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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 032
管理番号 1231564 
審判番号 取消2010-300396 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-04-08 
確定日 2011-01-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4184707号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4184707号商標の指定商品、第32類「清涼飲料,果実飲料」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4184707号商標(以下「本件商標」という。)は、「ライスドリーム」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年8月22日に登録出願、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として同10年9月4日に設定登録されたものであり、その後、同20年9月2日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中の「清涼飲料、果実飲料」について継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 本件商標の不使用についての意見書
(1)本件商標については、甲第1号証の1にあるように、桜井食品株式会社(以下「桜井食品」という。)を通常使用権者として、本件商標の指定商品中の「原料に玄米を使用した清涼飲料」について、通常使用権が設定されている。
(2)桜井食品は、同社のホームページの会社概要(甲第2号証)に記載されているように、輸入オーガニック食品の販売等を業としているところ、同ホームページの同社取扱商品リストの欄には、紙パックの容器上に「RICE DREAM」と大きく記載された玄米ドリンク商品(以下「本件商品」という。)が紹介されている(甲第3号証)。このような状況からすると、一見、本件商標の通常使用権者により、本件商標はその指定商品について使用されているようにみえるが、実はそうではない。
(3)請求人は、桜井食品が輸入販売している本件商品を購入してみたところ(甲第4号証)、その紙パック容器の裏面には輸入者として桜井食品の会社名が記載された日本語のラベルが貼付されており(甲第4号証の2)、側面には製造者として請求人の会社名が記載されている(甲第4号証の3)。 すなわち、本件商品は、請求人が米国において製造販売している商品であり、桜井食品は何らかのルートにより本件商品を米国から輸入し販売しているものである(ちなみに、請求人と桜井食品との間には何らの契約関係も存在しない)。
(4)桜井食品は、本件商品以外には、「RICE DREAM」又は「ライスドリーム」という商標を使用した商品を販売していないし、商標権者である株式会社紀文食品(被請求人)も「RICE DREAM」又は「ライスドリーム」という商標を使用した商品を何ら製造も販売もしていない。
(5)上述のとおり、本件商品に使用されている「RICE DREAM」という商標は、請求人の商標であって、桜井食品の商標でも被請求人の商標でもない。そして、本件のように、他人(請求人)の商標が付された商品を購入し他者に販売する行為は、不使用取消を免れるための使用には当らないとするのが通説判例である(甲第5号証[田村善之著「商標法概説第2版(弘文堂)」30頁以下]及び甲第6号証[東京高裁平成5年(行ケ)第129号判決]参照)。
(6)請求人の「RICE DREAM」商標は、米国において、1984年から使用されており、1999年3月9日に「米を主たる原材料とする清涼飲料及び冷凍デザート」を指定商品とする米国商標登録第2230155号として登録されている(甲第7号証)。このように、本件商品は、請求人が米国で製造販売している商品であり、本件商品に使用されている「RICE DREAM」商標は、請求人の商標である。
(7)桜井食品は、本件商品を何らかの経路を通して米国から輸入し日本において販売しているところ、その輸入販売に際して、本件商標登録が存在することを発見し、その商標権者からの差止請求等を防止することを目的として、商標権者である被請求人に接触し、通常使用権の設定を受けたものと思料される。しかしながら、本件商標の通常使用権を取得することは、桜井食品による本件商品の輸入販売が本件商標の禁止権の対象とはならないということを意味するものにすぎず、「RICE DREAM」商標を付した本件商品の輸入販売が直ちに本件商標の使用となるということではない。本件商品に付された「RICE DREAM」商標は請求人の商標であるから、請求人と関係のない桜井食品が被請求人から本件商標の通常使用権の設定を受けたとしても、それにより桜井食品による本件商品の輸入販売が本件商標の使用となるなどということには全くならない。
(8)以上のとおり、桜井食品による本件商品の輸入・販売は、商標法第50条にいう「指定商品についての登録商標の使用」に該当するものではなく、したがって、本件商標は不使用による取消を免れない。

3 答弁に対する弁駁
(1)本件の取消審判における争点は、他人(請求人)の商標が付された商品を輸入し販売する行為が不使用取消を免れるための使用に該当するか否かという点に尽きるものである。
(2)商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるものである。これに対して、不使用の登録商標には保護すべき信用が蓄積されておらず、特別な財産的価値が生じているわけではないから、このような登録商標を保護すべき理由はない。また、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、登録権利者以外の商標使用希望者の商標選択の余地を不当に狭めるものである。不使用による取消審判の制度は、このような認識を前提として導入されているものであり、したがって、本件における判断も、このような前提に立って行われるべきものである。
商標の主要な機能のうち最も重要な機能である自他商品識別機能を本件についてみてみると、本件商品に付されている「RICE DREAM」という商標により識別されるのは、本件商品が請求人の商品であるということであり、被請求人や桜井食品の商品であるというものでは全くない。日本における需要者は、本件商品に付された「RICE DREAM」商標により、この商品が請求人の商品であることを認識するだけであり、本件商品が被請求人や桜井食品の商品であるなどと認識する者は皆無なのである。
表現を変えて言えば、本件商品に付された「RICE DREAM」商標の使用によって蓄積された信用は「RICE DREAM」商標についての信用であり、本件商標についての信用ではないのである。すなわち、本件商標については保護されるべき何らの信用も蓄積されていないのである。
(3)乙第2号証や乙第3号証の桜井食品の商品カタログやホームページには本件商品が掲載されているが、それはあくまでも請求人が米国で製造販売する本件商品そのものの紹介・宣伝であり、そこで使用されている「ライスドリーム・オリジナル」等の表現は、本件商品そのものを紹介しているだけの表現に過ぎず、本件商標を使用しているわけではないのである。
(4)以上に述べたとおり、桜井食品による本件商品の輸入・販売は、商標法第50条にいう「指定商品についての登録商標の使用」に該当するものではなく、したがって、本件商標は不使用による取消を免れないものである。

第3 被請求人の主張(要旨)
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 第1答弁
(1)本件商標登録については、桜井食品との間で通常使用許諾契約が締結され、その通常使用権は乙第1号証の1のとおり、特許庁に設定登録されている。
(2)請求人は、意見書において種々主張しているが、その主張には理由がない。
(ア)請求人は、通常使用権者である桜井食品が本件商品以外には「RICE DREAM」または「ライスドリーム」という商標を使用した商品を販売していないと主張し、さらに本件商品に使用されている「RICE DREAM」という商標は請求人の商標であって、桜井食品の商標でも被請求人の商標でもないから、桜井食品による商標「RICE DREAM」を付した商品を輸入・販売する行為は本件商標の使用にはあたらない旨主張する。
しかしながら、商標法第2条第3項は、標章の「使用」について、その第2号において「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡または引渡しのために展示し、又は輸入する行為」と定義しているが、ここにいう商品が商標使用者自身の製造に係るものか、それとも他者の製造に係るものであるかは問われていない。
したがって、たとえ桜井食品の取扱いに係る商品が請求人の製造に係るものであるとしても、その商品に付された商標「RICE DREAM」と本件商標「ライスドリーム」とが社会通念上同一視されるものであれば、通常使用権者である桜井食品が商標「RICE DREAM」を付した商品を輸入し販売する行為は、明らかに本件商標の使用行為である。
(イ)さらに、商標法第2条第3項第7号(審決注:第8号の誤記と認められる。)において、「商品または役務に関する広告、定価表又は取引書類に標章を付して展示し、または頒布する行為」は標章の使用行為であると定義されており、桜井食品は、乙第2号証及び乙第3号証に示すとおり、自己が扱う商品の広告において、商標「ライスドリーム」を使用している事実がある。
乙第2号証は、桜井食品が製作し頒布している商品カタログであり、その第3頁には商品、玄米ドリンクについて「ライスドリーム・オリジナル」及び「ライスドリーム・バニラ」なる商標が使用されている。なお、このカタログの裏表紙右下隅に「2007.10.3000」とあることから容易に推察できるように、このカタログは2007年(平成19年)10月に3000部が印刷され、その後引き続いて桜井食品が取扱い商品の販売促進活動のために頒布しているものである。
また、乙第3号証は、桜井食品のホームページの該当頁の写しであって、ここにも飲料類について「ライスドリーム・オリジナル」及び「ライスドリーム・バニラ」なる商標が使用されている。なお、このホームページ写しは、右下の表示から判るように2008年(平成20年)9月9日にコピーされたものである。
これらの商標「ライスドリーム・オリジナル」及び「ライスドリーム・バニラ」中の「オリジナル」及び「バニラ」の語は、商品の品質や材料を示す語として普通に用いられている語であるから、これらの語は自他商品識別機能を持たない語であることは明らかである。よって、これらの商標「ライスドリーム・オリジナル」及び「ライスドリーム・バニラ」において自他商品を識別する機能を発揮しているのは「ライスドリーム」の部分であり、これが本件商標と同一であることも明らかである。
これらの証拠が示すように、桜井食品は、その取扱い商品を販売するための広告において、商標「ライスドリーム」を使用していることは極めて明らかである。
なお、桜井食品が商標「ライスドリーム」のもとで宣伝広告している商品が請求人の製造に係るものであるかどうかは、本件商標が使用されているかどうかという本質的な問題とは係わり合いがないことである。
(ウ)請求人は、他人(請求人)の商標が付された商品を購入し販売する行為は、不使用取消を免れるための使用には当たらないとするのが通説判例であると主張して、甲第5号証及び甲第6号証を挙げている。
しかしながら、これらの証拠は、いずれも単なる学説もしくは本件とは異なる事案について判断がなされたことを示す資料であり、請求人の主張の論拠とはなり得ないものである。特に、甲第6号証として挙げられている判例は、被告(商標権者)が原告(在外の商品製造者)の輸入代理店であるという事情が多分に斟酌された事案であるが、本件においては、被請求人(商標権者)もしくは通常使用権者は、請求人と何ら直接の取引をしたことはなく、ましてや代理店契約を締結した事実もないので、本件の事案は、甲第6号証の事案とは全く相違する。したがって、甲第5号証及び甲第6号証は、いずれも請求人の主張を裏付ける証拠とはなり得ない。
(エ)請求人は、米国において商標「RICE DREAM」を1984年以来使用しており、1999年に登録第2230155号として登録済であり、したがって、本件商品に使用されている「RICE DREAM」商標は、請求人の商標である旨主張しているが、かかる請求人の主張には理由がない。
即ち、請求人がたとえ米国において、商標「RICE DREAM」を使用し、登録していることが事実であるとしても、その商標についての権利がアメリカ合衆国内に限られるものであることは、パリ条約6条の規定を見るまでもなく明らかであり、その権利は日本国内の商取引に及ぶものではないから、請求人が本件のように、日本における係争事件において、「RICE DREAM」は請求人の商標であると主張する立場にないことは明らかである。
したがって、この「RICE DREAM」は請求人の商標であるという主張を前提とする請求人の主張が根拠を欠くことは明らかである。
(オ)以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中の「清涼飲料」について、通常使用権者により正当に使用されていることは明らかである。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきではない。

2 第2答弁
(1)請求人は、「本件の争点は、他人(請求人)の商標が付された商品を輸入し販売する行為が、適法な使用に該当するか否か、の点に尽きる」と主張するが、後述のとおり通常使用権者による本件商標の使用は明らかに適法である。
(2)請求人は、「商標の主要な機能は自他商品識別、品質保証、宣伝広告などであり、このような機能を果たさない商標は商標法上の保護に値する使用がなされているとはいえない」と主張する。
しかし、自他商品識別力を欠如する商標が原則として商標法上の保護を得られないとしても、品質保証機能や宣伝広告機能などは商標の本質的な機能ではなく、使用の結果派生する二次的な機能である。したがってこれらの機能を欠くからといって直ちに商標法上の保護に値しないという主張は容認できない。事実、商標法には品質保証機能や宣伝広告機能を欠く商標の登録を認めない旨の規定は見当たらないし、また登録商標が品質保証機能や宣伝広告機能を果たしていないからといって、その商標登録を取り消す旨の規定も見当たらない。
(3)請求人は、「最も重要な商標の機能である自他商品識別機能を本件についてみると、本件商品に付されているRICE DREAMの商標により識別されるのは請求人の商品であり、被請求人や通常使用権者の商品ではない。日本の需要者はRICE DREAM商標により、この商品が請求人の商品であることを認識するとしても、被請求人や通常使用権者の商品と認識する者は皆無である」と主張する。
しかし、通常使用権者の頒布に係るカタログ(乙第2号証)やホームページ(乙第3号証)を見る日本の需要者は、その商品が誰の製造に係る商品かを直ちに認識するかどうかは極めて疑問であるが、これが通常使用権者の取り扱いに係る商品であることは容易に認識するであろうことは明らかである。
なお、商標法第2条第1項第1号によると、商標の定義には、「業として商品を生産する者がその商品について使用するもの」のほかに、「業として商品を譲渡する者がその商品について使用するもの」が含まれている。さらに同条第3項第2号は商標の使用行為として「商品または商品の包装に標章を付したものを譲渡し・・・する行為」を挙げており、また同第8号は「商品・・・に関する広告・・・に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」も商標の使用行為として挙げている。そしてこれらの規定においては、業として譲渡される商品や広告の対象とする商品が、自己の製造に係るものであるかどうかは問われていないのである。
(4)請求人は、「本件商標の使用により生じるべき自他商品識別機能は、その商品が被請求人又は通常使用権者の商品であるという機能のはずであるが、RICE DREAM商標はそのような機能は果たしておらず、RICEDREAM商標からは、本件商品が請求人の商品であるという識別機能しか生じていない」と主張し、さらに「これは本件商品に使用されているRICE DREAM商標は、本件商標の使用ではないことにほかならない。換言すれば、本件商品に付されたRICE DREAM商標の使用により蓄積された信用は、RICE DREAM商標についての信用であり、本件商標についての信用ではない。即ち、本件商標については保護されるべき何らの信用も蓄積されていない」と主張する。
しかし、前記のとおり日本の需要者は、本件商品が誰の製造に係るものであるかはともかく、通常使用権者の取扱いに係る商品であることを明らかに認識するものであるから、その限りにおいて本件商標は自他商品識別力を発揮していること、即ち、本件商標がその指定商品につき通常使用権者により使用されていることは極めて明らかである。
(5)請求人は、「通常使用権者のカタログやホームページに掲載されているのはあくまでも請求人が米国で製造販売する本件商品そのものの紹介、宣伝であり、使用されている『ライスドリーム・オリジナル』などの表現は、本件商品を紹介しているだけであり、本件商標を使用しているわけではない。即ち、請求人が製造した本件商品の販売に際して通常使用権者がカタログ等に『ライスドリーム・オリジナル』などの表現を使用しても、それは本件商標の使用とはならない」と主張する。
しかし、日本の需要者は、本件商品が誰の製造によるものであるかはともかく、通常使用権者の取扱いに係る商品であることを認識するものであるから、その限りにおいて本件商標は商標として機能しており、したがって、本件商標は通常使用権者の取扱いに係る商品につき使用されていると判断すべきである。
(6)請求人は、「前回提出した田村教授の論説や判例は上記の考え方に基づくものであり、これが自然であり商標制度の本来の趣旨に沿うものであることは自明であり、これに反する学説や判例は存在しない」と主張し、さらに「なお判例は、輸入代理店の事案であったから輸入代理店による使用が問題にされただけであり、輸入代理店以外については逆の考え方になるとは述べられておらず、また、そのような異なった判断をすべき合理性もない」と主張し、またさらに「田村教授の論説では輸入代理店に限るというような限定はなされていない」と主張している。
しかし、反対する論説がないからといってある論説が絶対的に正しいと判断するのはあまりにも早計である。また判例についても同様であるし、しかも請求人が挙げた判例と本件とは事案が相違する。
(7)請求人は、「本件において被請求人は桜井食品に対し禁止権を行使しない約束をしているだけであり、被請求人は本件商標を使用していない。また桜井食品も自己の製造に係る商品に本件商標を付して販売しているのではなく、請求人の本件商品をそのまま輸入販売しているにすぎない。要するに桜井食品が使用しているのは請求人のRICE DREAM商標にすぎず、本件商標ではない」と主張している。
しかし、上述のように我が国の商標法の規定によると、ある商標を使用して業として商品を譲渡する場合やその商品に係る広告をなす場合において、その商品が、商標の使用者の製造に係るものであるかどうかは問われていない。したがって、通常使用権者の取り扱いにかかる商品がたとえ請求人の製造に係るものであるとしても、その宣伝販売において使用されている商標が本件商標であることには相違がない。
(8)請求人は、「このような場合に不使用取消が認められないとするならば、被請求人らが請求人の商品を(しかも請求人の商品として)販売している限り、本件商品の製造者である請求人またはその正規代理店が本件商品を日本に輸入販売することは永久に不可能となる。また仮に、将来いずれかの時点で桜井食品が本件商品の取扱いを中止し、本件商標を使用した他の商品の販売を開始した場合は、本件商品は日本市場に存在し得なくなってしまう。かかる状況が商標法第1条が規定する商標制度の本来の目的に反するものであることは明らかである」と主張している。
しかし、請求人のかかる主張は、あたかも本件商標登録の存在そのものが不当であると主張するに等しく、斯様な議論は本件の不使用取消審判請求の事案と異なるものであって、もし請求人がそのように主張したいのであれば、本件商標登録の有効性そのものを無効審判を請求して争うべきではないだろうか。我が国は原則として先願主義を採用しているのであるから、自己の商標の日本における出願が遅延したからといって、たまたま類似する商標を善意で採択し登録し、使用している他人を非難するというのはまったく筋違いの議論である。
(9)請求人は、「請求人が問題とするのは、被請求人が本件商標を自己の商品について使用していない、ということ、即ち、本件商品に付されているRICE DREAM商標は米国において請求人が製造した本件商品に付したものであるから、そのような商品を通常使用権者が輸入販売しても、それは本件商標の使用とは言えないということなのである」と主張している。
しかし、ある商標をある商品に関して使用する場合、その商品が自己の製造に係る商品でなければならない必要性はどこにもないのである。したがって、本件の場合、製造した者が誰であるかはともかくとして、被請求人もしくは通常使用権者がその取扱いに係る商品の宣伝、販売において本件商標を使用する行為は、適切な本件商標の使用行為にほかならないのである。よって、上記の請求人の主張のように、本件の問題点を「被請求人が本件商標を自己の商品について使用していない」ということのみに集約することは許されないことである。
なお、先の答弁書において被請求人が、上記の請求人指摘の如くに主張したのは、請求人が先の意見書において、商標RICE DREAMは自己の商標であり、これを他人が使用することは許されるべきではない、などと、あたかも請求人が日本において商標RICE DREAMにつき正当かつ当然の権利を有するかの如き主張をしたからにほかならない。
(10)請求人は、「上記のとおり、通常使用権者による本件商品の輸入・販売は本件商標の使用ではない」と主張する。
しかし、我が国の商標法の規定によると、ある商標を使用して業として商品を譲渡する場合やその商品に係る広告をなす場合において、その商品が、商標の使用者の製造に係るものであるかどうかは問われていないのであるから、たとえ通常使用権者が扱っている商品が請求人の製造に係るものであるとしても、その宣伝販売において使用されている商標は本件商標もしくはそれと同等の商標にほかならない。
(11)以上を要するに、本件商標もしくはそれと社会通念上同一と認められる商標が本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、その指定商品中「清涼飲料」について通常使用権者により正当に使用されていることは極めて明らかであるから、本件商標の登録は取消されるべきではない。

第4 当審の判断
1 当事者の提出に係る証拠について
被請求人は、通常使用権者である桜井食品株式会社(以下、当審の判断においても「桜井食品」という。)により、本件商標を取消請求に係る指定商品中の「玄米飲料」について本件商標を使用しているとして、乙第1号証ないし乙第3号証を提出しており、また、請求人は、桜井食品による玄米飲料についての使用の状態を示す証拠として甲第3号証及び甲第4号証の1ないし3を提出しているので、以下、これらの各証拠について検討する。
乙第1号証の1は、本件商標に係る商標登録原簿の写しであり、通常使用権者を「桜井食品株式会社」として、地域を「日本全国」、期間を「本商標権の存続期間中(平成20年9月4日迄)」、内容を「第32類 原料に玄米を使用した清涼飲料」とする通常使用権の設定が平成15年5月22日になされており、該商標権の更新に伴い、同じ内容にして、期間を「本商標権の存続期間中(平成30年9月4日迄)」とする通常使用権の設定が平成20年10月21日になされている。
乙第2号証は、「Sakurai/Foods/オーガニック食品」と題するカタログであり、オーガニックであることを謳った各種の商品が掲載されており、巻末には「桜井食品株式会社」とあり、住所、電話番号、メールアドレス等が記載されており、右下には「2007.10.3000」と記載されている。そして、該カタログの3頁の左欄には、「900921 ライスドリーム・オリジナル」及び「900923 ライスドリーム・オリジナル」なる商品が写真とともに掲載されている。「900921」は内容量が240mlの商品であり、「900923」は内容量が1Lの商品である。「900921」の番号が付された商品のパッケージには、図柄を背景にして「RICE/DREAM」「RICE DRINK」「ORIGINAL」「Classic」の各欧文字が表示されている(後述する甲第3号証に表示されている商品パッケージの写真(別掲)を参照)。そして、商品の説明として「すっきりとした自然の甘さの玄米ドリンク。玄米から作られた甘酒に似た飲み物です。低脂肪なので牛乳の代わりに。砂糖などの甘味料は一切使用していません。玄米の甘味が生きた飲み物です。」と記載されており、原産国として「アメリカ」とあり、その他に、原材料や賞味期限等が記載されている。「900923」の番号が付された商品についても同様である。
また、該カタログの3頁の右欄には、「900922 ライスドリーム・バニラ」及び「900924 ライスドリーム・バニラ」なる商品が写真とともに掲載されている。「900922」は内容量が240mlの商品であり、「900924」は内容量が1Lの商品である。「900922」の番号が付された商品のパッケージには、図柄を背景にして「RICE/DREAM」「RICE DRINK」「VANILLA」「Classic」の各欧文字が表示されている。そして、商品の説明として「バニラの風味が飲みやすい玄米ドリンク。玄米から作られた甘酒に似た飲み物です。低脂肪なので牛乳の代わりに飲まれています。砂糖などの甘味料は一切使用していません。バニラ味なのでオリジナルより甘味を感じます。」と記載されている。その他の記載については、上記した「ライスドリーム・オリジナル」と同様の事項が記載されている。
乙第3号証は、桜井食品のホームページ中の「飲料類・メープルシロップ」についてのページの写しと認められるものであり(2008年9月9日打ち出し)、「ライスドリーム/オリジナル 240ml」、「ライスドリーム/オリジナル 1L」、「ライスドリーム/バニラ 240ml」、「ライスドリーム/バニラ 1L」等の商品がパッケージの写真とともに紹介されており、「内容量、価格、原材料などの詳細情報は各画像をクリック」と記載されている。
請求人の提出に係る甲第3号証は、桜井食品のホームページ中の「ライスドリーム/オリジナル 240ml」についてのページの写しと認められるものであり(2010年4月15打ち出し)、「900921:ライスドリーム・オリジナル 原産国:アメリカ」の表示のもとに、内容量が240mlの商品が別掲のとおりの写真とともに掲載されている。これは、桜井食品のホームページ中の商品紹介のサイトであることから、その商品説明や商品パッケージ等は、前記した乙第2号証のカタログに掲載されているものと同じものである。
甲第4号証の1ないし3は、請求人が桜井食品の販売に係る「ライスドリーム・オリジナル」なる商品を購入し、写真撮影したものとのことである。
甲第4号証の1は、紙パック容器正面の写真であり、その体裁からみれば、甲第3号証にある「900921 ライスドリーム・オリジナル」の写真の商品と同一の商品と認められるものであって、「RICE/DREAM」「RICE DRINK」「ORIGINAL」「Classic」の各欧文字が大きく表示されている。
甲第4号証の2は、紙パック容器裏面の写真であり、日本語のラベルが貼付されている。ラベルには「低脂肪の玄米ドリンク/ライスドリーム(オリジナル)」の表示のもとに、原材料や内容量、賞味期限等の記載とともに、名称として「清涼飲料水」、品名として「ライスドリーム オリジナル味」、原産国名として「アメリカ」、輸入者として「桜井食品株式会社」の名称等が記載されている。
甲第4号証の3は、紙パック容器側面の写真であり、ここには、「THE HAIN CELESTIAL GROUP,INC.」なる請求人の会社名が記載されている。

2 本件商標が「清涼飲料(玄米飲料)」について使用されていたといえるか否かについて
(1)上記において認定した乙第1号証の1によれば、桜井食品は、少なくとも、本件審判の請求の登録(平成22年4月23日)前3年以内の期間内において、商標権者から地域を「日本全国」とし、内容を「第32類 原料に玄米を使用した清涼飲料」とする通常使用権の許諾を受けており、通常使用権の設定の登録もなされていたことを認めることができる。
そして、通常使用権者である桜井食品は、本件審判についての要証期間内である2007年(平成19年)10月に印刷したものと認められる乙第2号証のカタログに、「ライスドリーム・オリジナル」あるいは「ライスドリーム・バニラ」なる標章を付した「玄米ドリンク」を掲載して展示若しくは頒布していたものと推認されるところであり、また、本件審判についての要証期間内である2008年(平成20年)9月9日に打ち出されたものと認められる乙第3号証のホームページにおいても、「ライスドリーム・オリジナル」あるいは「ライスドリーム・バニラ」なる標章を付した「玄米ドリンク」を掲載して、該商品広告を電磁的方法によって提供していたものと認められる。
そして、「ライスドリーム・オリジナル」あるいは「ライスドリーム・バニラ」なる標章構成中の「オリジナル」あるいは「バニラ」の文字部分を商品の品質表示的な語であると捉えれば、形式上、通常使用権者である桜井食品は、本件審判についての要証期間内に、本件商標「ライスドリーム」を「玄米を使用した清涼飲料(玄米飲料)」について使用していたものといえなくはない。
(2)しかしながら、以下の理由から、桜井食品による乙第2号証及び乙第3号証に表示されている「ライスドリーム・オリジナル」あるいは「ライスドリーム・バニラ」なる標章の使用をもってしては、本件商標についての出所表示機能が果たされているものとは認められず、したがって、本件商標が「清涼飲料(玄米飲料)」について使用されていたものと認めることはできない。
すなわち、先に認定した請求人の提出に係る甲第3号証は、桜井食品のホームページ中の「ライスドリーム・オリジナル 240ml」についてのページの写しであり、ここには、乙第2号証のカタログに掲載されている「900921 ライスドリーム・オリジナル」なる「玄米飲料」と同じ商品が写真とともに掲載されている。また、甲第4号証は、桜井食品が輸入販売している商品を請求人が購入して写真撮影したものであり、甲第4号証の1の紙パック容器正面の写真からみれば、該商品は、乙第2号証のカタログに掲載されている「900921 ライスドリーム・オリジナル」なる「玄米飲料」と同じ商品と認められるものである。そして、該紙パック容器正面の写真には、「RICE/DREAM」「RICE DRINK」「ORIGINAL」の欧文字が大きく表示されており、該紙パック容器裏面の写真に貼付されている日本語のラベルには、輸入者として「桜井食品株式会社」の名称等が記載されており(甲第4号証の2)、紙パック容器側面の写真には「THE HAIN CELESTIAL GROUP,INC.」なる請求人の会社名が記載されていることが認められる(甲第4号証の3)。
そうとすれば、通常使用権者である桜井食品が乙第2号証のカタログ及び乙第3号証のホームページに掲載している「ライスドリーム・オリジナル」なる「玄米飲料」は、請求人(ザ ヘイン セレスチャル グループ インコーポレーテッド)の業務に係る商品を何らかのルートにより桜井食品が輸入して、我が国において販売するために、該カタログやホームページに掲載しているものといわなければならない。そして、乙第2号証のカタログ及び乙第3号証のホームページに表示されている「ライスドリーム・オリジナル」の標章は、その掲載の状態からみれば、請求人の業務に係る「玄米飲料」の商品パッケージに表示されている「RICE/DREAM/ORIGINAL」の標章部分を片仮名文字をもって表記したにすぎないものとみるのが自然であって、これは、表示態様こそ異なるものの、請求人の使用に係る標章と同視し得るものであるから、むしろ、単に、請求人の業務に係る「RICE/DREAM/ORIGINAL」なる「玄米飲料」を紹介しているにとどまるものというべきである。
したがって、乙第2号証及び乙第3号証に表示されている「ライスドリーム・オリジナル」の表示をもって、本件商標についての出所表示機能が果たされているものとは認められず、本件商標が「清涼飲料(玄米飲料)」について使用されていたものと認めることはできない。
このことは、該カタログに掲載されている他の商品との並びからみても首肯し得ることである。該カタログは、原材料を外国から輸入して桜井食品が加工したものと認められる商品のほか、外国から輸入したものと認められる商品も数多く掲載されているところ、それら個々の商品の紹介にあたっては、商品の普通名称をもって紹介されているものや商品の写真に表示されている商品名あるいは品質表示的な表示(中には商標的な表示のものもあるが)を捉えて表示しており、例えば、2頁には「900509 白ワインビネガー」、「900405 オリーブ油」、「900511 バルサミコ酢」、「902902 粒マスタード」とあり、3頁には「900815 ノーカフ」、「900820 ココア」、「901009 オートミール」、「901101 チクピー豆」等々のように表示されていることが認められる。
そうとすれば、このような商品の並びからみれば、乙第2号証のカタログに接した需要者は、「ライスドリーム・オリジナル」についても商品パッケージの写真に記載されている「RICE/DREAM/ORIGINAL」なる商品を片仮名表記をもって紹介しているものと理解し認識するものとみるのが自然であって、この商品についてのみ、被請求人(桜井食品株式会社)の「ライスドリーム」印の商品であると認識することはないものというべきである。
そして、上記において述べた理由は、乙第2号証のカタログ及び乙第3号証のホームページに表示されている「ライスドリーム・バニラ」なる商品についても同様である。
(3)被請求人のその他の主張について
被請求人は、乙第2号証及び乙第3号証により、桜井食品がその取扱い商品を販売するための広告において本件商標「ライスドリーム」を使用していることは明らかであり、桜井食品が商標「ライスドリーム」のもとで宣伝広告している商品が請求人の製造に係るものであるか否かということは、本件商標が使用されているかどうかということとは関係のないことであり、請求人がアメリカ合衆国において商標「RICE DREAM」について権利を所有しているとしても、その権利は日本国内の商取引に及ぶものではない旨主張している。
確かに、他人の商品を販売するにあたって、該商品に付されている商標とは異なる商標をいわゆる販売標として表示して販売することは通常行われていることであって、そのような商標の使用が当該販売標の使用に当たることは被請求人の主張のとおりであり、また、請求人がアメリカ合衆国において所有している「RICE DREAM」の商標についての権利が我が国における商取引に及ぶものではないことも被請求人の主張のとおりである。
本件の場合においても、桜井食品が「ライスドリーム」の構成からなる本件商標を出所表示標識としての使用であると認識し得る状態のもとに乙第2号証のカタログに表示しているのであれば、本件商標を使用しているということも可能である。
しかしながら、桜井食品が乙第2号証のカタログに表示している標章は、「ライスドリーム・オリジナル」あるいは「ライスドリーム・バニラ」なる標章であり、しかも、その表示の状態は、左脇に配されている商品パッケージに表示されている「RICE/DREAM/ORIGINAL」あるいは「RICE/DREAM/VANILLA」なる標章を片仮名文字をもって表記したにすぎないものと理解されるから、上記において認定・判断したとおり、これは、単に、請求人の業務に係る「玄米飲料」である「RICE/DREAM/ORIGINAL」あるいは「RICE/DREAM/VANILLA」なる商品を紹介しているにすぎないものとみるのが自然であって、本件商標を出所表示標識として使用しているものとみることはできない。
なお、乙第3号証(桜井食品のホームページ)においては、「ライスドリーム」の文字と「オリジナル」あるいは「バニラ」の各文字が二段に表されており、「ライスドリーム」の文字が独立した状態で表されているようにもみえるが、これは、むしろ、該ページに各種商品を掲載するためのスペース配分の制約から生じたにすぎないものというべきであって、上記したところと同様に、それぞれの文字の上部に配されている「RICE/DREAM/ORIGINAL」あるいは「RICE/DREAM/VANILLA」なる商品を紹介しているにすぎないものとみるのが自然である。
また、請求人の提出に係る甲第4号証の2(桜井食品の商品の紙パック容器裏面の写真)においては、貼付されている日本語のラベルに「低脂肪の玄米ドリンク/ライスドリーム/(オリジナル)」と表示されており、「ライスドリーム」の文字が独立した状態で表されているようにもみえるが、甲第4号証の1の紙パック容器正面の写真には「RICE/DREAM/ORIGINAL」の標章が大きく表示されていることからみれば、該表示を単に片仮名表記に置き換えたにすぎないものというべきである。この点は、該文字の下の四角輪郭内に表示されている「品名 ライスドリーム オリジナル味」の表記についても同様である。
そうとすれば、桜井食品がその取扱い商品を販売するための広告において本件商標「ライスドリーム」を使用している旨の被請求人の主張は採用できない。
(4)そして他に、本件商標が「玄米飲料」をはじめとする取消請求に係る指定商品について使用されていたことを認めるに足る証拠は提出されていない。

3 まとめ
以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、請求に係る指定商品である第32類「清涼飲料、果実飲料」についての登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
玄米飲料の商品パッケージの写真





審理終結日 2010-11-15 
結審通知日 2010-11-18 
審決日 2010-12-01 
出願番号 商願平8-93039 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (032)
最終処分 成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 1998-09-04 
登録番号 商標登録第4184707号(T4184707) 
商標の称呼 ライスドリーム 
代理人 又市 義男 
代理人 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 

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