• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X05
管理番号 1224893 
審判番号 無効2009-890094 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-08-05 
確定日 2010-09-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5153423号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5153423号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5153423号商標(以下「本件商標」という。)は,「アイセプト」の文字を標準文字により表してなり,平成20年1月25日に登録出願,第5類「コンタクトレンズ用消毒剤,コンタクトレンズ用洗浄剤,コンタクトレンズ用溶液,その他の薬剤」を指定商品として,同年6月23日に登録査定がなされ,同年7月25日に設定登録されたものである。

2 請求人が引用する登録商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録商標は以下の2件であり(以下,これらの商標を総称するときは「引用各商標」という。),いずれも,現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3274814号商標(以下「引用商標1」という。)は,「ARICEPT」の欧文字からなり,平成6年5月31日に登録出願,第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を指定商品として,同9年4月4日に設定登録され,その後,同19年1月30日に存続期間の更新登録がなされたものである。
(2)登録第3274815号商標(以下「引用商標2」という。)は,「アリセプト」の片仮名からなり,平成6年5月31日に登録出願,第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を指定商品として,同9年4月4日に設定登録され,その後,同19年1月30日に存続期間の更新登録がなされたものである。

3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 商標の類以性について
本件商標よりは「アイセプト」の称呼が生じ,引用各商標よりは共に「アリセプト」の称呼が生ずることは明らかである。
しかるところ,これらの称呼は共に5音と同音数よりなり,さらに,全構成音5音中4音を共通にするものであり,比較的聴取され難い中間第2音における「イ」と「リ」の音の差異を有するにすぎないものである。そして,「イ」と「リ」の音は,母音を共通にするものといえ,これらの音を明瞭に聴別することは困難である。
さらに,かかる差異は,比較的強く,かつ,明瞭に発音される語頭音「ア」に続く中間第2音に位置するものであるため,「イ」と「リ」の音は語頭音「ア」に吸収されやすく,比較的弱く発音されることとなる。そのため,その差異が称呼全体において与える影響は極めて小さいものといわなければならない。
このように,本件商標と引用各商標とは,同音数により構成されている点,全5音中4音も共通する点,相違する音が比較的聴別され難い中間に位置する点,相違する中間第2音においても母音を共通とする点及びこれらの差異が称呼全体に与える影響が極めて小さい等の諸点に鑑みれば,両商標は語韻語調が近似するものであって,称呼上相紛らわしいものと言わなければならない。
イ 外観について
本件商標は,「アイセプト」と片仮名を左横書きしたものである。これに対し,引用商標2は,「アリセプト」と片仮名を左横書きしたものである。
しかるところ,本件商標と引用商標2とは片仮名5文字をそれぞれ左書きした点で構成が同一である。さらに,両商標はその構成において全5文字中の4文字までをも同じくするものである。
このように両商標は構成上の共通性が多く,また,差異があるとしても微差にすぎないことから,取引者及び一般需要者が本件商標及び引用商標2に接した場合は,外観上相紛らわしいものとして看取されるものである。このため,本件商標及び引用商標2は,時と所とを異にして行ういわゆる離隔的観察においても,区別することが容易でない外観上相紛らわしい類似の商標であるものといわなければならない。
ウ 小括
以上のとおり,本件商標と引用各商標とは外観上相紛らわしく,かつ,語韻語調も近似するものであることから,両商標は極めて類似性が高いものであるといわなければならない。
エ 指定商品の類似性について
本件商標と引用各商標は,共に指定商品中に第5類「薬剤」を含むものである。
オ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法4条第1項第15号該当性
本件商標と類似性が高い引用各商標は,請求人の業務に係る商品「アルツハイマー型認知症治療剤」(以下,「請求人商品」とする。)を表示するものとして取引者及び需要者である医療従事者及び一般需要者の間において,広く認識された周知,著名な商標であることは明らかである。そのため,被請求人が本件商標を本件商標の指定商品に使用する場合には,その商品に接する需要者又は取引者は,請求人の業務に係る商品であるものと誤認混同を生じ,あるいは,請求人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるものと誤認し,その結果需要者又は取引者が商品の出所について混同するおそれがあることは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性
前述のとおり,引用各商標は,請求人商品を表示するためのものとして取引者及び需要者である医療従事者の間において,本件商標の出願時及び査定時で広く認識された周知,著名な商標となっている。さらに,引用各商標と本件商標とは互いに類似性が高く,また,指定商品も互いに類似している。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(5)まとめ
以上に述べたとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同法第4条第1項第15号及び同法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから,商標法第46条第1項第1号により,その登録は無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は,請求人の上記主張に対し,何ら答弁していない。

5 当審の判断
(1)引用各商標の著名性について
ア 請求人の提出した証拠及び主張によれば,以下の事実が認められる。
請求人会社は,1941年(昭和16年)に設立され,資本金が449億円,2008年度連結売上高が7817億円,国内事業所数が67箇所と我が国有数の製薬会社である。そして,引用各商標は,請求人商品に付され,1999年の発売開始以来現在に至るまで継続して使用されているものであり,一般名称を「塩酸ドネペジル」とする請求人商品について請求人が創出した名称である。また,請求人商品は,アルツハイマー型認知症の症状の進行抑制に用いられ,かつ,我が国において唯一アルツハイマー型認知症の保険適応を持つ治療剤である(甲第9号証ないし甲第12号証)。
イ 引用各商標を付した請求人商品の2000年から2008年までの日本国内における売上げは,2000年が約85億円,2001年が約137億円,2002年が約219億円,2003年が約284億円,2004年が約351億円,2005年が約423億円,2006年が約497億円,2007年が約623億円,2008年が約782億円とその実績は年々増加し,その累計額は3400億円を越えている(甲第14号証)。
ウ 請求人は,引用各商標を付した請求人商品に関する広告宣伝活動を専門誌,業界誌等への広告掲載を中心に,定期的,かつ,継続的に行なっており、これら広告宣伝活動のうち2000年から2008年に広告掲載に要した費用は,2000年が約817万円,2001年が約1184万円,2002年が約1206万円,2003年が約1326万円,2004年が約1228万円,2005年が約1530万円,2006年が約1494万円,2007年が約2116万円,2008年が約2298万円と製品売り上げと同様に年々増加し,その累計額は約1億3000万円である(甲第15号証ないし甲第37号証)。
エ 以上に認定した我が国で唯一アルツハイマー型認知症の保険適応を持つ治療剤であるといった請求人商品の医療品業界における実情,引用各商標を付した請求人商品の販売実績及び引用各商標を付した請求人商品の広告宣伝実績等を総合考慮すれば,引用各商標は,請求人商品を表示するものとして,少なくとも本件商標の指定商品を取り扱う分野である医薬品業界において,本件商標の出願時及び査定時において広く認識され,かつ,著名となっていたものと認められる。
(2)本件商標のと引用各商標の類否について
本件商標は,「アイセプト」の文字からなるものであるから「アイセプト」の称呼を生ずるものであり,特定の観念を生じないものである。
一方,引用各商標は,「ARICEPT」又は「アリセプト」の文字からなるものであるから「アリセプト」の称呼を生ずるものであり,特定の観念を生じないものである。
そこで,本件商標から生ずる「アイセプト」の称呼と引用各商標から生ずる「アリセプト」の称呼とを比較すると,両称呼は,共に5音構成からなり,2音目の「イ」と「リ」の音を異にするほか,他の音構成をすべて同じくするものである。
そして,差異音「イ」と「リ」は,母音(i)を共通にする近似した音といえるものであり,また,これら差異音は,語頭にあって,強く発せられる「ア」(a)の音と後続する「セ」(se)の音の中間にあって前後の音の響きに吸収され易く,それ自体の音の響きが相対的に弱められる結果,その違いが必ずしも常に明瞭に聴取されるものとはいい難いものである。
そうすると,前記の両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合,または,両称呼に時と処を異にして離隔的に接した場合,両者は全体の語調語感が近似し,聞き誤るおそれがあるものといわなければならない。
また,本件商標と引用商標2の外観についてみると,両者は,片仮名綴りにおいて「イ」と「リ」の1文字を除き,4文字の文字配列を同じくするものであるから,両者を時と処を異にして離隔的に考察した場合,それぞれから受ける外観の印象も近似するものといえる。
さらに,両商標は,共に特定の意味合いを有しない造語であるから,観念において両者が区別されるとする事由は見出せない。
以上によれば,本件商標と引用各商標とは,称呼において互いに紛れるものであり,かつ,本件商標と引用商標2とにおいて外観も近似した印象を与
えるものであり,観念の異同を考慮する余地のないものである。
そして,上記(1)において認定した引用各商標の著名性をも考慮すれば,本件商標は,引用各商標とその出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
また,本件商標の指定商品は,引用各商標の指定商品と同一又は類似するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効にすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-07-07 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-08-04 
出願番号 商願2008-4760(T2008-4760) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (X05)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 英一郎 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小林 由美子
石田 清
登録日 2008-07-25 
登録番号 商標登録第5153423号(T5153423) 
商標の称呼 アイセプト、セプト 
代理人 内藤 通彦 
代理人 橘 哲男 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ