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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない X35
管理番号 1226564 
審判番号 不服2009-10700 
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-07 
確定日 2010-10-22 
事件の表示 商願2008-5518拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成20年1月29日に登録出願されたものである。
その後、指定役務については、原審における平成21年1月19日付けの手続補正書により、第35類「運動用特殊衣服及び運動用特殊靴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その構成中に、ややデザインを施してなる『PANTANAL』の文字を含むものであるが、これはブラジル中西部に位置する地名『Pantanal』を直ちに認識させるものであり、しかも、この地域は『パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)』としてユネスコの世界遺産に登録されているものであるから、一法人である出願人が自己の商標として採択・使用することは国際信義に反し穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」と認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 本願商標の商標法第4条第1項第7号の該当性
本願商標は、別掲1のとおり、ブラジル連邦共和国に生息する鳥であるオニオオハシと思しき図形と、該図形に一部が重なるように、「PAnTAnAL」及び「Matogrossense」の文字を配してなるところ、その構成中、「PAnTAnAL」の文字は、大文字及び小文字を取り混ぜた欧文字を二重線で書してなり、文字の一部と接した下線を配する等、ややデザイン化されているとはいえ、いまだ特異ともいい難い構成からなるものである。
そして、「Pantanal」及び、その表音である「パンタナル」または、「パンタナール」が、国連機関のUNESCO(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産として登録されている『パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)』(ブラジル連邦共和国)を表す略称として一般的に、採択、使用されている実情が、別掲2のとおり、新聞記事情報及びインターネット・ホームページの記載から窺い知ることができる。
そうすると、本願商標の構成中、「PAnTAnAL」の文字からは、上記略称を想起するほかに、特定の意味を有する親しまれた語が見いだせないことからすれば、これに接する取引者、需要者は、世界遺産の一つである「パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)」を表したものと容易に理解すると判断するのが相当である。
ところで、UNESCOの世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている登録基準のうち、いずれか1つ以上に合致するとともに、その国において適切な保護管理体制がとられていること等の様々な厳しい条件を満たす必要があり、また、世界遺産リストに登録された後も、保有国と国際社会にはその世界遺産を保護する義務と責任が生じる(「社団法人 日本ユネスコ協会連盟」のホームページを参照 http://www.unesco.jp/contents/isan/about.html)など、ある国が、世界遺産リストへの登録を受けようとする場合、また、登録を受けた場合、その国においては、地方自治体や国全体をあげての管理体制の整備、環境整備、予算措置等様々な取り組みが必要とされているところである。
そして、商標法第4条第1項第7号における「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁 平成17(行ケ)第10349号判決、平成18年9月20日判決言渡し)から、請求人の商標を、その指定役務について、採択、使用することが、国際信義に反するといえる場合にも、本条項に該当すると解されるものである。
してみれば、国をあげての管理等が必要とされている世界遺産の一つである「パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)」を、容易に理解させる「PAnTAnAL」の文字を含む本願商標を、一私人である請求人が営利目的で、自己の商標として登録し、使用することは、ブラジル連邦共和国の尊厳、ひいては国際間の信義則を保つ観点から、穏当ではないものといわざるを得ない。

2 請求人の主張(要旨)
請求人は、証拠を提出して、本願商標を付した商品を長年継続して販売、広告宣伝した結果、サッカー関連商品の分野においては、周知、著名となっており、また、ブラジル連邦共和国においても、周知な企業である旨、主張しているが、それを証明する証拠等は提出されておらず、また、仮に、請求人の商標として周知、著名であるとしても、そのことが直ちに、前記判断に影響を及ぼすとはいえないものであるから、請求人のこの主張は採用できない。
また、請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨、主張するが、登録出願された商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かの判断は、それぞれの構成態様や取引の実情等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の主張している登録例をもって本件の判断が拘束されるものでもないのであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるべきものであるから、請求人が挙げた商標登録例の存在によって、前記判断は左右されるものではない。
その他の請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すに足りない。

3 まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定の理由は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)


別掲2(新聞記事情報及びインターネット・ホームページにおける記載。なお、下線は、当合議体で付したものである。)

1 新聞記事情報における記載について
(1)「共同通信」(平成21年1月1日付け)
「生物の楽園に迫る陰 最大の湿地、パンタナル」の見出しの下、「南米大陸中央部のブラジル、ボリビア、パラグアイにまたがる世界最大の淡水湿地パンタナルの朝は、生物の営みにあふれている。種類数では熱帯林などに及ばないが十六万平方キロに及ぶ大湿地の生態系が支える生物の量は世界最多とされる。だが、世界自然遺産でもあるこの生物の楽園にも、さまざまな人間活動の影響が忍び寄る。『パンタナルに注ぐ河川の上流域では今、大豆生産がブーム。農地が急拡大し、土砂や農薬の流入量が増えている』とブラジル・マトグロソ連邦大のパウロ・テグゼイラ博士が言う。『パンタナルのほとんどが私有地なので、環境への打撃が大きい過剰な放牧も規制しにくい』とも。」の記載がある。
(2)「毎日新聞」(平成20年10月24日付け、地方版/茨城23頁)
「企画展:ブラジル移民100周年を記念、活躍している人たち紹介--常陸太田 /茨城」の見出しの下、「また、実行委代表の川上さんが撮影したブラジルの世界遺産『イグアス滝』『パンタナル大湿原』などのほか、県民ブラジル移民年表、関係文献なども展示されている。」の記載がある。
(3)「北海道新聞」(平成20年6月27日付け、朝刊22頁)
「<世界の自然とまちづくり 伊東俊和さんの報告>4*人々の行き交う宿*ボニート(ブラジル)など*安く良質 集客に貢献」の見出しの下、「ブラジルの世界遺産パンタナール湿地でエコツアーを企画、運営しているギルバート氏の話が印象に残っている。」の記載がある。
(4)「北海道新聞」(平成19年12月13日付け、夕刊16頁)
「<拝啓ふるさと>間山容子*日本語学校指導の夫と滞在中*FROMブラジル*移民の国で自分見つめる」の見出しの下、「ここに南北マットグロッソ州の中心校が置かれていて、主人が巡回指導すべき日系人が運営する日本語学校は、世界遺産として知られるパンタナールとともにこの二州にまたがっています。」の記載がある。
(5)「東京新聞」(平成18年7月2日付け、朝刊14頁)
「TV番組案内」の見出しの下、「クイズ/世界ウルルン滞在記/★TBS=後10・15/俳優の渋江譲二が、世界遺産にも登録されている世界最大級の大湿原、ブラジルのパンタナールを訪ね、“ピヨン”と呼ばれる牧童たちと生活を共にする。」の記載がある。

2 インターネット・ホームページにおける記載について
(1)「添乗資料集」のサイトには、「パンタナール PANTANAL」のタイトルの下、「パンタナールはアンデス山脈とブラジル高原の間に形成された大湿地帯。パンターノpantano は、ポルトガル語で「湿原」という意味。雨期になるとパラグアイ河が氾濫しその7割が水に沈み、乾期には上流水域で大小無数の湖沼群や湿原が出現し、沢山の鳥類が大きなコロニーを形成する。」、また、「世界遺産/2000 年に世界自然遺産に登録されたのは、ボリビア国境沿いにあるブラジル国立パンタナールマットグロッソ自然公園を中心とする領域1878.18 km2(MT 州とMS 州の州境)で、パンタナール湿原全域の約1.3%に相当する。」の記載がある。
(http://homepage3.nifty.com/tenjo-in/BRA%20pantanal.pdf)
(2)「駐日ブラジル大使館/THE WORLD HERITAGE OF BRAZIL|世界遺産の旅|」のサイトには、「世界最大の湿地平原/パンタナルは野生の宝庫」のタイトルの下、「世界最大級の熱帯性湿地であるパンタナルはブラジル西部からボリビア、パラグアイに一部またがる総面積23万km2の湿地帯で、ブラジルのマット・グロッソ州とマット・グロッソ・ド・スール州だけでも14万km2に広がっています。湿原の一部、クイアバ川とパラグアイ川との合流点付近の13万5千haがマット・グロッソ・パンタナル自然保護地域として、2000年にユネスコに世界遺産登録されました。」の記載がある。
(http://www.brasemb.or.jp/tourism/BrazilWorldHeritage.pdf)
(3)「世界遺産パンタナール情報ねっと」のサイトには、「パンタナール」のタイトルの下、「概要/パンタナール大湿原(約14万平方km、雨期は23万平方km)は、南米大陸中央部をブラジル・ボリビア・パラグアイにまたがって拡がる海抜高度80mから150mの広大なくぼ地であり、その領域の大部分はブラジル領(マットグロッソドスール州域65%、マットグロッソ州域35%)に位置しています。」の記載がある。
(http://www.pantanal.squares.net/pantanal.shtml)
(4)「ウィキペディアフリー百科事典」のサイトには、「パンタナル」のタイトルの下、「パンタナールは世界最大級の熱帯性湿地である。パンタナールの名前の由来は、ポルトガル語の『pantano』(日本語では、沼地を意味する)である。水文学、地質学、生態学の側面においてパンタナールは特異な性質を持つ。1982年のRADAMBRASILにおいて、パンタナール地域には12種類の生態系が存在していると定義されている。大部分がブラジルのマットグロッソ州とマットグロッソ・ド・スル州に所属し、一部がボリビアとパラグアイにまたがる。総面積195,000平方キロメートルであり、そのうち1,878平方キロメートルが2000年に『パンタナール自然保護地域』としてUNESCOの世界遺産に登録された。また、ラムサール条約登録地である。」の記載がある。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%8A%E3%83%AB)
(5)「ブラジルとれんでぃ情報」のサイトには、「世界遺産・パンタナール(Pantanal)大湿原」のタイトルの下、「パンタナールとは世界最大級の熱帯性湿地帯のことを言い、ブラジルのマットグロッソ州とマットグロッソ・ド・スル州に位置しています(一部ボリビアとパラグアイにまで至る)。総面積は195,000平方キロメートルあり、その内1,878平方キロメートルもの地域が、パンタナール自然保護地域としてUNESCOの世界遺産に登録されているのです。」の記載がある。
(http://braziltrendy.info/?page_id=42)

審理終結日 2010-07-16 
結審通知日 2010-08-06 
審決日 2010-08-17 
出願番号 商願2008-5518(T2008-5518) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (X35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津金 純子今田 三男 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
田中 亨子
商標の称呼 パンタナールマトグロセンセ、パンタナール、パンタナル、マトグロセンセ、マトグロッセンセ、マトグロッセンス 
代理人 市原 俊一 

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