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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z051012
管理番号 1228349 
審判番号 取消2009-301247 
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-11-11 
確定日 2010-11-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4596070号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4596070号商標(以下「本件商標」という。)は、「HeartWorks」の欧文字と「ハートワークス」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成12年10月19日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用漂白剤,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用腕環,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,人工受精用精液,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,ばんそうこう,包帯,包帯液,防虫紙,胸当てパッド」、第8類「手動工具,手動利器,くわ,鋤,レーキ・組ひも機及び靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。),ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット,かつお節削り器,角砂糖挟み,缶切,くるみ割り器(貴金属製のものを除く。),スプーン,フォーク,アイロン(電気式のものを除く。),糸通し器,チャコ削り器,水中ナイフ,水中ナイフ保持具,ピッケル,五徳,殺虫剤用噴霧器(手持ち工具に当たるものに限る。),十能,パレットナイフ,火消しつぼ,火ばし,ピンセット」、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,レコード,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,火災報知機,ガス漏れ警報器,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,消防車,消防艇,スプリンクラー消火装置,盗難警報器,保安用ヘルメット,自動車用シガーライター,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,計算尺,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,潜水用機械器具,レギュレーター,アーク溶接機,家庭用テレビゲームおもちゃ,金属溶断機,検卵器,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置,メトロノーム」、第10類「医療用機械器具,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓,しびん,病人用便器,耳かき」、第11類「あんどん,ガスランプ,石油ランプ,ちょうちん,ほや,工業用炉,原子炉,火鉢類,ボイラー,ガス湯沸かし器,調理台,流し台,加熱器,業務用揚物器,業務用食器乾燥機,業務用炊飯器,業務用煮炊釜,業務用焼物器,業務用レンジ,冷凍機械器具,アイスボックス,氷冷蔵庫,飼料乾燥装置,牛乳殺菌機,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,暖冷房装置,便所ユニット,浴室ユニット,美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。),太陽熱利用温水器,浄水装置,浴槽類,家庭用浄水器,水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓,汚水浄化槽,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽,ごみ焼却炉,し尿処理槽,洗浄機能付き便座,洗面所用消毒剤ディスペンサー,便器,和式便器用いす,あんか,かいろ,かいろ灰,化学物質を充てんした保温保冷具,湯たんぽ」、第12類「船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車並びにその部品及び附属品,自転車並びにその部品及び附属品,乳母車,車いす,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,索引車,陸上の乗物用の機械要素,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片,乗物用盗難警報機,落下傘」、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」、第20類「家具,貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。),プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。),カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。),木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,葬祭用具,荷役用パレット(金属製のものを除く。),養蜂用巣箱,愛玩動物用ベッド,アドバルーン,犬小屋,うちわ,買物かご,額縁,家庭用水槽(金属製又は石製のものを除く。),きゃたつ及びはしご(金属製のものを除く。),工具箱(金属製のものを除く。),小鳥用巣箱,ししゅう用枠,植物の茎支持具,食品見本模型,人工池,すだれ,ストロー,スリーピングバッグ,せんす,装飾用ビーズカーテン,タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),つい立て,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),旗ざお,ハンガーボード,びょうぶ,ベンチ,帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),盆(金属製のものを除く。),マネキン人形,麦わらさなだ,木製又はプラスチック製の立て看板,郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),揺りかご,幼児用歩行器,洋服飾り型類,美容院用いす,理髪用いす,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻,あし,い,おにがや,きょう木,しだ,すげ,すさ,竹,竹皮,つる,とう,麦わら,木皮,わら,きば,鯨のひげ,甲殻,さんご,人工角,ぞうげ,角,歯,べっこう,骨,海泡石,こはく」、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,織物製テーブルナプキン,ふきん,織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,シャワーカーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製トイレットシートカバー,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,布製ラベル,ビリヤードクロス,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」及び第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として同14年8月16日に設定登録されたものであり、現に、有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成21年12月1日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、「第5類 医療用腕環,防虫紙」、「第10類 医療用機械器具」及び「第12類 車いす,落下傘」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上、日本国内において、被請求人、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求の趣旨に記載の指定商品について使用された事実がない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づいて、請求の趣旨に記載の指定商品について、その登録を取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、使用商標と本件商標とは社会通念上同一性を有する商標である旨主張しているが、乙各号証に表された標章は、本件商標とは同一ではなく、また、社会通念上同一のものとも認めることはできない。
被請求人は、「HeartWorks」がそれ自体で識別力を発揮する態様で表示されている旨主張しているが、乙第1号証ないし乙第7号証の5に示されるカタログ、取引書類において「介護用車いす」の識別標識として具体的関連性をもって表示されている表示は、「コンバー3αEL」、「コンバー2Aタイプ」、「コンバー2Bタイプ」、「コンバー3」等の商標である。
「HeartWorks」の文字が表示された乙各号証に含まれる証拠資料(写真、カタログ、納品書等)には、「HeartWorks」の文字が単独で認識される態様では表示されておらず、常に「TAKANO」の文字とともに全体としてまとまりのある態様で表示されている。この「TAKANO」の文字部分は、本件商標の指定商品との関係で商標構成中の付記的な部分ということはできない。
加えて、乙第3号証の5ないし13のカタログの表紙に記載の説明文において、「タカノハートワークス」が一連の言葉の如く用いられ、特に、乙第3号証の11ないし乙第3号証の13においては「TAKANO HEARTWORKS CATALOG」、「タカノ ハートワークス カタログ」の文字が同書同大で横一連に表されていることからも、被請求人の商標の使用態様において、「TAKANO」の文字を捨象し、「HeartWorks」(又は「HEARTWORKS」)の文字部分のみを独立した商標として認識することはむしろ不自然というべきである。
そして、「TAKANO」の文字と「HeartWorks」(又は「HEARTWORKS」)の文字を結合させた表示と本件商標とは、「TAKANO」の文字部分の有無という点で明らかな構成態様上の差異を有する別異の商標であり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできない。
(2)その他の主な問題点
ア 乙第3号証の5ないし11のカタログには、それぞれ「07.01Vol.8」、「07.05 Vol.9」、「07.06 Vol.10」、「07.10 Vol.11.01」、「08.04 Vol.12.02」、「08.08Vol.13」、「08.11 Vol.14」の表示があるものの、いずれも、当該各カタログに記載の車いすが販売等されたことを示す取引書類は提出されていない。取引書類(注文書、納品書等)として提出されている乙第7号証の1ないし5は、いずれも2009年に作成されたものである。
イ 被請求人は、本件商標の構成中の一部の文字である「HeartWorks」は、本件商標と社会通念上同一である旨主張し、その根拠として、「ハートワークス」と「HeartWorks」は、称呼、観念において同一である旨主張している。
しかし、「ハートワークス」と「HeartWorks」は、いずれも、結合語として辞書において定義されている事実は発見できず(甲第4号証ないし甲第6号証)、また、「ハートワークス」と「HeartWorks」の語が車いすの分野において称呼及び観念が一対一に結びつくものとする具体的根拠を示す事実、証拠も示されていない。
「ハートワークス」という語からは、様々な英単語の結合語が想起できる。例えば、「ハートワークス」に含まれる「ハート」の文字と同じ称呼が生じる英単語には、心、心臓等の意味を有する「Heart」の他、傷、けが等の意味を有する「Hurt」、牡鹿の意味を有する「Hart」、また、人名として用いられる「Harte、Hartt、Hirt」等の複数の語がある。また、「ハートワークス」に含まれる「ワークス」の文字と同じ称呼が生じる英単語には、仕事、作業、成果、道具、作品等の多数の意味を有する「Work」を複数形で表した「Works」の語の他、歩く、連れて歩く、押して行く等の意味を有する「Walk」を三人称単数形で表した「Walks」の語が少なくともある。
したがって、「ハートワークス」と「HeartWorks」とは、少なくとも観念において同一ということはできない。
ウ 登録商標に他の文字を結合させた商標の使用や登録商標の一部の文字部分の使用が登録商標と社会通念上同一の商標の使用と認められなかった審決例(甲第7号証ないし甲第9号証)を答弁に対する弁駁に有利に援用する。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標を本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品について使用したものということはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)を提出した。
被請求人は、本件審判請求の予告登録前3年以内に、本件商標をその請求に係る指定商品中の「車いす」及び「医療用機械器具」について使用している。
(1)本件商標の使用者
本件商標の使用者は、本件商標の権利者であるタカノ株式会社である。
(2)本件商標の使用事実
ア 乙各号証には、本件商標と同一性を有する「HeartWorks」がそれ自体で識別機能を発揮する態様で表示されている。
そして、本件商標は、欧文字と片仮名文字からなっているが、商標を使用する者の商慣習として欧文字と片仮名文字よりなる商標の一方のみを使用する場合が多いこと及び「ハートワークス」と「HeartWorks」は称呼、観念において同一であることから、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一性を有する商標である。
イ 乙各号証は、被請求人の製造販売に係る「介護用車いす」に関するものであって、この「介護用車いす」は、本件商標の指定商品である「車いす」に含まれるものであるから、本件商標は、指定商品「車いす」について使用するものである。
また、かかる「介護用車いす」が「ストレッチャー機能」をも有していることから(特に、乙第3号証の1ないし3のストレッチャー機能を説明している箇所参照)、当該商品は、本件商標の指定商品である第10類「医療用機械器具」にも該当するものである。
(3)以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の予告登録前3年以内に、請求に係る商品「車いす」及び「医療用機械器具」について使用されていたものであるから、本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
(1)乙各号証について
被請求人は、本件商標を取消請求に係る指定商品中の「介護用車いす」についても使用している旨主張して、乙第1号証ないし乙第7号証を提出しているので、以下、被請求人の提出に係る乙各号証について検討する。
乙第3号証の5ないし10は「タカノハートワークスダイジェストカクログ」であり、乙第3号証の11ないし13は「タカノハートワークスカクログ」であって、それぞれの表紙に、乙第3号証の5には、「タカノハートワークスの2007年最初のダイジェストカタログです。」、乙第3号証の6ないし8には、「タカノハートワークスの2007年版ダイジェストカタログです。」、乙第3号証の9及び10には、「タカノハートワークスの2008年版ダイジェストカタログです。」、乙第3号証の11には、「タカノハートワークスの2008年-2009年カタログです。」、乙第3号証の12には、「タカノハートワークスの2009年カタログです。」、乙第3号証の13には、「タカノハートワークスの2009年(丸の中に白抜きで16)カタログです。」の記載があり、それぞれの巻末には、乙第3号証の5には「07.01 Vol.8」、乙第3号証の6には「07.05 Vol.9」、乙第3号証の7には「07.06 Vol.10」、乙第3号証の8には「07.10 Vol.11.01」、乙第3号証の9には「08.04 Vol.12.02」、乙第3号証の10には「08.08 Vol.13」、乙第3号証の11には「08.11 Vol.14」、乙第3号証の12には「09.03 Vol.15」、乙第3号証の13には「09.09 Vol.16」なる表示が記載されており、それぞれのカタログ表紙部分の右肩には、別掲(1)のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標1」という。)が表示されており、下部には、別掲(2)のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標2」という。)が表示されている。そして、いずれのカタログにおいても、各種の介護用車いすが写真や説明とともに紹介されいる。
そして、乙第3号証の5の1頁の上には、介護用車いすの写真、その左上に「コンバー2」、「体重計付」の記載、2頁の上には、介護用車いすの写真、その左上に「コンバー3」、「高さ調整機能付」、下に「TB-071」の記載がある。
また、乙第3号証の6の1頁の下には、介護用車いすの写真、その左上に「コンバー3αS」、「サイドバー付」の記載がある。
さらに、乙第3号証の11の15頁の上には、介護用車いすの写真、その上に「コンバー2」、「体重計付」の記載、15頁の下には、介護用車いすの写真、その左上に「コンバー3」、「高さ調整機能付」、下に「TB-071」の記載がある。
さらにまた、乙第3号証の12の15頁の下には、介護用車いすの写真、その左上に「コンバー3αS」、「サイドバー付」の記載がある。
乙第6号証の1ないし3は、第33回(2006年)ないし第35回(2008年)の国際福祉機器展(H.C.R.)における福祉機器カタログ及び当該展示会における被請求人のブースの展開図(被請求人のブースの展開図は第33回と第34回のみ)であり、これらによれば、被請求人は、別掲(1)のとおりの構成からなる標章を掲げて国際福祉機器展に参加し、「コンバー2 体重計付」等の商品を出品していたことが認められる。
乙第7号証の1、2、4及び5は、「介護用車いす」に関する注文書及び納品書の写しであり、乙第7号証の1は、「コンバー2体重計付」について、2009年7月27日付けで福井医療株式会社が被請求人に宛てたFAXによる注文書及び同年8月28日付けで被請求人が福井医療株式会社に宛てた納品書(控)であり、乙第7号証の2は、「コンバー3α サイドバー付 3αs」について、2009年5月8日付けで共立医科器械株式会社が被請求人に宛てたFAXによる注文書及び同年5月13日付けで被請求人が共立医科器械株式会社に宛てた納品書(控)であり、乙第7号証の4は、「コンバー3 TB-071」について、2009年4月22日付けで松吉医科器械株式会社が被請求人に宛てたFAXによる注文書及び同年5月18日付けで被請求人が松吉医科器械株式会社に宛てた納品書(控)であり、乙第7号証の5は、「コンバー2体重計付」について、2009年4月17日付けで株式会社ムトウ九州SPDセンターが被請求人に宛てたFAXによる注文書及び同年5月25日付けで被請求人が株式会社ムトウ九州SPDセンターに宛てた納品書(控)であり、いずれにも、品名欄には上記各商品等の記載があり、数量や金額等が記載されており、納品書の被請求人の社名の左側には、使用商標1が表示されている。
(2)「介護用車いす」についての使用の事実について
上記において認定した事実によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成21年12月1日)前3年以内である2007年1月ないし2009年9月当時に発行されたものと認められる「タカノハートワークス(ダイジェスト)カクログ」(乙第3号証の5ないし13)において、その表紙等に使用商標1及び使用商標2を表示して、「コンバー2体重計付、コンバー3、コンバー3αサイドバー付」等々の「介護用車いす」を紹介していたことが認められる。
そして、乙第7号証の1、2、4及び5によれば、被請求人は、2009年8月28日当時に「コンバー2体重計付」を福井医療株式会社に対して、2009年5月13日当時に「コンバー3α サイドバー付」を共立医科器械株式会社に対して、2009年5月18日当時に「コンバー3」を松吉医科器械株式会社に対して、2009年5月25日当時に「コンバー2体重計付」を株式会社ムトウ九州SPDセンターに対して販売したものと認めることができ、かかる納品書に使用商標1が表示されていたことが認められる。
以上の乙各号証を総合してみれば、被請求人は、本件審判についての要証期間内に、カタログ(乙第3号証の5ないし13)に使用商標1及び使用商標2を表示して各種介護用車いすを掲載し、該カタログに掲載されている上記各介護用車いすを顧客に販売し、その販売に係る納品書に使用商標1を表示していたものということができる。そして、上記各「介護用車いす」は、取消請求に係る指定商品中の第12類「車いす」の範疇に属する商品である。
(3)使用に係る商標について
本件商標は、前記したとおり、「HeartWorks」の欧文字と「ハートワークス」の片仮名文字とを二段に横書きしてなるところ、乙第3号証の5ないし13の商品カタログ、乙第7号証の納品書には、使用商標1あるいは使用商標2が表示されている。
しかして、使用商標1は、図形と文字を上下段に配してなるところ、その文字部分は、「HeartWorks」の文字を大きく表し、その上に「TAKANO」の文字を小さく表した構成からなるものであり、また、使用商標2は、図形と文字を左右に配したものであり、その文字部分は、文字の太さと書体に差異のある「TAKANO」と「HeartWorks」の文字とをほゞ同じ大きさの文字をもって横一列に表した構成からなるものであり、「HeartWorks」の文字の右下には小さく「(○の中に)R」の記号が付されている。
上記した構成からみれば、本件商標と使用商標1及び使用商標2とは、同一の構成からなるものとはいえない。しかしながら、商標の使用は、商標を付する対象に応じて、適宜に変更を加えて使用されるのがむしろ通常であり、本件の場合も、図形部分と文字部分とは、その構成態様からみて不可分一体のものとはいえず、また、「TAKANO」の文字部分と「HeartWorks」の文字部分との関係をみても、「TAKANO」の文字部分は、被請求人の商号の略称と認められるものであって、「HeartWorks」の文字との語義上の一体性も認められないばかりでなく、各文字の構成態様も異にするものである。
そうとすれば、使用商標1及び使用商標2においては、「HeartWorks」の文字部分もそれ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得ると認められるものである。
そして、本件商標は、その構成中の欧文字部分からも「ハートワークス」の称呼を無理なく生ずるものであって、「ハートワークス」の片仮名文字は、該欧文字部分の読みを表したと認められるものであるから、「ハートワークス」の称呼のみ生ずるものである。
また、本件商標は、「HeartWorks」と「ハートワークス」の各文字が特定の意味合いを有しないことから造語と認められる。
しかして、本件商標は、「HeartWorks」と「ハートワークス」の文字を上下二段に書してなるところ、「HeartWorks」の欧文字が意味を有しない造語であったとしても、「ハートワークス」のみの称呼を生ずるものであることからすれば、「HeartWorks」の欧文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とみるのが自然である。
この点について、請求人は、「ハートワークス」に含まれる「ハート」の文字と同じ称呼が生じる英単語には、「Heart」の他にも、「傷、けが」等の意味を有する「Hurt」、「牡鹿」の意味を有する「Hart」、人名として用いられる「Harte、Hartt、Hirt」等の複数の語があり、また、「ワークス」の文字と同じ称呼が生じる英単語には、「Works」の他にも、「歩く、連れて歩く」等の意味を有する「Walk」の三人称単数形「Walks」の語があることから、「ハートワークス」と「HeartWorks」とは、少なくとも観念において同一ということはできない旨主張している。
確かに、「HeartWorks」と「ハートワークス」の各文字が特定の意味合いを有しない造語であるから、観念において比較できないものであり、観念において同一ということはできない。
しかしながら、「HeartWorks」の欧文字から「ハートワークス」の称呼を無理なく生ずるものであり、「HeartWorks」の欧文字が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすと認められる使用商標1及び使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標であることは、前記認定のとおりである。
(4)請求人のその他の主な反論について
ア 請求人は、カタログや取引書類において「介護用車いす」の識別標識として具体的関連性をもって表示されているのは、「コンバー3αEL」、「コンバー2Aタイプ」、「コンバー2Bタイプ」、「コンバー3」等の商標である旨主張している。
確かに、カタログや取引書類において、各介護用車いすについて「コンバー2」や「コンバー3」等の商標が表示されているが、これは、個別商品毎の商標というべきものであって、「HeartWorks」の文字を含む使用商標1及び使用商標2がカタログ等に掲載されている介護用車いすを含む各種商品についての代表的出所標識と認められるものである。
イ 請求人は、乙第3号証の5ないし11のカタログには「07.01Vol.8」、「07.05 Vol.9」、「07.06 Vol.10」、「07.10 Vol.11.01」、「08.04 Vol.12.02」、「08.08Vol.13」、「08.11 Vol.14」の表示があるものの、取引書類(乙第7号証の1ないし5)は2009年に作成されたものであって、当該各カタログに記載の車いすが販売されたことを示す取引書類は提出されていない旨主張している。
しかしながら、請求人が主張している乙第3号証の5ないし11に続く乙第3号証の12のカタログには、表紙に、「タカノハートワークスの2009年カタログです。」、巻末に「09.03 Vol.15」の表示があり、乙第3号証の13のカタログには、表紙に、「タカノハートワークスの2009年(丸の中に白抜きで16)カタログです。」、巻末に「09.09 Vol.16」の表示が記載されている。
そうとすれば、被請求人は、介護用車いすについてのカタログを継続して発行していたものと認められるところであり、新しいカタログが発行されるとそれまでのカタログが失効する旨の記載もされていないから、既発のカタログも必要に応じて取引に供されていたものとみるのが自然である。そして、取引書類(乙第7号証)に記載されている取引が行われた2009年4月17日ないし同年8月28日に近い日付で発行されていた乙第3号証の11(08.11 Vol.14)には、取引書類に記載されている「コンバー2体重計付」、「コンバー3 TB-071」の介護用車いすも掲載されており、また、乙第3号証の12(09.03 Vol.15)は、第15頁目の1頁しか抜粋されていないが、そこにも「コンバー3αS サイドバー付」の介護用車いすが掲載されている。
してみれば、被請求人は、乙第3号証の5ないし13のカタログを用いて、介護用車いすの販売をしていたものとみるのが相当である。
ウ 請求人は、登録商標に他の文字を結合させた商標や登録商標の一部の文字部分の使用が登録商標と社会通念上同一の商標の使用と認められなかった審決例(甲第7号証ないし甲第9号証)を挙げているが、それらの審決例で争われた商標は、本件商標とは構成を異にするものであり、その使用状態も異なるものであるから、それらの審決が有るからといって、本件審判事件における前記認定に影響を及ぼすものとは認められない。
そうしてみると、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。(5)まとめ
以上のとおり、乙各号証を総合してみれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を取消請求に係る第12類の指定商品中の「車いす」の範疇に属する「介護用車いす」について使用していたものと認められる。
したがって、本件商標の指定商品中、本件審判の請求に係る第5類「医療用腕環,防虫紙」、第10類「医療用機械器具」及び第12類「車いす,落下傘」についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)使用商標1


(色彩については原本参照)

(2)使用商標2


(色彩については原本参照)

審理終結日 2010-06-25 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-12 
出願番号 商願2000-113769(T2000-113769) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z051012)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半田 正人大森 健司 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
小畑 恵一
登録日 2002-08-16 
登録番号 商標登録第4596070号(T4596070) 
商標の称呼 ハートワークス、ハート 
代理人 浅村 肇 
代理人 岡野 光男 
代理人 黒川 朋也 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 浜田 廣士 
代理人 浅村 皓 
代理人 高原 千鶴子 
代理人 土屋 良弘 
代理人 大塚 一貴 
代理人 工藤 莞司 

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