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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1228270 
審判番号 無効2010-890018 
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-03-12 
確定日 2010-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5257673号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5257673号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5257673号商標(以下「本件商標」という。)は、「BORDEAUX EXPERIENCE」の欧文字と「ボルドー エクスペリエンス」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、第35類「ボルドー産のぶどう酒の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ワインの輸出入に関する事務の代理又は代行,広告用具の貸与,自動販売機の貸与」を指定役務として、平成19年4月10日に登録出願、同21年7月9日に登録審決、同年8月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第74号証を提出した。
1 原産地統制名称「BORDEAUX」(ボルドー)について
本件請求人の一人である「アンスティテュ ナショナル ドゥ ロリジン エ ドゥ ラ カリテ」(“INSTITUT NATIONAL DE L’ORIGINE ET DE LA QUALITE”)(以下「ロリジン」という。)は、日本語で「国立原産地・品質研究所」を意味する。当該研究所は、2007年1月のフランスの法改正により、1935年に設立されたフランスの公法人である「アンスティテュ ナショナル デ ザペラシオン ドリジン」(“INSTITUT NATIONAL DES APPELLATION D’ORIGINE”)(日本語で「フランス国立原産地品質研究所」を意味する。)より組織変更されたものである。請求人は、その設立以降、フランス国内及び国外においてフランスにおける原産地統制呼称(“APPELLATION D’ORIGINE CONTROLEE”)の保護をその活動の大きな柱の一つとして取り組んでいる。
もう一人の請求人である「コンセイユ アンテルプロフェッショネル デュ ヴァン ドゥ ボルドー」(“CONSEIL INTERPROFESSIONNEL DU VIN DE BORDEAUX”)は、日本語で「ボルドーワイン委員会」を意味し、フランス国ボルドー産のぶどう酒の保護及び育成を目的の一つとして設立された、ボルドーワインの生産者と輸出業者からなるフランス法人である。
当該請求人は、過去においても、原産地統制名称「BORDEAUX」「ボルドー」に化体した高い評判・信用・名声を保護するために、「BORDEAUX」「ボルドー」の文字を含み、当該原産地統制名称の有する高い名声・信用・評判を稀釈化する商標に対して異議申立てを行うなど、我が国においても多大なる努力を尽くしている。
「BORDEAUX」(ボルドー)は、フランス南西部のジロンド県の県都で、ガロンヌ川に沿う港市であり、ぶどう酒の集散地または砂糖、ブランデー、綿織物などを産出する都市として有名である(甲第2号証及び甲第3号証)。この「BORDEAUX」(ボルドー)の地名は、フランスの原産地統制名称法(A.O.C.法)により、原産地統制名称として定められており、厳格にその使用が統制されているものである。原産地表示は、需要者・取引者にとって、商品の選択に際して極めて重大な意味を有することは言うまでもなく、パリ条約における原産地等の虚偽表示の取締に関する規定及び誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定の精神は、最大限に尊重されなければならない。
一般に酒類、食品、繊維製品等は、原産地によって大きくその品質が左右され、原産地表示が重要な意味を有している。
フランスにおいては、原産地表示が特に厳格に統制されており、その中核をなすのが、1935年に制定された「原産地統制名称法(Appellation d’Origine Controlee(「Controlee」の文字中2番目の「o」及び1番目の「e」の各文字の上部にアクサン記号が付されている。以下、同じ。))」である(甲第4号証、甲第11号証、甲第14号証、甲第20号証、甲第27号証及び甲第29号証)。この法律は優れた産地のぶどう酒を保護・管理することを目的とし、請求人のひとりである「ロリジン」によって運用されている。
原産地統制名称法に基づいて製造されたぶどう酒は、原産地統制名称ワイン(A.O.C.ワイン)と呼ばれ、このA.O.C.ワインは、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格してはじめてA.O.C.名称を使用することができるものである。しかし、鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは、名称使用権利を失うことになっており、厳格な品質維持が要求されている。
原産地統制名称は、産地の名称を法律に基づいて管理し、生産者を保護することを第一の目標とし、また名称の使用に対する厳しい規制は、消費者に対して品質を保証するものとなっている。原産地統制名称を保護・統制することは、数々のルールや規制を自らに課し独特の製品を長年製造してきたその地域の生産者の利益を保護すると共に、消費者が製品の産地と品質について誤認混同させられることを避け、需要者の利益に資するものであり、商標法の目的に合致するものである。
「BORDEAUX」又は「ボルドー」は、同法による原産地統制名称に他ならず、ボルドー産のぶどう酒にのみ使用を許される名称である。この表示を付した商品は、我が国においても広く販売されており、ぶどう酒・食品分野の取引者・需要者のみならず、その名称は産地を表示する標章の代表的なものの一つとして世界的に著名である(甲第2号証ないし甲第35号証)。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することが目的とされている。そして、商標法第4条第1項第7号は、前記目的を具現する条項の一つであり、過去の審判決例によれば、その商標の構成自体が矯激、卑猥な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当と解されている。また、同号中に規定されている「公の秩序」の中には商品又はサービスに関する取引秩序が包含されているものと解すべきとされている。(昭和58年審判第19123号、平成7年1月24日審決)(甲第70号証)。
また、知的財産高等裁判所により、いかなる商標が商標法第4条第1項第7号公序良俗に反するかは、以下の(a)ないし(e)とおり、5つの具体的事情を考慮して検討すべきとの指針を示している(赤毛のアン事件:知財高裁平成17(行ケ)10349号判決)(甲第71号証)。
「『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」
さらに、どのような商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかについても、「当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は役務の内容、当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性、我が国とその国の関係、当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響、当該商標登録を認めることについての我が国の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。」と当該判決の中で判示されている。
本件商標は、「BORDEAUX EXPERIENCE」の欧文字と「ボルドーエクスペリエンス」の片仮名文字の二段書きよりなる構成であるが、その構成中に厳格に管理統制されている原産地統制名称として著名な標章「BORDEAUX」「ボルドー」をそっくりそのまま含むものであることは明らかである。本件商標は、このような著名な原産地統制名称を構成に含み、その他の構成要素である「EXPERIENCE」「エクスペリエンス」の文字は英語で「経験」といった意味合いを有する語にすぎず、かつ、本件商標はその構成全体から、一般に親しまれた特定の観念を生ずるというような事実も見受けられず、これを一体不可分のものとして把握しなければならない格別の事情があるものとは認めがたいものである。それゆえに、上述したように原産地統制名称である「BORDEAUX」「ボルドー」が高度な著名性を有していることから、本件商標は、著名な原産地統制名称である「BORDEAUX」「ボルドー」の文字を含む商標という印象を強く与えるのみというべきである。
そして、本件商標は、当該原産地統制名称「BORDEAUX」「ボルドー」に化体した高い名声・信用・評判にフリーライドし、稀釈化させるものであるところ、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持するといった前記商標法の目的に反し、また当該商標を採択し使用することが社会公共の利益又は社会の一般的道徳観念に反するというべきである。
さらに、本件商標は著名標章である「BORDEAUX」「ボルドー」の名声を僭用し、「BORDEAUX」「ボルドー」に化体している高い名声・信用・評判から不正な利益を得るために使用する目的でなされたものというべきであることから、上記判例の示すように商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。
(2)ところで、著名商標の保護については、近年、周知・著名商標の保護の明確化の要請が高まってきたことに伴い、国内又は外国において広く認識されている商標が不正な目的で使用されることを防ぐことを目的として、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)により、商標法第4条第1項第19号の規定が不登録事由として明記されている。特許庁の「商標審査便覧」においては、商標法第4条第1項第19号の趣旨に関して、「多年に亘って企業が努力を積み重ね、多大な宣伝広告費を掛けることにより、需要者間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至った周知、著名商標は、十分に顧客吸引力を具備し、それ自体が貴重な財産的価値を有するものといえる。これらの周知、著名商標については、第三者の使用により出所の混同のおそれまではなくとも、出所表示機能を稀釈化させたり、その周知、著名商標のもつ名声を毀損させることが可能であり、このような目的を持った不正な使用から十分保護する必要がある。」と説明されている。
原産地統制名称「BORDEAUX」「ボルドー」は、請求人らによる長年にわたる厳格な品質管理・品質統制の努力の結果、高い名声、信用を得ており、ぶどう酒の商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで、世界的に著名な標章となっているものである。このような産地を表示する標章のうち、著名な標章については、上記した著名商標の保護と同様に、十分に保護されるべきである。
本件商標は、この著名標章「BORDEAUX」「ボルドー」の文字を含む構成よりなり、その高い名声にフリーライドするものであることが明らかであって、原産地統制名称ぶどう酒以外の商品たる本件指定役務に使用されるときには、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称としてのイメージが稀釈化され、その著名標章のもつ名声が毀損されるおそれがあるというべきである。
(3)異議決定例
「BORDEAUX」又は「ボルドー」の文字をその構成に含む商標については、例えば、第3類「せっけん類、香料類、化粧品」を指定商品とする別件商標「ボルドーシック/BORDEAUX CHIC」(商標登録第4541033号)において、商標法第4条第1項第7号に該当するという異議決定がなされている(異議2002-90289号:甲第36号証)。
よって、「BORDEAUX」及び「ボルドー」を構成中に含む本件商標においても、このような商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されて然るべきと思料する。
また、この異議決定例においては、第3類の「化粧品等」における「BORDEAUX」の著名性について、商標権者の「本件商標(ボルドーシック/BORDEAUX CHIC)が登録されている指定商品を取り扱う業界において、『ボルドー』『BORDEAUX』の語が『フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒』と結びつくものでなく、色目の名として認識されていることが明らかである」との主張に対しても、「BORDEUAX」「ボルドー」の著名性が、飲料を含む食品分野ではない分野においても否定されない旨が認定されている。
さらに、「BORDEUAX」及び「ボルドー」の文字をその構成に含む商標については、上述商標以外にも、以下の異議決定により、このような商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されるべきであるとして、商標法第4条第1項第7号に該当する旨、判断されている。(異議2008-900081号:甲第72号証、異議2008-900183号:甲第73号証、異議2008-900381号:甲第74号証)。
(4)別件商標に係る異議決定例
ア 「BORDEAUX」又は「ボルドー」と並ぶ著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE(シャンパン)」「ROMANEE-CONTI(「ROMANEE」の文字の1番目の「E」の文字の上部にアクサン記号が付されている。以下、同じ。)(ロマネコンチ)」「BEAUJOLAIS NOUVEAU(ボジョレー ヌーボー)」「CHABLIS(シャブリ)」をその構成中に有する商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている(甲第37号証及び甲第38号証)。
「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む商標については、甲第38号証の商標以外にも、多数の審決及び異議決定により、このような商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されるべきであるとして、商標法第4条第1項第7号に該当する判断されている(甲第39号証ないし甲第56号証、甲第62号証、甲第63号証及び甲第69号証)。
イ さらに、近年では、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し国際信義に反することから商標法第4条第1項第7号に該当するとの理由で、審査過程においても拒絶されている(甲第64号証ないし甲第68号証)。
ウ また、「ロマネコンチ」の片仮名文字と「ROMANEE-CONTI」の欧文字を二段に書してなり、第23類「糸(脱脂屑糸を除く。)」を指定商品とする別件商標(商願平04-106912号)も、その異議申立ての決定において、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている(甲第57号証及び甲第58号証)。
エ 「ボジョレー ヌーボー」の片仮名文字及び「BEAUJOLAIS nouveau」の欧文字を二段に書してなり、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品とする別件商標(商願平07-057117号)もまた、その異議申立ての決定において、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている(甲第59号証及び甲第60号証)。
オ 「CHABLIS」の欧文字よりなり、第12類「荷役用索道、カーダンパー、カープッシャー、カープラー、牽引車、陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。)、陸上の乗物用の機械要素、車いす、エアクッション艇、航空機並びにその部品及び附属品、鉄道車両並びにその部品及び附属品、二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品、乳母車、人力車、そり、手押し車、荷車、馬車、リヤカー、タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品とする別件商標(登録第4897630号)もまた、その異議申立ての決定において、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている(甲第61号証)。
カ 以上のように、別件商標に係るそれぞれの異議申立ての決定においては、厳格に統制されている原産地統制名称に関しては、これが食品分野と異なる指定商品又は指定役務に使用される場合であっても、原産地統制名称に化体した高い名声・信用・評判の稀釈化を引き起こすおそれがあり、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるとして、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている。
(5)小括
本件商標は、厳格に管理統制されている原産地統制名称として著名な標章「BORDEAUX」「ボルドー」の高い名声・信用・評判にフリーライドし、前記原産地統制名称の高い名声・信用・評判の稀釈化を引き起こすものであるところ、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用するに適さないというべきであり、また商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきある。
3 むすび
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁するところがない。

第4 当審の判断
1 利害関係について
フランスの法人である請求人「ロリジン」及び同じくフランスの法人である請求人「コンセイユ アンテルプロフェッショネル デュ ヴァン ドゥ ボルドー」は、前者がフランス国内及び国外においてフランスにおける原産地統制呼称(“APPELLATION D’ORIGINE CONTROLEE”)の保護をその活動業務とし、後者がフランス国ボルドー産のぶどう酒の保護及び育成を目的の一つとして設立された法人であるところ、本件商標はその構成中に「BORDEAUX」「ボルドー」の文字を有しているものであるから、前記請求人らは、本件審判の請求をすることにつき利害関係を有するというべきである。
2 請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)岩波書店1998年11月11日発行「広辞苑第5版」(甲第2号証)の「ボルドー【Bordeaux】」の項には、「フランス南西部、ガロンヌ川に沿う港市。葡萄酒の集散地。また、砂糖・ブランデー・綿織物などを産出する。…ボルドー地方から産する葡萄酒。赤葡萄酒はクラレットとも呼ぶ。…」と記載されている。
(2)三省堂1985年12月10日発行「コンサイス外国地名事典(改訂版)」(甲第3号証)の「ボルドー Bordeaux」の項には、「フランス南西部、ジロンド県の県都、港湾・工業都市。…ブドウ酒の輸出港として有名。…」と記載されている。
(3)柴田書店1982年5月20日発行「新版 世界の酒事典」(甲第5号証)の「ボルドー(Bordeaux)」の項には、「フランスの代表的なぶどう酒の産地。…行政的にジロンド県産のものにかぎってゆるされる名称で、ジロンド県は最上級のぶどう酒を産するメドック、グラーブ、ソーテルヌ、サン・テミリヨンの四地区と、これにつぐポムロール、アントル・ドゥ・メール、コート、パリュスなどの地区に分かれている。…フランスのぶどう酒産出地域は、大きくボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュの三地方に分けられるが、なかでもボルドー地方は量質ともに第1位で、フランス総生産量の実に3分の2を占め、年産約8,000万ガロンを産出している。この地方のぶどう酒は、ブケ(発酵と熟成過程でうまれる香り)、アロマ(ぶどうの品種による香り)、パルフュム(口にふくんだときの香り)がよく、酒質も色もひじょうにすぐれている。そのぶどう栽培地の土壌は、表面が粘土質で、その下に小石や砂の層があり、農作物の作付けにはむかないが、ぶどうの栽培には最適の条件を備えている。」と記載されている。
(4)柴田書店昭和56年6月15日発行「洋酒小事典」(甲第6号証)の「ボルドー Bordeaux」の項には、「フランス西部にある世界的に有名なワインの産地。赤、白のワインを産し、赤ワインをクラレットと呼ぶ場合が多い。…」と記載されている。
(5)早川書房1996年3月31日発行「ワインの女王」(甲第7号証)には、その表紙に「…ワイン生産地としてボルドー最大の特色は『シャトー・ワイン』が特有の制度として確立している点にある。…肝心かなめの点は、シャトーの持主がシャトー周辺の自己所有畑で、自らぶどう栽培に当り、建物付属の醸造所でワインを造り、樽貯蔵し、自ら瓶詰めしたワインに限って、そのシャトー名を冠せるところにある。」「ボルドーを知らずしてワインを語るなかれ!」「繊細な香りと豊かなコク。酒の王にしてワインの女王。ボルドー・ワインに乾杯!」と記載され、その48頁には、「…名酒になるはずのワインに他の地方のワインや質のおちるぶどうからつくつたワインを混ぜる不心得者が横行したし、今でもあとを絶たない。これを防ぐために、フランスではAC(Appellation Controllee)制度が生まれ、現在では他の国も見習いだしている。『原産地名統制呼称』とも訳されているこの制度は、一定の地域で、それぞれ法令の要求する条件(使うぶどうとか最大生産量など)を守ったものだけに、その地域名を名乗ることを認めるというものである。…」と、69頁には、「…ラベルに、この表示を地方名と組み合わせて表示することが?場合によっては表示してはならないことが?フランスではワイン生産者に義務づけられているが、この表示するしくみが、アペラシオン・コントローレ(Appellation d’Origine Controllee 略してAOCまたはAC)制度である。日本では『原産地名統制呼称』とか『原産地名管理呼称』制度と訳している。…」と、71頁には、「…これをボルドーでみてみると、まずAC『ボルドー・ワイン』がある。これは…ボルドー市を中心にしたジロンド県内の広大な地域である。…」とそれぞれ記載されている。
(6)サントリー1998年12月1日発行「世界のワインカタログ1999 by Suntory」(甲第8号証)には、81頁の左側に「ボルドー」の見出しのもと、「ボルドーの葡萄園は、ジロンド河の両岸と、ガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、銘醸地がひしめくフランスの中でも、質・量とも群を抜いて名高い地域です。ボルドーワインは恵まれた自然風土の中で育まれた複数の葡萄品種の組み合わせから生まれ、長い熟成期間を経て、繊細な風味と香りを身につけていきます。文字どおり、“ワインの女王”にふさわしい優雅な個性です。…ボルドーのワインは、原産地呼称統制ワイン-AOCが多く、フランス全体のAOC生産量の2割強を占めています。世界のワイン産地の中で最も名高いボルドーといわれるゆえんです。…」と記載され、ボルドーのAOCワインを生産している代表的ワインの地区として、81頁の右側から82頁に架けて「メドック地区」、「グラーヴ地区」、「ソーテルヌ地区」、「サンテミリオン地区」、「ポムロール地区」、「フロンサック地区」及び「アントル・ドゥー・メール地区」が各々紹介されている。
(7)日本経済新聞社1996年9月30日発行「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(甲第9号証)には、「●PART3 ボルドー BORDEAUX」の見出しのもとに、「…ボルドーのワインについて語るならば、シャトーについて触れなくてはならない。ボルドーのシャトーは、文字通りの絢爛豪華な城館もあるが、ごく普通のワイン農家といった建物もあり、醸造所と考えた方がいい。シャトーが所有する畑から穫れたぶどうを自分のシャトーでワインにする。すなわちシャトー元詰めがボルドーワインの基本的考え方だ。…」と記載され、118頁に「Chateau(1番目の「a」の文字上部にアクサン記号が付されている。以下、同じ。) Lafite-Rothschild/シャトー・ラフィット・ロートシルト」、120頁に「Chateau Margaux/シャトー・マルゴー」、122頁に「Chateau Mouton Rothschild/シャトー・ムートン・ロートシルト」、124頁に「Chateau Lagrange/シャトー・ラグランジュ」及び126頁に「Chateau Beychevelle/シャトー・ベイシュヴェル」が各々紹介されている。
(8)ネスコ(日本映像出版株式会社)/1991年5月27日発行/文藝春秋発売「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(甲第10号証)の80頁には、「Bordeaux ボルドー」の見出しと地図が掲げられ、81頁には「…ボルドーはこの世で最大の上質ワイン産出区域だ。ジロンド県全体がワインづくりにかかわり、全部がボルドーなのだ。産出量はブルゴーニュをはるかにしのぎ、1983年には5億1,000万リットルを産した。…」と記載され、82頁には、「ボルドー:品質決定要因」の見出しのもとに「ぶどう栽培・ワイン醸造にとってボルドー地方がもっている利点を数え上げるのは簡単だ。海に近く、河川が縫うように走っているため、気候が温和で安定し、大西洋側に森林があって強い潮風を遮り、降雨が少なく、基盤岩が豊富に無機物を含んでいる反面、表土は全般に全くやせており、多くの場合、非常に分厚い。…」と記載されている。
(9)講談社昭和63年5月17日発行「世界の名酒事典/別冊『世界の名ワイン事典』」(甲第12号証)は、「世界のワインの指標」として、ワイン大国フランスで昔から銘醸の地として名高い、ボルドーとブルゴーニュを取り上げ、両地方の歴史から、気候風土の違い、そして銘酒選びまでを紹介しており、3枚目には、「なぜボルドーとブルゴーニュか」の見出しのもとに「このようなワインの王国でも、その代表格となると、やはり、ボルドーとブルゴーニュになってしまうのである。この二つの地方は、世界のワインの最高峰と目される極上物を頂点に、中級から下級に至るワインを産出しているが、…これらの二つの地方はその赤ワインのタイプが際立った対照をなしていて、『ワイン』そのものの指標的存在となっているということである。また、白ワインも同様にブルゴーニュは辛口、ボルドーは甘口が世界の模範的存在になっている。…」と記載されている。
(10)講談社発行「世界の名酒事典´80改訂版」(甲第13号証)(審決注:表題は不鮮明)の2枚目には、「ボルドー・ワインの特徴」の見出しのもとに「ボルドー・ワインとは、ジロンド県内の十三のぶどう栽培地域のいずれかで、A・O・Cの規定にもとづいてつくられたワインをいう。それ以外の地域でつくられたワインをブレンドしたものは、ボルドー・ワインを名のることはできない。十三のぶどう栽培地域は、(1)メドック、(2)グラーヴ、…。ボルドーが世界に誇るワインのほとんどは、ここで生産される。…」と記載され、次の3枚目には、メドック地区のワイン、格付け特選銘柄の一覧表及びサンテステーフ村の具体的製品の紹介が記載されている。そして、ほぼ同様の内容が講談社発行「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’84-’85年度版、’87-’88年版、’90年版ないし2000年版及び2002年版(甲第14号証ないし甲第28号証)にも記載されている。
(11)2002/07/26付け打ち出しのインターネットホームページ(http://japon.vins-bordeaux.fr/)(甲第29号証)の1枚目には、最新ニュース、イベント&プロモーション、ボルドーワインの知識、データベースの各項目が掲載され、4枚目の「最新ニュース/ボルドーワイン2001年の輸出動向」の見出しのもとには、「…輸出先7位の日本(13万hl)は、97年に急増したあと、98年に急減。2000年からは安定した伸びを示し、2001年は数量ベースで8%の増となった。…」との掲載がある。
(12)読売新聞社1986年4月17日発行「The一流品 決定版」(甲第32号証)の250頁には、「FRENCH WINE/フランスワイン」、「ボルドー地区」の見出しのもとに、「ボルドー地区は、大西洋に面した南西フランスに位置し、世界で最も広大なぶどう栽培地帯である。ジロンド河、ガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、ここでできる赤ワインは“クラレット”とよばれるワインの女王と称賛される。鮮やかな紅色が特徴。ボルドーワインで登場するのがシャトー。城というより、ぶどう園全体を指している。一八五五年に地域、畑(シャトー)別に格付けが決められ今日に至っている。」と記載され、以下に各シャトーのワインが紹介されている。そして、読売新聞社発行「The一流品」のPART2(1987年4月20日発行)、PART3(1988年5月6日発行)及びPART4(1989年6月16日発行)の各誌にも同様の趣旨の記載がある(甲第33号証ないし甲第35号証)。
3 前記認定事実によれば、「BORDEAUX」及び「ボルドー」の語は、フランス南西部の地名であり、フランスの代表的なぶどう酒の産地であって同地で作られるぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、ぶどう酒について世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍及び雑誌などにおいてボルドーについての説明がなされていること、世界の名酒事典及び一流品を紹介する雑誌などにおいてボルドー産の具体的製品が紹介されていること、我が国の2001年における「ボルドー地方で作られるぶどう酒」の輸入量が世界第7位で13万hlと多いことなどが認められる。
してみれば、上記事実を総合すると、「BORDEAUX」及び「ボルドー」の語は、我が国において、本件商標の登録出願時には既に「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られていたというべきであり、その状態は本件商標の審決時においても継続していたものというのが相当である。
4 「BORDEAUX」及び「ボルドー」の名称の保護に関して
「BORDEAUX」及び「ボルドー」の名称の保護に関しては、前記認定事実のほか、フランス食品振興会(SOPEXA)1987年発行「フランスのワインとスピリッツ」(甲第4号証)によれば、その18頁及び19頁において、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(1)A.O.C..(原産地統制名称ワイン)(2)V.D.Q.S.(上質指定ワイン)(3)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(4)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件等の規準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な規準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、また、同書の20頁には、産地別A.O.C..ワイン一覧表中に「フランス西南部(ボルドーを含む)」が記載されていることが認められる。
さらに、フランス食品振興会(SOPEXA)発行のパンフレット(甲第11号証)、フランス国原産地統制名称の国際的保護のためのINAO(Institut National des Appellation d’Origine)のアクションに関するメモ(甲第30号証)及び1935年7月30日付けフランス国政令「原産地統制呼称法」抜粋(甲第31号証)によれば、フランスでは、1935年に原産地統制名称法を制定し、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)は、原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)は、請求人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていることなどが認められる。
5 本件商標について
(1)本件商標は、前記第1のとおり、「BORDEAUX EXPERIENCE」の欧文字と「ボルドー エクスペリエンス」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなるところ、その構成中の「BORDEAUX」の欧文字は、前記3及び4のとおり、フランスの代表的なぶどう酒の有名な産地名であって、原産地統制名称として厳格に管理統制されている著名な「BORDEAUX」の綴り字と全く同一のものであり、また、本件商標の構成中の「ボルドー」の文字は、「BORDEAUX」の表音を片仮名表示したものである。
そして、本件商標は、前記のフランスの代表的なぶどう酒の有名な産地名であり、原産地統制名称として著名な「BORDEAUX」「ボルドー」の各文字が、視覚上比較的着目されやすい前半部に位置する構成であることから、該「BORDEAUX」「ボルドー」の各文字が強く看者の印象に残るものとみるのが相当である。
そうすると、「BORDEAUX」「ボルドー」の各語が、前記のとおり、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして登録出願時はもとより、その後においても、一般需要者の間に広く知られているものであること、フランス国ボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の気候、風土を利用して優れた品質のぶどう酒の生産に努めてきたこと、フランス国が国内法令を制定し、1935年以降、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、本件商標をその指定役務に使用するときは、著名な「BORDEAUX」「ボルドー」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、ボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当である。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-09-02 
結審通知日 2010-09-06 
審決日 2010-09-27 
出願番号 商願2007-34987(T2007-34987) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (X35)
最終処分 成立 
前審関与審査官 門倉 武則 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
渡邉 健司
登録日 2009-08-14 
登録番号 商標登録第5257673号(T5257673) 
商標の称呼 ボルドーエクスペリエンス、エクスペリエンス 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 景子 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 田中 克郎 
代理人 田中 景子 
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