• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない X35
審判 査定不服 外観類似 登録しない X35
管理番号 1231623 
審判番号 不服2009-15865 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-28 
確定日 2011-01-17 
事件の表示 商願2007- 66579拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、第35類に属する願書に記載のとおりの役務を指定役務として、平成19年6月26日に登録出願されたものである。
そして、指定役務については、原審における同20年8月6日付け及び当審における同21年8月28日付け手続補正書により、最終的に、第35類「飲食良品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

2 引用商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下の(1)から(12)のとおりであり、それぞれ、現に有効に存続している。
(1)登録第1099119号商標(以下「引用商標1」という。)は、「大市」の漢字を縦書きしてなり、昭和47年1月24日登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同49年12月9日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成16年7月28日に指定商品を第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第1184300号商標(以下「引用商標2」という。)は、「大市」の漢字を縦書きしてなり、昭和45年3月5日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜(但し、砂糖きび、てんさい、茶の葉、コ-ヒ-豆を除く)果実、肉製品、加工水産物、かつお節、削り節、とろろこんぶ、干しのり、焼きのり、干しわかめ、干しひじき、寒天、加工野菜および加工果実、すし、べんとう、サンドイツチ、乾燥卵、即席菓子の素、ふりかけ、お茶づけのり、なめ物」を指定商品として、同51年2月12日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成20年2月13日に指定商品を第29類「すっぽん煮のびん詰め,すっぽんのスープと切り身の瓶詰め,その他の加工水産物,すっぽんを主材とした魚介類の惣菜,肉を主材とした肉の惣菜,野菜を主材とした野菜の惣菜,果実を主材とした果実の惣菜,すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものを除く。),食肉,卵,肉製品,加工野菜及び加工果実,乾燥卵,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「サンドイッチ,すし,べんとう,即席菓子のもと」及び第31類「すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜(茶の葉を除く。),果実」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)登録第1238045号商標(以下「引用商標3」という。)は、「大市」の漢字を縦書きしてなり、昭和47年1月24日登録出願、第29類「茶、コ-ヒ-、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品として、同51年12月8日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成18年11月29日に指定商品を第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(4)登録第1410813号商標(以下「引用商標4」という。)は、「大市」の漢字を縦書きしてなり、昭和47年1月24日登録出願、第31類「調味料、香辛料」を指定商品として、同55年3月28日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成22年5月26日に指定商品を第1類「人工甘味料」、第5類「乳糖」、第30類「出し巻用・うどんつゆ用・そばつゆ用すっぽんのだしつゆ,すっぽん雑炊用だしつゆ,濃縮すっぽんだしつゆ,その他の調味料,香辛料」、第31類「ホップ」及び第32類「ビール製造用ホップエキス」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(5)登録第1411828号商標(以下「引用商標5」という。)は、「大市」の漢字及び「だいいち」の平仮名文字を上下二段に横書きしてなり、昭和46年1月19日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、同55年3月28日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成22年5月26日に指定商品を第29類「すっぽん煮のびん詰め,すっぽんのスープと切り身の瓶詰め,その他の加工水産物,すっぽんコンソメスープ,すっぽんその他の魚介類を主材とした惣菜,肉を主材とした惣菜,野菜を主材とした惣菜,果実を主材とした惣菜,カレー・シチュー又はスープのもと,すっぽん(生きているものを除く。),その他の食用魚介類(生きているものを除く。),食肉,卵,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「穀物の加工品を主材とした惣菜,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「すっぽん(生きているものに限る。),その他の食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(6)登録第1475517号商標(以下「引用商標6」という。)は、「だいいち」の平仮名文字を縦書きしてなり、昭和47年12月15日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成14年7月10日に指定商品を第29類「すっぽん煮のびん詰め,すっぽんのスープと切り身の瓶詰め,その他の加工水産物,すっぽんコンソメスープ,カレー・シチュー又はスープのもと,すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものを除く。),食肉,卵,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「すっぽんその他の魚介類・肉・野菜・果実・穀物の加工品を主材とした惣菜,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(7)登録第1475518号商標(以下「引用商標7」という。)は、「ダイイチ」の片仮名文字を縦書きしてなり、昭和47年12月15日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成14年7月10日に指定商品を第29類「すっぽん煮のびん詰め,すっぽんのスープと切り身の瓶詰め,その他の加工水産物,すっぽんコンソメスープ,カレー・シチュー又はスープのもと,すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものを除く。),食肉,卵,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「すっぽんその他の魚介類・肉・野菜・果実・穀物の加工品を主材とした惣菜,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(8)登録第1475519号商標(以下「引用商標8」という。)は、「DAI-ICHI」の欧文字及び記号とを一連に横書きしてなり、昭和47年12月15日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成14年7月10日に指定商品を第29類「すっぽん煮のびん詰め,すっぽんのスープと切り身の瓶詰め,その他の加工水産物,すっぽんコンソメスープ,カレー・シチュー又はスープのもと,すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものを除く。),食肉,卵,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「すっぽんその他の魚介類・肉・野菜・果実・穀物の加工品を主材とした惣菜,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(9)登録第1475521号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(2)に表示するとおりの構成よりなり、昭和47年12月15日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成14年7月10日に指定商品を第29類「すっぽん煮のびん詰め,すっぽんのスープと切り身の瓶詰め,その他の加工水産物,すっぽんコンソメスープ,カレー・シチュー又はスープのもと,すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものを除く。),食肉,卵,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「すっぽんその他の魚介類・肉・野菜・果実・穀物の加工品を主材とした惣菜,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「すっぽん,その他の食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(10)登録第2003450号商標(以下「引用商標10」という。)は、「大市」の漢字を縦書きしてなり、昭和60年7月13日登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、同62年11月20日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成19年12月5日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(11)登録第4207715号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(3)に表示するとおりの構成よりなり、平成8年12月18日登録出願、第3類「せっけん類,薫料」を指定商品として、同10年11月6日に設定登録され、その後、同20年6月10日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(12)登録第5148027号商標(以下「引用商標12」という。)は、「DAIICHI」の文字を標準文字で表してなり、平成19年5月30日登録出願、第16類「紙類,紙製包装用容器,半導体チップ等の紙製包装用テープ状容器,半導体チップ等の紙製包装用テープ状容器に用いる紙製リール,コンデンサ・トランジス・LED等の縦型リード線端子部品のテーピング用ラジアルテーピング紙製台紙」を指定商品として、同20年7月4日に設定登録されたものである。
以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。

3 当審の判断
(1)本願商標と引用商標との類否について
本願商標は、別掲(1)に表示するとおり、上部に配置され全体の約5分の4を占める赤色の図形部分(赤色の正方形内において、その左辺が垂直の半円形を配し、底辺と右辺を直角にした直角三角形の傾斜辺を湾曲したような図形を配し、残りの部分を白色としたもの)と、下部に配置され全体の約5分の1を占める赤字の文字部分から構成される結合商標であるところ、当該図形部分と文字部分とは、左右両端の位置は、ほぼ同一であるものの、上下に分かれており、両者が組み合わされていたりするものではないから、常に不可分一体のものというわけではなく、それぞれが独立して自他役務の識別標識としての機能を果たすものというべきである。そして、簡易迅速を尊ぶ取引の場にあっては、特定の観念及び称呼を生じさせない図形部分ではなく、読み易い文字部分から生ずる観念及び称呼をもって取引に資されるものとみるのが自然である。
そうとすれば、本願商標からは、当該文字部分である「Daiichi」の欧文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
他方、引用商標1ないし4及び10は、前記2(1)ないし(4)及び(10)のとおり、「大市」の漢字を縦書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
引用商標5は、前記2(5)のとおり、「大市」の漢字及び「だいいち」の平仮名文字を上下二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
引用商標6は、前記2(6)のとおり、「だいいち」の平仮名文字を縦書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
引用商標7は、前記2(7)のとおり、「ダイイチ」の片仮名文字を縦書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
引用商標8は、前記2(8)のとおり、「DAI-ICHI」の欧文字及び記号とを一連にしたものを、引用商標12は、前記2(12)のとおり、「DAIICHI」の欧文字を、それぞれ、横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
引用商標9は、別掲(2)に表示するとおり、その構成中、顕著に表示された縦書きの「大市」の漢字部分は、残余の文字部分及び図形部分とは、常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の事情は見いだせず、視覚的に分離して観察されるとみるのが相当であることから、当該「大市」の漢字部分に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
引用商標11は、別掲(3)に表示するとおり、上部に配置され全体の約4分の3を占める紺色の図形部分(横長楕円形の左側を内向きに僅かに陥没させた形状を紺色で表し、右上に僅かに離して同じく紺色で小さな丸を配したもの)と、下部に配置され全体の約4分の1を占める黒字の文字部分から構成される結合商標であるところ、当該図形部分と文字部分とは、左右両端の位置は、ほぼ同一であるものの、上下に分かれており、両者が組み合わされていたりするものではないから、常に不可分一体のものというわけではなく、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきである。そして、簡易迅速を尊ぶ取引の場にあっては、特定の観念及び称呼を生じさせない図形部分ではなく、読み易い文字部分から生ずる観念及び称呼をもって取引に資されるものとみるのが自然である。
そうとすれば、引用商標11からは、当該文字部分である「DAIICHI」(「A」の文字のみデザイン化されている)の欧文字に相応して「ダイイチ」の称呼を生ずるものであり、また、これよりは特定の観念を生じさせないものである。
そこで、本願商標と引用商標1ないし10とを比較すると、これらは、「ダイイチ」の称呼を共通にするものである。
次に、本願商標と引用商標11及び12とを比較すると、これらは、「ダイイチ」の称呼を共通にするものであり、また、外観についても、本願商標の「Daiichi」の文字部分と、引用商標11の「DAIICHI」の文字部分及び引用商標12とは、小文字と大文字、デザイン化の有無の差異はあるものの、その綴り字を共通にするものである。
してみれば、本願商標と引用商標1ないし10とは、外観において相違し、観念において比較することができないとしても、称呼を共通にするものであり、また、本願商標と引用商標11及び12とは、観念において比較することができないとしても、その称呼において共通し、また、外観についても共通した部分を有するものであるから、それぞれ互いに類似する商標というべきであり、かつ、本願商標の指定役務は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似するものである。
(2)請求人の主張について
請求人は、本願商標が引用商標と同一であるとされる称呼「ダイイチ」はありふれた称呼であり、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められないのに対して、本願商標を構成する図形部分は、同一又は類似する登録商標の引用も無い特異な図形であって、出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であるのに、図形部分について何ら考慮することなく、本願商標から生ずる称呼「ダイイチ」のみから本願商標と引用商標とは称呼を同じくする類似する商標であると判断したのは、本願商標の要部の認定を誤り、かつ称呼に偏重して類否を判断したものである旨主張する。
しかしながら、仮に、「ダイイチ」の称呼が多用されているとしても、引用商標に係る「大市」、「だいいち」、「DAIICHI」等の各文字が、引用商標に係る指定商品を取り扱う分野において、ありふれた氏等でもなく、また、商品の品質等を表示するものでもなく、これらは十分に自他商品の識別標識としての機能を有するものである。
そして、本願商標は、前記3(1)のとおり、当該図形部分と文字部分とが、それぞれ独立して自他役務の識別標識としての機能を果たすものであり、両者のそれぞれが要部の一部となっているところ、具体的な取引において、当該図形部分のみで出所識別標識として使用されている等の特段の事情が認められないこと等の取引の実情に照らすと、簡易迅速を尊ぶ取引の場にあっては、取引者、需要者に対して、特定の観念及び称呼を生じさせない当該図形部分ではなく、読み易い文字部分から生ずる称呼をもって取引に資されるものとみるのが自然であり、当該文字部分から、出所識別標識としての称呼が生じないとすることはできないものである。
さらに、請求人は、小売等役務は店頭において直接提供されるのが本来の内容であり、事業者に電話による商品等に関する問合せ程度のことはあるとしても、電話を介して小売等役務を提供するということは通常の取引ではないのであり、店舗において使用される小売等役務商標は、電話等を介して役務の提供が可能な他の役務商標や、商標を付した商品が事業者の手を離れて流通経路に置かれる商品商標とは、取引の実情において使用の態様が明らかに異なるのであるから、小売等役務商標については、外観に比して称呼が類否判断に占めるウエイトは遥かに小さいのが取引の実情である旨主張する。
しかしながら、昨今、スーパー等の小売店では、電話等の注文による宅配サービス等を拡大させており、このことは、例えば、「買い物楽々、宅配利用術??スーパー・商店、広がるサービス(タウン・ビート)」の見出しの下、「重い物を中心に/まとめ買い/店頭と使い分け 足が弱くなったなどの理由で買い物に出掛けにくいシニア向けに、商品を自宅まで配達する宅配サービスが広がっている。カタログを見ながら電話で注文すれば、外出しなくてもほしい商品が入手できる『現代版ご用聞き』だ。・・・」の記載(2003/05/12 日本経済新聞 夕刊 11頁)及び「<エコノ@とかち>スーパーの宅配人気*電話やネットで商品簡単に注文*高齢者や主婦 利用増加」の見出しの下、「十勝管内のスーパーでも、宅配事業が広がってきた。いちまる(帯広)、イトーヨーカドー帯広店がそれぞれサービスを展開。電話やインターネットで店内のほとんどの商品が注文でき、即日配達にも応じる。・・・いちまるは専用電話で注文を受け付け、チラシ掲載品に限らず、店内陳列の商品はほとんど宅配に応じる。・・・」の記載(2009.05.19 北海道新聞朝刊地方 23頁)からも窺えるものであり、小売等役務が店頭において直接提供されるのが通常の取引というわけではない。そして、これらの電話等による口頭の取引では、商標の称呼をもって商品及び役務を特定することになり、このような場合、称呼において類似する商標は、商品及び役務の出所の誤認混同を生ずるおそれがあるものと認められるものである。さらに、請求人の、小売等役務商標については外観に比して称呼が類否判断に占めるウエイトは遥かに小さいのが取引の実情であるとする主張を認めるに足る的確な証拠はない。
したがって、これらの点についての請求人の主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1) 本願商標(色彩については原本参照)


別掲(2) 引用商標9


別掲(3) 引用商標11(色彩については原本参照)



審理終結日 2010-11-15 
結審通知日 2010-11-19 
審決日 2010-11-30 
出願番号 商願2007-66579(T2007-66579) 
審決分類 T 1 8・ 261- Z (X35)
T 1 8・ 262- Z (X35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津金 純子原田 信彦 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 前山 るり子
安達 輝幸
商標の称呼 ダイイチ 
代理人 中村 直樹 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ