特許庁における登録を要せず、著作物を創作することのみによって直ちに生じ、また、発行されていないものも多いから、特許庁の保有する公報等の資料により先行著作物を調査することは、極めて困難である。また、特許庁は、狭義の工業所有権の専門官庁であって、著作権の専門官庁ではないから、先行著作物の調査、二次的著作物の創作的部分の認定、出願された商標が当該著作物の創作的部分の内容及び形式を覚知させるに足りるものであるかどうか、その創作的部分の本質的特徴を直接感得することができるものであるかどうかについて判断することは、狭義の工業所有権の専門官庁である特許庁の判断にはなじまないものであり、特許庁の本来の所管事項に属するものではない。
してみれば、本件各商標が他人の著作権と抵触する商標であったとしても、商標法第4条第1項第7号に規定する商標に当たらないものと解するのが相当であり、「他の法律(審決注、商標法以外の法律)によって、その使用等が禁止されている商標」には該当しないものというべきである。
このように解したとしても、その使用が商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触する商標が登録された場合には、当該登録商標は、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により使用することができないから(商標法第29条)、不当な結果を招くことはない(東京高等裁判所、平成12年(行ケ)第386号、平成13年5月30日判決参照)。
他に、本件各商標が、他の法律によって使用等が禁止されている事実も見いだせない。
したがって、この点についての請求人の主張は認められない。

エ 本件各商標が、「商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に当たるか否かについて
請求人は、「本件各商標は、明らかに『POLO』ブランドとして世界的に有名な米国のデザイナーであるラルフ・ローレンのブランドを真似て日本の消費者に誤認を与え、その著名性を利用して商品を販売する目的で商標登録されたものである。」旨主張し、その証拠として甲第3号証を挙げている。
ところで、本件商標1の出願人は、井後義之であり、本件商標2ないし本件商標4の出願人は、公冠販売株式会社(以下「公冠販売」という。)であるところ、甲第3号証(ポロ/ラルフ・ローレン、絶えないパラサイトたちとの闘い)によれば、我が国における「POLO」商標の使用ないし商標登録の経緯について、「『POLO』の商標(審決注:本件商標1)は、個人(井後義之)が昭和47年6月出願し、同55年9月に登録しており、公冠販売株式会社が同58年12月19日同人よりこれを譲り受け、さらに現在の権利者ポロ・ビーシーエス株式会社(公冠グループ)に譲渡し、平成10年4月27日その旨登録された。その間、ラルフローレン社と公冠販売株式会社は、昭和62年1月1日付けで日本における『POLO』商標についての不争契約を合意し、その合意をネクタイとマフラーを除く旧17類商品についての日本国内における本件商標の通常使用権許諾契約という方法にて実行した。従って、現在の権利者ポロ・ビーシーエス株式会社は上記契約の地位を継承している。・・・(中略)・・・ポロ/ラルフローレン・ブランドは、1968年(昭和43年)の会社設立以来、2年でファッション界のアカデミー賞といわれる『コティ賞』を受賞し、翌年には婦人服に進出、米国で急速に人気を博した。また、海外にはライセンス・ビジネスを中心に急激な進出を図り、我が国にも早や1976年(昭和51年)西武百貨店とのライセンス契約を通じてビジネス展開するといったスピード進出振りであった。しかしながら、言ってみれば、海外進出に関しては急速な市場拡大のためにビジネス・マインドが先行し、商標管理に関するロジスティックスの構築が立ち遅れ、後追いになってしまったように思われる。そのため米国のおける『ポロ/ラルフローレン』人気を敏感に察知した目先の利く外国の企業家、パラサイトたちの好餌となったきらいがある。我が国においては、米国でラルフローレン社が設立されてから3年しか経っていなかった1971年(昭和46年)に、早くも他人により『Polo Club\ポロクラブ』の商標が、そして翌年には『POLO』商標が出願され、・・・(中略)・・・このような事実はかかる状況をよく物語っている。」旨記載されている。
しかし、上記のような事情が存在するとしても、かかる事情のみによって、直ちに、本件各商標に係る商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということはできないばかりでなく、井後義之ないし公冠販売とポロ・ローレン・カンパニーとの間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであり、このような場合まで、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」であると解することはできない。
したがって、この点についての請求人の主張は、採用できない。

オ 小括
本件各商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものということはできない。

(2)本件各商標が登録された後において、本件各商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するものとなっている(商標法第46条第1項第5号)か否かについて
ア 本件各商標が、登録された後に、前記(1)ア(ア)又は(ウ)に該当するものとなっているとは認められない。
また、前記(1)ア(オ)は、登録出願の経緯に係るものであるから登録後の事情とは無関係である。

イ 本件各商標が、「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」又は「特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反する場合」に当たるか否かについて
請求人は、「被請求人は、日本の消費者にラルフ・ローレンに係る商品と誤認させ、半値の価格をつけた偽物商品を大量販売する目的で本件各商標を商標登録したものであり、不正な目的をもって不法な行為を行っている。そのため、一般社会道徳及び国際商道徳に反し公正な商取引を乱すと共に、米国ラルフ・ローレンとの関係で国際信義にも反するものである。」旨主張している。

ウ 提出された証拠
甲第6号証は、ラルフ・ローレンが使用していたカタログであるとして提出されているが、カタログというよりは、ラルフ・ローレンの活動についての年表の如きものであり、「POLO」の標章の表示状況については、各年代の上部に、「POLO」の文字、ポロ競技者の図形、「RALPH LAUREN」の文字からなる別掲(1)の標章が表示されており、1970年の欄には別掲(1)のポロ競技者の図形と同じ図形が表示されており、1969年の欄の写真中には、長方形の輪郭線で囲まれている「POLO」の文字及び「by RALPH LAUREN」と思しき文字からなる別掲(2)の標章が表示されており、1967年の欄には「Poloブランドを設立しました」との記載がされている。そして、該資料の発行時期は明らかではないが、欄外部分に「Copyrights(c)2003」の記載があることからみれば、2003年当時に著されたものとみるのが相当である。
甲第7号証は、被請求人の業務に係る「2003 FALL&WINTER」のカタログであり、紺塗りの長方形内に「POLO」「BRITISH
COUNTRY SPRIT」の文字を2段に書してなる別掲(3)の標章、「POLO ITEM」、「POLO SPORTS」、「POLO BRAND」「POLOBCS」等の標章が表示されている。
甲第8号証は、ラルフ・ローレンのホームページの写しと認められるところ、「1967」「Poloブランドを設立しました」との記載がされている。そして、欄外部分に「Copyrights c(審決注:「c」は丸で囲まれている。)2005-2008」の記載があることからみれば、2005年ないし2008年当時に著されたものとみるのが相当である。
甲第9号証は、被請求人についての2009年4月27日付けの調査資料である。
甲第10号証の1及び2並びに3ないし5は、別掲(3)の標章又は「POLO」の文字が表示されたグンゼ、公冠グンゼ、カイタックファミリー及びニッキーが販売するシャツ、下着、パジャマ等に係るオンラインショップの資料であり、いずれも、2009年4月27日あるいは同月28日に打ち出されたものである。
甲第11号証は、2001年2月21日付けのセンイ・ジャーナルに掲載された「公冠グンゼ設立」の記事である。
甲第12号証は、2000年5月1日付けのセンイ・ジャーナルに掲載された「グンゼがポロの展開を本格化する」旨の記事である。
甲第13号証の1ないし4は、日経流通新聞あるいは日本繊維新聞に被請求人が掲載した「POLO」に関する商標についての警告記事等であり、同号証の1は1999年5月27日付け、同号証の2は、2001年7月23日付け、同号証の3は1999年10月28日付け、同号証の4は2001年10月30日付けのものである。甲第13号証の1及び3には、「米国ポロ・ローレンカンパニーとは、ライセンス契約にもとづいて友好的な関係にあります。」と記載されている。
甲第14号証の1は、2002年8月26日付けの繊研新聞における被請求人が掲載した「POLO」に関する商標についての広告であり、同号証の2は、2004年5月27日付けの日本繊維新聞における被請求人が掲載した「POLO」に関する商標についての広告である。甲第14号証の3は、ラルフ・ローレンのホームページ上のロゴマークを示すために提出されたものであり、「POLO」、「RALPH LAUREN」の標章が表示されている。この資料についても、欄外部分に「COPYRIGHT c(審決注:「c」は丸で囲まれている。)2005-2009」の記載があることから、2005年ないし2009年当時に著されたものとみるのが相当である。
甲第15号証は、1999年12月8日付けの日本繊維新聞における「岐阜武がポロ・ビーシエスとのライセンス契約に基づき、ライセンスブランド『POLO』を導入した」旨の記事である。
甲第16号証は、「POLO」の文字が表示された透明の包装紙に入った「肌着」と思しき商品の写真(写し)であり、当該写真(写し)の上部に「『本件商標商品』商品」の記載があり、同下部には、「平成21年4月28日 インターネットHPより」の記載ある。
甲第17号証の1は、1枚目が「ダイエー 金沢八景店」が「平成2004年1月5日」に発行した「クレジット売上票」(写し)及び領収書(写し)、「大丸ピーコック 下北沢店」が「2004年03月28日」に発行した「領収書」であり、同号証の2枚目以降は、商品又は商品のタグ等に「POLO」の文字が表示された、セーター、肌着、ワイシャツ、靴下の写真(写し)である。
甲第17号証の2は、1枚目が「靴下」の写真(写し)であり、欄外に「(左)本件商標関連商品(2品)」の記載があり、2枚目は、「サンクス (有)初台升本酒店 渋谷宮益坂店」が「2004年9月13日」に発行したレシート(写し)及び「株式会社東急百貨店」が「平成16年9月13日」に発行したの領収書(写し)等である。
甲第20号証は、1枚目ないし5枚目が、商品又は商品のタグ等に「POLO」の文字が表示された、靴下、肌着の写真(写し)及び「大丸ピーコック 下北澤店」が「2009年5月3日」及び「2009年5月10日」に発行した領収書(写し)、「西部百貨店」が「2009年5月8日」に発行した領収書(写し)等であり、同号証の6枚目以降は、「POLO」の文字が表示された、シャツ、肌着等が掲載されているインターネットのホームページを印刷したもの(写し)である。
甲第21号証は、被請求人の業績推移を示す2009年4月27日付けの企業調査資料である。

エ 上記ウで認定した事実から、被請求人が、遅くとも2004年(平成16年)9月13日以降に、「POLO」の商標を付した「靴下」等を販売した事実を推認することができる。
ところで、請求人の主張は、要するに、被請求人が、本件各商標の登録査定日(登録審決日)より後に、本件各商標を、「ラルフ・ローレン」に係る商品と誤認させる方法で使用しているというものである。
しかし、前記3(1)エで認定した事実によれば、被請求人は、ポロ・ローレン・カンパニーと「POLO」に関する商標についてライセンス契約を締結していることが認められ、かかる契約には、本件各商標が含まれると推認することができるものである。
そして、被請求人による「POLO」に関する商標の使用は、本件各商標に係るものであるから、本件各商標は、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということはできない。
また、本件各商標の登録が、米国、若しくは米国と我が国との関係に影響を与えているものとは認められないし、我が国の公益を害したり、国際的に認められた一般原則や商慣習に反しているとも認められない。
よって、本件各商標は、「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」又は「特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反する場合」のいずれにも当たらない。
したがって、この点についての請求人の主張は採用できない。

オ 小括
以上によれば、本件各商標の登録は、その商標登録がされた後において、本件各商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものとなっているということはできない。

4 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、本件各商標は他人(ラルフ・ローレン)の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である旨主張して、「無効理由通知書」(甲第4号証)及び「東京高裁平成10年(行ケ)第108号事件」の判決文(甲第5号証)を提出している。
商標法第47条第1項は、商標登録が同法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたことを理由とする商標登録の無効の審判は、不正の目的で商標登録を受けた場合を除き除斥期間(商標権の設定の登録の日から5年)を経過した後は、請求することができないと定めている。
ただし、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)(以下「改正法」という。)によって、同号の規定に違反することを理由とする無効の請求については、改正法の施行(平成9年4月1日)の際現に存する商標登録については従前どおり除斥期間の適用があることとした(改正法附則第8条第2項)ので、改正法の施行の際現に存する商標登録については、不正の目的の有無にかかわらず、除斥期間経過後は同号違反を理由とする無効審判を請求することができないものである。
そして、本件商標1に係る商標権の設定登録日は昭和55年9月29日であるところ、本件商標1に係る審判の請求は、本件商標1に係る商標権の設定登録の日から5年を経過した後の平成21年4月30日になされているものであり、本件商標2に係る商標権の設定登録日は平成9年5月2日であるところ、本件商標2に係る審判の請求は、本件商標2に係る商標権の設定登録の日から5年を経過した後の平成21年4月30日になされているものであり、本件商標3に係る商標権の設定登録日は平成9年6月13日であるところ、本件商標3に係る審判の請求は、本件商標3に係る商標権の設定登録の日から5年を経過した後の平成21年4月24日になされているものであり、また、本件商標4に係る商標権の設定登録日は平成9年6月20日であるところ、本件商標4に係る審判の請求は、本件商標4に係る商標権の設定登録の日から5年を経過した後の平成21年5月11日になされているものである。
そうとすると、本件商標1は、改正法による改正前商標法第47条に規定する除斥期間の適用を受けるものであるから、商標法第4条第1項第15号の無効理由については、不正の目的の有無に関わらず、無効審判の請求に対する除斥期間の経過後になされた不適法な請求といわなければならない。

(2)次に、本件商標2ないし本件商標4の登録が不正の目的で商標登録を受けたものであるか否かについて検討する。
請求人は、被請求人等による「POLO」商標の使用の実情のほか、「POLO」商標の諸事情等を述べると共に、ラルフ・ローレンが米国で活躍を開始したのは1967年であり、本件各商標の登録出願時には日本でラルフ・ローレンの米国での著名性はよく新聞・雑誌等で報じられていたため、被請求人がそれにヒントを得て本件各商標の登録出願をしたことは間違いないことであり、ラルフ・ローレンの著名性とイメージに便乗した不正の目的で商標登録出願を行ったものである旨主張する。
ところで、請求人は、「被請求人に不正の目的があった」旨主張しているが、商標法第47条第1項の「(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)」との文言に照らすならば、不正の目的の有無は、登録商標が譲渡された場合であっても、その商標登録の時期を基準時として、登録を受けた者について、判断するのが相当である。
そこで、公冠販売が、本件商標2ないし本件商標4の登録の時期において、不正の目的でそれらの商標の登録を受けたか否かについて検討する。
ポロ・ローレン・カンパニーと公冠販売は、上記3(1)エで認定したとおり、昭和62年1月1日付けで日本における「POLO」商標についての不争契約に合意し、その合意をネクタイとマフラーを除く旧17類商品について、本件商標1についての通常使用権許諾契約という方法にて実行していることが認められる。
本件商標2は本件商標1と同様に「POLO」の欧文字からなるものであり、また、本件商標3は「POLO」の欧文字に「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の欧文字を付加したものであり、さらに、本件商標4は「POLO」の欧文字に「BRITISH COUNTRY SPIRITS」の欧文字を付加したものであるから、本件商標2ないし本件商標4は、「POLO」の欧文字を共通にしている点において、本件商標1の関連商標といい得るものである。
本件商標2及び本件商標4については、それぞれの商標登録出願後に、ポロ・ローレン・カンパニーと公冠販売との間において上記の如き合意に至る経緯・事情が生じたこと、本件商標3は、そのような合意に至る経緯・事情のもとにおいて出願されたものと推認できること及び本件各商標は、上記で認定したとおり、関連商標と認められるものであるから、不正の目的の判断に当たっては、本件各商標の関連性も考慮すべきであることよりすれば、公冠販売が、本件商標2ないし本件商標4の登録の時期において、不正の目的で本件商標2ないし本件商標4の登録を受けたとは認め難い。
そうとすれば、本件商標2ないし本件商標4が商標法第47条第1項第15号に該当するものとする無効の理由についての請求は、同法第4条第1項に規定する除斥期間の適用を受けるものであるから、無効審判の請求に対する除斥期間の経過後になされた不適法な請求といわなければならない。

5 商標法第4条第1項第19号について
(1)請求人は、本件各商標は他人又はラルフ・ローレンの業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は海外における需要者間に広く認知されている商標と同一又は類似のものであって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する商標である旨主張している。
商標法は、同法第4条第1項第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に同号に該当しないものについては同号を適用しない旨定める(同法第4条第3項)。
そこで、出願時における出願人は、本件商標1については井後義之であり、また、本件商標2ないし本件商標4については公冠販売であるから、本件商標1については井後義之、また、本件商標2ないし本件商標4については公冠販売が、それぞれ出願時において不正の目的をもって使用するものであったか否かを検討する。

(2)請求人が、不正の目的があったことを裏付ける証拠として提出している甲各号証については、前記3(2)ウで認定したとおりであり、請求人が提出している証拠は、1999年(平成11年)から2009年(平成21年)にかけての資料であるから、本件各商標が商標登録出願された当時(本件商標1については昭和47年6月13日、本件商標2については同56年4月6日、本件商標3については同63年11月9日及び本件商標4については同60年4月28日)において、本件各商標が、不正の目的をもって使用するものに該当したことを認定し得る証拠ということはできない。
上記の証拠中、甲第6号証には、本件各商標が商標登録される以前についてのラルフ・ローレンの「POLO」に関する記述が一部認められる。
しかしながら、同号証は、右下に「Copyrights(c)2003」の表示があることから、本件各商標が商標登録された後に著されたとみるのが相当であること及び同号証は、ラルフ・ローレンの活動についての年表の如きものであることからすれば、同号証をもって、本件各商標が、不正の目的をもって使用するものに該当したとみるのは困難である。
また、甲第7号証、甲第16証、甲第17証の1及び2、甲第20証並びに甲第21証は、被請求人に関する証拠であって、本件各商標が商標登録出願された時に関する証拠ではない。
以上、請求人の提出に係る甲各号証を総合勘案しても、本件各商標は、その登録出願時においても、不正の目的をもって使用するものに該当したとは認められない。
したがって、本件各商標の商標登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものということはできない。

6 不正競争防止法第2条第1項第1号及び同第2号について
請求人は、弁駁書において、本件各商標の登録は不正競争防止法の規定にも違反しているとして、不正競争防止法第2条第1項第1号及び同第2号の条文の抜粋を掲げている。
しかしながら、商標法第46条は、商標登録が本条所定の無効理由に該当するときには、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる旨規定されているところ、同条第1項各号に掲げられた無効理由は限定列挙と解されるものであって、これらに該当しない限り無効審判により商標登録が無効とされることはない。
しかして、商標法第46条第1項各号によるも、不正競争防止法第2条第1項第1号及び同第2号は、無効理由として規定されていない。
してみれば、この点についての請求人の主張は採用できない。

7 むすび
以上のとおり、本件各審判の請求は、その無効の理由中、商標法第4条第1項第15号及び不正競争防止法第2条第1項第1号及び同第2号を理由とする請求については、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。その余の無効の理由については、本件各商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に違反してされたものではなく、また、本件各商標の登録がされた後において、同法第4条第1項第7号に該当するものとなったものでもないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


(1)甲第6号証に表示されている図形




(2)甲第6号証に表示されている図形



(3)甲第7号証に表示されている商標


(色彩については、原本参照)


審理終結日 2009-11-20 
結審通知日 2009-11-26 
審決日 2010-01-21 
出願番号 商願昭56-27639 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (125)
T 1 12・ 22- Y (125)
T 1 12・ 222- Y (125)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
田村 正明
登録日 1997-05-02 
登録番号 商標登録第2721189号(T2721189) 
商標の称呼 ポロ 
代理人 田中 秀佳 
代理人 熊野 剛 
代理人 城村 邦彦 

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