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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 X33 審判 全部申立て 登録を維持 X33 審判 全部申立て 登録を維持 X33 |
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管理番号 | 1223162 |
異議申立番号 | 異議2010-900016 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2010-01-21 |
確定日 | 2010-08-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5275522号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5275522号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5275522号商標(以下「本件商標」という。)は、「ビュル ド ブランケット」の文字を標準文字で書してなり、平成19年11月20日に登録出願、第33類「発泡白ワイン」を指定商品として、平成21年9月16日に登録査定され、同年10月23日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立ての理由 (1)商標法第4条第1項第7号該当性について 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、ワインの産地として知られているフランス南部ラングドック地域のリムー県所在のシュール・ダルク社等のワイナリーが共同して設立した会社である。 「Bulle de Blanquette」(以下「引用商標」という。)は、申立人の構成員であるシュール・ダルク社の生産する世界最古の発泡ワインの銘柄(商標)として、取引者、需要者の間に周知であった。 本件商標の商標権者は、かつてシュール・ダルク社のワインを輸入しており、遅くとも2007年以降は、子会社の巴ワイン・アンド・スピリッツ株式会社(以下「巴ワイン・アンド・スピリッツ社」という。)をして、引用商標を使用した発泡ワイン(以下「ダルク社製品」という。)を輸入させており、引用商標が申立人の構成員であるシュール・ダルク社の発泡ワインの商標であること、「ビュル ド ブランケット」がその片仮名表記であること、を熟知して、輸出者に無断で本件商標の出願をし、登録を得たものである。 商標権者の上記行為は、取引における信義を踏みにじるものであり、また、国際取引における信義を踏みにじるものであるから、本件商標は、公序良俗に反する商標である。 (2)商標法第4条第1項第19号該当性について 前記(1)のとおり、本件商標は、その登録時はもとより出願時においても、ダルク社製品に使用する商標として、我が国の需要者の間に広く知られた引用商標の片仮名表記であり、引用商標と類似する商標である。 商標権者は、ダルク社製品の輸入者である巴ワイン・アンド・スピリッツ社の親会社であり、これを熟知して本件商標の出願をし、登録を得たものであり、本件商標は、その登録を得ることにより、我が国において第三者がダルク社製品の取扱いができないようにして不正の利益を得ることを目的とし、また、同ワインの生産者であるシュール・ダルク社をして巴ワイン・アンド・スピリッツ社にしかダルク社製品を輸出できないようにし、もって、シュール・ダルク社を拘束し、シュール・ダルク社に損害を加える目的で、出願をし登録を得たものである。 (3)商標法第4条第1項第10号該当性について 本件商標は、我が国において発泡ワインの取引者、需要者の間に本件商標の登録時はもとより、出願時に周知であった引用商標と類似し、発泡白ワインを指定商品とするものである。 (4)むすび したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第19号及び同第10号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 3 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 甲第2号証ないし甲第15号証(なお、枝番のある証拠について、枝番のすべてを引用する場合は、枝番の記載を省略する。)によれば、以下の事実を認めることができる。 (ア)フランス南部のラングドック地域は、フランス全土のワイン生産量の約3分の1を占めるワインの産地である。シュール・ダルク社は、1544年に創業したワイナリーであって、上記ラングドック地域に位置するオード県リムーに所在する(甲第3号証、甲第6号証、甲第9号証)。シュール・ダルク社の業務に係る商品「ワイン」は、2001年(平成13年)ころから世界の名酒事典に掲載され、我が国において紹介されていた(甲第7号証)。また、シュール・ダルク社の製造、販売に係る、例えば、「トック・エ・クロシェ・リムー・オータン」、「クレマン・ド・リムー・ブリュット」、「シャルドネ・ヴィエイユ・ヴィーニュ」などの銘柄のワインが我が国において、遅くとも2008年(平成20年)12月ころには、インターネット上で販売されていた(甲第10号証、甲第11号証の1。なお、甲第10号証、甲第11号証の1は、2008年12月26日にプリントアウトされたことが認められるが、これらの記載内容がインターネット上に掲載された日付は不明である。)。 (イ)一方、ダルク社製品の日本における紹介や広告については、本件商標の商標権者の関連会社である巴ワイン・アンド・スピリッツ社がチラシに掲載した事実は認められるものの、該チラシの作成日や頒布日などは不明であり、また、「LEON」なる雑誌に掲載された事実が認められるが、該雑誌の発行日も不明である(甲第15号証、甲第11号証の2及び3。なお、甲第13号証の3によれば、2008年2月号「LEON」なる雑誌にダルク社製品が掲載された旨の記事の記載があり、その記載内容が甲第11号証の3と同じものであるところからすると、甲第11号証の3に示す「LEON」なる雑誌は、2008年2月ころに発行されたものと推認することができる。)。その他、ダルク社製品が本件商標の登録出願前に、広告された事実を明らかにする証拠の提出はない(甲第13号証における引用商標及びその片仮名表記のYahoo!JAPANでの検索は、検索日が不明であり、また、甲第13号証のその他のインターネット上の記事も2010年(平成22年)4月23日にプリントアウトされたことが認められるが、掲載された日付けは不明である。)。さらに、ダルク社製品の日本への輸出量は、2007年(平成19年)1月1日から同年12月31日までの間が12120本であり、2008年(平成20年)1月1日から同年12月31日までの間が41904本、2009年(平成21年)1月1日から同年12月31日までの間が20376本である(甲第12号証)。そして、2007年以前に、ダルク社製品が日本に輸入されたと認めるに足りる証拠の提出はない。 イ 前記アで認定した事実によれば、ダルク社製品は、本件商標の登録出願日である平成19年11月20日の少し前には、日本に輸入され、平成20年に雑誌で紹介されていた事実が認められるものの、シュール・ダルク社ないし申立人が本件商標の登録出願前に、これを宣伝広告をした事実はない。また、ダルク社製品がインターネットで紹介された事実があるとしても、その掲載日の不明なものが多数存在し、本件商標の登録出願前に掲載されたと認め得るものは存在しない。さらに、ダルク社製品の日本への輸出量も本件商標の登録出願時及び登録査定時(平成21年9月16日)を通して、特別多いというほどのものではない。 したがって、引用商標は、ダルク社製品を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成19年11月20日)前より、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。また、引用商標がダルク社製品を表示するものとして、本件商標の登録出願日前より、外国における需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出はない。さらに、提出された甲各号証よりみて、引用商標が、本件商標の登録査定の時点において、日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されるに至ったと窺うことができる格別の事情も見出せない。 (2)商標法第4条第1項第7号 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないと規定しているところ、同規定は、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。 さらに、同規定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである(平成19年(行ケ)第10391号)。 これを本件についてみると、本件商標は、商標それ自体には公序良俗違反がないことは明らかである。 一方、甲第12号証によれば、ダルク社製品は、2007年以降日本に輸入されたものである(なお、甲第12号証の3(訳文)には、「2007年1月1日?2007年12月31日」と記載されているが、これを裏付ける証拠の提出はなく、輸入された数量からみて、1月から輸入されたのか否かなど詳細は不明である。)ところ、ダルク社製品を日本に輸出するに際しては、シュール・ダルク社ないし申立人は、引用商標についての商標登録出願をすることが可能であったにもかかわらず(甲第5号証及び申立ての理由によれば、申立人は、「SIEUR D’ARQUES」の文字よりなる商標(登録第4437135号)を有している。)、これを怠っていたといわざるを得ないし、また、ダルク社製品の日本への輸出は、シュール・ダルク社ないし申立人が、引用商標を日本国で商標登録出願をするまでもない程度の小規模的な輸出であったと考えていたと推測せざるを得ない。 上記状況、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度並びに商標法第4条第1項第7号の趣旨を総合して考慮すれば、本件商標の登録が「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でないというべきである。 したがって、本件商標は、商標自体が公の秩序又は善良の風俗を害する商標でないことは明らかであり、また、その出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認めることができないような場合にも該当しないというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する商標ということはできない。 (3)商標法第4条第1項第19号及び同第10号について 前記(1)認定のとおり、引用商標は、ダルク社製品を表示するものとして、本件商標の登録出願日である平成19年11月20日及び本件商標の登録査定日である平成21年9月16日の時点において、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 そうすると、本件商標は、引用商標の名声にただ乗りする目的、ないし引用商標を希釈化する目的等、不正の目的をもって使用する商標ということもできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同第10号に該当する商標ということはできない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第19号及び同第10号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2010-08-04 |
出願番号 | 商願2007-116945(T2007-116945) |
審決分類 |
T
1
651・
252-
Y
(X33)
T 1 651・ 222- Y (X33) T 1 651・ 22- Y (X33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 吉田 静子 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 内山 進 |
登録日 | 2009-10-23 |
登録番号 | 商標登録第5275522号(T5275522) |
権利者 | 巴工業株式会社 |
商標の称呼 | ビュルドブランケット |
代理人 | 古木 睦美 |
代理人 | 佐藤 雅巳 |