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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X0711
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X0711
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X0711
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない X0711
管理番号 1230171 
審判番号 無効2009-890129 
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5206988号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5206988号商標(以下「本件商標」という。)は、「MIOXOXIDANT」の欧文字を横書きしてなり、平成20年1月22日に登録出願、第7類「反応機,分縮機,化学機械器具,食材等用殺菌水製造機械器具,食品加工用又は飲料加工用の機械器具,農業用殺菌水製造機械器具,農業用機械器具,農業用土壌改良装置,土木機械器具,荷役機械器具」及び第11類「電解水生成機,プール用殺菌装置,業務用浴場湯水浄化装置,浄水装置,水殺菌装置,液体殺菌装置,空気殺菌装置,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,水質汚濁防止用殺菌・浄化装置,廃水処理装置,廃水ろ過装置,汚水浄化槽,し尿処理槽,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽」を指定商品として、同21年1月28日に登録査定、同年2月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第16号証(弁駁書における甲号証は、甲第9号証ないし同第16号証とした。)を提出した。
1 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第5097715号商標は、「MIOX」の欧文字を横書きしてなり、平成18年7月7日に登録出願、第11類「水の処理用・浄化用及び殺菌用の機械器具,浄水装置,家庭用浄水器,汚水浄化槽,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽,し尿処理槽」を指定商品として、同19年12月14日に設定登録されたものであり、その他に、請求人は、請求人の使用に係る「MIOX CORPORATION」及び「MIOX MIXED OXIDANTS」の欧文字からなる商標を引用している(なお、請求人の使用に係る「MIOX」の文字からなる商標を「引用商標」ともいう。)。
2 引用商標の周知著名性について
(1)請求人は、「浄水装置、水殺菌装置、家庭用浄水器、汚水浄化槽、家庭用汚水浄化槽、し尿処理槽、家庭用し尿処理槽」等を日本国及び外国において販売している(甲第1号証)。
本件商標は、「MIOXOXIDANT」の欧文字よりなるところ、請求人は、本件商標の出願前から、アメリカ合衆国等において、本件商標と類似の商標「MIOX(引用商標)」を浄水装置等に使用してきた。その結果、引用商標は、請求人の取扱いに係る商品及び役務に使用される商標として、本件商標の出願時及び登録査定時までに日本国及び外国において需要者の間において広く知られるに至った。
そもそも、引用商標は、請求人の社名「MIOX CORPORTION」の一部であり、「MIOX」とは、請求人が“mixed oxidant”(混合酸化物)から創作した造語である。請求人は、1994年にアメリカ合衆国において設立され、混合酸化物を使用した安全な飲料水の浄化装置の開発を行ってきた。現在生産している主要装置は1300種類を超え、国内及び海外25力国において設置されている。請求人の浄化装置は、家庭用及び業務用のものがあり、ホテルや大学のプールなど商業施設での使用例や工場での汚水処理、食品加工過程における浄水処理や軍隊での使用など様々な施設と用途で用いられている。請求人の浄化装置は、世界中の飲料水の改善に貢献している。請求人により創作された引用商標は、請求人会社の開発した浄水技術「MIOXテクノロジー」を表すものとして日本国内及び外国において取引者・需要者の間で広く認識されており、浄水装置の分野における代表的ブランドとなっている。
また、請求人は、アメリカ合衆国において多数の賞を受賞してきた。一例を示すと以下のとおりである。
ア アメリカ合衆国内商業に関する受賞(2001年)
「National Business Awards:“E”Award for Excellence in Exporting, 2001」
イ 技術に関する受賞(2003年)
「Technology Awards: Popular Science's Grand Award Winner for General Innovation in their2003“Best of What's New”」
ウ マーケティングに関する受賞(2006年、2003年)
「Marketing awards: American Water Works Association(AWWA) 2006“Gold”winner for Best in Advertising」
「American Water Works Association(AWWA) 2003“Silver”winner for Best in Advertising」
(2)請求人は、引用商標の下で国際的にビジネスを行っており、当該製品を取り扱う業界においては、単に「MIOX」として広く知られている。また、請求人は、水処理装置、浄水装置、水殺菌装置について世界的に知られている企業である。
引用商標は、日本、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、EU、オーストラリア、中国、韓国、香港、台湾、ブラジル、インド、トルコ、イスラエル、ベトナム、ベネズエラ、ボリビア、トリニダード・トバコなど世界各国において登録、出願されている(甲第2号証)。我が国においては、平成18年7月7日に商標「MIOX」を出願しており、平成19年12月14日に登録となっている。
(3)請求人は、引用商標を積極的に使用しており、少なくとも1999年から日本において引用商標を付した商品の販売及び役務の提供を行っている。甲第3号証は、日本における事業の名称及び場所を示した一覧表である。これらの事業の総費用は180万ドル(約1億7千万円)を超えるものである。この証拠は、日本における請求人による商標「MIOX」の大規模な使用を示すものであり、何故、被請求人が本件商標の登録をして引用商標にただ乗りしようとしているかという理由を示唆するものである。
3 本件商標と引用商標の類否及び混同について
(1)本件商標は、請求人の引用商標と同一の文字を含むものであり、外観、称呼、観念において引用商標に類似する商標である。本件商標中「MIOX」の語は、請求人により創作された造語である。また、「MIOX」の語は、請求人の社名の一部であり、本件商標は、請求人の著名な略称を含む商標である。
(2)本件商標の指定商品は、請求人の引用商標により提供される商品又は役務と非常に類似しているので、当該商品及び役務の需要者間において両商品の間に混同を生ずるおそれがあるものである。本件商標と引用商標を付した商品間に混同を生ずるおそれがあるとしたら、両商標は類似するものであり、また、混同を生ずるおそれがある商標といえる。
(3)また、本件商標は、請求人の商号と何らかの関係があると不実に暗示するものである。公衆及び需要者・取引者は、実際に、本件商標と請求人との間には関連性があると思い込むことがあり得る。事実として、このような関連性は全く存在していない。需要者・取引者におけるこのような混同のおそれは、請求人の引用商標に不正に商業的ダメージを与えるものであり、商標の使用によるブランド保護の本来的意義を蔑ろにするものである。本件商標は、商標の独自性及びブランド価値を保護するという商標法の目的に反して登録されたものであるので、その登録は無効にされるべきものである。
(4)同様に、本件商標は、請求人の国際的に周知な引用商標の識別性を希釈するものであり、不正に引用商標の価値を下げるものである。請求人は、世界各国においてビジネスを展開しており、本件商標の登録を認めることは、引用商標との間に混同の生ずるおそれ及び引用商標の希釈化を引き起こすことになるものである。その結果として、引用商標の名声・評判を害することになり、国際的商取引における商標保護の目的に反するものである。
(5)請求人は、継続して広範囲にわたり、引用商標の使用をしている。日本における請求人の市場は年々拡大しており、日本における請求人商品の販売数及び販売代理店数も増加している。万が一、本件商標の登録維持が許可されるのであれば、請求人は、引用商標に係る正当な営業利益を否定されることになり、新規商品及び役務について引用商標の使用を拡大していく機会を否定することになる。これは請求人の事業の正当な拡大を中止させることになりかねない。請求人と被請求人は、商品、商品の販売場所、役務の提供場所、販売ルート、商品及び役務の広告の多くが共通であるか又は密接な関連性があり、同じ需要者により購入され使用されるものである。
したがって、公衆は両社の商品が同一の製造元から販売された商品であると思い込んでしまうおそれがある。このような混同が生ずると請求人の事業は制限され、事業の実施に制約がかかることになるといえる。これにより請求人には直接的な損害が生ずることになる。
(6)請求人は、引用商標を最初に使用し始めた者であり、市場において引用商標を継続して広範囲にわたり使用し、広告、販売促進、販売の申し入れ、商品及び役務の販売数の拡大を行ってきた。
請求人の日本の需要者、潜在的需要者、製造・卸売販売・小売に従事する者、浄水装置・水殺菌装置の取引者は、引用商標を知っており、引用商標を請求人の販売にかかる商品及び役務と関連づけて認識している。
したがって、請求人は、日本において、引用商標及び商号「MIOX」の名の下に、商品の開発・市場での売買・販売及び役務の提供との関連性において相当なグッドウィルを築き上げてきた。本件商標の登録維持を許可することは、混同を引き起こし、商標及びブランド名をたよりに商品を購入している日本の需要者の利益を害することになる。
(7)請求人は、上述のように浄水装置・水殺菌装置の取引業界において非常に有名であり、周知である。請求人の製品は、水の処理用・浄化用及び殺菌用の機械器具、浄水装置、家庭用浄水器、汚水浄化槽、家庭用汚水浄化槽、家庭用し尿処理槽、し尿処理槽などである。
(8)本件商標は、請求人の引用商標の模倣であるので、本件商標が被請求人の製品に付されると、両商標間に誤認混同が引き起こされるのは確実である。この混同は、需要者を欺くに等しく、引用商標及びその評判に傷をつけ、損害を及ぼすものである。
両商標は、同一の文字からなるものであり、外観、称呼、観念において酷似するものである。本件商標中の「MIOX」の語の使用は、請求人の引用商標及び商号の一部と同一であり、請求人の引用商標は、日本における需要者の間において極めて有名であり広く知られているので、将来的に被請求人の商品が販売されると両者間において出所混同が生ずるおそれがあるといえる。
(9)被請求人が本件商標を付して販売する商品は、請求人が引用商標を付して販売する商品及び提供する役務と同一または類似するものである。
請求人と被請求人の商品及び役務は近似しており、両方とも一般需要者、政府機関及び企業に対して直接的に提供され、同一商取引経路を介して流通されるものである。
(10)本件商標は、請求人の社名及びブランドとの関連性を誤って示唆するものである。需要者は、請求人を引用商標、MIOXブランド並びにその社名である「MIOX」によって認識している。
したがって、本件商標は、誤って請求人との関係を示唆するものである。需要者は、被請求人商品が請求人により販売されたものであると認識し、又は両商標間に直接的あるいは間接的な関連性があると誤解するものである。
(11)請求人は、被請求人による第7類及び第11類での本件商標の登録により損害を被るおそれがある。また、請求人の引用商標は、水処理、浄水装置及び水消毒殺菌製品の幅広い商品群に対して遅くとも1999年以来、日本において商業的に使用されており、有名になっている。請求人の引用商標は、本件商標によって希釈化されるといえる。
請求人は、被請求人又はその使用許諾者により、本件商標を付して流通し、販売される商品の性能及び品質に対する管理手段を一切持ち合わせていない。したがって、被請求人の製品の購買者又は利用者が当該製品に対して不満を待った場合には、請求人の信用と名声が傷つけられるおそれがある。
(12)本件商標と請求人の商標は、「MIOX」の語を含む点で共通する。両商標は、称呼、外観及び商業的印象を共有するものであり、非常に近似しており、互いに相紛らわしいものである。万一、本件商標が登録維持となれば、請求人の引用商標と本件商標との出所混同のおそれは必然的なものとなり、日本における請求人の自由な事業活動を阻害し、妨害することになる。また、請求人だけではなく、市場において製品を選択する際に商標を頼りに製品を識別している一般需要者に多大な損害を及ぼすことになる。
4 不正の目的について
(1)本件商標中の「MIOX」の語は、上述のように、請求人の社名の一部であり、請求人の創作にかかる造語であるので、被請求人がこのような商標を偶然採用するということはあり得ない。
(2)被請求人は、本件商標を使用してはおらず、以前には、株式会社ビー・エム(以下「ビーエム」という。)又は株式会社エヌ・エス・ピイ(以下「エヌエスピイ」という。)に使用許諾をしていた。被請求人である国宗哲典氏は、請求人とビーエム及びエヌエスピイとの契約の仲介人であり、翻訳者であった者である(契約の詳細は後述のとおり)。仲介人であり翻訳者であったという二重の役割で、国宗哲典氏は、請求人が世界中で引用商標を所有していることを承知していた。被請求人は、ビーエムとエヌエスピイが当該商標を出願することを請求人によって契約により禁止されている事実を知っていた。したがって、被請求人は、本件商標を出願するために内部情報を不正に利用したといえる。
実際に、被請求人とエヌエスピイの社長の井戸康正氏は、2006年2月1日に出願番号2006-007522として「MIOXOXIDANT」を共同で商標登録出願を行っている。その後、井戸氏は当該出願を取り下げた。恐らく、そのような出願は、請求人とエヌエスピイとの間の契約義務違反に該当すると気付いたためだと考えられる。国宗氏は、請求人に対するエヌエスピイの契約義務によって、井戸氏が出願に関与できないことを知り、国宗氏自身のみで本件商標を再度出願した。
(3)請求人とビーエム及びエヌエスピイとの契約内容は以下のとおりである。
ア ビーエムと請求人との間で国際流通契約を2000年2月21日付けで締結した(甲第4号証)。同契約書の条項3において、商標「MIOX」が請求人に所属する旨が明記されている。
エヌエスピイは、2000年6月13日付けの「株式会社ビー・エムのMIOX卸業者リスト」で示されるように、ビーエムの卸業者の一員であった(甲第5号証)。
イ その後、技術ライセンス契約書が2002年11月22日付けで締結され(甲第6号証)、2000年2月21日付けのビーエム契約書に取って代わった。同契約書の条項2.6において許諾者(請求人MIOX)により受諾者(ビーエム)に使用許諾されている。この契約書は単なる使用許諾であり、商標の所有権に関わるものではない。
ウ エヌエスピイと請求人との間において、2004年2月1日付けで契約が取り交わされた(甲第7号証)。この契約の条項1.9は、使用許諾された商標は「MIOX」であると記し、条項3.1は、請求人がエヌエスピイに商標「MIOX」の使用を許諾すると記している。条項3.4は、請求人の商標「MIOX」並びにその登録における国際的な独占排他権及び諸権原を認めている。この条項はさらに、エヌエスピイによる許諾商標に関わるそれら諸権利の減損を禁止し、「エヌエスピイは許諾商標またはその登録のいかなる所有権も有していない」と明記している。条項9.4は、許諾商標に対する使用権を認めている。
エ 請求人とエヌエスピイとの間で締結された2006年7月1日付けの契約書(甲第8号証)は、2004年2月1日付けの契約書に取って代わるものである。条項5は、商標に関わるものであり、条項5.2.1(a)は、エヌエスピイが請求人の承認を得ずして商標「MIOX」を日本国登録第4798909号として日本で登録したことを明記している。しかし、契約書は、請求人が世界中で許諾商標の専用使用権を所有しており、唯一の所有権者であることも明示している。契約当事者は現在、登録の移転に関して合意に至っていない(許諾商標とは「MIOX」、「MIOX+水滴ロゴ」、水滴ロゴである)。条項5.2において、エヌエスピイはさらに、エヌエスピイによる許諾商標の使用を通じて獲得した全権利は請求人単独の利益に帰し、エヌエスピイは許諾商標におけるその有効性、商標「MIOX」の所有権及び権原並びに登録及び許諾された使用権の有効性に対して異議を申し立てないことに同意している。最も重要な点は、エヌエスピイは、条項5.2.1(e)において、「MIOX」の語を含むどのような商標の登録も求めず、MIOXの事業に関係するどのような商標の登録も求めないことにも同意していることである。そして、本契約書は、被請求人である国宗氏も立会人として署名している。被請求人は、契約立会人であり、これら契約条項及び請求人が商標「MIOX」の商標権の真の所有者であることを認識していた。
以上から、被請求人に不正の目的があったことは明らかである。
5 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第8号について
本件請求人は、遅くとも1999年から日本において商標「MIOX」を継続して使用しており、本件請求人の商標「MIOX」は、日本及び世界各国で需要者及び取引者の間において広く認識されている(甲第9号証、同第11号証、同第13号証及び同第14号証)。
ア 株式会社西武新聞社の記事には、「MIOXは魔法の水だ」と紹介され、「MIOX(マイオックス)は、塩素を使わず『塩』と『水』だけで殺菌消毒する、画期的な混合酸化溶液(厚生労働省認可)のこと。」であると説明され、また、2007年8月31日の新聞記事では、「独自開発の殺菌剤を使った浄水装置の製造・販売で急成長しているのが米マイオックス(MIOX、ニューメキシコ州)だ」と紹介され、さらに、日本大学高等学校・中学校のパンフレットにおいて、「NSP・MIOX(マイオックス)」、「混合酸化剤生成装置、塩と水を使う画期的な殺菌浄化装置。日本大学高等学校・中学校も採用!」との表題の下、請求人の混合酸化剤、滅菌装置が紹介されている(甲第10号証)。
イ 2002年に執筆され、2003年に刊行物に掲載された、北里大学医学部微生物学及びその他による研究論文には、混合酸化剤溶液MIOXに関する記載がある(甲第12号証)。
ウ これらの証拠資料は、長年日本及び外国において商標「MIOX」が使用され、需要者の間に広く認識されていることを示すものであり、請求人による長年にわたる継続的な使用により、商標「MIOX」は、本件商標の出願時である2008年1月22日時点には、既に上記商品について日本国内において需要者、取引者の間に相当程度知られており、本件商標の出願前に既に周知であったと認められる。
したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標である。
(2)商標法第4条第1項第10号について
被請求人は、提出された証拠から見出せる請求人の商品は「現場薬品生成装置」のみであると主張しているが、請求人の商品は単に「現場薬品生成装置」のみではなく、ペン型浄水器、海水吸水装置、現場水消毒装置、現場生成機などを含むものである。請求人は、遅くとも1999年から日本において商標「MIOX」をこれらの商品に使用し、商品を販売している。請求人のこれらの商品は、本件商標の指定商品と需要者及び販売経路を同一にするものであり、本件商標の指定商品と同一または類似の商品である。
また、被請求人は、本件商標「MIOXOXIDANT」は、請求人の商標「MIOX」とは非類似であると主張しているが、本件商標中の「OXIDANT」は、「酸化体、オキシダント、酸化剤」を意味する英単語であり、当該商品を取り扱う分野においては、一般に理解され、認識されている英単語であり、「OXIDANT」は、本件商標の指定商品「殺菌水製造機械器具」等との関係においては、指定商品の内容等を表示する語句であり、自他商品識別性を有さないものであるから、本件商標中、自他商品識別性を有する要部は「MIOX」である。
そうすると、請求人の商標「MIOX」と本件商標の要部は同一であるので、両商標は互いに類似する商標である。また、本件商標から生ずる称呼「マイオックスオキシダント」または「ミオックスオキシダント」は、11音または10音からなるものであり、冗長であるので、簡易迅速を尊ぶ取引界においては、本件商標中の普通名称である「オキシダント」は省略され、本件商標は単に識別性を有する部分である「マイオックス」または「ミオックス」と称呼されることもあるといえる。
そうとすると、請求人の商標「MIOX」と本件商標とは、称呼において同一であり、観念においても、本件商標は「MIOX」の製造販売するオキシダント、「MIOXのオキシダント」という意味合いを想起させるものであるので、観念においても類似するといえる。
以上のように、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品に類似する商品について使用するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、「請求人の主張する請求人の業務に係る商標は『MIOX』であるのに対し、本件商標は『MIOXOXIDANT』であり、商標に接する需要者・取引者に対して、全く異なる印象を与える商標であるといわざるを得ない。この様な関係において、本件商標が他人である請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれは皆無という他ない。」と主張しているが、本件商標「MIOXOXIDANT」は、商標中に「MIOX」の文字を顕著に含むものであり、語頭部分の4文字が請求人の商標と同一である。
また、上述のように、本件商標中「OXIDANT」は、指定商品との関係で識別性を有さない部分であるので、本件商標は「MIOX」と「OXIDANT」との結合からなるものであると需要者、取引者に容易に理解されるものである。さらに、本件商標から生ずる称呼「マイオックスオキシダント」または「ミオックスオキシダント」は、冗長であるので、簡易迅速を尊ぶ取引界においては、本件商標中の普通名称である「オキシダント」は省略され、本件商標は単に識別性を有する部分である「マイオックス」または「ミオックス」と称呼されることもあるといえる。
そうすると、本件商標に接する需要者及び取引者は、本件商標は請求人の業務に係る商品と何らかの関係を有するものであるか、または本件請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認するおそれがある。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標「MIOXOXIDANT」は、上述したように、請求人の商標として、浄水装置及び水殺菌装置、水消毒システムの分野で日本国内及び外国において需要者の間に広く認識されている商標「MIOX」と類似する商標である。
また、上述のように、請求人による長年にわたる継続的な使用により、請求人の商標「MIOX」は、本件商標の出願時である2008年1月22日時点には、既に上記商品について需要者の間に相当程度知られており、本件商標の出願前に既に周知であったと認められる。
さらに、被請求人は、本件請求人と日本の販売代理店との契約の仲介人であり、契約書の翻訳者であったという二重の役割で、被請求人は、請求人が世界中でMIOX商標を所有していることを承知していた。
また、被請求人は、「MIOX」の語を含むいかなる商標も出願することを請求人MIOX社との契約により禁止されている事実を知っていた。このような状況下で請求人の商標「MIOX」と酸化剤を表す普通名称「OXIDANT」とを組み合わせた本件商標「MIOXOXIDANT」を被請求人が偶然採用するということはあり得ないから、被請求人は、請求人の商標「MIOX」の周知性ただ乗りし、今後のMIOX商品の販売を有利にするため、不正の利益を得る目的をもって本件商標を出願したものである。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的で使用をするものである。
6 むすび
以上詳述したように、本件商標は、請求人の著名な略称を含む商標であり、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号に規定する無効の要件を具備するものであり、無効にされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を以下のように述べた。
1 商標法第4条第1項第8号について
請求人は、本件商標が請求人である「他人の名称の著名な略称を含む商標」である旨主張している。
確かに、本件商標は、「MIOXOXIDANT」であり、請求人の名称は、英文表記では「MIOX Corporation」であると推測される。
しかし、請求人の名称の略称であると主張する「MIOX」が如何なる理由をもって日本において著名であるか全く理解できないし、甲第3号証を挙げて、日本における事業の名称及び場所を示すと主張するが、何らの事実を立証するものではない。
また、総費用が約1億7千万円を超えるものと主張するが、その根拠となる証拠の提出はなく、仮に、証拠を伴って立証されたとしても、その程度の事業規模では、日本においてその名称の略称が著名であるとはいえない。
以上の理由により、「MIOX」が本件商標の一部に混在していたとしても、「他人の名称の著名な略称」とはいえない。
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標の指定商品中のいずれの商品が請求人の主張する商品であるか定かではなく、請求人の業務に係る商品若しくは役務が「水の処理用・浄化用及び殺菌用の機械器具,浄水装置,家庭用浄水器,汚水浄化槽,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽,し尿処理槽など」であると主張するが、提出された証拠によれば「現場薬品生成装置」のみである。
また、証拠によれば、図形を伴った「MIOX」がインターネット上のサイトで使用されていること及び請求人の名称を示す表記として使用されているとしても、上記商品についての「MIOX」の使用は確認できない。
さらに、本件商標は「MIOXOXIDANT」であるのに対して、引用商標は「MIOX」であり、本件商標からは「ミオキソキシダント」、「マイオキソキシダント」、「ミオックスオキシダント」又は「マイオックスオキシダント」の称呼が生ずるのに対し、引用商標からは「ミオックス」又は「マイオックス」の称呼を生ずるものであるから、称呼において、両者は、明らかに相違し、外観・観念においも、明確に相違する。
以上の理由により、「MIOX」が請求人の使用する商標であったとしても、本件商標は、需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標とはいえない。
3 商標法第4条第1項第15号について
請求人の証拠を勘案しても、請求人の商標「MIOX」が何らかの商品や役務に使用されている状況を確認できない。
仮に、何らかの商品や役務に使用されていたとしても、日本における総事業費は高々約1億7千万円程度に過ぎず、日本国内において需要者に広く知られているものとはいえない。
さらに、請求人の主張する引用商標は「MIOX」であるのに対し、本件商標は「MIOXOXIDANT」であり、商標に接する需要者・取引者に対して、全く異なる印象を与える商標である。
この様な関係において、本件商標が他人である請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはない。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標と請求人の使用に係る商標「MIOX」とは、称呼・外観・観念において悉く相違し明確に類似しないものであり、「MIOX」が請求人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
さらに、請求人は、不正の目的について、全く関係のない「MIOX」の商標についての契約や交渉の経緯を持ち出し、極めて主観的で理由のない主張を繰り返している。
被請求人が本件商標を使用する「混合酸化剤」は一般に知られている殺菌効果を有する酸化剤であり、英語名は「MIX OXIDANT」であるが、それに酸素を意味する(O)を加えて「MI(O)XOXIDANT」とし、更に、象形的に見栄えよくするため、「OXOX」の文字が絡み合い、恰も図形を構成しているかの様に認識できるよう、1つの語として「MIOXOXIDANT」と創作したものであるから、本件商標は、被請求人が独自に選択した全体として一体不可分の商標であり、請求人の商標に依拠して選択したものではそもそもない。
被請求人は、殺菌効果を有する混合酸化剤及びこれを生成するための化学機械器具や電解水生成機及びこれを用いた浄水装置、水殺菌装置などを販売する目的で本件商標を選択し出願したものである。
したがって、本件商標は、日本国内及び外国の何れにおいても需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標とはいえないし、かつ、不正の目的についての要件も満たしていない。
5 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するものとはいえないから、本件商標の登録は無効となり得ず、維持されるべきものである。

第4 当審の判断
請求人は、「MIOX」の標章は請求人の商号の著名な略称であるとともに、請求人の業務に係る「浄水装置、水殺菌装置、家庭用浄水器、汚水浄化槽、家庭用汚水浄化槽、し尿処理槽、家庭用し尿処理槽」等の商品及び役務に使用する商標として周知・著名なものであるとして、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものである旨主張している。
1 そこでまず、上記各法条の該当性を判断する前提となる「MIOX」標章の周知・著名性について判断する。
(1)甲第1号証は、2009年8月20日にプリントアウトされたものと認められる請求人会社のウェブサイトの写しであり、ページの下端や上端には、黒塗りの水滴状の図形の中に白抜きで表された「MIOX」の標章が表示されており、「MIOX社とは?」の見出しのもとに、「それまで培ってきた科学発明を用いてマイオックス社は1994年に現場浄水薬品生成装置の生産を始めました。現在ではアメリカ合衆国の数百に上る地域と海外30ケ国に渡り、1500基以上のマイオックスが設置されています。一日の処理水量は2500万キロリットルに上り、世界中で多くの人々に浄水を供給しています。・・・マイオックスの革新的な特許技術を用いて、その場で必要に応じて塩、水そして電気だけを使って殺菌剤を生産します。・・・マイオックスの製品は米環境保護庁(EPA)により法遵守技術の一つとしてリストされており、国際衛生財団(NSF international)から飲料水用システム機材として認証を受けています。アメリカ合衆国で生産される“MIOX”は国際登録商標であり、当社は数多くの特許を取得しております。マイオックス社は優秀な輸出企業として権威ある米国大統領「E」賞を、ポピュラーサイエンス誌“最高の新商品”の一般発明部門で大賞をそれぞれ受賞し、ゴーインググリーンTop100社に二年連続で選ばれています。・・・」等の記載があり、「最新型RIO現場薬品生成装置」として該装置の写真が掲載されている。
この甲第1号証によれば、請求人(MIOX Corporation)は、自社のウェブサイトにおいて、自社の商号を「MIOX社/MIOX/マイオックス」等と略記していたことを認めることができる。
しかしながら、ウェブサイトや文献等において、社名を簡略化して記載することは、読みやすさや紙面の都合上などの理由からしばしば用いられている記載方法であり、甲第1号証にそのような記載のあることのみをもって、「MIOX/マイオックス」の標章が請求人の商号の略称として周知・著名になっていたものと認めることはできない。
また、甲第1号証の記載からみれば、「MIOX」の標章が現場浄水薬品生成装置の商標(引用商標)でもあることは認められるが、1994年に現場浄水薬品生成装置の生産が開始されてから、いつの時点において1500基のマイオックスが設置されたのか明らかではない。甲第1号証のウェブサイトには「Copyright(c)2009」と表示されており、例えば、該ウェブサイトが著された2009年までの期間における設置数とみれば、年平均100基であり、これがアメリカ合衆国ほか30ケ国において設置されたものであるとすれば、年換算でみた場合においては、必ずしもそれ程多くの装置が設置されたものとはいい難いものである。しかも、甲第1号証のウェブサイトには、「最新型RIO現場薬品生成装置」として該装置の写真が掲載されているところ、その「RIO」の文字の右肩には小さく「TM」と表示されており、このことからみれば、現場(浄水)薬品生成装置の商標は、「MIOX」なる商標ばかりではなく「RIO」なる商標も存在していたものと認められるものである。
してみれば、甲第1号証をもってしては、引用商標が請求人の業務に係る「現場浄水薬品生成装置」等の商品あるいは該商品等に係る役務の商標として日本国内におけるこの種商品の取引者・需要者の間において広く認識されていたものと認めるのは困難であり、アメリカ合衆国をはじめとする諸外国において周知・著名になっていたものとも認め難い。
(2)甲第2号証は、請求人が各国において取得した「MIOX」商標についての登録一覧及び各国における登録簿の写しであり、アメリカ合衆国をはじめ、トリニダード・トバコ、メキシコ、カナダ、ベネズエラ、ボリビア、日本、韓国、オーストラリア、中国、EU、トルコ、ベトナム、イスラエル、インド、ブラジル、香港、台湾等の国々において登録されていることが認められる。
しかしながら、多くの国において商標登録されていることは、該商標の周知・著名性を判断する際の補完的な証拠とはなり得ても、引用商標の周知・著名性を直接的に裏付けるものとはいえない。
(3)甲第3号証は、1999年1月から2007年9月までの間における請求人の事業として行われた日本における事業の名称及び場所の一覧として提出されているものであり、プロジェクトネームとそれぞれの日付が記載されている。例えば、1999年1月1日の欄には「Machida」、「Shinjuku-ku,Tokyo」、「Tokyo」とあり、2000年12月22日の欄には「Japan-CS Kikau Misasa Hot Spring」、「Japan-Eco-Math Hayashida Murata Residence 」、「Japan-Eco-Math KKR Hotel Hakata」等々の記載が認められる。
しかしながら、このリストに掲載されている各事業が引用商標に係る事業である旨表示されている訳ではなく、個々の事業において、引用商標に係る製品が設置された旨の具体的な記載や説明も一切なされていない。しかも、請求人は、該一覧表に掲げる事業の総費用が180万ドル(約1億7千万円)を越えるものである旨述べているが、該リストの日付からみれば、上記した期間内に満遍なく事業が行われていたものではなく、2000年に36件、2001年に31件あった外は、1999年が3件、2002年が3件、2003年が5件、2004年が11件、2005年が4件、2006年が7件、2007年が6件となっており、一時期、ある程度の事業件数があったことは認められるにしても、それ以外は、毎年数件程度のものである。そうとすれば、各事業の単価が同一ではないとしても、約1億7千万円の総費用のかなりの部分は2000年と2001年のものとみられるものであり、それ以降、本件商標が出願された2008年までの各年の事業規模はそれ程大きなものとはいえない。
してみれば、この程度の事業規模をもってしては、本件商標が出願された平成20年(2008年)1月当時において、引用商標が我が国におけるこの種商品の取引者・需要者の間において広く知られていたものと認めるのは困難である。
(4)甲第4号証及び甲第6号証は、請求人と株式会社ビー・エム間の契約書の写しであって、甲第4号証は2000年2月21日付けのものであり、甲第6号証は2002年11月22日付けのものである。甲第5号証は、株式会社ビー・エムの卸業者リストの抜粋写しと認められるものであり、「DEALER」の欄には、「株式会社エヌ・エス・ピイ」と記載されている。また、甲第7号証及び甲第8号証は、請求人と株式会社エヌ・エス・ピイ間の契約書の抜粋写しであって、甲第7号証は2004年2月1日付けのものであり、甲第8号証は2006年7月1日付けのものである。そして、甲第6号証及び甲第8号証の立会人の欄には、本件商標の商標権者である国宗哲典と同一人であるか否かは定かではないが、「TerryT.Kunimune」の署名のあることが認められる。
しかしながら、これらは、請求人と株式会社ビー・エムあるいは請求人と株式会社エヌ・エス・ピイ間の契約書であり、契約書という書類の性質からみても、引用商標の周知・著名性を把握し得るような資料ではなく、請求人の提出の趣旨も引用商標の周知・著名性を裏付ける証拠として提出されているものではないといえる。
(5)甲第9号証は、2010年6月2日付け、株式会社モチヅキ等のウェッブサイトを印刷したものである。これにより、「MIOX(マイオックス)浄水器」が販売されたことは確認できるが、販売数量等は不明である。また、甲第10号証は、「MIOX」商品に関する新聞及び雑誌の記事であり、これにより、プールの水の殺菌消毒用に「MIOX(マイオックス)」が使用されたことは確認できるが、導入事例は少なく、携帯浄水装置としての「MIOX(マイオックス)」も米国の販売に関する記事である。
(6)甲第11号証は、請求人と株式会社エヌ・エス・ピイが販売促進用に作成したパンフレットであり、「殺菌剤生成装置」等に「MIOX(マイオックス)」が使用されている。
(7)甲第12号証は、平成15年2月20日付けの北里大学医学部生物学及びその他による研究論文(一部抜粋)であり、「強酸性電解水の一つである混合酸化剤溶液(Miox溶液と称す)…」等の説明はあるが引用商標の使用を裏付けるものではない。
(8)甲第13号証は、作成日等が不明であり、甲第14号証は、2010年6月2日に印刷された株式会社エヌ・エス・ピイのウェッブサイトであるところ、同社が、米国MIOX社と輸入販売製造のライセンスを得た旨の記載はあるが、引用商標の使用を具体的に裏付けるものはない、また、甲第15号証は、MIOXの表示がある、2001年の「ジェトロ環境展」の展示会を撮影したものではあるが、この展示会の期間や参加人数等は不明である。
(9)甲第16号証は、世界各国における販売代理店一覧及び年度別売上高一覧とするところ、引用商標を付した商品が、これらの売上高に占めるのか等は不明である。
(10)以上のとおり、甲第1号証ないし甲第16号証を総合してみても、本件商標の出願時ないしは登録査定時において、「MIOX/マイオックス」の標章が請求人の商号の略称として周知・著名になっていたものとは認められず、また、請求人の業務に係る「現場浄水薬品生成装置」等の商品あるいは該商品に係る役務の商標として日本国内又は外国におけるこの種商品の取引者・需要者の間において広く認識されていたものとも認められない。
2 商標法第4条第1項第10号及び同第19号について
(1)本件商標と引用商標との類否について
前記したとおり、本件商標は、「MIOXOXIDANT」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、該文字は、同書、同大、同間隔をもって外観上まとまりよく一連一体に表示されており、直ちには、その文字構成を把握・認識し難いものであるから、該文字全体をもって構成された不可分一体の造語よりなる商標と判断するのが相当である。そして、本件商標からは、その構成文字に相応して「ミオキソキシダント」、「マイオキソキシダント」、「ミオックスオキシダント」あるいは「マイオックスオキシダント」の称呼を生ずるものと認められる。
一方、 引用商標は、「MIOX」の欧文字を横書きしてなるものであるから、該構成文字に相応して「ミオックス」あるいは「マイオックス」の称呼を生ずるものと認められる。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その称呼において明らかに相違するものであり、外観においても明らかな差異を有し、いずれも造語と認められるものであるから、観念については比較すべくもないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第19号の該当性について
上記したとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標と認められるものであるから、他の要件について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反してされたものとはいえない。
この点について、請求人は、本件商標は請求人の商標「MIOX」と同一の文字を含むものであり、外観、称呼、観念において請求人の商標に類似する商標である旨主張している。
確かに、本件商標を仔細に観察すれば、その語頭部分から4文字目までの文字構成は「MIOX」であるということができる。そして、本件商標の指定商品は、第7類「反応機,分縮機,化学機械器具,食材等用殺菌水製造機械器具」等々や第11類「電解水生成機,プール用殺菌装置,業務用浴場湯水浄化装置,浄水装置,水殺菌装置,液体殺菌装置」等々であり、これらの商品を取扱う取引者・需要者は、商品についての専門的な知識を有している者も多いものといえるから、本件商標構成中のその余の構成部分である「OXIDANT」の文字部分について、「強酸化性物質の総称」を表す「オキシダント」の英語表記であるものと理解・認識し得る場合も有り得るものということができる。そのようにみた場合には、本件商標は、「MIOX」の欧文字と「OXIDANT」の欧文字とを結合させたものとして把握・認識されることとなり、本件商標は引用商標「MIOX」と同一の文字を含むものである旨の請求人の主張も一概に否定することはできない。
しかしながら、上記1において認定したとおり、引用商標は、本件商標の出願時ないしは登録査定時において、請求人の業務に係る「現場浄水薬品生成装置」等の商品あるいは該商品に係る役務の商標として日本国内又は外国におけるこの種商品の需要者の間において広く認識されていたものとは認められないものである。
したがって、請求人が主張しているように、本件商標構成中に引用商標と同一の文字を含むものであると理解される場合があるとしても、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反してされたものとはいえない。
3 商標法第4条第1項第15号について
上記したとおり、本件商標と引用商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものであるばかりでなく(本件商標構成中に引用商標と同一の文字を含むものであると理解される場合があるとしても)、引用商標は、本件商標の出願時ないしは登録査定時において、請求人の業務に係る「現場浄水薬品生成装置」等の商品あるいは該商品に係る役務の商標として日本国内又は外国おけるこの種商品の取引者・需要者の間において広く認識されていたものとは認められないものである。
してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。
4 商標法第4条第1項第8号について
上記において認定したとおり、本件商標は、その構成文字全体をもって不可分一体の造語よりなる商標と判断するのが相当であり、構成中の「MIOX」の文字部分のみを分離して看取しなければならない特段の理由は存しないものであるから、例え、本件商標がその構成中に「MIOX」の文字を含んでいるとしても、そのことをもって、請求人商号の略称を含む商標ということはできない。しかも、「MIOX」の標章は、本件商標の出願時において、請求人の商号の著名な略称とは認められないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものとはいえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-07-29 
結審通知日 2010-08-02 
審決日 2010-08-24 
出願番号 商願2008-3504(T2008-3504) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (X0711)
T 1 11・ 271- Y (X0711)
T 1 11・ 222- Y (X0711)
T 1 11・ 25- Y (X0711)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 2009-02-20 
登録番号 商標登録第5206988号(T5206988) 
商標の称呼 ミオキソキシダント、マイオキソキシダント、ミオックスオキシダント、マイオックスオキシダント、ミオックス、マイオックス 
代理人 西原 広徳 
代理人 永田 元昭 
代理人 大田 英司 
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 
代理人 永田 良昭 

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