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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1221395 
審判番号 取消2009-300831 
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-07-22 
確定日 2010-07-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4804334号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4804334号商標に係る指定商品中の第25類「被服(ただし,『ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子』を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4804334号商標(以下「本件商標」という。)は,「Atrium」の文字を書してなり,平成16年3月1日に登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成16年9月17日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は,結論と同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁の理由を次のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は,その指定商品中「被服(ただし,『ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子』を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)弁駁の理由
ア 証拠の信憑性
乙第1号証ないし乙第6号証は,以下の理由により,いずれも信憑性がなく,信用できない。
(ア)乙第1号証は「企画製作書及び発注書」であるとされるが,発注日,注文書番号,発注者及び受注者の住所または連絡先の記載や社判の押印もなく,製造委託内容についてもサンダル底および鼻緒の材質,サイズ等の仕様の記載がない。また,右上に記載されている日付と納期の日付の書き方が異なっており不自然である。さらには,発注金額が不確定であり当該書面が「企画製作書及び発注書」とは到底考えられない。「EDI様」とあるが,何者であるのか不明である。
(イ)乙第2号証は「納品書」であるとされるが,どこにも「納品書」であることを示す文言はない。出荷場所,船積港,荷揚港,納入場所または出荷もしくは納品の日付の記載がなく,荷受人と出荷人も判然としない。また,商標権者と同じ名前の記載はあるが住所には「竜泉町」の記載がなく,取引場所,取引の態様が不明であり当該書面が商取引において使用される「納品書」とはいえない。また,被請求人は,平成17年1月21日以降は,To.Pi工房(有)が本件商標を使用しているというが,乙1号証には同社の社名がなく,同社の文書とは言えない。
(ウ)乙第3号証は,日付も作成者名義もなく,信用できない。
(エ)乙第4号証は「2006年12月展カタログ」であるとされるが,カタログであることを示す記載も,「2006年12月展」を示す記載も一切なく,「2006年12月展」が何を意味するかも示されていない。また,本件商標の使用者の氏名または名称も示されていない。
(オ)乙第5号証は,日付も作成者名義もなく,信用できない。
(カ)乙第6号証は,CD-ROMに靴の写真が保存されており,デー夕として「写真の撮影日:2006年10月15日20時15分」の表示が出てくるが,データは修正が可能であるため当該撮影日が真正であることを確認することができない。
(キ)乙第2号証以外はいずれの証拠も被請求人自身の作成によるものと考えられ,これらの証拠は客観性に欠け,信憑性がなく,証拠力は全くない。
イ 使用の証拠
乙第1号証ないし乙第6号証は,以下の理由により本件商標の使用の証拠とはいえない。
(ア)乙第1号証および乙第3号証について
本件商標は,ビーチサンダルの表面に「RetteR」「No.1」「LEDER HUT」「FRAUEN HUT」「VOM RETTER」と一連に同じ角度の傾斜をつけて印刷されており,需要者が一連の文字及び図形の並びから「Atrium」のみを当該ビーチサンダルの商標と認識することは困難である。一連の文字及び図形とは別に,かかと部分の丸囲みの中に「RETTER」の標章が付されていることからみても,当該ビーチサンダルの「Atrium」は装飾として使用されたものであり,商標としての使用とは認められない。さらに,当該ビーチサンダルの納品書,請求書,支払伝票等も示されておらず,実際の商取引の事実を確認できない。
(イ)乙第2号証について
納品書の記載からは乙第1号証および乙第3号証のビーチサンダルと関連付ける記載が一切なく,かつ,納品書に記載された日付は審判請求の登録日より後の日付であり,本件商標の使用の証拠とはなりえない。
(ウ)乙第4号証について
2006年12月展カタログの作成時期,作成部数が明らかでなく,かつ,当該カタログが展示されまたは頒布された事実を裏付けるものがない。
(エ)乙第4号証および乙第5号証について
商標法第50条の適用上,「商品」というためには,市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず,また,「商品についての登録商標の使用」があったというためには,当該商品の識別表示として同法第2条第3項,第4項所定の行為がされることを要するものというべき(甲第1号証)であるところ,乙第4号証のカタログには「¥価格未定」の記載があり,乙第5号証の靴は「サンプル」の写真であることを被請求人が答弁書に記している。また,実際の商取引に係る商品の数量,対価等も明示されておらず,当該靴が商取引の対象として流通に供された物と認めることができない。
(オ)乙第6号証について
CD-ROMの中には乙第4号証と同様の靴の写真が保存されているが,乙第4号証の写真とは撮影された角度が異なっており,異なる写真であることは明白である。また,CD-ROMの中には本件商標の記載はなく,本件商標の使用の証拠とはなりえない。
通常使用権
通常使用権が設定されたことを証する証拠はない。通常使用権者による使用の事実もない。
エ まとめ
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により,その指定商品中「被服(ただし,『ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子』を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」について取り消されるべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し,その理由を次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
(1)本件商標の使用権者である「金川吉宏」は,本件審判の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る商品について,本件商標を使用している。ただし,平成17年1月21日に,To.Pi工房有限会社を設立し,代表取締役社長金川吉宏として就任して以後は,To.Pi工房有限会社が本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用の事実
ア 乙第1号証の「企画製作書及び発注書」には,請求に係る商品である「履物」のアトリュウムロゴ,発注日,納期が記載されている。また,乙第2号証の「納品書」には,納品数並びに使用権者名が記載されている。さらに,乙第3号証の商品の画像プリントには,アトリュウムの印刷が施されている。
イ 乙第4号証の「2006年12月展カタログ」において,「履物」を紹介している。また,乙第5証の「履物」のサンプルにアトリュウムのロゴを使用している。さらに,乙第6号証のCD-ROMには,商品撮影日が記されてある。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標は,本件審判請求の登録前3年以内において,通常使用権者により「履物」について使用していることが明らかである。

4 審尋
当審判体は,平成22年3月3日付けの審尋により,被請求人に対し,本件商標を商品「ビーチサンダル等」について使用していることの具体的事実を明らかにする書面(例えば,納品書,請求書等の取引書類又は使用商標,使用者,使用日が記載されたカタログ等)の提出を求めたが,被請求人からは何らの回答もなかった。

5 当審の判断
(1)認定事実
被請求人提出の証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア EDIに宛てた「ビーチサンダル作製依頼」(乙第1号証)には,「数量-100足」「サイズ-メンズサイズ(26?28cm)」「単価 ¥90?100? 再度確認下さい。」「納期:7月21日 東京営業所着希望」の各記載があり,右上に,「2009,06,17」「To.Pi工房(有)戸部」の記載がある。そして,別掲の写真(図)が付されている。また,次頁には,サンダルのソールと表面についての指示が写真(図)で示されている。
イ 「Recapitulation」(乙第2号証)には,「To:MR.YOSIHIRO KANAGAWA/Topi Kobo 246-2 Aioi Japan」とし,「Tasikmalaya August 18,2009」として,「HIROKAZU KANAGAWA」のサインがされている。また,「DATE INVIOICE」欄に「August 14,2009」の記載,「DESCRIPTION OF GOODS」欄に「SCREWFINE OF SANDAL」の記載,「QTY/PCS」欄に「100」の記載がある。さらに,下段には「EXPORT BY FUNE:JAKARTA BRIDGE V.009N DATE AUGUST 16,2009」の記載がある。
ウ 写真(乙第3号証)には,乙第1号証のサンダルとほぼ同様の図柄のビーチンダルが写されている。
エ 被請求人のいうカタログ(乙第4号証)には,第1葉に靴の現物写真が掲載され,「天然の特殊な水草を,手で編んだ素材を,大胆にもALL使いで作ったシューズ」「素材 天然草100%」「¥価格未定」の記載がある。そして,カタログの台紙には「Atrium」の文字が等間隔で横に連続的に配され,それが幾段にも表示されている。また,次葉には,鞄の現物写真が掲載され,「天然の特殊な水草を,手で編んだ素材を,大胆にもALL使いで作ったバッグ」「素材 天然草100%」「¥価格未定」の記載があり,台紙には第1葉と同様に「Atrium」の文字が表示されている。
オ 写真(乙第5号証)には,靴の一部分が写されており,その靴の内底に筆記体で「Atrium」の文字が表示されている。
カ CD-ROM(乙第6号証)には,54枚の画像(写真)が保存されている。その19番目の画像には,まだら模様を背景として「Well Come」「Atrium」「Colection」の文字が,いずれも筆記体で3段に表示されたものが写されており,また,20番目の画像には上記エと同様の材質とみられる鞄の写真が表示され,23番目の画像には上記エと同様の材質とみられる靴の写真が表示されている。そして,その他の画像には,いずれも,各種の帽子を被った人形の頭部が写っている。
なお,当該画像(写真)データの表題及びファイル名として,「06年10月フォト」との表示がされている。
(2)使用商標について
本件商標は,「Atrium」の文字からなるものであるところ,前記(1)に示された標章は,「Atrium」の文字からなり,あるいはこれを筆記体で表したものであるから,これらの文字と本件商標とは,その構成文字を同じにしており,本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
この点,請求人は,乙第1号証及び乙第3号証に関して,「Atrium」のみを当該ビーチサンダルの商標と認識することは困難である。一連の文字及び図形とは別に,かかと部分の丸囲みの中に「RETTER」の標章が付されていることからみても,当該ビーチサンダルの「Atrium」は装飾として使用されたものである旨主張している。
しかし,当該「Atrium」は,他の文字と不離に融合して表され独立しては認識することができない態様のものとはいえない上,それが装飾としての機能のみを果たすと断ずべき合理的な理由はなく,ビーチサンダルに表示された当該「Atrium」は,他の文字から独立して看取され,自他商品の識別標識として認識され得るとみるのが相当である。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
(3)通常使用権について
被請求人提出の「履歴事項全部証明書」によれば,被請求人は,To.Pi工房有限会社の代表取締役であることが認められるから,同社と被請求人の関係及び被請求人の主張を併せみれば,口頭によるか黙示的であるのかは定かでないとしても,前記有限会社は,本件商標について被請求人から使用を許諾された者(通常使用権者)であるということができる。
(4)使用の事実について
使用に係る商標及び通常使用権については,前記(2)及び(3)のとおりである。しかしながら,前記標章「Atrium」の表示等が本件審判請求の登録前3年以内(以下「本件期間内」という。)に行われたものであるか否かについてみると,全証拠によってみても,不明といわざるを得ない。
すなわち,当該「Atrium」が商品「ビーチサンダル」を含めて履物に表示された時期については,仮に前記(1)アの「ビーチサンダル作製依頼」に記載の「納期:7月21日」として「2009,06,17」にビーチサンダルの発注がされたとした場合でも,発注されたビーチサンダルに本件商標が付されて,それが現に納品されたことを示す証左はみいだせない。
また,ビーチサンダルに本件商標が表示されていることが窺える乙第3号証には,時期等を示すなんらの記載もみいだせず,他にこれを前記発注品と関連付けてみる明確な証左はないから,前記発注との関係は不明という以外になく,その他,当該「Atrium」を表示したサンダル等の履物の取引が本件期間内に行われた事実を示す証拠はない。
なお,取引に関する書類の一と認められる乙第2号証には,取扱の商品名欄に「SCREWFINE OF SANDAL」が記載されているが,この書類と乙第1号証におけるビーチサンダルの作製依頼先EDIとの関係は定かでなく,また,記載された当該商品が本件商標を表示した商品であるか否かは不明であるうえ,当該書類には時期に係る記載はあるが,当該年月日は本件期間内でなく,それ以降のものである。
次に,「2006年12月展カタログ」と被請求人がいう乙第4号証には,「天然の特殊な水草を手で編んだシューズ」及び「同バッグ」の現物写真と「Atrium」の表示はあるが,当該資料がいずれの者に係るものであるのか,いずれの時期のものであるかを確認し得る表示等はみいだせない。
また,靴の内側を写した写真(乙第5号証)によれば,靴の内底に「Atrium」の表示はあるが,この写真自体が如何なる時期のものであるのか,また,被請求人はこれを「サンプル」というが,当該靴が商取引上如何なる性質のものであるのか,いずれも明らかではない。
さらに,CD-ROM(乙第6号証)には,「Well Come」「Atrium」「Colection」の文字が表示された画像が含まれているが,この文字のほかに,当該CD-ROMがいずれの者の作成に係るものであるのか,また,如何なる目的で使用するものであるのかなどを確認し得る表示はみいだせない。
したがって,上記を総合してみても,本件期間内において,本件商標が履物に付されたことや履物に係る広告に本件商標が付されたことが明らかであるとすることはできない。
(5)まとめ
以上のとおり,被請求人提出の証拠によっては,本件商標が取消請求に係る指定商品について使用をされたと認めることができない。他に本件商標の使用の事実を示す証拠はなく,不使用についての正当理由に係る主張及び立証はない。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により,取消請求に係る指定商品について,その登録の取消しを免れない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(乙第1号証)



審理終結日 2010-05-14 
結審通知日 2010-05-19 
審決日 2010-06-01 
出願番号 商願2004-18698(T2004-18698) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井岡 賢一 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小川 きみえ
小林 由美子
登録日 2004-09-17 
登録番号 商標登録第4804334号(T4804334) 
商標の称呼 アトリウム、エイトリウム、アトリアム、エイトリアム 
代理人 佐藤 恒雄 

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