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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1228348 
審判番号 取消2009-300953 
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-08-21 
確定日 2010-11-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4686760号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4686760号商標(以下「本件商標」という。)は、「Wilson Lee」の欧文字を標準文字で表してなり、平成14年10月4日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同15年6月27日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成21年9月4日にされたものである。

2 請求人の主張(要点)
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第25類「履物,運動用特殊靴」についての登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし10号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品中「第25類 履物、運動用特殊靴」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 使用権について
被請求人は、株式会社ケイアンドケイに通常使用権を許諾している旨主張しているが、本件商標の商標登録原簿には、通常使用権は登録されておらず、権利者と株式会社ケイアンドケイとの間で通常使用権を許諾する旨の契約が成立していることを示す証拠も何ら提出されていない。
したがって、株式会社ケイアンドケイが本件商標の使用権者であることは立証されていない。
イ 商標使用の事実について
(ア)登録商標の使用に該当するか否かについて
本件商標は、欧文字で表わされた「Wilson」と「Lee」という2つの単語からなる「Wilson Lee」である。
これに対し、乙第1号証で示されている商標の構成態様は、やや変形させた「W」の文字と一連の欧文字で構成され幾分斜字になっている「wilsonLee」との組み合わせであるから、本件商標の使用とはいえない。また、乙第1号証に示された商標は、「wilson」の語頭の「w」を小文字にし、「Lee」の部分はそのままとして、語中に大文字が含まれる構成態様であって、このような構成態様は、欧文字で単語を記載する場合の文法上のルールから明らかに外れているから、仮に、「wilsonLee」のみを使用していると見たとしても、乙第1号証に示される商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標とはいえない。
(イ)登録商標の使用について
乙第1号証に示されているスニーカーのうち、一番下に示されているスニーカーのかかとの部分に、「8701」という番号、「CA」及び「ケイアンドケイ」の文字が読み取れる小札が置かれている。しかしながら、この小札のみでは、これらの商品が株式会社ケイアンドケイによって本件商標が付された状態で実際に販売されていたかどうかを証明することはできない。
また、乙第1号証以外に、株式会社ケイアンドケイが本件商標を付した商品を答弁書に記載された時期に実際に販売していたことを示す証拠、または本審判の請求登録前3年以内に使用をしていたことを証明する証拠は提出されていない。
なお、「スニーカー 8701」をキーワードにインターネット検索サイト(Google)で検索をすると、通販サイト(【楽天市場】KARADANILUCK、http://item.rakuten.co.jp/karadani/8701/)には、乙第1号証に示された4種類のスニーカーのうち上から3つと外見が同じと思われるものが発見された。しかし、このサイトに掲載されているスニーカーの内部はわずかしか見えないようになっており、本件商標が使用されていることは確認できない(甲第4及び5号証)。しかも、このサイトを開設・運営しているのは、有限会社カラダニラックであり、株式会社ケイアンドケイではない(甲第6号証)。そして、このサイトに掲載されているスニーカーの製造販売元が株式会社ケイアンドケイであることを示す表示は全くないから、製造販売元が株式会社ケイアンドケイであることは確認できない。
以上から、仮に、株式会社ケイアンドケイが本件商標の使用権者であったとしても、乙第1号証に示されているスニーカーを株式会社ケイアンドケイが製造販売したことを立証する証拠は提示されておらず、同社が本件商標を使用していたことは証明されていない。
(ウ)使用時期について
被請求人は、本件商標の使用時期について、平成20年5月1日から現在まで継続的に商品を販売して商標を使用している旨述べており、平成20年5月1日から平成21年7月31日までの販売量として3926足という数字を示しているが、この数量が販売されたことを裏付ける具体的な証拠は何ら提示されていない。また、被請求人は、使用の場所について、「使用権者の所在地で、取引先からの注文に応じて販売出荷している。取引先は日本全国各地の靴販売店やスーパーマーケット等である。」と述べているが、具体的にどのような靴販売店やスーパーマーケットなどで販売されているかを裏付ける証拠も提示されていない。
なお、請求人らが平成21年7月及び同年8月にGoogleによって調査をした際には、上述した【楽天市場】KARADANILUCKでは、「型番5505」及び「型番5508」は確認されているにもかかわらず、乙第1号証に示された「型番8701」のスニーカーは確認されておらず(甲第8号証)、それ以外のサイトでも乙第1号証に示されたスニーカーが販売されていることは確認されなかった。
したがって、「型番8701」のスニーカーが日本全国各地の靴販売店やスーパーマーケット等で販売されているとの被請求人の主張は根拠がない。
ウ 株式会社ケイアンドケイと請求人との過去の経緯について
請求人は、平成17年11月14日に、株式会社ケイアンドケイに対して通知書を送付した。その内容は、株式会社ケイアンドケイが販売する「靴…の内側のかかと部に図案化した『W』に『wilson Lee』を重ね、その下に『SPORTS』と記載した表示」又は「『W』に『wilson Lee』を重ねた表示」を使用することは、周知表示混同惹起行為(不正競争防止法第2条第1項第1号)又は著名表示冒用行為(同項第2号)に該当する可能性があるため、上記の表示を使用する趣旨、使用に至った経緯について詳細な説明を求める」というものであった(甲第9号証)。
その後、同年11月21日に話し合いを行い、「その1年後には当該商標のついた在庫がなくなる」旨の回答を受けた。しかし、その後も販売が継続されたため、平成19年4月20日に、再度書簡を株式会社ケイアンドケイ宛てに送付している。この書簡では「2007年9月からの新製品に関して、表示上類似していると思われる表示を類似しない表示に変更する」という項目が含まれており、これを前提として、不正競争防止法第2条第1項第1号又は第2号に該当する可能性があるとして同社を訴えないこと、以上の代償として同社は600万円を請求人に支払うというものである(甲第10号証)。
すなわち、答弁書において「解決金」とされているものは、2007年9月より前の行為を対象としたものであり、2007年9月以降に行われた同社の行為について、いわゆる「解決金」が支払われている訳ではない。
また、請求人が株式会社ケイアンドケイに警告を行ったのは、答弁書に記載された「平成19年」ではなく、「平成17年11月14日」である。そして、警告の内容も答弁書にある「本件商標の表示部の背景になっている『W』のマークの形状」についてではなく、上述した2つの態様の表示についてである。そして、これらの表示をしないことについて、株式会社ケイアンドケイからは何らの反論もなく600万円の金員が平成19年4月27日付けで請求人の口座に振り込まれているから、株式会社ケイアンドケイは、平成19年4月20日付けの書簡に記載された事項について同意したものである。
したがって、「本件商標の表示部の背景になっている『W』のマークの形状についての警告があり、これに対して、使用権者は解決金を払って和解したという経緯がある。」という答弁書の結びの欄の記載は、実情と食い違っている。
また、請求人は、甲第10号証に示した通り、「2007年9月からの新製品に関して、表示上類似していると思われる表示を類似しない表示に変更する」ということを株式会社ケイアンドケイが実行することを信じて「解決金」を受領したのであり、被請求人が答弁書の結びの欄に記載した「請求人は、使用権者による本件商標の使用の事実は熟知しているものと解される」という主張には、何の根拠もない。
そして、株式会社ケイアンドケイが2007年9月以降に、答弁書で述べている態様の表示を使用した行為は上述した同意を覆すものであり、いわゆる信義則に反するものであるから、商標法が想定する正当な「使用」とはいえない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)並びに検乙第1号証及び検乙第2号証を提出した。
(1)本件商標権者である被請求人は、株式会社ケイアンドケイ(兵庫県神戸市長田区在)に通常使用権を許諾している(以下「使用権者」という。)。この使用権者は、商品型番8701の短靴(この型番のものには、色違いのものが4種ある)の内底に本件商標を表示して使用しており、乙第1号証には、色違いの4種の短靴が並べて表示されている。使用権者は、平成20年5月から現在まで継続的に使用権者の所在地で、日本全国各地の靴販売店やスーパーマーケット等の取引先からの注文に応じて商品を販売出荷しており、平成20年5月1日から平成21年7月31日までの上記商品型番の短靴の販売数量は、3926足となっている。
(2)なお、平成19年に、請求人から使用権者に対して、本件商標の表示部の背景になっている「W」のマークの形状について警告があり、使用権者は、解決金を支払って和解したという経緯がある。したがって、請求人は、使用権者による本件商標の使用の事実を熟知しているものと解される。
(3)本件商標の使用形態
使用権者による本件商標の使用は、複数種の靴に付けて大量に使用されている。
型番8701の靴(乙第1号証)について、平成19年(2007年)5月1日から平成21年(2009年)7月31日までの間の出荷量を、ウイルソンリー出荷明細(乙第2号証)に示す。この明細にある「170代」「280代」・・・「8700代」等は型番で、「8700代」とは「8701」「8702」などの枝番を全て含むとの意味である。
このように、この期間に本件商標を付した靴の種類は多く、かつ、色違いのものが数種(8701では4種)あるので、靴の種類は総合でかなりの数に上る。また、請求人が、弁駁書で述べている「型番5505」や「型番5508」は、「型番5500代」に含まれるものである。
なお、同じ型番の靴でも、製造時期の違いによって、多少の差異があり、完全に同一という訳ではない。靴の製造は、型番単位で数ヶ月ごとに行うが、その製造の際に、材料や工程などに多少の修正を加えるので、微小な変更が生じる。例えば「8701」(乙第1号証)のものは、平成20年5月の時点で販売されていたが、当時のものは、現物では残っておらず、乙第1号証として写真で提出した。なお、「8701」などの型番は、靴の本体には表示されていない。営業用の見本には、後から型番を表示したラペルを貼り付けている。乙第1号証の写真では、最下段の靴にラペルを貼り付けた状態が写されている。
このように本件商標を付した靴は、多種に及び、靴の種量が大量になるので、写真で残している。そして、現在販売されていて、靴底内面及び鍾部外表面等に本件商標の表記がある型番5505の靴を、検乙第2号証として提出する。
(4)販売証明書類
乙第1号証の型番8701の靴について、販売されていた平成20年5月分の注文書(取引会社数を4社に絞って)等(乙第3号証ないし乙第6号証)を提出する。
(5)よって、本件商標は、その指定商品中の「第25類 短靴」について、平成18年8月21日から平成21年8月20日までの期間内に、通常使用権者によって使用されていた事実が存在するから、商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきものではない。

4 当審の判断
(1)被請求人の提出に係る乙第1、2及び4号証並びに請求人の提出に係る甲第5号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第1号証は、4種類の短靴(いずれも片側のみ)を並べて上方から写した写真であり、上から3つの短靴の内部(底部と側部とが若干遊離しているように見えることから、これらについては、靴の内底ではなく、靴の中敷き部分と認められる)には別掲のとおりの構成からなる商標が表示されている。また、一番下の短靴には、その内部(底部と側部とがしっかり結合しているように見えることから、靴の内底と認められる)に表示されている何らかのマークの上にシール状のものが貼付されており、そこには、やゝ不鮮明ではあるが「8701」という番号、「CA」及び「ケイアンドケイ」の文字が表示されていることが認められる。
イ 乙第2号証は、「2007年5月1日?2009年7月31日」とある「ウイルソンリー出荷明細」であり、「8700代」、「44184」の記載及び「株式会社ケイアンドケイ 生産 課」の記載並びに証明している旨の担当者の記名・押印がある。
ウ 乙第4号証は、「発注日付」に「08/05/19」とあり、「(株)丸大」から「(株)ケイアンドケイ」への「発注書」であり、「商品名/備考」の欄には「8701 BL」及び「8701 BR」の記載があり、また、「サイズ」の欄には「225」から5刻みで「245」まであり、各欄には「5,15,15,10,5」との記載、「単価」の欄には「1,750」との記載及び「納期」の欄には「08/08/21」等の記載がある。
エ 甲第5号証は、「通販サイト(【楽天市場】KARADANILUCK、http://item.rakuten.co.jp/karadani/8701/)」であり、乙第1号証に示された4種類の短靴のうち上の3つと外見が同じ短靴が、「”wilson Lee”」の表示と共に、「スニーカー No.8701」と表示されていることが認められる。
(2)以上の事実からすると、乙第1号証に示されている短靴中のうち上の3つと、通販サイト「楽天市場」(甲第5号証)に掲載の本件商標と共に「No.8701」の表示された短靴とは同一の商品であり、乙第4号証の発注書によれば、平成20年(2008年)5月19日に、株式会社ケイアンドケイは、同一の番号「8701」の商品名の発注を受けたと認められる。さらに、同発注書の「納期」が平成20年(2008年)8月21日であることよりすれば、本件審判の請求の登録(平成21年9月4日)前3年に相当する期間内に、少なくとも、上記商品の取引がされたということができる。
(3)請求人は、乙第1号証に示されている商標は本件商標と社会通念上同一の商標とは認められない旨主張している。
本件商標は、前記1のとおり、「Wilson Lee」の欧文字を標準文字で表してなるものである。これに対して、乙第1号証に表示されている商標は、別掲のとおり、籠文字風にデザイン化した「W」状の文字を背景にして、その上に単なる太文字で「wilsonLee」の欧文字を重ね合わせた態様からなるものであるから、本件商標と同一の構成からなるものとはいえない。
しかしながら、「W」状の文字と「wilsonLee」の欧文字とは、その構成からみて、不可分一体のものとはいえず、「wilsonLee」の欧文字もそれ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得ると認められるものである。そうとすると、乙第1号証に表示されている商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めても差し支えないものということができる。まして、請求人の提出に係る甲第5号証には、本件商標と綴り字を同一にする商標が使用されている。
(4)更に、請求人は、株式会社ケイアンドケイが本件商標の使用権者であることは立証されていない旨主張している。
確かに、被請求人が株式会社ケイアンドケイに対して本件商標の使用を許諾したことを認めるに足る契約書等の証拠を提出していないものであるが、そもそも、使用の許諾自体は口頭ないしは黙示の意思表示でも足りるものと解されていること、さらに、被請求人の主張並びに乙第2及び4号証に鑑みれば、被請求人は、株式会社ケイアンドケイに対して、本件商標の使用を許諾していたものとみるのが相当である。
(5)その他、請求人は、甲第4号証(楽天市場の検索サイト等)を提出して、株式会社ケイアンドケイによる本件商標の使用は確認できなかった旨主張しているが、請求人が調査した範囲において、株式会社ケイアンドケイによる本件商標の使用が確認できなかったからといって、そのことの故をもって、直ちに、株式会社ケイアンドケイによる本件商標の使用がなかったものとはいえないから、この点についての請求人の主張も採用できない。
(6)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本商標権についての通常使用権者と推認し得る株式会社ケイアンドケイにより、取消請求に係る指定商品中に包含されている「短靴」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたものとみるのが相当である。
したがって、本件商標の指定商品中、取消請求に係る第25類「履物、運動用特殊靴」についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲





審理終結日 2010-09-21 
結審通知日 2010-09-27 
審決日 2010-10-14 
出願番号 商願2002-84367(T2002-84367) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 茂木 裕子 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 2003-06-27 
登録番号 商標登録第4686760号(T4686760) 
商標の称呼 ウイルソンリー、ウイルソン、リー、エルイイイイ 
代理人 竹田 明弘 
代理人 柴田 五雄 
代理人 柴田 富士子 

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