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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z14
管理番号 1230155 
審判番号 取消2010-300283 
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-03-15 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4299568号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4299568号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4299568号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、「ペレバレンティノ」の片仮名、及び「PER VALENTINO」の欧文字とを上下二段に横書きした構成よりなり、平成10年5月1日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製宝石箱,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,宝石の原石,時計」を指定商品として、平成11年7月30日に設定登録され、その後、平成21年2月24日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第49号証(枝番を含む。但し、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
〈請求の理由〉
1 本件商標と使用商標について
(1)使用商標
商標権者である被請求人は、「腕時計」について、甲第3号証に掲げる(2)ないし(5)のとおりの構成からなる使用商標1ないし4(以下、纏めて「使用商標」という。)を使用している(甲第4号証ないし甲第7号証)。
ア 使用商標1、2
使用商標1は、時計の文字盤上に配されているものであり、使用商標2は、時計の裏側中央部に刻印されてなるものであって、それぞれ、本件商標とは異なる欧文字のみからなる「PER」と「VALENTINO」とから構成され、かつ、「PER」と「VALENTINO」との間のスペースが、本件商標の欧文字部分に比して広く設けられている。
イ 使用商標3
使用商標3は、「腕時計」と同梱されている当該商品に係る宝石鑑別書に、当該商品の製造及び販売責任者である被請求人を示す表示が商標的に使用されているものであり、本件商標とは異なる欧文字のみからなる「GEM PER VALENTINO JAPAN」から構成され、かつ、「PER」と「VALENTINO」との間のスペースが、本件商標の欧文字部分に比して広く設けられている。
ウ 使用商標4
使用商標4は、同じく、同梱されている当該商品の使用方法の記載や販売者及び販売日を記入する欄が設けられているカードの表面中央に表示されたものであり、本件商標とは異なる欧文字のみからなる「PER VALENTINO」から構成され、「PER」と「VALENTINO」の間には一文字より広いスペースが配されている。
(2)小括
本件商標は、「ペレバレンティノ/PER VALENTINO」と片仮名と欧文字が二段に構成されているのに対して、被請求人による使用商標は、前記アないしウのように、看者の注意を強く惹く「VALENTINO」部分が強調された態様へ変更されたものである。
なお、被請求人の業務に係る当該商品及びこれの提供の際に同梱されている、宝石鑑別書、包装容器、取扱説明付きカードのいずれにおいても前記使用商標のみが使用されており、本件商標の使用は、一切、認められない(甲第8号証)。
2 引用商標及びその周知性等について
(1)請求人
請求人であるバレンチノ ソシエタ ペル アチオニ(Valentino SpA)は、1959年に、ファッションデザイナーの「Valentino Garavani」が設立したイタリア国ミラノを本拠地とするファッションメーカーであって、現在では、バレンチノファッショングループのひとつとして、VALENTINOブランドを管理するものである。
現在、「VALENTINO」ブランドは、世界79ヶ国に約2000店舗を有しており、2008年には、約325億円もの収益をあげている(甲第9号証)。
(2)「Valentino Garavani」の著名性
請求人の業務に係る表示として知られている「VALENTINO」ブランドの創始者であるValentino Garavaniは、ファッション史において極めて重要な人物として、広く知られている。例えば、20世紀を代表するファッションデザイナーを取り上げたファッション史に関する研究書籍において、「イタリア人ヴァレンティノ・クレメンテ・ルドヴィコ・ガラヴァーニは『ヴァレンティノ』として世界的に有名になった」として、彼の作品とともに紹介されており(甲第10号証)、また、ファッションブランドを取り扱った書籍において、彼の生い立ちとともに、「二十世紀を代表する巨大ブランドに成長し、女性の憧れのブランドとして世界中に定着している」として紹介されている(甲第11号証)。さらに、「ファッションビジネス基礎用語」として「Valentino Garavani」がデザイナーとして取上げられており、1962年のコレクションでの大成功が「<ヴァレンティノ>の名を国際的に知らしめるものとなった」として紹介されている(甲第12号証)。
また、世界のスターデザイナーのひとりとして取り上げられ、「移ろいやすいファッションの世界で、40年以上もスーパースターであり続けている人はほかにいない。」としてヴァレンティノの人生と功績が紹介されており(甲第13号証)、さらに、ファッション雑誌VOGUEの選ぶデザイナーとして、「VALENTINO」が取り上げられている(甲第14号証)。
このように、「Valentino Garavani」は、「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」又は「バレンチノ」として、その多くが紹介されており、かかる事情から、「Valentino Garavani」自身、及び、彼の業務に係る商品を示す商標として、「VALENTINO」は、需要者間に広く親しまれていることが明らかである。
(3)周知・著名性を示す実績
前記のとおり、請求人の周知・著名商標「VALENTINO」(以下、「引用商標」という。)は、本件商標の出願時には、婦人服、紳士服等の「ファッション関連分野」の商品を示すものとして、需要者・取引者に広く知らてれていたものである。
このことは、例えば、平成6(1994)年3月に発売されたファッション雑誌において、請求人のブランドを示す表示として引用商標が用いられている(甲第15号証)。また、平成9(1997)年には、「3大メゾン」として、「VALENTINO」ファッション特集が組まれていることが認められ(甲第16号証)、さらに、ファッション誌には、「VALENTINO」として請求人に係るファッションブランドが取り上げられていることが認められる(甲第17号証)。日本の雑誌の縦書き表記にあわせて、「ヴァレンティノ」との片仮名表記が用いられているものの、「VALENTINO」との商標も表示されていることから、需要者は、「ヴァレンティノ」又は「バレンチノ」は、請求人の業務に係る商品を示す「VALENTINO」であることを熟知していることが明らかである(甲第18号証)。そして、「数あるブランドのなかでもNo.1の評価を受けていたのが『ヴァレンティノ』でした」との評価を受け(甲第19号証)、「エレガンス・スタイルの象徴的存在」、「注目の四大メゾン」(甲第20号証)として特集が組まれていることに加え、「ヴァレンティノ・スタイル」として、商品が特集されていることから(甲第21号証)、請求人に係るファッションブランドは、エレガントで高級感ある商品として高く評価されていることが認められる(甲第22号証、甲第23号証)。
しかして、平成19(2007)年9月に「VALENTINO」ブランドの創始者であるValentino Garavaniが引退する際には、ファッション誌において、その功績とともに、引用商標に係る商品が大きく取り上げられている(甲第24号証)。そして、後任のデザイナーが紹介され、新たな「VALENTINO」ブランドの展開を大きく取り上げている(甲第25号証、甲第26号証)。
現在においても、「VALENTINO」ブランドの商品は多くの需要者層に支持されており、例えば、「若マダム・ブランドBEST2」のように、「VALENTINO」商品について特集が組まれており(甲第27号証)、また、日本ばかりでなく世界中において、ファッションリーダーとして支持されている(甲第28号証ないし甲第30号証)。
そして、請求人の業務に係るブランド「VALENTINO」は、ファッション業界ビジネスに関する研究書において、商社が展開する海外ブランドの筆頭例「ヴァレンティノ」として取り上げられるまでに、「海外ブランド」として代表的な存在として認知されていることが認められる(甲第31号証)。
かかる事実から、引用商標は、請求人の業務に係る商品を示すものとして、本件商標の出願前から現在に至るまで、継続して、需要者・取引者の間において、広く親しまれていることが明らかである。
(4)裁判所における周知・著名性の認定
請求人の業務に係る商品を示すものとして、引用商標が周知・著名であることは、東京高等裁判所において、多くの証拠資料によって、認められているところであり、例えば、平成14年(行ケ)第201号(平成15年9月30日判決言渡:甲第32号証)、平成14年(行ケ)第354号(平成15年9月30日判決言渡:甲第33号証)、平成14年(行ケ)第370号(平成15年9月29日判決言渡:甲第34号証)、平成14年(行ケ)第402号(平成15年9月29日判決言渡:甲第35号証)、平成14年(行ケ)第405号(平成15年6月19日判決言渡:甲第36号証)、平成14年(行ケ)第421号(平成15年6月19日判決言渡:甲第37号証)、平成16(行ケ)第335号(平成17年2月24日判決言渡:甲第38号証)、平成17年(行ケ)第10270号(平成17年9月28日判決言渡:甲第39号証)及び平成17年(行ケ)第10491号(平成17年12月20日:甲第40号証)のように、引用商標「VALENTINO」は、請求人に係る業務を示す商標として、少なくとも、平成17年(2005)年12月20日当時において、周知・著名であると東京高等裁判所において認定されており、また、それ以降において、特段、周知・著名性が消失するような事情も無い。
(5)小括
前記のように、「VALENTINO」の欧文字からなるファッションブランドは、婦人服、紳士服等のファッション関連分野の商品に使用され、本件商標の出願前から現在に至るまで、請求人に係る業務を示す商標として、取引者、需要者間に広く知られているものである。
3 出所の混同について
(1)商品の関連性
商標権者である被請求人は、使用商標を、ファッション関連の商品であって、被服と密接に関係する「腕時計」に使用していることが認められ、請求人の周知・著名商標である引用商標に係る商品と類似するものである。
(2)取引の実情
被請求人と請求人に係る商品の主たる需要者層は、共に、ファッションに意識の高い需要者層であることから、需要者は競業し、かつ、その市場は共通するものである。
さらに、使用商標は、いずれも請求人の著名な引用商標を容易に連想させる態様である。
したがって、かかる態様の使用商標に接した需要者は、その態様から、著名な引用商標に係る商品であるかのように認識し、その商品の出所について混同することのみならず、その商品の品質について誤認を生ずるものである。
4 本件商標と使用商標の類似性について
本件商標は、「ペレバレンティノ」の文字と「PER VALENTINO」の文字を二段に併記してなり、一方、使用商標は、「PER VALENTINO」の文字のみからなるものであり、さらに、「PER」と「VALENTINO」の間には、スペースを設けた態様である。
また、「PER」との綴りによって「ペレ」と発音することは、日本における英語教育においては親しまれていないものであり、自然な称呼「パー」が生じ、本件商標の構成要素「PER」より、「ペレ」との特異な称呼が生じるものとは到底考えられない。
さらに、イタリア語において、かかる綴りの語を「ペレ」と発音しないことが認められ、かつ、英語における「FOR」を意味する単語である(甲第45号証)。かかる事情から、イタリア語に親しんでいる需要者層が使用商標に接した際には、「FOR VALENTINO」(「バレンチノの為に」)との観念を一義的に想起することから、一層、引用商標を想起させるものである。したがって、本件商標と使用商標とは同一ではない。
一方、使用商標は、「PER VALENTINO」の文字からなる、或いは「PER VALENTINO」の文字が要部と考えられる態様からなることから、本件商標の構成要素と外観が近似するものであるため、使用商標は、本件商標と類似するものである。
5 故意について
(1)商品の共通性
商標権者である被請求人は、使用商標を自己が販売する「腕時計」に使用しているところ、「腕時計」は、引用商標が著名であるところのファッション関連商品と共通するものである。
(2)著名性の知悉
前記のとおり、ファッション業界において、引用商標が周知・著名であって、新聞・雑誌などで数多く取り上げられたことから、被請求人は、本件商標の出願前及び使用商標の使用開始当初より、著名な引用商標を知悉していたものといえる。
(3)異議申立における取消決定
被請求人は、自己の所有であって、使用商標と類似する商標「PERVALENTINO」(登録第4155178号商標 指定商品第34類、及び登録第4185862号商標 指定商品第3類)について、その異議決定(平成10年異議第91925号及び平成10年異議第92302号)において、請求人の引用商標が周知・著名であることが認定された上で、被請求人の当該商標は取消しを受けている(甲第47号証、甲第48号証)。
すなわち、少なくとも、平成17年(2005年)9月27日の異議決定時において、被請求人は、使用商標と類似する商標「PERVALENTINO」を、「喫煙用具(貴金属製のものを除く。)、マッチ」及び「せっけん類,香料類,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,歯磨き,靴クリーム,靴墨」について使用した場合には、需要者に出所の混同を招来させることを認識していたことが明らかである。
そして、「腕時計」が、被服と同様に身に付けるものであって、いわゆるファッションに関連する商品であることから、前記指定商品よりも一層、需要者及び取引者が重複することについて、被請求人は認識していることが明らかである。
(4)小括
前記のとおり、(ア)商品が共通すること、(イ)引用商標が著名であること、(ウ)使用商標と近似する自己の複数の登録商標に対して取消決定がなされていることを考慮すれば、被請求人は、自己の使用商標をファッションに関連する商品に使用した場合には、出所の混同を招来させる蓋然性を十分に認識していたことが推認される。
6 結び
以上のとおり、商標権者である被請求人の使用商標は、本件商標と類似する商標の使用であって、使用商標を本件商標に係る指定商品に使用した場合、あたかも請求人の業務に係る商品であるかのように混同を生ずるものであるから、本件商標の登録は、商標法第51条の規定により、取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
〈答弁の理由〉
1 本件商標と使用商標について
商標権者である被請求人の使用商標は、登録商標を指定商品に使用するものである。
請求人は、被請求人が商品「腕時計」に使用する使用商標について「登録商標ではなく登録商標に類似する商標の使用である」として甲第3号証を纏めとし、甲第7号証までを対比提示する。
ところで、商標法のそれぞれの条項において表現される「登録商標」の概念はその語が用いられた条項の解釈により決せられるものであり、商標法第51条第1項における「登録商標」も同条制定の趣旨、商標法全体の理念から判断されるものである。本条と同様の規定である商標法第50条第1項において「登録商標」は、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」とされている。
商標法第51条第1項は同第50条第1項のようには規定されていないが、第50条において「登録商標」の使用と認められている使用情況は第51条の「登録商標」の使用と認められるべきものとの判断が妥当といえる。
しかして、本件商標の使用状態を以下に考察する。
(1)本件商標は二段書きであり、上段に片仮名「ペレバレンティノ」、下段には欧文字「PER VALENTINO」が書されてなり、書体としては全文字ゴシック体で表現されている。
本件商標の称呼は片仮名部分から「ペレバレンティノ」の、また、欧文字部分からも「ペレバレンティノ」の称呼が生じるものといえる。
(2)請求人は「VALENTINO」ブランドはイタリアのファッションデザイナー「Valentino Garavani」と述べているように、一般取引者は本件商標のラストネーム「VALENTINO」部分をもってイタリアにおいて良く使われる人の名前であることを理解する。そして、本件商標の「PER」部分をファーストネーム、「VALENTINO」部分をラストネームと判断する。次いで「PER」部分をイタリア語としてどのように発音するかを考え、「ペレ」、「ペル」、「パー」などの称呼をもって本件商標の全体称呼をするわけである。
基本的に「PER」部分を英語読みで「パー」と称呼するのは日本語における「湯桶読み」であって自然な称呼とはいえない。特段の理由が無い限り日本語なら「日本語読み」、英語なら「英語読み」、イタリア語なら「イタリア語読み」をもって商標の称呼を判断するのが妥当な判断といえるものである。
(3)ちなみに、イタリア語において「PER」部分の「P」は「唇を閉じ口の中の息を吐き出すとPの音となる。「E」は「e」と発音され日本語の「エ」と近似する音となる。「R」は「elle」と、舌を震わせて、巻き舌で発音される音で日本語的には「エッルエ」と聴取される。「PER」は全体として「ペッルエ」と言う感じに発音される。最終音「e/エ」は閉母音で聞き取りにくくなるので「ペル」と聞こえたり、一寸最終音を強く発すれば「ペレ」と聞こえたりするわけで、「PER」部分を「ペレ」或いは「ペル」と発音または表記しても決してあやまりではない。
日本語的発音では「ペレ」或いは「ペル」のように異なって表記されても「PER」であり、他の語意になったり、他の観念を想起させたりするものでもない(乙第2号証、乙第3号証)。
(4)「PER」部分を英語の「FOR」と同義になぞらえて「FOR VALENTINO(バレンチノ為に)」の観念を想起する等の判断は牽強付会に過ぎる論である。
一般的なイタリア語辞書には「FOR」の語は存しないが、もし「FOR VALENTINO」を称呼するとすればその称呼は「フォッレバレンティノ」か「フォッルバレンティノ」などと称呼されるものであって、本件事案とは全く論を異にするものである。イタリア語に通じている者であれば「ファーストネーム/ペレ」、「ラストネーム/バレンティノ」と容易に理解するとの判断が妥当だし、「PER」部分の意味を理解できない日本人においても容易に人名であると理解する、との判断が妥当といえるものである。
(5)前記のとおり、本件商標からは語呂良く「ペレバレンティノ」、「ペルバレンティノ」などの自然な称呼が生じるものといえ、その観念は、人名たる「ペレバレンティノさん」、「ペルバレンティノさん」ということができる。
前記の「ペレ」、「ペル」などの称呼の相違は「Valentino」を「バレンティノ」と呼ぶか「バレンチノ」、「ヴァレンティノ」と呼ぶかの相違と同様であり、更にいえば「バレンチノ」ではなくて「バレンティーノ」であるともいわれる。
「ビルディング」を「ビルヂング」と呼んだり、また、それぞれの発音に聞こえたりする程度の差異であって、前記「ペレ」、「ペル」の相違例は言語的には同一の範囲に属する相違である、との判断が妥当といえるものである。
(6)しかして、本件商標が例え「ペレバレンティノ/PER VALENTINO」のように二段書きの商標のうち欧文字部分「PER VALENTINO」のみを指定商品に使用したものであっても、その使用は登録商標の類似の商標を使用したとするものではなく、「登録商標の使用」であるとの判断が妥当なものであるから、請求人が片仮名「バレンティノ」との表示が無い、から登録商標とは異なる態様で用いられている、つまり本件商標の類似商標の使用であるとの主張は当を得たものではない。
(7)ちなみに、特許庁における二段書き商標のうち欧文字部分のみの使用について登録商標の使用であると判断された事例を述べれば、取消2006-31086号事件において「使用商標『GAM』の称呼は、これより生ずる『ガム』若しくは『ギャム』と認められる。そうすると、使用商標は本件商標と『ガム』若しくは『ギャム』の称呼を同じくするばかりでなく、『GAM』の有する観念も同じくする商標というべきである。したがって、使用商標は、本件商標と社会観念上同一の商標と認められる」(乙第5号証)。及び取消2005-30702号事件において「本件商標は『Pageware』の欧文字と『ページウェア』の片仮名とを二段に横書きしてなるものであるのに対して、前記の使用商標は『Pageware』と表してなるものであり、本件商標の構成文字中の欧文字部分に該当するものであって、本件商標と称呼『ページウェア』を同じにし、観念の変動を伴うものではない。したがって、前記使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標。」と判断している(乙第6号証)。
したがって、被請求人の使用商標も同様に判断されるべきものである。
(8)請求人は、被請求人が使用する「PER VALENTINO」について「PER」と「VALENTINO」の文字間隔が登録商標に比較し広く設けられている、と主張するが、むしろ狭いものもある。
乙第4号証は、請求人の提出した甲第3号証に基づいて「PER」と「VALENTINO」の文字間隔を判断する資料であるが、登録商標における「PER」と「VALENTINO」の間隔と、使用商標1から4のものに比較するために線を入れてみたところの間隔に於いて、使用商標2は登録商標とほぼ同じ間隔で、使用商標1及び4は登録商標の間隔よりむしろ狭いといえる。使用商標4は書体の関係で「V」の字が細い為に登録商標の間隔に比較し割合としては広いといえる。
また、請求人は「『VALENTINO』の文字が独立して容易に視認し得る態様に変更されている。」と主張するが、「PER」と「VALENTINO」の間隔が特段広いわけではなく、別段「VALENTINO」部分を大きく、或いはその部分だけ書体を変更して表記したものでもなく、同書・同大に表記した文字列によって構成されているから、一般取引者、需要者は一連不可分な、人の名前からなる商標であると容易に視認することができる、との判断が妥当といえるものである。
2 出所の混同並びに故意について
商標権者である被請求人は、本件商標を正当に使用しているものであり、前記のとおり、本件商標と書体などにおいて異なるものを使用しているが、商標法第51条第1項でいう「登録商標」と同一と判断される商標を指定商品「腕時計」に使用しているものであるから、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるような故意はない。
(1)請求人は「『VALENTINO』の文字が婦人服、紳士服などファッション関連分野の商品に使用され、請求人に係る業務を示す商標として取引者、需要者間に広く知られている」と述べているが、請求人において商品「時計」を販売している事実を証するものは何もない。
請求人は「腕時計はファッションと密接に関連する商品」と述べているが、身につけ身を飾る「衣服」と、正確に「時間」を計る事を主たる機能とする精密機械「腕時計」は、商品の原材料、製造手段、販売流通過程など全く分野を異にするものであり、かつ、請求人の「腕時計」についての販売情況が何も証されておらず不明で、さらには本件商標と引用商標とは非類似の商標であることを勘案すれば本件商標の使用が引用商標と混同を生ずることはあり得ない。
(2)そして、登録第4187349号商標「Valentino」(甲第44号証)は、指定商品に「時計」が指定されているが、本件商標と同時期に登録されて、共に非類似として現在まで両権利は併存している。
10年余り、商品「時計」について、請求人(販売品の実体は不明であるが)、被請求人の商品を表示するものとして、それぞれの権利者の商品として截然と区別され混同することなく共に存在してきた事実を考慮するならば、請求人の使用する「VALENTINO」、「バレンティノ」などの商標と被請求人の使用する「PER VALENTINO」商標とは出所を混同するものではない、との判断が妥当といえる。
請求人の「時計」に付いての商標と、被請求人の「時計」に付いての商標が前記の情況で共存しているのであるから、被請求人は引用商標が被請求人の商標と混同する存在とは全く認識できるものではなく、混同について全く故意は無いといえる。
3 結び
以上のとおり、商標権者である被請求人が指定商品中「腕時計」に「PER VALENTINO」商標を使用することは、被請求人が所有する登録商標を指定商品に使用する行為であり、被請求人は故意に指定商品に登録商標に類似する商標を使用するものではないから、被請求人の商標使用行為を商標法第51条の規定により、取り消されるべきものとする本件審判請求は当を得たものではない。

第4 当審の判断
1 本件審判について
本件審判は、商標法第51条の規定に基づき商標登録の取消を求める審判であるところ、同条は、商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用をして一般公衆を害したような場合についての制裁規定である。すなわち、商標権者は指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有するが、指定商品又は指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用は、法律上の権利としては認められていない。ただ、他の権利と抵触しない限り事実上の使用ができるだけである。そこで、このような商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は商品若しくは役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものの使用を故意にしたとき、つまり、誤認、混同を生ずることの認識があったときには、請求により、その商標登録を取り消すこととしたのである。これは商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨である(特許庁編「工業所有権法逐条解説」第18版参照)。
かかる観点から、以下、本件について検討する。
2 被請求人の使用に係る「使用商標」について
請求人は、被請求人が商品「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」について以下の使用商標1ないし4を使用していると認められる(甲第3号証ないし甲第7号証)。
なお、使用商標の開始時期を示す証拠はないが、被請求人は、使用商標を10年余り使用している旨述べていることから、平成11年ころから使用を開始したものと推認される。
(1)使用商標1、2
使用商標1は、別掲(2)の「(2)使用商標1」、(3)及び(5)のとおり、時計の文字盤上の上部に配されているものであり、使用商標2は、別掲(2)の「(3)使用商標2」及び(4)のとおり、時計の裏側中央部に刻印されてなるものであって、それぞれ、書体は異なるとしても「PER」と「VALENTINO」とから構成され、かつ、「PER」と「VALENTINO」との間には1文字分程度の間隔が設けられている。
(2)使用商標3
使用商標3は、別掲(2)の「(4)使用商標3」及び(5)のとおり、「腕時計」と同梱されている当該商品に係る宝石鑑別書の表紙の下部に「GEM PER VALENTINO JAPAN」の表示されたものであり、各文字間には1文字分程度の間隔が設けられている。
(3)使用商標4
使用商標4は、別掲(2)の「(5)使用商標4」及び(6)のとおり、同梱されている当該商品の使用方法の記載や販売者及び販売日を記入する欄が設けられている保証書の表面中央に「PER VALENTINO」が表示されたものであり、「PER」と「VALENTINO」との間には1文字分程度の間隔が設けられている。
3 「使用商標」と本件商標との類否について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、片仮名「ペレバレンティノ」と欧文字「PER VALENTINO」とを上下二段に横書きしてなるものであるところ、その構成中、片仮名部分からは「ペレバレンティノ」の称呼を生じ、欧文字部分からは、イタリア語読みに倣って「PER」の文字部分を「ペル」と発音されることから、全体として「ペルバレンティノ」と称呼される場合と、英語読みに倣って「PER」の文字部分を「パー」と発音されることから、全体として「パーバレンティノ」の称呼が生じるものといえる。
この点に関して被請求人は、「PER」部分を「ペレ」或いは「ペル」と発音または表記しても決してあやまりではない旨述べている。
しかしながら、被請求人提出に係る「伊和中辞典」(小学館発行:乙第2号証)の「II.発音の要領」における「e」、「p」、「r」の項に記載の解説によれば、「per」の文字を明確に「ペレ」と発音することは認められないが、同「デイリー日伊英・伊日英辞典」(三省堂発行:乙第3号証)の「per/ペル/[前]([英]for;through)」の見出し語からは、これを「ペル」と発音されることが認められる。また、「PER」の文字が欧米人のファーストネームを表すものと理解させるような点、その他これらの被請求人に係る主張を客観的に裏付けるような証拠は見出せない。
また、「PER VALENTINO」の文字全体から、人名を理解させることや、特定の意味合いを有するものとして我が国で親しまれているような実情もないから、全体としては特定の観念を生じることのない造語というのが相当である。
(2)本件商標と使用商標の類否について
本件商標と使用商標1、2及び4とは、その構成中の欧文字「PER VALENTINO」の文字を共通にするものであるから、これより共通の「ペルバレンチノ」及び「パーバレンチノ」の称呼を生じ、共に特定の観念を生ずるものではない。
しかしながら、使用商標1、2及び4の構成中には、「ペレバレンティノ」の文字を有していないものである。
そうとすれば、その使用商標の使用態様は、一連一体に表した「ペレバレンティノ」の片仮名部分を欠く「PER VALENTINO」であるから、全体の外観構成を異にする。そして、これより生ずる称呼は「ペルバレンティノ」及び「パーバレンチノ」であって、「ペレバレンティノ」の称呼を生ずるものではない。
してみれば、これらの使用商標から生ずる称呼「ペルバレンティノ」と「ペレバレンティノ」の称呼が類似するとしても、使用商標は、本件商標と同一の称呼を生じる商標といえないし、観念においては比較できないものであるから、使用商標は、本件商標と類似する商標であって、本件商標の使用と認めることはできない。
また、使用商標3は、「GEM PER VALENTINO JAPAN」の文字からなり、それぞれの文字間には1文字分程度の間隔を有するところ、その構成中の「GEM」の文字が「宝石」を意味する英語であって、商品の品質を表したものと認識され、「JAPAN」の文字が係る構成にあっては日本支店を表すための語として認識されるから、これを「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」に使用された場合、その構成中の「PER VALENTINO」の文字部分が自他商品の識別標識として機能を果たすものと認められる。
してみれば、本件商標と使用商標3とは、上記と同様に、その構成中の欧文字「PER VALENTINO」の文字を有するものであるから、これより共通の「ペルバレンチノ」及び「パーバレンチノ」の称呼を生じ、共に特定の観念を生ずるものではない。
しかしながら、使用商標3の構成中には、「GEM」及び「JAPAN」の文字を有するが「ペレバレンティノ」の文字を有さないから、両者は、類似の商標というべきであって、本件商標の使用と認めることはできない。
なお、被請求人は、商標法第50条において「登録商標」の使用と認められている使用情況は同第51条の「登録商標」の使用と認められるべきものとの判断が妥当といえる旨述べているが、工業所有権逐条解説〔第16版〕において「…なお、このカッコ書きは、本条における『登録商標』についての解釈規定であり、他の規定における『登録商標』についてまで一律にその範囲を拡大させる一般的規定でない。…」との趣旨説明がされているから、この点に係る被請求人主張は、直ちに採用できない。
4 引用商標及びその周知性等について
(1)「FASHION 20世紀のファッションデザイナー 1900-1999」クーネマン出版社発行(甲第10号証)、「ファッション・ブランド・ベスト 101」2001年11月25日 新書館発行(甲第11号証)、「新ファッションビジネス基礎用語辞典」2001年4月1日増補改訂第7版1刷 チャネラー発行(甲第12号証)、「世界のスターデザイナー43」2005年12月15日未来社発行(甲第13号証)、「ヴォーグ・ファッション100年史」2009年9月1日ブルース・インターアクションズ発行(甲第14号証)の書籍などによれば、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、本件商標の出願時には既に、我が国のみならず、世界的に著名なデザイナーであったものと認められる。
(2)そして、「MODEetMODE」(モードェモード社発行)のNo.286 平成6年4月1日発行、No.297 平成9年1月1日発行、No.342 平成20年4月1日発行、No.343 平成20年6月1日発行、No.344 平成20年10月1日発行、及びNo.349 2010年1月(冬号)(甲第15号証、甲第17号証、甲第24号証ないし甲第26号証、甲第30号証)、「ヴァンサンカン25ans」((アシェット)婦人画報社発行)の通巻207号1997年1月1日発行、通巻210号1997年4月1日発行、通巻214号1997年8月1日発行、通巻216号1997年10月1日発行、通巻223号1998年4月1日発行、通巻360号2009年9月1日発行(甲第16号証、甲第19号証ないし甲第21号証、甲第23号証、甲第27号証)、「家庭画報」(世界文化社発行)1997年4月号(甲第18号証)、「ELLE(エルジャポン)」(アシェット婦人画報社発行)2010年3月号(甲第29号証)、などの雑誌類において、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)の略称又はそのデザインに係る婦人・紳士物の衣料品、バック、靴、ネクタイなどの商品群に使用されるブランドを表すものとして、「VALENTINO」、「Valentino」、「ヴァレンティノ」、「VALENTINO COUTURE」、「ヴァレンティノクチュール」などの表示で用いられていることが認められる。
したがって、本件商標が登録出願された平成10年5月1日当時はもとより、被請求人による使用商標の使用が行われた時点においても、引用商標は、我が国の取引者、需要者等の間に広く認識され、その状態が現在においても継続しているものと認められる。
5 使用商標と引用商標との類似性の程度
前記2のとおり、使用商標1、2及び4は「PER VALENTINO」の欧文字を、また、使用商標は3は「GEM PER VALENTIN
O JAPAN」の欧文字を表してなるところ、使用商標の構成中の「PER」と「VALENTINO」の文字間には、1文字程度のスペースを介してなり、外観上容易に、分離して看取される態様であり、全体としては特定の観念を表すことのない造語からなることからすると、使用商標の「PER VALENTINO」の文字を常に一体不可分のものとして認識するとはいえず、本件商標と引用商標とは「VALENTINO」の文字部分を共通にするものである。
6 商品間における関連性及び需要者
前記のとおり、引用商標は、婦人服、紳士服、靴、バックなどに使用し、本件商標が登録出願された平成10年5月1日当時はもとより、被請求人による使用商標の使用が行われた時点においても、我が国の取引者、需要者等の間に広く認識されていたものであるところ、使用商標が表示された商品「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」は、「時間」を計る事を主たる機能とするばかりでなく、デザインやファッション性に加えて、高級感を持たせた商品といえるものであって、婦人服、紳士服、靴、バックなどの商品とはコーディネートされて用いられることもあり、いずれもファッション関連の商品として密接な関連性を有しているといえる。
そして、その商品の需要者は、特別な専門的知識経験を有しない一般消費者も含まれており、まして、著名なブランド名を使用した場合においては、需要者の注意を特に強く惹くものであり、その商品の出所について誤認する可能性の高い関係にある。また、それらの商品における需要者を共通にすることが決して少なくない。
7 出所混同を生ずるおそれについて
前記のとおり、引用商標の周知著名性の高さ、使用商標と引用商標との類似性の程度、使用商品の関連性の程度、需要者の共通性等を総合してみると、使用商標を商標権者である被請求人が、その商品「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」について使用するときは、当該商品があたかも同氏、或いは同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如くに誤認し、その出所について混同する蓋然性が極めて高いと判断できるものである。
したがって、使用商標を使用した行為は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした行為に該当するといわなければならない。
8 故意について
上記4のとおり、引用商標は、婦人服、紳士服、靴、バックなどに使用し、本件商標の登録出願前より、我が国の取引者、需要者等の間に広く認識されていたものである。そして、被請求人は、ファッション関連の商品の取引者であって、引用商標を当然知り得たはずである。
加えて、商標「PERVALENTINO」が、指定商品を第34類「喫煙用具」などとする登録第4155178号商標、第3類「せっけん類,香料類,化粧品」などとする登録第4185862号商標に係る登録異議の申立て事件(平成10年異議第91925号、同年異議第92302号)の商標権者の立場にあった者であって、その異議決定書において、「…以上を総合すると、本件商標は、これに接する需要者はその構成中の著名な「VALENTINO」の文字部分に強く印象づけられるというのが相当であって、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標といわざるを得ず、…」と認定されている異議決定の判断内容を通知されているものである(甲第47号証、甲第48号証)。
してみれば、被請求人は、当該異議決定の存在を認識していたもというべきである。そして、使用商標に係る商品「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」と、共にファッション関連の商品である旨認定された当該第34類や第3類に属する指定商品とは、その商品を異にするとはいえ、「PER」と「VALENTINO」の間にスペースを介してなる使用商標は、当該異議申立てに係る「PERVALENTINO」商標よりも、さらに「VALENTINO」の文字部分が需要者などの注意を強く惹く態様になっているものである。
そうすると、商標権者である被請求人は、本件商標と引用商標との混同のおそれを十分に把握できる状況にあったにもかかわらず、あえて使用商標を「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」に使用したものと推認できるものであり、被請求人には、その使用に際して、引用商標に係る商品と混同を生じさせることの認識があったといわなければならない。
なお、商標法第51条第1項にいう「故意」は、当該商標の使用にあたり、その使用の結果、他人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していたことをもって足り、必ずしも他人の登録商標や周知商標に近似させたいとの意図をもって使用したことまで必要とするものではないと解される(最高栽昭和56年2月24日第3小法廷判決 昭和55年(行ツ)第139号参照)と判示しているところである。
したがって、本件商標の使用は、引用商標に係る商品と混同を生じさせるおそれを認識していたものであって、「故意」にされたものと判断するのが相当である。
9 その他の被請求人の主張について
(1)被請求人は「身につけ身を飾る『衣服』と、正確に『時間』を計る事を主たる機能とする精密機械『腕時計』は、商品の原材料、製造手段、販売流通過程など全く分野を異にするものである。また、請求人の『腕時計』についての販売情況が何も証されておらず不明で、さらには、本件商標と引用商標とは非類似の商標であることを勘案すれば本件商標の使用が引用商標と混同を生ずることはあり得ない。」旨述べている。
しかしながら、甲各号証の雑誌類において、衣料品と共に、商品の原材料、製造手段が異なる「バック、靴」などのファッションに係る商品が、引用商標の下で紹介されていることが認められ、また、前出「ファッション・ブランド・ベスト 101」(甲第11号証)の「創業年順目次」に記載されたメーカーの中、いわゆるデザイナーズブランドが取り扱う商品は、必ずしも商品の原材料や製造手段などによって、その販売商品が限定されるものでもなく、ファッション関連商品ほかの分野に係る商品をも取り扱っており、例えば、衣料品と共に腕時計を取り扱うメーカーとしては、「グッチ」、「エルメス」、「カルヴァンクライン」、「セリーヌ」、「シャネル」などが確認されるところである。
してみれば、前記のとおり、使用商標が表示された商品「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」は、ファッション関連の商品として密接な関連性を有しているばかりでなく、いわゆるデザイナーズブランドの下で、衣料品と共に腕時計を取り扱うメーカーが存するものであり、また、その商品の需要者は、特別な専門的知識経験を有しない一般消費者も含まれており、使用商標と引用商標の類似性は高いものであるから、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)のデザインに係る商品群に使用されて著名性を有した引用商標と間では、ファッション性を有する腕時計を取り扱っているものと誤信される場合があるというべきである。
(2)被請求人は「…10年余り、商品『時計』について、請求人、被請求人の商品を表示するものとして、それぞれの権利者の商品として截然と区別され混同することなく共に存在してきた事実を考慮するならば、…引用商標と被請求人の使用する『PER VALENTINO』商標とは出所を混同するものではない、との判断が妥当といえる。」旨述べている。
しかしながら、本件商標と登録第4187349号商標(甲第44号証)の商標権が併存していたとしても、それによって「ドレス・ウォッチ(宝飾時計)」における使用商標による出所混同のおそれが否定されるものでもない。
その他、当該使用にあって、区別され出所混同することなく使用されている事実などを客観的に示す証拠の提出もないから、かかる主張は採用できない。
(3)被請求人は「…請求人の『時計』についての商標と、被請求人の『時
計』に付いての商標が前記の情況で共存しているのであるから、被請求人は引用商標が被請求人の商標と混同する存在とは全く認識できるものではなく、混同について全く故意は無いといえる。」旨述べている。
しかしながら、前記のとおり、引用商標に係る商品と混同を生じさせることを認識していたことを推認させるものであり、商標権者である被請求人による使用商標の使用は「故意」と判断されるものであるから、被請求人の主張は、採用することができない。
10 結び
以上のとおり、本件商標の商標権者である被請求人は、故意に、本件商標と類似する商標をその指定商品について使用し、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものであるから、商標法第51条第1項の規定に基づき、本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)甲第3号証

(色彩については、原本参照)

(3)甲第4号証

(色彩については、原本参照)

(4)甲第5号証

(色彩については、原本参照)

(5)甲第6号証

(色彩については、原本参照)

(6)甲第7号証

(7)甲第8号証

(色彩については、原本参照)

審理終結日 2010-11-10 
結審通知日 2010-11-12 
審決日 2010-11-25 
出願番号 商願平10-37143 
審決分類 T 1 31・ 3- Z (Z14)
最終処分 成立 
前審関与審査官 深沢 美沙子 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 井出 英一郎
内山 進
登録日 1999-07-30 
登録番号 商標登録第4299568号(T4299568) 
商標の称呼 ペレバレンティノ、ペルパレンティノ、パーバレンティノ、ペルバレンチノ 
代理人 石原 庸男 
代理人 杉村 憲司 
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