• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X29
管理番号 1223045 
審判番号 無効2009-890120 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-05 
確定日 2010-08-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5225780号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5225780号商標(以下「本件商標」という。)は、「美学」の文字と「BIGAKU」の文字を二段に横書きしてなり、平成20年10月16日に登録出願、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実」、第30類「代用コーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶飲料,その他の茶,氷,氷菓」及び第32類「飲料水,香りを付けた飲料水,鉱泉水,炭酸水,栄養補助剤を添加した清涼飲料,スポーツ用の清涼飲料,飲料製造用のシロップ・濃縮液・その他の液状・粉末状の清涼飲料製造用調製品,その他の清涼飲料,液状・粉末状の果実飲料製造用調製品,その他の果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース,その他のアルコール分を含有しない飲料」を指定商品として、平成21年4月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第5257443号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成20年9月26日に登録出願、第30類「コーヒー,コーヒー豆」、第32類「コーヒー入り清涼飲料,コーヒー入り乳清飲料」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、平成21年8月14日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、引用商標を付したコーヒー豆の包装の写し(以下「甲第1号証」という。)を提出した。
(1)請求の理由の要点
本件商標は、漢字の「美学」であり、「ビガク」と称呼する。同じく先出願で第30類を指定した引用商標は、「珈琲美学」であり、「コーヒービガク」と称呼するが、同じ第30類なので観念を共有するため、同一又は類似する商品を連想させるので、同一又は類似の商品と判断できるのである。
(2)本件商標の登録を無効とすべき理由
ア 本件商標は、その構成文字より、「ビガク」の称呼を生ずる。また、観念としては、辞書(旺文社)によると「自然・芸術に現れた美の本質・原理について研究する学問」と記載されている。
イ 引用商標は、その構成文字より、「コーヒービガク」の称呼を生ずる。また、観念として、コーヒーの香りと味の良さをテーマにしている。そして、第30類を指定商品とし、当然の如くコーヒーと連係している。
ウ 本件商標と引用商標との類否
引用商標が先出願であることは明白である。また、第30類を指定した商標に、コーヒーを付加しても当然と判断される。何故なら、コーヒーは、第30類に属するものであり、称呼・外観として判断するのは、無意味だからである。よって、観念判断が審査の基準とされるべきである。
エ 本件商標の第32類での類否
社団法人発明協会発行の「類似商品・役務審査基準」の第30類の「コーヒー及びココア」にける「(備考)2」には、「『コーヒー』は、第32類の『コーヒーシロップ』に類似する。」との記載があり、この本件登録で、商標法第3条第1項第6号及び同第3条第2項に抵触する範囲であり、消費者に出所混同を生じさせ多大な迷惑を起しているので、当然に取り消されるべきものである。商標「珈琲美学」を使用している写真(甲第1号証)を提出する。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)本件審判の請求の理由には、適用条文が示されていないので必ずしも明らかでないが、請求人の主張を総合すると、要するに、本件商標は、「珈琲美学」の文字からなる引用商標に類似し、指定商品においても同一又は類似であるから商標法第4条第1項第11号に該当する旨、さらに、同15号に該当する旨を主張しているものと思われる。以下、この前提において答弁する。
(2)本件商標は、その構成文字より、「ビガク」の称呼、及び請求人も言及するように、概ね「自然・芸術に現れた美の本質・原理について研究する学問」の如き観念を生じる。
一方、引用商標は、「コーヒー」の漢字表記である「珈琲」と「美学」とを一連に結合して表したものである。
一般に、美学において扱う「美」には、いろいろな分野の美があることが知られ、現代においては多様な価値観が存在することから、例えば「珈琲美学」のほか、「坂道美学」、「身体美学」、「音楽美学」、「健康美学」、「個性美学」、「政治の美学」、「東洋美学」、「心理美学」、「舞台美学」、「別れの美学」、「男の美学」、「中途半端の美学」等々、多種多様な美学に照応する用語が用いられている(乙第1号証)。
これらよりすれば、「珈琲美学」の文字からなる引用商標は、全体として「コーヒーのいれ方又は飲み方に関する美学」等の観念を生じるものといえる。すなわち、「珈琲」の文字は、単に指定商品が「コーヒー」であることを示すにとどまらず、同書同大に表した「美学」の文字と相俟って、全体として上記のような観念を有するものであり、それ故、全体として「コーヒービガク」の称呼のみが生じるものである。また、両商標は外観において顕著に異なる。
したがって、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼、観念において全く異なるものであり、指定商品が一部において同一又は類似であることを考慮してもなお相紛れるおそれはなく、互いに容易に区別できる非類似の商標というべきである。
よって、本件商標は、その登録査定時(平成21年4月1日)において、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(3)請求人は、「消費者に出所混同を生じさせ多大な迷惑を起こしている」と述べ、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張をしているかのようであるが、引用商標と同一の商標は、同種役務について他でも使用例がいくつもあって(乙第2号証)、その自他商品識別力に疑問なしとしない上、前記のように、本件商標は外観、称呼、観念において全く異なるものであるので、出所の混同を生じるおそれがないことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。

5 当審の判断
(1)本件商標の登録の無効理由について
本件商標の登録を無効とすべき旨の請求人の主張は、必ずしも明確であるとは言えないところであるが、請求人の主張を総合すると、「本件商標は、引用商標に類似する商標であって、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、本件商標をその指定商品について使用するときは、その需要者に引用商標を使用した商品と出所の誤認混同を生じさせるおそれがある。したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。」旨主張するものと解されるので、以下検討する。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、前記1のとおり、「美学」の文字と「BIGAKU」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「ビガク」の称呼を生ずるものであって、「美学」は、「自然・芸術における美の本質や構造を解明する学問。美的現象一般を対象として、それの内的・外的条件を解明し、理論的に基礎づける。美しさに関する独特の価値観・こだわり。」(広辞苑第6版)を意味する語と認めることができる。
これに対して、引用商標は、別掲のとおり、「珈琲美学」の文字を丸みを帯びた太字で大きく横書きしてなり、その下に、上記「珈琲美学」の文字に比べて、かなり小さい文字で「Coffee Bigaku」の文字を横書きしてなるものであるところ、その構成中の「珈琲美学」の文字部分は、上記態様からみて、看者の注意を強く引く部分であるといえるのに対し、下段の「Coffee Bigaku」の文字部分は、上記のとおり、「珈琲美学」の文字部分に比べ、小さく表されている上に、該「珈琲美学」の文字部分中の「珈琲」を英語で、「美学」をローマ字で表記したにすぎず、付記的な表示と理解されるものといえる。そして、該「珈琲美学」の文字部分は、同一の書体をもって、同一の大きさ、間隔で表されているものであるから、外観上まとまりのよい一体感のあるものとして看取されるばかりでなく、これより生ずると認められる「コーヒービガク」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。
さらに、引用商標は、構成全体として、「コーヒー豆の選定から煎り方・入れ方など、コーヒーに関する独特の価値観・こだわり」なる観念を生ずるものと認めることができる。
そうすると、引用商標は、構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるとみるのが相当であるから、その構成文字に相応して、「コーヒービガク」の一連の称呼のみを生ずるものであって、「コーヒーに関する独特の価値観・こだわり」なる観念を有するものといわなければならない。
そこで、両商標より生ずる称呼について比較すると、本件商標より生ずる「ビガク」の称呼と引用商標より生ずる「コーヒービガク」の称呼は、前半部分において、「コーヒー」の音の顕著な差異を有するものであるから、それぞれの称呼を全体として称呼しても、明瞭に聴別し得るものである。
また、両商標の外観についても、前記したぞれぞれの構成よりみて、明らかに区別し得るものである。
さらに、両商標の観念は、前記認定のとおり、本件商標は、「自然・芸術における美の本質や構造を解明する学問。美的現象一般を対象として、それの内的・外的条件を解明し、理論的に基礎づける。美しさに関する独特の価値観・こだわり。」の観念を有するものであるのに対し、引用商標は、「コーヒーに関する独特の価値観・こだわり」の観念を有するものであるから、互いに紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
なお、請求人の主張が、仮に本件商標が商標法第4条第1項第15号にも該当する、と解することができるとすれば、その主張は理由がない。すなわち、請求人は、引用商標が商品「コーヒー豆」について使用されているとして、甲第1号証を提出するが、引用商標が請求人の業務に係る商品「コーヒー豆」について使用された結果、本件商標の登録出願時には、その需要者の間に広く認識されていたという事実を客観的に認めるに足りる証拠は一切提出していないのみならず、本件商標と引用商標とは、前記認定のとおり、商標それ自体非類似のものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、該商品が請求人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないといえるからである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標


審理終結日 2010-06-29 
結審通知日 2010-07-01 
審決日 2010-07-14 
出願番号 商願2008-83986(T2008-83986) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (X29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 内山 進
井出 英一郎
登録日 2009-04-24 
登録番号 商標登録第5225780号(T5225780) 
商標の称呼 ビガク 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 足立 泉 
代理人 中田 和博 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ