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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 006
管理番号 1233261 
審判番号 取消2007-301355 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-10-22 
確定日 2011-02-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4107315号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成21年5月14日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10171号、平成21年12月28日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4107315号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、平成7年12月15日に登録出願、第6類「鋼,建築用又は構築用のスチール製専用材料,スチール製建具,スチール製金具,スチール製建造物組立てセット,スチール製の滑車、スチール製のばね及びバルブ(機械要素に当たるものを除く),スチール製の可搬式家庭用温室,スチール製の吹付け塗装用ブース,スチール製管継ぎ手,スチール製フランジ,スチール製いかり,スチール製ビット,スチール製ボラード,スチール製締付け金具,スチール製の金網,スチール製のワイヤロープ,スチール製のネームプレート及び標札,スチール製のタオル用ディスペンサー,スチール製帽子掛けかぎ,スチール製郵便受け,スチール製靴ぬぐいマット,スチール製ブラインド,スチール製彫刻,スチール製セメント製品製造用型枠」を指定商品として、同10年1月30日に設定登録、その後、同20年8月26日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
そして、平成19年11月6日に本件審判の請求の登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、『鋼』についての登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、審判請求前3年間に、本件商標の指定商品中の「鋼」について使用された事実を発見できなかった。
また、不使用について正当な理由があったとも認め難いものである。
よって、本件商標は、指定商品中「鋼」について、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)使用商品について
被請求人の使用している商品は、「鋼」ではなく「建築用又は構築用のスチール製専用材料」というべきものである。
ア 乙第7号証の被請求人のプレスリリースには、「M型形鋼は、24年前(1981年)世界で初めてスチールハウスを手がけ、アメリカ、日本でシステム、工法を普及させたNu-STEEL HOMES グループが独自に開発考案したものです。」と記載されており、開発段階から建築用専用材料として生まれたものであることは明らかである。
イ また、乙第7号証には、「『国土交通大臣認定取得』オーストラリア CDS NU-STEEL社が建築基準法第37条第2号の建築材料第一号物件として大臣認定を取得しました。」との記載もあり、実際に国土交通大臣により「建築材料」として認定を受けている(乙第2号証)。
ウ さらに、乙第7号証には、「鋼材-高強度G550(オーストラリアBHP社製)をM型に加工(CDS社保有特許)した建築部材」との記載もあり、自ら建築専用材料であるとしている。
エ 乙第8号証の「WORK's/ニュースチール パーソナルヒストリー作品集」(写し)中の会社概要欄を見ると、事業内容として「ライセンス供与による建築資材の販売」「建築資材の輸入、輸出販売及び開発、製造販売」と記載されており、被請求人自ら使用に係る商品が建築専用材料であることを認識していることを示している。
オ その他乙各号証を見ても、いずれも家屋を建築するのに用いられているものばかりで、被請求人の主張するような機械、金型、家具の材料等に使用されている例はない。
カ 小括
したがって、本件使用に係る商品は、被請求人が資料1ないし12に挙げる登録例と同様に見ることはできず、その実態から「建築用又は構築用のスチール製専用材料」の一種というべきものである。
(2)本件商標と使用標章について
使用に係る商標(以下「使用標章」という。)は、別掲(2)の構成よりなるところ、被請求人は、使用標章と本件商標とが相違することを認めたうえで、使用標章は、本件商標と社会通念上同一のものと考えるのが相当であると結論付けている。
しかしながら、「HOMES」の文字を加えることは本件商標の使用には当たらない。
確かに「HOMES」の文字からは、「家、家庭、故郷」といった意味合いを看取させるものであるから、「建築又は構築用のスチール製専用材料」に使用するならば品質や用途等の商品の内容を表示したといえなくもないが、被請求人の主張する「鋼」についての使用であるならば、「HOMES」の文字は「HOMES」印として充分に識別力のある文字であって、本件商標から新たな称呼「ホームズ」を発生させるものであるから、社会通念上同一の商標ということはできない。
社会通念上同一かどうかは、商標の態様のみならず指定商品との関係をも充分考慮すべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第32号証及び資料1ないし12(商標出願・登録情報)を提出した。
1 使用商品について
被請求人は、平成13年10月以来、前商標権者であるシーディーエス・ニュースティール・プロプライエタリー・リミテッド(以下「シーディーエス社」という。)から、同社が国土交通大臣の認定を取得した「Mチャンネル」という名称のM型鋼材を輸入し、これを販売した。
また、被請求人は、シーディーエス社から、本件商標の専用使用権の設定登録を受け、本件商標を使用した。
さらに、被請求人は、シーディーエス社から、平成20年に本件商標権を譲り受け、その移転登録がなされた(乙第1号証)。
(1)被請求人が、本件商標を使用して販売を行うM型鋼材は、防錆性に優れた板厚0.8?1.0ミリの鋼材を、機械、金型、家具の材料等、様々な用途に適合すべくM字型に成型された鋼材である。
(2)M字型に成型された鋼材は、一般的に用いられるC字型等の従来の鋼材に比して、板厚が薄く軽量であり、圧縮力が約2倍、曲げ耐力が約1.5倍向上するという特性を有している。
ゆえに、被請求人の販売に係るM型鋼材は、スチールハウスの建築材料としても用いられている。
(3)M型鋼は、前商標権者であるシーディーエス社が、建築基準法第37条第2号に係る建築材料の第1号物件として、国土交通省より認定を受けたものであり(乙第2号証)、建築・構築を用途とする優れた材料としても、同業界において広く知られている。
(4)特許庁において、「M型鋼材」という商品の表示はこれまで採択された例はないものの、M型鋼材と材質・用途等を同じくする「H型鋼」、「U字型鋼」、「I型鋼」について、資料1ないし12のような登録例がある。
また、「M型鋼」、「H型鋼」、「I型鋼」等は、建築や橋梁、各種機械、車両等を始めとする多様な需要分野毎の目的にあった、様々な断面の形を持つ鋼材である。
これらは、その形状によって性能は異なるものの、材質や用途は共通しており、「形鋼」と総称されている。
上述の登録例については、すべて本件審判請求に係る「鋼」と同じ類似群コード「06A01」が付与されており、「H型鋼」や「I型鋼」と同じ「形鋼」に含まれるM型鋼は、「鋼」の範疇に含まれる。
2 使用事実について
被請求人は、M字型の薄型鋼材について、平成13年からは専用使用権者として、平成20年6月からは商標権者として、本件商標の使用をしている(乙第1号証)。
(1)乙第3号証は、被請求人の「Corporate Profile」であるところ、その表紙に使用標章が表示されている。
乙第3号証は、「会社概要」の欄に「平成19年9月1日現在」との表示が付記されていることから、本審判請求前3年以内に作成されたものである。
(2)乙第4号証は、被請求人が、株式会社コトブキホームビルダー(以下「コトブキ社」という。)宛に作成した、平成17年7月13日付けの見積書であるところ、「建築躯体組み上げ工事(Mチャンネル)」の表示とともに、使用標章が表示されている。
(3)乙第5号証は、被請求人が、平成17年7月13日付けでコトブキ社と締結したライセンス供与基本契約書であり、また、乙第6号証は、被請求人が、同年8月22日付けで株式会社スキップホーム(以下「スキップホーム社」という。)と締結したライセンス供与基本契約書である。
当該両契約書において、被請求人は、コトブキ社、又はスキップホーム社が、本件商標を使用して被請求人の製品を販売し、使用することを許諾している。
そして、当該両契約書のカバーページには、使用標章が表示されている。
(4)被請求人は、上記(1)ないし(3)の他にも、M型鋼材に係る宣伝広告資料として、平成17年7月1日付けプレスリリース(乙第7号証)、被請求人の販売に係るM型鋼材を使用した建築物を紹介した、平成19年作成の「WORK’s/ニュースチール パーソナルヒストリー作品集」(乙第8号証)、同じく「State Of The Art Homes」(乙第9号証)、被請求人が作成した、平成19年11月1日付け「納入実績」(乙第10号証)等、数多くの媒体に使用標章を付している。
なお、乙第9号証は、その作成日時が明らかでないが、被請求人の販売に係るM型鋼材の外観その他の特徴を把握し易くするために提出するものであり、また、乙第10号証は、本件審判請求日以降の日付が付されたものであるが、これによって、本審判請求前3年以内である2005年(平成17年)から2007(平成19年)年までのM型鋼材の販売実績の一部を示す資料として提出する。
3 本件商標と使用標章について
(1)本件商標と使用標章を比較すると、両商標は、次のア及びイの点で相違している。
ア 「へ」の字型細黒帯と下段に水平に表された細黒帯に挟まれるように表示されている矩形図形の色彩が黒又は赤色で表示されている点
イ 該矩形図形内に表された「HOMES」の文字の有無の点
(2)しかしながら、登録商標は、商取引の実際において、例えば、書体を変更したり、他の文字等を付する等その表示態様について少なからぬ変更が加えられたりして使用されることがむしろ通常である。
したがって、その変更により外観が必ずしも登録商標と酷似するとはいえない標章であっても、それが登録商標の表示態様において基本をなす部分を変更するものでなく、当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない限度にとどまるものであるときは、その標章の使用をもって「登録商標の使用」とみるべき、とされている。
(3)これを上記(1)にいう相違点アについてみてみると、イの相違点を除き、使用標章の当該矩形図形部分を赤色から黒色に変更すれば本件商標と同一の商標であると認められることは明らかである。
したがって、相違点アをもって使用標章と本件商標の同一性を否定することはできない。
また、相違点イについては、「HOMES」の語は「家、家庭、故郷」などの意味合いを有する平易な英単語であり、この意味合いより、取引者、需要者は当該部分を「家用(家屋建築用)」、「家庭用」程度の商品の品質や用途等の商品の内容を表示する部分であると把握し認識すると考えるのが相当である。
そうとすれば、使用標章中「HOMES」の文字部分は、看者の注意を惹くほどの強い自他商品識別力が認められるとは考えられず、格別印象に残るとはいい難いものである。
しかしながら、「NU-STEEL」の文字部分は、被請求人の名称より明らかなとおり「ニュースチール(ニュースティール)」と称呼されるものであるが、「ニュー」の音に相応する部分が「NEW」ではなく、「NU」と独特の綴りで表されていることから、取引者、需要者は、当該部分を特異に感じ、当該部分に注目するということができる。
しかも、本件商標及び使用標章の「NU-STEEL」の文字は、同じ大きさ・デザインで、全く同じ態様で表示されており、また、商標全体及び矩形図形における「NU-STEEL」の文字の位置や大きさも全く同じに表示されている。
してみれば、相違点イについても、この程度の変更使用は、商取引の実際においては通常行われているところであり、本件商標の識別性に影響を与えない程度の表示態様の変更とみるのが相当である。
したがって、使用標章は、本件商標と社会通念上同一のものと考える。
4 まとめ
以上のように、被請求人は、本審判請求前3年以内に、「鋼」の範疇に属するM型鋼材について、本件商標と社会通念上同視される使用標章を使用していることは明らかである。

第4 当審の判断
1 使用標章が使用された被請求人商品が、請求人において不使用取消審判を請求した指定商品「鋼」に使用されたかについて
(1)事実認定
ア 被請求人は、豪州CDS-NUSTEEL社からスチール鋼材を輸入し、日本国内においてライセンス供与の展開により販売普及を目指すことを目的とし、ライセンス供与による建築資材の販売、住宅の建築、販売及び関連するシステムの販売、建築資材の輸入、輸出販売等を事業内容とする株式会社である(乙第3号証)。
イ 被請求人は、平成17年7月から8月に掛けて、株式会社コトブキホームビルダー、株式会社スキップホーム等に対して、被請求人が輸入、販売する建築資材の販売、使用、本件商標の使用等について、ライセンス契約を締結した。
また、被請求人は、国土交通大臣から、建築基準法第37条第2号所定の安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する認定を受けている。その認定対象は、名称を「CDSニュースチールホームに用いる鋼材」とし、内容を「平成13年1月16日付けに申請があった国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合する指定建築材料(構造用鋼材及び鋳鋼)・・・」とするものであり(乙第2号証)、被請求人商品が同認定対象製品に当たる。
ウ 被請求人が、被請求人商品等に関連して使用標章を表記して使用している例として、以下の態様がある。
(ア)被請求人は、前記株式会社コトブキホームビルダーとのライセンス供与契約に基づき、平成17年7月31日付けで、工事名「(仮称)原町パーキング新築工事建築躯体組み上げ工事(Mチャンネル)」とされる工事について、「御見積書」を作成しているが、その書面の右側中央には使用標章が表示されている(乙第4号証)。
(イ)被請求人は、プレスリリース用の用紙(乙第7号証)には、被請求人商品の特徴を挙げ、具体的に、被請求人商品は、オーストラリアのCDS-Nu-Steel社が製造し、同社から輸入販売する、建築に用いるM型形鋼であること、M型形鋼(Mチャンネル)の優位性として、[1]板厚を薄くできること、[2]軽量化できること、[3]施工性が改善すること等を挙げていることが記載され、被請求人商品であるM形鋼を使用した骨組みの写真とともに使用標章が表示されている。
(ウ)被請求人に作成に係る「WORK’s ニュースチールパーソナルヒストリー作品集」と題するパンフレット(乙第8号証)には、被請求人商品であるM形鋼を使用した建物の写真とともに使用標章が表示されている。
(エ)被請求人作成に係る住宅の宣伝用パンフレット(乙第9号証)には、「当社のスチールハウスは、独自の特許工法・M型鋼材・Mチャンネルを採用。その技術は、平成12年に改定された建築基準法の第一号物件として国土交通大臣の認定を取得し、高い評価を得ています。」(2頁)などの記載があり、被請求人製品のM形鋼を使用した建物の構造に関する図面又は写真及びこれを使用した建物の外観及び内部の写真が掲載され、2頁と10頁に、使用標章が表示されている。
(オ)被請求人作成に係る「納入実績」(乙第10号証)と題するパンフレットには、平成13年から平成19年まで(例えば、平成17年8棟、平成18年11棟、平成19年14棟)の被請求人商品を住宅、店舗等の材料として使用した実績が示され、表紙には使用標章が表示されている。
(カ)被請求人作成に係る平成19年4月付けパンフレット(乙第11及び12号証)には、工場や工事現場で発生した廃棄物収納用の大型ごみ収集箱、テーブル・下駄箱・多目的棚の組立てキット商品として、鋼板の写真が掲載され、使用標章が表示されている。
(キ)「形鋼」とは、断面形状が円形でない鋼材の総称であり、H形鋼、I形鋼等がこれに含まれる(乙第14並びに15の1及び2号証)。被請求人商品は、断面形状について、片仮名の3個のコの字を連続させて、M字用に成形させた鋼材である。
エ 以上によれば、被請求人は、審判の請求の登録がされた平成19年11月6日の前3年以内に、その販売する商品(M形鋼及び鋼板等)の宣伝広告、見積書、契約書等に、使用標章を表記してこれを使用していると認められるものである。
(2)上記のとおり、被請求人は、審判の請求の登録がされた平成19年11月6日の前3年以内に、被請求人商品の宣伝広告、見積書、契約書等に、使用標章を表記してこれを使用している。そして、被請求人商品は、次のとおりの特徴を有している。すなわち、[1]被請求人商品は、断面形状につき、直角に互い違いに6回折り曲げて構成されたM字型様の鋼材(形鋼)であること、[2]被請求人商品は、国土交通大臣から、安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関して、建築基準法所定の認定を受けた建築材料(構造用鋼材及び鋳鋼)であること、[3]被請求人商品は、住宅、店舗等の建物の材料として使用されることが多いが、その他、駐車場等の構造物、ごみ収集箱、テーブル、棚等の材料として使用されることもあること、[4]被請求人商品は、豪州CDS-NUSTEEL社が製造し、被請求人が同社から輸入販売しているものであること等の性質及び特徴がある。
被請求人商品は、このような性質・特徴を持った典型的な鋼材であるから、請求人において登録商標の取消しを求めた指定商品である「鋼」に含まれるものである。
(3)請求人は、被請求人商品が「建築用又は建築用のスチール製専用材料」に該当するから「鋼」には含まれないと主張する。
しかしながら、商標法50条は、何人も、登録商標に係る指定商品等について、その登録商標の取消しの審判を請求することができる旨、及び、被請求人(商標権者)が、その請求に係る指定商品等のいずれかについて登録商標の使用を証明しない限り、登録商標の取消しを免れない旨を規定している。そして、不使用取消しに係る審判請求人において、広範な範囲の指定商品等を不使用取消請求の対象として選択すれば、広範な範囲で取消しの効果を得ることができるが、他方、被請求人(商標権者)は、広範な範囲の指定商品等のいずれかについて、登録商標を使用していることを証明することによって、登録商標の取消しを回避することができ、立証負担は軽減されることになる。同条は、そのような公平の観点から規定されたものであり、不使用取消に係る審判請求人は、これらの得失を考慮して、取消しを求める指定商品の範囲を選択することになる。
ところで、請求人が請求した本件不使用取消しの審判は、指定商品「鋼」についての登録商標の不使用を理由とするものであって、「建築用又は建築用のスチール製専用材料を除外した、その余の鋼」についての登録商標の不使用を理由とするものではない。そして、被請求人(商標権者)は、本件商標を「鋼」について使用したことを証明できたものである。
なお、本件商標の指定商品は、「鋼」とともに「建築用又は構築用のスチール製専用材料」の両者が併記して登録されているが、そのような指定商品の登録があるからといって、指定商品「鋼」の意義を、下位概念である指定商品を除く趣旨に解釈しなければならない根拠とはなり得ないのみならず、請求人のした不使用取消審判の対象とした指定商品について、「建築用又は建築用のスチール製専用材料を除外した『鋼』」と解する根拠にもなり得ない。
(4)以上のとおり、被請求人が登録商標を使用した被請求人商品は、請求人において登録商標の取消を求めた指定商品である「鋼」に含まれるものである。
2 本件商標と使用標章の社会通念上の同一性について
(1)本件商標と使用標章の構成
ア 本件商標は、以下の構成からなる。
上から順に、[1]黒色の太線で描かれた屋根ないし山形の図形部分、[2]黒く描かれた横長長方形の図形、[3]横長長方形の底辺と平行して、黒色の太線で描かれた水平の直線からなる。
横長長方形の図形の中心部(上記[2]部分)は、「N」「U」「点」「左下方から右上方に緩やかな曲線を描いた図形」「T」「E」「E」「L」の「欧文字及び図形」部が白色で太く描かれている。欧文字はいずれも、直線を多用した特有の書体で表記され、「左下方から右上方に緩やかな曲線で構成される図形」は「S」の文字と読めるような態様で描かれている。「欧文字及び図形」は、これを囲むように黒い陰影が付され、看者に立体的な印象を与えるように描かれている。さらに「欧文字及び図形及び陰影」は、欧文字部分についてはその外郭に沿って白い直線で、「S字様図形」の直下については曲線で、全体を囲むように表記され、看者に立体的な印象を与えるように描かれている。横長長方形図形は、その上側約5分の3に「欧文字及び図形」が描かれ、その余の部分は、黒く塗りつぶされたままで、文字又は図形は、何ら描かれていない。
イ 使用標章は、以下の構成からなる。
上から順に、[1]黒色の太線で描かれた屋根ないし山形の図形部分、[2]赤く描かれた横長長方形の図形、[3]横長長方形の底辺と平行して、黒色の太線で描かれた水平の直線からなる。
横長長方形の図形の中心部(上記[2]部分)は、「N」「U」「点」「左下方から右上方に緩やかな曲線を描いた図形」「T」「E」「E」「L」の「欧文字及び図形」部が白色で太く描かれている。欧文字はいずれも、直線を多用した特有の書体で表記され、「左下方から右上方に緩やかな曲線で構成される図形」は「S」の文字と読めるような態様で描かれている。「欧文字及び図形」は、これを囲むように黒い陰影が付され、看者に立体的な印象を与えるように描かれている。さらに「欧文字及び図形及び陰影」は、欧文字部分についてはその外郭に沿って白い直線で、「S字様図形」の直下については曲線で、それぞれ囲むように表記され、看者に立体的な印象を与えるように描かれている。横長長方形図形は、その上側約5分の3に「欧文字及び図形」が描かれ、その余の部分は、「HOMES」の文字が、白い太線で描かれている。
(2)本件商標と使用標章とを対比する。
両商標は、[1]全体の構成として、上から順に、黒色の太線で描かれた屋根ないし山形の図形部分、横長長方形の図形、横長長方形の底辺と平行して、黒色の太線で描かれた水平の直線からなる点、[2]横長長方形の図形の中心部は、「N」「U」「点」「左下方から右上方に緩やかな曲線を描いた図形」「T」「E」「E」「L」の「欧文字及び図形」部が白色で太く描かれ、欧文字はいずれも、直線を多用した特有の書体で表記され、「左下方から右上方に緩やかな曲線で構成される図形」は「S」の文字と読めるような態様で描かれ、「欧文字及び図形」は、これを囲むように黒い陰影が付され、立体的な印象を与えるように描かれ、さらに「欧文字及び図形及び陰影」は、欧文字部分についてはその外郭に沿って白い直線で、「S字様図形」の直下については曲線で、それぞれ囲むように表記され、立体的な印象を与えるように描かれている点において、共通する。
他方、本件商標においては、横長長方形図形は、「欧文字及び図形」の下方に余白部分があるのに対して、使用標章においては、横長長方形図形の同余白部に「HOMES」の文字が白い太線で、付加されて描かれている点において相違する。
しかし、本件商標は、[1]全体外郭が家を暗示する形状に描かれていること、[2]中央部の横長長方形に「欧文字及び図形」部分が白抜きで太く描かれている部分が、窓ないし居住部分を暗示する形状に描かれていること、[3]「欧文字及び図形」部分は、独創的な書体及び図形が用いられていること等の点で特徴があるが、使用標章は、その特徴的な構成のすべてを用いていること、[4]「HOMES」の文字を付加したとしても、本件商標の全体外郭が家を示す形状の商標であり、また、請求人の取り扱う商品が建築用材料であることに照らすならば、取引者、需要者に与える印象が大きく変わるものとは解されないこと等、取引の実情等を含めた諸般の事実を総合考慮するならば、使用標章は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用であるといえる。
3 結論
以上によれば、被請求人は、本件予告登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品中「鋼」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることを証明したものであると認めることができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(登録第4107315号商標)




(2)使用標章





審理終結日 2009-04-13 
結審通知日 2010-09-17 
審決日 2009-05-14 
出願番号 商願平7-129515 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (006)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
榎本 政実
登録日 1998-01-30 
登録番号 商標登録第4107315号(T4107315) 
商標の称呼 ニュースチール、ヌスチール、エヌユウスチール 
代理人 浜田 治雄 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 城山 康文 
代理人 森 智香子 
代理人 北口 貴大 

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