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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2011890101 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y030916182124
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y030916182124
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y030916182124
管理番号 1231613 
審判番号 無効2009-890019 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-12 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4746886号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4746886号の指定商品中第3類「かつら装着用接着剤,つけまつげ用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),オゾン発生器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」、第18類「かばん金具,がま口口金,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入,傘,ステッキ,つえ、つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」、第20類「海泡石,こはく,荷役用パレット(金属製のものを除く。),美容院用いす,理髪店用いす,プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。),貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),輸送用コンテナ(金属製のものを除く。),カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。),クッション,座布団,まくら,マットレス,麦わらさなだ,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),旗ざお,うちわ,せんす,植物の茎支持具,愛玩動物用ベッド,犬小屋,小鳥用巣箱,きゃたつ及びはしご(金属製のものを除く。),郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),買物かご,家庭用水槽(金属製又は石製のものを除く。),ハンガーボード,工具箱(金属製のものを除く。),タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,食品見本模型,人工池,葬祭用具,揺りかご,幼児用歩行器,マネキン人形,洋服飾り型類,スリーピングバッグ,額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻,きょう木,しだ,竹,竹皮,つる,とう,木皮,あし,い,おにがや,すげ,すさ,麦わら,わら,人工角,ぞうげ,角,べっこう,さんご」、第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」、及び第41類「当せん金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4746886号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年8月20日に登録出願、第3類、第9類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類及び第41類に属する後掲(1)のとおりの商品を指定商品として、同15年12月25日に登録査定、同16年2月13日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第86号証を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(1-1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由の根拠として後掲(2)の商標を引用する。
(1-2)本件商標と引用商標が類似する理由
(1-2-1)本件商標の称呼及び観念について
本件商標は、甲第1号証のとおり、頭頂部の髪と思しき部分が尖り、パッチリとした大きな目をした幼児の頭部を描いた図形である。本件商標の図形は、米国人ローズ・オニールがキューピーのイラストを20世紀初頭に発表して以来、我が国でも周知になった「キューピー」人形とその特徴を共通にするものである。
ローズ・オニールの発表以来、我が国を含む世界中で「キューピー」のイラストを立体化した「キューピー」人形が製作されて人気を博し、我が国では、1930年代頃にセルロイド製の「キューピー」人形が製造されて広く流布した事実がある。当時、複数の企業が「キューピー」及び「キューピー人形」を商標登録し、使用した。
請求人は、「キューピー」及び「キューピー」人形を商標としてマヨネーズ等の商品に使用し、盛大に宣伝広告した結果、これらの商標は、全国的に著名となった。その後、請求人は、商号をキユーピー株式会社とした。
現在では、「キューピー」人形は、頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児の人形として、我が国において広く認識されるに至っている。
上記のとおり、「キューピー」の人形は、我が国で周知性を獲得していること、及び、本件商標の図形は、そのような周知なキューピー人形とその特徴を共通にすることから、本件商標に接する取引者又は需要者は、本件商標に係る図形を「キューピー」と認識することは、明らかである。
したがって、本件商標からは、「キューピー」の称呼を生じるとともに、頭の先の髪と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児又はその人形である「キューピー」の観念を生じるものである。
ちなみに、被請求人の所有に係る本件商標と同一態様の登録第4948210号商標に関する審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10139号、甲第45号証)においても、被請求人自身が登録第4948210号商標から「キューピー」の称呼・観念が生じると主張したこともあり、その判決においても、上述のことと同様の理由により、本件商標と同一態様の登録第4948210号商標から「キューピー」の称呼及び「キューピー」の観念が生じるとの認定がなされている。
請求人は、前記の審決取消訴訟において、本件商標と同一態様の登録第4948210号商標に関し、当該商標が取引者又は需要者に対して実際にどのような印象・連想を与えるのかを明らかにすべく、複数のアンケート調査(マーク内容想起篇)を実施し、その結果を甲号証として提出した。それらのアンケート調査の結果は、本件商標の称呼・観念の認定についても重要な根拠となり得ると考えられるため、本件審判においても当該アンケート調査結果を証拠として提出し、また、以下にアンケートの内容について説明する。
(a)インターネットによるアンケート調査について
請求人は、調査の専門業者である株式会社電通リサーチ(請求人とは何ら支配関係のない独立した調査会社である。)にアンケートを依頼した(甲第46号証)。
アンケートの内容は、本件商標と同一態様の登録第4948210号商標を提示し、「この絵をご覧下さい。あなたは、この絵を何の絵だと思われましたか。どのようなことでも良いので自由にお知らせ下さい。(問1)」「この絵をご覧になって思い浮かべる商品が何かありましたら、どのようなものでも結構ですので、ご自由にお知らせ下さい。(問2)」という質問に回答させるものである。アンケートは、全国を調査範囲として地域・性別・年代が偏らないような人口構成に準ずる割付けをしており、食品業界・調査業界の勤務者を除く15歳から59歳の男女1000人を対象とすることにより、調査対象者に偏りがでないように充分に配慮されたものであり、インターネットを通じて2008年5月9日から同年5月11日の間に行われた。 なお、本アンケート調査は、選択肢を設けずに自然想起による回答を求めるものであり、また、次の質問に移ってから前の回答に戻れない等、回答者に先入観を与えないように配慮したものである。さらに、集められた回答から、短時間回答・不自然な長時間回答者を排除した。よって、本アンケートの結果は、信頼性が高いものといえる。
このような方法で行われたアンケート調査の結果は、問1に対しては「キューピー(人形)」とする回答が全体で61.6%と高い割合を示した。問2に対しては、「マヨネーズ」の商品を思い浮かべるとする回答の割合が全体で65.9%にも及んだものである。
なお、アンケートにおいては、複数回答が可能であることから、例えば、問1において「キューピー(人形)」と回答した対象者は、他の回答をもなし得るものである。これに関し、請求人は、前記調査会社を通じて、複数回答の傾向を分析した(甲第47号証及び同第48号証)。その結果によると、間1に対して「キューピー(人形)」と回答した対象者が複数回答したものは、最も多いものでも「赤ちゃん、子供」であるが、その割合は「キューピー(人形)」と回答した対象者の5.7%にすぎないものであった。また、「キューピー」「キューピー株式会社のマーク」「キューピーマヨネーズのマーク」「マヨネーズに使われているマーク」と、キューピーと関連がある回答の合計の割合は、他の回答との重複を除いても少なくとも63.4%にも及んだ。
問2に対しては、「マヨネーズ」と回答した対象者の平均反応数が1.15となっており、「マヨネーズ」と回答した対象者の多くが「マヨネーズ」とのみ回答していることが分かる。また、「マヨネーズ」「ドレッシング」「パスタソース」「ベビーフード」「介護食」という請求人の取扱にかかる商品の回答の合計割合は、他の回答との重複を除いても少なくとも58.9%であった。
このように、本件商標と同一態様の登録第4948210号商標についての上記アンケート調査結果からも、一般需要者の多くは、本件商標から「キューピー(人形)」及び請求人の取扱に係る商品又は請求人を思い浮かべるといい得るものである。
(b)インターネット調査と同じ質問について訪問面接によるアンケート調査について(甲第49号証)
前述のインターネットによるアンケート調査と同様に、調査の専門業者である株式会社電通リサーチにアンケート調査を依頼した。本アンケート調査は、首都圏(東京30Km圏)を対象範囲として、性別・年代が偏らないような人口構成に準ずる割付けをしており、第1段階で調査地点を無作為に抽出し、第2段階で抽出された地点の対象者を無作為に抽出する方法(エリアサンプリング)により、15歳から59歳の男女630人を対象とすることにより調査対象者に偏りがでないように充分に配慮されたものであり、2008年5月15日から同年5月25日の間に行われた。
なお、本アンケート調査は、甲第46号証のインターネットによるアンケート調査と同様に、選択肢を設けずに自然想起による回答を求めるものであり、回答者に先入観を与えないように配慮したものである。
また、本アンケート調査は、オムニバス・サーベイ(複数社の調査テーマを同一実施で相乗りさせて行う調査形式)で行うことにより、対象者が質問の目的に気付くことがないようにも配慮したものである。
さらに、本アンケート調査は、オムニバス・サーベイの中でも最初に質問するようにしたため、他の質問の影響を受けることは、考えにくい。
これらのことから、甲第49号証のアンケート調査の結果も信頼性が高いものといえる。
このような方法で行われたアンケート調査の結果は、問1に対しては「キューピー(人形)」とする回答が全体で73.5%と非常に高い割合を示した。
問2に対しては、請求人の主力商品である「マヨネーズ」を思い浮かべるとする回答の割合が全体で72.7%にも及んだものである。
なお、本アンケート調査においても、複数回答が可能であることから、請求人は、複数回答の傾向を分析した(甲第48号証)。その結果によると、問1に対して「キューピー」「キューピー株式会社のマーク」「キューピーマヨネーズのマーク」「マヨネーズに使われているマーク」という、キューピーと関連がある回答の合計の割合は、他の回答との重複を除いても少なくとも69.1%にも及んだ。問2に対しては、「マヨネーズ」「ドレッシング」「パスタソース」「ベビーフード」「介護食」という請求人の取扱にかかる商品の回答の合計の割合は、他の回答との重複を除いても少なくとも60.7%であった。
このように、本件商標と同一態様の登録第4948210号商標についての上記アンケート調査結果からも、一般需要者の多くは、本件商標から「キューピー(人形)」及び請求人の取扱に係る商品又は請求人を思い浮かべるといい得るものである。
以上に述べたことにより、本件商標からは、「キューピー」の称呼及び「キューピー」の観念が生じるものである。
(1-2-2)引用各商標の称呼及び観念について
引用に係る登録第4272953号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第4278359号商標(以下「引用商標2」という。)、登録第4372111号商標(以下「引用商標3」という。)、登録第4272956号商標(以下「引用商標4」という。)、登録第4367653号商標(以下「引用商標5」という。)、登録第4372209号商標(以下「引用商標6」という。)、登録第4372210号商標(以下「引用商標7」という。)、及び登録第4361612号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(2)のとおり上段に「キューピー」の片仮名文字を横書きし、中段に頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段には、「KEWPIE」の欧文字を横書きしてなるものである。したがって、引用商標1ないし8からは、その構成文字及び図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4435103号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(3)のとおり、上段に「KEWPIE」の欧文字及び「キューピー」の片仮名文字を二段に横書きし、下段に頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有してなるものである。したがって、引用商標9からは、その構成文字及び図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4621654号商標(以下「引用商標10」という。)、登録第4673441号商標(以下「引用商標11」という。)、登録第4726488号商標(以下「引用商標12」という。)、及び登録第4697646号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲(4)のとおり、上段に頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段に「KEWPIE」の欧文字及び「キユーピー」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものである。したがって、引用商標10ないし13からは、その構成文字及び図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4455273号商標(以下「引用商標14」という。)、登録第1592154号商標(以下「引用商標15」という。)、登録第2052431号商標(以下「引用商標16」という。)、登録第4293493号商標(以下「引用商標17」という。)、登録第4331076号商標(以下「引用商標18」という。)、登録第4422984号商標(以下「引用商標19」という。)、登録第4564585号商標(以下「引用商標20」という。)、及び登録第4647804号商標(以下「引用商標21」という。)は、「キューピー」の片仮名文字を横書きしてなるものである。したがって、引用商標14ないし21からは、その構成文字に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4445316号商標(以下「引用商標22」という。)、登録第4293494号商標(以下「引用商標23」という。)、登録第4590321号商標(以下「引用商標24」という。)、登録第4600642号商標(以下「引用商標25」という。)、及び登録第4647805号商標(以下「引用商標26」という。)は、別掲(5)のとおり、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形からなるものである。したがって、引用商標22ないし26からは、その図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4230810号商標(以下「引用商標27」という。)は、別掲(6)のとおり、上段に「キューピー」の片仮名文字を横書きし、下段に頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有するものである。したがって、引用商標27からは、その構成文字及び図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第1869858号商標(以下「引用商標28」という。)は、「キューピー」の片仮名文字を横書きしてなるものである。したがって、引用商標28からは、その構成文字に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第184080号商標(以下「引用商標29」という。)は、別掲(6)のとおり、上段に「KEWPIE」の欧文字を横書きし、中段に頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段に「キューピー」の片仮名文字を横書きしてなるものである。したがって、引用商標29からは、その構成文字及び図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第2715873号商標(以下「引用商標30」という。)は、「KEWPIE」の欧文字を横書きしてなるものである。したがって、引用商標30からは、その構成文字に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4005325号商標(以下「引用商標31」という。)は、別掲(8)のとおり、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形の写実的な図形からなるものである。したがって、引用商標31からは、その構成文字及び図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
同じく、登録第4160820号商標(以下「引用商標32」という。)、登録第4240002号商標(以下「引用商標33」という。)、登録第4211212号商標(以下「引用商標34」という。)、登録第4211213号商標(以下「引用商標35」という。)、登録第4203968号商標(以下「引用商標36」という。)、登録第4160824号商標(以下「引用商標37」という。)、登録第4156315号商標(以下「引用商標38」という。)、登録第4240000号商標(以下「引用商標39」という。)、登録第4240001号商標(以下「引用商標40」という。)、登録第4240003号商標(以下「引用商標41」という。)、登録第4343326号商標(以下「引用商標42」という。)、及び登録第4343327号商標(以下「引用商標43」という。)は、別掲(9)のとおり、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形の立体的形状からなるものである。したがって、引用商標32ないし43からは、その立体的形状に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
以上のように、引用商標1ないし43のいずれからも、「キューピー」の称呼及び「キューピー」の観念が生じるものである。
(1-3)
上述のとおり、本件商標からは、「キューピー」の称呼及び「キューピー」の観念が生じる。また、引用各商標からも、「キューピー」の称呼及び「キューピー」の観念が生じる。これらのことから、本件商標と引用各商標は、互いにその称呼及び観念を同一とする類似商標であるといえる。
さらに、本件商標は、引用各商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用するものである。
なお、審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10139号、甲第45号証)においても、本件商標と同一態様の登録第4948210号商標は、請求人の保有する「キューピー」の文字商標・キューピーの図形商標等と同一の称呼及び観念(「キューピー」)を生じ、商標法第4条第1項第11号に該当する旨が認定されている。
上記のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し登録を受けることができない商標であり、商標法第46条第1項により無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(2-1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由の根拠として次の商標を引用する。
登録第595694号(引用商標44)
商標 別掲(10)のとおり
商品区分 第30類
指定商品 調味料、香辛料
出願日 昭和35年5月31日
登録日 昭和37年8月24日

登録第832283号(引用商標45)
商標 キューピー
商品区分 第30類
指定商品 調味料、香辛料
出願日 昭和41年8月11日
登録日 昭和44年9月24日
(2-2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
(2-2-1)本件商標と引用商標との類似について
本件商標は、頭頂部の髪と思しき部分が尖り、パッチリとした大きな目をした幼児の頭部を描いた図形であり、これより「キューピー」の称呼・観念を生ずることは、前記のとおりである。他方、引用に係る登録第595694号商標(以下「引用商標44」という。)は、別掲(10)のとおり、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであり、ここから「キューピー」の称呼・観念を生ずるものである。
同じく、登録第832283号商標(以下「引用商標45」という。)は、前記のとおり「キューピー」の片仮名文字を横書きしてなるものであり、「キューピー」の称呼・観念を生ずるものである。
したがって、キューピー人形の顔(頭部)の図形よりなる本件商標と引用商標44及び引用商標45とは、「キューピー」の同一の称呼・観念を有する類似の商標である。
(2-2-2)引用商標44及び引用商標45の著名性について
請求人「キューピー株式会社」は、大正8年(1919年)に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、「キユーピー」の文字及び「キューピー人形」よりなる商標を付して発売してより今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきたものである(甲第52号証)。
そして、戦後の国民の食生活の変化に伴い、洋食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」「キューピー人形」の商標は、日本全国津々浦々にまで知れ渡るに至ったものである。
請求人は、「キューピー」「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアーを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきたものである。
請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。そして、請求人の取扱商品は多種にわたるものであるのみならず、例えば、下記商品の日本国内における請求人の年度別シェアー及び順位は、次のとおりともに高いものである(甲第53号証)。
ソース類缶詰の販売集中度(販売量シェア)
(平成11年度)21.3% 、(平成12年度)20.0%、(平成13年度)20.5%、(平成14年度)21.1%、(平成15年度)18.0% 、(平成16年度)19.1%、各第1位
マヨネーズ類(液状ドレッシング類を除く)の生産集中度(生産量シェア)
(平成11年度)59.7%、(平成12年度)59.4%、(平成13年度)59.0%、(平成14年度)58.4%、(平成15年度)58.6%、(平成16年度)56.6%、各第1位
マヨネーズ類(液状ドレッシング類を除く)の販売集中度(販売金額シェア)
(平成14年度)71.8%、(平成15年度)72.9% (平成16年度)71.1%、各第1位
液状ドレッシングの生産集中度(生産量シェア)
(平成11年度)50.9%、(平成12年度)52.0% 、(平成13年度)53.5% 、(平成14年度)53.3%、(平成15年度)52.5%、(平成16年度)51.9%、各第1位
液状ドレッシングの販売集中度(販売金額シェア)
(平成14年度)42.3%、(平成15年度)41.2%、(平成16年度)42.7%、各第1位
レトルトパスタソース類の販売集中度(販売金額シェア)
(平成15年度)22.9%、(平成16年度)25.0%、各第2位
レトルトスープ類の販売集中度(販売金額シェア)
(平成15年度)9.1%、(平成16年度)9.0%、各第3位
ベビーフードの販売集中度(販売金額シェア)
(平成11年度)19.0%、(平成12年度)21.4%各第1位、(平成13年度)21.2% 、(平成14年度)21.6%、(平成15年度)23.0% 、(平成16年度)23.7%、各第2位
しかして、引用商標44及び引用商標45は、需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人が使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、防護標章の登録が認められているものである。引用商標44についての防護標章の登録は、後掲(3)のとおりである。
引用商標44は、その指定商品の属する区分を除き、本件商標の指定商品の区分を含む全ての旧商品区分、また、現行区分では、第1類から第42類までの区分について出所の混同のおそれがあるものとして防護標章の登録がなされており、この登録の事実は、引用商標44の持つ非常に高い著名性を認めたものにほかならない(甲第50号証)。
同じく、引用商標45は、その指定商品を除く多数の商品・役務について防護標章の登録がなされており(甲第51号証)、この登録の事実は引用商標45の持つ高い著名性を認めたものにほかならない。これらの防護標章登録の事実からみても、引用商標44及び引用商標45は、本件商標の登録出願日(平成15年8月20日)以前から現在に至るまで著名な商標であるといわなければならないものである。
さらに、引用商標44及びこれと「KEWPIE」の欧文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されており、この事実は、引用商標44が非常に高い著名性を有することを裏付けるものである(甲第54号証及び甲第55号証)。
(2-2-3)「キューピー人形」よりなる商標の外観上の多様性
請求人は、それぞれ外観が異なる多種多様な下記「キューピー人形」よりなる商標を所有し、これらの登録商標は、請求人により、指定商品について使用され、取引者・需用者に知られているものである。すなわち、請求人は、著名商標である引用商標44及び引用商標45の使用を中心とし、自らの所有に係る外観が異なる多種多様なキューピー人形からなる登録商標を本件商標の出願日前から使用しているところである。
1)登録第619822号商標(引用商標44及び引用商標45の連合商標)(甲第56号証)
2)登録第4598752号商標(引用商標44及び引用商標45の連合商標である登録第1850444号商標の再出願商標)(甲第57号証及び甲第58号証)
3)登録第4148770号商標(甲第59号証)
4)登録第4384750号商標(甲第60号証)
5)登録第4433479号商標(甲第61号証)
6)登録第4633096号商標(甲第62号証及び甲第63号証)
なお、甲第63号証の「キューピーアヲハタニュース」では、登録第4633096号商標が商品「マヨネーズ」及び「ドレッシング」について使用されており、さらに、キューピーの頭部の図形を含む商標も使用されている。
7)登録第4633097号商標(甲第64号証)
8)登録第4633098号商標(甲第65号証)
9)登録第4633099号商標(甲第66号証)
10)登録第4699130号商標(甲第67号証)
(2-2-4)請求人が「キューピー人形」の頭部のみの商標を使用していることについて
請求人は、「キューピー人形」の頭部のみの態様の商標を本件商標の出願日前から使用してきているものである。以下に、その使用について説明する。
1)甲第68号証
本号証は、請求人広報室が発行する「キューピー通信」内で、請求人が同社ホームページをリニューアルしたことを記念し、作成・贈答したキューピー人形の顔部分をデザインしたテレホンカードが1998年12月に存在した事実を証するものである。
2)甲第69号証
本号証は、請求人広報室が発行する「キューピー通信」内で、請求人がキューピー人形図形商標の顔部分のみをモチーフとしたデザインを、請求人のホームページ内に少なくとも2001年3月に使用していた事実を証するものである。
3)甲第70号証
本号証は、請求人がキューピー人形図形商標の顔部分のみをかたどった「たまごビスケット」を2001年8月23日より発売していた事実、及び、その顔部分のみをかたどったビスケットをパッケージに表示していた事実を証するものである。
4)甲第71号証
本号証は、請求人が一般公開している工場見学にて、キューピー人形図形商標の顔部分を主とする看板を広く公開している事実を証するものである。
5)甲第72号証
本号証は、請求人が販売しているキューピー人形図形商標の顔部分のみをかたどった「たまごビスケット」(商品パッケージにも表示)が2002年1月30日発行の書籍に掲載された事実を証するものである。
6)甲第73号証
本号証は、請求人が公開しているホームページにて、少なくとも2002年2月28日時点でキューピー人形図形商標の顔部分のみをアイコンとして使用していた事実を証するものである。
7)甲第74号証
本号証は、請求人が公開しているホームページにて、少なくとも2003年3月15日時点でキューピー人形図形商標の顔部分のみをアイコンとして使用していた事実、及び、甲69号証のデザインを引き続き使用していた事実を証するものである。
8)甲第75号証
本号証は、請求人が公開しているホームページにキューピー人形図形商標の顔部分のみからなるデザインを、2002年6月10日時点で使用していた事実を証するものである。
9)甲第76号証
本号証は、請求人が、キューピー人形図形商標の顔のみをかたどった「たまごビスケット」を2001年8月23日時点で、パッケージに表示していた事実を証するものである。
10)甲第77号証
本号証は、請求人が公開しているホームページにキューピー人形図形商標の顔部分のみからなるデザインを、少なくとも2002年2月に使用していた事実を証するものである。
11)甲第78号証
本号証は、請求人が作成した商品写真と請求書から構成される。具体的な内容は次のとおりである。
・「キューピークリアファイル」
当該クリアファイルの写真は、請求人が製作したクリアファイルにおいてキューピー人形の顔部分のみが表示されていた事実を証するものであり、本号証に含まれる2003年2月28日付けのスーパーパッグ株式会社発行の株式会社トウ・キューピー宛ての請求書により、当該クリアファイル作成費用を支払ったことは明らかである。
なお、株式会社トウ・キューピーは、元々は、請求人会社の親会社である株式会社中島董商店の100%出資に係る子会社であり、請求人会社がその広告等を業務委託している会社である。また、請求人会社が中核をなすキューピー・アヲハタグループの商品及びオリジナルグッズ等を開発・企画し、インターネット等を通して販売する業務を行っている。その後、2007年10月に、株式会社トウ・キューピーから広告宣伝事業が分社化され、株式会社中島董商店の100%出資に係る子会社「トウ・アドキューピー」が設立された。
また、株式会社トウ・キユーピーは、株式会社中島董商店60%、キューピー株式会社40%の出資により、キューピー・アヲハタグループの商品及びオリジナルグッズの開発・企画・販売を行う会社として現在も存続している。
12)甲第79号証
本号証は、「ラッピングバス写真」「請求書」「路線図」から構成される。具体的な内容は、次のとおりである。
・「ラッピングバス写真」
当該写真のとおり、請求人は、キューピー人形の顔部分のデザインを表示し、東急バス・京王電鉄バス・都営バスにて企業広告をラッピングしたバスを走行させていた。
・「請求書」
(a)株式会社東急エージェンシー発行の平成14年4月19日付けの株式会社トウ・キューピー(請求人関連会社、現・株式会社トウ・アドキユーピー、以下、「株式会社トウ・キューピー」という。)宛ての請求書
請求人は、キューピー人形の顔部分のデザインを表示し、東急バスにて企業広告をラッピングしたバスを、少なくとも2002年4月から2003年3月の期間、淡島地区(渋谷?田園調布)及び目黒地区(目黒?碑文谷、目黒?二子玉川)にて7台走行させていた。本請求書は、当該ボディバス掲出料及びラップ制作費の請求書である。
(b)株式会社東急エージェンシー発行の平成15年4月20日付けの株式会社トウ・キューピー宛ての請求書
請求人は、キューピー人形の顔部分のデザインを表示し、東急バスにて企業広告をラッピングしたバスを、少なくとも2003年4月から2004年3月の期間、淡島地区(渋谷?田園調布)及び目黒地区(目黒?碑文谷、目黒?二子玉川)にて7台走行させていた。本請求書は、当該ボディバス掲出料及びラップ制作費の請求書である。
(c)株式会社朝日広告社発行の平成15年3月20日付けの及び平成14年1月20日付けの株式会社トウ・キューピー宛の請求書、京王電鉄バス中野営業所路線図
請求人は、キューピー人形の顔部分のデザインを表示して、京王電鉄バスにて企業広告をラッピングしたバスを、少なくとも平成14年1月から平成15年12月の期間、後述の渋63、64、45路線にて1台走行させていた。上記の渋63、64、45路線は、本号証中の京王電鉄バス中野営業所路線図に示されている。上記の株式会社朝日広告社発行の請求書は、当該ラッピングバス等の費用の請求書である。
なお、株式会社朝日広告社と株式会社トウ・キューピーは、それぞれ資本関係のない独立した会社である。請求人会社から広告宣伝について業務委託を受けていた株式会社トウ・キユーピーは、複数の広告宣伝業務をまとめて株式会社朝日広告社に依頼している。
また、株式会社朝日広告社から株式会社トウ・キューピーヘの請求書については、まとめて依頼している広告宣伝各種を含む請求書となっているため、本件と関連のない請求については、請求書中の記載を黒塗りにしている。
(d)株式会社朝日広告社発行の平成14年8月20日付けの株式会社トウ・キューピー宛の請求書、株式会社朝日広告社発行の平成14年9月20日付けの株式会社トウ・キューピー宛の請求書
請求人は、キューピー人形の顔部分のデザインを表示して、都営バスにて企業広告をラッピングしたバスを、少なくとも2002年8月から2003年7月の期間及び2002年9月から2003年8月の期間、都04(豊海水産埠頭?東京丸の内南口)にて1台、及び、渋谷一般(都06;渋谷駅?新橋駅、学03;渋谷駅?日赤医療センター、学06;恵比寿駅前?日赤医療センター、渋88;渋谷?新橋駅北口、田87;渋谷駅?田町駅)にて1台走行させていた。上記の株式会社朝日広告社発行の請求書は、当該ラッピングバス等の費用の請求書である。なお、株式会社朝日広告社と株式会社トウ・キューピーの関係は、上述のとおりである。
(e)株式会社共栄サービス発行の平成14年6月24日付けの株式会社トウ・キューピー宛の請求書、株式会社共栄サービス発行の平成15年6月23日付けの株式会社トウ・キューピー宛の請求書、株式会社共栄サービス発行の平成13年9月25日付けの株式会社トウ・キューピー宛ての請求書、大阪市オリンピック招致局(代行 株式会社共栄サービス)発行の平成13年4月1日付けの株式会社トウ・キューピー宛の請求書、大阪市営バス各営業所別路線図
請求人は、キューピー人形の顔部分のデザインを表示して、大阪市営バスにて企業広告をラッピングしたバスを、少なくとも2001年4月及び10月から6ヶ月間に5台づつ、2002年7月から12ヶ月間、2台、2003年6月30日から2004年6月29日の期間に1台走行させていた。上記の株式会社共栄サービス発行の平成13年4月1日、同9月25日、同14年6月24日及び同15年6月23日付けの請求書は、当該ラッピングバス等の費用の請求書である。
本号証中の大阪市営バス各営業所別路線図は、(e)の項において言及した企業広告をラッピングしたバスの路線を示すものである。
なお、株式会社共栄サービスと株式会社トウ・キューピーは、資本関係のない会社である。請求人会社から広告宣伝について業務委託を受けていた株式会社トウ・キューピーが、大阪市営バスのラッピング広告についての業務を株式会社共栄サービスに依頼したものである。
以上の証拠から、請求人は、キューピー人形の図形の顔部分のみからなる商標を大々的に使用していることが明らかである。
(2-2-5)本件商標をその指定商品・役務について使用した場合の混同のおそれについて
a 本件商標と引用商標44及び引用商標45とは、「キューピー」の同一の称呼・観念を有する類似の商標であること。
b 引用商標44は、本件商標の指定商品・役務をはじめとする全ての商品・役務について他人が使用した場合、混同を生じさせるおそれがある極めて著名なものであり、同じく引用商標45は、本件商標の指定商品・役務をはじめとする多くの分野の商品・役務について他人が使用した場合、混同を生じさせるおそれがある著名なものであること。
c 請求人は、引用商標44及び引用商標45の使用を中心に、外観が異なる多種多様なキューピー人形よりなる商標をその取扱に係る商品について使用していること。
d 請求人は、キューピー人形の図形の顔部分のみからなる商標を大々的に使用していること。
上記aないしdの事実から、本件商標は、これをその指定商品・役務について使用するときは、その商品・役務が請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品・役務であるかのごとく混同を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、被請求人が、引用商標44及び45と称呼・観念を同じくする本件商標を、その指定商品・役務について使用する場合には、その商品・役務が請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品・役務であるかの如く混同を生じることは、明らかである。
以上述べたとおり、本件商標は、請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当し登録を受けることができない商標である。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項11号について
(1-1)答弁書「被請求人の反論の要旨」の項について
被請求人は、「請求人の各引用商標のうち『キューピー』の称呼及び観念に識別力はなく、各引用商標の要部となるのはこれらの外観だけである。しかし、本件商標の外観と各引用商標の外観との間に類似性は認められないのであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に抵触しない。」と主張する。
しかしながら、商標とは商品・役務の識別標識であるため、商標の識別力の有無は、商標が使用される商品・役務との関係において、当該使用商品・役務の品質表示語等の一般的な表示であるか否かを具体的取引事情に基づいて判断されなければならないものであり、上記の被請求人の主張は、これらの点を全く無視しているものである。仮に本件商標の指定商品・役務の分野において「キューピー」の語や「KEWPIE」の語や請求人のキューピー人形図形が多くの者によって一般的な用語・表示として使用されているのであれば、本件指定商品・役務の分野においてこれらの語等は、識別力がないと考えられるかも知れないが、被請求人は、そのような主張・立証を一切行っておらず、またそのような事実もない。
したがって、被請求人の主張は、失当である。
(1-2)答弁書「各引用商標と本件商標の類似性」の項について
(1-2-1)「商標の類似性における判断基準」について
被請求人は、「商標の観念及び称呼に出所識別力がなければ、たとえ当該観念及び称呼が類似していても、それをもって商標の類似性を認めることはできない。」と主張しているが、その主張の前に掲げられた最判昭和43年2月27日の氷山印事件の判決の抜粋に、その主張の根拠は見いだすことができない。よって、被請求人のこの主張には、根拠がない。
また、被請求人は、特定の名称等を特定の事業者の商品・役務に付したとしても、その特定の名称等が特定の事業者の商品・役務のみを指すものではなく、その特定の事業者以外の商品・役務の名称等や他の名称等としても広く使用されている場合には、当該名称等は、特定の事業者の商品・役務を示すものとして識別力を有するとはいえないと主張する。
しかし、上記(1-1)で述べたことと同様に、請求人のこの主張も、商標が使用される商品・役務との関係を全く無視した主張である。商標は、商品・役務の識別標識であるため、特定の名称の識別力を検討するためには、必ず使用される商品・役務との関係を考慮しなければならない。特定の名称も、特定の事業者とは異なる事業者によって異なる商品等に使用されれば、特定の事業者以外の出所を識別するための標識となり得るのは、当然のことである。
なお、被請求人が引用した「青丹よし」の語に関する裁判例(大阪地裁平成20年7月10日判決)においても、「青丹よし」の名称は、ある種の干菓子に広く付されてきたものであることから、「和三盆と葛粉で短冊型に打ち固めた干菓子」を指定する登録商標中の「青丹よし」の語の識別力が否定されたものであり、指定商品との関係を具体的に考慮した上での判断である。
また、同じく被請求人が引用した登録商標「RENAISSANCE」「ルネッサンス」(指定役務:「宿泊施設の提供」等)の語に関する裁判例は、同役務を指定し、かつ「RENAISSANCE」「ルネッサンス」の語を要部に含む異なる者の登録商標や、同様の宿泊施設名が多数存在する等の事情を考慮した上で、「RENAISSANCE」「ルネッサンス」の語の「自他商品識別力、出所表示機能は弱い」と判断されたものである。よって、本件とは、事情が全く異なる。
(1-2-2)答弁書「各引用商標における出所識別力のある部分」について
被請求人は、米国の女流画家ローズ・オニールがキューピーのイラストを創作した点を説明し、「『キューピー』は、そもそもローズ・オニールが創作したキューピー人形をはじめとするキャラクターを識別する称呼及び観念である。」と主張する。
しかしながら、本件において問題とすべきなのは、米国においてそもそも誰が「キューピー」を創作したものかではなく、日本において、本件商標の指定商品・役務の分野の取引者又は需要者が本件商標をどのように認識するかである。「キューピー」は、ローズ・オニールが創作したものであるとのことが日本において取引者又は需要者に殆ど認識されていない以上、そもそも「キューピー」がローズ・オニールの創作にかかるものであるとの主張は、本件無効審判においては無意味である。
被請求人は、「大正時代にさかのぼる大ブーム以来、現代に至るまで、『キューピー』は、一貫して、ローズ・オニールが制作したキューピー・キャラクターないしキューピー人形を識別する称呼及び観念である。」と述べているが、取引者又は需要者がそのように認識することを一切立証していないものである。
したがって、本件無効審判における被請求人の前記の主張は根拠がない。 また、被請求人は、「キューピーが日本人に広く親しまれているものであり、請求人の商品を指す称呼及び観念でないことは、平成15年(行ケ)第192号審決取消訴訟事件(乙第12号証)において次のように認定されているとおりである。」と主張するが、乙第12号証の判決を読めば明らかなとおり、この判決では「キューピー」が「請求人(キューピー株式会社)の商品を指す称呼及び観念でない」との認定は行われていない。
さらに、「(上記判決において認定されたところによれば、各種辞書類において)、キューピーは、キューピー人形の特徴を持つキャラクター一般の名称として説明されている・・・」と記載されているが、当該判決で言及された辞書類においては、「キューピー人形」の説明がなされているのであって「キューピー」とは、「キューピーのキャラクター一般の名称」である旨が説明されているものではない。
加えて、辞書類において「キューピー」は「請求人の商品を示す商標である。」のような説明がないことを理由として、本件商標の指定商品・役務との関係で「キューピー」「KEWPIE」の語の識別力を否定することができないことは、明らかである。
被請求人は、「被請求人の努力により、キューピーがローズ・オニールの作品であること、請求人である「キューピー株式会社」は、ローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーとは、何ら関係がないことも認知されるようになった。」と主張する。
しかし、被請求人は、このような主張の証拠を一切提出していない。請求人が知る限り、「キューピー」がローズ・オニールの作品であることは、我が国においてほとんど知られておらず、したがって、請求人会社がローズ・オニールの創作にかかるオリジナルのキューピーと関係がないことも一般には、認知されていない。
なお、審判請求書において請求人が言及した、被請求人の所有に係る本件商標と同一態様の登録第4948210号商標に関する審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10139号)の判決においても、「・・・キューピーが初めて日本にお目見得し、あっというまに国民的に普及してからでも原作者ローズ・オニールの存在はもとより、名前すら全くとよいほど伝えられなかった。」との証拠資料の記載が引用され(甲第45号証第28頁第1行目以降)、「我が国において、本件商標の出願登録時はもとよりその査定時においても、『キューピー』について、『ローズ・オニールが創作したオリジナルのキューピー』とそれ以外の『キューピー』が截然と区別して認知されていたとまでは到底認めることができない…」と認定されている(甲第45号証第28頁11行目以降)。そして、この判決に関しては、上告審不受理となっているため、この判決は、確定したものである(甲第80号証)。
さらに、甲第46号証及び同第49号証のアンケート調査結果をみても、本件商標と同一態様の図形を見て「ローズ・オニール」を想起したアンケート回答者は、ほとんどいなかった。このことからも、本件商標からローズ・オニールを想起する取引者又は需要者は、非常に少ないことが分かる。
被請求人は、乙第33号証の新聞記事で請求人会社の広報室が「キューピーはみんなのもの」とのコメントを出したことを取り上げ、引用各商標によってキューピーの称呼及び観念を独占しているものでないことを請求人自ら認めていると主張する。
このコメントは、キューピー人形の流行を歓迎する趣旨のものであって商標の問題とは一切関係がないこと、したがって、請求人が引用各商標の独占権を放棄することを認めたものではないことは、当該新聞記事全体を見れば明らかである。
被請求人は、答弁書第9頁「b.各引用商標の出所識別力」の項において、引用各商標から「キューピー」の称呼及び観念が生じると認めているが、一方で、「キューピー」の称呼及び観念には、出所識別力がなく、本件商標と引用各商標の類否判断においては、外観のみを比較して類否を決めなければならないと主張する。
しかし、審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10139号)の確定判決において、「・・・原告が『キューピー』のキャラクターをマヨネーズの宣伝広告に使用することによって、『キューピーマヨネーズ』として著名となり、『キューピー』の付されたマヨネーズを他から識別することを可能としている事実からも明らかなように、『キューピー』の称呼及び観念に何ら識別力がないということができないことは明らかであり・・・」との認定がなされている(甲第45号証第30頁下から第3行目以降)。
したがって、答弁書第9頁「b.各引用商標の出所識別力」の項における被請求人の主張は、失当である。
なお、被請求人は、「平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件においては、次のように、『キューピー』が請求人の商品を示すものとしての識別力がないと結論付けている。」として、当該判決の抜粋を引用しているが、当該判決の全文を読めば明らかなとおり、当該判決では、そのような認定は、一切していない。
ちなみに、被請求人は、「ローズ・オニールが初めてキューピーのイラストを雑誌に掲載して発表したのは1909年のことであった。」として乙第5号証を提出しているが、ローズ・オニールは、遅くとも1903年にはキューピーのイラストを雑誌に発表していた。平成16年(ネ)第1797号判決(甲第81号証)の第117頁7行目以降では、「1909年作品は、1903年作品(前記6のとおり、既に公有物となっている。)の二次的著作物であり・・・」と認定されている。
(1-2-3)答弁書「各引用商標における出所識別力のある部分」について
被請求人は、「1995年から、キューピーの著作権の所在について調査を開始した。3年に及ぶ調査の結果、ローズ・オニールの著作権は、米国では保護期間を経過しているが、調査当時の日本では、保護期間が存続していること、その著作権は、ローズ・オニール遺産財団によって処分されないままになっていることが判明した。」と主張している。この記載をそのまま読むと、あたかも同遺産財団は、継続的に存在していたように読める。
しかし、実際には、同遺産財団は、その遺産中にもはやみるべきものがないことを理由に1964年1月16日に清算されていたものである(甲第82号証)。
その後、被請求人は、キューピーの著作権が第三者に譲渡された記録はないとして、その日本における著作権を譲り受けた。そして、1997年に同遺産財団は、再建された。
これらのことを考慮すると、同遺産財団は、被請求人の働きかけによって再建された可能性があると請求人は考える。なお、被請求人は、1998年5月1日にキューピーに関する日本における著作権をローズ・オニール遺産財団から15,000USドルで譲り受け、そのわずか1ヶ月半後の1998年6月16日に訴額11億380万円で請求人会社に対する訴訟を提起した。
また、当時キューピーを商標として使用していた株式会社日本興業銀行、牛乳石鹸共進社株式会社やキューピー人形を製造する玩具メーカーに対しても、被請求人は、キューピーの著作権の使用許諾料の支払いを請求した。
これらのことを考慮すると、被請求人は、日本においてローズ・オニールの正当なキューピーを広めるためというよりも、むしろ、日本でキューピーの著作物を使用していた企業から使用許諾料を得る目的で著作権を譲り受けたのではないかと疑われるものである。
答弁書第14頁下から4行目以降において、被請求人は、「請求人は、権利者であるローズ・オニール遺産財団から何ら許諾を得ることなく、ローズ・オニールの著作物の名称である『キューピー』の称呼を文字商標として出願し、さらに、ローズ・オニールの創作したキューピー人形に着想を得た請求人独自の図案を図形商標として出願し、商標法第4条第1項第7号公序良俗に違反する商標登録を行っていた。」と主張する。
しかし、請求人の行為が公序良俗違反に該当しないのは、甲第83号証及び同第84号証の確定判決をかんがみれば明らかである。
被請求人は、「そのため、請求人は、正当な権利者であるにもかかわらず、商標登録が困難な状況に立たされた。そこで、被請求人は、『キューピー』ではなく『ROSE O’EILL KEWPIE(ローズオニールキューピー)』の称呼を生じる文字商標を出願し、商標登録を受けた。」とのことである。
しかし、「キューピー」に識別力がないと主張するならば、そもそも最初から「キューピー」を出願しようとすること自体が矛盾していると請求人は考える。
被請求人は、甲第46号証のアンケート調査結果について、このアンケート調査のQ1の回答として「キューピー株式会社のマーク」と回答した者が2.1%にとどまる点を指摘し、請求人の各引用商標を含め請求人のイメージと混同している者は、ほぼ皆無であると主張する。しかし、このアンケート調査のQ1は、「この絵をご覧下さい。あなたは、この絵を何の絵だと思われましたか。どのようなことでも結構ですので、ご自由にお知らせ下さい。」という質問である。この質問の趣旨からして、会社名ではなく、図形の名称を回答しようとするのは自然なことである。
したがって、「キューピー株式会社のマーク」と回答した者が少ない点をもって、本件商標と引用各商標の間における出所の混同のおそれを否定することはできない。
また、被請求人は、「アンケートでは、問1回答後、問2を回答する形式となっている。問1で『キューピー』と回答した者は、思い浮かべる商品を問われた場合、本件商標に用いられるイラストではなく、自身の回答から『キューピー・マヨネーズ』という商品を連想してしまったにすぎない。」と指摘し、問2に対する「マヨネーズ」との回答は、誘導によって得られたものであると主張する。
これについては、被請求人のいうとおり、問1において「キューピー」と回答した者が自身の回答から「キューピー・マヨネーズ」の商品を連想したというのであれば、それは、本件商標から想起される「キューピー」から、被請求人会社ではなく、請求人会社を連想したことを意味する。
すなわち、上記の被請求人の主張は、本件商標から「キューピー」を想起し、そこから請求人会社を連想した回答者が多かったことを自認したことになる。このことからも、本件商標がその指定商品に使用されれば、商品の出所について混同が生じるおそれが高いことは、明白である。
ちなみに、問1は、単純に何の絵だと思ったのかということを質問しており、商標の類似性や混同のおそれにかかる紛争が背景にあることをアンケート回答者に予想させる余地はない。
問2は、回答者に類似や混同のおそれが問題になっていることを憶測させる要素を与えることなく、出所の混同のおそれの有無を認定するのに必要な情報を引き出す質問事項となっている。これは、米国の裁判例で生成されたEXXON(事件)法を用いたものであり、客観的な調査方法といえるものである。答弁書第17頁におけるアンケート調査結果(甲第49号証)に関する主張においても、被請求人は、「本件商標の図形に接した者の中で、キューピーマヨネーズを想起したものは5.9%ないし請求人を想起した者は1.1%と僅少である。」と指摘するが、上記の甲第46号証のアンケート調査結果について述べたところと同様に、問1の質問の趣旨からして、会社名や商品名ではなく、図形の名称を回答しようとするのは、自然なことである。
また、甲第49号証のアンケート調査結果の問2が誘導によって得られたものであるとの被請求人の主張も、甲第46号証のアンケート調査結果について述べたところと同様に、上記の被請求人の主張は、本件商標から「キューピー」を想起し、そこから請求人会社を連想した回答者が多かったことを自認したことになる。
したがって、上記のアンケート調査の結果をかんがみても、本件商標がその指定商品に使用されれば、商品の出所について混同が生じるおそれが高いことは、明白である。
(1-3)以上に述べてきたことから、答弁書において「本件商標と各引用商標の問に同一性又は類似性は認められないから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に抵触しない。」とする被請求人の主張には、根拠がない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(2-1)答弁書「被請求人の主張の要旨」の項について
被請求人は、「本件商標と各引用商標とは、上述のとおり類似性は認められない。その上、各引用商標には周知著名性はないのであるから、混同を生じるおそれはなく、本件商標は商標法第4条第1項第15号に抵触しない。」とする。
しかし、審判請求書及び上記(1)にて述べたとおり、本件商標と引用各商標とは、類似するものであり、引用各商標は、著名性を獲得しているものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2-2)答弁書「商標の類似性の程度」の項において、被請求人は、「引用商標44(甲第50号証)及び45(甲第51号証)において識別力が認められるのは、引用商標44及び45の外観に限られるため、この部分が各引用商標の要部となる。本件商標の外観と引用商標44及び45の外観は全く異なるのだから、本件商標と引用商標44及び45は類似性がない。」と主張する。しかし、審判請求書及び上記(1)において述べたことから、本件商標と引用商標44及び45は、同一の称呼及び観念を生じるため、互いに類似の関係にあることが明らかである。
(2-3)答弁書「周知著名性及び独創既の程度」の項において、被請求人は、引用商標44及び45の著名性が認められるとしても、その図案が「マヨネーズ」に使用される範囲において、著名と認められるにすぎないとする。引用商標44及び45は、これらが請求人の商品「マヨネーズ」に使用されたことをきっかけとして全国的に知れ渡るに至ったことは事実であるが、その後、請求人によって多種多様な商品に使用された結果、より広い商品分野での著名性を獲得するに至っている。
このことは、審判請求書で詳しく述べたとおり、引用商標44及び45と同一態様の商標が、ほぼ全区分の商品・役務について防護標章登録による保護を受けていることからも分かる。
(2-4)答弁書「取引の実情」の項において、被請求人は、本件商標の指定商品・役務と引用商標44及び45の指定商品は関連性がないことを主張する。
しかし、上述のとおり、引用商標44及び45は非常に広い範囲の商品・役務について防護標章登録が認められているものである。このため、本件商標が引用商標44及び45の指定商品とは直接に関連しない本件商標の指定商品・役務について使用されると出所の混同を生じるおそれがあるというのが、商標法第4条第1項第15号該当性に関する請求人の主張である。
(2-5)答弁書「防護商標に関して」の項において、被請求人は、平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件の判決の抜粋を引用して、請求人が審判請求書で列挙した防護標章登録の存在をもって、本件商標と引用商標44及び45との間で混同が生じるとの請求人は、成り立たないと主張する。
これについて、請求人は、当該防護標章登録の存在によって引用商標44及び45の著名性を立証しようとしているのであって、防護標章が登録されている事実のみをもって、本件商標と引用商標44及び45との間に混同のおそれがあると主張しているのではない。したがって、請求人の主張は、平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件の判決の趣旨に反するものではない。
また、被請求人は、「そもそも、防護標章は、登録防護標章の指定商品または指定役務について登録防護標章と同一の商標を使用する行為が登録商標権を侵害するものとみなす制度にすぎず(商標法第67条)、登録防護標章の指定商品または役務についてまで、当該標章が著名であることを根拠づけるものではない。」とする。
これに関しては、商標法第64条には、登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが防護標章登録の要件の一つとして挙げられているため、防護標章登録制度は、著名性の認定を含むものであることは、明らかであり、被請求人が主張するように一定の行為を商標権侵害とみなす制度にすぎないものではない。
なお、請求人が主張するのは、第30類の商品を指定して登録されている引用商標44及び第31類の商品を指定して登録されている引用商標45は、審判請求書において掲げたとおりの広範囲の商品・役務について防護標章登録を受けるほど著名であるという点である。
したがって、答弁書第22頁5行目から7行目における被請求人の主張は失当である。
(2-6)以上のことより、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないとする被請求人の主張は、根拠がない。
(3)商標法第29条該当性について
答弁書の「商標法第29条該当性」の項においては、被請求人は、請求人の本件無効審判の請求行為は、商標法第29条にいう「使用」に該当するため、請求人は、各引用商標に基づく無効審判請求を行うことはできないと主張する。
しかし、商標法第29条は、商標権者等の指定商品・役務についての登録商標の使用がその商標登録出願日前に生じた他人の著作権と「抵触」するとき等に、登録商標の「使用」を制限する旨の規定である。
請求人と被請求人は、「キューピー」の著作権に基づく著作権侵害訴訟を過去に争ってきたが、請求人の行為が、被請求人が所有していた著作権を侵害しないことは、甲第81号証の判決を見れば明らかである。したがって、まず、請求人が引用各商標を使用する行為は他人の著作権と「抵触」するものではなから、請求人が本件審判を請求することについて商標法第29条該当性が問題となる余地はない。
次に、被請求人は、「商標法第二十9条は、商標権がその商標登録出願日前に成立した著作権と抵触する場合、商標権者はその限りで商標としての使用ができないのみならず、当該著作物の複製物を商標に使用する行為が自己の商標権と抵触してもその差止等を求めることができない旨を規定していると解すべきである。」との最高裁判所平成2年7月20日第2小法廷判決の抜粋を引用し、前記判決文中の「差止等」には、無効審判の請求も含まれると主張する。
しかしながら、この判決は、特定の行為が商標権侵害に該当するか否かの場面における判断であって、特定の商標登録について無効審判を請求し得るか否か(すなわち商標登録の有効性)については何ら判断していないものである。
被請求人は、前記判決文中の「差止等」に「無効審判請求」も含まれると当然のように主張するが、この主張には、全く根拠がない。被請求人の所有に係る本件商標と同一態様の登録第4948210号商標に関する審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10139号)の確定判決においても、次のとおり認定されている(甲第45号証第33頁1行目以降)。
「商標法第29条は、『商標権者・・・は、指定商品・・・についての登録商標の使用がその使用により・・・その商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、指定商品・・・のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。』と規定し、商標法における(商標を含む)標章の『使用』態様については、同法第2条第3項第1?8号に限定的に列挙されているところ、無効審判請求及び審決取消訴訟の提起は、上記各号所定の行為のいずれにも該当しないから、著作権との抵触の有無を論ずるまでもなく、商標法第29条に基づく被告の主張は失当である。なお、商標法第29条は、商標権者の商標の使用を商標登録出願前の出願や発生に係る他人の権利と抵触しない範囲に限定することにより、商標権と他の権利との調整を図る規定であり、商標権者が類似する他人の商標登録の無効を請求する場合である本件に類推すべき基礎となる事情も認められない。」これらのことから、被請求人の「商標法第29条該当性」に関する主張は、誤りである。
(4)権利濫用について
(4-1)被請求人は、最高裁判所平成2年7月20日第2小法廷判決の抜粋を引用し、請求人の行為は公正な法秩序の維持に反し、権利濫用に該当すると主張する。しかし、請求人の行為が権利濫用に該当しないのは、甲第81号証、同第83号証、同第84号証の判決をかんがみれば明らかである。 なお、被請求人は、答弁書第26頁下から10行目以降において、請求人が「キューピーの図柄やキューピーの名称を剽窃して出願しこれを登録した。」としているが、請求人は当該図柄や名称を盗み取って自分のものとして発表したことはない。
また、被請求人は、「請求人が、このように、著作権に対する調査を怠り、無断使用を継続してきた・・・」と主張する。しかし、請求人が引用商標の使用を開始した1925年頃は、日本では、多数の者が多数の「キューピー」なる商品を開発販売している状況であり、「キューピー」の語や図形は、パブリックドメインとして、公衆に使用が許されたものであると信じても無理からぬ状況であった。
請求人は、1970年頃から、米国において、引用各商標のルーツを探るための調査を行った結果、上記のとおり、ローズ・オニール遺産財団が遺産中にもはやみるべきものがないことを理由に清算してしまっていたと判断した。このような状況においては、請求人が「キューピー」の語及び図形については、著作権者が存在しないと考えたことは合理的である。
以上のことから、請求人の行為は、公正な法秩序の維持に反し権利濫用に該当するとの被請求人の主張は誤りである。
(4-2)被請求人は、請求人が使用の実績も使用の意思も有していない引用商標を出願登録していると指摘し、そのような引用各商標に基づき無効審判請求を認めることは、不使用による取消制度を骨抜きにし、本来商標法により保護されるべきでない商標を不当に維持するだけにとどまらず、登録商標を使用する第三者の正当な利益をも積極的に害するものであって、商標権の濫用に該当すると主張する。
しかしながら、請求人は、本件商標の指定商品・役務の範囲に属する商品・役務について、引用各商標を使用しているものであり、その一部としてあげれば、例えば「携帯電話用ストラップ」「文房具類」「かばん」「食器類」等について引用各商標を使用している。一例として、一部の商品についての引用商標の使用証拠を提出する(甲第85号証及び第86号証)。
上記のとおり、請求人は、引用商標の指定商品・役務について引用各商標を使用しており、又は使用意思を有しているため、「請求人が使用の実績も使用の意思も有していない引用商標を出願登録している」として請求人の行為が権利濫用に該当するとする被請求人の主張は、何ら根拠がなく、虚言と言わざるを得ない。
(5)むすび
以上述べたとおり、被請求人の主張はいずれも理由・根拠がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、商標法第46条第1項により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第57号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)各引用商標と本件商標との類似性
(ア)最判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁(氷山印事件)は、商標の類否について次のように判断している。
「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」
したがって、商標の類否は、出所に誤認混同をきたすおそれがあるか、すなわち出所識別力の有無をもって判断される。
また、上掲最判は、商標の外観、観念、称呼と出所に誤認混同をきたすおそれ(出所識別力)との関係について、次のように判示している。
「商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。」
したがって、商標の観念及び称呼に出所識別力がなければ、たとえ当該観念及び称呼が類似していても、それをもって商標の類似性を認めることはできない。
たとえば、特定の名称を特定の事業者の商品・役務に付したとしても、その特定の名称が特定の事業者の商品・役務のみを指すのではなく、その特定の事業者以外の商品・役務の名称や他の名称としても広く使用されている場合には、当該名称は、特定の事業者の商品・役務を示すものとして識別力を有するとはいえない。
さらに、特定の外観を特定の事業者の商品・役務に付したとしても、その外観がその特定の事業者以外の商品・役務の外観や他の外観としても広く使用されている場合には、当該外観は、特定の事業者の商品・役務を示すものとして識別力を有するとはいえない。加えて、特定の事業者の商標から特定の観念が生じるとしても、当該事業者の商標以外からも同じ観念が生じる場合には、その特定の観念は、識別力を有するとはいえない。
以上のことは、結合商標の場合についても当てはまる。すなわち、商標に識別力を有しない部分がある場合、商標の類否を判断するにあたっては、識別力を有しない部分を除外し、識別力を有する部分のみを比較しなければならない(大阪地方裁判所平成20年7月10日判決青丹よし事件、知的財産高等裁判所平成20年5月29日判決ルネサンス事件)。
(イ)各引用商標における出所識別力のある部分
a.称呼・観念における出所識別力
(a)キューピーの称呼及び観念が本来的に要する識別機能
引用商標から生じる「キューピー」の称呼及び観念は、もとはといえば、米国の女流画家ローズ・オニールが創作したキューピー人形を起源とするキューピーの形状を有するキャラクターを識別する称呼及び観念である。ローズ・オニールは、キューピーを創作する以前は、雑誌などの挿絵画家として活躍し、挿絵作品も多く残している画家であり(乙第1号証ないし第3号証)、2008年、米国において、キューピー作品をはじめとする絵画が再評価され、女性に送る視覚芸術賞を獲得している(乙第4号証)。
ローズ・オニールが初めてキューピーのイラストを雑誌に掲載して発表したのは1909年のことであった(乙第5号証)。ローズ・オニールが発表したキューピー作品は、単なるイラストではなく、物語性がある絵本である。その中に登場する何人かのキューピーは、リーダーでトップノットに「K」と描かれた旗を付けているキューピー村の村長さんであるワグ、エプロンをしてみんなにごちそうを作るクック、大工のカーペンター、鉄砲を持っているアーミー、マフラーをしているボイス、麦わら帽子をかぶっているファーマーないしガーデナー、日よけ帽をかぶっているボンネット、浮き輪を身につけているライフガード、めがねをして調べものをしているプロフェッサーなど、物語の中における役割を与えられ性格づけがされている。ローズ・オニールは、このようなキャラクター設定を行った上で、キューピー作品を何作も残している(乙第6号証ないし第8号証)。つまり、キューピー作品は、ローズ・オニールの芸術作品なのである。ローズ・オニールは、このキューピー作品によって一躍有名となり、その後、キューピー作品をもとにキューピー・キャラクターを立体化したキューピー人形を創作した(乙第9号証ないし第11号証)。ローズ・オニールの創作したキューピーは、これが大正時代に日本に伝わり大ブームとなった(乙第1号証及び第2号証)。このように、「キューピー」は、そもそもローズ・オニールが創作したキューピー人形をはじめとするキャラクターを識別する称呼及び観念である。
(b)キューピーの称呼及び観念の広がり
大正時代にさかのぼる大ブーム以来、現代に至るまで、「キューピー」は、一貫して、ローズ・オニールが制作したキューピー・キャラクターないしキューピー人形を識別する称呼及び観念である。
しかし、キューピーがローズ・オニールの著作物であることを知らない多数の者が、模倣の「キューピー」キャラクターや「キューピー」の名称を商標として登録している(乙第12号証ないし第30号証)。さらに、旧日本興行銀行、旧和光証券、牛乳石鹸共進社など大手企業も、ローズ・オニールの著作権が存続しているにもかかわらず、無断で「キューピー」を利用していた(乙第33号証)。
したがって、「キューピー」の称呼及び観念は、ローズ・オニールが創作したキューピー・キャラクターないしキューピー人形を識別する称呼及び観念を意味するだけでなく、ローズ・オニールのキューピー・キャラクターを模倣するキャラクターや人形一般を指す称呼及び観念となった。
キューピーが日本人に広く親しまれているものであり、請求人の商品を指す称呼及び観念でないことは、平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件(乙第12号証)において次のように認定されているとおりである。
「『キューピー人形』は、米国人の女流画家ローズ・オニール・ウイルソンが1912年に家庭雑誌に描いたキューピッドの絵が評判になり、翌1913年にこれを模したセルロイド製の人形として発売され、世界的に広く販売されて日本にも輸入された。その後、セルロイドの主要原料である樟脳が特産品の日本でも製造されるようになり、1936年から1937年にかけて、日本で大量に安価に生産された『キューピー人形』が、当時全盛期を迎えていたセルロイド玩具産業の花形商品となって、欧米に大量に輸出された。このようにして、『キューピー人形』は、日本人に広く親しまれ、角川外来語辞典第2版には『キューピッドをこっけい化した、頭の先のとがった裸体人形。』と、また、平凡社大百科事典には『ローマ神話の恋愛の神キューピッドをかわいらしい表情のマスコットにつくったもの。頭髪のとがった裸形のベビー人形で背中に羽がある。』と、さらに、広辞苑第4版には『頭の先が尖り、目の大きい裸体の人形』とそれぞれ記載されているだけでなく、平成3年9月15日、『キューピー人形』とともに、マヨネーズ、銀行マスコット、石けんなど日本で開発されたキューピー商品の数々を紹介するなどした『キューピー讃歌』と題する書籍(大澤秀行著)が株式会社出版芸術社から発行された」。
上記判決において認定されたところによれば、角川外来語辞典、平凡社大百科事典、広辞苑などの辞書において、キューピーは、キューピー人形の特徴を持つキャラクター一般の名称として説明されているものの、「請求人の商品を示す商標である」という説明は一切されておらず、請求人の商品を示すものとしての識別力がないことは明らかである。
さらに、新言海(乙第34号証)においても、キューピーは、「キューピッドを滑稽化した子供の裸体姿の人形」をさす名称及び概念であると定義され、キューピーは、キューピー人形の特徴を持つキャラクター一般の名称として説明されている。
また、広辞苑第6版(乙第35号証)においては、「オニールのキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちや。頭の先がとがり、目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。商標名。」と記載され、キューピーがローズ・オニールの作品であることが明記されている。
なお、キューピーの商標登録を行っているのは請求人だけとは限らず、請求人の商標であるとは、記載されていない。また、コンサイスカタカナ語辞典(乙第36号証)、広辞林(乙第37号証)、角川小辞典26外来語の語源(乙第38号証)においては、ローズ・オニールの作品をオリジナルとすることが明記されている。
被請求人は、キューピーがローズ・オニールの著作であり、日本においては著作権が存続しているということを知って以来、その事実を世の中に訴え続けた(乙第31号証)。そして、請求人の努力により、キューピーがローズ・オニールの作品であること、請求人である「キューピー株式会社」は、ローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーと何ら関係がないことも認知されるようになった。
現在では、我が国において、ローズ・オニールのキューピー作品に対する著作権の保護期間は消滅し、キューピー作品は、パブリック・ドメインとなった(乙第32号証)。そのため、これまでにも増して、多数の者がローズ・オニールの創作した「キューピー」のキャラクターと「キューピー」の名称を利用して、独自の商品を販売するようになっている(乙第33号証)。したがって、いまや「キューピー」の称呼及び観念は、ローズ・オニールの創作したキャラクターや人形だけでなく、これに類似するキャラクターや人形一般を指す称呼及び観念となっている。しかも、請求人は、「キューピーはみんなのもの」であると公言し、各引用商標によってキューピーの称呼及び観念を独占しているものではないことを自ら認めている(乙第33号証における平成19年5月2日読売新聞夕刊記事)。
b.各引用商標の出所識別力
各引用商標はいずれも、文字もしくは図形又は文字及び図形を構成要素とする。各引用商標における文字部分又は図形部分は、「キューピー」の称呼及び観念をも生ずる。しかし、前述のとおり、「キューピー」の称呼及び観念自体は、ローズ・オニールの創作したキャラクター又はこれに類似するキャラクターや人形一般を指す称呼及び観念として社会的に定着しているものであって、請求人一人が独占できるものではない。
したがって、各引用商標における出所識別力は、当該文字又は図形にのみに所在し、当該文字又は図形から生ずる「キューピー」の称呼及び観念にまで及ぶものではない。すなわち、そもそも需要者や取引者は、各引用商標を「キューピー」と呼び、「キューピー」の観念を想起するのではなく、「キューピー」の形状をしたキャラクターを「キューピー」と呼び、その観念を想起しているにすぎない。
「キューピー」の称呼及び観念が、請求人の商品とのみ結びついて、自他商品を識別し、その出所を表示するものとしての識別力を有すると解することはできない。実際に、平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件(乙第12号証)においては、次のように、「キューピー」が請求人の商品を示すものとしての識別力がないと結論づけている。
「なるほど、被告らの宣伝広告活動が、『キューピー人形』の存在を日本人の記憶の中にとどめることに貢献している部分があるということは否定できない。しかしながら、『キューピー人形』は、前記のとおり、1936年から1937年にかけて、日本で大量に安価に生産され、当時全盛期を迎えていたセルロイド玩具産業の花形商品となって、欧米に大量に輸出されたものであり、戦前戦後を通じて、日本人に広く知られ、親しまれてきており、現に被告A以外のいくつかの有力企業により、これを模した商標が商標登録され、使用されてきたものであるから『キューピー人形』、及び『キューピー』の語が被告Aらとのみ関連づけられるものとして一般に広く知られている、ということは到底できない」。
この理は、平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件において問題となった引用商標だけでなく、本件で問題となっている引用商標から生じる「キューピー」の称呼及び観念にも当てはまる。
したがって、各引用商標はいずれも、文字もしくは図形又は文字及び図形を構成要素とし、各引用商標における文字部分又は図形部分は、「キューピー」の称呼及び観念をも生ずるが、当該「キューピー」の称呼及び観念には、出所識別力はない。各引用商標が出所識別力を有するのは、外観である当該文字自体又は当該図形自体のみである。
c.小括
以上より、本件商標と各引用商標との類否判断においては、その称呼及び観念は問題とならず、外観のみを比較して類否を決しなければならない。
(ウ)外観の類否
本件商標は、「The Kewpies and the Goblin」と題するローズ・オニールが描いた原画(乙第39号証)の中のキューピーのうち、1人のキューピーの顔部分をそのまま写し取る形で標章とし(乙第40号証)、図形商標として商標登録したものである。
本件商標は、a頭部(顔部分)と羽だけである、b輪郭線の太さに強弱がある、c正面でなく斜めを向いており左右対称ではない、d耳がない、e髪の毛が頭頂部と顔の左右の三ヵ所にある、との特徴を有する。
引用商標1ないし13(甲第2号証ないし第14号証)、22ないし27(甲第23号証ないし第28号証)及び29(甲第30号証)は、a直立した体全体であり、両手は開き肩付近まで上げ、足は閉じている、b輪郭線の太さが一様である、c正面を向いており、ほぼ左右対称である、d耳がある、f髪の毛は頭頂部のみにある、との特徴を有する。
したがって、このように特徴が全く異なるのであるから、引用商標1ないし13、22ないし27及び29と本件商標を離隔的に観察した場合、アーティストのオリジナルのイラストを忠実に模した本件商標と、請求人が独自に図案化した当該各引用商標とは、類似性がない。
引用商標31(甲第32号証)は、a直立した体全体であり、両手は開き肩付近まで上げ、足は閉じている、c正面を向いており、ほぼ左右対称である、d耳がある、f羽がない、g立体商標である、との特徴を有する。
したがって、このように特徴が全く異なるのであるから、引用商標31と本件商標を離隔的に観察した場合、アーティストのオリジナルのイラストを忠実に模した本件商標と、請求人が独自に図案化した引用商標31とは、類似性がない。
引用商標32ないし43(甲第33号証ないし第44号証)は、a直立した体全体であり、両手は開き肩付近まで上げ、足は閉じている、d耳がある、e頭頂部の髪の毛が額の真ん中あたりまで垂れ下がっている、g立体商標である、との特徴を有する。
したがって、このように特微か全く異なるのであるから、引用商標32ないし43と本件商標を離隔的に観察した場合、アーティストのオリジナルのイラストを忠実に模した本件商標と、請求人が独自に図案化した当該各引用商標とは、類似性がない。
以上より、本件商標と引用商標の図形に類似性がないことは、明白である。
なお、本件商標と引用商標中の文字商標との外観が全く異なっていることも明らかである。
(エ)取引の実情
a.被請求人の活動
ローズ・オニールの死後、ローズ・オニールの創作したキューピーの著作権は、ローズ・オニールの遺産の管理を目的とする米国ミズーリ州法人であるローズ・オニール遺産財団(法定代理人デビッド・オニール)に承継された(乙第41号証及び乙第42号証)。
被請求人は、キューピーをはじめとする日本のおもちゃの収集家であり、1988年(昭和63年)、京都において、収集したおもちゃを集めた「想い出博物館」を開館した。
被請求人は、1994年、米国のローズ・オニールとその作品の研究者や愛好家で構成される団体であるインターナショナル・ローズ・オニール・クラブ・ファンデーション(略称IROCE)が毎年米国で開催するキューピーエスタに参加し、ローズ・オニールのキューピー作品の全貌を知り、ローズ・オニールが創作した「キューピー」の素晴らしさを広めたいと考えた。そこで、1995年から、キューピーの著作権の所在について調査を開始した。3年に及ぶ調査の結果、ローズ・オニールの著作権は、米国では保護期間を経過しているが、調査当時の日本では保護期間が存続していること、その著作権はローズ・オ二-ル遺産財団によって処分されないままになっていることが判明した(乙第31号証)。
同時期に、被請求人は、1993年、日本キューピークラブを立ち上げ、1994年、IROCEから、日本キューピークラブは、初の国際支部として認定された(乙第43号証及び乙第44号証)。
被請求人は、1996年、現在代表取締役を務める株式会社ローズオニールキューピー・インターナショナルの前身である、ローズオニールキューピージャパンとして、出版活動(「キューピー物語」の出版)やライセンス活動を開始した。また、京都の「想い出博物館」のほか、神戸及び大阪に直営店を開店した(乙第44号証)。
ローズ・オニール遺産財団は、ローズ・オニールの正当なキューピーを日本に広めたいという被請求人の熱意に応え、1998年5月1日、ローズ・オニールが創作した全てのキューピー作品に対する日本における著作権を被請求人に譲渡した(乙第45号証)。2002年には、台湾において、アジアにおけるライセンス活動をスタートさせた。2003年には、被請求人は、株式会社ローズオニールキューピー・インターナショナルを設立した。現在、被請求人は、定番商品として、キャラクターグッズを販売しているほか、「キュージョン」、「ご当地ローズオニールキューピー」がヒット商品となっている(乙第44号証)。
b.被請求人による本件商標登録の経緯
被請求人は、キューピーがローズ・オニールの作品であることを訴える活動のほか、上記の営業活動を展開するにあたり、ローズ・オニール遺産財団から権利を取得して、商標出願を行い、本件商標を登録しようとした。
ところが、請求人は、権利者であるローズ・オニール遺産財団から何ら許諾を得ることなく、ローズ・オニールの著作物の名称である「キューピー」の称呼を文字商標として出願し、さらに、ローズ・オニールの創作したキューピー人形に着想を得た請求人独自の図案を図形商標として出願し、商標法第4条第1項第7号公序良俗に違反する商標登録をおこなっていた。そのため、被請求人は、正当な権利者であるにもかかわらず、商標登録が困難な状況に立たされた。
そこで、被請求人は、「キューピー」ではなく「ROSE O’NEILL KEWPIE(ローズオニールキューピー)」の称呼を生じる文字商標を出願し、商標登録を受けた。被請求人は、その他にもキューピー・キャラクターをモチーフとする図形やローズ・オニールの文字等、多数の商標登録を有する(乙第44号証及び乙第46号証)。
c.本件商標の使用
被請求人は、本件商標を本件商標の指定商品「文房具類」としてペンケース、シャープペン、ノート及びファイルボックス等に、指定商品「印刷物」として絵本に、指定商品「写真立て」としてフォトフレームに、指定商品「かばん類」としてトートバッグ及びリュックサックに、指定商品「袋類」として財布及びポーチ等に、指定商品「家具」として飾り棚に、指定商品「うちわ」としてダイカットうちわ等に、指定商品「人工池」として噴水に、指定商品「ネームプレート及び標札」としてルーム・ボードに、指定商品「食器類」としてティーカップセット等に、指定商品「貯金箱」として貯金箱に、もしくは指定商品「布製身の回り品」としてハンカチ等に使用し、それらの商品を自ら販売し又は他社へのライセンス事業を行っている(乙第47号証)。
このようにして、本件商標を用いた商品は、被請求人が代表取締役を務める株式会社ローズオニールキューピー・インターナショナルの商品であることが需要者や消費者に認識され、本件商標は、株式会社ローズオニールキューピー・インターナショナルの出所を表示するものとして識別力を獲得している。
d.アンケートによる裏付け
(a)アンケート調査結果(甲第46号証)について
本件商標は、ローズ・オニールの創作したキューピー・キャラクターをモチーフにした図形商標である。
請求人は、アンケート調査結果の問1のように、本件商標を見せて「キューピー」を想起したとする回答が全体で61.6%に及ぶというが、オリジナルのキューピーを示しているのであるから、回答者が「キューピー」を想起することは、当然である。
むしろ、問1において着目される結果は、本件商標を示して、「キューピー」と回答した者が61.6%であるのに対して、「キューピー株式会社のマーク」と回答した者は2.1%にとどまり、請求人の引用商標を含め請求人のイメージと混同している者は、ほぼ皆無であるという事実である。
すなわち、このアンケート結果は、本件商標が商品に使用された場合に、商品の出所について誤認・混同を生じるおそれがないとの事実を示している。
また、問2では、回答者の65.9%が、本件商標を見て思い浮かべる商品について「マヨネーズ」と回答したとされている。しかし、この回答結果は、誘導によって得られたものであり、信用性はない。
すなわち、アンケートでは、問1回答後、問2を回答する形式となっている。問1で「キューピー」と回答した者は、思い浮かべる商品を問われた場合、本件商標に用いられているイラストではなく、自身の回答から「キューピー・マヨネーズ」という商品を連想してしまったにすぎない。
(b)アンケート調査結果(甲第49号証)について
甲第46号証に対する反論で述べたところと同様、本件商標の図形に接した者の中で、キューピーマヨネーズを想起した者は5.9%ないし請求人を想起した者は1.1%と僅少である。これまで述べたとおり、「キューピー(人形)」を想起した者は、ローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピー又は日本人に広く親しまれているキューピーを想起したのであって、請求人やマヨネーズを想起したのではない。回答者が、本件商標の図案に接して請求人やマヨネーズを想起しているとすれば、当初から「キューピーマヨネーズのマーク」又は「キューピー株式会社のマーク」と回答しているはずである。
また、Q1で「キューピー」で回答した者は、本件商標ではなく、「キューピー」との自らの回答によって、Q2で「マヨネーズ」との回答に誘導されたものである。誘導されなかったとすれば、これらの者は、問1において既に「キューピーマヨネーズ」のマークであるとの回答を行っているはずである。
なお、請求人は、オムニバス・サーベイの方法でアンケートを行い、対象者が質問の目的に気づくことがないように配慮したと主張している。しかし、オムニバス・サーベイは、調査を行いたい複数の調査を同一機会で実施することにより、一つ当たりの調査費用を抑える目的のために行われるのであり、対象者が質問の目的に気づかないようにするために行われるのではなく、また、そのような効果を有するものでもない。
(オ)小括
したがって、本件においては、本件商標と各引用商標の外観は、全く異なる上、取引の実情からも出所の混同が生じるおそれはないのであるから、本件商標と各引用商標との間に誤認混同を生じるおそれはない。
(2)結論
以上より、本件商標と各引用商標との間に同一性または類似性は認められないから、本件商標は商標法4条1項11号に抵触しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
ア.混同を生ずるおそれの判断基準
判例(最判平成12年7月11日民集54巻6号1848頁)は、商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」に関して以下のように述べる。「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」
したがって、混同を生ずるおそれは、(a)当該商標と他人の表示との類似性の程度、(b)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、(c)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途または目的における関連性の程度ならびに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情、などに照らし総合的に判断しなければならない。
イ.商標の類似性の程度
前記1「商標法第4条第1項第11号の該当性について」で述べたところと同様、引用商標44及び45において識別力が認められるのは、引用商標44及び45の外観に限られるため、この部分が引用商標の要部となる。本件商標の外観と引用商標44及び45の外観は全く異なるのだから、本件商標と引用商標44及び45は、類似性がない。
ウ.周知著名性及び独創性の程度
引用商標44及び45は、請求人がキューピー人形を独自に図案化した標章をマヨネーズ商品に使用したため、当該標章の図案の範囲においてマヨネーズの出所を示す「キューピー・マヨネーズ」の商標として著名性が認められているにすぎない。
したがって、引用商標44及び45の著名性が認められるにしても、その図案が「マヨネーズ」に使用される範囲において、著名と認められるにすぎない。
すなわち、請求人が、ローズ・オニールの創作したキューピーならびにこれを起源とするキューピーの形状を有するキャラクター及び人形を示す「キューピー」の外観、称呼及び観念全体を独占している事実はない。かつ、請求人の各引用商標が、マヨネーズ以外の商品と結びついて著名になっている事実もない。
このことは、平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件(乙第13号証)において、以下のように判断されていることからも明らかである。「『キューピー人形』自体が戦前戦後を通じて日本人に広く親しまれてきたものであることを考慮すれば、『キューピー人形』を模した原告Aの引用商標1及び2の原告Aを示すものとしての周知性は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野あるいはこれに密接に関連する分野について認めることはできるものの、その範囲を超える分野については、簡単には認めることができない」。
また、引用商標44は、請求人がローズ・オニールの創作したキューピー人形を基に独自に図案化したものであるから(乙第2号証)、独創性がないことも明らかである。
エ.取引の実情
引用商標44及び45は、共に、指定商品は「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」である。一方、本件商標の指定商品・指定役務には「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」だけでなく、食品類すら含まれていない。
このように、引用商標44及び45の指定商品は食品類の一部である調味料等であるのに対し、本件商標の指定商品・指定役務には、食品類は全く含まれていないのであるから、引用商標44及び45と本件商標の指定商品・役務間には、関連性が全くないことは明らかである。また、請求人は本件商標の指定商品に引用商標44及び45の商標を使用していない。
一方、被請求人は、「被請求人による商品の販売」で述べたように、本件商標を指定商品には用いているが(乙第44号証、乙第47号証)、「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」と関連する商品には用いていない。
したがって、引用商標44及び45に接する取引者・需要者と、本件商標に接する取引者・需要者との共通性は、全くない。
オ.防護標章に関して
請求人は、引用商標44は本件商標の指定商品・役務の全てに、引用商標45はその一部において、同一の標章について防護標章登録が認められており、本件商標の指定商品・役務にかかる取引者、需要者間においても、引用商標44及び45が、請求人を出所として示す商標として著名であると主張している。
しかし、平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件(乙第13号証)において、以下のように判断されている。
「防護標章登録の制度は、商標権者の登録商標がその指定商品において周知である場合に、他人が指定商品と類似する商品又は役務以外の商品又は役務に、登録商標を使用することにより、他人の業務と混同を生ずるおそれがあるときに、その登録が認められる制度であり(商標法第64条参照)、原告Aの商標として、マヨネーズ、ドレッシング、その他の加工食品において周知である引用商標1及び2と同一の商標を、他人が他の指定商品又は役務において使用した場合を想定したものである。
これに対し、本件は、被告が、引用商標1及び2と同一の商標とはいえない本件商標(「キューピー引越センター」)を使用した場合に、原告の役務との混同が生じるかどうかの問題であるから、そもそも原告Aの上記防護標章登録が認められているとの事実をもって、本件商標についての混同の問題を論じることは相当ではない。」
本件においても同様に、被請求人は、防護標章と同一の商標を用いているわけではないから、これをもって、本件商標との間で混同が生じるとの請求人の主張は、成り立たない。
そもそも、防護標章は、登録防護標章の指定商品又は指定役務について登録防護標章と同一の商標を使用する行為が登録商標権を侵害するものとみなす制度にすぎず(商標法第67条)、登録防護標章の指定商品又は指定役務についてまで、当該標章が著名であることを根拠づけるものではない。
カ.結論
以上より、本件商標と引用商標44及び45に類似性はなく、引用商標44及び45は本件商標の指定商品・役務の分野において周知著名ではない上、本件商標と引用商標44及び45の指定商品・役務の間には関連性は全くないのであるから、本件商標によって各引用商標との間に混同を生じさせるおそれはなく、本件商標は商標法4条1項15号に該当しない。
3 商標法29条該当性
ア.被請求人の主張の要旨
引用商標は、商標登録出願の日前に生じていた他人の著作権と抵触し、請求人の無効審判請求は、商標法第29条が禁止する「使用」に該当するので、請求人は、引用商標に基づく無効審判請求を行うことはできない。
イ.商標法第29条の「使用」とは
商標法29条に関して、最高裁判所平成2年7月20日第2小法廷判決(判例時報1356号132頁)は、次のように判断している。
「商標法29条は、商標権がその商標登録出願日前に成立した著作権と抵触する場合、商標権者はその限りで商標としての使用ができないのみならず、当該著作物の複製物を商標に使用する行為が自己の商標権と抵触してもその差止等を求めることができない旨を規定していると解すべきである。丙標章は、『ポパイ』の人物像を視覚的に表出した図形と、これに付随し一体となって説明的に結合した名称から成るので、原著作物である『THE THIMBLE THEATER』の漫画における想像上の人物である『ポパイ』の複製に当たる。したがって、丙標章は全体として、本件商標権に対する侵害とはならない。」
すなわち、「使用」態様は、同法2条3項1?8号に限定的に列挙されているところに限定されるものではない。
ウ.「差止等」には、無効審判請求も含まれる
ところで、前掲最高裁判例は、「商標権者はその限りで商標としての使用ができないのみならず、当該著作物の複製物を商標に使用する行為が自己の商標権と抵触してもその差止等を求めることができない」と判断しているので、「差止等」には、権利が及ぶことを前提とする無効審判請求も含まれると解するべきであり、「差止等」からこれを除外する理由を見出すことはできない。
すなわち、「29条により使用もできない登録商標に関する商標権を保護する必要はない」(田村善之『商標法概説(第2版)』(2000年、弘文堂)235頁)のであり、学説は、「商標登録が著作権を侵害して作成されていた場合には、著作権者かもしくはその許諾を受けた者の著作物の利用行為に対して商標権者が権利行使することは、商標法第29条の趣旨解釈として許されないというべきである。このように解する場合には、商標権者は、少なくとも著作権者との関係では登録商標の使用をすることもできなければ、商標権の効力を及ぼすこともできないことになる」(同235頁)と解釈している。
このように商標権の効力を及ぼすことができないのであれば、差止請求のみならず、自己の商標に抵触することを理由とする無効審判請求が認められないことは、当然である。
なお、商標法29条は、「その商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するとき」と定めるので、引用商標の出願前に著作権が成立することを要件としているだけであって、著作権の存続期間が満了した著作物について、商標法第29条の規定の適用が排斥されることはない。
ところで、著作権については、特許権・実用新案権及び意匠権に関する33条の233条の3と同様の規定がないため、著作権存続期間満了後、商標権と抵触する著作物を使用できないと解釈する見解も存在する。しかし、著作権存続期間満了までは、使用することができた自己の著作物について、存続期間が満了した途端、商標権に抵触することを理由に、その使用をすることが商標権侵害となるのであれば、著作権者にとって極めて酷な結果となる。このような権利者に対して、存続期間満了後、救済を与える必要性が認められる点に関しては、その権利が著作権であろうと、特許権・実用新案権及び意匠権であろうと、変わるところはない。著作権に関して、商標法第33条の2及び同第33条の3と同様の規定がないのは、登録主義を採用し、存続期間満了後は、登録が消滅する特許権等に対して、無登録主義を採用し当初から登録上での変動がない著作権については、登録が消滅したことによる疑義を払拭する必要がなかったからと解される。
したがって、著作権により保護された著作物の著作権保護期間が満了した後であっても、著作権者は、その範囲内において、その商標登録にかかる指定商品もしくは指定役務について、その登録商標の使用をすることができると解釈される。
商標権者の側からみれば、その商標と類似する著作物を使用するかつての著作権者に対しては、差止めをすることはできず、加えて、かつての著作権者が商標登録済みであれば無効審判請求をすることはできない。
4 権利濫用その1-公正な法秩序の阻害
ア.公正な法秩序の維持
ポパイ・ワンポイントマーク事件(「最判平成2年7月20日判時1356号」32頁)は、次のように判断する。「前記事実関係からすると、本件商標登録出願当時既に、連載漫画の主人公『ポパイ』は、一貫した性格を持つ架空の人物像として、広く大衆の人気を得て世界に知られており、『ポパイ』の人物像は、日本国内を含む全世界に定着していたものということができる。そして、漫画の主人公『ポパイ』が想像上の人物であって、『POPEYE』ないし『ポパイ』なる語は、右主人公以外の何ものをも意味しない点を併せ考えると、『ポパイ』の名称は、漫画に描かれた主人公として想起される人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれてきたものというべきである。したがって、乙標章がそれのみで成り立っている『POPEYE』の文字からは、『ポパイ』の人物像を直ちに連想するというのが、現在においてはもちろん、本件商標登録出願当時においても一般の理解であったのであり、本件商標も、『ポパイ』の漫画の主人公の人物像の観念、称呼を生じさせる以外の何ものでもないといわなければならない。以上によれば本件商標は右人物像の著名性を無償で利用しているものに外ならないというべきであり、客観的に公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の一つとなっていることに照らすと、被上告人が、『ポパイ』の漫画の著作権者の許諾を得て乙標章を付した商品を販売している者に対して本件商標権の侵害を主張するのは、客観的に公正な競業秩序を乱すものとして、正に権利の濫用というほかない。」
このように、ポパイ・ワンポイントマーク事件においては著作者の許諾を得てポパイの標章を付して商品を販売している者に対する、ポパイの著名性を利用して商標登録した者による商標権の行使が、客観的に公正な競争秩序を乱すものとして、権利の濫用であると判断されている。
イ.請求人による権利濫用
請求人は、ローズ・オニールの創作した「キューピー」の名称やキャラクターの著名性を無償で利用する目的で、キューピーの図柄やキューピーの名称を剽窃して出願しこれを登録した。その経緯は、書籍「キューピー物語」(乙第2号証、46頁)に次のように記載されているとおりである。
「(キューピー株式会社は)創業の大正8年(1919年)には『食品工業株式会社』といい、東京の中野にあった。一方財界人で著名な高碕達之助氏が東洋製缶を創り、ご自身は専務で、社長に山梨出身の実業家、小野金六氏を迎えた。この会社は本社が大阪で、東京は輸出食品会社の中に事務所があった。後に他の会社とも合併して日魯漁業となるのだが、当時、北洋の紅鮭の缶詰を製造していた。第一次世界大戦のあと、輸出用だけでなく、内地売りの缶詰も製造することになり、そのラベルと商標が必要になってきた。小野金六社長は、たまたま事務所に来た高碕達之助氏に『何かよい商標は?』と相談された。かねがね思いつきのよい高碕氏は、とっさに『キューピー』がいいというので、すぐにこれにきまり、はじめはキューピー印の鮭缶詰が売り出された。それは、ちょうどキューピー人形が、日本でも人気急上昇の時期であった。食品工業株式会社(現・キューピー株式会社)の実質的な創業者であり、かねてからマヨネーズの製造販売をしたいと考えていた中島董一郎氏は、高碕氏の話をきいて、ブランドには是非『キューピー』を使いたいと思った。アメリカからやってきて、人気ももちろんだが、キューピーは愛と幸せを運ぶといわれ、マヨネーズを売り出すのにイメージ的にピッタリで最高だと思われたのだ。商標登録は、商品ごとに種類によって分類されていたから、中島社長は高碕氏にお願いして承認を得、マヨネーズの部類に『キューピー』を登録した。大正11年の商標公告には、『醤油・ソース・ケチャップ・酢類一切』として『KEWPIE』と、近頃の同社のマークのキューピーよりも若干細身のマークが登録されているのは面白い(同社のPR誌上、中島薫一郎氏の資料より)。」
上記の商標は、「輸出食品株式会社」名義で、大正5年12月に出願され、大正6年[1917年]2月16日に第84209号として商標登録された商標(乙第48号証)及び大正11年に商標登録された商標(乙第49号証)である。本件各引用商標が、日本におけるキューピーの人気に乗じて商標登録されたものであるとの事実は、東京高等裁判所平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件においても、次のように判断されているとおりである(乙第13号証)。
「原告Aの引用商標1及び2は、いずれも大正14年ころから使用され、昭和35年あるいは同41年に出願され、その後登録されたものであり(甲第3号証、第5号証、第8号証)、原告Aがその使用を継続してきたことにより、マヨネーズ、ドレッシング、その他の加工食品の分野においては、その取引者、需要者に広く知られた商標となったことは前記のとおりである。しかし、上記のとおり、『キューピー人形』及びその愛称の『キューピー』は、戦前はもちろん、戦後も、日本人に広く知られ、親しまれていたものであり、原告Aが、古くから一般に広く知られ、親しまれているこの『キューピー人形』の人気や普及性に着目し、引用商標1及び2を商標としてマヨネーズ、ドレッシング、その他の加工食品に採択し、その使用を継続してきたものであることは、否定することができない。」
請求人が、このように、著作権に対する調査を怠り、無断使用を継続してきたことに対し、被請求人は、誠実に『キューピー』に対する著作権の所在を調査した。調査の結果、当時の我が国においては、キューピーの著作権が存続していることが判明したので、著作権者であったローズ・オニール遺産財団から日本におけるキューピーの著作権の譲渡を受け、キューピーのイラストをモチーフとした本件商標をはじめとするキューピーに関連する商標を商標登録した(乙第31号証)。
以上の経緯から、知的財産法秩序を無視しキューピーの著名性を利用して商標登録した請求人が、知的財産法秩序を尊重し著作権との抵触を解消して商標登録をした被請求人に対し、商標を無効にするべく、特許庁における無効審判請求を行う行為は、権利の濫用であるといわざるをえない。
5 権利濫用その2-不使用取消制度の潜脱
ア.不使用取消制度の潜脱行為
商標法は、使用主義を採用せず、登録主義を採用しているが、本来使用しているからこそ保護を受けられ、使用を予定しているものを保護するために例外的に使用をしていなくても商標登録が許されるところ、予定された使用がなくても登録商標に対して排他的独占権を与えておくことは、国民一般の利益を侵害し、他の商標使用希望者による使用を排除することになるから、不使用による取消審判制度を定めている(同法50条1項)。
しかし、請求人の引用商標はいずれも、請求人による使用の実績も使用の意思も存在しない。
請求人は、商標権者による二重出願に対しては、商標法4条1項11号の適用がなく、重複して商標登録が可能であることを悪用し、ほぼ同一の標章でかつほぼ同一の商品または役務を指定した商標出願をほぼ3年毎に繰り返すことによって、たとえ不使用取り消しを受けても、他方で未だ不便用取り消しの要件にかからない商標権を保持し、第三者による当該商標の使用を排除しようとしている。
このような請求人による使用の実績も使用の意思も存在しない引用商標は、単に他の商標使用希望者による使用を排除することに目的があり、また国民一般の利益を侵害するものである。
このようにして登録されている商標に基づき無効審判請求を認めることは、不使用による取消制度を骨抜きにし、本来商標法により保護されるべきでない商標を不当に維持するだけにとどまらず、登録商標を使用する第三者の正当な利益をも積極的に害するものであって、商標権の濫用として許されない。
イ.請求人による引用商標の使用の意思
本件商標の商品区分である第3類、第9類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類及び第41類の指定商品ないし指定役務に関し、請求人は、引用商標を使用していない。引用商標は、商標出願が平成10年2月20日または平成11年1月22日であり、現在まで10年以上経過しているにもかかわらず使用されていないのであるから、請求人に引用商標を使用する意思がないことは、明らかである。
ウ.請求人による登録状況
a.商品区分第3類
引用商標1は、請求人が使用していない「つけづめ、つけまつげ」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標1は、平成11年5月14日に商標登録された。
その後、請求人は、平成15年12月17日に1件(乙第50号証の1)、平成17年12月29日に2件(乙第50号証の2、乙第50号証の3)、平成20年10月16日に1件(乙第50号証の4)、引用商標1の文字部分を変更しただけで、同じ図形を用いた結合商標を、「つけづめ、つめまつ毛」等を指定商品として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標出願を繰り返している。
b.商品区分第9類
引用商標2は、請求人が使用していない「火災報知機、ガス漏れ警報器」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標2は、平成11年5月28日に商標登録された。
その後、請求人は、平成11年5月13日に1件(甲第23号証)、平成13年12月4日に1件(甲第11号証)、平成15年12月17日に1件(乙第51号証の1)、平成17年12月29日に1件(乙第51号証の2)、平成20年10月16日に1件(乙第51号証の3)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標2と同じ図形を用い、「火災報知機、ガス漏れ警報器」等を指定商品として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標を出願を繰り返している。
c.商品区分第16類
引用商標3は、請求人が使用していない「封ろう、印刷用インテル、活字」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標3は、平成12年3月31日に商標登録された。
その後、請求人は、平成15年12月17日に1件(乙52号証の1)、平成17年5月30日に1件(乙52号証の2)、平成17年12月29日に1件(乙52号証の3)、平成20年10月16日に1件(乙52号証の4)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標3と同じ図形を用い、「封ろう、印刷用インテル、活字」等を指定商品として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標を出願を繰り返している。
d.商品区分第18類
引用商標4は、請求人が使用していない「皮革、かばん類」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標4は、平成11年5月14日に商標登録された。
その後、請求人は、平成12年1月27日に1件(甲第10号証)、平成17年6月29日に1件(乙第53号証の1)、平成20年10月16日に1件(乙第53号証の2)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標4と同じ図形を用い、「皮革、かばん類」等を指定商品として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標を出願を繰り返している。
e.商品区分第20類
引用商標5は、請求人が使用していない「揺りかご、幼児用歩行器」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標5は、平成12年3月10日に商標登録された。
その後、請求人は、平成14年12月4日(甲第12号証)、平成16年12月20日に1件(乙第54号証の1)、平成17年6月29日に1件(乙第54号証の2)、平成19年1月9日に1件(乙第54号証の3)、平成20年10月16日(乙第54号証の4)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標5と同じ図形を用い、「揺りかご、幼児用歩行器」等を指定商品として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標出願を繰り返している。
f.商品区分第21類
引用商標6は、請求人が使用していない「なべ類、コーヒー沸かし」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標6は、平成12年3月31日に商標登録された。
その後、請求人は、平成14年12月4日(甲第13号証)、平成16年12月20日に1件(乙第55号証の1)、平成17年6月29日に1件(乙第55号証の2)、平成19年1月9日に1件(乙第55号証の3)、平成20年10月16日(乙第55号証の4)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標6と同じ図形を用い、「なべ類、コーヒー沸かし」等を指定商品として、ほぼ3年毎に同一商標出願を繰り返している。
g.商品区分第24類
引用商標7は、請求人が使用していない「メリヤス生地」等を指定商品とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標7は、平成12年3月31日に商標登録された。
その後、請求人は、平成14年12月4日(甲14号証)、平成16年12月20日に1件(乙第56号証の1)、平成17年6月29日に1件(乙第56号証の2)、平成19年1月9日に1件(乙第56号証の3)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標7と同じ図形を用い、「メリヤス生地」等を指定商品として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標出願を繰り返している。
h.商品区分第41類
引用商標8は、請求人が使用していない「技芸・スポーツ又は知識の教授」等を指定役務とする、請求人が独自に図案化した「キューピー人形」の図形と文字の結合商標である。引用商標8は、平成12年2月10日に商標登録された。
その後、請求人は、平成14年12月4日(乙第57号証の1)に1件、平成16年12月20日に1件(乙第57号証の2)、平成19年1月9日に1件(乙第57号証の3)、平成20年10月16日に1件(乙第57号証の4)を、順次、文字部分を変更しただけで、引用商標8と同じ図形を用い、「技芸・スポーツ又は知識の教授」等を指定役務として、ほぼ3年毎にほぼ同一の商標出願を繰り返している。
エ 結論
以上のとおり、請求人の引用商標は、いずれも、請求人による使用の実績も存在せず、使用の意思もないことが明らかである。それにも関わらず、請求人が引用商標を出願しているのは、不使用取り消しの潜脱を意図してほぼ3年毎にほぼ同一の商標出願を繰り返していることから、他の商標使用希望者による使用を排除することに目的があることが明らかであり、また、国民一般の利益を犠牲にしている結果を生じていることが明らかである。
このような不使用商標に基づき無効審判請求を認めることは、不使用による取消制度を骨抜きにし、本来商標法により保護されるべきでない商標を不当に維持するだけにとどまらず、登録商標を使用する第三者の正当な利益をも積極的に害するものであって、商標権の濫用として許されてはならない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、その構成は「キューピー」の頭部の特徴(頭頂部の髪とおぼしき部分が尖り、パッチリとした大きな目をした幼児の頭部を描いた図形)を同じくするものであり、又背中に一対の羽根を有することから一見して「キューピー」と把握し得るものであるから、これよりは、「キューピー」の称呼を生じ、「キューピー人形」の観念を生ずるものである。
これに対し、請求人の引用する引用商標1ないし引用商標43は、いずれも「キューピー」の片仮名文字、「KEWPIE」の欧文字、キュピー人形の図形、又は、キューピー人形の立体的形状よりなるものであるから、それぞれから、「キューピー」の称呼を生じ、「キューピー人形」の観念を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観における差異を考慮しても、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念を同一にする、互いに相紛れるおそれのある、類似の商標とみるのが相当である。
そして、本件商標の指定商品又は指定役務中の第3類「かつら装着用接着剤,つけまつげ用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),オゾン発生器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」、第18類「かばん金具,がま口口金,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入,傘,ステッキ,つえ、つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」、第20類「海泡石,こはく,荷役用パレット(金属製のものを除く。),美容院用いす,理髪店用いす,プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。),貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),輸送用コンテナ(金属製のものを除く。),カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。),クッション,座布団,まくら,マットレス,麦わらさなだ,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),旗ざお,うちわ,せんす,植物の茎支持具,愛玩動物用ベッド,犬小屋,小鳥用巣箱,きゃたつ及びはしご(金属製のものを除く。),郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),買物かご,家庭用水槽(金属製又は石製のものを除く。),ハンガーボード,工具箱(金属製のものを除く。),タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,食品見本模型,人工池,葬祭用具,揺りかご,幼児用歩行器,マネキン人形,洋服飾り型類,スリーピングバッグ,額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻,きょう木,しだ,竹,竹皮,つる,とう,木皮,あし,い,おにがや,すげ,すさ,麦わら,わら,人工角,ぞうげ,角,べっこう,さんご」、第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」、及び第41類「当せん金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は取引者、需要者、流通経路、販売場所等を共通にする類似の商品及び役務を含むものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品及び指定役務中上記商品及び役務について、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、我が国の代表的な食品会社であり、引用商標44及び45は、請求人が、「マヨネーズ、ドレッシング」等の加工食品に使用し、我が国の取引者、需要者において広く知られているものである。
(2)一方、被請求人が提出した証拠によれば、新言海(乙第34号証)のキューピーの項には、「英語のcupidの略、キューピッドを滑稽化した子供の裸体姿の人形」と記載され、広辞苑第6版(乙第35号証)のキューピーの項には、「オニールRose O’Neilのキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちや。頭の先がとがり、目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。商標名。」と記載され、コンサイスカタカナ語辞典(乙第36号証)のキューピーの項には「Kewpie<Cupidキューピッドをかたどった人形.目は丸く大きく,頭はとがっている.★1912年米国の女性画家ローズ・オニール(1874-1944)が詩の挿絵として描いたものが原型.」と記載され、他にも広辞林(乙第37号証)、角川小辞典 外来語の語源(乙第38号証)のキューピーの項目には、ローズ・オニール(ウィルソン)の作品をオリジナルとすることの記載がある。
(3)以上の(1)(2)よりすれば、「キューピー」あるいは「キューピー人形」の図は、食品に関連する場合には、引用商標44及び45を想起する場合が少なくないとしても、一般には、目は丸く大きく、頭がとがっている人形である「キューピー人形」を認識するものとみるのが相当である。
(4)しかして、本件商標は、前記のとおり目は丸く大きく、頭がとがっている人形である「キューピー人形」の特徴を顕著に表したものであるから、これを、被請求人が、加工食品の分野とは取引者、販売場所、流通経路等を別異にする本件商標の指定商品又は指定役務に使用しても、請求人及び請求人の商品又は役務と誤認し、請求人又は請求人と組織的に関連する者の業務に係る商品及び役務であるかの如く誤認し、出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 請求人及び被請求人の主張について
(1)被請求人は、「『キューピー』は、そもそもローズ・オニールが創作したキューピー人形をはじめとするキャラクターを識別する称呼及び観念であるから、請求人の各引用商標のうち「キューピー」の称呼及び観念に識別力はなく、各引用商標の要部となるのはこれらの外観だけである。しかし、本件商標の外観と各引用商標の外観との間に類似性は認められないのであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に抵触しない。」と主張する。
しかしながら、「キューピー」が、ローズ・オニールが創作したキャラクター、または「キューピー人形」を指称するとしても、本件商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者において、ローズ・オニールの創作によるものとまで知っているとは言い難く、単に「キューピー人形」として認識され、自他商品及び役務の識別機能を十分に有するものというべきである。そうとすると、前記1のとおり、本件商標は、引用商標と「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念を共通にする類似の商標というべきであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)また、被請求人は、「引用商標は、いずれも、請求人による使用の実績も存在せず、使用の意思もないことが明らかである。それにも関わらず、請求人が不使用取り消しの潜脱を意図してほぼ3年毎にほぼ同一の商標出願を繰り返していることから、他の商標使用希望者による使用を排除することに目的があることが明らかであり、また、国民一般の利益を犠牲にしている結果を生じていることが明らかである。このような不使用商標に基づき無効審判請求を認めることは、不使用による取消制度を骨抜きにし、本来商標法により保護されるべきでない商標を不当に維持するだけにとどまらず、登録商標を使用する第三者の正当な利益をも積極的に害するものであって、商標権の濫用として許されてはならない。」旨述べ、請求人が3年毎に出願を繰り返しているとの証拠を提出しているが、上記商標権の濫用にかかる理由によって、本件無効審判の阻却理由とすることはできないし、その他、商標権の濫用を主張するのみで、これを裏づける具体的な主張もなく、証拠も提出していない。
(3)さらに、被請求人は、商標登録出願の日前に生じていた他人の著作権と抵触し、商標法第29条が禁止する「使用」に該当するので、請求人は、引用商標に基づく無効審判請求を行うことはできない旨述べているが、現に引用商標は本件商標の先願に係る登録商標として有効に存続しているものであるから、かかる理由によって、本件無効審判の阻却理由とすることはできない。
以上のとおり、被請求人の主張は、何れも採用できない。
(4)一方、請求人は、審判請求書及び弁駁書において「本件商標と引用商標とは類似するものであり、引用商標44及び45は、請求人の商品『マヨネーズ』に使用されたことをきっかけとして全国的に知れ渡るに至ったこと、その後、請求人によって多種多様な商品に使用された結果、より広い商品分野での著名性を獲得するに至っていること、及び引用商標44及び45と同一態様の商標が、ほぼ全区分の商品・役務について防護標章登録による保護を受けていることから、引用商標は著名性を獲得しているものである。」旨主張し、他の商品に関する引用商標の使用例を証拠としてを提出している。
しかしながら、バスの車内におけるキューピーの頭部のみの使用は、「FRESH KEWPIE MAYONNAISE」の文字と共にバスの車体や椅子の背の部分やつり革に表示したものである。また、インターネットを介して「キューピー人形」を表示した「クリアファイル」や「携帯ストラップ人形」等を販売している事実は認められるが、その販売数量等具体的に説明されていない。してみれば、これらの証拠をもって、食品分野以外の商品においても、引用商標44及び45が著名性を獲得するに至っているとまでは認められない。
また、商標法第4条第1項第15号の他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるか否かの判断にあっては、創造商標であるか否かや多角経営の可能性等も考慮して判断されるものであり、本件商標をその指定商品に使用しても、請求人を想起しないこと及び請求人の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生じないこと前記2のとおりであるから、引用商標44及び45を原登録商標とする防護標章登録が多数存在することをもって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいうことはできない。
さらに、本件商標についてのアンケート調査によれば、本件商標と同じ図形を示しての問1に対し、「キューピー(人形)」とする回答が61.6%であり、「請求人のマーク」とした回答が2.1%であることからすれば、本件商標より、直ちに請求人を想起しないとみるのが相当である。
以上のとおり、請求人のかかる主張は、何れも採用できない。
4 結び
したがって、本件商標は、指定商品又は指定役務中結論掲記の商品及び役務について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、商標法第46条1項の規定により、その登録を無効とする、その余の商品及び役務については、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

後掲(1) 本件商標の指定商品
第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛,洗濯用漂白剤」

第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),オゾン発生器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」

第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て

第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」

第20類「海泡石,こはく,荷役用パレット(金属製のものを除く。),美容院用いす,理髪店用いす,プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。),貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),輸送用コンテナ(金属製のものを除く。),カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。),クッション,座布団,まくら,マットレス,麦わらさなだ,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),旗ざお,うちわ,せんす,植物の茎支持具,愛玩動物用ベッド,犬小屋,小鳥用巣箱,きゃたつ及びはしご(金属製のものを除く。),郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),買物かご,家庭用水槽(金属製又は石製のものを除く。),ハンガーボード,工具箱(金属製のものを除く。),タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,食品見本模型,人工池,葬祭用具,揺りかご,幼児用歩行器,マネキン人形,洋服飾り型類,スリーピングバッグ,額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻,きょう木,しだ,竹,竹皮,つる,とう,木皮,あし,い,おにがや,すげ,すさ,麦わら,わら,人工角,ぞうげ,角,べっこう,さんご」

第21類「デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,はえたたき,ねずみ取り器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,洋服ブラシ,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),お守り,おみくじ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,コッフェル,ブラシ用豚毛」

第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル 」

第41類「当せん金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」

後掲(2) 引用商標
1)登録第4272953号(引用商標1)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第3類
指定商品 つけづめ,つけまつ毛,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤
出願日 平成10年2月20日
登録日 平成11年5月14日
2)登録第4278359号(引用商標2)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第9類
指定商品 理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機等
出願日 平成10年2月20日
登録日 平成11年5月28日
3)登録第4372111号(引用商標3)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第16類
指定商品 紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋等
出願日 平成10年2月20日
登録日 平成12年3月31日
4)登録第4272956号(引用商標4)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第18類
指定商品 皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,乗馬用具,愛玩動物用被服類
出願日 平成10年2月20日
登録日 平成11年5月14日
5)登録第4367653号(引用商標5)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第20類
指定商品 家具,貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。)等
出願日 平成11年1月22日
登録日 平成12年3月10日
6)登録第4372209号(引用商標6)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第21類
指定商品 ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん等
出願日 平成11年1月22日
登録日 平成12年3月31日
7)登録第4372210号(引用商標7)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第24類
指定商品 メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス等
出願日 平成11年1月22日
登録日 平成12年3月31日
8)登録第4361612号(引用商標8)
商標 別掲(2)のとおり
商品区分 第41類
指定役務 技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催等
出願日 平成11年1月22日
登録日 平成12年2月10日
9)登録第4435103号(引用商標9)
商標 別掲(3)のとおり
商品区分 第18類
指定商品 皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類
出願日 平成12年1月27日
登録日 平成12年11月24日
10)登録第4621654号(引用商標10)
商標 別掲(4)のとおり
商品区分 第9類
指定商品 理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機等
出願日 平成13年12月4日
登録日 平成14年11月15日
11)登録第4673441号(引用商標11)
商標 別掲(4)のとおり
商品区分 第20類
指定商品 海泡石,こはく,荷役パレット(金属製のものを除く。),養蜂用巣箱,美容院用いす等
出願日 平成14年12月4日
登録日 平成15年5月16日
12)登録第4726488号(引用商標12)
商標 別掲(4)のとおり
商品区分 第21類
指定商品 ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家禽用リング,魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ等
出願日 平成14年12月4日
登録日 平成15年11月14日
13)登録第4697646号(引用商標13)
商標 別掲(4)のとおり
商品区分 第24類
指定商品 メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス等
出願日 平成14年12月4日
登録日 平成15年8月1日
14)登録第4455273号(引用商標14)
商標 キューピー
商品区分 第9類
指定商品 理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機等
出願日 平成11年5月10日
登録日 平成13年2月23日
15)登録第1592154号(引用商標15)
商標 キューピー
商品区分 第9,15,20,28類
指定商品 おもちや,人形,娯楽用具等
出願日 昭和54年5月30日
登録日 昭和58年5月26日
16)登録第2052431号(引用商標16)
商標 キューピー
商品区分 旧第17類
指定商品 被服(運動用特殊被服を除く)等
出願日 昭和59年10月3日
登録日 昭和63年6月24日
17)登録第4293493号(引用商標17)
商標 キューピー
商品区分 第42類
指定役務 写真の撮影等
出願日 平成9年11月27日
登録日 平成11年7月9日
18)登録第4331076号(引用商標18)
商標 キューピー
商品区分 第1類
指定商品 高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物等
出願日 平成10年11月24日
登録日 平成11年10月29日
19)登録第4422984号(引用商標19)
商標 キューピー
商品区分 第10類
指定商品 医療用機械器具,医療用手袋等
出願日 平成11年5月10日
登録日 平成12年10月6日
20)登録第4564585号(引用商標20)
商標 キューピー
商品区分 第5,29,30,31,32,33類
指定商品 歯科用材料,医療用腕環等
出願日 平成13年7月18日
登録日 平成14年4月26日
21)登録第4647804号(引用商標21)
商標 キューピー
商品区分 第7類
指定商品 金属加工機械器具,鉱山機械器具等
出願日 平成14年5月2日
登録日 平成15年2月21日
22)登録第4445316号(引用商標22)
商標 別掲(5)のとおり
商品区分 第9類
指定商品 理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機等
出願日 平成11年5月13日
登録日 平成12年1月12日
23)登録第4293494号(引用商標23)
商標 別掲(5)のとおり
商品区分 第42類
指定役務 写真の撮影等
出願日 平成9年11月27日
登録日 平成11年7月9日
24)登録第4590321号(引用商標24)
商標 別掲(5)のとおり
商品区分 第5類
指定商品 歯科用材料,医療用腕環等
出願日 平成13年9月18日
登録日 平成14年7月26日
25)登録第4600642号(引用商標25)
商標 別掲(5)のとおり
商品区分 第5,29,30,31,32,33類
指定商品 歯科用材料,医療用腕環等
出願日 平成14年1月7日
登録日 平成14年8月30日
26)登録第4647805号(引用商標26)
商標 別掲(5)のとおり
商品区分 第7類
指定商品 金属加工機械器具,鉱山機械機器具等
出願日 平成14年5月2日
登録日 平成15年2月21日
27)登録第4230810号(引用商標27)
商標 別掲(6)のとおり
商品区分 第28類
指定商品 遊戯用器具,ビリヤード用具等
出願日 平成9年7月8日
登録日 平成11年1月14日
28)登録第1869858号(引用商標28)
商標 キューピー
商品区分 旧第21類
指定商品 装身具,ボタン類等
出願日 昭和58年7月26日
登録日 昭和61年6月27日
29)登録第184080号(引用商標29)
商標 別掲(7)のとおり
商品区分 第21類
指定商品 陶磁製包装用容器等
出願日 大正15年4月5日
登録日 大正15年9月1日
30)登録第2715873号(引用商標30)
商標 KEWPIE
商品区分 第23類
指定商品 時計,眼鏡,これらの部品及び附属品
出願日 昭和63年6月17日
登録日 平成8年8月30日
31)登録第4005325号(引用商標31)
商標 別掲(8)のとおり
商品区分 第25類
指定商品 洋服,コート等
出願日 平成7年7月28日
登録日 平成9年5月30日
32)登録第4160820号(引用商標32)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第16類
指定商品 紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成10年6月26日
33)登録第4240002号(引用商標33)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第18類
指定商品 皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,乗馬用具,愛玩動物用被服類
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成11年2月12日
34)登録第4211212号(引用商標34)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第20類
指定商品 家具,貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。)等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成10年11月13日
35)登録第4211213号(引用商標35)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第21類
指定商品 ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成10年11月13日
36)登録第4203968号(引用商標36)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第24類
指定商品 織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成10年10月23日
37)登録第4160824号(引用商標37)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第41類
指定役務 技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成10年6月26日
38)登録第4156315号(引用商標38)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第42類
指定役務 写真の撮影等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成10年6月12日
39)登録第4240000号(引用商標39)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第5類
指定商品 医療用腕環,失禁用おしめ等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成11年2月12日
40)登録第4240001号(引用商標40)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第14類
指定商品 貴金属,貴金属製食器類等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成11年2月12日
41)登録第4240003号(引用商標41)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第25類
指定商品 被服,ガーター等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成11年2月12日
42)登録第4343326号(引用商標42)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第7類
指定商品 金属加工機械器具、鉱山機械器具等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成11年12月10日
43)登録第4343327号(引用商標43)
商標 別掲(9)のとおり
商品区分 第8類
指定商品 手動工具、手動利器等
出願日 平成9年4月1日
登録日 平成11年12月10日
ただし、上記引用商標1ないし引用商標43をまとめていうときには引用商標という。

後掲(3) 引用商標44及び引用商標45についての防護標章の登録
引用商標44についての防護標章の登録は、旧第1類に防護標章登録第7号、旧第2類に防護標章登録第6号、旧第3類に防護標章登録第5号、旧第4類に防護標章登録第32号、旧第5類に防護標章登録第2号(平成16年3月29日存続期間満了)、旧第6類に防護標章登録第21号、旧第7類に防護標章登録第26号(平成20年5月19日存続期間満了)、旧第8類に防護標章登録第22号、旧第9類に防護標章登録第11号、旧第10類に防護標章登録第25号(平成20年1月20日存続期間満了)、旧第11類に防護標章登録第17号、旧第12類に防護標章登録第23号、旧第13類に防護標章登録第30号(平成20年11月30日存続期間満了)、旧第14類に防護標章登録第12号(平成18年7月31日存続期間満了)、旧第15類に防護標章登録第13号(平成18年7月31日存続期間満了)、旧第16類に防護標章登録第16号(平成19年1月20日存続期間満了)、旧第17類に防護標章登録第14号、旧第18類に防護標章登録第18号(平成19年5月25日存続期間満了)、旧第19類に防護標章登録第15号、旧第20類に防護標章登録第33号、旧第21類に防護標章登録第19号(平成19年5月25日存続期間満了)、旧第22類に防護標章登録第20号(平成19年5月25日存続期間満了)、旧第23類に防護標章登録第28号(平成20年9月30日存続期間満了)、旧第24類に防護標章登録第31号、旧第25類に防護標章登録第24号(平成19年9月28日存続期間満了)、旧第26類に防護標章登録第10号、旧第27類に防護標章登録第29号(平成20年9月30日存続期間満了)、旧第28類に防護標章登録第3号、旧第29類に防護標章登録第4号、旧第30類に防護標章登録第8号(平成17年1月29日存続期間満了)、旧第32類に防護標章登録第9号(平成17年1月29日存続期間満了)、旧第33類に防護標章登録第1号、旧第34類に防護標章登録第27号(平成20年5月19日存続期間満了)、さらに、現行区分の第1類に防護標章登録第45号、同第2類に防護標章登録第45号、同第3類に防護標章登録第45号、同第4類に防護標章登録第45号、同第5類に防護標章登録第42号、同第6類に防護標章登録第46号、同第7類に防護標章登録第46号、同第8類に防護標章登録第46号、同第9類に防護標章登録第46号、同第10類に防護標章登録第46号、同第11類に防護標章登録第46号、同第12類に防護標章登録第46号、同第13類に防護標章登録第46号、同第14類に防護標章登録第44号、同第15類に防護標章登録第43号、同第16類に防護標章登録第43号、同第17類に防護標章登録第43号、同第18類に防護標章登録第44号、同第19類に防護標章登録第46号、同第20類に防護標章登録第43号、同第21類に防護標章登録第43号、同第22類に防護標章登録第44号、同第23類に防護標章登録第44号、同第24類に防護標章登録第44号、同第25類に防護標章登録第44号、同第26類に防護標章登録第44号、同第27類に防護標章登録第43号、同第28類に防護標章登録第43号、同第29類に防護標章登録第42号、同第30類に防護標章登録第42号、同第31類に防護標章登録第42号、同第32類に防護標章登録第42号、同第33類に防護標章登録第42号、同第34類に防護標章登録第43号、同第35類に防護標章登録第34号及び防護標章登録第48号、同第36類に防護標章登録第41号、同第37類に防護標章登録第37号、同第38類に防護標章登録第35号、同第39類に防護標章登録第38号、同第40類に防護標章登録第36号(平成19年4月25日存続期間満了)及び防護標章登録第47号、同第41類に防護標章登録第39号、同第42類に防護標章登録第40号となっている。
同じく、引用商標45については、旧第1類に防護標章登録第19号、旧第2類に防護標章登録第21号、旧第3類に防護標章登録第18号、旧第4類に防護標章登録第28号、旧第5類に防護標章登録第14号、旧第9類に防護標章登録第1号、|日第11類に防護標章登録第15号、旧第12類に防護標章登録第12号、旧第17類に防護標章登録第16号、旧第18類に防護標章登録第9号、旧第19類に防護標章登録第8号、旧第20類に防護標章登録第20号、旧第22類に防護標章登録第10号、旧第23類に防護標章登録第17号、旧第24類に防護標章登録第11号、旧第25類に防護標章登録第13号、旧第26類に防護標章登録第2号、旧第28類に防護標章登録第3号、旧第29類に防護標章登録第4号、旧第30類に防護標章登録第5号、旧第32類に防護標章登録第6号、旧第33類に防護標章登録第7号、さらに、現行区分の第1類に防護標章登録第32号、同第9類に防護標章登録第30号、同第35類に防護標章登録第22号及び防護標章登録第33号、同第36類に防護標章登録第23号、同第37類に防護標章登録第24号、同第38類に防護標章登録第25号、同第39類に防護標章登録第31号、同第40類に防護標章登録第26号、同第41類に防護標章登録第29号、同第42類に防護標章登録第27号の登録がなされているものである。
別掲 別掲(1)本件商標


別掲(2)引用商標1ないし8



別掲(3)引用商標9



別掲(4)引用商標10ないし13


別掲(5)引用商標22ないし26


別掲(6)引用商標27


別掲(7)引用商標29


別掲(8)引用商標31(色彩の詳細は原本を参照)


別掲(9)引用商標32ないし43(立体商標)


別掲(10)引用商標44


審理終結日 2009-11-06 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2010-02-24 
出願番号 商願2003-76234(T2003-76234) 
審決分類 T 1 11・ 271- ZC (Y030916182124)
T 1 11・ 263- ZC (Y030916182124)
T 1 11・ 262- ZC (Y030916182124)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 2004-02-13 
登録番号 商標登録第4746886号(T4746886) 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 吉武 賢次 
代理人 小泉 勝義 
代理人 永田 玲子 
代理人 井奈波 朋子 
代理人 山本 隆司 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 宮嶋 学 
代理人 石橋 秀明 

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