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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z03
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z03
管理番号 1226694 
審判番号 無効2009-890049 
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-13 
確定日 2010-11-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第4224557号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4224557号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヴァージン & ピンク」の文字を標準文字により表してなり、平成9年10月13日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として同10年12月25日に設定登録され、その後、同20年7月29日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第2 引用商標
請求人は、自己の製造販売に係る「化粧品」に使用する商標であって、別掲のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び「ヴァージンピンク」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)を引用するほか、引用商標1及び2に関連する商標として、自己の所有に係る以下の登録商標を引用している。
(1)登録第4157557号(以下「引用商標A」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成8年12月24日
設定登録日:平成10年6月19日
指定商品 :第3類「化粧品」
(2)登録第3371444号(以下「引用商標B」という。)
商標の構成:ヴァージンピンク
登録出願日:平成7年5月18日
設定登録日:平成14年11月15日
指定商品 :第3類「化粧品」
(3)登録第4623575号(以下「引用商標C」という。)
商標の構成:バージンピンク (標準文字)
登録出願日:平成12年2月2日
設定登録日:平成14年11月22日
指定商品 :第3類「化粧品」
(4)登録第4688295号(以下「引用商標D」という。)
商標の構成:ヴァージン ピンク (標準文字)
登録出願日:平成12年2月9日
設定登録日:平成15年7月4日
指定商品 :第3類「化粧品」
なお、引用商標1は引用商標Aと、引用商標2は引用商標Bと、それぞれ同一の構成からなるものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第128号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標は、請求人が製造販売している女性用化粧品に長年使用した結果、取引者・需要者の間に広く認識されている引用商標1及び2との関係で、不正の目的をもって商標登録を受けたものであるから、商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効にされるべきである。以下、その理由を詳細に述べる。
(2)請求人の業務について
(ア)請求人は、昭和53年(1978年)12月8日の創業にかかり、医薬部外品・化粧品・健康食品・雑貨の製造販売及び輸出入を主たる業務としている(甲第6号証)。
請求人は、昭和59年10月7日、皮膚の汚れやしみ、色素の沈着を落とし美肌を保持するゼリー状の化粧品(以下「本件化粧品」という。)を開発し、当時請求人の委託製造会社の名義において「エレガンスゼリー」の商品名で製造許可をとり(甲第7号証)、本件化粧品の販売を開始した。
しかし、「エレガンスゼリー」の名称では消費者に対するインパクトが弱いので、昭和62年2月頃から本件化粧品を「Virgin Pink」(引用商標1)及び「ヴァージンピンク」(引用商標2)に変更したのである。すなわち、英文字からなる引用商標1は、使用当初からイタリック書体を用いており、変更をすることなく今日まで継続して使用している(甲第8ないし第12号証)。
引用商標1及び2は、請求人の商品を専属で卸売店や小売店に卸す業務を委託していた「松川伸也」(以下「松川」という。)と二人で、あれこれ考えて採用したものである。松川は、請求人代表者を頼って勤務先を退職し請求人会社の営業として働いていた。
本件化粧品の製造は、当初から今日まで、請求人と請求人の全額出資子会社であるクー・サイエンスビューティー株式会社(以下「クーサイエンス社」という。)及びクー・インターナショナル株式会社(以下「クーインターナショナル社」という。)で一貫して行っており、本件化粧品の包装容器にも引用商標1及び2を使用してきた(甲第13号証)。平成3年?4年頃、松川の卸売・販売先は、約10社位に及んでいたので、本件化粧品の売上げは、年間1500万円位に達しており、当時としてはかなりの売上げであった。
(イ)本件化粧品は、化粧品の形態として一般的であったクリーム状のべタべタ感を払拭して、サラッとしたゼリー状の商品としたところに特色があり、これまでにない使い心地の良さから注目を集め、併せて、引用商標1のとおりのロゴも独自な書体としたことから取引者・需要者の目を惹きつけるものとなったのである。
なかでも、松川の売込先であった株式会社エムツウプロダクツ(甲第14号証:以下「エムツウ社」という。)は、本件化粧品を気に入り、販売代理店として雑誌・新聞などで熱心に宣伝広告を行っていた。ところが、エムツウ社が事業不振に陥ったため、平成3年1月30日に設立された株式会社リバティー(甲第15号証:以下「リバティ社」という。)が業務を引き継いだのである。そのリバティ社も本件化粧品を気に入り、エムツウ社同様、かなりの宣伝広告を行っていた。
(ウ)すなわち、エムツウ社は、元々請求人の顧客であったが、請求人の紹介により、松川が販売代理店としたものであり、リバティ社及び被請求人は、営業不振の状態にあったエムツウ社から平成3年2月1日付けで営業譲渡を受ける旨の契約書を取り交わしており(甲第16号証)、その後、リバティ社は松川から商品を仕入れて本件化粧品の販売先となった。上記契約書には、被請求人が個人としてリバティ社に連帯し本契約の履行に責任を持つ旨の一箇条があり、被請求人は個人としても本件化粧品の仕入れ販売に関与していたのである。
平成3年?4年頃には、引用商標1及び2を使用した本件化粧品は、取引者・需要者の間に大変好評を得ており、エムツウ社の事業を引き継いだリバティ社も本件化粧品を大層気に入り、販売元として大々的に宣伝広告を行っていた。そのため、リバティ社は、松川を通さずに直接、請求人から本件化粧品を仕入れたいと申し入れてくるようになった。
平成4年頃からは、以前のエムツウ社及びエムツウ社の事業を引き継いだリバティ社の宣伝広告活動がなくとも、本件化粧品は取引者・需要者の間に非常に評判がよく、松川は、法人成りして有限会社松川化学(以下「松川化学」という。)となって、かなりの数量を取り扱うようになっていたため、リバティ社の申入れは断った。
ところが、リバティ社は、これに反発し、請求人及び松川に無断で本件化粧品の成分分析を行って、請求人とは無関係な株式会社コスメサイエンスに化粧品を製造させ、「ヴァージンピンク」の商標で販売すると共に、請求人が引用商標1及び2を登録していないことを知り、請求人に無断で平成5年2月10日にカタカナ文字からなる「ヴァージンピンク」の商標登録出願をしたのである。
しかし、リバティ社の商品は、成分分析によって得た形式的な成分だけで製造させたものであり、本件化粧品に請求人のノウハウとして添加されている有機成分が添加されていないため、本件化粧品の特徴であるゼリー体に認められる薄茶色の着色がなく透明なものであったので、品質的に問題のある商品であり、本件化粧品であると思って購入した消費者に迷惑をかける結果となった。
したがって、平成5年以降は、松川を通じてリバティ社ヘは本件化粧品は販売されておらず、請求人及び松川とリバティ社とは、本件化粧品を取り扱う関係が切れた。
(エ)引用商標1及び2を採用して使用開始した昭和62年当時は、商標に問題ありとして厚生省の製造許可を得ることができなかったが、平成5年頃になると厚生省の態度も変化してきたので、本件化粧品の効能効果から「薬用」の文字を付すことができる薬用部外品として製造許可を取ることにし、平成6年9月22日に「ヴァージンピンクエース」の商標をもって請求人名義で製造許可を取ることができた。
なお、請求人は、平成20年10月17日に「ヴァージンピンク」の商品名で、医薬部外品製造販売承認申請を行ない、平成21年2月18日に申請は承認されている。
平成5年初め、リバティ社の勝手な行動によって、売上げ低下など直接の影響を受けた松川は、「ヴァージンピンク」の商標は請求人と松川とで案出したものであること及びこれまでの販売実績などを主張してリバティ社に対して「ヴァージンピンク」の使用差止を求める仮処分の申請を行ない、リバティ社の顧客に対して警告文を発送したところ、リバティ社からも松川(この頃、松川は法人成りして松川化学を設立した。)に対して仮処分の申請をするという争いが生じた。
しかしながら、請求人は、松川との間には、請求人の商品について継続的供給契約、すなわち、松川が販売する商品は全て請求人から供給を受けるという契約を締結して松川の自立を助けていたので、松川を無視することはできず、松川とリバティ社の係争を注目した。
(オ)平成6年?7年頃には、業界が本件化粧品に一層注目するようになっており、当然「Virgin Pink」、「ヴァージンピンク」の商標は取引者・需要者の間に広く認識されるようになり、それに伴い、化粧品類について他社が「ヴァージン」の文字にあやかるためか、「ヴァージン」の文字を用いた結合商標の使用が目立ち始めた。
そこで、請求人は、引用商標1及び2を保護するため、商標登録出願をすることにしたが、松川の名義で出願させてもらいたいという松川及び松川の弁護士からのたっての願いで、首尾よく登録になったときは、請求人に商標権を移転するとの約定のもとに引用商標A及びBの商標登録出願をすることを認めた。その後、松川は、引用商標C及びDについても自らの法人名義で出願し商標権を取得した。
ところが、請求人も信頼を寄せていた松川の弁護士が亡くなり、弁護士が変わったところ、請求人に対する松川の態度が急に変わり、リバティ社に対する仮処分事件について、請求人には何の相談もなく無断で、平成8年3月15日に、リバティ社が「ヴァージンピンク」、松川が「バージンピンク」を使用するという信じられないような和解をしてしまった。
その後、松川は、請求人に無断で本件化粧品を請求人と無関係の会社に製造委託したことが判明したため、請求人は平成13年6月30日に松川との取引を停止したが、その後も松川は請求人に内密に、本件化粧品の類似品を製造させ、「バージンピンク」の商標を使用して販売をしていた。
(カ)ところが、後に判明したところであるが、松川とリバティ社が請求人に無断で仮処分事件を和解させた後に、リバティ社が本件商標の登録出願をしていたのである。
また、後にリバティ社も事業不振に陥り、平成13年1月31日に代表者である被請求人を始めとする役員全員が退任し、役員の交代が行われている。
このような中、市場には、請求人及び子会社による製造販売に係る真正品である本件化粧品と、松川が取り扱う類似品、被請求人から本件商標の使用許諾を得ていると称する者による類似の商品が、「Virgin Pink」、「ヴァージンピンク」、「バージンピンク」の商標のもとに出回り、消費者はどの商品が請求人が取り扱う真正品かが判断できないまま、混乱状態が続いた。
ところが、平成17年8月31日になって、松川が引用商標AないしDの商標権に基づき、請求人及び請求人の関係会社に対し商標権侵害差止請求訴訟を提起した。請求人は直ちに反訴を提起して争った結果、引用商標AないしDに係る商標権を請求人に譲渡し、松川は製造販売を中止すると共に、平成19年11月12日までにその在庫品を全て処分して市場に出ないようにするという和解が平成18年5月12日に成立した。
したがって、引用商標AないしDに係る商標権の当初出願人は、「有限会社松川化学」になっているが、請求人へは、上記訴訟事件和解後に譲渡され、商標権の移転登録がされたのである(甲第17ないし第20号証)。
請求人がこれまで詳細に述べてきたことは、請求人代表者の「報告書」にも述べられている(甲第21号証)。
(3)請求人及び使用権者による商標の使用について
(ア)平成2年ないし6年までの使用状況について
本件化粧品に継続して使用している引用商標1及び2は、昭和62年2月から使用開始したものであるが、すでに述べたとおり、当初、請求人は、本件化粧品を卸売店や小売店に販売する業務について、松川を専属にして委託していた。
そのため、本件化粧品の宣伝広告は、松川及び販売代理店などが行っており、後に代理店となったエムツウ社及びエムツウ社の業務を引き継いだリバティ社も熱心に宣伝広告を行っていた。
それらの宣伝広告のうち、平成2年から平成6年までに掲載した雑誌は下記のとおりである。やや不鮮明な資料となっているが、代表的掲載例を示す写しを甲第22ないし第59号証として提出する。
・平成2年=「女性自身」35回、「女性セブン」32回、「週刊女性」16回、「ViVi」4回、「FYTTE」3回
・平成3年=「女性自身」41回、「微笑」18回、「女性セブン」44回、「週刊女性」4回、「ViVi」11回、「CanCam」11回、「FYTTE」9回
・平成4年=「女性自身」35回、「微笑」20回、「女性セブン」26回、「週刊女性」4回、「ViVi」11回、「CanCam」11回、「non-no」4回、「FYTTE」5回、「an・an」3回
・平成5年=「女性自身」21回、「微笑」2回、「女性セブン」2回、「週刊女性」2回、「ViVi」2回、「CanCam」3回、「non-no」6回、「MORE」1回、「FYTTE」1回、「an・an」6回
・平成6年=「女性自身」10回、「JUNON」1回、「ヘア&メーク」1回、「微笑」1回、「女性セブン」4回、「LEE」3回、「CanCam」1回、「non-no」11回、「MORE」4回、「an・an」2回
その他、テレビコマーシャルもかなりの回数に上っていたが、使用証拠として提出すべき十分な資料が残されていない。
(イ)平成8年(1996年)以降の使用状況について
本件商標が出願されたのは、平成9年(1997年)10月13日であるが、その前後からそれ以降の使用に係る宣伝広告を掲載した新聞、雑誌、カタログなどが大量にあり、これらを甲第60ないし第111号証として提出する。
新聞紙上への宣伝広告は全国に及び、朝日新聞、産経新聞、南日本新聞、新潟日報、北日本新聞、秋田さきがけ新聞、中国新聞、信濃毎日新聞、聖教新聞、毎日新聞、日本農業新聞、山陽新聞、神戸新聞、琉球新報、沖縄タイムス、千葉日報、陸奥新報、山陰中央新報、農業共済新聞、中国新聞及び産経新聞記事切り抜きなどである。
週刊誌は、商品の性質上、女性週刊誌が中心であり、週刊女性、週刊女性自身、週刊女性及びポポロ掲載記事切り抜きなどであり、女性雑誌では、non-no及びMOREなどである。
また、請求人から本件商標の使用許諾を得ている株式会社ベルトゥリー・エンタープライズのカタログ、キャンペーンのチラシ、テレホンショッピンクのチラシ、TVショッピングのチラシ及びブライダルノート掲載広告などがある。
同じく使用許諾を得ている株式会社ベレスのチラシがあり、通販カタログヘの掲載、通販雑誌への掲載などがある。
(4)商標法第4条第1項第15号について
(ア)商標法第4条第1項第15号における「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」とは、その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいうとされている。
そして、商標法第47条の規定は、いわゆる「除斥期間」を定めたものであるが、同法第4条第1項第15号については、「不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。」として、「不正の目的」については除斥期間が適用されないことを定めている。
それ故、請求人は、被請求人が、本件商標は不正の目的で商標登録を受けたことを主張立証するものである。
(イ)本件商標は、平成9年10月13日に、リバティ社によって登録出願されたものであるが、被請求人は、平成3年1月30日の会社設立当初から同13年1月31日まで、リバティ社の代表取締役社長であったので(甲第112号証)、出願人の代表者として本件商標を出願したことは明らかである。
その後、被請求人は、リバティ社から平成13年3月27日に本件商標の譲渡を受け、平成13年5月16日に移転登録されて本件商標の商標権者となった。
(ウ)請求人の製造に係る本件化粧品は、引用商標1及び2によって、昭和62年2月頃から製造販売しており、当時、松川が専属的に請求人から商品の供給を受けて販売していた。
リバティ社も松川の売込み先のひとつであり、リバティ社も販売先として本件化粧品の販売に力を入れていたが、請求人にも松川にも無断で平成5年2月10日に「ヴァージンピンク」の商標登録出願をした。しかし、この出願はのちに拒絶されている。
すなわち、本件化粧品の製造販売から5年?6年を経過した平成3年?4年頃には、「Virgin Pink」、「ヴァージンピンク」は取引者・需要者の間に好評を得ており、リバティ社は、「ヴァージンピンク」が商標登録されていないことを奇貨として、勝手に出願したのである。
本件化粧品の製造は、当初から請求人及び請求人の全額出資子会社であるクーサイエンス社及びクーインターナショナル社で一貫して行っており、販売は、平成13年6月30日に松川との取引を停止するまでは、専属的に松川が取り扱っていた。その後は請求人が許諾した販売先を通じて販売しており、引用商標1及び2は、昭和62年2月の製造販売以来、今日まで継続して使用をしているのである。
(エ)本件商標は、平成9年10月13日にリバティ社の名義により登録出願されているが、リバティ社の代表取締役であった被請求人は、エムツウ社の業務を引き継ぎ松川の販売先となって以来、「Virgin Pink」及び「ヴァージンピンク」を自らの所有とすべく画策していた。その一つが、請求人及び松川にも無断で本件化粧品の成分分析を行って類似品を製造販売したことであり、また、平成5年2月10日に「ヴァージンピンク」の商標登録出願をしたことである。
被請求人は、先の出願が拒絶されると、松川化学が当初出願人となっていた引用商標Aに対して、平成12年7月27日付けで商標登録無効審判を請求したのである(甲第113号証)。また、被請求人は、本件商標の出願直後の平成9年7月22日に、引用商標Bの出願公告に対して登録異議申立を行ったのである(甲第18号証の1)。
すなわち、被請求人は、平成3年2月1日にエムツウ社の業務を引き継いで以来、本件化粧品の販売に関わっていたのであり、請求人の商品の専属仕入先であった松川と引用商標1及び2の使用について争い、更に、上記のとおり、引用商標Aに対して登録無効審判請求をし、引用商標Bには登録異議申立をしているため、引用商標1及び2の使用については深い関わりがあったことは明らかである。
リバティ社が本件商標を出願したのは、松川との仮処分事件の和解をした後のことであり、リバティ社は、いずれ「Virgin Pink」及び「ヴァージンピンク」の商標は使用できなくなることを想定して、密かに本件商標の出願をしたものと容易に考えられる。すなわち、引用商標1及び2に限りなく近い商標として、「ヴァージン」と「ピンク」を「&」で結ぶ構成として本件商標の登録を得ているのである。また、請求人の欧文字からなる引用商標1の「Virgin Pink」についても、「Virgin」と「Pink」を「&」で結び「Virgin & Pink」として登録第4073391号商標の登録を得ているのである(甲第114号証)。
その結果、本件商標及び「Virgin & Pink」商標を使用する化粧品は、請求人の本件化粧品と同一又は類似の商品であるかのように誤認し、請求人と被請求人は依然として経済的又は組織的に何等かの関係があると誤認し、取引者・需要者をして請求人の業務に係る本件化粧品と商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(オ)本件商標と引用商標Bとの類否をみると、前者が後者の先願先登録となっているが、「&」の有無という差異により、両商標は類似しないとされたものと思われる。
しかしながら、本願商標の出願日(平成9年10月13日)前には、引用商標1及び2は、本件化粧品に約10年にわたり継続して使用していた結果、取引者・需要者に広く認識されていた商標である。そのうえ、これまで詳細に説明したとおり、被請求人は、平成3年2月以降、平成5年初め頃まで引用商標1及び2の各商標を使用した本件化粧品を取り扱っていたので、引用商標1及び2の評判は十分承知しており、自己の商標とすべく画策して係争もしていたのである。
しかるに、リバティ社が本件商標を出願したのは、松川との係争事件で和解をした後のことであり、例え、松川と和解をしたとはいえ、請求人は決して認めることはできなかったため、被請求人は、いずれ引用商標1及び2を取得すること及び使用することは難しいことを想定して、「Virgin Pink」に限りなく近いと認識される商標として本件商標を考え、出願したことは容易に推測できるのである。
被請求人がいつから本件商標を使用した商品を製造販売開始したのか、請求人は詳細には知り得ないが、被請求人の商品について使用されている商標に「&」がなく、請求人の商標と同じ「Virgin Pink」の表示がされて宣伝広告されている事実がある(甲第115号証)。
また、被請求人の商品の容器に入っている説明書には、「ヴァージン&ピンクは1986年の発売開始よりいろいろ工夫がなされ、現在の内容・容姿になっております。1994年からは、広く海外からの支持をいただき各国へ輸出しております。類似品が出回っておりますが、有名百貨店でお求めになれる製品は、この医薬部外品ヴァージン&ピンクだけです。」と記載している(甲第116号証の1及び2)。
1986年の発売開始といえば、昭和61年であり、請求人の本件化粧品を指していることは明らかである。これだけをみても、被請求人は、請求人の引用商標1及び2との継続性を謳い、かつ、本件化粧品の品質が改良されたかの如き文言を用いて宣伝している。このような文言をみても、請求人の引用商標1及び2の周知性ただ乗りするという不正の目的を持って出願されたのは明白であり、本件商標の出願時には、取引者・需要者をして請求人の業務に係る本件化粧品と混同を生ずるおそれがあった。
また、インターネットショッピングの通販による商品注文でも「薬用ヴァージンピンク」と「薬用ヴァージン&ピンク」とが混同して記載されており(甲第117号証の1及び2)、更に、ウェブサイトで「ヴァージンピンク」を検索すると、「ヴァージン&ピンク」「Virgin&Pink」も同時に検索される(甲第118号証)。
このうちの一つをみると、「発売以来18年の実績」との宣伝文があるが(甲第119号証)、2008年(平成20年)から18年遡ると1990年(平成2年)になり、明らかに請求人の本件化粧品並びに引用商標1及び2と紛らわしい文言を用いているのである。すなわち、リバティ社及び被請求人が、本件化粧品の販売代理店になったのは、エムツウ社の業務を引き継いだ平成3年(1991年)2月1日以降であり、かつ、本件商標を出願したのが平成8年(1996年)5月14日であり、出願当時はリバティ社及び被請求人はまだ、本件商標を使用していなかった。
このように、被請求人は、請求人の本件化粧品並びに引用商標1及び2との関連性を謳い、取引者・需要者に対して、商品の出所につき混同を生ぜしめているのである。
すなわち、被請求人は松川を通じて約3年にわたり、請求人の業務に係る本件化粧品を取り扱っていた事実があること、平成5年以降は請求人との取引はなくなり、かえって競争関係にあることから、請求人の周知商標である引用商標1及び2の評判にただ乗りして、本件化粧品と紛らわしい化粧品を製造販売する意図をもっていたのである
よって、被請求人の行為は、取引の秩序を乱し、信義側に反する不正の目的で出願した結果、請求人の業務に係る本件化粧品と混同を生ずるおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(5)商標法第4条第1項第19号について
(ア)商標法第4条第1項第19号は、日本国又は外国で周知な商標と同一又は類似の商標を不正の目的で使用するものは登録を受けることができないと規定している。
上述のとおり、請求人の業務に係る本件化粧品について使用している引用商標1及び2は、本件商標の登録出願日前には、取引者・需要者の間に広く認識されていた周知の商標である。
(イ)リバティ社は、平成3年2月から平成4年末頃までは、請求人の商品を専属で卸売店や小売店に卸す業務を行っていた松川の販売代理店として、本件化粧品を取り扱っていたため、本件化粧品の評判並びに引用商標1及び2の周知性については十分知っていた。そのため、リバティ社及び被請求人は、請求人の周知商標にあやかるため、不正の目的をもって本件商標を出願したのである。
リバティ社及び被請求人は、請求人から本件化粧品を松川を通さずに仕入れることを断られた平成5年初めに、本件化粧品の成分分析を勝手に行い、類似品を製造させて販売したことから、本件化粧品を扱うことはできなくなり、かつ、その類似の化粧品に「ヴァージンピンク」商標を使用していたことから、本件化粧品と商品の出所につき混同を生ぜしめていた。
しかしながら、「Virgin Pink」及び「ヴァージンピンク」の商標を自ら取得することが困難であることを想定して、「Virgin Pink」に限りなく近い類似の商標とすることにより、本件化粧品に類似する化粧品を製造販売することを考えていたことが容易に推測できるのであり、畢竟、不正の目的をもって本件商標を出願したといわざるを得ない。
その後、リバティ社は、平成12年7月には、引用商標A及びBに対して、商標登録無効審判請求及び登録異議申立を行っているのであり、請求人の周知商標の出所表示機能を稀釈化させ、名声を毀損させる目的をもっていたことは明らかである。
(ウ)これまで詳細に述べたように、本件化粧品は、本件商標の登録出願の約10年前から製造販売されており、被請求人も平成5年初め頃までは販売先の一つとして本件化粧品を取り扱っていたので、本件化粧品の評判並びに引用商標1及び2の周知性を十分知っていた。そして、類似する化粧品を販売するために、引用商標1及び2と紛らわしい本件商標を選択したのであって、取引の実際にあっては商品の出所につき混同を生ずるおそれのある商標であった。
そして、本件商標の実際の使用に際しても、本件化粧品並びに引用商標1及び2との関連を堂々と謳い、取引者・需要者をして商品の品質の誤認及び商品の出所の混同を生ぜしめているのである。
よって、被請求人は、請求人の周知商標に類似する本件商標を不正の目的をもって使用するために出願したことは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(6)結論
上記詳細に主張立証したとおり、本件商標は、請求人の周知商標と類似する商標であって、指定商品も請求人が周知商標を使用する商品と類似する商品であり、かつ、不正の目的をもって、商標登録を受けたものであるから、商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項により、本件商標の登録は無効とされるべきである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人は、請求人が引用商標1及び2を昭和62年2月頃から本件化粧品に使用している旨主張したことに対して、使用したことを示す資料は一切提出されていないと主張しているが、事実に反する。
請求人は、甲第22ないし第85号証として、平成2年(1990年)から本件商標の出願年である平成8年(2006年)までに本件化粧品の広告が掲載された雑誌及び新聞を提出した。これらの資料には、広告掲載主として請求人の名前は出ていないが、本件化粧品は製造元である請求人が全て供給しているのであり、上記甲各号証は、引用商標1及び2の使用を許諾した代理店若しくは販売店の宣伝広告であり、本件商標の登録出願日前には、引用商標1及び2は、雑誌・新聞などを通じて全国的に宣伝広告がされていたのである。
すなわち、広告掲載年、雑誌名及び掲載回数などについては、審判請求書の請求の理由中、10頁?11頁にかけて記載しており、引用商標1及び2についての使用状況なども詳細に主張しており、使用されていたことを示すれっきとした資料である。
(2)被請求人は、請求人が本件化粧品の製造販売承認を得た平成21年2月18日以前に請求人が、本件化粧品に「ヴァージンピンク」なる商標を使用して製造販売することは法律上不可能であったことは極めて明らかであると主張している。
しかし、このような被請求人の主張は、化粧品・医薬品業界における薬事法上の承認と商品名、商標の使用についての業界の事情に全く疎いことを表している。すなわち、薬事法において承認を受けた化粧品等の販売名と、実際に使用される商品名、つまり商標とが使い分けられているのが化粧品・医薬品業界においては周知のことであり、薬事法により製造販売承認を得ているのは、多くは販売名になっている。このような業界の実情について、実情に詳しい請求人代表者の報告書を提出する(甲第120号証)。
例えば、株式会社資生堂で製造販売している商品名(商標)「アクアレーベル/AQUALABEL」という美白クリームの販売名は「資生堂Wエッセンスクリーム」である(甲第121号証)。また、ロート製薬株式会社で製造販売している商品名(商標)「アクネス/Acnes」という洗顔クリームの販売名は、「アクネスW」である(甲第122号証)。すなわち、株式会社資生堂の美白クリーム「アクアレーベル/AQUALABEL」について製造販売承認を得ているのは「資生堂Wエッセンスクリーム」という販売名であり、ロート製薬株式会社が洗顔クリーム「アクネス/Acnes」について製造販売承認を得ているのは「アクネスW」という販売名である。ロート製薬株式会社の洗顔料「アクネス」については、「アクネスCW」、「アクネスFC」などの販売名からなる商品も販売されている(甲第122号証)。
このように、化粧品・医薬品業界では製造販売承認を得た販売名と実際に使用される商品名、すなわち商標とは異なる場合があり、慣習としてこのような取扱いが認められてきている。したがって、請求人における「Virgin Pink」、「ヴァージンピンク」も本件化粧品について、昭和62年2月から商品名、すなわち商標として継続して使用しているものであり、当初、製造販売承認を得た販売名は「エレガンスゼリー」であった。
よって、被請求人が、「ヴァージンピンク」の製造販売承認日をもって、本件化粧品を製造販売することは不可能であった、あるいは、請求人は他人に使用許諾をする権原をそもそも保持していなかったことは明らかである、などと主張していることは全く理由がないことである。
(3)被請求人が、請求人に使用許諾をする権原がなかったという主張は全く的はずれな誤った理由であることは前述のとおりである。
請求人は、「Virgin Pink」、「ヴァージンピンク」を昭和62年2月から、本件化粧品の商品名、すなわち商標として継続して使用しており、かつ、販売代理店に対しては、本件化粧品は全て請求人が供給し、回収された売上金は全て請求人が管理をしていたので、委託している販売代理店や卸売店は全て把握しており、販売代理店等との間で商標使用許諾の書面が交わされていなくとも、使用許諾が成立していたのである。また、被請求人は、本件商標の商標登録出願日前には請求人による引用商標1及び2の使用実績は存在しないと主張し、更に、被請求人はリバティ社の代表者であったが、リバティ社が請求人の販売代理店であったことは一度たりともないと主張している。しかし、このような主張は全く事実に反している。
リバティ社は、平成3年1月30日に設立されており(甲第15号証)、その翌々日の平成3年2月1日付けの契約書をもってエムツウ社から営業譲渡を受けている(甲第16号証)。契約書中の「商権移譲」の別紙A及び別紙Bには、販売中の商品名・商標として「ヴァージンピンク」が掲載されており、被請求人が本件化粧品の販売に係る業務をエムツウ社から引き継いだのは明らかである。
(4)エムツウ社及びエムツウ社を引き継いだリバティ社が請求人の販売代理店として本件化粧品を販売していた当時の本件化粧品の容器に印刷するための版下、すなわちフィルムの原稿が請求人のもとに保管されている。
甲第123号証は、平成元年12月12日に容器製造業者に渡した版下であり、左上端に、「1.12.12」の記入がある。商標として使用している商品名は引用商標1のとおりの「Virgin Pink」であり、製造承認を得ている商品の販売名は「ロッシヴァージンゼリー」であった。発売元はエムツウ社であり、製造元は請求人の100%子会社であるクーインターナショナル社となっている。平成3年10月22日に容器製造業者に渡した版下でも、販売名は「口ッシヴァージンゼリー」となっており、製造元はクーインターナショナル社であるが、発売元はリバティ社であった。商標は当然「Virgin Pink」である(甲第124号証の1)。
甲第124号証の1の版下の前、平成2年2月21日に容器製造業者に渡した版下では、販売名は「エレガンスゼリー」となっており、発売元はエムツウ社、製造元はクーインターナショナル社、商標は「Virgin Pink」である(甲第124号証の2)。すなわち、甲第124号証の1の版下は、リバティ社がエムツウ社から業務を引き継いだため、甲第124号証の2の版下から発売元の表示をリバティ社に変更するためのものであった。この頃は、販売名を「エレガンスゼリー」及び「ロッシヴァージンゼリー」の両方で製造販売承認を得ていたのであり、リバティ社が発売元となっていた頃の本件化粧品の販売名は「ロッシヴァージンゼリー」であった。また、甲第124号証の3は、エムツウ社が発売元であった頃の容器に印刷した印刷済みのサンプルである。
(5)本件化粧品の発売元がエムツウ社及びエムツウ社を引き継いだリバティ社であった頃の事情は上記のとおりである。その後、請求人は、本件化粧品を医薬部外品として製造承認を得ており、平成6年4月7日付け申請の「医薬部外品製造承認書」及び同日付け申請の「医薬部外品製造品目追加許可書」における販売名は「ヴァージンピンクエース」であった(甲第125号証の1及び2)。また、平成7年7月11日付け申請の「医薬部外品製造承認書」では、販売名を「薬用オレイアホワイトニングェッセンス」として承認を得ており(甲第126号証の1)、その商品は今日も継続して販売されている(甲第126号証の2)。
(6)以上のとおり、リバティ社は、エムツウ社の事業を引き継ぎ、平成3年2月1日以降、請求人の製造に係る本件化粧品の販売元として業務を行っていたのであり、リバティ社が請求人の販売代理店であったことは一度たりともない、という被請求人の主張は事実に反していることは明らかであり、意図的に事実を隠蔽しようとしていると思われる。更に、リバティ社が請求人の製造に係る本件化粧品の販売元として業務を行っていたことの証拠として、請求人が先に提出した甲各号証のうち、甲第24ないし第59号証の各雑誌への広告掲載主が、エムツウ社又はリバティ社となっており、リバティ社が引用商標1及び2の使用に深く関わっており、本件商標の商標登録出願日前における引用商標1及び2の使用実績が多数存在していることは明らかである。
(7)被請求人は、乙第1号証の和解調書を根拠に、平成8年3月6日以降は、松川化学と請求人は、「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原を有しないと主張しているが、このような主張も事実に反しており、和解の内容は請求人とは無関係である。
既に述べたように、松川化学とリバティ社の争いは、本件化粧品の売れ行きが好調であり、「Virgin Pink」の商標も広く知られるようになっていたので、さしずめ、利権をめぐっての代理店争いの様相であった。しかしながら、両社は本件化粧品の製造元である請求人に無断で和解をしたのであり、請求人は利害関係人となってはおらず関知していない事件であった。
被請求人は、平成8年3月6日以降は、リバティ社及びそのライセンシーのみが「ヴァージンピンク」なる商標を使用することができたと主張しているが、その後の平成9年10月13日に本件商標の出願をしている。その真意は不明であるが、松川化学が平成7年5月18日に引用商標B「ヴァージンピンク」を出願しているので、本来正当に引用商標1及び2を使用する権原を有しない被請求人がいずれは「ヴァージンピンク」「Virgin Pink」の商標を使用することができないと考えたのではないかと推察される。
被請求人は、被請求人が主張する和解調書の存在にかかわらず、請求人に無断で引用商標1及び2を使用する権原は元来有していなかったのである。
なお、松川化学は平成9年7月29日に福岡県知事に届けた「化粧品製造製品届書」において、「基礎化粧品」に「ヴァージンピンク」の販売名で承認を得ており、その書類には松川化学から請求人宛に製造を委託をした契約書が添付されている(甲第127号証)。また、請求人も平成9年9月2日に、千葉県知事宛に、「基礎化粧品」について「ヴァージンピンク」の販売名で「化粧品製造製品届出」をしている(甲第128号証)。
(8)被請求人は、引用商標1及び2と本件商標は非類似の商標であると主張している。
確かに、それぞれ別異に商標登録を得ているので、そのように言えるが、しかし、それは審査における机上の判断であって、取引の実情が勘案されたものではない。
引用商標1及び2を使用した本件化粧品は、昭和62年2月頃から全国的に販売され、好調な売れ行きが継続していたため、被請求人も販売代理店となって、引用商標1及び2を大層気に入っていたのであり、本件商標の出願日前には、取引者・需要者に広く知られた周知商標となっていたことは被請求人も重々承知である。
そこで、そのような前提のもとで、商標の類否を再度検討すると、商標の類否に関する審査基準には、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」との基準が示されている。引用商標1及び2と本件商標を対比すると、外観上は「&」の差異のみであり、称呼上は「エンド」の差異のみであり、その差異を除けば、本件商標には引用商標1の「Virgin Pink」の文字構成が全て含まれている。すなわち、上記審査基準に照らしてみても、外観及び称呼において、本件商標は引用商標1及び2に類似するといわざるを得ない。それ故、被請求人が、「Virgin Pink」及び「ヴァージン&ピンク」を使用する化粧品は、請求人の本件化粧品と同一又は類似の化粧品であるかのように誤認し、取引者・需要者をして請求人と被請求人は依然として経済的又は組織的に何等かの関係があると誤認せしめ、請求人の業務に係る本件化粧品と商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(9)被請求人は、乙第1号証の和解調書を根拠に、本件商標の商標登録出願当時、引用商標1及び2はリバティ社の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていたと主張しているが、そのような事実を示す証拠は何も提出されていない。それどころか、リバティ社が本件化粧品の販売代理店であった当時、本件化粧品はすべて請求人から供給されていたのであり、リバティ社には請求人に無断で引用商標1及び2を使用する権原は全くなかったことは先に述べたとおりである。
引用商標1及び2は、被請求人が主張するように、リバティ社の商品表示として広く知られていたのではなく、あくまで、請求人及び請求人が使用を許諾した販売代理店等の継続使用によるものであり、引用商標1及び2が取引者・需要者の間に広く知られている商標であることは被請求人も認めていることになる。
(10)被請求人は、不正の目的で商標登録を受けたものではないと主張している。
しかし、被請求人は、エムツウ社の業務を引き継いで以来、本件化粧品の販売代理店として引用商標1及び2の使用に深くかかわっていたのであり、松川化学との取引が中止したのちは、引用商標1及び2を無断で使用し、自らの所有とすべく画策して、「Virgin Pink」の商標に対して無効審判を請求したりしている。更に悪質と思えるのは、本件化粧品の成分分析を勝手に行って類似品を製造販売したりしていたことである。特に、甲第116ないし第119号証を見れば明らかなように、引用商標1及び2の周知性ただ乗りするという不正の目的を持って出願されたのは明白であり、本件商標の出願日前には、取引者・需要者をして請求人の業務に係る本件化粧品と混同を生ぜしめるおそれがあった。また、引用商標1及び2を自ら取得することが困難であることを想定して、引用商標1及び2に限りなく近い類似の商標を選択して本件商標を取得し、本件化粧品に類似する化粧品を製造販売することを考えていたものと思われ、畢竟、不正の目的をもって本件商標を出願したといわざるを得ず、請求人の引用商標1及び2の出所表示機能を稀釈化させ、名声を毀損させる目的をもっていたことは明らかである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
1 本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないこと
(1)請求人による引用商標1及び2の使用実績はないこと
請求人は、引用商標1及び2を昭和62年2月頃から本件化粧品に使用した旨主張する。
しかしながら、請求人が昭和62年2月頃から引用商標1及び2を本件化粧品に使用したことを示す資料は一切提出されていない。しかも、請求人も審判請求書で自認している如く、請求人が「ヴァージンピンク」の商品名で本件化粧品について製造販売承認を得た日は、平成21年2月18日である。してみれば、当該承認日以前に請求人が、本件化粧品に「ヴァージンピンク」なる商標を使用して製造販売することは法律上不可能であったことは極めて明らかである。
したがって、少なくとも本件商標の商標登録出願日前において、請求人による引用商標1及び2の使用実績は存在しない。
(2)請求人の使用許諾にかかる子会社、販売代理店による引用商標1及び2の使用実績はないこと
(ア)請求人は、引用商標1及び2は、請求人の使用許諾にかかる子会社、販売代理店により本件化粧品に使用された旨主張する。
しかしながら、子会社や販売代理店に使用許諾したことを示す資料は一切提出されていない。しかも、引用商標1及び2に対応する「Virgin Pink」や「ヴァージンピンク」なる商標の商標権者が平成18年7月11日まで請求人ではなかった事実(甲第2及び3号証)及び「ヴァージンピンク」の商品名で本件化粧品について製造販売承認を得た日が平成21年2月18日である事実に徴すれば、それ以前において、請求人は他人に使用許諾をする権原をそもそも保持していなかったことは明らかである。
(イ)同様に、株式会社ベルトゥリー・エンタープライズ、エムツウ社及びリバティ社が請求人の販売代理店であることを示す資料も一切提出されていない。むしろ、上述の如く、請求人が平成21年2月17日以前においては製造販売承認を得ていなかった事実に徴すれば、請求人が製造元となり得るはずはない。このことは甲各号証の何れにも請求人を製造元とする表示が一切存在しないことからも明らかである。
そして、請求人が製造元でない以上、請求人の販売代理店が存在することはあり得ない。因みに、被請求人はリバティ社の代表者であったが、リバティ社が請求人の販売代理店であったことは一度たりともない。
(ウ)したがって、少なくとも本件商標の商標登録出願日前において請求人の使用許諾に係る子会社、販売代理店による引用商標1及び2の使用実績は存在しない。
(3)松川化学及び請求人は、「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原を有しないこと
被請求人が代表者をしていたリバティ社は、「ヴァージンピンク」なる商標の使用実績を根拠に、平成6年に不正競争防止法に基き、松川化学を債務者として東京地方裁判所に仮処分命令中立を行なった。その結果、東京地方裁判所平成6年(ヨ)第22030号審尋調書(和解)(乙第1号証)から明らかな如く、「ヴァージンピンク」なる商標は債権者たるリバティ社が使用し、債務者たる松川化学はもとより、その利害関係人(「松川伸也」、「松川商店」、「西日本エラン販売」、「西日本エラン販売株式会社」及びその他のいかなる呼称を用いる場合も含む。)も、平成8年3月6日以降「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用することができなくなり、松川化学は、医薬部外品製造承認申請における名称を「ヴァージンピンク」から「バージンピンク」に変更した。すなわち、松川化学及びその利害関係人は平成8年3月6日以降「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を適法に使用する権原を有しないことが確定した。
然るところ、請求人と松川化学との間に、請求人が本件審判請求書で主張する如き関係があるのであれば、請求人と松川化学は実質的に同一視でき、また少なくとも乙第1号証の和解調書が規定する利害関係人は、上記の如く「その他のいかなる呼称を用いる場合も含む。」のであるから、請求人は正に松川化学の利害関係人に他ならない。
したがって、松川化学及び請求人が、平成8年3月6日以降「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用することはあり得ない。
それにも拘らず仮に、松川化学及び請求人が「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用した、とするなら、それは正に法を無視した不正使用そのものであって、当該不正使用に法的保護が与えられないことは極めて当然であり、自ずと当該不正使用に基づく主張は到底許されない。
(4)引用商標1及び2は、請求人等の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていないこと
請求人は、引用商標1及び2は請求人等の商品表示として需要者の間に広く認識されている旨主張する。
しかしながら、上述した如く、引用商標1及び2は、本件商標の登録出願日前において、請求人はもとより、請求人のライセンシーや販売代理店によっても使用された実績は存在しない。
したがって、引用商標1及び2が、本件商標の登録出願時に請求人の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていることはあり得ない。
むしろ、乙第1号証の和解調書から明らかな如く、平成8年3月6日以降は、本件商標の商標登録出願人たるリバティー社及びそのライセンシーのみが「ヴァージンピンク」なる商標を「化粧品」について使用することができた事実から明らかな如く、ほぼ同時期になされた本件商標の登録出願当時「ヴァージンピンク」なる商標は、本件商標の登録出願人たるリバティ社の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていたのが実態である。
(5)引用商標1及び2と本件商標は非類似の商標であること
(ア)引用商標1及び2から生じる自然称呼は「バージンピンク」であり、他方、本件商標から生じる自然称呼は「バージンエンドピンク」である。
然るとき、両称呼には「工」「ン」「ド」の3音の有無という顕著な差があり、彼此混同のおそれなく明瞭に聴別し得ることは極めて明らかである。
また、引用商標1及び2と本件商標とは、少なくとも看者の注意を惹く中央部において、「&」の文字の有無という顕著の差があり、彼此混同のおそれなく明確に識別し得ることは極めて明らかである。
なお、引用商標1及び2と本件商標とは、観念上の類似が問題となり得ないことは論ずるまでもなく自明である。
したがって、引用商標1及び2と本件商標とは、称呼・外観・観念の何れにおいても明確に区別して商取引される全く非類似の商標である。
(イ)因みに、以上に述べたところは、本件商標「Virgin & Pink」の後願にも拘らず引用商標A「Virgin Pink」が非類似の商標として登録されている事実、引用商標B「ヴァージンピンク」の後願にも拘らず登録第4224557号商標「ヴァージン&ピンク」(被請求人商標)が非類似の商標として登録されている事実、登録第4224557号商標「ヴァージン&ピンク」(被請求人商標)の後願にも拘らず引用商標D「ヴァージンピンク」が非類似の商標としてそれぞれ登録されている事実からも明らかである。
(6)請求人の業務に係る商品と混同を生じないこと
前述したところから明らかな如く、「ヴァージンピンク」なる商標は本件商標の登録出願人たるリバティ社のみが使用し得た商標であること、少なくとも本件商標の登録出願日前に、請求人あるいはそのライセンシーや販売代理店により「化粧品」について引用商標1及び2の使用実績がないこと、並びに引用商標1及び2と本件商標が非類似であることに徴すれば、むしろ「ヴァージンピンク」なる商標が、本件商標の登録出願当時、本件商標の登録出願人たるリバティ社の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていたこととも相侯つて、リバティ社やそのライセンシーが本件商標を「化粧品」に使用しても、本件商標の登録出願時に請求人の業務に係る「化粧品」と混同を生じるおそれのなかったことは極めて明らかである。
(7)不正の目的で商標登録を受けたものでないこと
前述したところから明らかな如く、リバティ社やそのライセンシーが本件商標を使用しても、請求人の業務に係る「化粧品」と混同を生じるおそれがなかった以上、リバティ社が平成8年3月6日以降「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原を有していたこととも相挨って、リバティ社が本件商標を出願し、設定登録を受けたことに不正の目的が入る余地はない。
然るところ、本件商標権の設定登録の日から既に5年を超えた期間が経過していることは極めて明らかであるから、本件審判の請求が商標法第47条の規定に違反していることも明らかである。
(8)小括
以上のとおり、本件商標は、その登録出願時に商標法第4条第1項第15号に何ら該当するものではない。
また、そもそも本件審判の請求は商標法第47条の規定により許されないものである。
2 本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しないこと
(1)請求人による引用商標1及び2の使用実績はないこと
前述したとおり、少なくとも本件商標の登録出願日前において、請求人による引用商標1及び2の使用実績は存在しない。
(2)請求人の使用許諾に係る子会社、販売代理店による引用商標1及び2の使用実績はないこと
前述したとおり、少なくとも本件商標の登録出願日前において、請求人の許諾に係る子会社、販売代理店による引用商標の使用実績は存在しない。
(3)松川化学及び請求人は、「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原を有しないこと
前述のとおり、松川化学及び請求人は「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を適法に使用する権原を有しない以上、請求人等が「化粧品」に「ヴァージンピンク」なる商標を使用することはあり得ず、仮に請求人等が使用したのであれば、それは正に法を無視した不正使用であって、当該不正使用に基づく主張は許されない。
(4)引用商標1及び2は請求人等の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていないこと
前述のとおり、引用商標1及び2が、本件商標の登録出願時に請求人の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていることはあり得ず、むしろ本件商標の登録出願時には「ヴァージンピンク」なる商標は、本件商標の出願人たるリバティ社の商品表示として取引者・需要者の間に広く認識されていたのが実態である。
(5)本件商標は、引用商標1及び2と同一又は類似の商標でないこと
前述のとおり、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼・外観・観念の何れにおいても明確に区別して商取引される全く非類似の商標で、同一又は類似する商標でないことは極めて明らかである。
(6)不正の目的で使用するものでないこと
前述のとおり、リバティ社やそのライセンシーが本件商標を使用しても、請求人の業務に係る「化粧品」と混同を生じるおそれがなかった以上、リバティ社が平成8年3月6日以降「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原を有していたこととも相侯って、リバティ社による本件商標の登録出願時に、同社が本件商標を使用することに不正の目的が入る余地はない。
(7)小括
以上のとおり、引用商標1及び2が周知著名商標でないこと、本件商標と引用商標1及び2とが同一又は類似の商標でないこと、本件商標は不正の目的で使用するものでないことが明らかであるので、本件商標は、その登録出願時に商標法第4条第1項第19号に何ら該当するものではない。
3 本件審判の請求は権利の濫用であること
請求人は、前述の如く、「ヴァージンピンク」なる商標の使用実績が全くなかったにも拘らず、かつまた松川化学が「ヴァージンピンク」なる商標を使用する権原がないことを知りながら、松川化学が商標登録していることを奇貨とし、敢えて松川化学から当該「ヴァージンピンク」なる商標権を譲り受け、既に本件商標に化体している被請求人の業務上の信用を横取りし、不正の利益を得る目的を以つて本件審判を請求したのが実態である。
よって、請求人は予備的に、本件審判の請求は権利の濫用であり、到底許されるべきでないことを主張する。
4 請求人の事情に関する主張について
(1)請求人は、事情に関し種々主張しているが、具体的な根拠を示す資料は何ら提出されていないので、その真偽は不明である。
(2)被請求人に関わる部分については以下のとおり反論する。
(ア)請求人は、「リバティ社は請求人から直接、本件化粧品を仕入れたいと請求人に申し入れて来るようになった」旨主張するが、リバティ社が請求人に直接仕入れを申し込んだ事実はない。このことは、当時請求人に本件化粧品の製造販売承認がなかったことからも明らかである。
(イ)請求人は、「リバティ社は本件化粧品の成分分析をした」旨主張するが、リバティ社が成分分析をした事実はない。
5 結論
以上説述致した如く、本件商標は何ら商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当せず、自ずと本件商標登録には商標法第46条第1項に規定する無効理由は存在しないものであるから、本件審判の請求は成り立たない。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標は、平成10年12月25日に設定登録されたものであり、設定登録から5年以上が経過していることは明らかである。そして、設定登録から5年を経過した後は、当該商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたことを理由とする同法第46条第1項の審判は、不正の目的で商標登録を受けた場合を除き、請求することができないことは、同法第47条の規定から明らかである。
したがって、本件商標が同法第4条第1項第15号に違反して登録されたか否かは、不正の目的の存否が問題となる。そこで、この点について、以下に検討する。
(2)請求人は、本件化粧品は引用商標1及び2を使用して昭和62年2月頃から請求人によって製造販売され、平成3年?4年頃には取引者・需要者間に好評を博していたこと、被請求人は松川を通じて約3年にわたり請求人の業務に係る本件化粧品を取り扱っていたこと、平成5年以降は請求人との取引はなくなり、むしろ競争関係にあることから、被請求人が請求人の周知商標である引用商標1及び2の評判にただ乗りして本件化粧品と紛らわしい化粧品を製造販売する意図を有していたこと、などを理由として、本件商標は信義則に反する不正の目的で出願したものであり、請求人の業務に係る本件化粧品と混同を生ずるおそれがあるものである旨主張して、証拠を提出している。
(3)しかしながら、以下のとおり、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において引用商標1及び2が請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(ア)請求人は、昭和62年2月頃から引用商標1及び2を使用して本件化粧品を製造販売していた旨主張するが、その事実を具体的かつ客観的に示す証拠はない。そして、請求人が引用商標1を昭和62年2月の使用当初から変更することなく今日まで継続して使用している根拠として提示した甲第8ないし第12号証についてみると、甲第8号証は、本件化粧品に関するチラシであって引用商標1及び2が表示されていることが認められるものの、その作成者、作成日、頒布日等の事実は一切不明であるし、甲第9ないし12号証は、本件化粧品を取り扱う店舗の写真と認められるものの、これらの写真は2008年11月27日又は28日に撮影されたものであるから、これらの証拠によっては、昭和62年2月頃に引用商標1及び2が使用されていたものと認めることはできない。
(イ)請求人は、引用商標1及び2を使用した本件化粧品について平成2年から6年に雑誌に宣伝広告を行ったとして、甲第22ないし第59号証を提出しているが、これら証拠として提示された雑誌の写しは不鮮明であり、判読できない部分が多い。かろうじて判読可能なものを見ても、請求人の表示は何処にも見当たらず、発売元として、エムツウ社が記載されている数例(甲第22、第27、第32、第36、第44号証)を除き、リバティ社と記載されているものが殆どである(甲第24、第28ないし第31、第33ないし第35、第37ないし第39、第41ないし第43、第45ないし第48、第50ないし第59号証)。そして、請求人は、上記宣伝広告の各種雑誌への掲載回数について、例えば平成2年には「女性自身」35回、「女性セブン」32回、「週刊女性」16回、「ViVi」4回、「FYTTE」3回、などと述べているが、これらを客観的に立証する証拠はない。
(ウ)請求人は、本件商標の登録出願前後からそれ以降の使用に係る宣伝広告を掲載した新聞、雑誌、カタログの写しとして甲第60ないし第111号証を提出しているが、これらには本件商標の登録出願後のものが多く含まれており(甲第63号証の7及び8、第69号証の1及び2、第70号証の8ないし17、第71号証の3ないし8、第72号証の2及び3、第73号証の1ないし3、第74号証の1ないし3、第75号証の1ないし3、第76号証の1及び2、第77号証の1ないし3、第78並びに第86ないし第111号証)、必ずしも本件商標の登録出願時における引用商標1及び2の周知性を立証する証拠とはなり得ないものである。しかも、これらの広告中には、発売元ないしは製造元として、請求人の表示は一切見当たらず、「ハイテクサービス株式会社」又は「株式会社ベルトゥリー・エンタープライズ」の記載があるのみである。
(エ)請求人は、甲第22ないし第85号証は、引用商標1及び2の使用を許諾した代理店又は販売店による宣伝広告である旨主張するが、上記広告に掲載されているエムツウ社、リバティ社、ハイテクサービス株式会社及び株式会社ベルトゥリー・エンタープライズが、引用商標1及び2の使用について請求人から許諾を受けていること並びに請求人の代理店又は販売店であることを具体的に示すものはない。
仮に、上記各社が請求人から引用商標1及び2の使用許諾を受けているとしても、上記広告中には請求人の表示は一切見当たらないのであり、これら広告を見た需要者・取引者が請求人の業務に係る商品であると認識し理解するものとは到底いえない。
(オ)その他、引用商標1及び2を使用した本件化粧品を請求人自身が販売した事実、その売上高、市場占有率等を具体的に示す証拠はない。
(カ)請求人は、エムツウ社及びエムツウ社を引き継いだリバティ社が請求人の販売代理店として本件化粧品を販売していた当時の本件化粧品の容器に印刷するための版下(原稿)として甲第123号証及び第124号証の1ないし3を提出している。
確かに、これらには、発売元としてエムツウ社又はリバティ社が表示され、製造元としてクーインターナショナル社が表示されていること、甲第123号証には、左上端に「1.12.12」と思しき数字が薄く手書きされており、甲第124号証の1には左上端に「3.3.10」と思しき数字が薄く手書きされていることが認められるものの、これらの数字が平成元年12月12日又は平成3年3月10日を意味するものとは直ちに認め難いものである。仮に、上記数字が上記日付を示すものであるとしても、これらの日付で上記容器が製造業者に発注されたことを客観的かつ具体的に示す証拠はない。
そして、仮に、上記容器が平成元年ないしは平成3年頃に作成され使用されたとしても、上記甲第22ないし第85号証には、上記容器の写真は何処にも掲載されておらず、かつ、製造元が請求人であることを示す表示は一切見当たらないのであるから、需要者・取引者が請求人の業務に係る商品であると認識し理解するものとはいえないことには変わりがない。
(キ)以上からすれば、引用商標1及び2は、本件商標の登録出願前、少なくとも甲第22ないし第59号証の各種雑誌が発行された平成2年ないし6年頃においては、請求人の業務に係る商品というよりも、むしろリバティ社の業務に係る商品を表示する商標として相当程度知られていたものというべきである。そして、その後ないし本件商標の登録出願後から登録査定時までの間に行われた宣伝広告にも、請求人の表示は一切見当たらないのであるから、引用商標1及び2は本件商標の登録出願時及び登録査定時においては、請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
(4)次に、本件商標と引用商標1及び2との類否についてみるに、それぞれの構成に照らし、本件商標は「バージンアンドピンク」の称呼を生じ、引用商標1及び2はいずれも「ヴァージンピンク」の称呼を生ずるものといえる。もっとも、「ヴァージンピンク」の称呼は外来の発音であり、日本人にとっては正確に称呼・聴取し難いものであって、限りなく「バージンピンク」に近く称呼され聴取されるものである。
しかして、上記「バージンアンドピンク」の称呼と「ヴァージンピンク」又は「バージンピンク」の称呼とは、中間における「アンド」の音の有無という顕著な差異を有することにより、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感・音調が異なり明瞭に区別することができるものである。
また、本件商標と引用商標1及び2とは、「&」の有無により外観上判然と区別し得るものであるし、両者とも親しまれた既成の観念を有する成語を表したものとは認められないから、観念上両者を比較すべくもない。
そうすると、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(5)請求人は、甲第116ないし第119号証から明らかなように、本件商標は引用商標1及び2の周知性ただ乗りする不正の目的をもって出願されたことは明白であると主張するが、甲第116号証(枝番を含む。)は、本件商標が表示された商品及び商品の包装用容器の写真及び該商品の説明書であり、その撮影日(平成21年4月28日)は本件商標の登録出願後のものであるし、甲第117ないし第119号証(枝番を含む。)は、いずれも本件商標の登録出願後に発行されたものであるから、これらの証拠によっては、本件商標の登録出願時において不正の目的が存在していた等の事情を立証し得るものではない。
(6)以上を総合勘案すると、リバティ社による本件商標の登録出願時においては、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人を連想、想起するようなことはなく、該商品が請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはなかったものというべきである。そして、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものというのが相当である。
また、本件商標の登録出願時において、引用商標1及び2が請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものでない以上、その周知性ただ乗りすべき必然性はないし、むしろ引用商標1及び2はリバティ社の取扱に係る商品を表示する商標として相当程度知られていたこと、本件商標をその指定商品に使用しても請求人の業務に係る商品と混同するおそれがないこと、などからすれば、本件商標の登録出願につき、出願人たるリバティ社に、不正の利益を得る目的、引用商標1及び2の出所表示機能を希釈化させ名声を毀損させる目的、請求人等に損害を加える目的等の不正の目的があったものということはできない。
(7)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標の登録出願時において、引用商標1及び2が請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたとはいえないこと、本件商標と引用商標1及び2とは非類似の商標であること、本件商標をその指定商品に使用しても請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがないこと、本件商標は不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえないことは、前示のとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標1及び引用商標A







審理終結日 2009-11-19 
結審通知日 2009-11-25 
審決日 2009-12-10 
出願番号 商願平9-165965 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (Z03)
T 1 11・ 271- Y (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 三男 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
久我 敬史
登録日 1998-12-25 
登録番号 商標登録第4224557号(T4224557) 
商標の称呼 バージンアンドピンク 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 
代理人 川村 恭子 
代理人 佐々木 功 

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