• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y031416182021
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y031416182021
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y031416182021
管理番号 1222943 
審判番号 無効2009-890093 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-08-03 
確定日 2010-08-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5037137号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5037137号商標(以下「本件商標」という。)は、平成18年4月26日に登録出願、「HULA HAWAII」の欧文字を横書きしてなり、第3類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類ないし第28類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同19年3月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第79号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、本件商標登録出願の日前より、本件商標と同一又は類似の商標を、少なくとも本件指定商品と同一又は類似の商品及び役務につき使用してきていることから、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)商標「Hula Hawaii」使用の経緯とその周知性について
ア 請求人は、平成13年3月より今日に至るまで、店舗名を「Hula Hawaii」とする直営店舗において、商標「Hula Hawaii」を使用した「被服、履物、かばん類、身飾品、飲食料品、印刷物、録音済みCD、録画済みDVD、キーホルダー、携帯電話用ストラップ、愛玩動物用衣服類、愛玩動物用食器類、香水、傘、文房具類、布製身の回り品、マット、ステッカー、フオトフレーム、おもちゃ、人形、貯金箱、台所用品、清掃用具、クッション、ブランケット、寝具、コーヒー豆、ラーメン」等の、主にハワイに関連するいわゆるハワイアン商品の展開をしてきている(甲第2号証、甲第12号証、甲第13号証ないし甲第36号証の雑誌広告及び甲第54号証)。
イ 請求人は、マリンスポーツ用品の開発、製造、販売及び輸出入、並びに、マリンスポーツに関する施設の経営やイベントの企画等を主な業務とする会社であるが、平成12年頃から、ハワイアン雑貨、生地、ムームー、アロハシャツ等のハワイアン商品のハワイからの輸入を開始した。しかし、その当時、ハワイアン商品は、輸入により入手でき、また、ある程度の購買力は見込めたが、これらハワイアン商品販売の専門店というものがなく、請求人のマリンスポーツ用品販売店においても、ハワイアン商品の販売体制が整っていなかったため、商品を輸入してもその卸し先及び売り先がなかった。そこで、請求人は、平成13年(2001年)にハワイアン商品の専門店を開設することとし、同年3月に鎌倉市稲村ケ崎にその第1号店を出店した(甲第2号証、甲第12号証ないし甲第14号証)。
ウ この商品展開に先立ち、請求人は、そのハワイアン関連商品の輸入元である「フラサプライセンター」のオーナーであるシルビア ウメダ コップ氏に相談したところ、同氏が代表を務めるデオ インコーポレーテッドが有する「Hula Hawaii」なる商標の日本における独占的使用の許諾を受けることができたので(甲第3号証)、当該商標「Hula Hawaii」を上記第1号店の店舗名とするとともに、その店舗で取り扱かう商品のオリジナルブランド名とすることとした。そして、その後、現在に至るまで、当該商標「Hula Hawaii」の使用を継続している。
なお、シルビア ウメダ コップ氏は、デオ インコーポレーテッドの名義で商標「Hula Hawaii」につき、1999年11月1日を最先使用日として、商品区分第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類及び第27類についてハワイ州商標登録及び米国商標登録を受けている(甲第4号証ないし甲第11号証)。
エ 上記第1号店の開店後、本商標を使用した商品は、好評を博し、本件商標を店舗名とする請求人の直営店は、本件商標の出願日より前の平成18年3月末の時点で14店舗に増加し(甲第2号証)、請求人の「Hula Hawaii」ブランド商品の取扱店は、同時点において、ムラサキスポーツ、ミナミ、ディズニーランド、三井不動産、相鉄ジョイナス、三菱地所、千葉そごう、港北東急百貨店、イクスピアリ等で合計700店舗にまで急増した。そして、現時点における直営店は、34店舗に伸びている(甲第2号証、甲第12号証)。
また、平成15年からは、請求人ホームページにおいて通信販売を開始し、平成17年からは、インターネットモール楽天において、大々的に通信販売を行ってきている(甲第2号証の沿革欄)。その結果、「Hula Hawaii」ブランド商品は、各取扱店や需要者から大きな信頼を得て、その売り上げも順調に伸び、以下のとおり、年々上昇傾向にあり、オリジナルブランド「Hula Hawaii」は、請求人のブランドとして、遅くとも本件商標の出願日より前の平成18年3月末の時点で、当業者間においてのみならず、需要者間においても周知性を獲得するに至っていた。
オ さらに、本店舗及び本商標は、第1号店の開店当初からマスコミの注目を浴び、しばしば雑誌や新聞等に取り上げられ、また、主にハワイ関連の雑誌に定期的に広告を掲示する等の宣伝広告も行ってきている。特に、2000年にフラダンス専門誌として創刊された「Hula Le’a」には、その創刊以降現時点に至るまで毎号、「Hula Hawaii」の広告を掲載している(甲第13号証ないし甲第24号証)。また、これ以外にも平成18年3月末までに、「素敵なフラスタイル」(甲第25号証ないし甲第29号証)、「Kathy Mom(オハナ・キャシー・マム)」(甲第30号証及び甲第31号証)、「Hawaii Lani(ラニハワイ)」(甲第32号証ないし甲第34号証)、「フラとハワイのお稽古ガイド」(甲第35号証)等のハワイ関連雑誌や、フラダンス教室のパンフレット「HO’IKE Vol.2」(甲第36号証)に広告を掲載している。
カ かくして、請求人の直営店店舗名称及びオリジナルブランドとして展開している「Hula Hawaii」は、平成13年の第1号店の開店当時から多くの注目を浴び、現在も成長を続けているものであり、遅くとも本件商標の出願日である平成18年4月26日時点においてはもとより、本件商標の査定日である平成19年3月12日の時点においても、請求人の直営店店舗名称及びオリジナルブランドとして展開している「Hula Hawaii」は、請求人の業務に係る商品又は店舗名を表示する標章として、業者間においてはもちろん、需要者間においても周知となっていた。このことは、請求人の当該商品を取り扱う多くの大手販売店等が証明している(甲第37号証ないし甲第50号証及び甲第53号証の証明書)。
なお、これらの使用証明書においては、商標開始時が2002年(平成14年)9月とされているが、それは、平成14年9月に鎌倉の由比が浜海岸で第一回鎌倉ビーチフェスタというイベントが開催され、ステージが組まれてフラダンス等が行われたが、その模様が鎌倉商工会議所新聞に紹介され、その記事中に請求人の「Hula Hawaii」のロゴが大きく掲載された関係で、遅くともこの時点で請求人が「Hula Hawaii」の使用をしていたことに相違はないという趣旨である。
キ 以上の点から、請求人の直営店店舗名称及びオリジナルブランドとして展開している商標「Hula Hawaii」は、遅くとも本件商標の出願日である平成18年4月26日時点においてはもとより、本件商標の査定日である平成19年3月12日及び登録日である平成19年3月30日の時点において、請求人の業務に係る商品又は店舗名を表示する標章として、業者間においてはもちろん、需要者間においても周知となっていたことは、明らかなところである。
(3)商標法第4条第1項第10号について
上述したように、請求人の直営店店舗名称及びオリジナルブランドとして展開している商標「Hula Hawaii」は、本件商標の出願日である平成18年4月26日時点、並びに、本件商標の査定日である平成19年3月12日の時点において、請求人の業務に係る商品又は店舗名を表示する標章として、業者間においてはもちろん、需要者間においても周知となっていた。
しかるに、本件商標は、上記請求人の商標と同一又は類似であることが明らかであり、その指定商品の商品区分のうち第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類、第26類、第27類、第28類については、上記請求人の取り扱う、「被服、履物、かばん類、身飾品、飲食料品、印刷物、録音済みCD、録画済みDVD、キーホルダー、携帯電話用ストラップ、愛玩動物用衣服類、愛玩動物用食器類、香水、傘、文房具類、布製身の回り品、マット、ステッカー、フォトフレーム、おもちゃ、人形、貯金箱、台所用品、清掃用具、クッション、ブランケット、寝具、コーヒー豆、ラーメン」と同一又は類似の商品を含むので、その登録商標は、商標法第4条第1項第10号にに該当するものである。
なお、請求人が、本件商標出願の日前からこれらの商品を取り扱っていたことは、甲第13号証ないし甲第35号証の雑誌広告、並びに、甲第54号証の請求人の2004年版商品カタログを参照すれば明らかである。この甲第54号証の商品カタログには、発行日付が記載されていないが、そこに掲載されている新商品と2004年5月1日発行の甲第30号証及び2004年6月1日発行の甲第32号証の広告に記載されている新商品とが一致しているから、2004年版である(甲第54号証2ページ掲載のHulaHawaiiキャンバストート及び3ページ掲載のサマードレスA、B、Cが甲第30号証の広告欄に掲載されており、そのキャンバストート並びに色違いのガーメントバッグ及びトートバッグが甲第32号証の53ページに掲載され、さらに、甲第54号証3ページ掲載のTシャツが甲第32号証の55ページに掲載されている。)。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上述したように、「Hula Hawaii」なる商標ないし名称は、本件商標の出願当時において、少なくとも商品「被服、履物、かばん類、身飾品、飲食料品、印刷物、録音済みCD、録画済みDVD、キーホルダー、携帯電話用ストラップ、愛玩動物用衣服類、愛玩動物用食器類、香水、傘、文房具類、布製身の回り品、マット、ステッカー、フォトフレーム、おもちゃ、人形、貯金箱、台所用品、清掃用具、クッション、ブランケット、寝具、コーヒー豆、ラーメン」について請求人が使用する商標及び前記各商品を販売する店舗名(商標)として、需要者の間に広く知れ渡っていた。
かかる状況の下、この商標と同一又は類似の本件商標が、ハワイ(アメリカ)関連の「被服、履物、かばん類、身飾品、飲食料品、印刷物、録音済みCD、録画済みDVD、キーホルダー、携帯電話用ストラップ、愛玩動物用衣服類、愛玩動物用食器類、香水、傘、文房具類、布製身の回り品、マット、ステッカー、フォトフレーム、おもちゃ、人形、貯金箱、台所用品、清掃用具、クッション、ブランケット、寝具、コーヒー豆、ラーメン」と類似の商品に使用された場合はもちろん、非類似のハワイ(アメリカ)関連の商品について使用された場合においても、需要者に出所の混同を生じさせるものである。
(5)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と、「Ka Hula Hawaii」の欧文字を標準文字で表してなり、平成17年6月7日に登録出願、第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同18年1月6日に設定登録された登録第4920097号商標(以下「引用商標」という。)とは、外観、称呼、観念において類似し、その指定商品も同一又は類似するものである。
2 弁駁(要旨)
(1)甲第1号証の報告書は、「Hu1a Hawaii」の使用開始時からの経過を詳細に述べているので、周知性を証明するに当たり、非常に重要な証拠である。
(2)店舗の敷地面積が狭いとしても、周知性の判断に影響はしない。
(3)被請求人は、第三者による証明書(甲第37号証ないし甲第50号証及び甲第53号証)の証拠価値を否定しているが、その根拠は明らかにされておらず、また、その証明書の15通が少ないということはない。
(4)請求人は「Hu1a Hawaii」の商標を、「ハワイ」に関連する商品群について使用しているのであって、その需要者が興味を有する「ハワイ」に関連する月刊誌等の発行部数が一般誌よりも少ない趣味の雑誌であるとしても、周知性等の証明資料としては、十分である。
(5)被請求人は、「Hu1a Hawaii」は店舗名に使用されているだけであって、商品には使用全く使用されていない旨主張している。
しかしながら、店舗の名称としての使用は、当該店舗において販売する全ての商品についての商標の使用に該当するとした判例(東京高等裁判所平成14年(ネ)第4552号)によれば、被請求人の主張は認められない。
(6)本件商標と引用商標とは、引用商標の語頭の「Ka」の部分の称呼が比較的弱音であり、何らの観念も生じないものであるから、称呼及び観念において類似するものである。
(7)フラダンス教室で行ったとするアンケートには、単に氏名が記載されているのみで、それがどこの誰か全く不明であるから、何ら証拠能力を持たないものである。
(8)請求人は、平成18年3月以前に行われた第60回及び第61回東京インターナショナル・ギフトショーヘ出品していた。その出店予約申込書のホームページ欄のURLは「www.hula-hawaii.co.jp」であることから「HULA HAWAII」が請求人の業務に係る商品等を表示するものとして広く知られているものである(甲第56号証の1及び2)。
(9)平成18年3月末時点における、請求人直営店の店舗は、鎌倉稲村ガ崎、五反田TOC、藤沢、横浜元町、鎌倉長谷、千葉オーロラモールジュンヌ、名古屋空港セントレア、茨城大洗リソートアウトレット、横浜港北東急、横須賀モアーズ、神戸芦屋、鎌倉寺分フラハワイアウトレット、通信販売楽天フラハワイショツプの13店舗である(甲第57号証の卸売先一覧表及び甲第58号証の1ないし甲第701の納品書)。
(10)請求人は、広告効果が非常に大きいテレビにおいても通信販売(ショツプチャンネル)を行っている。
(11)請求人は、平成9年から同18年3月以前に行われた東京インターナショナル・ギフトショーへ出品し(甲第60号証ないし甲第78号証)、その際のブースの表示が「Hu1a Hawaii」であったことを、ブースの写真(甲第59号証)及び東京インターナショナル・ギフトショーのバイヤーズガイドの写し(甲第60号証ないし甲第78号証)で証明する。
(12)雑誌「湘南スタイル」(甲第79号証)に請求人の特集が掲載され、「Hu1a Hawaii」が請求人の業務に係る商品等を表示するものとして広く知られていることを証明する。
3 まとめ
上述した理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、第15号及び第11号に該当するので、その登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)店舗名を「Hula Hawaii」とする直営店舗について
ア 店舗名「Hula Hawaii」を宣伝広告したのは、2001年4月から2006年3月までの約4年11ヵ月の間に、季刊の雑誌「HULA Le’a」に11回、フラダンス教室のコンサートのパンフレット「HO’IKE Vol.2」に1回、季刊の雑誌「素敵なフラスタイル」に5回、季刊の雑誌「Kathy Mom」に2回、季刊の雑誌「Hawaii Lani(ラニ・ハワイ)」に3回、雑誌「フラとハワイのお稽古ガイド」に1回の合計23回を行ったにすぎない。おおよそ、約4年11ヵ月の間に、季節毎に通常1回で、たまに2回、3回あるいは無しで、フラダンス専門紙等の季刊紙等に店舗名「Hula Hawaii」の広告をしていたにすぎないのである。また、これらの雑誌は、一般の総合雑誌と違い、趣味の雑誌であるから、発行部数も一般の総合雑誌よりも少ないものである。これでは、本件商標の出願時及び登録査定時において、「Hula Hawaii」が請求人に係る店舗の名称を表示するものとして、取引者、需要者間において周知であったということは、到底できない。
イ 「Hula Hawaii」ないし「フラハワイ」を商品商標として使用して、掲載されているのは、2001年7月から2006年3月までの約4年8ヵ月の間に、季刊の雑誌「HULA Le’a」に6回、季刊の雑誌「素敵なフラスタイル」に1回、季刊の雑誌「Kathy Mom」に2回、季刊の雑誌「Hawaii Lani(ラニ・ハワイ)」に3回、雑誌「フラとハワイのお稽古ガイド」に1回の合計13回にすぎない。
また、四季毎の発行日順に整理すると、約4年8ヵ月の間に、商品紹介だけのものを含めて季節毎に1誌での掲載が9回で、2誌での掲載が2回であり、また、1季節掲載されないで飛ばされたことが1回、2季節掲載されないで飛ばされたことが2回、3季節掲載されないで飛ばされたことが1回あるという状況で、フラダンス専門紙等の季刊紙に「Hula Hawaii」又は「フラハワイ」の広告し又は商品紹介されていたにすぎないのである。また、これらの雑誌は、一般の総合雑誌と違い、趣味の雑誌であるから、発行部数も一般の総合雑誌よりも少ないものである。
さらに、掲載のたびに「Hula Hawaii」ないし「フラハワイ」を使用する商品が異なっているものであり、1つの商品に対して「Hula Hawaii」ないし「フラハワイ」が継続して使用された訳でもなく、「Hula Hawaii」又は「フラハワイ」が商品商標として使用された商品は、「サンドレス」、「アロハシャツ」、「パウスカート」、「ドレス」、「エアーフレッシャ」、「小物入れ」、「Tシャツ」、「トートバッグ」、「ジュートバッグ」、「ビーチマット」、「パーカー」、「パンツ」、「キャンバストート」、「ソックス」、「エプロン」、「キャンバスミニトート」、「タンブラー」、「キャンバスバッグ」、「ミニタオル」、「ビーチサンダル」、「ハンドタオル」、「マグカップ」、「財布」、「カフェボール」、「アクリルテイッシュケース」及び「バッグ」のみである。
これでは、本件商標の出願時及び登録査定時において、「Hula Hawaii」が請求人の業務に係る上記の商品を表示する商品商標として、取引者、需要者間において周知であったということは、到底できない。
ウ 請求人は、「本店舗及び本商標は、第1号店の開店当初からマスコミの注目を浴び、しばしば雑誌や新聞等に取り上げられ…」と主張しているが、本件商標の出願時または登録査定時に、このような事実があったことを裏付ける証拠は、全くない。
エ 被請求人は、平成21年6月ないし8月に、京都府京都市の近鉄百貨店桃山店(MOMO)(乙第2号証及び乙第3号証)及び広島県福山市のフラダンススクール(乙第4号証)において、アンケート調査を行った。
(ア)乙第2号証のアンケートの結果、492人から回答を得た。そのうち、平成19年4月時点で「フラハワイ」のブランドを知っている人は1名、知らない人は488名、未記入の人は3名であり、平成21年6月時点で「フラハワイ」のブランドを知っている人は4名、知らない人は485名、未記入の人は3名であった。
(イ)乙第3号証のアンケートの結果、508人から回答を得た。そのうち、平成19年4月時点で「フラハワイ」のブランドを知っている人は2名、知らない人は500名、未記入の人は6名であり、平成21年6月時点で「フラハワイ」のブランドを知っている人は7名、知らない人は494名、未記入の人は7名であった。
(ウ)乙第4号証のアンケートの結果、56人から回答を得た。そのうち、平成19年4月時点で「フラハワイ」のブランドを知っている人は3名、知らない人は53名であり、平成21年6月時点で「フラハワイ」のブランドを知っている人は7名、知らない人は49名であった。
(エ)このように、平成19年4月時点だけでなく、平成21年6月時点においても、「フラハワイ」のブランドの知名度は、低いというアンケート結果であった。
オ 現在、インターネットにおいて、「HULA HAWAII」あるいは「フラハワイ」と入力し、検索すると、それなりの数の検索件数があるが、これは、インターネット検索では、「HULA HAWAII」あるいは「フラハワイ」が周知のものでなくても、かなりの数の検索件数になることがしばしばあることによるものである。
(2)証明書について
請求人は、甲第37号証ないし甲第50号証及び甲第53号証を証拠として、「遅くとも本件商標の出願時及び査定時において、請求人の直営店店舗名及びオリジナルブランドとして展開している『Hula Hawaii』は、請求人の業務に係る商品又は店舗名を表示する標章として、業者間において周知となっていた。このことは請求人の当該商品を取り扱う多くの大手販売店等が証明している。」旨、主張している。
しかしながら、取引者等は、往々にして、その内容を良く確認せずにあるいは吟味せずに、また、その証明の効果を良く検討せずに、取引相手あるいは関係者の証明の依頼に応じることがあり、しかも、証明者に不利益がないものについては、安易に署名、押印をするものであり、本証明書もそのようにして署名、押印したことが十分に考えられる。また、このような証明書の数としては、僅か15通であり、少なすぎるものである。さらに、この証明書の中で、例えば、8年以上も前に開店したのに、「開業当時からマスコミ等の注目を浴びて」いたことを15名の証明者が知っていたとは考えられない。
また、甲第14号証の3枚目の下段の欄には、「小さな店が何件か並んだその一角に3月9日にオープンしたばかりのフラ・ハワイ」と記載され、こじんまりした店舗の写真が掲載されており、このような開店当時からマスコミ等の注目を浴びていたとは、考えられない。また、「平成18年3月末に、当社商品販売店が約700店舗に達し」ていたことを、15名の証明者が知っていたとは、考えられない。また、「『Hula Hawaii』が、商品『被服、かばん類、タオル、バスマット、玄関カーペット、台所用品、トイレ用品、食器類、文房具類』その他の雑貨についての標章として、アパレル業界はもとより、一般需要者においても当社の標章として周知となっていた」ことを、15名の証明者が知っていたとは、考えられない。更には、平成18年3月末の時点で請求人の商品を取り扱う販売店等であったという証明がない以上、現在は、請求人の商品を取り扱う販売店等であったとしても、「Hula Hawaii」をこれだけの商品全部に平成18年3月末の時点で使用していたということさえ、15名の証明者が知っていたとは、考えられない。
したがって、甲第37号証ないし甲第50号証及び甲第53号証の証明書は、証拠として信用できないものであり、仮に信用できるものであったとしても、僅か15名の証明書で周知と判断することは、到底できないものである。
なお、甲第51号証ないし甲第52号証の商標使用証明書では、何の商品に使用されていたのかが不明である。
(3)請求人が提出した証拠により明らかになったこと
ア 店舗名「Hula Hawaii」を宣伝広告したのが、2001年4月から2006年3月までの約4年11月の間に、フラダンス専門紙等の季刊紙の雑誌等に合計23回だけである。
イ 「Hula Hawaii」ないし「フラハワイ」を商品商標として使用して、掲載されているのが、雑誌社による商品紹介の3回分を含めても、2001年7月から2006年3月までの約4年8ヵ月の間に、フラダンス専門紙等の季刊紙の雑誌に、合計13回だけである。
さらに、「Hula Hawaii」又は「フラハワイ」が商品商標として使用された商品は、「サンドレス」、「アロハシャツ」、「パウスカート」、「ドレス」、「エアーフレッシャ」、「小物入れ」、「Tシャツ」、「トートバッグ」、「ジュートバッグ」、「ビーチマット」、「パーカー」、「パンツ」、「キャンバストート」、「ソックス」、「エプロン」、「キャンバスミニトート」、「タンブラー」、「キャンバスバッグ」、「ミニタオル」、「ビーチサンダル」、「ハンドタオル」、「マグカップ」、「財布」、「カフェボール」、「アクリルティッシュケース」及び「バッグ」のみである。
したがって、本件商標の出願時及び登録査定時において、「Hula Hawaii」が請求人に係る店舗の名称を表示するものとして、また、上記の商品について、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者間において広く知られていたということはいえないものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
上記のとおり、本件商標の出願時及び登録査定時において、「Hula Hawaii」は、請求人の店舗名及び請求人に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者間において広く知られていたということは、到底できないものである。したがって、本件商標を指定商品に使用しても、請求人に係る商品と混同を生ずるおそれはまったくないものである。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、英文字で「HULA HAWAII」と横書してなるものであり、引用商標は、英文字で「Ka Hula Hawaii」と横書してなるものであるから、外観上は、互いに区別できる差異を有するものである。
また、本件商標を構成する「HULA HAWAII」の各文字は、同一の書体、同一の大きさをもって書されているものであるから、取引の実情においては、一体のものとして観察され、一気に称呼されるものとみるのが自然であり、「フラハワイ」の称呼及び観念を生じるものと認められる。
他方、引用商標を構成する「Ka Hula Hawaii」の各文字は、同一の書体、同一の大きさをもって書されているものであるから、取引の実情においては、一体のものとして観察され、一気に称呼されるものとみるのが自然であり、「カフラハワイ」の称呼及び観念を生じるものと認められる。
してみれば、両商標は、それぞれより生じる「フラハワイ」と「カフラハワイ」の各称呼における語感及び構成音数を異にするものであるから、称呼上明らかに相違するものであり、また、観念についても上記のとおりであるから、互いに紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれよりみても非類似の商標である。
4 まとめ
上述した理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、第15号及び第11号の規定に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
1 「Hula Hawaii」の周知性について
(1)請求人は、ハワイアン商品を扱う直営店を、平成13年(2001年)に出店し、本件商標の登録出願前の平成18年3月末の時点では13店舗(甲第57号証の卸売先一覧表及び甲第58号証の1ないし甲第701の納品書)となり、さらに、ムラサキスポーツ、ミナミ、ディズニーランド、三井不動産、相鉄ジョイナス、三菱地所、千葉そごう、港北東急百貨店、イクスピアリ等の約700店舗に、請求人の店舗を出店し(甲第2号証、甲第12号証、甲第57号証及び甲第58号証の1ないし701)、また、2005年4月から、インターネットモール楽天において通信販売を行っている(甲第2号証)ことが認められる。
また、「Hula Hawaii」の商品についての使用は、「サンドレス、アロハシャツ、パウスカート」(甲第15号証の4枚目ないし7枚目)、「ドレス」(甲第16号証の4枚目)、「エアーフレッシャ、小物入れ」(甲第17号証の4枚目ないし5枚目)、「Tシャツ」(甲第19号証の3枚目)、「トートバッグ」(甲第22号証の2枚目)、「パーカー、パンツ」(甲第24号証の2枚目)、「ジュートバッグ、Tシャツ、ビーチマット」(甲第25号証の3枚目)、「キャンバストート、エプロン」(甲第30号証の2枚目)、「ビーチサンダル、ハンドタオル、マグカップ、財布、Tシャツ、ソックス」(甲第31号証の2枚目)、「ソックス、キャンバストート」(甲第32号証の2枚目)、「カフェボール、アクリルテイッシュケース」(甲第33号証の2枚目)、「バッグ」(甲第34号証の2枚目)、「キャンバスミニトート、タンブラー、キャンバスバッグ、ミニタオル」(甲第35号証の2枚目)が認められる。
しかしながら、請求人の店舗数及び使用商品が上記のとおりであるとしても、その売上高は、明らかでなく、また、そうであるから、売上高の同種商品等を取り扱う同業者間における市場占有率等も確認できないものであり、さらに、インターネットによる通信販売については、甲第2号証の沿革欄に述べているのみであり、その出品状況・売上高等は、明らかにされていないし、また、使用された商品についての、販売数量等も明らかではない。
そうとすれば、「Hula Hawaii」が、取引者、需要者間において広く知られたということはできない。
また、例えば、甲第19号証の「Tシャツ」には「Hawaiian Legacy」、「Puahina」、「Hawaiian Legacy」、「Kapua Hawaii」等の商標が付され、また「トートバッグ」と「ロングドレス」には、「Puahina Totebag&Longdress」の商標が付され、さらに、甲第30号証のクッションには「Hula Luni」が、「食器」には「ISLAND PLATATION及び図形」が、「キャンバストート」には「ハワイアンエアライン」、「フララニ」等の商標が付されていることからしても、取引者、需要者間において「Hula Hawaii」が、特に、印象付けられたとも考えがたい。
(2)雑誌類に広告等が掲載されたのは、2001年4月から2006年3月までの約4年11ヵ月の間に、「Hula Le’a」に11回(甲第13号証ないし甲第24号証)、「素敵なフラスタイル」に5回(甲第25号証ないし甲第29号証)、「Kathy Mom」に2回(甲第30号証及び甲第31号証)、「Hawaii Lani」に3回(甲第32号証ないし甲第34号証)、「フラとハワイのお稽古ガイド」に1回(甲第35号証)、フラダンス教室のパンフレット「HO’IKE Vol.2」に1回(甲第36号証)及び「湘南スタイル」に1回(甲第79号証)の合計24回である。
しかしながら、これらの雑誌は、趣味の雑誌と認められ、請求人は、これら雑誌類の、発行部数等を明らかにしていないが、発行部数も一般の総合雑誌等からみれば、極めて少ないものと推認されるものであるから、この少ない発行回数と少数の発行部数とでは、これらに掲載された「Hula Hawaii」を付した商品が、請求人の取扱いにかかるものとして、取引者、需要者間において広く知られていたということはできない。
(3)「Hula Hawaii」が請求人の業務に係る商品又は店舗名を表示する標章として、業者間、需要者間において周知となっていたとする証明書(甲第37号証ないし甲第50号証及び甲第53号証)は、請求人が作成した定型の証明書に証明者が記名押印するという方法で作成されたものと認められ、その内容が「…平成13年3月に開店し…一般需要者においても当社の標章として周知となっていた…」であるところ、証明者は、請求人と取引のある者であるとしても、その内容を正確に熟知しているとは、通常考えがたく、このような定型文に証明を求められた場合、その内容を良く確認せずにあるいは吟味せずに依頼に応じる場合があることが知られているものであり、本証明書もそのようにして署名、押印したことが十分に考えられる(証明内容中の「一般需要者においても当社の標章として周知となっていた」の部分は、特に、他の証拠資料からは、見いだし難く、証明者がどのように知り得たかは、確認できない。)から、この証明をもって、取引者、需要者間において広く知られていたということはできない。
(4)東京インターナショナル・ギフトショー(甲第60号証ないし甲第78号証)ヘの出店予約申込書(甲第56号証の1及び2)のホームページ欄のURLは「www.hula-hawaii.co.jp」であり、また、その際のブースの表示(甲第59号証)が「HAWAiiAN SOTRE」及び「Hu1a Hawaii」であることが認められる。
しかしながら、ホームページ欄のURLに「Hu1a Hawaii」の文字が含まれているとしても、需要者・取引者が、常にその文字部分を抽出して、請求人の標章と理解するとは限らないし、まして、出店予約申込書を、需要者・取引者が目にすることが多いとは通常考えられないし、また、需要者・取引者が、ブースに大きく表示された「HAWAiiAN SOTRE」の部分を取捨し、「Hu1a Hawaii」の部分のみを、記憶にとどめたとも考えがたく、かつ、このブースに訪れた人数や売上高等も、不明であるから、取引者、需要者間において広く知られていたということはできない。
(5)以上を総合すれば、本件商標の出願時ないし登録査定時において、「Hula Hawaii」が請求人に係る店舗の名称又は商品を表すものとして、取引者、需要者間において広く知られていたということはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当について
上記1で認定・判断したとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ということができないから、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第15号について
上記1で認定・判断したとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ということができないから、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者が請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「HULA HAWAII」の欧文字よりなり、「フラダンス」を意味する「Hula」の文字(コンサイスカタカナ語辞典 三省堂)と、観光名称として著名な「ハワイ」に通ずる「Hawaii」の文字との結合よりなるとみられるものであるところ、これを分離し観察しなければならない特段の理由はなく、これよりは「フラダンスのハワイ」ほどの観念を生ずる一体的に見るべきものであるから、一連の「フラハワイ」の称呼を生じ、「フラダンスのハワイ」の観念を生ずるものである。
他方、引用商標は、「Ka Hula Hawaii」の文字よりなるものであるところ、これより生ずると見られる「カフラハワイ」の称呼も格別冗長でなく、その他、これらを分離して観察しなければならない特段の理由はないから、これよりは、「カフラハワイ」の称呼を生じ、特に観念は生じないものというべきである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、両商標は、外観上、相紛れるおそれがない程度に相違し、称呼においては、本件商標の称呼が「フラハワイ」であるのに対し、引用商標の称呼は、「カフラハワイ」であるから、両称呼は、称呼上重要な要素を占める語頭音において、「カ」の有無の違いがあり、その差異が称呼全体に及ぼす影響は大きく、これらを一連に称呼した場合であっても、十分に聴別し得るものである。
また、引用商標から格別の観念が生じないから、観念については比較することができない。
なお、請求人は、「引用商標の語頭の『Ka』の部分の称呼が比較的弱音であり、何らの観念も生じないものであるから、概文字は省略される。」旨、主張するが、何らの証左の提出がなく、その理由が妥当であるとする理由もみあたらないから、請求人の主張は、認められない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれよりみても、何ら相紛れるおそれのない、非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
5 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-05-25 
結審通知日 2010-05-27 
審決日 2010-06-28 
出願番号 商願2006-43011(T2006-43011) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y031416182021)
T 1 11・ 271- Y (Y031416182021)
T 1 11・ 25- Y (Y031416182021)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門倉 武則 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 2007-03-30 
登録番号 商標登録第5037137号(T5037137) 
商標の称呼 フラハワイ、フラ 
代理人 齋藤 貴広 
代理人 栗林 三男 
代理人 齋藤 晴男 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ