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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y14
管理番号 1225096 
審判番号 取消2009-300358 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-03-26 
確定日 2010-10-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4761809号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4761809商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成14年12月24日に登録出願、第14類「宝玉又はその模造品付のキーホルダー,宝玉又はその模造品付の貴金属製食器類,宝玉又はその模造品付の貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,宝玉又はその模造品付の貴金属製針箱,宝玉又はその模造品付の貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,宝玉又はその模造品付の貴金属製の花瓶及び水盤,宝玉又はその模造品付の記念カップ,宝玉又はその模造品付の記念たて,宝玉又はその模造品付の身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,宝玉又はその模造品付の貴金属製靴飾り,宝玉又はその模造品付の時計,宝玉又はその模造品付の貴金属製喫煙用具」を指定商品として、平成16年4月2日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中『宝玉又はその模造品付のキーホルダー』についての登録を取り消す。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁並びに上申の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「宝玉又はその模造品付のキーホルダー」について、本件審判請求時前より継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁
(1)乙各号証は、いずれも信憑性を欠くといわざるを得ず、被請求人が小川美奈子(以下、単に「小川」という。)との間で何らかの取引を行った事実(以下「本件取引」という場合もある。)、本件取引時に本件商標を使用した事実、及び本件取引の対象が「宝玉付きのキーホルダー」であった事実は立証されていない。すなわち、
ア 答弁の理由及び乙第6号証(小川の陳述書)によれば、本件取引が行われた場所は、「東京都港区南青山6-6-22 クレスト・イシイ3階 ジュエリーサロン『ジュエリークレスト』」であるとされている。
しかし、そもそも上記所在地でジュエリーサロンが営業していたのかどうか自体明らかではなく、仮に営業していたとしても、当該サロンと被請求人の関係は不明である。この点、被請求人運営のウェブサイトに「Shop」と題されたページ(乙第12号証の69頁、70頁)があり、ここには「三越 日本橋本店」、「PISA ロイヤル店」、「ザ・プリンス パークタワー東京店」などの店舗が紹介されているが、南青山に店舗があることの記載はない。いずれにしても、上記表示の場所で営業活動が行われていたのかどうかは明らかでない。
イ 「お引換証」(乙第1号証)についても、本件取引の存在及び本件商標の使用事実を立証する証拠とみることは困難である。
(ア)「お引換証」は、体裁からすると、既製品の3枚綴の複写伝票「お預り証」(ヒサゴ株式会社製・品番830)の2枚目(黄色い用紙)を提出したものと考えられる(甲第3号証)が、被請求人の主張する本件商標の印影がいつの時点で表示(押印)されたかは、「お引換証」によっては判別することができない。
この点、被請求人は、平成18年夏ころに業者に依頼し当該ゴム印を製作したことを述べている(乙第7号証、乙第8号証)とはいえ、この事実のみでは本件取引時に当該ゴム印が使用されたことが直接明らかにされているわけではない。
また、仮に本件取引時に当該ゴム印を使用したとすると、なぜ被請求人の主張する南青山の連絡先のゴム印(乙第8号証の資料エ)が一緒に使用されなかったのか、極めて不自然である。つまり、被請求人の主張によれば、「お引換証」は、2008年4月20日に小川に渡し、小川は代金受領時までこれを所持し、2008年5月11日に被請求人が小川より回収受領した書類ということになる。「お引換証」は、商談成立後に交わす重要な書類であり、後の連絡のためにも店舗の住所・電話番号等の連絡先が表示されているのが常態であって、これらが一切表示されていないというのは不自然であるといわざるを得ない。
しかも、「お引換証」には、連絡先のゴム印(乙第8号証の資料エ)を押すことができる余白が残っているにもかかわらず、かかる表示がされていないのである。なお、上記のように、南青山の店舗と称するものは、少なくとも現在の被請求人ウェブサイトにも表示がないのであり、さらに、この店舗の連絡先が「お引換証」によってさえわからないのである。
(イ)「お引換証」の上部に記された小川の氏名・住所・電話番号の筆跡は、その下に続く品名・数量・金額等の筆跡と同一であるように思われる一方で、乙第6号証(小川の陳述書)に署名された筆跡とは明らかに異なっている。
通常、「お引換証」のように、後の商品接受の際に照合を要する書類には、疑義のないよう顧客に記入を求め、これに応じて顧客(受取人本人)が自分の氏名や連絡先を記入するのが習わしとなっているものである。
このように、「お引換証」の氏名・連絡先を記載したのが小川本人とは考え難いこと、そして上記の理由を総合すれば、乙第1号証(同じく乙第6号証の資料2)の信憑性は非常に低いものといわざるを得ない。
ウ 乙号証中、本件取引の対象が「キーホルダー」である旨が表示されたものとしては、「お引換証」(乙第1号証)のほか、「現金出納帳」(乙第4号証)、小川の陳述書(乙第6号証)があり、また、乙号証中、本件取引時に本件商標が使用されたとの主張に関するものとしては、小川の陳述書(乙第6号証)があるが、これら証拠は、以下のとおり、いずれも信憑性は極めて低く、本件取引の存在及び本件商標の使用事実を立証するものとみるのは困難である。
(ア)現金出納帳(乙第4号証)は、内容的にも分量的にもパソコンの表計算ソフト等を用いて簡単に作成・編集されたものと考えられ、これ自体被請求人の内部資料であって取引書類ではない。したがって、乙第4号証から本件取引事実の存在を確認することは困難である。
ちなみに、この現金出納帳は、平成20年5月1日から5月27日分まで提出されているが、少なくともこれには、被請求人自身への給与支払、他店舗の賃料支払などといった摘要が一切なく、現金出納帳の体裁としては不自然のように思われる。
また、仮に本件取引が存在したのであれば、本件取引の内容は同時期の売上伝票として管理されているはずであるが、乙号証中そのような資料もない。
(イ)小川の陳述書(乙第6号証)において、小川は「(略)サファイア付のキーホルダーほか3点を購入しました。(略)」と陳述しているが、一方で、その陳述書添付の資料4には、「御品代として、修理代として」と記載された領収証(控)が添付されており、陳述内容と明らかに齟齬する。この点、なぜ自分の持ち物の修理を含め「購入した」と陳述したのか、通常はあり得ないことである。
したがって、この陳述自体、証拠としての信憑性を大きく欠くものである。
エ さらに、そもそも乙第2号証に示されている商品(以下「本件商品」という。)(別掲(2))が「宝玉付きのキーホルダー」であるかどうか不明である。 すなわち、本件商品には、一般にキーホルダーと呼ばれるものに付属する、鍵の孔に通すための「キーリング」が付いておらず、また、乙第2号証や答弁の理由によってはその大きさや使用方法が明らかではない。したがって、どの部分に鍵を吊るすのか、提出証拠からは不明である。
なお、被請求人は、乙第10号証としてカタログの抜粋を提出し、このうち黄色いマーカーで囲まれている商品が「SVキーホルダー(ゴルフ)」として販売されていることから、本件商品も一般に「キーホルダー」として取引されることが明らかである旨を主張する(乙第10号証・143頁)。
しかしながら、乙第10号証は、一般の市場に流通する最終消費者向けのものではなく、宝飾品メーカー向けに作成された「宝飾品用のパーツ」カタログである。石福ジュエリーパーツ株式会社(以下「石福ジュエリーパーツ」という。)のホームページのトップページによれば、「パーツもジュエリーの価値あるポイントです」との表示の下に、赤字で「弊社は『卸売専業』につき一般の方(素人の方)の問合せはご遠慮ください。問合せの回答は出来ません。」と記載されている(甲第4号証)。
つまり、このカタログに記載の商品及び商品説明は、総じて一般消費者向けのものではない。そして、乙第10号証も頁上部に記載のとおり「宝飾品パーツ」として販売される「SVパーツ」の抜粋部分であるから、乙第10号証(143頁)の黄色いマーカーで囲まれている商品も、宝飾品メーカー向けに販売されている、キーホルダー製造用の「パーツ(部品)」でしかない可能性が高い(因みに「SV」とは「シルバー」の意と推測される。)。
なお、乙第10号証(140頁下部)には、「SVキーホルダー」とは別に「SVキーリング」が販売され、その右上にはチャーム(飾り具)のない別種の「SVキーホルダー」が販売されている。
一方、答弁の理由によれば、本件商品は「キーホルダーのパーツ」ではないといえる。したがって、乙第10号証に掲載された内容のみをもって、本件商品が「キーホルダー」として一般に取引されると結論づけることは困難であるといわざるを得ない。
また、仮に乙第10号証(143頁)の黄色いマーカーで囲まれている商品が、キーホルダー製造用のパーツではなく、完成品としてのキーホルダーであるとしたところで、これにより本件商品が当然に「キーホルダー」であると解することはできない。
そもそも、本件商品は、乙第10号証(143頁)の黄色いマーカーで囲まれている商品と比較すると、チャーム(飾り具)部分に対して異常に長い折返されたチェーン部分を具え、物としての特徴を大きく異にするものであり、この点において乙第10号証のものと同視することはできないからである。
したがって、いずれにしても、本件商品を「宝玉付きのキーホルダー」であるとは言えない。
(2)百歩譲って、小川との間で何らかの取引が存在したことを推認し得るとしても、証拠からは、その取引が「販売」なのか「修理」なのか「加工」なのか判らず、本件請求に係る指定商品について、本件商標を使用した事実は立証されていない。
ア 前述のとおり、小川の陳述内容(乙第6号証)は、陳述書添付の領収証(控)に記された「御品代として、修理代として」の表示とは明らかに齟齬するものである(乙第6号証の資料4)。
したがって、仮に「領収証(控)」(乙第3号証、乙第6号証の資料4)が実際に存在したものであるとすると、「お引換証」に記載された品物のうちどれが修理対象だったのかは明らかでなく、本件商品が修理の対象だった可能性も否定できない。
イ 前述のとおり、被請求人が主張する所在地で実際に営業が行われていたのか不明、取引書類やウェブサイトにも上記所在地の店舗表示はないこと、小川の陳述内容に齟齬があること、「お引換証」自体が信憑性に欠けること、被請求人ウェブサイト(乙第12号証)やカタログ(乙第9号証)には、指輪・ペンダント・ブローチ・ピアス・イヤリング・帯留など様々な商品が掲載されているにもかかわらず、本件商品は勿論、「キーホルダー」自体の製作販売に関する記載は全くないこと、本件商品が真に「キーホルダー」かどうかも不明であること、なお、被請求人ウェブサイト中「Shop」のページには「リフォームサービス」も行っていることが説明されている(乙第12号証の69頁)ことなどの点を踏まえると、仮に、小川との間で何らかの取引が行われた事実が存在したとしても、それは、通常の店頭で行われる売買ではなく、小川が被請求人に個人的に依頼した加工依頼(リフォーム)であったと考えるほうが自然であるようにも思える。
(3)むすび
以上のとおり、答弁の理由及び証拠の内容によっては、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれかが、その指定商品について登録商標の使用をしていたものとは認められないと考える。

3 平成22年4月28日付け上申書
(1)乙第1号証について
お引換証を見ると、これには発行者の住所、名称が全く記載されていない。引換証に発行者を表示することは、この種の書類として必須の事項であって、この点が欠けている引換証は、引換証としての体を成さないものである。
したがって、仮にその書類に商標と商品が表示されているとしても、被請求人が本件商標を使用していることの証明にはならない。
(2)乙第3号証について
領収書を見ると、これにも発行者の住所、名称が全く記載されていない。
したがって、上記お引換証と同様に、この領収証はだれが発行したものか不明であり、領収証としての本質的要件を満たしていないものであるから、これをもって被請求人が本件商標を使用していることの裏づけとはなり得ない。
(3)乙第2号証及び乙第20号証について
乙第9号証及び乙第10号証を見ると、被請求人は、ジュエリー、ネックレス及びジュエリーをネックレスの鎖に取り付けるためのフック等のパーツを販売していることが判るので、乙第2号証に示す小枝チャーム付きキーホルダーは、乙第9号証に示す小枝チャームとネックレス用の鎖で構成されているものと思料される。
つまり、小枝チャーム部分は、乙第9号証に示す「K18WGサファイアピンブ」と同種のものであり、その寸法は26×13mmであるから、これより鎖の長さは、二重では約25cm、一重では約50cmということになり、これは丁度通常のネックレスの長さである。
また、乙第2号証の写真から判断すると、一重の鎖を二重にして装着していることが判ると共にその鎖が細かいリングで構成されていることが判るので、キーホルダーの鎖としてネックレス用の鎖を用いていることは明らかである。
すなわち、ネックレス用の鎖をキーホルダーとして用いた場合、ネックレス用の鎖は非常に切れ易く、ちょっと強く引っ張っただけで簡単に切れてしまうものであるから、キーホルダーとしては到底使用に耐えないものであり、これをキーホルダーとすることは極めて不自然である。むしろ、上記小枝チャーム付きキーホルダーは、一般に使用されているバッグ用のアクセサリー、すなわちバッグチャームやブレスレットであると解するのが自然である。乙第20号証に示すようにキーホルダーとして使用するには大変無理がある。
(4)小枝チャーム付きキーホルダーについて、
被請求人が提出する乙各号証には、商品とする小枝チャーム付きキーホルダーに本件商標を付した証拠は何ら存在しない。
このように、少なくとも被請求人が提出する乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第20号証は、証拠上において疑義があるところであり、信憑性に欠けるものであるから、被請求人の主張は到底納得することができない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 第1答弁
(1)登録商標の使用とその時期について
被請求人は、少なくとも平成20年4月20日、その経営に係る東京都港区南青山6-6-22クレスト・イシイ3Fジュエリーサロン「ジュエリークレスト」(乙第12号証)において、取引相手の小川に対し、本件商標を付した取引書類「お引換証」(乙第1号証)を提示した上で、「ダイヤモンド・サファイア付きのキーホルダー」(本件商品、乙第2号証)ほか3点の売買に関する商談を行い、同年5月11日に、同人から当該取引の代金として47,250円を受領すると共に(乙第3号証、乙第4号証)、「Crest」と「ERIKO・ISHII」の欧文字とを二段に書した構成よりなる商標(登録第4731124号商標)を表示したタグ(乙第5号証)を添えた本件商品を同人に引き渡した。
したがって、本件審判の請求の登録日前3年以内である平成20年4月20日ないし同年5月11日、日本国内である南青山のジュエリーサロンにおいて、商標権者は、指定商品「宝玉付きのキーホルダー」である本件商品について、本件商標を使用した。
かかる事実は、上記取引相手の陳述書によって明らかである(乙第6号証)。
なお、「お引換証」(乙第1号証)に表示した本件商標は、被請求人が捺印した印影であるが、当該ゴム印は、「Jewelry Crest/ジュエリークレスト」の文字からなる標章、被請求人の氏名からなる標章、及び被請求人の経営する前記ジュエリーサロンの住所・電話番号・FAX番号を表示する標章のそれぞれを印字可能な3つのゴム印と併せて、平成18年8月下旬ころ、東京都台東区上野3-17-9 タイムビル2の1F「はんこ広場 上野店」にその製作を依頼し、同年9月8日、代金10,880円を支払うとともに出来上がりを受領したものであり(乙第7号証)、以来、取引において被請求人が現に使用しているものである。
かかる事実も、同店店主の陳述によって裏付けられる(乙第8号証)。
(2)商標の同一性について
被請求人が使用した商標は、本件商標と同一の商標である(乙第1号証)。したがって、当該商標の使用が、本件商標の使用に当たることは明白である。
(3)商品の同一性について
本件商品は、商品「宝玉付きのキーホルダー」であり、K18ホワイト・ゴールドからなる小枝様の基部の先端域ないし左右領域においてピンク・ブルー・イエローの3つのサファイア及びメレー・ダイヤモンドを配してなるキーホルダー・チャームを有するキーホルダーであるから、これは「宝玉付きのキーホルダー」に他ならない。
そして事実、「お引換証」(乙第1号証)の「品名」の欄にも「K18WGサファイア入小枝チャーム付キーホルダー」と明記されるものであり、また、本件商品を撮影した写真からも明らかである(乙第2号証)。
ちなみに、上記キーホルダー・チャームに見られるデザインは、「ピンブローチ」をはじめ本件商品以外の商品においても採用している被請求人のオリジナルのデザインであり(乙第9号証)、本件商品もまた被請求人の取引商品である。
なお、念のために付言すると、本件商品が一般にも「キーホルダー」として取引されることは、例えば、石福ジュエリーパーツのWEBサイト上に掲載されている電子カタログなどにおいても、同様の商品が「キーホルダー」として現に取引されていることから明らかといえる(乙第10号証)。
本件商品以外にも、被請求人は、様々な形状のキーホルダー・チャームを有するキーホルダーを製作・販売する者であり(乙第11号証)、「宝玉付きのキーホルダー」が被請求人の事業にとって極めて重要な取引商品であることは言うまでもない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないもの」に該当しない。

2 第2答弁
(1)本件商標を使用した、被請求人と小川との商取引の実在について
ア 乙第1号証及び乙第3号証にその発行者である被請求人の住所と名称が記載されていない理由は他でもない、これら書類が取引後は被請求人自身の手元に残るいわゆる「控え」だからである。
具体的に説明すると、乙第1号証については、甲第3号証をみると、これに綴られた1枚目の書類「お預り証(控)」に対して記入された発行日、小川の住所・氏名、取引費目とその金額等はカーボン・コピーによって2枚目の「お引換証」にそのまま転写されるものであるところ、当然ながら取引相手の小川にはこの1枚目の書類「お預り証(控)」が手渡されており、他方1枚目の内容が転写された2枚目の「お引換証」については被請求人が自分用の控えとして保持している。そして、この2枚目の「お引換証」こそ被請求人が先の審判事件答弁書において乙第1号証として添付した証拠書類に他ならない。
同様に乙第3号証には「領収証(控)」と表示されており、ここにも「控え」であることが明確に表示されている。
したがって、これらの書類に被請求人の住所や名称の表示が必要ないのは、被請求人が自ら保管するものであるから至極当たり前であって、被請求人による本件商標の使用証明に何ら不自然な点はない。
イ 請求人は、乙第1号証に対し、(ア)本件商標に係るゴム印がいつの時点で押されたか不明であること、(イ)当該ゴム印と共に南青山の連絡先を表すゴム印が一緒に使用されなかったのが不自然であること、(ウ)筆跡が小川陳述書における署名欄の筆跡と異なっていることの3点を根拠にその信憑性に疑義を呈している。
以下、上記3点について、一つずつ触れていくこととする。
(ア)について
ゴム印がいつ押されたかであるが、これはそもそも本件商標の使用時期とは何ら関係のないトピックである。
登録商標の使用時期は、ゴム印の押された時期に左右されるものではない。
(イ)について
南青山の連絡先の表示に関して、請求人は乙第1号証に乙第8号証資料エのゴム印の印影が併せて表示されていないことの不自然性を指摘する。
しかしながら、これは資料アないし資料エの各印影を場面によりその組み合わせを自由に変えて使い分けることができるように、1個のゴム印としてではなく、敢えてこれらを4種類に分けて作成しただけの話である。
(ウ)について
請求人は、乙第1号証の氏名欄等の筆跡と乙第6号証の署名欄の筆跡が異なる旨主張する。
確かにいう通りである。なぜなら、乙第1号証は被請求人による筆跡であり、乙第6号証は小川による筆跡だからである。
すなわち、被請求人の営むジュエリーサロン「ジュエリークレスト」は、規格化された宝飾品を主たる取扱商品とするようないわゆる量販店ではなく、小さくとも顧客との信頼関係を一番に考えその品質の維持と向上に努める宝飾品店であって、今回の小川も被請求人との間で永年取引を続けている大切な顧客の一人であり、当然ながら、被請求人側で同氏の住所、氏名、連絡先等の情報はきちんと把握しているのである。顧客の手を煩わせることのないよう事業者が変わって氏名等情報を記入することは、商取引の実際においては、むしろ日常よくある当たり前の光景である。
したがって、請求人の主張に理由がないことは明白である。
(2)本件キーホルダーは商品「宝玉付のキーホルダー」に該当することについて
請求人は、乙第2号証及び乙第20号証に示された商品が、その鎖の長さや太さを以ってこれがキーホルダーには当たらない旨指摘するものである。
しかしながら、被請求人と小川が、乙第2号証にある商品を、「宝玉付のキーホルダー」として(その使用態様に照らして尚これがキーホルダーに他ならないことは、先の回答書にて詳述したので、ここでは割愛する。)、売り買いしたということは動かし難い事実であって、同商品がキーホルダーとして完全に機能することが既に明らかにされている以上、これをどのような素材や設計事項によって製作するかなど、本件審理とは何ら関係がない。
したがって、請求人の主張に何ら理由がないことは明らかである。
(3)本件商標は、商品「宝玉付のキーホルダー」について使用されたことについて
請求人は、被請求人と小川との取引が「販売」か「修理」か「加工」か判別できないと述べる。
これに関して端的に事実を述べるならば、「販売」及び「修理」である。つまり乙第3号証の但書きの欄に記載のとおりである。
乙第1号証の記載によれば、小川は、平成20年4月20日、本件キーホルダーの購入と併せて、自己所有の「先地ダイヤK18プレートPN」「先地K18ガーネットピアス」「先地K18ピンキーリング」(「先地」とは一般に修理等のために依頼者側から預かる品をいう。)に対する研磨(新品仕上げ)についても被請求人に依頼しているところ、請求人の主張は乙第6号証の小川陳述書にて同氏が「…サファイア付のキーホルダーほか3点を購入しました。」と述べたことを捉えたものであるが、乙第1号証に記載されている金額からも明らかなように、上記修理に要する費用に比べると本件キーホルダーの料金は桁違いに高い。
つまり、おそらく当該取引に対する小川の認識は本件キーホルダーの購入とそのついでにちょっとした修理の依頼をといったものであって、それを率直に表現したのが乙第6号証である。
むしろ、請求人の主張するとおり、当該取引の内容が「修理」や「加工」であるならば、なぜ乙第3号証の但書きに「御品代として」などと記載する必要があるのか(さらに、位置関係からしても、「御品代として」の文言を後から追加することなどはできない。)、その方がきわめて不可解である。
当初より被請求人が一貫して述べるとおり、平成20年4月20日に被請求人が本件商標を宝玉付のキーホルダーについて使用したことは、ねじ曲げることのできない事実なのである。
(4)結語
以上のとおりであって、本件商標は不使用状態を形成するものではない。
したがって、請求人の主張には何ら理由がなく、本件審判の請求は速やかに棄却されるべきである。

第4 当審における審尋
平成21年11月4日付けの審尋において、当合議体は、被請求人に対し、「(1)ジュエリーサロン『ジュエリークレスト』の存在と、当該サロンと被請求人の関係を証した書面」及び「(2)乙第2号証で示すものが『キーホルダー』であるなら、鍵の保持に当たっては、どのような使用方法がとられるのか説明した書面」の提出を求めた。

第5 審尋に対する回答書
上記4の審尋に対し、被請求人は、平成21年11月24日付けの回答書において、要旨以下のとおりの内容を回答し、証拠方法として乙第14号証ないし乙第20号証(乙第13号証は欠番。)を提出した。
1 ジュエリーサロン「ジュエリークレスト」は、平成8年1月1日に被請求人が個人事業主として東京都世田谷区代田6-3-19に開業した宝飾品の小売を行うジュエリーサロンの名称であり、また、被請求人の自身の屋号でもある。
そして、被請求人は、平成18年5月5日に上記ジュエリーサロンを東京都港区南青山6-6-22クレスト・イシイ3Fに移して、上記宝飾品の小売業を継続するものである(乙第14号証ないし乙第19号証)。

2 本件キーホルダーは、乙第2号証及び乙第20号証のとおり、鍵を束ねて携帯するための道具であることは明確な事実であるから、商品「(宝玉付の)キーホルダー」に他ならない。

第6 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」がその顧客である小川に対し発行した2008年4月20日付け「お引換証」と認められるところ、「品名(型式)」、「数量」、「金額」等が記載された箇所には、「1」、「2」、「3」の数字が付され、そのうちの「1」の「品名(型式)」欄には「先地ダイヤ K18プレートPN」と、「数量」欄には「1」と、「金額」欄には「3,000-」と記載されている。同じく「2」の「品名(型式)」欄には「K18WGサファイア入小枝チャーム付キーホルダー」と、「数量」欄には「1」と、「金額」欄には「35,000-」と記載されている。同じく「3」の「品名(型式)」欄には「先地K18ガーネットピアス」と、「数量」欄には「0.5ct」と、「金額」欄には「4,000-」と記載されている。さらに、これら下の「修理 交換 その他」の箇所には、「4」の数字が付され、「品名(型式)」欄には「先地K18ピンキーリング」と、「数量」欄には「1」と、また、「金額」欄には「3,000-」と記載されている。
また、「お引換証」の下部には、「出来上がり予定日」として「08年05月10日」の文字とその下に、本件商標と同一の構成よりなる商標が表示されている。
(2)乙第2号証は、本件商品の写真2葉と認められるところ、その実際の使用形態は、乙第20号証に示す8葉の写真のとおりであって、本件商品は、そのチェーンの部分に鍵の孔を通すことによって鍵を保持するタイプのものであり、それをバッグの取っ手にかけたり、また、ベルト通しにかけて身につけ使用できることが認められる。
(3)乙第3号証は、2008年5月11日付け「領収証(控)」と認められるところ、ここには、「小川様」、「¥47250」、「内訳:御品代として 修理代として」、「入金日:08年05月11日」などの文字が記載されている。
(4)乙第4号証は、「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」の平成20年5月1日から同27日までの「現金出納帳」と認められるところ、「11日」の「摘要内容」欄には「修理小川美奈子様」と記載され、その右の「収入金額」欄には「10,500」と記載されている。また、その下の同「11日」の「摘要内容」欄には「S2597K18 Key Holder 小川美奈子様」と記載され、その右の「収入金額」欄には「36,750」と記載されている。
(5)乙第5号証は、「Crest」と「ERIKO・ISHII」の欧文字とを二段に書した構成よりなる商標が表示されたタグの写真と認められるところ、その撮影日、撮影場所等は不明である。
(6)乙第6号証は、「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」の顧客である小川の平成21年5月29日付け陳述書であるところ、その内容は、小川が平成20年4月20日に、東京都港区南青山6-6-22クレスト・イシイ3Fに所在の「Jewelry Crest/ジュエリー クレスト」内で、サファイア付きのキーホルダーほか3点を購入した、というものであり、該陳述書には、資料として、購入時に商品に付されていたというタグの写真(乙第5号証と同じ)、「お引換証」(乙第1号証と同じ)、本件商品の写真2葉(乙第2号証と同じ)、「領収書(控)」(乙第3号証と同じ)が添付されている。
(7)乙第7号証は、東京都台東区上野3-17-9タイムビル2の1Fに所在の「はんこ広場 上野店」が「ジュエリークレスト」に宛てた平成18年9月8日付け「領収書」であるところ、「¥10.880/但 ゴム印代」などと記載されている。
(8)乙第8号証は、上記(7)の「はんこ広場 上野店」の小野恵美子の平成21年6月1日付けの陳述書であるところ、その内容は、「はんこ広場 上野店」は、平成18年8月に、ジュエリークレストからゴム印の製作を依頼され、該ゴム印を同年9月8日にジュエリークレストに納品した、というものであり、該陳述書には、作成したゴム印の印影として、本件商標と同一の構成よりなる文字及び図形(資料ア)、本件商標中、右に配された図形部分が除かれた文字(資料イ)、「石井恵理子」の文字(資料ウ)、「〒107-0062東京都港区南青山6-6-22クレスト・イシイ3F」、「TEL03-3498-9010 FAX03-3797-4060」の各文字を二段に横書きしたもの(資料エ)が添付されている。
(9)乙第12号証は、「Jewelry Crest?石井恵理子オリジナルジュエリー&リフォーム」との表題があるウェブサイトであるところ、トップページには、「Jewelry Crest」の文字と「ジュエリー クレスト」の文字を二段に横書きした標章及びこれらの文字の上に、本件商標中の図形部分と同一の構成よりなる図形が表示されている。また、「Topics」の1頁には、「三越本店宝石リフォームコーナー」、「2009/03/14」等と記載され、「Topics/日本橋三越お帳場通信」の1頁には、「日本橋三越本店 お帳場通信/2007年11月号 掲載記事」の文字、アクセサリー(ジュエリー)の写真、「〈石井恵理子〉デザイナーズジュエリーフェア/11月15日(木)?18日(日)」などの文字が掲載されている。さらに、「Shop」の頁には、「三越 日本橋本店」、「PISAロイヤル店」、「ザ・プリンス パークタワー東京店」、「ジュエラーチノ宇都宮店」、「千野時計店 函館店」、「ジュエラーチノ本店」が記載されている。
(10)乙第16号証は、北沢税務署長宛の「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」及び乙第17号証は、麻布税務署長宛の「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」であるところ、これらは、被請求人が、平成18年5月5日に、納税地を「世田谷区代田6-3-19」から「東京都港区南青山6-6-22 クレスト・イシイ3F」に異動した旨を内容とするものである。
(11)乙第18号証は、記入日を2009年5月2日、平成20年5月24日及び2007年6月11日とする「品質管理調査票」であり、「取組先名義」欄に「ジュエリークレスト 石井恵理子」、「住所」欄に「東京都港区南青山6-6-22クレスト・イシイ3F」、三越で展開する主力商品の1点として、「商品名」に「pt ダイヤモンド入 セットリング」等記載されている。
(12)乙第19号証は、2007年11月15日付けの「株式会社 三越 日本橋本店」から被請求人宛の「請求書」であって、これには、2007年11月15日から同年11月18日の期間に「日本橋三越本店」で催された「11月特招会(宝石サロン)」において,使用されたタイアップ金に関する通知と請求を内容とするものである。

2 前記1で認定した事実を総合してみれば、次のとおり判断される。
商標権者である石井恵理子は、アクセサリー(ジュエリー)の制作、販売及びその修理、リフォーム等を業とする「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」の経営に携わっていることを認めることができ(乙第12号証)、また、「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」は、三越日本橋本店、PISA ロイヤル店、ザ・プリンス パークタワー東京店、ジュエラーチノ宇都宮店、千野時計店 函館店、ジュエラーチノ本店等に店舗を展開するほか、ゴム印が納品された平成18年9月ころ(乙第7号証、乙第8号証)には、東京都港区南青山6-6-22クレスト・イシイ3階にも店舗を構えていたことが認められる(乙第16号証ないし乙第19号証)。
また、領収証(控)(乙第3号証)には、発行者の住所、名称の記載はないが、「¥47250」の金額の記載が、お引換証(乙第1号証)に記載された金額の合計「45,000」に消費税(5%)「2,250」を加算した金額と符合すること、そして、お引換証に記載の商品の出来上り予定日(2008年5月10日)の翌日の11日が、領収証(控)の入金日となっていることからすれば、その領収証(控)の発行者は、お引換証に記載の「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」と推認されるものである。
さらに、乙第2号証に示す本件商品は、その使用形態として提出された乙第20号証の写真からすれば、鍵を保持することができるという、本質的な機能を有する「キーホルダー」と認められるものである。
そうしてみると、商標権者又は本件商標の商標権の通常使用権者とみて差し支えない「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」は、本件審判の請求の登録前3年以内である2008年(平成20年)4月20日に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をして、本件商品である「K18WGサファイア入小枝チャーム付キーホルダー」を含む商品等の引換証を小川に発行し、同年5月11日に「Jewelry Crest(ジュエリー クレスト)」は、小川からその商品代金を受領すると共に、小川にその領収証を発行して、本件商品等の商品の引き渡しをし(乙第1号証及び乙第3号証)、本件取引があったことが推認されるところである。
そして、このことは、現金出納帳(乙第4号証)の平成20年5月11日の記載内容及び小川の陳述書の内容(乙第6号証)と符合することからも裏づけられるものである。

3 請求人の主な主張について
(1)請求人は、「お引換証」及び「領収書」には、発行者の住所、名称が全く記載されていないものであって、引換証としての体を成さないものであり、また、領収証としての本質的要件を満たしていないものであるから、これらをもって被請求人が本件商標を使用していることの裏づけとはなり得ない旨主張する。
確かに、「お引換証」及び「領収書」には、発行者の住所、名称の記載がされていないものである。
この点に関し、被請求人は、「お引換証」及び「領収書」が自分用の控えとして保持するものであるから、これらの書類に被請求人の住所等の表示が必要ないのは当たり前である旨主張しているところ、この被請求人の主張は、むしろ、一般の取引上あり得るものと判断するのが相当である。
また、常に、店舗の住所・電話番号等の連絡先をこれらの書類に表示しなくては、書類として有効でないとする合理的理由はない。
そうとすると、上記請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は、「お引換証」の上部に記された小川の氏名・住所・電話番号の筆跡が、乙第6号証(小川の陳述書)に署名された筆跡とは明らかに異なっていることを総合すれば、「お引換証」の信憑性は非常に低い旨主張する。
確かに、「お引換証」と小川の陳述書に署名された筆跡は、確かに、異なっているものである。
この点に関し、被請求人は、「お引換証」が被請求人による筆跡であり、陳述書は小川による筆跡であることを認めた上で、その理由として、被請求人の営むジュエリーサロン「ジュエリークレスト」は、規格化された宝飾品を主たる取扱商品とするようないわゆる量販店ではなく、小さくとも顧客との信頼関係を一番に考えその品質の維持と向上に努める宝飾品店であって、小川も被請求人との間で永年取引を続けている大切な顧客の一人であり、被請求人側で同氏の住所、氏名、連絡先等の情報は把握しているから顧客の手を煩わせることのないよう事業者が変わって氏名等情報を記入することは、商取引の実際においては、むしろ日常よくある当たり前の光景である旨主張しているところ、この被請求人の主張も、一般の取引の実際においては起こりえるものであって、なんら不自然なところはないものである。
また、「お引換証」には、顧客自身が自己の住所等を記載するのが習わしであると主張する請求人によるその証拠の提出もなく、さらに、代筆による余地はないとすることもいえないことからすれば、「お引換証」の信憑性は非常に低いとはいえないものである。
そうとすると、上記請求人の主張も採用することができない。
(3)請求人は、現金出納帳(乙第4号証)が、内容的にも分量的にもパソコンの表計算ソフト等を用いて簡単に作成・編集されたものと考えられ、これ自体被請求人の内部資料であって取引書類ではなく、本件取引事実の存在を確認することは困難である旨主張する。
確かに、現金出納帳は、内容的にも分量的にも簡単に作成・編集された内部文書ではあり、これのみによっては本件商品の使用事実は認められないものの、上記したとおり、提出された乙各号証を総合的にみれば、本件商品の使用事実を裏づけるものということができるから、請求人の主張は採用することができない。
(4)請求人は、小川の陳述書(乙第6号証)において、小川は「(略)サファイア付のキーホルダーほか3点を購入しました。(略)」と陳述しているが、一方で、その陳述書添付の資料4には、「御品代として、修理代として」と記載された領収証(控)が添付されており、陳述内容と明らかに齟齬するから、この陳述自体信憑性は非常に低い旨主張する。

確かに、領収証(控)には、「御品代として、修理代として」と記載されているところから、小川は、本件商品を購入したのか、修理を依頼したのか明らかではない。
この点に関し、被請求人は、領収証(控)の但書きの欄に記載のとおり、被請求人と小川との取引が「販売」及び「修理」であって、お引換証に記載の本件使用商品が「販売」に該当し、「先地ダイヤK18プレートPN」、「先地K18ガーネットピアス」及び「先地K18ピンキーリング」(「先地」とは一般に修理等のために依頼者側から預かる品をいう。)が「修理」(研磨)に該当するものである旨主張している。
ところで、「先地」とは、インターネットにより検索してみると、「洋服などを注文する際、客が生地を持参すること。また、その生地。」(http://kotobank.jp/word/%E5%85%88%E5%9C%B0)を意味する語であるところからすると、アクセサリー(ジュエリー)を取り扱う業界においても、この意味から転じて、「先地」は、被請求人が述べる上記意味する語として使用されていることが、肯首し得るところである。
そうとすると、お引換証に記載の「先地ダイヤK18プレートPN」、「先地K18ガーネットピアス」及び「先地K18ピンキーリング」に対応する金額「3,000」及び「4,000」は、小川が持参したジュエリーに対する修理の金額であるといわざるを得ない。このことは、本件商品である「K18WGサファイア入小枝チャーム付キーホルダー」の購入金額とみられる「35,000」からみても安価で、肯首し得るところである。
したがって、実際の取引書類からは、小川が、本件商品を購入し、他の3点についてのジュエリーの修理を依頼したしたことが認められることからすれば、たとえ、領収証(控)と小川の陳述内容に一部齟齬があるとしても、上記判断を左右するものではなく、かかる請求人の主張も採用することはできない。

4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者又は通常使用権者により、本件審判の請求に係る指定商品である「宝玉又はその模造品付のキーホルダー」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)本件商品


審理終結日 2010-04-22 
結審通知日 2010-04-27 
審決日 2010-08-27 
出願番号 商願2002-108672(T2002-108672) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y14)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 玲子三澤 惠美子 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 小川 きみえ
野口 美代子
登録日 2004-04-02 
登録番号 商標登録第4761809号(T4761809) 
商標の称呼 ジュエリークレスト、クレスト、ジェイシイ 
代理人 亀川 義示 
代理人 樋口 盛之助 
代理人 原 慎一郎 

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