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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 130
管理番号 1225103 
審判番号 取消2010-300040 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2010-10-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2402036号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2402036号商標(以下「本件商標」という。)は、「Teddy Bear」の欧文字と「テディ ベア」の片仮名文字とを二段に併記してなり、平成元年1月26日に登録出願され、第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年4月30日に設定登録されたものであるが、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成14年3月20日に第30類「菓子及びパン」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張(要旨)
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号及び第2号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人が種々調査した結果、本件商標は商標権者により、少なくとも過去3年以内に、日本国内でその指定商品に使用されていないことが判明した。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 本件商標は、有名な「小熊のぬいぐるみ」の「テディベア」を、被請求人が自己の利益のために出願、登録したものである(甲第1号証)。
イ 被請求人は、食品業界で日本を代表とする企業と考えれば、このような「登録商標」を所有していることは、理解できない(甲第2号証)。
ウ 被請求人は、自ら商品を製造販売せず、「株式会社ワンダーランド」に本件商標を貸与して、その登録を維持している。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号ないし第10号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)答弁の理由
ア 本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、その使用を正規に許諾された通常使用権者により、請求に係る指定商品中「菓子」について継続的に使用されてきた事実がある。
通常使用権の存在
被請求人である「日清オイリオグループ株式会社」は、大阪府豊中市春日町四丁目4番11号に所在する「株式会社ワンダーランド」(以下「ワンダーランド」という。)との間で、本件商標に係る商標権について、平成7年3月1日付で通常使用権の許諾契約を締結し(乙第1号及び第2号証)、ワンダーランドは、現在に至るまで、「菓子」について本件商標を使用してきた(乙第2号証)。
ワンダーランドは、菓子製品の企画及び卸売の事業を行っている会社であり、同社が企画した菓子は、取引先である日本全国の問屋及び小売店に卸売りされ、小売店を通じ一般消費者に販売されている(乙第2号証)。ワンダーランドは、同社が企画・販売するクッキー、キャンディー、チョコレート又はラムネといった商品の包装並びに商品に関する広告、価格表及び取引書類に本件商標を付し、これらを、同社の取引先である問屋及び小売店に対し販売又は頒布してきた。
ウ 「菓子」についての本件商標の使用
乙第2号証の添付Aは、ワンダーランドが発行し、取引先に対して頒布した通年(オールシーズン)用の商品カタログ及びホワイトデー用の商品カタログ(2008年度版及び2009度版)の抜粋とその注文書の写しである。同商品カタログには、商品のパッケージ写真と、その中身であるクッキー、キャンディー、チョコレート、又はラムネといった写真が掲載されており、これらの写真の下に、本件商標が商品の品番及び価格等と共に付されている。ここで、前記商品カタログに掲載されているクッキー、キャンディー、チョコレート、及びラムネといった商品が、いずれも取消請求に係る指定商品「菓子」の範躊に属することはいうまでもない。
乙第2号証の添付Aのホワイトデー用カタログ「2008 WHITE DAY CATALOG」は、2008年(平成20年)のホワイトデー(3月14日 註:女性が男性にチョコレートを贈り愛を告白する日とされる聖バレンタインの祭日(2月14日)に対応する形で設けられた、男性から女性にお返しを贈るとされている日)に向けて作成され、2007年(平成19年)8月下旬から取引先に頒布されたカタログであり、ここにはホワイトデー用の菓子商品が掲載されている。
一例として、T-5頁には、K8-823という商品(ハート型のクッキーと熊の形のキャンディー及びチョコレートが入っている)と、K8-825という商品(ハート型のクッキーと熊の形のキャンディーが入っている)が掲載されているが、当該商品(「菓子」)の包装ラベル、包装袋又は包装用リボンには、「Teddy Bear」(又は「TEDDY BEAR」)のローマ字が付されており、各商品写真の下にはそれぞれ片仮名の「テディベア」が商品の品番及び価格等と共に付されている。これらは、若干離れて表示されているとはいえ、同一平面上の極めて近接した位置に表示されているものであり、本件商標の使用といい得るものである。
さらに、これらの商品の購入を希望する者は、同乙第2号証の添付Aの「御注文書」のK8-823とK8-825の欄に注文数(単位)を記入することになるが、この注文書にも、それぞれ本件商標を構成する片仮名の「テディベア」が表示されている。
また、実際に取引が行われた証明として、被請求人は、乙第2号証の添付Bの「売上伝票の写し」を提出する。同「売上伝票の写し」は、ワンダーランドが、取引先に対し、添付Aの商品カタログに掲載された商品を販売し、納品した際に実際に発行した売上伝票の写しであり、ここにもK8-823とK8-825の欄に、それぞれ本件商標を構成する片仮名の「テディベア」が表示されている。なお、乙第2号証の添付Aとして添付された2009年(平成21年)のホワイトデー用カタログ「2009 WHITE DAY CATALOG」も同様である。
ここで、登録商標が二段併記からなる場合に、上段及び下段の観念が同一であれば、その一方の使用は、商標法第50条第1項かっこ書きにいう「社会通念上同一の商標」に該当するとされている(商標審判便覧)。本件商標の上段と下段から、同一の観念が生じることは明らかであるから、上記使用商標(片仮名文字「テディベア」)が、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標であることは間違いない。
そして、前記商品カタログ、注文書及び売上伝票は、商標法第2条第3項第8号に規定する「商品に関する広告、価格表又は取引書類」に他ならないから、これらに本件商標を付して取引先に対し展示若しくは頒布する行為は、商標法第2条第3項第8号の「使用」に該当するものであり、また、商標を商品の包装に付する行為、及び、商品の包装に付したものを譲渡し、引き渡す行為は、それぞれ商標法第2条第3項第1号及び同第2号の「使用」に該当するものである。
エ 本件商標の使用時期
上記したとおり、本件商標が付された乙第2号証の添付Aの商品カタログ(「2008 WHITE DAY CATALOG」、「2008 ALL SEASON CATALOG」及び「2009 WHITE DAY CATALOG」)、及びその発注書は、それぞれ、平成19年(2007年)8月下旬、平成20年(2008年)3月下旬及び平成20年(2008年)8月下旬にワンダーランドにより発行され(乙第2号証の別紙)、以後、同社の取引先に対し順次頒布されたものである。また、これらのカタログに掲載されている、本件商標がその包装に付された「菓子」は、平成20年(2008年)2月4日、平成20年(2008年)7月8日及び平成21年(2009年)2月13日付で、前記取引先に対し販売(譲渡)され、納品(引き渡し)された(乙第2号証の添付B)。
しかして、これらの行為は、いずれも、本件商標の「使用」に該当することは前記ウのとおりであるから、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内の期間に「使用」されたことは客観的に明白である。
(2)審尋に対する回答
ア 使用許諾契約について
審尋(1)で求められた「使用許諾契約書」については、被請求人はワンダーランドに対し、その使用を黙示的に承諾してきたため、商標の使用許諾契約に関する正式な書面は作成していない。
しかしながら、乙第3号証は、登録第2318678号商標及び第2515948号商標に関する平成7年3月1日付の「契約書」のコピーであるが、被請求人は、上記契約に基づき、ワンダーランドに対し、上記二つの登録商標の使用を許諾し、上記契約は、後のワンダーランドからの延長の申し入れによって、現在に至るまで延長されてきた(乙第5号及び第6号証)。
イ 2009 WHITE DAY CATALOGについて
審尋(2)において求められた乙第2号証の添付A中、「2009 WHITE DAY CATALOG」のカタログ1冊(正本)を、乙第7号証として提出する。
ウ 取引書類について
審尋(3)において求められた乙第2号証の添付Bの売上伝票に対応した取引書類に関し、被請求人は、乙第8号ないし第10号証の1及び2を提出する。

4 当審の判断
(1)通常使用権者による使用について
乙第1号証は、被請求人の知的財産管理室長が作成した平成22年3月1日付け陳述書であり、同じく、乙第2号証も、大阪府豊中市春日町四丁目4番11号に所在する「ワンダーランド」の代表取締役が作成した平成22年3月1日付け陳述書であるが、これら両者の陳述書によれば、平成7年3月以降、現在に至るまで、被請求人が「ワンダーランド」に対し、本件商標に係る通常使用権を許諾していたものと認めることができる。なお、上記の事実は、審尋に対する回答書と共に提出された乙第5号及び第6号証からも確認できるものである。
(2)本件商標と使用商標との社会通念上の同一性について
ア 商標法第50条第1項の規定によれば、登録商標の使用にあっては、その使用の範囲を当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含むものとし、その同一の範囲には「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼及び観念を生ずる商標」も含むものとして、単に物理的同一の範囲に止まらず、取引社会の通念に照らして同一の商標と認識されるものについても当該登録商標の使用と認めるものとされている。
イ そこで、これを本件についてみるに、乙第2号証の添付Aは、ワンダーランド発行の2008年のホワイトデー用カタログ「2008 WHITE DAY CATALOG」の抜粋写しであるが、そのT-4ページには、商品「クッキー」等の荷姿が示されており、そこには使用に係る標章「TeddyBear」の文字(以下「使用商標」という。)が付されている。
そこで、使用商標と本件商標の欧文字部分「Teddy Bear」とを比較するに、本件商標は「Teddy」と「Bear」の文字の間に若干の空白を有するものであるが、その差は微差というべきであって、共に構成(綴り)を同じにするものであるうえ、両商標より生ずる称呼「テディベア」は共通のものである。
なお、本件商標の片仮名文字部分は、本件商標の欧文字部分の自然称呼に照応した文字を表したものというべきものであるから、使用商標が片仮名文字を欠く構成であることで、本件商標の自然称呼「テディベア」が生じないということはなく、また、使用商標の構成文字に空白がなく一連に表されているとしても、同様に本件商標と称呼及び観念について異同が生ずるものとも認められないから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認め得るものというべきである。
(3)「使用」及び「使用時期」について
乙第7号証の「2009年のホワイトデー用カタログ」が作成されたときは、それが直ちに頒布されることは経験則に照らして明らかというべきであるから、該カタログが、2009年3月14日(ホワイトデー)前、遅くとも1年以内の時期に頒布されたものと優に推認でき、同様に、2008年のホワイトデー用カタログについても、2008年3月14日前1年以内に頒布されたものと推認できるというべきである。
そうすると、それらの「頒布」した行為は、いずれも本件審判の請求の登録前3年以内の行為と認められるものである。
また、前記カタログに、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示し、「頒布」した行為は、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布・・する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(4)まとめ
してみれば、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その通常使用権者によって請求に係る指定商品についての使用があったものと認められる。
(5)請求人の主張
本件商標は、有名な「小熊のぬいぐるみ」の「テディベア」を、請求人がその世界的著名性を利用して自己の利益の為に出願、登録したものであり、被請求人が上場企業として食品業界で日本を代表とする企業と考えれば、このような「登録商標」を所有していることは理解できない旨主張している。
しかしながら、本件審判は、要証期間内における登録商標の使用の存否をその審理の対象としているものであるから、かかる主張は採用し得ない。
(6)むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一の範囲内と認められる商標を、本件商標の指定商品「菓子及びパン」の範疇に属する「クッキー、キャンディー」等について通常使用権者が使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-08-04 
結審通知日 2010-08-09 
審決日 2010-08-26 
出願番号 商願平1-7126 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (130)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 田中 亨子
野口 美代子
登録日 1992-04-30 
登録番号 商標登録第2402036号(T2402036) 
商標の称呼 テディベア 
代理人 藤倉 大作 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 松尾 和子 
代理人 辻居 幸一 
代理人 熊倉 禎男 

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