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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) Y09141825
管理番号 1225190 
判定請求番号 判定2010-695001 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2010-11-26 
種別 判定 
2010-04-15 
確定日 2010-07-28 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第852773号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、国際商標登録第852773号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第852773号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成からなり、2004年7月30日に欧州共同体においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2005年1月27日に国際商標登録出願、第9類「Spectacles,sunglasses and spectacle cases.」、第14類「Jewelry including rings,key holders,clasps and earrings,cuff links,bracelets,charms,brooches,necklaces,tie pins,ornaments,medallions;timepieces and chronometric apparatus and instruments including watches,watch cases,alarm clocks;jewelry boxes of precious metals,their alloys or coated therewith.」、第18類「Leather and imitation leather;traveling bags,traveling sets(leather goods),trunks and suitcases,garment bags for travel purposes,vanitycases,backpacks,shoulder bags,handbags,attache cases,document holders and briefcases of leather,clutch bags,wallets,purses,key cases,card cases;umbrellas.」、第25類「Clothing and underwear including sweaters,shirts,tee-shirts,lingerie,belts(clothing),scarves,neckties,shawls,vests,skirts,raincoats,overcoats,suspenders,trousers,denim trousers,pullovers,dresses,jackets,sashes for wear,gloves,tights,socks,bathing suits,bath robes,pajamas,nightshirts,shorts,pockets(clothing);shoes,boots,slippers;headgear.」を指定商品として、平成18年3月3日に設定登録されたものである。
第2 (イ)号標章
請求人が商品「かばん」に使用する標章は、別掲(2)の構成からなるものである(以下「(イ)号標章」という。)。
第3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、別紙1ないし別紙3及び甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は、平成22年3月10日付けの内容証明郵便で、被請求人から、本件商標に係る商標権(以下、「本件商標権」という。)の侵害である旨の警告を受けている。
したがって、請求人は、判定請求の必要性を有している。
2 (イ)号標章が商標権の効力の範囲に属しない理由
(1)(イ)号標章の使用は、商標的使用ではない。
(イ)号標章は、「かばん」の表面全体に表されているところ、「かばん」の表面全体に模様を表すことはごく普通に行われているところである(甲第1号証ないし甲第5号証)。
してみれば、(イ)号標章が表示された「かばん」に接した需要者は、(イ)号標章を「かばん」の表面に表された模様としてのみ認識するのであって、自他商品の識別標識として認識することはない。
ゆえに、(イ)号標章の使用は、本件商標権の効力の範囲に属しない。
ところで、請求人は、商品の表面全体に模様的に商標を使用した場合に、自他商品識別標識としての機能が生ずる場合があること(最判昭62年(オ)第1298号)を否定するものではない。
しかしながら、上記最高裁判例は、著名性が認められる登録商標と実質的に同一の態様と認められる標章が、模様として商品の表面全体に表された事例における判断であって、当該模様が登録商標と実質的に同一の態様であるからこそ、登録商標の著名性を借りて、当該模様が識別力を発揮しているとしたものである。
本件にあっては、(イ)号標章の態様と本件商標の態様とが実質的に同一であるとはいえないから、(イ)号標章は、単なる模様として認識されるにとどまるのである。
(2)(イ)号標章の使用が商標的使用であると認められたとしても、(イ)号標章における各図形要素は、分離して認識されることはない。
(イ)号標章は、全面に亘り、左右に傾斜したドット列を交叉状に表し、その交叉部に数字「00」を表して千鳥状の菱形列を構成し、各菱形列は、菱形エリア内に、「菱形地クロス図形」、「文字X」が交互に表された第1菱形列と、「クロス図形」のみが連続して表された第2菱形列と、「円形地クロス図形」、「菱形地クロス図形」が交互に表された第3菱形列とで構成され、上から第1菱形列、第2菱形列、第3菱形列、第2菱形列、第1菱形列、・・・の順に繰り返し表してなるものである(以下、「クロス図形」、「菱形地クロス図形」、「円形地クロス図形」をまとめていうときは、「各クロス図形」という。)。
かかる構成にあっては、数字「00」とドット列とで構成された菱形列と各クロス図形とは、各クロス図形が菱形エリア内に規則性をもって整然と表されていることから、各図形要素は有機的に結合したものとして認識され、全体として一体的に認識される。
してみれば、(イ)号標章における各クロス図形は、(イ)号標章を構成する図形要素の一つとして埋没して認識されるから、各クロス図形が分離して認識されることはない。
(3)各クロス図形が分離して認識されるとしても、本件商標と(イ)号標章中の「菱形地クロス図形」は、類似しない。
ア 本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、やや内側に弧状に凹んだ菱形地に、中心に小さな黒丸が配された白抜きの4弁の花模様を表してなるものである。
かかる外観を備えた本件商標からは、特定の称呼を生ずることはないものの、「菱形地に表された4弁の花」程度の観念を生ずるものである。
イ 「菱形地クロス図形」について
(イ)号標章の一図形要素である「菱形地クロス図形」は、やや内側に弧状に凹んだ菱形地に、小さな丸図形を中心として4つの独立した楕円形を上下左右方向に表してなるものである。
中央の丸図形及び各楕円図形はそれぞれ独立して表され、楕円図形の短手方向の幅も中心の丸図形の径を超えない扁平なものであって「花弁」として理解されるものではなく、ここから「花」が想起されることはない。
加えて、小さな丸図形を中心として4つの独立した楕円形を上下左右方向に表した図形は「クロス模様」として広く用いられているものである(甲第6号証ないし甲第10号証)から、当該図形要素は、無理なく「クロス模様」として認識されるものである。
ウ 本件商標と「菱形地クロス図形」の類否
本件商標と「菱形地クロス図形」は、それぞれ上記ア及びイの構成よりなるものであるから、これらに接する需要者は、それぞれ異なる印象の図形として理解、記憶するものである。
したがって、本件商標と「菱形地クロス図形」は、非類似の商標である。
(4)むすび
ア 請求人は、判定請求の必要性を有している。
イ (イ)号標章の使用は、商標的使用ではない。
ウ (イ)号標章の使用が、商標的使用であると認められるとしても、(イ)号標章の各図形要素が、分離して認識されることはない。
エ (イ)号標章の各図形要素が分離して認識されると認められるとしても、本件商標と(イ)号標章中の「菱形地クロス図形」は、類似しない。
オ 以上のとおりであるから、商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、本件商標権の効力の範囲に属しない。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、「(1)本件判定請求を却下する。(2)商品『かばん』に使用する(イ)号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するとの判定を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第34号証(枝番を含む。)を提出した。
1 判定請求の必要性
(イ)号標章の使用等に関する請求人と被請求人の紛争は、4月28日付けの合意書の締結により、既に解決されている(乙第8号証)。
それにもかかわらず、本件判定請求をすることは、実質的な紛争の蒸し返しにほかならず、当該合意書の趣旨を全く没却することとなる。
また、請求人は、当該合意書内で被請求人との間で、別掲(1)に表示されている「かばん」を販売しないこと、(イ)号標章を構成するクロス図形等を使用しないことを誓約している。
さらに、請求人は、和解交渉を進める反面、被請求人の知らないところで本件判定請求の準備を進めていたもので、請求人の一連の対応は不誠実極まりない。
以上のことからすれば、請求人に本件判定請求を求める必要性は全く存在しないから、本件判定請求は、却下されるべきである。
2 (イ)号標章が商標権の効力の範囲に属する理由
(1)(イ)号標章の使用は、商標的使用である。
ア 請求人は、「かばん」に表された(イ)号標章は「かばん」の模様としてのみ認識されるから、商標的使用ではないと主張する。
しかしながら、請求人も認めるとおり、商品の表面全体に表された模様も識別力を発揮する場合があり、自他商品識別標識としての機能を有する態様で使用される限り、商標としての使用にあたる。
このことは、過去の裁判例・判例においても認められている(最高裁昭和63年1月19日判決、大阪高裁昭和62年7月15日判決、大阪地裁昭和62年3月16日判決)。
また、「かばん」の表面全体に表された模様が商標として機能する場面も多く存在する(乙第22号証ないし乙第26号証)。
してみれば、需要者が「かばん」の表面に付された模様を、その製造・販売主体を示す識別標識として認識することは大いにあり得ることである。
そこで、本件についてみるに、「かばん」に表された(イ)号標章は、被請求人の著名な標章であるモノグラム標章(乙第9号証)(乙第9号証に表示されている標章は、別掲3の構成よりなる。以下、乙第9号証に表示されている標章を「モノグラム標章」という。)と類似するものであり、需要者をして、モノグラム標章と誤認混同を生じさせるおそれが高いものである。
そうとすれば、(イ)号標章は、本件商品の出所を表示する識別標章として機能するものであって、単なる模様にとどまるものではない。
イ モノグラム標章の著名性
被請求人は、150年以上の歴史を持つ世界的に著名な超一流ブランドであり、世界各国において、「かばん」類等の皮製品の製造・販売を継続してきた。
そして、被請求人の製造・販売に係る商品の中でも、モノグラム標章を付した商品は「モノグラム・ライン」と呼ばれ、被請求人の代表的な商品として、特に広く需要者に認識されてきた(同商品が極めて高額の売上を記録してきたことや、数多くの雑誌に掲載されてきたことにつき、乙第10号証ないし乙第14号証の15)。
そのため、モノグラム標章は、既に、被請求人の商品表示として優に著名性を獲得するに至っている。
ウ (イ)号標章とモノグラム標章の対比
(ア)(イ)号標章とモノグラム標章の全体の配列の対比
(イ)号標章中の「ドット列」は単なる円形を並べただけのものであり、同じく「数字00」は単なる楕円形を並べただけのものであるから、いずれも象徴性・指示性に乏しい一般に使用される図形を並べたにすぎないものであり、自他商品識別標識としての機能は、極めて弱いというべきである。
一方、(イ)号標章中の各クロス図形は、独立して商標として機能するだけの識別力を有しており、相対的に識別力が高いということができる。
そこで、(イ)号標章中「ドット列」及び「数字00」を捨象して、「文字X」と「LVモノグラム」が中心となるように(イ)号標章とモノグラム標章重ね合わせると、「クロス図形」と「花弁様星型記号」、「菱形地クロス図形」と「花弁様星型抜き略菱形記号」、「円形地クロス図形」と「花弁様図形抜き円形記号」は、両標章中の配列上、それぞれ対応する位置に配置されている。
これは、(イ)号標章とモノグラム標章の全体の配列が、構成要素を配置する位置及びその順序の点で同一のルールに従っているためである。
以上のとおり、両標章の全体の配列は極めて類似している。
そこで、次に、(イ)号標章とモノグラム標章のそれぞれの構成要素を対比する。
(イ)「クロス図形」と「花弁様星型記号」の対比
「クロス図形」と「花弁様星型記号」について、両者を並べてみると、両者の外観は、いずれも円形を中心として、垂直方向・水平方向に4つの略楕円形を放射線状に配している点、略楕円形は先端部分が細くなっており、全体として星あるいは花に近い形である点で、外観上の特徴を共通にする。
また、両者とも中心の円形部分と周囲の楕円形が、その位置関係・大きさからして、花の中央に位置するめしべと、その周囲に広がる花弁を連想させるもので、全体として「花」を想起させるものであり、生ずる観念は「花」であるから、観念の点でも共通する。
請求人は、「クロス図形」は「クロス模様」として広く用いられているものであるから「クロス模様」として認識されると主張するが、請求人が指摘する商品(甲第6号証ないし甲第10号証)については、その販売数量・売上金額等が全く立証されておらず、「クロス模様」として広く用いられていると直ちには認められない。
むしろ「クロス図形」と同様の図柄を「花びら柄」などとして用いている例も数多く存在する(乙第16号証ないし乙第21号証)。
そうとすれば、「クロス図形」からは、「花」の観念を生ずるというべきである。
(ウ)「菱形地クロス図形」と「花弁様星型抜き略菱形記号」の対比
「菱形地クロス図形」と「花弁様星型抜き略菱形記号」について、両者を並べてみると、両者の外観は、いずれも黒色の略菱形図形がその下地となっている点、略菱形図形は菱形の各辺が中心方向に食い込む形で緩やかな円弧を描いた形となっている点で共通する。
そして、内部に白抜きされた図形が「クロス図形」あるいは「花弁様星型記号」である点は相違するものの、上記(イ)述べたとおり、「クロス図形」と「花弁様星型記号」は外観上の特徴を共通にするものである。
以上のとおり、「菱形地クロス図形」と「花弁様星型抜き略菱形記号」は、その外観上の特徴をほとんど共通にするものである。
請求人は、両者の差異として、「花弁用星型抜き略菱形記号」にあっては中心の円形図形の周囲に配された4つの略楕円形が相互に隣接していること及び4つの略楕円形の短手方向の幅が中心の円形図形の径よりも大きい点を挙げるが、これは細部の相違を指摘するものにすぎない。
また、観念についてみるに、両者とも、中心の円形がめしべを、その周囲に配された4つの楕円形が花弁を、白抜きされた黒色の略菱形の残部が萼片を、それぞれ連想させ、全体としては、「花」を連想させる。
(エ)「円形地クロス図形」と「花弁様図形抜き円形記号」の対比
「円形地クロス図形」と「花弁様図形抜き円形記号」について、両者を並べてみると、両者の外観は、いずれも円形図形を中心として、垂直方向・水平方向に4つの丸みを帯びた図形を放射線状に配した図形を、黒色の円形図形の下地に白抜きで描いた点で共通し、その主要な外観上の特徴を共通にする。
また、観念についてみるに、両者とも、中心の円形がめしべを、その周囲に配された4つの丸みを帯びた図形が花弁を、白抜きされた黒色の円形図形の残部が萼片を、それぞれ連想させ、全体としては、「花」を連想させる。
(オ)「文字X」と「LVモノグラム」の対比
「文字X」と「LVモノグラム」について、両者を並べてみると、両者の外観は、似通った書体を用いている点、斜め方向及び水平方向の直線のみより構成されるローマ字を用いている点、中央付近で斜線が交差する構図となっている点において共通する。
また、観念についてみるに、両者とも、アルファベットの観念を生じさせる。
エ 小括
以上のように、(イ)号標章とモノグラム標章は全体の配列の点で極めて類似すること、両標章を重ね合わせた場合に位置関係上対応する各構成要素を比較すると、その主たる外観上の特徴や生じる観念をほとんど共通にすることからすれば、両者は極めて類似する。
そして、(イ)号標章がモノグラム標章と極めて類似するものであることから、(イ)号標章は同標章の付された「かばん」に接した需要者をして、本件商品が被請求人あるいは被請求人と密接な関係のある営業主の業務に係る商品であると誤認させるおそれが極めて高い。
そうとすれば、本件商品に付された(イ)号標章は、これに接した需要者をして被請求人等を連想させる点で自他識別機能を果たすものであり、本件商品に(イ)号標章を付すことは商標的使用にほかならない。
(2)(イ)号標章中のクロス図形等は、独立して自他商品識別標章として機能する。
ア 請求人は、(イ)号標章の各要素は有機的に結合したものとして、全体として一体的に認識され、クロス図形はその構成要素のーつとして埋没して認識され、クロス図形が分離認識されて識別標章として機能することはないと主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、(イ)号標章中のクロス図形は、モノグラム標章の構成要素である「花弁様星型記号」、「花弁様星型抜き略菱形記号」、「花弁様図形抜き円形記号」(以下、「花弁様星型記号」、「花弁様星型抜き略菱形記号」、「花弁様図形抜き円形記号」をまとめていうときは、「花弁様記号」という。)と類似するものである。
そして、被請求人が長年にわたりモノグラム標章を使用してきた結果、現在ではモノグラム標章のみならず、その構成要素たる花弁用記号も各々独立して識別力を有するに至り商標登録されている(乙第27号証の1及び2)。
また、実際に、被請求人は花弁用記号のみを使用した商品をも広く販売しており、花弁様記号は、現に被請求人商品を示す商標として機能している(乙第28号証ないし乙第32号証)。
以上のとおり、花弁様記号は、それぞれ独立して自他商品識別力を有するに至っている。
そして、クロス図形は、花弁様記号と類似しているから、クロス図形も、それぞれ独立して自他商品識別力を有するに至っているというべきである。
イ クロス図形と本件登録商標の対比
本件商標は、モノグラム標章中の「花弁様星型抜き略菱形記号」であるところ、クロス図形のうち、本件商標と対応するのは「菱形地クロス図形」である。
そして、「花弁様星型抜き略菱形記号」と「菱形地クロス図形」がその外観・観念において多くの共通点を有するのは、上記(1)ウで述べたとおりである。
(3)むすび
ア 請求人は、判定請求の必要性を有していない。
イ 本件商標は、(イ)号標章の要部と類似するものである。
したがって、商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する
第5 当審の判断
1 請求人は、判定請求の必要性を有するか否か。
請求人は、本件商権者から、侵害の警告を受けている事実が認められる(乙第2号証の1)。
そうとすれば、請求人は、判定請求の必要性を有しているというべきである。
この点について、被請求人は、(イ)号標章の使用等に関する請求人と被請求人との紛争は4月28日付の合意書の締結により既に解決されている(乙第8号証)旨述べ、請求人に本件判定請求を求める必要性は全く存在しないから本件判定請求は、却下されるべきであると主張する。
しかしながら、当事者間に再度紛争が生ずる可能性を否定できないことを考慮すれば、請求人には、判定請求の必要性が有るというべきである。
したがって、被請求人の主張は、採用しない。
2 商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否か。
(1)商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、商標的使用態様か否か。
ア (イ)号標章について
(イ)号標章は、別掲(2)の構成よりなるところ、その構成は、次のとおりである。
(ア)(イ)号標章は、全面に亘り左右に傾斜したドット列を交叉状に表し、その交叉部に数字「00」を表してなり、当該ドット列と数字「00」によって、格子模様が形成され、それぞれの格子模様内には、以下のaないしdのいずれかの模様又は文字が一つづつ配されている。
a 小円を描き、当該小円が中心となるように当該小円の上下左右に放射状に楕円を配た十文字図形
b 略菱形輪郭内に、小円を描き、当該小円が中心となるように当該小円の上下左右に放射状に楕円を配た十文字図形。
c 円輪郭内に、小円を描き、当該小円が中心となるように当該小円の上下左右に放射状に楕円を配た十文字図形。
d アルファベット「X」の文字
しかして、(イ)号標章を構成する上記の数字、記号、図形及び文字は、いずれも素材の上一面に規則的に型押しされていることからすれば、(イ)号標章を使用した「かばん」に接した取引者、需要者は、(イ)号標章を素材の地模様として認識すると解するのが自然である。
したがって、(イ)号標章を構成する数字、記号、図形及び文字は、それらが著名性を有している等特殊な事情がない限り、自他商品識別標識としての機能を有していないというべきである。
そこで、次に、本件商標が著名性を有しているか否かについて検討する。
イ 本件商標の著名性について
被請求人は、世界各国において、かばん類等の皮革製品の製造、販売をしており、「LOUIS VUITTON」、「ルイ・ヴィトン」の名称は、世界の超一流ブランドとして、国際的に著名であり、我が国においても著名である。そして、被請求人の製造・販売に係る商品の中でも、モノグラム標章を付した商品は「モノグラム・ライン」と呼ばれており、被請求人の代表的な商品として、世界的に著名となっており、我が国においても、本件商標の登録出願時にはすでに、需要者の間に広く認識されていたものと認められる(乙第10号証ないし乙第14号証の15)。
そして、本件商標とモノグラム標章を構成している図形のうち、上記ア(ア)bの図形とは、社会通念上同一の図形であると認められる。
しかしながら、モノグラム標章は構成全体として著名であるということはできても、そのことをもって、ただちに、モノグラム標章を構成する一部である本件商標が著名であるということはできない。
また、被請求人は、「被請求人は、本件商標のみを使用した商品を広く販売しているから、本件商標も自他商品識別標識として機能している。」旨主張し、その証左として、カフリンクに本件商標が使用されていることを証する書面(乙第29号証)を提出している。
しかしながら、同号証のみでは本件商標が著名であるということはできないし、また、本件商標が登録されていることをもって本件商標が著名であるということもできない。
さらに、他に本件商標が著名であるとの証左も発見できない。
したがって、本件商標が著名な商標であるとは認められない。
3 むすび
以上のとおり、(イ)号標章を使用した「かばん」に接した取引者、需要者は、(イ)号標章を地模様として認識すると解するのが自然であり、また、本件商標に著名性が有るなどの格別の事情も認められないから、商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、商標的使用態様であるとはいえず、自他商品識別標識としての機能を有していない。
そして、自他商品識別標識としての機能を有さない使用がされても、出所の混同を生ずるおそれはなく、商標権者の業務上の信用を害するおそれもないから、商品「かばん」に使用する(イ)号標章には、本件商標権の効力は及ばないというべきである。
したがって、商品「かばん」に使用する(イ)号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 【別記】



判定日 2010-07-20 
国際登録番号 0852773 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (Y09141825)
最終処分 成立  
前審関与審査官 酒井 福造 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小林 由美子
岩崎 良子
代理人 高松 薫 
復代理人 鈴木 康之 
代理人 峯 唯夫 
代理人 鈴岡 正 

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